29
104 4. 女性の活躍推進と企業経営の関係に関する調査研究 4.1 本章の目的 本章では、内外の先行研究についてサーベイを行うことにより、女性の活躍推進が企業経営に与える影響 について調査する。とりわけ、女性の活躍が企業経営にプラスの効果をもたらすのか、もたらすとすれば、その メカニズムはどのようなものであるかを明らかにすることが本章の目的である。 前章でみてきたように、海外では女性リーダーを増やすことが課題となっており、女性活躍と企業経営に関 する先行研究の殆どは、ボードダイバーシティを分析対象としている。そこで、本章では主として女性役員を登 用することによる取締役会のダイバーシティ効果に焦点を当てる。 本章は以下のように構成される。4.2 節および 4.3 節では内外の先行研究から得られる知見について整理を 行い、女性役員の登用が企業経営に与える効果および背景にある仮説を明らかにする。4.4 節では、我が国 企業における女性役員の登用状況について分析を行い、女性役員の有無による企業特性の違いや企業業績 との関係について分析を行う。4.5 節では本章のまとめを行う。

4. 女性の活躍推進と企業経営の関係に関する調査研究 108 McKinsey&Company(2010)は、女性の労働参加として女性取締役の比率を選び、また、対象企業をBRICs

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104

4. 女性の活躍推進と企業経営の関係に関する調査研究

4.1 本章の目的

本章では、内外の先行研究についてサーベイを行うことにより、女性の活躍推進が企業経営に与える影響

について調査する。とりわけ、女性の活躍が企業経営にプラスの効果をもたらすのか、もたらすとすれば、その

メカニズムはどのようなものであるかを明らかにすることが本章の目的である。

前章でみてきたように、海外では女性リーダーを増やすことが課題となっており、女性活躍と企業経営に関

する先行研究の殆どは、ボードダイバーシティを分析対象としている。そこで、本章では主として女性役員を登

用することによる取締役会のダイバーシティ効果に焦点を当てる。

本章は以下のように構成される。4.2節および 4.3節では内外の先行研究から得られる知見について整理を

行い、女性役員の登用が企業経営に与える効果および背景にある仮説を明らかにする。4.4 節では、我が国

企業における女性役員の登用状況について分析を行い、女性役員の有無による企業特性の違いや企業業績

との関係について分析を行う。4.5節では本章のまとめを行う。

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105

4.2 海外における先行研究のサーベイ

女性取締役比率と企業の財務パフォーマンスの関係は、業界レポートとともに学術論文でも重要なテーマに

なっている。ここでは、まず、業界誌で現状を認識するとともに企業の対応を概観し、学術論文で理論的背景

について整理する。

4.2.1 業界誌による認識

以下の4つの業界レポートによると、いずれも女性取締役と企業の財務パフォーマンスにはプラスの関係が

あることが示される。

(1) コーン・フェリーとNUSの調査

米国ヘッドハント大手のコーン・フェリーとシンガポール国立大学(NUS)経営大学院は、アジア 10 か国の大

手 1,000企業の女性取締役比率と財務パフォーマンスの関係を調査し、2015年 3月 6日に調査結果を公表し

た。女性取締役が全体の 10%未満以上の企業は ROAが 5.6%、ROEが 11.8%であったのに対して、10%以

上の企業はそれぞれ、6.9%、15.4%と、いずれも高いパフォーマンスであった。図表 4-1に示すように、ROEに

ついて国ごとにみると、マレーシアを除く 9か国でこの傾向が確認されている。

図表 4-1 女性取締役比率と ROE

(女性取締役 10%未満 vs. 女性取締役 10%以上)

(出所)KORN FERRY, NUS(2015)

(2) マッキンゼーの調査

McKinsey&Company(2007)は、231企業の従業員115,000人に対して行ったアンケート調査をもとに、9つの

クライテリア(リーダーシップ、方向性、説明責任、協調と管理、イノベーション、ステークホルダーとの関係、能

7.8%

16.1%

14.0%15.3%

6.4%

13.1%

5.1%

12.7%

15.6%17.1%

13.7%

21.2%

18.6%18.8%

9.8%

15.5%

7.4%

14.2%16.0%

14.8%

-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

女性取締役10%未満(左目盛) 女性取締役10%以上(左目盛) 差(右目盛)

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力、モチベーション、労働環境と価値)によって企業の組織的な卓越度を計測するツール(組織パフォーマン

スのプロフィールを把握するためのクライテリア)を使って企業評価を行った。その評価結果を上位、中位、下

位の 3つにランク分けして、企業の財務パフォーマンスを比較したところ、上位 1/3の企業グループはEBITDA

(利払い・税金・償却前利益)が平均を上回った企業が 68%あったのに対して、下位 1/3 の企業グループは

31%であり、37%ポイントの差があることが明らかとなった。また、企業価値(時価簿価比率)についてみると、

上位 1/3 の企業グループは平均を上回った企業が 62%あったのに対して、下位 1/3 の企業グループは 31%

であり、31%ポイントの差があることが明らかとなった(図表 4-2)。

図表 4-2 企業の組織的な卓越度と財務パフォーマンス

(出所)McKinsey&Company(2007)

上述の結果を受けて、Mckinsey&Company(2007)は、以下に示す 2 つの分析を行うことにより、取締役会に

おける女性取締役の人数が企業の組織的な卓越度と相関する可能性があることを見出した。

はじめに、上記で分析した企業の中から取締役構成のデータが開示されている、ヨーロッパ、アメリカ、アジ

アの様々な業種の大手企業 101 社を選定し、上述のアンケート調査結果を分析したところ、トップマネジメント

に女性取締役が 3 人以上いる企業では、9 つのクライテリアにおける評価が高いことが明らかとなった(図表

4-3)。

次に、トップマネジメントにおけるジェンダー・ダイバーシティの優れた企業の中から時価総額が 1.5億ユーロ

以上のヨーロッパの大手上場企業 89社について、財務パフォーマンスとの関係を分析した。分析の結果、ジェ

ンダー・ダイバーシティの優れた企業の 2003~2005 年の平均 ROE は 11.4%であったのに対して、産業平均

は 10.3%であり、1.1%ポイント高いものとなった。同様に、EBIT(利払い・税引前利益)についてみると、ジェン

ダー・ダイバーシティの優れた企業は 2003~2005 年の平均が 11.1%であったのに対して、産業平均は 5.8%

であり、5.3%ポイント高いものとなった。また、株式リターンについてみると、ジェンダー・ダイバーシティの優れ

31%

52%

62%

31%

48%

68%

0% 20% 40% 60% 80%

下位1/3

中位1/3

上位1/3

EBITDA 時価簿価比率

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た企業は 2005~2007 年の増加率が 64%であるのに対して、産業平均(Eurostoxx600 sectorial indexes16

