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1 フランスの児童ポルノ規制 曽我部真裕(京都大学) 1.児童ポルノ規制の歴史 本稿では,フランスの児童ポルノ規制について概要を解説するが,その特徴を島岡まな 教授(大阪大学)の言葉を借りて一言で言うとすれば,「フランスでは,児童に対する性的 虐待防止や児童の健全育成のために,あらゆる可能性を考慮して網羅的な規制を行ってお り,そのためには強い立場にある大人側の思想・良心・表現の自由が多少制限されてもや むをえないという価値判断が働いている」 ということだろう。 フランスでもっぱら児童ポルノを対象とする規制がなされたのは,1992 年の刑法典の全 面改正の際であった。この全面改正を機に,それまでは,わいせつ物一般を規制してきた 「良俗侵害罪(outrage aux bonnes moeurs)」の処罰範囲が絞りこまれ,青少年の保護の観点 から再編成された。その結果,成人のポルノを成人に対して販売等する行為は合法化され 一方で,児童ポルノの規制(刑法典 227-23 条)や,児童に見られうる形での成人ポルノ 等の販売等の規制(227-24 条)が置かれた。 その後,次に示すように,特に児童ポルノ規制には頻繁に改正が加えられ,処罰される 行為が拡大され,また刑罰も重くなっている 【表1 児童ポルノ処罰規定(刑法典 227-23 条)の主な改正履歴】 1998 年改正 ・実写に加え創作物も規制対象であることを明確に(児童ポルノの 定義につき,「ポルノグラフィの性質をもつ未成年者の映像」に加 え,同様の「表現(représentation)」を追加)。 ・頒布及び頒布目的の製造に加えて,輸出入も処罰。 ・ネットワーク上での頒布の場合に刑を加重。 ・児童であることが明らかでなくても「児童の特徴を持つ人」の描 写であれば処罰対象に(ただし,被告人が 18 歳以上であること を証明すれば処罰されない。つまり一種の立証責任の転換の規 定)。 2002 年改正 ・単純所持も処罰。 2004 年改正(同年に 2 回改正があった) ・児童ポルノ関係罪が組織犯罪として行われた場合の刑の加重。 ・未遂も処罰。 2006 年改正 ・刑が加重された(例えば頒布及び頒布目的の製造については,3 年以下の懲役又は 4 5000 ユーロの罰金から, 5 年以下, 7 5000 ユーロに)。 2007 年改正 ・オンラインでの児童ポルノの常習的閲覧を処罰。 2013 年改正 15 歳未満の児童ポルノの製造については,頒布目的がなくても処

フランスの児童ポルノ規制

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フランスの児童ポルノ規制

曽我部真裕(京都大学)

1.児童ポルノ規制の歴史

本稿では,フランスの児童ポルノ規制について概要を解説するが,その特徴を島岡まな

教授(大阪大学)の言葉を借りて一言で言うとすれば,「フランスでは,児童に対する性的

虐待防止や児童の健全育成のために,あらゆる可能性を考慮して網羅的な規制を行ってお

り,そのためには強い立場にある大人側の思想・良心・表現の自由が多少制限されてもや

むをえないという価値判断が働いている」①ということだろう。

フランスでもっぱら児童ポルノを対象とする規制がなされたのは,1992 年の刑法典の全

面改正の際であった。この全面改正を機に,それまでは,わいせつ物一般を規制してきた

「良俗侵害罪(outrage aux bonnes moeurs)」の処罰範囲が絞りこまれ,青少年の保護の観点

から再編成された。その結果,成人のポルノを成人に対して販売等する行為は合法化され

る②一方で,児童ポルノの規制(刑法典 227-23 条)や,児童に見られうる形での成人ポルノ

等の販売等の規制(227-24 条)が置かれた。

その後,次に示すように,特に児童ポルノ規制には頻繁に改正が加えられ,処罰される

行為が拡大され,また刑罰も重くなっている③。

【表1 児童ポルノ処罰規定(刑法典 227-23 条)の主な改正履歴】

1998 年改正 ・実写に加え創作物も規制対象であることを明確に(児童ポルノの

定義につき,「ポルノグラフィの性質をもつ未成年者の映像」に加

え,同様の「表現(représentation)」を追加)。

・頒布及び頒布目的の製造に加えて,輸出入も処罰。

・ネットワーク上での頒布の場合に刑を加重。

・児童であることが明らかでなくても「児童の特徴を持つ人」の描

写であれば処罰対象に(ただし,被告人が 18 歳以上であること

を証明すれば処罰されない。つまり一種の立証責任の転換の規

定)。

2002 年改正 ・単純所持も処罰。

2004 年改正(同年に

は 2 回改正があった)

