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①基礎データの収集・整理
②層序・地質構造の検討
[堆積環境の把握]
[岩相層序区分の推定]
③地質の論理モデル推定
[堆積と侵食現象を反映]
④地層境界面の形状推定
[地層ごとに推定する]
⑤地層境界面の形状確認
[三次元ビューア使用]
⑥サーフェスモデルの推定
[出力形式:3D-DXF]
⑦最適モデルの決定
必要に応じて繰り返す
5.5 サーフェスモデル
5.5.1 形状データの作成方法(図-5.5.1 参照)
地層境界面(ユニット=層序)モデルを例として,サーフェスモデリングの手順を以下
に略記する。
改良・開発したツール類の使用説明を7章に記載した。
図-5.5.1 サーフェスモデリングの概略手順とそのイメージ 3)を基に作成
① 基礎データの収集・整理:地質調査によって得られた地下構造に関する基礎データ
(ボーリング柱状図,地表踏査結果や地質断面図など)を収集し整理する。
② 層序や地質構造の検討:当該区域の堆積環境などに留意しつつ,基礎データを元に
して対象範囲に存在する地層の層序(岩相)を判定し,当該事業に係わる地質・地盤
の全体を表現できる「総合地質凡例」や「総合柱状図」を作成する(5.2.2 参照)。
③ 地質の論理モデルの推定:堆積環境を勘案して,各地層がどのような堆積と侵食の
各作用により出来上がったかを考察する。
④ 地層境界面の形状推定:最も適切と思われる曲面推定法を利用して,地層境界面の
形状を推定する。推定に当たっては,7章に記載した留意点を参照する。
⑤ 地層境界面の形状確認:①~④で構築した地層境界面の形状が妥当であるかどうか,
三次元CADなどを利用して視認する。特に,地層が交差する場合,その現象が妥当か
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どうかを留意する。
⑥ サーフェスモデルの推定:②~⑤で作成した中間データを利用してサーフェスモデ
ルを推定する。
⑦ 最適モデルの決定:得られた結果(本研究では,3D-DXFファイル)を直ちに三次元CAD
を利用して可視化し,視認により基礎データとの整合性などを検証する。疑問があ
れば,①~⑥のいずれかの段階に戻って再処理・推定を行う。
上記の各手順により最適なサーフェスモデルを推定するが,この場合の最適モデルと
は,曲面推定法における最小残差モデルではなく,地質や地盤技術者の想定したイメー
ジモデルに最も近いものが望ましい。
5.5.2 孔底の地層情報を境界面推定に生かす方法
ボーリングデータから地質断面図を作成する上で最も悩ましい事柄の1つに,ボーリン
グの孔底に存在する地層がどこまで続いているか,を推定することが挙げられる。
図-5.5.2 は,4本あるボーリングのうち1本がb1層を確認していない,という仮定で作
成した集合柱状図である。地層境界面の推定を行う場合,一般的な方法は上段のようにb1
層を確認できなかったボーリングでは,b1~b2境界のS1面は不明であるとして扱う。この
ようにすると,地層境界面の推定プログラム(のアルゴリズム)によっては,S1面が孔底よ
りも上に存在する,という推定結果が得られる場合があり,これは事実に反してしまう。
上段は孔底の地層データを使用しないケース。 下段は使用するケース。
図-5.5.2 孔底の地層データを地層境界面の推定に利用する方法(イメージ)
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id X Y Z id X Y Z l
1 5350.9 62092.4 -19.8 1 5350.9 62092.4 -19.8 0
2 5378.8 62097.8 9e9 2 5378.8 62097.8 -20.2 -1
3 5401.0 62084.0 -19.8 3 5401.0 62084.0 -19.8 0
4 5360.2 62127.5 9e9 4 5360.2 62127.5 -19.7 -1
5 5403.8 62107.5 9e9 5 5403.8 62107.5 -19.9 -1
6 5417.7 62122.4 9e9 6 5417.7 62122.4 -19.7 -1
7 9e9 9e9 9e9 7 9e9 9e9 9e9 9e9
通常の入力データ形式
-1:面がデータ点 の下を通るl= 0:面がデータ点 を通る +1:面がデータ点 の上を通る
面の位置を指定する形式
lの説明
一方,本研究で開発した「OCU GeoModeller」では,下段のように「S1面は孔底よりも
下位にある」という情報を入力データに付記することによって推定計算を行う機能がある
ので,少なくともS1面は孔底よりも下に推定される。入力データの例を表-5.5.1 に示す。
注 b2層の下端深度が不明なので,S1面は孔底より下であるとするがその深度を確定すること
はない。よって,この地点でのS1面深度は,他の計算条件などにより不定となる。
表-5.5.1 地層境界面の推定に使用する入力データ(イメージ)4)を基に作成
5.5.3 論理モデルの作成について(考え方)
(1)基本的な考え方
ここでは,図-5.5.2 に示す地質構造(地質断面図)を例にとって,論理モデルの作成
方法について概説する。なお,図-5.5.2 は,図-5.2.2 の再掲載である。