)は

47%であり、17%ポイントアウトパフォームした(図表 4-4)。

これらの結果は、必ずしも因果関係を示すわけではないものの、女性取締役の多い企業は、組織的な卓越

度に優れており、財務パフォーマンスが高いという関係があることを示唆している。

図表 4-3 トップマネジメントにおける女性役員の有無と従業員の評価

(出所)McKinsey&Company(2007)

図表 4-4 トップマネジメントにおけるジェンダー・ダイバーシティが優れた企業のパフォーマンス

(出所)McKinsey&Company(2007)

16

欧州を代表する指数計算会社 STOXXが算出・公表する株式指数で、ヨーロッパ 18カ国の大型株、中型株、小型株の 600銘柄から

構成される。

52

64

70

63

64

68

56

51

48

53

65

71

66

67

72

61

57

55

40 50 60 70 80

Innovation

Accountability

Capability

Motivation

External orientation

Leadership

Coordination and control

Direction

Work environment and values

Companies with 3 or more women (n=13)Companies with no women (n=45)

11.4% 11.1% 64%10.3%

5.8%

47%

Average ROE2003-2005

Average EBIT2003-2005

Stock price growth 2005-2007compared with Eurostoxx 600

sectorial indexes

Companies with most gender-diverse management teamsIndustry average

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McKinsey&Company(2010)は、女性の労働参加として女性取締役の比率を選び、また、対象企業を BRICs

の企業にも適用し、業種ごとに企業の財務パフォーマンスを分析した。分析の結果、女性取締役比率が高い

企業グループの 2007~2009 年の平均 ROE は 22%であったのに対して、女性取締役が 1 人もいない企業グ

ループでは 15%であり、7%ポイント高いことが明らかとなった。また、女性取締役比率が高い企業グループの

EBIT margin(EBIT 売上高比率)は 2007~2009 年の平均が 17%であったのに対して、女性取締役が 1 人も

いない企業グループでは 11%であり、6%ポイント高いことが明らかとなった。

図表 4-5 エグゼクティブ・コミッティーにおける女性役員比率と財務パフォーマンス

(出所)McKinsey&Company(2010)

(3) クレディスイスの調査

Credit Suisse Research Institute(2012)は、MSCI-ACWI17に採用されている 2,360企業について、女性取締

役と企業の財務パフォーマンスの関係を分析した。その結果、少なくとも 1名の女性取締役がいる企業の ROE

は、2005 年~2011 年の 6 年間の平均で 16%であったのに対して、女性取締役が一人もいない企業の ROE

は 12%であり、4%ポイントの差があることが明らかになった。また、少なくとも 1 名の女性取締役がいる企業の

PBRと収益成長率は、それぞれ 2.4倍、14%であったのに対して、女性取締役が一人もいない企業では、それ

ぞれ 1.8倍、10%であり、女性取締役の有無と企業財務パフォーマンスにはプラスの関係があることが示される

(図表 4-6)。

17

MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)社が算出する世界株式指数のうち、先進国 23カ国、エマージング 23カ

国の計 46カ国から任意の基準で選ばれた企業で構成される株式指数。

22%

17%

15%

11%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

Average ROE2007-2009

Average EBIT margin2007-2009

Companies in the top quartile for the women representation in executive committee vs. sector

Companies with 0 women in executive committee in that specific sector

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図表 4-6 女性取締役の有無と財務パフォーマンス

(出所)Credit Suisse Research Institute(2012)

(4) カタリストの調査

Catalyst(2007)は、Fortune500企業について、2001年~2004年の 4年間のデータを用いて女性取締役の比

率で企業を 4 分割し、財務パフォーマンスに差があるかを調査した。その結果、下位 1/4 の企業と上位 1/4 の

企業の ROEは、それぞれ 9.1%、13.9%、ROS(売上高利益率)は、それぞれ 9.7%、13.7%、ROIC(投下資本

利益率)は、それぞれ4.7%、7.7%と計算され、女性取締役の比率と財務パフォーマンスにプラスの関係がある

とした(図表 4-7)。

図表 4-7 女性取締役比率と財務パフォーマンスの関係

(出所)Catalyst(2007)

16% 2.4 14%

12% 1.810%

Average ROE2005-2011

Average P/BV2005-2011

Average Net income growth2006-2011

1 or more women on the board 0 women on the board

9.1%9.7%

4.7%

13.9% 13.7%

7.7%

0%

4%

8%

12%

16%

ROE ROS ROIC

botom quartile top quartile

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Catalyst(2011)は、2004 年~2008 年の 5 年間について、Catalyst(2007)と同様の調査を行った。その結果、

下位 1/4 の企業と上位 1/4 の企業の ROS は、それぞれ 11.6%、13.4%、ROIC は、それぞれ 7.2%、9.1%と

Catalyst(2007)と同様にプラスの関係が確認されたのに対して、ROE は、それぞれ、13.7%、12.9%とマイナス

の関係がみられた。そこで、女性取締役の人数に注目して、同様の分析を行ったところ、女性取締役がいない

企業と 3人以上女性取締役がいる企業の ROEは、それぞれ、10.5%、15.3%とプラスの関係にあることが確か

められた(図表 4-8)。同様に、ROSについては、それぞれ 7.6%、14.0%、ROICについては、それぞれ、6.5%、

10.4%であり、プラスの関係が確かめられた。

図表 4-8 女性取締役の人数と財務パフォーマンスの関係

(出所)Catalyst(2011)