・児童ポルノ関係罪が組織犯罪として行われた場合の刑の加重。

・未遂も処罰。

2006 年改正 ・刑が加重された(例えば頒布及び頒布目的の製造については,3

年以下の懲役又は 4万 5000ユーロの罰金から,5年以下,7万 5000

ユーロに)。

2007 年改正 ・オンラインでの児童ポルノの常習的閲覧を処罰。

2013 年改正 ・15 歳未満の児童ポルノの製造については,頒布目的がなくても処

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罰。

・常習的閲覧に加え,対価を支払っての閲覧も処罰。

以上のような改正の結果,現行の児童ポルノ規制の概要は表2のようになっている。

【表2】児童ポルノ処罰規定(刑法典 227-23 条)の現行の内容④

項目 内容・罰則(この他に付加的な制

裁がある〔後述〕)

日本の児童ポルノ規制法の対応する

規定

児童ポルノの定

義。

ポルノグラフィの性質をもつ未

成年者の映像または表現。外見が

未成年に見える人の映像または

表現も含まれるが、その記録等の

当日に被写体が 18 歳以上だった

ことが証明された場合は除かれ

る。

「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記

録(電子的方式、磁気的方式その他人

の知覚によっては認識することがで

きない方式で作られる記録であって、

電子計算機による情報処理の用に供

されるものをいう。以下同じ。)に係

る記録媒体その他の物であって、次の

各号のいずれかに掲げる児童の姿態

を視覚により認識することができる

方法により描写したものをいう。

一 児童を相手方とする又は児童に

よる性交又は性交類似行為に係る児

童の姿態

二 他人が児童の性器等を触る行為

又は児童が他人の性器等を触る行為

に係る児童の姿態であって性欲を興

奮させ又は刺激するもの

三 衣服の全部又は一部を着けない

児童の姿態であって性欲を興奮させ

又は刺激するもの

頒布目的での製

造,伝達。

5年以下の懲役又は 7 万 5000 ユ

ーロ(1ユーロ=140 円とすると

1050 万円)以下の罰金。

提供目的の製造は3年以下の懲役又

は 300 万円以下の罰金。

提供罪の刑も同じ。

不特定多数への提供,公然陳列目的で

の製造は5年以下の懲役又は 500 万

円以下の罰金。

15 歳未満の児童

ポルノの単純製

同上。 児童ポルノを更に年齢で区分する規

定はない。

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造。

無償提供・頒布・

利用可能状態に

する行為,輸出

入。

同上。 不特定多数への提供,公然陳列は5年

以下の懲役又は 500 万円以下の罰金。

輸出入は提供目的の場合3年以下の

懲役又は 300 万円以下の罰金,不特定

多数への提供,公然陳列目的の場合は

5年以下の懲役又は 500 万円以下の

罰金。

不特定多数の公

衆に向けたネッ

トワークの使用。

7年以下の懲役又は 10 万ユーロ

以下の罰金。

特定少数への提供の場合3年以下の

懲役又は 300 万円以下の罰金,不特定

多数への提供の場合は5年以下の懲

役又は 500 万円以下の罰金。

常習的又は対価

を支払っての閲

覧,単純所持。

2年以下の懲役又は3万ユーロ

以下の罰金。

閲覧や単純所持については罰則はな

い。

組織的犯罪とし

てなされた場合。

10年以下の懲役又は 50万ユーロ

以下の罰金。

組織的犯罪であることによる加重は

ない。

以上の未遂の場

合。

既遂の場合と同様の刑。 未遂の処罰規定はない。

フランス人及び

フランス在住者

が外国で以上の

罪を犯した場合。

国内犯と同様に処罰(刑法典

227-27-1 条)。

国民の国外犯も処罰される。

2.主な論点

(1)児童ポルノの定義

表2から分かるように,児童ポルノの定義は,「ポルノグラフィの性質をもつ未成年者の

映像または表現」という極めて簡潔なものであり,曖昧であることは明らかである。一般

論レベルで言えることは,ヌードであるだけで直ちにポルノグラフィに当たるというわけ

ではないということである。それ以上の判断は,裁判官の判断に委ねられることになるが,

モデルの姿態,他の登場人物との関係でのモデルの役割,画像の全体的な文脈と言った点

が考慮されることになろう。

「ポルノグラフィの性質をもつ未成年者の映像または表現..

