35
34 著者、発行年 タイトル 出典 IDWR, 200 カンピロバクター感染症 IDWR, 2005, 19 (5 9-15 ) 4.主な文献の要旨 収集した文献のうち、主要な文献について要旨を以下に示す。 Agrawal RK, et al, 2000 (大腸菌 70S リボゾーム上でのエロンゲーションサイクルにおける tRNA の動きを可視化す ) Agrawal RK, Spahn CM, Penczek P, Grassucci RA, Nierhaus KH, Frank J. J Cell Biol. 150(3):447-60. (2000) 転位前および転位後状態での tRNA-リボゾーム複合体結晶の 3 次元解析図は、 17 オングス トロームの解像度で再構成済みであった。転位前複合体における A および P 部位、および 転位後複合体における P および E 部位での tRNA の配置も決定されていた。これらにおい て、P 部位での tRNA の配置は、高解像度で可視化した読み取り開始時の知見である、 fMet-tRNA-リボゾーム複合体での配置に一致している。今回、A および E 部位での tRNA の配置を、同様の正確さで決定した。A 部位での tRNA CCA 端末位置は、ペプチド結合 形成の前後で異なっている。転位後の P および E 部位での tRNA のアンチコドンの相対位 置がそうであるため、E 部位におけるコドン-アンチコドン相互作用が可能であると考えら れる。

4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

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34

著者、発行年 タイトル 出典

IDWR, 200 カンピロバクター感染症 IDWR, 2005, 第 19

週(5 月 9-15 日)

4.主な文献の要旨

収集した文献のうち、主要な文献について要旨を以下に示す。

Agrawal RK, et al, 2000

(大腸菌 70Sリボゾーム上でのエロンゲーションサイクルにおける tRNAの動きを可視化す

る)

Agrawal RK, Spahn CM, Penczek P, Grassucci RA, Nierhaus KH, Frank J.

J Cell Biol. 150(3):447-60. (2000)

転位前および転位後状態での tRNA-リボゾーム複合体結晶の 3 次元解析図は、17 オングス

トロームの解像度で再構成済みであった。転位前複合体における A および P 部位、および

転位後複合体における P および E 部位での tRNA の配置も決定されていた。これらにおい

て、P 部位での tRNA の配置は、高解像度で可視化した読み取り開始時の知見である、

fMet-tRNA-リボゾーム複合体での配置に一致している。今回、A および E 部位での tRNA

の配置を、同様の正確さで決定した。A 部位での tRNA の CCA 端末位置は、ペプチド結合

形成の前後で異なっている。転位後の P および E 部位での tRNA のアンチコドンの相対位

置がそうであるため、E 部位におけるコドン-アンチコドン相互作用が可能であると考えら

れる。

Page 2: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

35

Akhtar F et al., 2010

Prevalence and antibiogram studies of Salmonella enteritidis isolated from human and

poultry sources.

Pakistan Vet J, 30(1): 25-28,

家禽卵(240)、豚肉(85)、豚排泄物(100)、パン製品 (65)、下痢患者の排泄物(125)の総数 615

検体が、パキスタン国内で収集された。これらの検体から分離された S. enteritidis 分離菌

について、12 種類の抗菌剤に対する感受性を調べると、bacitracin、erythromycin および

novobiocin については 100% の耐性であった。

Angus, K.W., 1983

Cryprosporidiosis in man, domestic animalas and birds: a review.

Angus, K.W.

J. Roy. Soc. Med. 76 (1): 62- 70

"序:近年クリプトスポリジウム感染が問題視される中、改めてクリプトスポリジウムにつ

いてその研究史も含めて、1980 年初頭の知見をまとめた総説である。他のコクシジアと異

なる重要な点は、宿主特性が欠乏していることである。農場で飼育されている動物や入院

患者から分離されたクリプトスポリジウムを用いての交差伝播の結果は、クリプトスポリ

ジウムは“単一種属”であることを示唆している。もしそうであるならば、飼われている

家畜やペット類は、感染しやすいヒトへの感染源になっているかもしれない。

結論:多くのコクジアのように、クリプトスポリジウムは自然界に拡がっており、ヒトを

含む多くの生物に感染しているであろう。事実、任意にヒトを含む 10 種類の哺乳動物から

血清を採って、そのクリプトスポリジウムに対する抗体の有無を調査したところ、すべて

が抗体を含んでいることが示されている。クリプトスポリジウムの別の動物への移植実験

は、ウシやヒツジ、ブタで下痢や腸でのひどい出血を惹き起こすことが示されている。ウ

シやヒツジ、シカ、ヤギなどでは、他の既知の腸内病原菌が見当たらなくても、クリプト

スポリジウだけで突発性の下痢を起こすし、また、ウィルス性の下痢を併発すると重篤で

厄介なことになる。"

Page 3: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

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Anosa, G.N. & Okoro O.J., 2011

Anticoccidial activity of the methanolic extract of Musa paradisiaca root in chickens.

Anosa, G.N. & Okoro O.J.

Trop. Anim. Health Prod. 43 (1): 245-248

バナナMusa paradisiacaの根からメタノール抽出した物質がニワトリの盲腸コクシジウム

に対して薬剤活性があることを見つけた。生後 28 日目のヒナに Eimeria tenella のオーシ

ストを感染させ、1週間後に一部のヒナを解剖して感染を確認した。また、対照として、

一部のヒナにアンプロリウムを体重1kg 当たり 250 mg, 500mg, 1g と3段階に分けて別々

に与えた。もうひとつのコントロールとして、感染させたグループと感染させないグルー

プに対してその後特には何も与えないヒナも用意した。感染進行と処置に対する反応を評

価するために、典型的なコクシジウム症の臨床兆候や OPG、PCV などが採用された。感染

しているヒナにバナナ M. paradisiaca の根抽出物を与えたグル-プは、観察されていた臨

床兆候が次第に軽減され、OPG は減少し、PCV は次第に増加した。症状の回復は与える抽

出物の量に依存していた。生後 50 日目の段階で、抽出物を投与したグループ(1g/kg b.w.)

とアンプロリウム投与したグループ間では、平均 OPG と平均 PCV について有意の差は認

められなかった。急性の毒性も調べたが、バナナの根抽出物は体重1kg 当たり 4g 与えても

ニワトリに対して毒性を示さなかった。バナナの根抽出物はアンプロリウムにも匹敵する

有効な抗コクシジウム薬である。

Asai, T. et al., 2005

Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and

resistance in Esherichia colli isolated from the feces of food-producing animals in Japan.

Asai, T, kojima A, Harada K, Ishihara K, Takahashi T, Tamura Y,

Jpn J. Infect Dis; 58: 369-3672

2001 年度の薬剤使用量と大腸菌の耐性率について蓄種(ウシ、ブタ、ブロイラー、レイヤ

ー)ごとに外見的に健康な動物を用いて解析した。いずれの蓄種でも、使用量の多い薬剤

に対する耐性率が高い傾向にあることが認められた。従って、薬剤使用量は大腸菌の耐性

出現に寄与しているように思われる。

Page 4: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

37

Beers, K.W., et al., 1988

Physiological response of heat stressed broilers fed nicarbazin.

Beers, K.W., Raup, T.J., Bottje, W.G., Odom, T.W.

Poult Sci. 68 (3): 428-434

"熱ストレスを掛けたブロイラーの生理的応答を調べるために、2群の鶏それぞれに無添加

飼料と 125 ppm のナイカルバジンを含む飼料を与え、2つの実験が行われた。オス鶏に外

科的に頸動脈カテーテルを挿入し、胸部運動の変換器と直腸プローブを装着した。実験 1

では、鶏は適温(22.5℃、70%相対湿度[RH])から僅か 10 分のうちに熱ストレスが掛かる

ように高温状態(37℃、40〜50%RH)に移され、120 分間この環境に曝された。実験 2 で

は、鳥は適温から熱ストレス条件(38℃、68%RH)へ 4 時間余りかけて徐々に移され、さ

らに 1 時間この環境下に置かれた。心拍数、呼吸数、体温が各実験を通して記録され、動

脈血が酸塩基平衡と乳酸の測定のために採血された。 両方の実験とも、熱ストレスが掛か

っている間、ナイカルバジンを摂取した鶏は対照より高い体温(P< 0.05)と、低い CO2

分圧と炭酸水素塩濃度*(P< 0.05)を示した。熱多呼吸が両方の実験で観察されたものの、

実験 2 のナイカルバジン飼育鶏の熱ストレスの 後の1時間では呼吸数は低かった(P<

0.05)。実験2では、ナイカルバジン投薬鶏は、対照鶏よりも熱ストレスの間に高い心拍数

と血中乳酸値を示した(P< 0.05)。この研究の結果は、ナイカルバジンが熱ストレス鶏の

体温を上昇させることを示している。その作用機序は未だ不明であるが、この過温症は、

対照鶏に比べて、血液の酸塩基平衡や血中乳酸値、心拍数などに大きな偏差をもたらすこ

とになる。

………………..