10.5%

7.6%6.5%

15.3%14.0%

10.4%

0%

4%

8%

12%

16%

20%

ROE ROS ROIC

0 women board directors 3 or more women board directors

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111

4.2.2 学術論文における調査

前項で取り上げた業界レポートでは、必ずしも統計的な観点や因果関係について議論されているわけでは

ない。そこで、学術論文をサーベイすることにより、女性活躍が企業経営に与える影響について整理する。

図表 4-9 は、取締役会のダイバーシティに関する海外の学術先行論文 74 本の中から、特に女性取締役の

数や取締役会に占める比率と企業パフォーマンスの関係を分析している 10本を抽出し、分析内容と分析結果

を整理したものである。対象企業は、S&P1500 や S&P500、Fortune のサーベイ企業といった米国企業が中心

であるが、スペインとデンマークの企業を対象にした論文もある。分析期間は、1990年代後半から 2000年代前

半が多い。以下では、これら論文で女性取締役と企業パフォーマンスの関係をどのように分析しているかを整

理するとともに、分析結果を概観する。

図表 4-9 女性取締役と企業パフォーマンスに関する代表文献例

(出所)日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

No. 著者 分析内容 対象企業 分析期間 結果 タイトル 雑誌名 巻、号 ページ

1Adams, R. B. andFerreira, D(2009)

女性取締役の数とトービンのQ,ROAの関係を分析

S&P1500に採用されている企業

1996-2003

マイナス(平均的)プラス(ガバナンスが弱い企業)

Women in the Boardroom andTheir Impact on Governance andPerformance

Journal of FinancialEconomics

Vol.94No.2

291-309

2Kevin Campbell,Antonio Mínguez-Vera(2010)

女性取締役就任の公表と超過リターンに関するイベントスタディによる短期的な市場の反応と、女性取締役の有無とトービンのQの回帰分析による長期的な市場の反応を分析

スペインの株式市場(Barcelona, Bilbao, Madrid,Valencia)に上場している企業の中で、女性取締役就任を公表した68企業

1989-2001

プラス(イベントスタディによる短期的なアブノーマルリターン)プラス(回帰分析による長期的な企業価値)

Female board appointments andfirm valuation: short and long-term effects

Journal ofManagement &Governance

Volume14

37-59

3Carter, D. A., Simkins,B. J. and Simpson, W.G.(2003)

取締役会に占める女性とマイノリティの存在および比率と、トービンのQ、ROAの関係を分析

Fortune 1000の中から分析可能な638企業

1999 プラスCorporate Governance, BoardDiversity, and Firm Value

Financial Review Vol.38 No.1 33-53

4Carter, D. A., D'Souza,F. Simkins, B. J. andSimpson, W. G.(2010)

女性と人種マイノリティの役員数および取締役会における人数とROA、トービンのQの関係を分析

S&P500に採用されている企業

1998-2002

ニュートラル

The Gender and Ethnic Diversityof US Boards and BoardCommittees and Firm FinancialPerformance

CorporateGovernance: Aninternational Review

Volume18.Number5

396-414

5Dezso, C. L. and Ross,D. G(2012)

トップマネジメントにおける女性の有無が、社内管理職の機能と女性中間管理職のモチベーションを高め、その結果、トービンのQ、ROA,ROEも向上するかを分析

S&P1500に採用されている企業

1992-2006

プラス(企業戦略がイノベーションに向かっている場合)

Does femail representation in topmanagement improve firmperformance?

StrategicManagement Jorunal

Volume33 1072-1089

6

Niclas L. Erhardt,James D. Werbel andCharles B. Shrader(2003)

女性と人種マイノリティの役員数とROA、ROIの関係を分析

Fortuneのサーベイデータから分析可能な127の米国企業

1993-1998

プラスBoard of Director Diversity andFirm Financial Performanc

CorporateGovernance: AnInternational Review

Volume11, Issue

2102–111

7

Luis Rodríguez-Domínguez, Isabel-MaríaGarcía-Sánchez,Isabel Gallego-Álvarez(2012)

女性役員の比率、業種ごとの比率とトービンのQ、ROA、ROE等の関係を分析

マドリード証券取引所の上場株の内の117企業(スペインの企業)

2004-2006

プラス

Explanatory factors of therelationship between genderdiversity and corporateperformance

European Journal ofLaw and Economics

Volume33, Issue

3603-620

8Shams Pathan andRobert Faff(2013)

女性取締役の比率と、ROA、ROE、トービンのQの関係を銀行セクターについて、SOXの導入前後、市場混乱期で分析

212の米国の銀行保有企業1997-2011

プラス(SOX導入後、市場混乱期は効果低下)

Does board structure in banksreally affect their performance?

Journal of Banking &Finance

Volume37, Issue

51573–1589

9Sheila SimsarianWebber and Lisa M.Donahue(2001)

業務関連性の高い集団と、低い集団について、ダイバーシティが集団の結束とパフォーマンスに影響するかを、過去の研究データより分析(meta-analysis)

24の研究、45の相関を分析1980-1999の

文献データニュートラル

Impact of highly and less job-related diversity on work groupcohesion and performance: ameta-analysis

Journal ofManagement

vol. 27no. 2

141-162

10Smith, N., Smith, V.and Verner, M.(2005)

女性CEOの存在および取締役会に占める女性の比率と、企業パフォーマンス(粗付加価値/売上高、経常利益等)の関係を分析

デンマークの大企業2500社1993-2001

プラスDo women in top managementaffect firm performance? A panelstudy of 2500 Danish firms