」(傍点筆者。表1も参照。)

が児童ポルノであることから,創作物も児童ポルノとなりうるのは法文上明確であり,判

例もある。すなわち,日本のアニメ『淫獣聖戦3ツインエンジェル』のフランス語版を販

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売したことにつき,フランス人のプロデューサーと販売会社の代表者が起訴された事案に

おいて,民刑事事件に関する最高裁判所である破毀院は,「架空の未成年者を表現し,実写

映像を加工した絵や画像のような非実写の画像も,同条文〔刑法典 227-23 条〕の予定する

ところと解する。」とした⑤。

以上のような,ポルノグラフィの定義の曖昧さや,創作物への拡張といった点は,日本

人の目から見るとかなり問題含みであるようにも思われるが,フランスでは日本ほど問題

にはされていないようである。実際,破毀院も 2012 年の決定において,この規定が刑法の

明確性等の憲法原則に反しない旨明言している⑥。学説においても問題視する見解はあまり

見られないが,それは,児童ポルノ規制の目的が「小児愛とのたたかい」といったかなり

抽象的なレベルで捉えられていることと関連するように思われる。

(2)18 歳未満に見える画像について

児童ポルノの定義と関連して,18 歳未満に見える(条文上は「児童の身体的特徴を有す

る人のポルノグラフィックな映像」⑦)については児童ポルノと推定するという規定(刑法

典 227-23 条7項)について触れたい。この規定により,検察側が実際に 18 歳未満であるこ

とを証明しなくても,18 歳未満の身体的特徴を有することさえ証明すれば,逆に被告が 18

歳以上であることを証明できない限り児童ポルノとして扱われることになり,立証責任の

転換が行われることになる。

この点についても破毀院は,前述の 2012 年の決定において,無罪推定の原則に反しない

としている。これはおそらく,問題の人物が 18 歳以上であることの証明が被告人に許され

ており,また,このような立証責任の転換が,犯罪の成立のために証明すべき事項の一部

に過ぎないということを理由とするものと思われる。

ところで,この規定は,創作物についても適用される。前述の『淫獣聖戦3ツインエン

ジェル』事件でも,アニメの登場人物が児童かどうか争われたが,破毀院は「他の成人の

登場人物と比較すると背が低いこと,成人であると推定されるような身体的特徴がないこ

と,その表情が非常に低年齢の幼児のように見えるといった点を特に考慮すると,まぎれ

もなく幼児の特徴を備えている。」とした。

他方,創作物についてこの規定を適用することについて疑問を呈する学説もある⑧。すな

わち,前述のように,登場人物が 18 歳以上であることを被告人が証明することは認められ

ているが,創作物についてはこうした証明が不可能であることから,ヨーロッパ人権条約

(のうち,おそらく特に同条約6条の公正な裁判を受ける権利)との適合性は不透明であ

ると指摘される。

(3)単純所持,閲覧について

単純所持は当初の規定にはなく,2002 年の改正によって処罰対象とされたものである⑨。

裁判例を見ると,単純所持罪は,例えば,被告人の自宅や被告人が使用する機器に児童ポ

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ルノ画像が存在する以上,実際上は,被告人がその画像の存在を知らなかったことを証明