* 炭酸水素塩濃度:下記の反応式での [H2CO3] と [HCO3―] の総和:

H2O +CO2 ⇔ H2CO3 ⇔ HCO3― + H+"

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Berglez Janette, et al, 2004

Analysis in Escherichia coli of Plasmodium変形体 falciparumマラリア dihydropteroate

synthase (DHPS) alleles implicated in resistance to sulfadoxine.

Berglez, Janette; Iliades, Peter; Sirawaraporn, Worachart; Coloe, Peter; Macreadie, Ian.

熱帯熱マラリア原虫のジヒドロプテロイン酸合成酵素の変異により、抗マラリア薬である

スルファドキシン耐性となる。スルファドキシンは、ジヒドロプテロイン酸合成の基質で

ある p-アミノベンゾエイト(パラアミノ安息香酸塩)と競合する。簡単なモデル系を使用

し、これらの変異の役割を評価するため、我々は熱帯熱マラリア原虫ジヒドロプテロイン

酸合成遺伝子の 6 つの関連対立遺伝子を大腸菌で発現させた。チミジン要求性のジヒドロ

プテロイン酸合成酵素破壊大腸菌株に各構築遺伝子を組み込み、チミジン要求性でなくな

ることで異種相補性となったことがわかるようにした。スルファドキシン存在下で、ワイ

ルドタイプのジヒドロプテロイン酸合成遺伝子を持つ株の成長は阻害され、5 種類の各変異

遺伝子を持つ株は正常に成長したことから、これらの変異が大腸菌にスルファドキシン耐

性をもたらせたと示唆される。さらに 12 種類のサルファ剤について調べたところ、様々な

反応がみられた。すべての株がスルファジアジン耐性であったが、ワイルドタイプ遺伝子

は他のすべてのサルファ剤について感受性を示した。3 種類の変異遺伝子は、ダプソーン(ア

フリカの新しい型のマラリアをターゲットにしている薬剤)耐性となった。すべての変異

遺伝子が、スルファクロロピリダジンとスルファセタミド感受性を維持していた。これら

の結果より、効果的なマラリア治療に新薬を試してみることを提案する。

Page 6: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

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Bertrand S, et al., 2005

Detection and characterization of tet(M) in tetracycline-resistant Listeria strains from

human and food-processing origins in Belgium and France

Sophie Bertrand, Geert Huys, Marc Yde, Klaas D’Haene, Florence Tardy, Martine

Vrints, Jean Swings and Jean-Marc Collard

Journal of Medical Microbiology (2005), 54, 1151–1156

本研究において、ヒト及び食品加工過程由来の Listeria 菌コレクション 241 株のうち、

Listeria monocytogenes 3 株、Listeria innocua 1 株が、tet(M)遺伝子の存在によるテトラ

サイクリン(TC)耐性を示した。配列解析により、2 株の tet(M)遺伝子は配列相同グルー

プ(SHG:sequence homology group) II に属することが分かった。SHG II は、これま

でに Staphylococcus aureus 及び乳酸菌で見出されている染色体にコードされる tet(M)遺

伝子を含むグループである。他の L. monocytogenes 2 株の tet(M)遺伝子は、接合性トラン

スポゾンの Tn916-Tn1545 ファミリーメンバーとの関連があり、Tn916 に関連した腸球菌

の tet(M)遺伝子を含有する SHG III と密接な関連があった。これらのトランスポゾンを有

する株のひとつは、Enterococcus faecalis の受容株 JH2-2 に tet(M)遺伝子を伝達すること

ができた。総合すると、これらの配列及び接合のデータにより、Listeria 菌による tet(M)

遺伝子の獲得は他のグラム陽性菌との連続的転移により引き起こされたという可能性が示

された。

Bricker E. et al.2005

Antibiotic treatment for Clostridium difficile-associated diarrhea in adults,

Cochrane Database Syst Rev. , Jan 25;(1).

C. difficile は、抗菌剤に関係する下痢や大腸炎の原因菌である。本レビューでは、C. difficile

の感染による下痢症(CDAD)に対する抗菌剤療法の効果を確立して、成人の CDAD に対す

る も効果的な抗菌剤療法を確認している。さらには、治療を通じて下痢症の原因となる

抗菌剤の使用停止の必要性についても認めている。

Page 7: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

40

Campbell, W.C., 2008

History of the discovery of sulfaquinoxyaline as a coccidiostat.

Campbell, W.C.

J. Parasitol., 94 (4): 934- 945

ローストチキンは特に日曜日のデナーに限って食卓に上る自慢の地位を占めていたが、西

洋では今や、それは毎日のメニューに含まれるありふれた料理のひとつに降格されてしま

った。こうなったのは、スルファキノキサリンのお蔭である。それは、1930 年代に人間の

医療にサルファ剤の導入があり、そこから巻き起こった有益な化学物質合成実施計画に起

源がある。その類の化学物質の臨床的使用は減ったにもかかわらず、その計画は第二次世

界大戦の間も絶えることはなかった。何種類かのサルファ剤がマラリアを発病する胞子虫

の寄生虫(マラリア原虫)に薬効があることは知られていた。しかし、臨床の治験はまだ

満足なものではなかった。やがて、血漿中で半減期の長いスルフォンアミドが、事実、抗

マラリア薬として有効であると考えられるようになった。戦時中に合成に成功したスルフ

ァキノキサリンはそのような化合物のひとつである。それは、ヒトのマラリアに実際に使

うには毒性が強すぎることが分かったが、別の胞子虫の寄生虫である、Eimeria 類に対す

る優れた薬剤であることが見つかった。Eimeria 類は鶏にコクシジウム症を引き起こす寄

生虫である。1948 年に、スルファキノキサリンは、家禽類のコクシジウム症の予防薬とし

て市場に導入された。それは、家禽の Eimeria 類に薬効を示す 初のスルフォンアミドで

はなかったが、病因の制御に成功し、この実績によって、この抗コクシジウム剤を家禽の

餌に常時混合するという予防法が確立された。このようにして、スルファキノキサリンは、

世界規模の鶏肉生産に大きなインパクトを与えることになった。それは、既に長いこと養

鶏の場での地位を他の薬剤に取って代わられているけれども、今でも、他の蓄種で使われ

ている。この論文は、現場で役に立つ薬剤としてのスルファキノキサリンの発見について

述べ、さらに、この発見が民間企業と研究機関との間のパートナーシップから芽生えた道

筋を検証する。

Page 8: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

41

Campbell, WC., 1977

The control of parasites: the role of drugs.

Cambell, WC.

Proc. Helm. Soc. Wash., 44: 17-28

薬学の視点から寄生虫の制御について考察した総説である。

1.家畜の寄生虫における薬剤の役割 2.ヒトの寄生虫における薬剤の役割

3.抗寄生虫剤の生化学的役割 4.薬剤に期待することは何か?

5.抗寄生虫剤の新薬開発はどうあるべきか?

Sulfonamides の抗菌作用が細菌の葉酸代謝の中間体、パラ-アミノ安息香酸(PABA)に

対する拮抗作用にあることが分かると、PABA のアナローグを使用しての臨床効果が試さ

れるようになった。その好例が 4-アミノ-2-塩素安息香酸である(Wyss et al. 1943)。実際、

そのようなアナローグはいくつかの細菌には有効であった。それに加えて、硫黄化合物や

サルファ剤が鶏のコクジウム症に効くことが知られていたので、同様の PABA アナローグ

の薬効がコクシジウム症に試された(Rogers et al. 1964)。細菌の場合とは対象的に、単に

効果があるばかりではなく、サルファ剤とは比較にならないほど、極めてよく効いたので

ある(その中からエトパベートが選抜され、市場に出され、抗コクシジウム剤として成功

を収めた)。これこそ、経験的に見つかっていた抗コクシジウム剤の活性様式の知識が準理

論的アプローチとして採用され、一つの薬剤のテストを促し、それが臨床的により高い薬

効をもっている薬剤の発見つながったのである。ただし、この理論的根拠は、コクシジア

の葉酸代謝が細菌のそれと同じであるという単なる仮定に止まっているに過ぎないことに

留意しておかねばならない。実際、この新薬の作用は元のそれとまったく同じと言うわけ

ではない。エトパベートの活性は、感染した鶏の餌に PABA を添加すれば、可逆的に相殺

されることも事実である;また、エトパベートはプテリジンと PABA の間の反応*を単純に

阻害することも可能性としてはありうる。しかしながら、エトパベートは第2段目の反応*

をブロックすることが可能性としてより高いと考えられている。即ち、PABA と競争して、

エトパベートはプテリジンと反応し、ジヒドロプテロイック酸のエトパベートアナローグ

を形成してしまい、このアナローグ(2-ethoxydihydropteric acid)が立体障害のためグル

タミン酸と結合してジヒドロ葉酸を形成することができなくなるというのである。(中略)

~葉酸代謝の第3のステップ*となるジヒドロ葉酸還元酵素の存在が 近コクシジアでも

検出されている(Wang et al. 1975)。ピリメタミンが家禽のコクシジウム症に効くことは

既に分かっていたが、この還元酵素の発見によって薬効の生化学的説明ができるようにな

った。(*印は報告書の本文を参照)。

Page 9: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

42

Caplan DM, Ivana S, Caplan ME, 2009

Susceptibility to antibiotics of Bacillus anthracis strains isolated in Romania.