IZA Discussion Papers No. 1708 pp34

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112

(1) 調査方法と結果の概要

図表 4-9 の分析内容から明らかなように、女性取締役と企業パフォーマンスの関係を分析する方法としては、

回帰分析が一般的であるが、イベントスタディ、メタ分析を用いた論文もある。以下、これらの分析方法と得られ

た結果を整理する。

(a)回帰分析

回帰分析では、被説明変数として企業価値の代理変数であるトービンの Q、企業の生産性の代理変数

であるROAやROEを用い、説明変数として女性取締役の有無や人数、比率をコントロール変数とともに用

い、説明変数が統計的に有意であるかを分析する方法である。すなわち、以下の式①に示すような分析を

行う。

式①

ここで、 CFP :企業の財務パフォーマンス(トービンの Q、ROA,ROE等)

FF :女性取締役の数、比率、存在等

X :コントロール変数(企業の規模、負債比率、ガバナンス構造、業種、分析期間等)

式①において、右辺第 2項の FFの係数がプラス(βj>0)で統計的に有意であれば、女性取締役が企

業の財務パフォーマンスにプラスの効果があると判断する。逆に、βj <0 で統計的に有意であれば、マイ

ナスの効果があることになる。また、βj>0、βj<0であっても統計的に有意でなければ、女性取締役の財

務パフォーマンスに及ぼす影響はどちらとも言えない、つまり、ニュートラルということになる。

図表 4-2で取り上げた論文では、女性取締役の企業財務パフォーマンスに及ぼす効果は、プラスと判断

されたものが 7本、マイナスとニュートラルがそれぞれ 1本ずつである。ここで、FFの説明変数として、女性

取締役の数、比率、存在を業種毎に分けたり、企業の意思決定に重要な影響を及ぼす委員会等に分ける

かは、それぞれの論文の関心事による。同様に、X のコントロール変数として、一般的な規模や負債比率

の他に何を追加的に用いるかは、それぞれの論文の関心事に依存する。

説明変数としては、Rodriguez-Dominguez et al.(2012)は、企業のビジネス構造とダイバーシティに関心

があるため、FFの変数を業種ごとに分けて分析している。一方、Carter et al.(2010)は、企業の意思決定の

構造に関心があるため、FF の変数を監査委員会や報酬委員会ごとに分けて分析している。また、コントロ

ール変数としては、Carter et al.(2010)や Adams and Ferreira(2009)は企業のガバナンスとの関係に注目す

るため、X の変数に取締役会の特徴として取締役の人数、独立取締役の人数、取締役の報酬、年齢、

CEO と議長の兼職などを追加している。

titi

l

k

kti

n

j

jti XFFCFP ,,

1

,

1

,

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113

(b)イベントスタディ

図表4-9のNo.2のCampbell and Minguez-Vera(2010)は、企業が女性取締役就任の公表が株式市場か

らプラスに評価されるのかについて当該銘柄の株式のアブノーマルリターンを計算するイベントスタディを

行っている。これは、式②に示すようなアブノーマルリターンの累積リターンをイベント前後で計算し、イベ

ント発生後のアブノーマルリターンが、発生前に計算したアブノーマルリターンを統計的に上回れば、プラ

スの効果があると判断する方法である。分析期間は通常、イベント前の 100~300日程度で平均的なアブノ

ーマルリターンを計算し、イベント日を挟んだ 21~121 日程度でイベントの効果を分析する。このように、分

析期間が短いので、短期的に株式市場がどのように評価するかを見る分析といえよう。

Cambell and Minguez-Vera(2010)がスペインの株式市場を対象に行った分析結果は、女性取締役就任

の公表後のアブノーマルリターンが有意に高いことを示し、投資家は女性取締役の追加によって平均的に

は企業価値が向上すると信じているとした。

)))((1

(1

,,),(

2

1

21

N

i

titi

T

Tt

TT RERN

CAR 式②

ここで、CAR :アブノーマルリターンの累積リターン

Ri,t :銘柄 iの株式リターン

E(Ri,t) :銘柄 iの株式リターンの期待値(マーケットモデルより推計)

N :サンプル数

(c)メタ分析

メタ分析とは、多数の先行研究の結果を分析して、それらの共通点を明らかにする研究のことで、もとも

とは自然科学では広く使われてきたが、最近社会科学の分野でも行われつつある。メタ分析では既存研究

の中の統計分析で用いられた定量的データが用いられる。図表 4-9のNo.9のWebber and Donahue(2001)

は、業務関連性の高い集団と、低い集団について、ダイバーシティが集団の結束とパフォーマンスに影響

するかを、過去の研究データより分析した。メタ分析に利用可能な既存研究を精査した結果、24 の研究を

抽出し、ダイバーシティとパフォーマンスに関する 45 の相関係数をメタ分析に用いた。分析の結果、業務

関連性の高い集団と低い集団とも、ダイバーシティと集団の結束、パフォーマンスの間には有意な関係が

得られなかったとしている。

(2) 女性の労働参加と企業価値の関係に関する理論

Carter et al.(2010)は、取締役会のダイバーシティと企業パフォーマンスの関係の理論を整理している。それ

ぞれの理論を概観した上で、先行研究の分析内容、分析結果をまとめる。

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114

・資源依存理論(Resource Dependence Theory)

Pfeffer and Salancik(1978)は、企業の取締役には外部組織と企業を結び付けるための役割があるとした。具

体的には、外部組織と結びつけることに以下の 4 つの利点があると述べている。①情報と実務に関する資

源の提供、②企業にとって重要な内容のコミュニケーションのチャネルを作ること、③外部の重要な組織や

グループからの協力約束を取り付けること、④外部環境における企業の正当性を作ること。Hillman et

al.(2000)は、この考え方を拡張し、異なるタイプの取締役は、企業に異なる収益源をもたらすとした。つまり、

取締役構成が多様化するほど、価値ある資源を提供することになり、企業パフォーマンスが向上することが

期待される。しかし、国や地域文化によって重要なダイバーシティには違いがあり、女性取締役の導入とい

ったジェンダー・ダイバーシティよりも、人種的なダイバーシティが重要な場合がある。従って、企業パフォー

マンスへの効果も国や地域文化によって結果が異なる可能性があると考えられている。

・人的資本理論(Human Capital Theory)