できない限り成立する。他方,利用者の操作がなく自動的にダウンロードされた中に児童

ポルノが含まれていたような場合には,無罪とされた例がある。

これに対して,インターネット上の児童ポルノ画像をダウンロードせずに単に閲覧した

だけの場合,単純所持罪は成立しない。このことは 2005 年の破毀院の判例でも確認されて

いる⑩が,この判決を受けて,2007 年には常習的な閲覧を処罰する改正が行われた(表1参

照)が,学説からはプライベートな場所で個人のパソコンを使って行われる閲覧をどのよ

うに警察が認知し捜査するのか,という疑問が提起されている。なお,警察が児童ポルノ

サイトを開設して閲覧者を補足するという手法は認められないという破毀院判決もある⑪。

こうした疑問にもかかわらず,2013 年には閲覧に関する処罰範囲が拡張され,対価を支

払っての閲覧,典型的には有料サイトの閲覧行為が処罰されることとなった。この点も含

め,2013 年の改正は,EU 指令を国内法化したものである。すなわち,2011 年の児童の性

的虐待・搾取及び児童ポルノに関する EU 指令⑫は,同様の趣旨で定められた 2004 年の枠組

み決定を全部改正するものであったが,2013 年改正は,この指令を国内法化することを目

的としていた。閲覧に関しては,同指令5条3項で,常習的なものに限定することなく故

意の閲覧を処罰するものとされている。ただ,指令内容の趣旨を説明する同指令の前文 18

項では,故意が認められるのは特に反復的な場合と対価を支払った場合であるとしており,

2013 年改正はこれを受けたものと言える⑬。

(4)付加刑について

これまでフランスの児童ポルノ規制について紹介した日本の文献ではほとんど触れられ

ていないが,児童ポルノ関係の罪には,表2で示したような懲役や罰金に加えて,かなり

多彩な付加刑が課される点にも注目しなければならない。

具体的には,主刑(懲役又は罰金)に加えて,付加刑として公民権停止,5年以内の運

転免許の停止,運転免許の取消と5年以内の再取得の禁止,5年以内の出国禁止,犯罪に

使われた物や犯罪から生じた物(児童ポルノの DVD など)の没収,児童と日常的に接触す

る職業・ボランティアの禁止(恒久的禁止と 10 年以内の期間を定めての禁止がある〔以上,

刑法典 227-29 条〕),更に,再犯予防のための特別追跡監視措置(刑法典 227-31 条)といっ

たものがある。

主刑である懲役や罰金が 1992 年の刑法典改正時よりも重くなっていることについては前

述した(表1参照)が,今示した付加刑のリストも,1992 年の刑法典改正当時よりも長く

なっている(没収や児童と接触する活動の禁止,特別追跡監視は後に追加されたもの)。

これらの付加刑については,没収や特別追跡監視措置,児童と接触する活動の禁止とい

った,その是非はともかく,児童ポルノ犯罪と関連性が認められるものがある一方で,公

民権停止や運転免許の停止・取り消し,出国禁止といった措置は,児童ポルノ犯罪に対す

る制裁として適切なものかどうか疑問がないではない⑭。

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児童ポルノ犯罪に対する付加刑(あるいはより広く付随的な措置)について日本では,