Caplan DM, et al, 2009

(2009) Roum Arch Microbiol Immunol. 68(2):106-10.

2000 年から 2004 年にかけて分離された 21 株の炭疽菌、そのうち 16 は膿疱から、2 つは

血液培養から、そして 3 つは脊髄液から分離された菌株について、その抗生物質感受性を

検討した。そのうち 2 株は、つい 近まで治療の第一選択であったペニシリン類に耐性を

示した。このペニシリン耐性から分離された 2 例が治療抵抗性で、1 例は死の転帰を辿った

ことが説明される。2 例のペニシリン耐性菌についてはペニシリン G の MIC を調べ、0.5

μg/ml と 4μg/ml であったが対照株 34F2 では 0.015μg/ml 以下であった。21 例の炭疽菌

全てが第三世代セファロスポリンとトリメトプリムとスルファメトキサゾール合剤に耐性

を示したが、テトラサイクリン系、フルオロキノロン系には感受性であり、これらの感受

性の様相は、文献データとも一致していた。これらの株は、次のように抗生物質に感受性

をしめした:マクロライド系 13 株、リファンピシン 15 株、クロラムフェニコール 16 株、

ゲンタマイシン 21 株。ゲンタマイシンはフルオロキノロンと共に炭疽の治療に利用可能で

ある。フルオロキノロン(例えばシプロフロキサチン)は、感染初期、リンパ組織に菌が

入り込んだり、菌血症になる前に投与される場合は、治療の第一選択となり、菌の増殖や

浮腫形成や致死性毒素の産生を抑える事が出来る。

Catherine Liu et al. 2011

Clinical Practice Guidelines by the InfectiousDiseases Society of America for the

Treatment of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Infections in Adults and

Children,

Clinical Infectious Diseases , 52, e18–e55.

米国の the Infectious Diseases Society of America (IDSA)専門家委員会は、科学的根拠に

基づいて、MRSA に感染している患者の管理に関するガイドラインを作成している。そこ

では,Clindamycin、 Daptomycin、Linezolid、Quinupristin-Dalfopristin、Rifampin、

Telavancin、Tetracyclines、TMP-SMX および Vancomycin を用いる抗菌療法についてレ

ビューしている。

Page 10: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

43

Chapman H.D., et al., 2010

Forty years of monensin for the control of coccidiosis in poultry.

Chapman H.D., Jeffers T.K., Williams R.B.

Poult. Sci. 89(9): 1788- 1801

モネンシンは抗コクシジウム剤として 1971 年に米国で市場に導入された。当時、抗コクシ

ジウム症の薬剤に対する期待は芳しいものではなかった。それまでアンプロリウムは5、6

年よく使われていたが、その他の多くの化合物は耐性が獲得されてしまい、放棄された。

モネンシンが導入されるや薬剤効果が上り,今日に至るもなお市販のほとんどのブロイラ

ー飼育にはモネンシンが抗コクシジウム剤として広く使われている。家禽にとどまらず、

モネンシンは観賞用の鳥類やヒツジ、ウシなどのコクシジウム症を制御するものとしても

使われている。獣医学の歴史からみても、事実、開発されたどの薬剤よりも、多くの動物

がモネンシンに類するイオノフォアによって、抑制されるに至っている。本レビューでは,

モネンシンの発見,作用機序,効能に加えて,市場における使用,薬剤耐性、毒性、薬理

学と環境への負荷、コクシジウム症に対する宿主の免疫獲得,及び他の鳥類への影響など

家禽産業にとって重要な事柄について論議している。

Page 11: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

44

Chapman, H. D., 2001

Use of anticoccidial drugs in broiler chickens in the USA: analysis for the years 1995 to

1999.

Chapman, H. D.

Poult.Sci. 80 (5): 572-80

1995~1999 年にかけて株式会社 Agri Stats が米国で収集したデータを評価して、ブロイ

ラー養鶏場で採用されている抗コクシジウム剤投与プログラムの型やその頻度と期間、鶏

の仕上がり具合との関係などを整理した。情報としては、5つの薬剤投与型(予備、初期、

成長期、 初の休止、 後の中止)が用意されていた。12 種類余りの抗コクシジウム剤が

使われおり、40 通り以上のプログラムが確認された。7割以上はイオノフォア(ION)が

使われていたが、化学物質としてはナイカルバジンの使用が も多かった。一般的なプロ

グラムは、初期と成長期に一貫して同じイオ ION(主にサリノマイシン)を投与するもの

であった。また、初期に化合物(主にナイカルバジン)が投与され、成長期に ION が続く

プログラム、あるいは異なる2種類の ION がそれぞれ初期と成長期に投与されるプログラ

ムもあった。明らかに季節毎にプログラムが変わっていた。また、薬品交代の順番には一

貫性がないままに異なるプログラムが採用されてもいた。単一の ION が終始使われようが、

初めに化学物質続いて ION が使われようが、鶏が体重 2.27kg に到達する日数にはほとん

ど変わりは無かった。しかし、後者の死亡率は明らかに高かった。調査 終年の 1999 年に

は、カロリー変換率と死亡率は、化学物質―ION のプログラムを採用している養鶏場でよ

り高かった。それまでの4年間は、化学物質―ION プログラムの採用は 40%ほどであった

が、その年は 40%を超えていた。鶏の体重増加に関する限り、体重が 1.5~2.0kg、2.0~2.5kg

あるいは 2.5kg 以上になることと、異なるプログラムが採用される期間や頻度は無関係で

あった。米国では、ニカルバジンとサリノマイシンの使用に顕著な地域差が認められた。

いろいろな要素が絡むとは言え、ナイカルバジンが 50 年以上にわたって、家禽類における

コクシジウム症、寄生原生動物の感染を制御するために用いられていることは注目に値す

る。

Page 12: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

45

Chapman, H.D., 1984a

Drug resistance in avian coccidia (a review).

Chapman, H.D.

Vet. Parasitol. 15: 11-27

集約的養鶏場では、餌の中に抗コクシジウム剤が使われている。米国だけでも、1979 年に

は 4 x 109 羽のニワトリに抗コクシジウム剤が使われ、その費用は 60,000,000 ドル

を超えた。よりすぐれた新薬が開発されており、それが餌代に跳ね返り、イギリスでは、

その対価は餌代の 7.3%に達すると見積もられている。高騰する研究開発費と安全性を求め

る声に押されて、企業は経営難に陥りがちである。事実、イギリスでは、この 10 年間に5

つの企業がこの分野から撤退している。新薬と耐性株の発生はイタチごっこの状態にあり、

長期に渡って薬剤によるコクシジアを抑制することは難しいのではないかとの懸念が広が

っている(中略)。薬剤耐性は、今や、家禽類のコクシジアを制御する薬剤での欠陥の主た

る要因と認識されている。この論文では、先ずコクシジウム類の耐性について、生物学的、

生化学的および遺伝学的観点から振り返ってみる。その上で、コクシジウムの耐性の本質

を理解するに当たって妨げとなっているいくつかの問題について論議する。

アンプロリウムに関する記述は少ないが拾ってみる。抗コクシジウム剤の作用機作は多

岐に渡るが、アンプロリウムは補酵素系に対する効果とみなされている。アンプロリウム

に対する耐性は標的の修飾によるのではないかと思われる。盲腸コクシジウムのアンプロ

リウム耐性株に由来するシゾントのチアミン輸送系は、感受性の高い正常株と比べると、

アンプロリウムに対する親和性が減少している (James, 1980)。直接の証拠はないが、こ

れは分子レベルでの変化を反映しているように思われる。"

Page 13: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

46

Chapman, H.D., 1984b

Development by genetic recombination of a line of Eimeria tenella resistant to

robenidine, decoquinate and amprolium.