Terjesen, Sealy and Singh(2009)によると、人的資本理論は、Becker(1964)が指摘した組織の利益のために

利用可能な教育、経験、スキルの人的蓄積が重要だとした研究から派生した。さらに、取締役の性差はユニ

ークな人的資本を持つとした。また、女性の能力は教育レベル等では男性とほとんど変わらないが、ビジネ

スのエキスパートとしての経験では男性より劣るという。人的資本理論は多様でユニークな人的資本は取締

役の多様性に影響を及ぼすが、財務パフォーマンスの観点からはプラスとマイナスの両方の効果が考えら

れるとしている。

・エージェンシー理論(Agency Theory)

Jensen & Meckling(1976) は、エージェンシー理論の基本的なコンセプトは、取締役の管理とモニタリング機

能であるとした。Carter, et al.(2003)は、取締役構成の多様化は取締役の独立性を増すことになるので、管理

者をモニターするには良いと考えられる一方、財務パフォーマンスとの関連性は明らかではないとしている。

・社会心理理論(Social Psychological Theory)

Westphal and Milton(2000)は、取締役におけるマイノリティの存在は企業のステークホルダーには好ましいと

みられることがしばしばあるが、学術的にはマイノリティの取締役が意思決定にうまくかかわれていないことを

示しているとした。むしろ、取締役構成が人口構成と異なることはグループ間の結束を弱めること、また、社会

的な障壁がグループの意思決定におけるマイノリティの影響を減らしているとした。そして、マイノリティ状態

にある個人はグループの意思決定に相応しくない影響を及ぼす可能性があるという。 Lau and

Murnighan(1998)は、ジェンダー・ダイバーシティは、意思決定に色々な考え方を提供するものの、時間がか

かるので非効率だとした。このように、マイノリティについての社会心理的な考察の結果、取締役会のダイバ

ーシティは企業の財務パフォーマンスに対して、プラスとマイナスの両方の効果が考えられるという。

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115

以上の取締役会のダイバーシティと企業パフォーマンスの関係の理論的な考察を踏まえて、Carter et

al.(2010)は、統計的な分析結果がニュートラルになった理由を、取締役の性的、人種的なダイバーシティは、

分析期間や対象とする企業環境が異なるため、その影響を受けて異なる結果となり、プラスの効果とマイナス

の効果がオフセットされた結果であると解釈している。

(3) 影響経路に関する分析

Carter et al.(2010)の理論的な考察とは別に、Dezso and Ross(2012)は、企業の組織論的なアプローチから分

析を行った。すなわち、トップマネジメントにおける女性の存在が、社内管理職の機能と女性中間管理職のモ

チベーションを高め、その結果、トービンの Q、ROA,ROEも向上するかを分析し、プラスの効果を報告している。

具体的には、図表 4-10のように、トップマネジメントに女性取締役が存在することによって、トップマネジメントの

業務パフォーマンスが向上するだけではなく、女性中間管理職のモチベーションの向上をもたらし、中間管理

職の業務パフォーマンスが向上することを通して、企業全体のパフォーマンスが向上するとした。この経路をイ

ノベーションやマーケティング戦略との関係で分析するため、回帰式①のコントロール変数として資産に占める

研究開発費の伸び率や、広告宣伝費の伸び率を加えて分析した。その結果、戦略がイノベーションに注力し

ている場合に、女性取締役の存在が企業パフォーマンスとの間で有意な関係が得られた。

このように、女性取締役と企業パフォーマンスの関係は、企業の組織論的なアプローチによって関係経路を

明らかにすることを試みているものもある。

図表 4-10 女性取締役の存在と企業パフォーマンスの関係経路

(出所)Dezso and Ross(2012) をもとに日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

管理者行動の性に

関連した規範

トップマネジメント

における女性取締

役の存在

情報、社会的なダイ

バーシティ

性差による管理者

行動の違い

トップマネジメント

の業務パフォーマ

ンス

女性中間管理職の

モチベーション 中間管理の業務

パフォーマンス

戦略がイノベーシ

ョンに注力している

場合

企業の

パフォーマンス

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116

4.2.3 女性取締役登用の課題

McKinsey&Company(2008)は、2007年の結果を受けて、女性の労働参加と企業の財務パフォーマンスの因

果関係を分析した。具体的には、組織パフォーマンスのプロフィールを把握するための 9 つのクライテリアにお

いて、女性管理職のリーダーシップが男性とどのように異なるのかを分析した。その結果、女性は「人材開発」、

「希望金額と実際の報酬」、「ロールモデル」、「インスピレーション」、「全員参加型意思決定」において男性より

も頻繁にリーダーシップ行動をとっていた。一方、男性は「管理調整行動」と「個人主義的意思決定」において、

女性よりも頻繁にリーダーシップ行動をとっていた。従って、女性管理職を増やすことによって、組織におけるリ

ーダーシップ行動が相互補完および多様化され、財務パフォーマンスが向上することが期待されるとした。

図表 4-11 男女のリーダーシップ行動の違いと企業の組織パフォーマンスへの影響

(出所)McKinsey&Company(2008)をもとに日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