b1~b3:地層区分(一般的に最下位層が1番) S1~S3:地層境界面 α:空中
図-5.5.2 地質の論理モデルの表現方法(例)
地層境界条件は以下の通りである。
・境界S1:初期地表面
・境界S2:堆積・侵食面[地層b2が堆積後,侵食によりS2が構成された]
・境界S3:現地表面=堆積・侵食面[地層b3が堆積後,侵食によりS3が構成された]
上記の条件を満たす論理モデルの例を表-5.5.2 に示す。
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表-5.5.2 図-5.5.2の地質構造を示す論理モデルの例
・「地層b1」は「境界S1」の下位にあるため,b1~S1の交差セルは「-1」とする。
・「地層b2」は「境界S1」の上位にあるため,b2~S1の交差セルは「1」とする。
・「地層b3」と「地層b1」は「境界S1」で接していないため,b3~S1の交差セルは「0」
とする。
・「地層b3」は「地層b1」と「地層b2」に対し「境界S2」で上位になるため,b3~S2
の交差セルは「1」とし,b2~S2およびb1~S2の交差セルはいずれも「-1」とする。
・「境界S3」は全ての地層の上位であるため,b3~S3,b2~S3およびb1~S3の各交差
セルには全て「-1」とする。
・「空間α」は「地層b3」の上位であるため,α~S3の交差セルは「1」とする。
・「空間α」は「境界S1」と「境界S2」とは接していないため,α~S1(S2)の交差セ
ルは「0」とする。
(2)複雑なモデルの例
ここでは,図-5.5.3 に示す2種類の地質構造を例にとって,それぞれの論理モデルが
どのように推定されるかを例示する。同じ堆積環境のまま現在に至っているものをケー
ス1とし,「地層b5」の堆積後,同層と「地層b4」が共に侵食を受け,その後「地層b6」
が堆積して現在に至っているものをケース2とした。なお,両者とも「境界S1」~「境
界S4」までは整合状態とし,現在の地表面は侵食状態にあるとする。
図-5.5.3 地盤モデルの例
初期地形面
(S1)
堆積侵食面
(S2)
堆積侵食面
(S3)
地層1(b1) -1 -1 -1
地層2(b2) 1 -1 -1
地層3(b3) 0 1 -1
上部空間1(α) 0 0 1
注 記 (1,0,-1)の意味
1:地層(空間)は境界面より上位 (b2はS1より常に上位,など) 0:地層(空間)は境界面と無関係 -1:地層(空間)は境界面より下位 (b3はS3より常に下位,など)
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初期地形面(S1)
堆積面(S2)
堆積面(S3)
堆積面(S4)
堆積面(S5)
初期地形面(S1)
堆積面(S2)
堆積面(S3)
堆積侵食面(S4)
堆積侵食面(S5)
地層1(b1) -1 0 0 0 -1 地層1(b1) -1 0 0 -1 -1
地層2(b2) 1 -1 0 0 -1 地層2(b2) 1 -1 0 -1 -1
地層3(b3) 1 1 -1 0 -1 地層3(b3) 1 1 -1 -1 -1
地層4(b4) 1 1 1 -1 -1 地層4(b4) 1 1 1 -1 -1
地層5(b5) 1 1 1 1 -1 地層5(b5) 1 0 0 1 -1
上部空間1(α) 0 0 0 0 0 上部空間1(α) 0 0 0 0 1
不整合
Case-1 Case-2
推定した地質構造の論理モデルを表-5.5.3 に示し,ケース2についてのサーフェスモ
デルを図-5.5.4 に示した。
表-5.5.3 推定地質構造論理モデル
可視化:WebGL(Web)
可視化:V-nas3DViewer
上図は論理計算する前の形状であって,地層が交差している。 下図は3D-DXFを可視化した。
図-5.5.4 ケース2のサーフェスモデル(例)
5.5.4 地層境界面の形状を推定する上での留意点
(1)ボーリングの数量と位置による影響
図-5.5.5 は,ボーリングの数量と配置が境界面形状に与える影響について,急崖部
のDEMを使用して推定してみた事例である。対象範囲は,南北(X)41点×東西(Y)71点の
合計2911点とし,間隔は共に10mとしたので,南北が400m東西が700mであった。
以下は,各図についての説明である。
① 2911点の全メッシュにそれぞれ標高を与えて作図したカラー等値線図であって,
この図が基本である。
② 40点は,全メッシュ2911点の中から,無作為に抽出した「疑似ボーリング地点」
である。抽出した座標は2911点のメッシュ座標のどれかと同じになり,面の推定計
算に悪影響を与えると考え,10m以下の乱数を発生させて加算してある。②の等値
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線図は,この40点のX,Y,Z値をTerramod_BSに入力して面の形状を推定した結果で
ある。図中のマーカーは,疑似ボーリング地点の位置である。
③ ①の標高データと②の推定データとの差である。
④⑤ ④は②の40地点を20地点に減少,⑤は同様に10地点に減少させた結果である。
⑥⑦ ①の標高データと④,あるいは⑤の推定データとの差である。
なお,二つの矢印は,①の左端から急崖部までを示す簡易的な物差しである。
図-5.5.5 三次元曲面推定におけるボーリングの位置による影響(イメージ)