Chapman, H.D.

Z. Parasitenkd. 70(4): 437- 441

ロベニジン、デコキネート、アンプロリウムと3種の抗コクシジウム剤に耐性をもつコク

シジウム Eimeria tenella 株が遺伝子組み換えによって作られた。この株とクロピドールに

耐性を持つ株との間、或いはア-プリノシドとハロフギノンに耐性をもつ株との間での交

雑を試みたが、その雑種株を得ることはできなかった。ア-プリノシドとハロフギノンに

耐性をもつ株との間での組み換えでは病原性が失われた。

Chapman, H.D., 1989

Sensitivity of field isolates of Eimeria tenella to anticoccidial drugs in the chicken.

Chapman, H.D.

Res. Vet. Sci. 47 (1): 125- 128

盲腸コクシジウム Eimeria tenella の 30 株の分離株を英国内各地のブロイラーとブリーダ

ーの養鶏場から採取して、抗コクシジウム剤に対する感受性を調べた。30 株すべてがロベ

ニジンに、28 株がメチルベンゾクエートに、25 株がクロピドールに、21 株がニカルバジ

ンに感受性を示した。ほとんどの分離株がアンプロリウムとジニトルミドに耐性あるいは

部分耐性であった。

Page 14: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

47

Chopra I and Roberts MC, 2001

Tetracycline Antibiotics: Mode of Action, Applications, Molecular Biology, and

Epidemiology of Bacterial Resistance (テトラサイクリン系抗生物質:耐性菌の作用機序、

疾患適用、分子生物学、及び疫学)

Chopra I and Roberts MC

Microbiology and Molecular Biology Reviews, 65(2):232-260 (2001)

2001 年当時の知見による、テトラサイクリン系抗生物質に関する広範なレビュー。目次の

主要項目は、以下の通り。

・序論

・テトラサイクリン系抗生物質の発見と開発

・構造-活性相関

・作用機序

・テトラサイクリン系抗生物質に対する薬剤耐性

遺伝子/生化学的耐性メカニズム、耐性遺伝子発現の調節、耐性発生状況、tet 遺伝子の分

布と移動、他の耐性因子の分布

・テトラサイクリン系抗生物質の適用

ヒト投与薬物動態、ヒト予防治療、動物薬、動物成長促進剤、その他

・テトラサイクリン系抗生物質の使用量

ヒト治療・予防で起こる耐性、動物薬、成長促進剤で起こる耐性

・耐性の亢進とその意味合い

・結論

・将来の方向性"

Page 15: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

48

Citron, D.M. et al., 2003

In Vitro Activities of Ramoplanin, Teicoplanin, Vancomycin, Linezolid, Bacitracin, and

Four Other Antimicrobials against Intestinal Anaerobic Bacteria antimicrobial agents

and chemotherapy,47(7), 2334–2338

腸管内に生息する嫌気性菌に対して弱い活性を示す抗菌剤は、VRE や Clostridium

difficile のコロニー形成に対する抵抗性に関係する正常な腸管内嫌気性細菌叢を保存する。

そこで、Citron らは、ヒトの腸管から分離されたグラム陽性菌 300 種およびグラム陰性菌

54 種に対して 9 種類の抗菌剤(Ramoplanin、Teicoplanin 、Vancomycin 、Bacitracin、

Linezolid 、Cefoxitin 、Ampicillin 、Clindamycin 、Metronidazole)の in viro 活性を寒

天希釈法(agar dilution method)によって調べた。Ramoplanin は C. difficile および

vancomycin-耐性菌を含むその他の腸内グラム陽性嫌気性細菌に対して優れた活性示した

が、多くのグラム陰性嫌気性細菌に対しては弱い活性しか示さなかった。従って、

Ramoplanin は、糞便叢の正常な生態学的均衡に影響しないようなより弱い作用しか有し

ていない。

Connell SR, et al, 2003

Ribosomal Protection Proteins and Their Mechanism of Tetracycline Resistance (リボゾ

ーム保護タンパク種と、そのテトラサイクリン耐性メカニズム)

Connell SR, Tracz DM, Nierhaus KH, Taylor DE.

Antimicrob Agents Chemother 47(12):3675-81. (2003)

リボゾーム保護タンパク(RPP)は、グラム陽性菌、陰性菌共にテトラサイクリン耐性亢

進に重要な役割を担っている。真性細菌類におけるその遺伝子分布については、Chopra と

Roberts の広範なレビューがある。

このレビューも主として RPP を扱うが、テトラサイクリン耐性メカニズムは非常にバラ

エティに富んでいて、(1)薬剤排出機構;グラム陽性、陰性菌に存在、(2)Bacteroid に見出

される、テトラサイクリン酵素分解、(3)Propionibacterium acnes と Helicobacter Pylori

に見出される rRNA 変異、および(4)既知のどの耐性遺伝子とも似ていない未確認メカニズ

ム宿主、がある。

このレビューではリボゾーム、テトラサイクリンおよびリボゾーム保護タンパクの 近の

研究の進展を扱う。

Page 16: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

49

Cuckler, A.C. et al., 1955

Antiparacitic activity of substituted carbanilide complexes

Cuckler, A.C., Malanga, C.M., Basso, A.J., O'niell, R.C.

Science, 122: 244-245

ナイカルバジンに関する 初の論文である。製法と抗コクシジウム活性について報告して

いる。4,4’-ジニトロカルバニリッド(DNC)と等量の 2-ハイドロキシ-4,6-ジメチルピリ

ミジン(HDP)からなる複合体で、ナイカルバジンと命名された。この複合体は、飼料中

の濃度 0.01%で、Eimeria tenella, E. acervulina, E. necatrix, E. meleagrimitis,E.

gallopavonis に対して薬効があることが確認された。他に、鶏の Plasmodium gallinaceum

(マラリア原虫) やマウスの Trichomonas foetus (トリコモナス)、七面鳥の Histomonas

maleagridis (ヒストモナス:黒頭病)などに対する薬効も検証したが、マラリア原虫に弱

い活性を示しただけであった。DHC と HDP の単純な混合物には活性がないが、複合体は

DHC 単独の約 10 倍の活性を示す。室温でメタノールを溶媒にして HDP とやや溶けにくい

DHC を 30 分あまり撹拌すると複合体が形成され、フィルターに掛けると、等量の DHC

と HDP からなる複合体が調整される。確かな証拠はないが、DHC の尿素基と HDP の OH

基の間に水素結合が形成されて、複合体となるようである。HDP の代わりに

3-amino-as-triazine を用いても同様の活性増が認められた。

Page 17: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

50

Cuckler, A.C. et al., 1960

Amprolium. 1. Efficacy for coccidian in chickens.

Cuckler, A.C., Garzillo, M., Malanga, C.M., McManus, E.C.

Poult.Sci. 39: 124-129

アンプロリウムの予防的な抗コクシジウム活性が、感染しているニワトリから採取された

7種類 44 株のコクシジアについて確認された。16,000 羽を越えるニワトリを使い、標準的

な手法で、アンプロリウムの抗コクシジウム剤としてのスペクトルや効力、強さなどを調

べ、それを市販されているいくつかの抗コクシジウム剤と比較した。アンプロリウムは、

臨床的にも経済的にも も重要なコクシジアである盲腸コクシジウム Eimeria tenella と

E.necatrix に有効であり、高い薬効があった。アンプロリウムは、臨床的にはそれほど重

視されないが小腸コクシジウム E. acervulina や E.maxima、E.brunetti にも有効であった

が、効力はやや低かった。アンプロリウムは、臨床的にやっかいな4種類の盲腸および小

腸コクシジアの混合感染に対して、他の抗コクシジウム剤よりも強い効力を発揮した。ア

ンプロリウムは、可逆的なチアミン阻害機構によって、抗コクシジウム剤として働くよう

に思われる。アンプロリウムを盲腸コクシジアの 10 株に有効濃度より低い濃度で4ライフ

サイクル曝しても顕著な耐性は獲得されなかった。

Page 18: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

51

Danforth, H. D., et al., 1997

Evaluation of the efficacy of Eimeria maxima oocyst immunization with different

strains of day-old broiler and roaster chickens.

Danforth, H. D., Watkins, K., Martin, A., Dekich, M.