McKinsey&Company(2010)は、女性の労働参加として女性取締役の比率を選び、また、対象企業を BRICs

(ブラジル、ロシア、インド、中国)の企業にも適用し、業種ごとに企業の財務パフォーマンスとの関係を分析し

た。その結果は 2007年の結果と同様、プラスの効果があるというものであったが、現実に企業は女性取締役を

増やす行動には至っていない。そこで、企業の女性取締役をどのように増やして、取締役構成を多様化させる

かが課題だとした。McKinsey&Company(2012)では、企業の女性取締役の登用が進んでいない状況を確認し、

McKinsey&Company(2013)では、その理由を分析して企業文化が女性取締役の登用を阻んでいるとした。具

体的には、世界中の企業から広範に選んだ 1,400 人以上のマネージャーを対象としたサーベイを用いて、昇

進意欲のある女性(C-suite ambition)について、実際にポジションに就く自信の有無に応じて 2 つのサンプル

に分割した。それぞれの特徴について分析した結果、自信の差は、個人の内面に起因するファクターというよ

●人材開発

●全員参加型意思決定

労働環境と価値

リーダーシップ行動

女性の取り組みが多い

女性の取り組みが多少多い

女性と男性の取り組みが同程度

男性の取り組みが多い

●人材開発

●希望金額と実際の報酬

●ロールモデル

●インスピレーション

●全員参加型意思決定

●知的刺激

●効果的なコミュニケーション

●個人主義的意思決定

●管理調整行動

●インスピレーション

●効果的なコミュニケーション

方向性

●知的刺激

イノベーション

●個人主義的意思決定

ステークホルダーとの関係

●希望金額と実際の報酬

説明責任

●人材開発

能力

●インスピレーション

モチベーション

●管理調整行動

協同と管理

●ロールモデル

●人材開発

リーダーシップ・チーム

組織的なパフォーマンスの改善

ステークホルダーとの関係

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117

りもむしろ、企業文化に起因するファクターによって規定されることを明らかにした。そして、企業は今こそ女性

の取締役への意欲をサポートするとともに、女性が取締役になるために直面している特別な障壁を男性は認

識するべきだとしている。

4.2.4 女性取締役と財務パフォーマンスに関する分析の課題

前述のように、女性取締役の登用が進まない背景には、トークニズムがある。トークニズムとは、企業に女性

取締役が一人存在すると、さらに女性取締役を増やす企業はほとんどないという状況を説明する際に用いられ

る。女性はマイノリティの代表という位置づけであり、トークン(象徴)として既に女性取締役を採用している企業

では、さらに追加的に女性取締役を採用するインセンティブは働かない。Patrrotta and Smith(2013)は、デンマ

ークの企業について分析したところ、既に女性取締役が存在する企業では追加的な採用を控える傾向にある

ことを明らかにしている。

Cater et al.(2003)は、トークニズムによって企業が女性取締役を採用することを「見せかけ(Window

Dressing)」と呼び、女性取締役として成功するように導かない企業文化があるとした。そこで、女性取締役比率

と財務パフォーマンスの関係を分析する際に、女性取締役が一人いる企業を除いて、一人もいない企業と複

数いる企業を比較した。この両グループについてトービンのQを比較すると、複数の女性取締役がいる企業の

トービンのQは一人もいない企業よりも統計的に有意に高かった。

4.2.5 ジェンダー・クオータ制度の議論からの示唆

ボードダイバーシティを実現する方法の1つとして、ジェンダー・クオータ制度が挙げられる。ここでは、ノルウ

ェーのクオータ制度導入による企業価値への影響を分析した 2つの論文(Ahern and Dittmar,2012; Nygaard,

2011)を概観する。一般に、ジェンダー・クオータ制度の議論は、政策評価の観点から行われるケースが多い

が、ここでは、企業レベルで積極的に女性取締役の登用を推進する際の示唆とする。したがって、クオータ制

度の内容に関する議論は捨象する。

Ahern and Dittmar(2012)は、クオータ制度によって、平均すると取締役の 30%を入れ替えなければな

らないような急速な変革が起きた際の企業価値への影響について、以下の 3つの仮説を設定した。

(1) 制度施行以前に任命された取締役が、企業価値を高めるように選ばれている場合、ジェンダー・クオータ

制度は、企業価値を高める上での制約となり、企業価値を低下させる。

(2) これまで経営者にとって都合のよい取締役が任命されていた場合、ジェンダー・クオータ制度は、そのよう

な選択を排除できるため、企業価値を高めることが可能である。

(3) そもそも取締役会が見せかけの存在(window-dressing)であるため、ジェンダー・クオータ制度は、企業価

値に影響しない。

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118

彼らは、248社の上場企業について分析を行った。まず、ジェンダー・クオータ制度を導入する可能性がある

ことを公表した日の投資家の反応を確認するため、イベントスタディ分析を行った。この分析から、ジェンダー・

クオータ制度施行以前に、女性取締役が 1人もいない企業群のCARは-3.55%下落し、1人以上いる企業群

では、-0.02%と大きな下落はなかった。したがって投資家は、女性取締役が急激に増加することに対して、ネ

ガティブな認識を持っていたと考えられる。次に、女性取締役の増加と企業価値(産業調整済みトービンの Q)

との関係について、ジェンダー・クオータ制度施行後、女性取締役を 10%増やした場合、企業価値は 12.4%低

下するという分析結果を得た。これらの分析結果から、クオータ制度は、企業価値に対してネガティブな影響を

与えると考えた Ahern and Dittmar(2012)は、制度施行後の取締役会の特徴を分析した。その結果、制度施行

後に就任した女性取締役は、よりよい教育を受けているものの、経験が浅く(前職にて CEO の経験をしている

女性が少ない)、年齢が若いという特徴を見出した。また、女性取締役をより多く登用した企業の資金調達や投

資政策についてみると、パフォーマンスの低い買収を行っていることが明らかとなった。これらの分析結果から、

ジェンダー・クオータ制度の導入によって、企業は急速に取締役を交代せざるをえなかったため、経験の浅い

取締役が増え、取締役会全体のパフォーマンスが低下したと結論付けている。

これに対して、Nygaard(2011)は、クオータ制度による女性取締役登用の効果は、社外取締役を登用するこ

とと同様の効果(モニタリング効果)があると仮定した。しかしながら、モニタリング効果が発揮されるためには、

登用された女性取締役にとって、内部出身者の取締役と同様に社内の情報にアクセスしやすい環境が必要で

ある。このような環境は、企業の情報開示に対する姿勢と相関すると考え、情報開示の優れた企業においては、

女性取締役の登用が企業価値に対してプラスの影響を与えるという仮説を設定した。

図表 4-12 男女のリーダーシップ行動の違いと企業の組織パフォーマンスへの影響

(出所)Nygaard(2011)をもとに日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

+1.0%

+0.8% +3.3%

+0.3%

※丸枠内は前営業日から翌営業日までのCAR

(劣、多) (優、多)

(劣、少) (優、少)

情報の非対称性が小さく、制度施行前の女性役員の数が少な

いほどCARは大きい

制度前の女性取締役数が同程度でも、情報の非対称性が小さ

いほど、CARは大きい。

制度施行前女性役員数

情報開示の優劣

優劣

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具体的には、情報開示の程度と女性取締役の登用による影響を検証するため、図表 4-12 のようにサンプル