韓国の児童青少年清保護法(アチョン法)によるもの(20 年間の身上登録や 10 年間の就業

制限)が紹介されている⑮が,フランスにもこれに対応するものが存在することになる。

フランスの付加刑については上述のように問題もあり,また,韓国法については過度に

厳格であるなどの批判もあるが,このような付随的な措置は,適切な形であれば再犯防止

のために有益であると思われる。

3.おわりに

本稿では児童ポルノ犯罪に焦点を絞ったために触れないが,児童への性的虐待そのもの

や,インターネット上での出会いに関する規制についての規制ももちろん存在する⑯。

さて,児童ポルノ犯罪の問題に戻ると,フランスでは日本と比較して,児童ポルノの範

囲が広く,また,処罰対象となる行為の範囲も網羅的といってよいほど広い。さらに,多

様な付加刑も含め,刑も質量共に重いといえる。

こうした状況については,冒頭にも引用した島岡教授の言葉を再び借りれば,「フランス

では,児童に対する性的虐待防止や児童の健全育成のために,あらゆる可能性を考慮して

網羅的な規制を行っており,そのためには強い立場にある大人側の思想・良心・表現の自

由が多少制限されてもやむをえないという価値判断が働いている」ということが言えるだ

ろう。

ただ,一般に,フランスの立法は政治主導でなされることが多いが,児童ポルノ規制に

ついても同様である(その結果,個別には触れないが,条文には技術的な不備も散見され

る)。児童ポルノ規制については,児童の保護という異論の余地のない正当な目的がある一

方で,規制される側は小児愛者という性的少数者,あるいはせいぜいオタクたちであり,

両者を同視するわけではないが,いずれにしても社会の多数派からの偏見を受けやすい少

数者である。

こうした構造のもとにおいては,過剰規制がなされやすいことは明らかであり,フラン

スでは実際に多数回に渡る改正により網羅的な規制が実現しているのである。日本でも児

童ポルノ規制はある種の政治主導で行われており,同様の道をたどる可能性も否定できな

い。

これに対応するためには,せめて緻密な立法目的やそのための規制手段の分析が必要で

ある。しかし,フランスでは前述のように立法目的が「小児愛とのたたかい」といった抽

象的なレベルで行われており,理論によって規制強化の流れに歯止めをかける構図にはな

っていない。この点,日本では事情が異なるが,それによってフランスのような道をたど

ることを避けることができるだろうか。

* 本稿では原則としてフランス語文献の引用は省略した。① 島岡まな「フランス刑法における児童ポルノ問題」法学セミナー671 号(2010 年)43 頁

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(45 頁〔以下,島岡①として引用〕)。なお,島岡教授はこれを敷衍した論考をより専門的

な雑誌で公表されている(「刑法 175 条及び児童ポルノ禁止法と表現の自由」法学研究〔慶

応大学〕84 巻9号〔2011 年〕447 頁〔以下,島岡②として引用〕)が,両者で重なる部分は,

島岡①から引用する。なお,島岡②は,インターネット上で公表されている

(http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20110928-0447)。② 1970 年代半ばから事実上合法化されていたが,刑法典の法文に変更が加えられたのはこ

の刑法典全面改正の際である。③ この点については,esprit doujin『海外から見た表現規制問題 フランスの非実在青少年

規制 なぜこうなった?』(2013 年)10-19 頁も参照。この資料は,フランス人の同人サー

クルの主催者が作成した小冊子で,フランスの児童ポルノ規制の実情について非常に詳し

く解説されている。④ 本表作成に当たっては,島岡①43 頁の表を参照した。⑤ 破毀院刑事部 2007 年9月 12 日判決。島岡②467-468 頁に判決文の翻訳があり,本稿でも

この翻訳に従っている。また,前掲『海外から見た表現規制問題』22-23 頁にもこの事件の

紹介がある。⑥ 破毀院刑事部 2012 年6月6日決定。⑦ 227-23 条7項は本文で示したように,「児童の身体的特徴を有する人のポルノグラフィッ

クな映像」という文言であり,前述の児童ポルノの定義(「…の映像または表現.....

」)とは若

干異なることから,創作物については適用されず児童ポルノの推定は働かないようにも見

えるが,そのようには解釈されていないようである。⑧ Michèle-Laure Rassat, Mise en péril des mineurs, JurisClasseur Pénal, 2008, Fasc. 20, n°27.⑨ この改正に関する国会審議は,2001 年の第2回児童性的搾取に反対する世界会議(横浜)

が開催される直前に行われ,同会議へのフランスの参加戦略を意識したもののようである

(前掲『海外から見た表現規制問題』17 頁)。⑩ 破毀院刑事部 2005 年1月5日判決。判決文は島岡②467 頁を参照。⑪ 破毀院刑事部 2006 年5月 11 日判決。⑫ 2011 年 12 月 13 日指令(2011/92/UE)。⑬ 同じく EU 指令を受けて 2013 年に改正された点として,15 歳未満の児童ポルノの製造に

ついては,頒布目的がなくても処罰することとされたことがある(表1参照)。これは,同

指令5条6項が,頒布目的がない製造について一般的に処罰することを加盟国に求める一

方で,8条3項で性的成熟に達した児童の同意のもと,専ら個人的使用を目的として児童

ポルノを製造又は所持することについては処罰しないことも認める旨規定したことに対応

する。⑭ ただし,出国禁止は,いわゆる「買春ツアー」による犯罪や,児童ポルノ輸出入罪との

関係では関連性がないとは言えない。⑮ 例えば,朴景信「アチョン法2条5号改訂の必要性」うぐいすリボン主催講演会(2013年9月6日〔東京〕,7日〔京都〕)スライド(http://www.jfsribbon.org/2013/08/blog-post_22.html)13 頁。⑯ 島岡①44 頁参照。