Avian Dis 41 (4): 792-801

"薬剤耐性を獲得している Eimeria maxima の野生株を用いて、生後1日目の3系統のオス

とメスのブロイラーとロースターに免疫を施し、その成果がバッテリー飼育とフロアーペ

ン飼育での免疫化試験で評価された。1日齢のヒナに1羽当たり 2,500 個のオーシストで

免疫を施し、生後 10 日目にヒナに1羽当たり 25,000 個のオーシストを使って、2つの離

れたバッテリー試験でその免疫力に挑戦した結果、3系統の鶏あるいは性の違いによる免

疫力に差は認められなかった。同じ野生株を用いて免疫を施されたすべての鶏は、免疫を

付けなかった鶏と比較して、7日後の体重増加や中腸出血評点に対して有意の効果を示し

た。2つの離れたフロアペンでの試験では、同様にして免疫を施され、また生後 21 日目の

ヒナに1羽当たり等量の 25,000 個のオーシストを使って挑戦したブロイラーのひとつの系

統(系統2)は、免疫を付けなかった鶏と比較して、7日後の体重増加や中腸出血評点で

顕著な効果を示した。この同じフロアペンでの実験で E. maxima で免疫を施し、次に3通

りの抗コクシジウム剤シャトル投与(初期にナラシンとナイカルバジン 90g/t(grams/ton:

餌1トン当たり 90g の薬剤)そして 成長期にナラシン 72g/t +ロザルゾン 45.4g/t; 初期

にナイカルバジン 113g/t そして成長期にナラシン 72g/t +ロザルゾン 45.4g/t; 初期と成

長期共にモネンシン 100g/t)を実施したが、これらの薬剤投与のシャトルプログラムは、

E. maxima で挑戦して上記の同じパラメータを測定する限り、誘導された免疫に干渉を示

さなかった。フロアペンでの免疫を施された複数の鶏のグループの間では、試行的に中止

した時点で(45 日齢)の体重増加に有意の差は観察されなかった。

(これらのうちのいずれの効果が寄生虫自体にどのように影響するのか明らかではないが、

ナイカルバジンは原生動物 Eimeria のライフサイクルにおいて異なる効果を有する(無性

生殖および有性生殖を共に直接阻害する)この部分未完"

Page 19: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

52

Daugherty, J.W. & Herrick, C.A., 1952

Cecal coccidiosis and carbohydrate metabolism in chikens.

Daugherty, J.W. & Herrick, C.A.

J. Parasitol. 38: 299-304

ニワトリがコクシジウムに感染すると、筋肉中のグリコーゲンが減少し、血糖値が上がる

ことについて議論があった。 Pratt は、この現象を出血がその要因であると説明していた。

そこで、著者は、脳組織のホモジネートと盲腸粘膜を用いて、急性の盲腸コクシジウム感

染が宿主の糖代謝に与える影響を調べた。感染・非感染に拘わらず、脳組織でグルコース

の代謝量に変化はなかった。これに盲腸粘膜を加えると、感染したものでは、糖代謝が抑

えられた。代謝量は CO2 発生量をもって測定している。この実験結果から、同定はできな

かったが、感染した盲腸には何か糖代謝(糖を基質とする呼吸)を抑える物質が含まれて

いると推定した。本研究は、後年、小腸での特異的なビタミン B1 吸収の機序解明の糸口と

して評価された。コクシジウムに感染した小腸から採った粘膜のビタミン B1(チアミン)

含量が少なかったので、感染していないものと比べて糖代謝が低く抑えられたのであろう。

糖代謝を抑える物質が潜んでいたのではなく、促進するチアミンを欠いていたのである。"

Delsol AA, Anjum M, Woodward MJ, Sunderland J, Roe JM.

The effect of chlortetracycline treatment and its subsequent withdrawal on

multi-resistant Salmonella enterica serovar Typhimurium DT104 and commensal

Escherichia coli in the pig.

Delsol AA, Anjum M, Woodward MJ, Sunderland J, Roe JM.

J. Appl. Microbiol. 2003; 95(6):1226-1234

(方法および結果)S. Typhimurium DT104 は抗生剤治療に先立ち、すべてのブタに経口

投与され、自然の大腸菌とともに観察された。クロルテトラサイクリン治療群の方が非治

療群より S. Typhimurium DT104 の数が多かった。これは抗生剤高用量投与群で、投与中

止後 6 週間まで継続した。この群では、クロルテトラサイクリンに対する大腸菌の MIC が

16mg/L 以上のものが 30%、50mg/L 以上のものが 10%、投与中止後増加した。低用量群で

はこの傾向は定かでなかった。PCR で同定した主要耐性遺伝子は、tetA、tetB および tetC

であった。HPLC で測定した糞中のクロルテトラサイクリン濃度は、投与中は 80μg/L に

達した。

(結論)クロルテトラサイクリン治療は、現行の中止期間を越えて耐性腸内細菌の比率を

増大させる。

Page 20: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

53

Duckworth Georgia J. and J. Zoe Jordens, 1990

Adherence and survival properties of an epidemic methicillin - resistant strain of

Staphylococcus aureus compared with those of methicillin-sensitive strains

Georgia J. Duckworth and J. Zoe Jordens

Journal of Medical Microbiology Vol. 32 (1990), 195-200

流行性メシチリン耐性 Staphylococcus aureus-1(EMRSA-1)について、HEp2 細胞及び

フィブロネクチンへの接着性、及びその formica(耐熱性合成樹脂)ブロック上での生存性

を、S. aureus のメシチリン感受性株と比較した。EMRSA-1 の HEp2 細胞及びフィブロネ

クチンへの結合性は、試験した他の S. aureus 株よりも低かったが、formica ブロック上で

の生存性は、生存性が低い“Oxford”株を除く全ての株と同程度(10~14 日後に回復可能)

であった。

Dudeja P.K, et al., 2001

Mechanism of thiamine uptake by human jejunal brush-border membrane vesicles.

Dudeja P.K, Tyagi S., Kavilaveettil R.J., Gill R., Said, H.M.

Am. J. Physiol. 281 (3): Pt.1: C786-C792

水溶性のチアミン(ビタミン B1)は細胞の働きや発生あるいは成長に必須の成分である。

チアミン欠乏はさまざまな条件下で生じ、重大な病気を引き起こす。しかし、ヒト小腸に

おけるチアミンの吸収機構は殆んど解っていない。本研究の目的はヒト小腸刷子縁膜

(BBM)におけるチアミンの輸送機構を性格付けることである。臓器提供者の小腸から分

離した BBM 小胞 (BBMV) を用いて下記のことが明らかにされた。1)チアミンの取り込み

は Na+とは無関係で、H+勾配(pH5.5 中~pH7.5 外)により著しく促進される;2) 陽イ

オン輸送阻害剤アミロライドによって拮抗的に阻害される(阻害定数 0.12mM);3) 溶媒の

温度と浸透圧に敏感である;4) チアミンの構造類似体(アンプロリウム、オキシチアミン、

ピリチアミン)は著しく阻害したが,構造的に類似性のない有機陽イオン(テトラエチル

アンモニウム、N-メチルニコチンアミド、またはコリン)では阻害されない;5) ATP を

BBMV の内部あるいは外側に添加しても取り込みに影響はない。

以上の結果から、ヒト小腸におけるチアミン吸収は、アンプロリウムによって顕著に阻害

されることを含め、Na+非依存性、pH 依存性、アミロライド感受性などがあり、電気的

中性キャリアーによって媒介されることなどが示唆された。"

Page 21: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

54

Dutta, G.N., et al., 1983

Susceptibility of clostridia from farm animals to 21 antimicrobial agents including some

used for growth promotion.

J Antimicrob Chemother. , 12:347-56,

21 種類の抗菌物質に対する Clostridium(豚、牛及び家禽の盲腸から分離された 18

Clostridium 種の 68 株)の感受性を調べ、それぞれ MIC を決定した。臨床で用いられる

抗菌剤の内、 in vitro では chloramphenicol が も活性が高く、 penicillin G、

lincosamides および tetracycline がその後に続いた。Avoparcin、 carbadox,、monensin、

nitrovin および virginiamycin は、 も効果的な成長促進用抗菌剤であった。多くの

clostridial 種は flavomycin に対して自然耐性を有していた。 Cl. sporogenes は、

bacitracin、tiamulin、incosamides および virginiamycin component M.に対して自然耐

性を有していた。

Edgar, S.A., et al., 1944

Glycogen in the cycle of the coccidium Eimeiria tenella.

Edgar, S.A., Herrick, C.A., Fraster, L.A.