を 4 つに分類して、各グループの CAR を比較した。分析の結果、制度施行前の女性取締役の人数が少なく

情報開示が優れているグループの CARは、+3.3%と、他グループの CAR よりも大きいことを明らかにした。

Nygaard(2011)は、企業パフォーマンスに与える影響についても分析を行い、情報開示が優れており、女性

取締役を多く登用するほど、ROA を上昇させる効果が高いことを確認した。これらの結果から、情報開示が優

れている企業では、女性取締役によるモニタリング効果が強く表れ、企業価値が向上したと結論付けている。

このように、2つの研究において異なる分析結果が得られた背景には、両者の分析方法の違いによる影響が

あるものの、以下の示唆を得ることができよう。すなわち、望ましい取締役構成が実現されている場合には、拙

速に女性取締役を登用することは、企業経営にネガティブな影響を与える可能性がある。ただし、その要因の

1 つは情報格差に起因するものであるため、取締役会の運営を工夫することにより、マイナスの効果を上回るよ

うなベネフィットが得られる可能性がある。したがって、企業が積極的に女性取締役の登用を推進する際には、

男女の性差に関係なく能力を基準に登用することが求められるのはもちろんのこと、情報共有の面で格差が生

じないような工夫が求められよう。

4.2.6 小括

以上のサーベイ結果から、次のようにまとめることができる。第 1 に、業界レポートによると、いずれも女性取

締役と企業の財務パフォーマンスにはプラスの関係があることが示される。また、学術論文でもプラスの効果が

あるとする研究が多数存在する。その背景として最も有力な理論は、資源依存理論(Resource Dependence

Theory)である。すなわち、取締役構成の多様化は、異なる価値の資源を企業に供給することになり、企業のパ

フォーマンスが向上することが期待される。しかし、企業を取り巻く環境は複雑かつ多様であり、企業のパフォ

ーマンスに影響を及ぼす重要なダイバーシティは国や地域によって異なるため、プラスとマイナスの効果がオ

フセットして明確な結果を得にくい可能性が指摘されている。

第 2 に、女性取締役が企業の財務パフォーマンスに効果があることを明確にするため、企業の組織論の観

点からその影響経路について分析が行われつつある。現実には女性取締役登用が進んでおらず、この背景

には、トークニズムとして説明されるように、企業の見栄えを良くするために企業は女性取締役を一人だけ採用

し、女性が取締役として成功するように導かない企業文化がある。女性取締役と企業の財務パフォーマンスを

分析する際には、この影響を考慮する必要がある。

第 3 に、女性を取締役に登用して企業の財務パフォーマンスを向上させるためには、企業は女性の意欲を

サポートし、男性は女性が取締役になるには特別な障壁があることを認識するべきである。他方、拙速に女性

取締役を登用することは企業経営にマイナスの影響を及ぼす可能性があるため、男女公平な基準により登用

することが求められる。また、登用された女性取締役がパフォーマンスを発揮するためには、自社に関する情

報格差が生じないようにするなどの配慮が重要である。

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120

4.3 国内における先行研究のサーベイ

次に、我が国における女性取締役比率と企業の財務パフォーマンスの関係について調査する。前節と同様

に業界誌と学術論文に分類した上でサーベイを行う。

4.3.1 業界誌による認識

(1)大和総研のレポート

伊藤(2015)は、2015年 1月 9日時点でデータが取得可能な 1,870社について、株式パフォーマンスおよび

ROE と女性役員の登用との関係について分析を行っている。

図表 4-13 は、2010 年初から 2014 年末までの 5 年間の株式パフォーマンスを比較したものである。TOPIX

配当込指数の年率リターンが 11.5%であるのに対して、女性取締役比率 10%以上のポートフォリオの年率リタ

ーンは 12.7%と市場を上回ることが確認される。一方、女性取締役比率が 0%超 10%未満のポートフォリオの

年率リターンは 7.8%と市場を大きく下回ることが確認される。また、ポートフォリオのリスクについてみると、

TOPIX配当込指数の年率換算後のリスクは 17.7%であるのに対して、女性取締役比率 10%以上のポートフォ

リオは 17.4%となっており、リスクの高さがリターンの源泉になっているわけではないことを確認している。なお、

女性取締役比率が 0%超 10%未満のポートフォリオのリスクは 19.7%と、他のポートフォリオに比べて高いこと

が確認されている。

図表 4-13 女性取締役と株式パフォーマンス

(出所)伊藤(2015)

図表 4-14は、2014年末時点において、各グループの実績 ROEと予想ROEの平均を比較したものである。

分析対象全体の実績 ROEは 7.6%、予想 ROEは 8.2%であるのに対して、女性取締役比率が 10%以上の実

績 ROEは 8.5%、予想 ROE は 8.6%となっており、相対的に高い水準であることがわかる。一方、女性取締役

11.5%

7.8%

12.7%

17.7%

19.7%

17.4%

0% 5% 10% 15% 20% 25%

TOPIX配当込指数

女性取締役

0%超10%未満

女性取締役

10%以上

リスク

パフォーマンス

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121

比率 0%超 10%未満についてみると、実績 ROE は 6.5%、予想 ROE は 7.7%となっており、女性取締役なし

のケース(実績 ROE:7.6%、予想 ROE:8.2%)よりも低い水準となっている。

これらの結果について、伊藤(2015)は、女性取締役比率 10%以上の企業は、女性の活躍を推進することが

企業業績に好影響を与える可能性あると指摘する一方、女性取締役比率 0%超 10%未満の企業については、

女性取締役の登用による効果が発揮できていない企業が存在する可能性を挙げている。

図表 4-14 女性取締役と ROE

(出所)伊藤(2015)