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矢印を指標にして①②④と⑤の4者を比較すると,700m×400m程度の範囲の基盤など
に急崖部あるいは遷急部が存在する場合,40点程度のボーリングデータから推定した,
地層境界面の形状には相当程度の誤差が含まれており,ボーリング地点が少ないほど誤
差は大きくなる,と考えねばならないことが判明した。
この事例から,遷急部を抱える地中の急崖部,埋没谷や凹地のような構造では,ボー
リング位置が極めて適切に配置されない限り,曲面推定法でこれらの部分に対する正し
い形状推定はかなり困難であると言えよう。
なお,全ての誤差図の中心からやや右に直線上の構造が見られるが,国土地理院から
提供を受けた①の等値線図にも現れている現象が表面化したものと考えられる。
(2)メッシュ密度による影響
サーフェスモデリングは,ボーリングデータの層序深度を固定点とした曲面推定法に
よって地層境界面の三次元形状を推定するものである。仮にボーリング箇所がランダム
配置であっても,推定結果である地層境界面の三次元形状は,メッシュ(直交格子)デー
タあるいはTIN(不整三角網)として計算される。このため,メッシュあるいは網の間隔(一
種の密度)の設定が,曲面形状にある程度の影響を与えることが予想される。
図-5.5.6 は,メッシュの間隔を変えて曲面形状を推定した結果の例であって,本図
200m×300mの範囲内に7本のボーリング。 4種類のメッシュサイズによる曲面推定結果。
図-5.5.6 三次元曲面推定におけるメッシュ密度による影響(イメージ)
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は便宜上,等値線として表現した。下段はボーリング箇所に等値線を表示した結果,上
段は更にメッシュ線を表示した結果である。 等値線の形状から,メッシュサイズの2.5
m~10mはほぼ同じ形状を呈していることがわかる。
これにより,200m程度の範囲に7本のボーリングを配置した場合では,20~30分割(格
子数は21~31)のメッシュより細かな間隔の設定は不必要であることがわかる。言葉を
換えると,20~30分割のメッシュで得られた曲面形状より細かな形状(変化)は求めるこ
とができない,と言うことになり,これを解決するためには,より多くのボーリングが
必要となる。
図-5.5.7 は,図-5.5.6 の結果を三次元のワイヤーメッシュで表示した結果である。
格子間隔が1/2になると言うことは扱う格子数が4倍になり,その分コンピュータの資源
を消費するため描画などの反応速度が遅くなる,といった弊害も出やすい。
サーフェスモデルを推定する場合,入力データであるボーリングの数量と曲面形状を
推定する範囲(面積)を勘案して,最適なメッシュ間隔を設定すると良い。
格子数64倍 格子数16倍 格子数4倍 格子数1倍
図-5.5.7 メッシュ密度と三次元曲面推定結果(イメージ)
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(3)ボーリングの配置が推定結果にあたえる影響
必要な対象範囲の周辺にもボーリングが存在する場合,それを使用する場合と使用し
ない場合について,結果への影響について比較した結果を示す。
・図-5.5.8(左):範囲外のボーリングを使用した結果
・図-5.5.8(右):範囲内のボーリングのみを使用した結果
図-5.5.8 ボーリングの配置が推定結果にあたえる影響(例)
両者で,赤枠内の等値線の形状が異なっていることことから,精度の高い地層境界面
の形状データが必要な場合には,周辺のボーリングを可能な限り利用すべきである。
(4)推定範囲の変化による影響
ボーリングの配置(分布)に対して過大な推定範囲を設定した場合,どのような推定結
果が得られるかという事例を図-5.5.9 に示す。
図-5.5.9 推定範囲を変化させた結果(例)
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図(左)は三次元曲面形状の推定範囲を適切に設定した例であり,図(右)は面積を約9
倍と過大に設定した例である。 赤枠内は三次元曲面推定法における「内挿(補内)」部
分であり,その外側は「外挿(補外)」部分である。
図の結果から,推定範囲の設定面積によらず「内挿(補内)」部分の推定結果はほほ同
じであることが確認された。
(5)線状範囲による影響
道路構造物,特に高架橋構造物などの基礎地盤を三次元的に推定する場合,道路幅よ
りも若干程度の推定幅があれば十分である。しかるに,多くのジオモデラーはボーリン
グ全体の範囲を囲むような範囲しか設定できないものが多い。例を図-5.5.10 に示す。
① 南南西から東北東に延びる道路に対し,通常のメッシュ配置による基盤層の推定
深度分布(二次元表示)。
②②’ ①に対して方位を調整して設置したメッシュ配置。実際にはボーリングの位
置座標を回転させて基盤層を推定し(②),結果を逆方向に回転させてある(②’)。
③ ①の三次元表示。
④ ②の三次元表示。
①の推定結果の道路幅である部分と,元々道路幅のみで推定した②’の間には殆ど差
が無いことがわかる。よって,①の状態で基盤など地層の曲面形状を推定した後で,CA
Dにより道路幅の部分を切り出しても,影響は最小に留まるようである。
図-5.5.10 線状範囲による影響(イメージ)