Trans. Am. Microscop. Soc. 63: 199-202

盲腸コクシジウム Eimeiria tenella の生活環におけるグリコーゲンの消長を初めて観察し

た。グリコーゲンはマホガニーブラウンとヨードで染色し、同定した。グリコーゲンは

初大配偶子母細胞の発生過程で出現し、その発生に伴って増加する。一方、シゾントやメ

ロゾイトのステージでグリコーゲンはほとんど認められない。スポロゾイトのステージで

は僅かに認められた。一方、小配偶子母細胞の発生過程ではグリコーゲンはほとんど認め

られない。これらのことは、自前のエネルギー源を要するステージと、宿主のエネルギー

源に頼ればよい時期があることを示唆している。糖代謝にチアミン関与の必要性を窺わせ

る記述がある。

Page 22: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

55

Farrington M., et al, 1992

Resistance to desiccation and skin fatty acids in outbreak strains of methiciIIin -

resistant Staphylococcus aureus

M. Farrington, N. Brenwald, D. Haines And E. Walpole

3 グループのメシチリン耐性 Staphylococcus aureus(MRSA)株及びコントロール株につ

いて、乾燥及び皮膚脂肪酸への耐性を調べた。

乾燥耐性は、綿毛布に菌を接種後、温度 22~25℃、湿度 42~54%で、間隔をおいて 長

79 日間の生存を調べた。新生児集中管理室(SCBU:special care baby unit)における大

規模発生(職員の手から MRSA が単離されたが、環境中には見出されなかった)由来の菌

は、広範囲の環境汚染が明らかになった隔離病棟(burns unit)由来の株に比べて、乾燥に

対して著しく弱かった。同じ病院でも大規模発生が見られなかった他の病棟由来の MRSA

株は、不均一な結果を示した。

寒天希釈法による脂肪酸への耐性試験では、株の起源による関連は見られなかった。MRSA

の流行株には比較的乾燥に弱いものがあり、これらの株が手指経由で SCBU に広くまん延

する能力は、皮膚脂肪酸に対する耐性増加では説明がつかなかった。

FDA、2003

Guidance for Industry Evaluating the Safety of Antimicrobial New Animal Drugs with

Regard to Their Microbiological Effects on Bacteria of Human Health Concern (米国

FDA: 産業向けガイダンス ヒト健康への脅威となるバクテリアに対する細菌学的影響の

観点から新規動物抗菌薬の安全性を評価する)

FDA 動物薬センター

この報告書では、ヒト健康への脅威となるバクテリアに対する細菌学的影響の観点から、

新規動物抗菌薬の安全性を評価するにあたり、どういう方法が良いか検討している。本文

の目次は以下の通りである。

Ⅰ. はじめに

Ⅱ. ガイダンスの扱う範囲

Ⅲ. リスク分析の方法論

Ⅳ. ハザードの特定

Ⅴ. 定量的抗菌薬耐性リスク評価(放出・暴露・帰結評価、リスクの見積もり)

Ⅵ. 抗菌薬耐性リスクマネジメントに関する考察

Ⅶ. リスクマネジメント戦略の適用

Page 23: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

56

Ⅷ. 食品の安全に対する細菌汚染の影響評価法まとめ

Gebhart,C.J. et al., 1985

In Vitro Activities of 47 Antimicrobial Agents Against Three Campylobacter spp. from

Pigs.

Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 27, 55-59,

増殖性腸炎の豚から分離された 30 種の Campylobacter に対して 47 種の抗菌剤の in vitro

活性を寒天希釈法によって調べたところ、Carbadox、 furazolidone、nitrofurantoin、

gentamicin、および dimetridazole が も活性有しており、3 種類の Campylobacter spp.

に対する MIC for 50% of the isolates は 2 ug/mL もしくはそれ以下であったが、

Trimethoprim-sulfamethoxazole 、 cefazolin 、 sulfachloropyridazine 、 novobiocin,

vancomycin、sulfathiazole、cyclohexamide、bacitracin、p-arsanilic acid および colistin

は活性が も低く MICs for 50% は 16-128 ug/mL であった。

Griffin MO, et al, 2010

Tetracyclines: a pleitropic family of compounds with promising therapeutic properties.

Review of the literature (有望な治療特性を持つ多環化合物ファミリー。文献レビュー)

Griffin MO, Fricovsky E, Ceballos G, Villarreal F.

Am J Physiol Cell Physiol. 299(3):C539-48.

1948 年にクロルテトラサイクリン導入されて以来、テトラサイクリンはリケッチア、クラ

ム陽性菌、グラム陰性菌など様々な病原体に対し高い効果を発揮し、広域抗菌スペクトル

抗生物質として知られた。その作用メカニズムは、細菌の 30S リボゾームに結合してタン

パク合成を阻害すためと考えられる。また、抗マラリア薬としても有効である。時が経つ

につれ、テトラサイクリンの他の「保護」作用が判明してきた。ミノサイクリンはシグナ

ル伝達系対する特異な効果により、抗アポトーシス薬として期待されている。ドキシサイ

クリンは、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤として、歯肉炎のような組織破壊作用

の治療に役立つ。他にも酸素ラジカルスカベンジャー作用、抗炎症作用など、様々な効能

が多くの文献によって明らかになっている。このレビューは、こうしたテトラサイクリン

の多彩なメカニズム及び疾患応用可能性をまとめたものである。

Page 24: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

57

Gustafsson I, et al, 2003

Bacteria with increased mutation frequency and antibiotic resistance are enriched in

the commensal flora of patients with high antibiotic usage (高用量の抗生物質投与を受け

ている患者の腸内共生フロラ中には、突然変異頻度、抗菌剤耐性が亢進している菌が増え

ている)

Gustafsson I, Sjolund M, Torell E, Johannesson M, Engstrand L, Cars O, and Andersson

DI, Journal of Antimicrobial Chemotherapy 52, 645.650 (2003)

長期の抗生物質投与が、ヒトの腸(大腸菌、腸内球菌)、咽頭(溶連菌)、鼻孔(コアグラ

ーゼ陰性ぶどう球菌)といった細菌叢の薬剤耐性および変異に与える影響を調べた。高用

量の抗生物質投与を受けている患者から分離した菌は、対照と比べ明確な耐性亢進と、少

しではあるが有意の変異亢進を示した。大腸菌、腸内球菌、ぶどう球菌の変異頻度の上昇

平均計算値はそれぞれ、3 倍、1.8 倍、および 1.5 倍であった(P=0.0001, 0.016,0.012)。

溶連菌では、患者群と対照群間で、ストレプトマイシンでは有意差(P=0.024)があったが、

リファンピシンでは有意差はなかった(P=0.74)。

Gyles CL., 2008

Antimicrobial resistance in selected bacteria from poultry. (食禽から分離された菌の抗菌

剤耐性)

Gyles CL.

Anim Health Res Rev. 2008 Dec;9(2):149-58.

鶏および七面鳥から採取したサルモネラ、カンピロバクター、大腸菌の抗菌剤耐性(AMR)

の状況のレビューである。サルモネラに関しては、AMR 頻度は七面鳥の方が鶏より高かっ

た。AMR は同じ菌株中で、或いは水平伝播での感染が確認され、セファロスポリナーゼ遺

伝子を含むプラスミドの拡散が懸念されている。フルオロキノロン耐性は一般に低い。カ

ンピロバクターについては、テトラサイクリン耐性は中程度ないし高頻度の出現率で、キ

ノロン/フルオロキノロンでは低頻度から高頻度までみられ、マクロライドでは低かった。

国によっては高いフルオロキノロン耐性が見られた。病原性鳥大腸菌は特にテトラサイク

リン、ストレプトマイシン、スルホンアミドに高い耐性を示した。プラスミドが媒介する

耐性は普通に見られる。高レベルのシプロフロクサチン耐性が中国で報告されている。イ

ンテグロンが関与する耐性は、サルモネラと大腸菌では普通に見られたが、カンピロバク

ターでは見出されていない。

Page 25: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

58

Harish BN, Menezes GA., 2011

(チフス性サルモネラの抗菌剤耐性)

Harish BN, Menezes GA.

Indian J Med Microbiol.;29(3):223-9. (2011)

サルモネラ感染症は世界中での重要な公衆衛生問題である。地球規模で、サルモネラ患者

は毎年 30 億人に上る。WHO は毎年のチフス患者を 2170 万人(死者 21 万 7 千人)、パラ

チフス患者を 540 万人と見積もっている。南アジアと東南アジアの乳児、幼児および青少

年が、病気の影響を一番強く受けている。チフスおよびパラチフス A、B を含む腸管感染症

では、検査の感受性試験結果が出る前に治療を始める必要が往々にしてある。それゆえ治

療開始前に選択肢とあり得る問題点を理解しておくことが重要である。クロラムフェニコ

ール、アンピシリンおよびトリメトプリムに対する広範な耐性菌の出現と蔓延以来、シプ

ロフロクサチンが第一選択薬となっているが、その耐性菌出現は増加している。チフス性

サルモネラの MIC 増加および新世代キノロン剤への耐性増加報告が、治療が失敗する可能

性への懸念をかき立て、新規、代替抗生物質の必要性を喚起している。腸管感染症治療に

利用可能な他の選択肢としては、広域セファロスポリンとアジスロマイシンがあるが、チ

フス性サルモネラでの広域β-ラクタマーゼの出現が新たなチャレンジとなっている。アジ

スロマイシンについても、すでに耐性のため治療に失敗した報告が、わずかではあるが存

在する。このレビューは我々のセンターでの研究結果と文献をもとに、チフス性サルモネ

ラの抗菌剤耐性の歴史と 近の傾向をまとめたものである。

Harris, JE and Pinn, PA, 1985

Bacitracin-resistant mutants of a mesophilic Methanobacterium species.

Archives of Microbiology, 143 (2), 151-153,

メタン菌 Methanobacterium strain FR-2 は、バシトラシンに耐性であり、野生株の 8 to 16

倍の MIC を有し、その自然突然変異率はおよそ 10-7 であった。メタン菌は、ヒトの病原

菌ではない。また、Methanobacterium strain FR-2 のバシトラシン耐性は、ナイシンに対

する交差耐性を与えることが分かった。

Page 26: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

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Hemsley, L. A., 1964

Experiences of coccidiosis in young chicks fed a coccidiostat with particular reference of

coccidiosis in broiler chickens in the south of England 1961-1964.

Hemsley, L. A.

Vet., Rec. 76: 1432- 1436

1961 年1月~1964 年3月までの間に英国南部で発生したコクシジウム症について報告し

ている。ブロイラー群の3%がコクシジウム症に罹っていた。死亡率の調査は 14 の群につ

いて行われ、コクシジウム症による死亡は飼育されているニワトリの 0.04%であった。

も広く使用されている抗コクシジウム剤はアンプロリウムで、コクシジウム症のほとんど

はこの予防薬を用いているところで発生していた。その病原体は圧倒的にEimeria brunetti

であった。E. necatrix が病原となっているコクシジウム症は、ジアヴェリジンとサルファ

キノキサリンの両方を餌に混ぜたものを与えている群で起こっていた。コクシジウム症は

通常夏の終わりから秋口にかけて起こり、 も感染率が高いのは4~6週目のヒナであっ

た。エトパベートが市場に出る直前の状況を捉えた貴重な調査である。

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Hemsley, L. A., 1964

Experiences of coccidiosis in young chicks fed a coccidiostat with particular reference of

coccidiosis in broiler chickens in the south of England 1961-1964.

Hemsley, L. A.

Vet., Rec. 76: 1432-1436

1961 年1月~1964 年3月までの間に英国南部で発生したコクシジウム症について報告し

ている。ブロイラー群の3%がコクシジウム症に罹っていた。死亡率の調査は 14 の群につ

いて行われ、コクシジウム症による死亡は飼育されているニワトリの 0.04%であった。

も広く使用されている抗コクシジウム剤はアンプロリウムで、コクシジウム症のほとんど

はこの予防薬を用いているところで発生していた。その病原体は圧倒的にEimeria brunetti

であった。アンプロリウムが導入される以前はこのようなことはなかった。恐らくそれま

で広く使われていたナイカルバジンが Eimeria brunetti によく効いていたためと思われる。

その一方で、ナイカルバジンに対して耐性をもつ E. tenella 株の発生が初めて見つかった。

ともあれ、アンプロリウムにエトパベートとサファキノキサリンを加えた合剤を使用して

いる群では、Eimeria brunetti によるコクシジウム症から開放されていた。E. necatrix が

病原となっているコクシジウム症は、ジアヴェリジンとサルファキノキサリンの両方を餌

に混ぜたものを与えている群で起こっていた。コクシジウム症は通常夏の終わりから秋口

にかけて起こり、 も感染率が高いのは4~6週目のヒナであった。

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Hemsley, L.A., 1964

Experiences of coccidios in young chicks fed a coccidiostat with particular reference of

coccidiosis in broiler chickens in the south of England 1961-1964.

Hemsley, L.A.

Vet., Rec. 76, 1432-1436

1961 年1月~1964 年3月までの間に英国南部で発生したコクシジウム症について報告し

ている。ブロイラー群の3%がコクシジウム症に罹っていた。死亡率の調査は 14 の群につ

いて行われ、コクシジウム症による死亡は飼育されているニワトリの 0.04%であった。

も広く使用されている抗コクシジウム剤はアンプロリウムで、コクシジウム症のほとんど

はこの予防薬を用いているところで発生していた。その病原体は圧倒的にEimeria brunetti

であった。E. necatrix が病原となっているコクシジウム症は、ジアヴェリジンとサルファ

キノキサリンの両方を餌に混ぜたものを与えている群で起こっていた。コクシジウム症は

通常夏の終わりから秋口にかけて起こり、 も感染率が高いのは4~6週目のヒナであっ

た。

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Hoffbrand, A.V., & Weir, D.G., 2001

The history of folic acid.

Hoffbrand, A.V., & Weir, D.G.

Br. J. Haematol. 113, 579-589

"葉酸発見の糸口を作った Lucy Wills のかなり詳しい伝記に始まって、20 世紀の約 70 年間

に及ぶ葉酸研究の歴史について貢献度の高い研究者のエピソードに触れながら整理してい

る(表1)。

本報告書に関連する葉酸拮抗剤に関する部分のみを翻訳する。

表1. 葉酸に関する初期の研究

1930, 1931 Wills & Mehta ラットの既定食貧血症は酵母抽出物により改善する

1931 Wills 酵母あるいはビール酵母が妊婦の大球性貧

血症を改善する

1932 Vaugham ビール酵母はグルテン拒否症による貧血を改善

する

1938 Will & Evans 精製した肝臓抽出物は既定食貧血症や妊婦の大球

性貧血症、グルテン拒否症貧血

1938 Day et al. ビタミン M はサルの既定食貧血症を改善する

1938 Stokstad & Manning 酵母の因子‘S’とビタミン BC は鶏の既定食貧血を改

善する

1940 Snell & Peterson 酵母あるいは肝臓由来の吸着した因子は乳酸菌の

成長因子となる

1941 Mitchel et al. ‘葉酸’ は名前を得て、糞便連鎖球菌(S. lactis)の

成長因子であることが示された

1943 Fullerton; Watson & Castle 突発性脂質過多糞便巨赤芽球貧血は肝臓粗抽出物あ

るいは酵母抽出物に反応する

1943 Wright & Welch 葉酸ポリグルタミン酸塩を活性型(モノグルタミ

ン酸塩)に加水分解する酵素の同定

1944 Binkley et al. 酵母抽出物はビタミン BC の元としては僅か 2-5%しか乳

酸菌に働かない。フルに活性を

もつには酵素分解が必要

1945 Angier et al. 葉酸の合成に成功し、プテロイルグルタミン酸と呼ぶ

1945 Day et al. 精製された乳酸菌因子はビタミン M である

1946 Pfiffner et al. 肝臓に在る葉酸はグルタミン酸7量体塩である

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葉酸代謝の拮抗剤: 葉酸が発見されて間もなく、葉酸療法が癌の成長を早めることが観

察され、ノーベル賞受賞者のHitchingsとElionの研究室で葉酸拮抗剤の研究が開始された。

アミノプテリンが、Farber と彼の共同研究者(1948)によってはじめてヒトに投与された

拮抗剤となり、その後にメトトレキサートが続いた。 メトトレキサートが急性の小児性

白血病に効果があるという報告は、戦後の様々な抗癌剤の発展に道を開いた。抗癌剤は正

常な代謝反応を阻害する。メトトレキサートは、チミジル酸反応によって酸化されて、代

謝的に不活性になった DHF をして活性をもつ THF 状態(葉酸)に戻るようにするジヒド

ロ葉酸還元酵素(DHFR)の働きを阻害する。それは sulfonamide と一緒にして抗菌剤と

して使われるときに特に有効である。sulfonamide は葉酸合成に必要なパラアミノ安息香酸

(PABA)環の細菌による合成を阻害する。もう一つの DHFR 阻害剤、ピリメタミンは特

にマラリアの酵素に有効であるとして導入された。"

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HSDB, 2003

BACITRACIN

Number: 6418, BACITRACIN,

http://toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/search/f?./temp/~qbM6ZG:1

HSDB は、米国国立医学図書館の提供する総合的、ピアレビューされた毒性情報であり、

およそ 5000 物質のデータを収載している。その内、バシトラシンに関する情報である。

Hummel A, et al, 2007

Characterisation and transfer of antibiotic resistance genes from enterococci isolated

from food

Hummel A, Holzapfel WH, Franz CM.

Systematic and Applied Microbiology 2007 Jan; 30(1):1-7.

"食品由来の抗菌剤耐性 Enterococcus faecium 及び Enterococcus faecalis 38 株について、

テトラサイクリン耐性因子(tet(M)、tet(O)、tet(S)、tet(K)、tet(L)遺伝子)、エリスロマ

イシン耐性因子(ermA, B, C ; mefA, E ; msrA/B ; ereA, B 遺伝子)及びクロラムフェニコ

ール耐性因子(cat 遺伝子)の特徴付けを行った。加えて、filter mating 法により耐性遺伝

子の伝達性も評価した。

テトラサイクリン耐性腸球菌において、tet(L)遺伝子(94%)が もよく検出され、ついで

tet(M)遺伝子の 63%であった。tet(K)遺伝子は 56%であったが、tet(O)、tet(S)遺伝子は検

出されなかった。トランスポゾン Tn916-1545 ファミリーのインテグラーゼ遺伝子がテト

ラサイクリン耐性株の 81.3%に存在していたことは、耐性遺伝子がトランスポゾンにより

伝達されうることを示している。

抗生物質耐性に関わる遺伝的因子の伝達は、1 回の filter mating 試験で検証されたのみで

あったが、tet(M)、tet(L)両遺伝子が E. faecalis FAIR-E 315 株から E. faecalis OG1X 受容

株に伝達された。これらの結果は、腸球菌においては様々なタイプの耐性遺伝子と耐性因

子伝達に関与するトランスポゾンインテグラーゼ遺伝子が存在することを示しており、つ

まり食品を取り巻く環境中における遺伝子伝達の可能性が示唆される。"

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Huys G, et al, 2004

Prevalence and Molecular Characterization of Tetracycline Resistance in Enterococcus

Isolates from Food

Geert Huys, Klaas D’Haene, Jean-Marc Collard, and Jean Swings

Applied and Environmental Microbiology, Mar. 2004, p. 1555–1562

Enterococcus 属におけるテトラサイクリン耐性については、主なメカニズムとして能動的

排出及びリボソーム保護が挙げられる。能動的排出に関して Enterococcus 属では tet(K)及

び tet(L)遺伝子が担う。リボソーム保護に関しては、Enterococcus 属で tet(M)、tet(O)及

び tet(S)遺伝子が見出されている。Enterococcus faesium に低レベルの耐性を付与する因

子として tet(U)遺伝子があるが、このメカニズムはまだ不明である。

食品(主にヨーロッパ産チーズ)由来の Enterococcus 属 187 株について、テトラサイクリ

ン(TC)耐性に関する表現型及び遺伝子型を評価した。24%にあたる 45 株が、MIC 値 16

~256μg/ml の TC 耐性を示した。PCR 検出により、tet(M)、tet(L)及び tet(S)遺伝子が耐

性に関与していることが示された。MIC 値 256μg/ml を示す株を含む 15 株で、tet(M)及

び tet(L)の両方が検出された。Filter mating 法による伝達試験では、E. faecalis 10 株、E.

durans 3 株、E. faecium 1 株が、E. faecalis 受容株 JH2-2 に tet(M)あるいは tet(L)、及び

その両遺伝子を伝達した。tet(M)遺伝子のみが伝達された JH2-2 株では、検出可能なプラ

スミドは獲得されなかったが、全てのトランス接合体は Tn916-Tn1545 ファミリーの因子

を含有していた。"

Ian Phillips, 1999

The use of bacitracin as a growth promoter in animals produces no risk to human health

J. Antimicrob. Chemother, 44 (6): 725-728

動物の成長促進剤としてのバシトラシンの使用しても、ヒトの健康にリスクを生じない。

バシトラシンに対する耐性、enterococcus faecium からヒトへの伝播ヒトに対するバシト

ラシン耐性のリスクについて、レビューしている。

IDSC, VRE (バンコマイシン耐性腸球菌)

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国立感染症研究所、

感染症情報センターが提供する VRE (バンコマイシン耐性腸球菌)にかんする専門家向け情

報である。

IDWR, 2001, 第 13 週(3 月 26 日~4 月 1 日)

ブドウ球菌食中毒

専門家向け情報, http://idsc.nih.go.jp/disease/vre/vre02.html

国立感染症研究所・感染症情報センター(IDSC)は、感染症サーベイランスデータの集計、

感染症情報の収集、解析、その情報の国民への提供、外国の感染症機関との情報交換、感

染症集団発生の疫学調査、およびそれを実行する専門家の養成、感染症予防制圧戦略の研

究および提言などを主たる業務としている。IDSC 感染症発生動向調査週報(IDWR)が提供

するブドウ球菌食中毒に関する情報である。

IDWR, 2002, 第 18 週(4 月 29 日~5 月 5 日)

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症

国立感染症研究所・感染症情報センター(IDSC)は、感染症サーベイランスデータの集計、

感染症情報の収集、解析、その情報の国民への提供、外国の感染症機関との情報交換、感

染症集団発生の疫学調査、およびそれを実行する専門家の養成、感染症予防制圧戦略の研

究および提言などを主たる業務としている。IDSC 感染症発生動向調査週報(IDWR)が提供

するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症に関する情報である。

IDWR, 2002

第 16 週(4 月 15 日~4 月 21 日)

バンコマイシン耐性腸球菌感染症

国立感染症研究所・感染症情報センター(IDSC)は、感染症サーベイランスデータの集計、

感染症情報の収集、解析、その情報の国民への提供、外国の感染症機関との情報交換、感

染症集団発生の疫学調査、およびそれを実行する専門家の養成、感染症予防制圧戦略の研

究および提言などを主たる業務としている。IDSC 感染症発生動向調査週報(IDWR)が提供

するバンコマイシン耐性腸球菌感染症に関する情報である。

Page 34: 4.主な文献の要旨...Asai, T. et al., 2005 Correlation between the usage volume of verinary therapeutic antimicrobials and resistance in Esherichia colli isolated from the feces

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IDWR, 2002

第 17 週(4 月 22 日~4 月 28 日)

多剤耐性緑膿菌

国立感染症研究所・感染症情報センター(IDSC)は、感染症サーベイランスデータの集計、

感染症情報の収集、解析、その情報の国民への提供、外国の感染症機関との情報交換、感

染症集団発生の疫学調査、およびそれを実行する専門家の養成、感染症予防制圧戦略の研

究および提言などを主たる業務としている。IDSC 感染症発生動向調査週報(IDWR)が提供

する多剤耐性緑膿菌に関する情報である。

IDWR, 2004

第 10 週(3 月 1~3 月 7 日)

腸炎ビブリオ感染症

国立感染症研究所・感染症情報センター(IDSC)は、感染症サーベイランスデータの集計、

感染症情報の収集、解析、その情報の国民への提供、外国の感染症機関との情報交換、感

染症集団発生の疫学調査、およびそれを実行する専門家の養成、感染症予防制圧戦略の研

究および提言などを主たる業務としている。IDSC 感染症発生動向調査週報(IDWR)が提供

する腸炎ビブリオ感染症に関する情報である。

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IDWR, 2004

第 5 週(1 月 26~2 月 1 日)

サルモネラ感染症

国立感染症研究所・感染症情報センター(IDSC)は、感染症サーベイランスデータの集計、

感染症情報の収集、解析、その情報の国民への提供、外国の感染症機関との情報交換、感

染症集団発生の疫学調査、およびそれを実行する専門家の養成、感染症予防制圧戦略の研

究および提言などを主たる業務としている。IDSC 感染症発生動向調査週報(IDWR)が提供

するサルモネラ感染症に関する情報である。

IDWR, 2005

第 19 週(5 月 9-15 日)

カンピロバクター感染症

国立感染症研究所・感染症情報センター(IDSC)は、感染症サーベイランスデータの集計、

感染症情報の収集、解析、その情報の国民への提供、外国の感染症機関との情報交換、感

染症集団発生の疫学調査、およびそれを実行する専門家の養成、感染症予防制圧戦略の研

究および提言などを主たる業務としている。IDSC 感染症発生動向調査週報(IDWR)が提供

するカンピロバクター感染症に関する情報である。