4.3.2 学術論文における調査

(1) 女性取締役を登用する企業の特徴

森川(2014)は、2011 年 12 月から 2012 年 2 月にかけて行った「企業経営と経済政策に関する調査」(2012

年)のデータに、同じ年の「企業活動基本調査」(経済産業省)を企業レベルでマッチさせた 3,198 社のデータ

を用いて分析を行っている。このデータを用いて、女性取締役および女性社長の有無、女性取締役比率につ

いて分析を行うことにより決定要因を確かめている。

図表 4-15 女性取締役の登用に与える決定要因(5%水準)

(出所)森川(2014)をもとに日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

社数 実績ROE 予想ROE

分析対象企業全体 1,845 7.6% 8.2%

女性取締役あり 197 7.9% 8.3%

女性取締役なし 1,648 7.6% 8.2%

女性取締役比率10%以上 140 8.5% 8.6%

女性取締役比率0%超10%未満 57 6.5% 7.7%

女性取締役あり 女性取締役比率 女性社長

企業規模(対数従業者数)

企業年齢 - -

外資比率

子会社ダミー - -

上場企業ダミー - -

オーナー経営ダミー + + +

労働組合ダミー - -

取締役数 + +

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図表 4-15は、森川(2014)の主要な分析結果について推計された係数の符号(5%水準)を掲載したものであ

る。女性取締役がいる企業もしくは女性取締役比率が高い企業の特徴として、企業年齢が若い、親会社がな

い、未上場、オーナー経営、労働組合がない、取締役数が多い、ことが挙げられる。女性社長である企業は、

オーナー経営以外は有意な結果が得られておらず、前述のケースに比べてやや異なる傾向が示される。

この結果について、森川(2014)は、歴史の長い上場大企業やその子会社では女性が役員になるのが難し

い傾向があることを示しており、「ガラスの天井(glass ceiling)」の存在を示唆していると述べている。

辻本(2013)は、全上場企業を対象に、2007~2010 年をサンプル期間として 2 つの実証分析を行った。1 つ

は、株式所有構造と女性役員の登用であり、いま 1 つは女性役員比率と企業パフォーマンスの関係について

である。ここでは、前者について取り上げる。後者については、この後の企業パフォーマンスとの関係の中で取

り上げる。

辻本(2013)は、CSR企業総覧とNEEDS-Cgesからデータが取得可能な企業をもとに分析しており、firm-year

サンプルは 3,095 社となる。図表 4-16 は、辻本(2013)の主要な分析結果における推計値の符号(5%水準)を

掲載したものである。各年の分析結果にはバラつきはあるものの、推計された符号をみると一貫する傾向が得

られている。女性役員がいる企業の特徴として、外国人持株比率が高く、株式持合比率が低いことが挙げられ

る。機関投資家持株比率や ROAは女性役員の登用に影響を与えない様子がみてとれる。

図表 4-16 株主所有構造と女性役員の登用との関係(5%水準)

(出所)辻本(2013)をもとに日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

(2) 企業業績との関係

辻本(2013)は、前述の結果を確かめた上で、企業パフォーマンスの代理変数としてROAおよびトービンのQ

と女性役員比率の関係について分析した。その際、内生性の問題への対処として、1 期前の女性役員比率が

企業パフォーマンスに与える影響についても分析したほか、トービンの Q を用いる際には説明変数に ROA を

加えることにより業績の影響をコントロールした。図表 4-17 は、主要な分析結果における推計値の符号を示し

たものである。Panel C,Dは 1 期ラグを適用した分析であるため、2010年の分析結果は得られない。分析結果

をみると、ROAに対する影響は殆どみられないが、トービンの Qに対してはプラスの影響があることがみてとれ

る。この結果は、女性役員を登用することで企業価値が高まる可能性を示唆するものと考えられる。なお、辻本

(2013)は、前述の結果に対して、女性役員が株式所有者構造と相関している可能性を考慮した追加分析を行

っており、分析結果の頑健性を確かめている。

2007年 2008年 2009年 2010年 全サンプル

機関投資家持株比率

外国人持株比率 + + + +

株式持合比率 - - - -

ROA

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図表 4-17企業パフォーマンスと女性役員の登用との関係(5%水準)

(出所)辻本(2013)をもとに日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

辻本(2013)の分析結果は、女性役員を登用することにより企業経営に対してプラスの効果があることを示唆

するものであるが、そのメカニズムは明らかではない。この点について接近を試みるために、Siegel・児玉(2011)、

乾ほか(2014)の 2つの研究を概観する。

Siegel・児玉(2011)は、2001年、2004年、20006年の 3時点における事業所・企業統計調査、企業活動基本

統計調査、賃金構造基本統計調査のパネルデータを用いてマッチングを行ったデータを用いることにより、従

来の研究では考慮されなかった、リーダー的地位にある女性を雇う効果と一般労働者による効果の峻別およ

びパートタイム労働者を雇用することによる人件費の節約効果をコントロールすることに成功した。

Siegel・児玉(2011)は、サンプルを製造業とサービス業に分類した上で、ROAや生産性への影響を推定する

とともに、労働者の賃金関数や女性役職者の登用について推定を行った。その結果、日本の製造業は、女性

役員や女性管理職を雇うことによって利益を得ており、その利益の大部分が人件費節約にあることを明らかに

した。すなわち、彼らの結果は、Beckerの「差別的嗜好」を持つ企業が存在することを示唆している。ただし、賃

金格差だけで全てが説明されるわけではなく、高い収益性の一部は、女性の経営参画が企業の生産性を高

める効果によるものであることが示される。他方、この結果はサービス業には当てはまらない。この点について、

彼らは、サービス業においては、製造業に比べて女性を雇うことによる競争上の差別化の機会が少ない可能

性を指摘している。

これに対して、乾ほか(2014)は、企業業績を直接の分析対象とするのではなく、取締役会のダイバーシティ

がイノベーション活動に与える影響について分析している。彼らは、先行研究の示唆に依拠して、デモグラフィ

ー型とタスク型の、2 つのダイバーシティのタイプに注目した。具体的には、デモグラフィー型ダイバーシティの

変数として、役員の性別や年齢を取り上げる一方、タスク型ダイバーシティの変数として、就業年数、在職年数、

教育年数、専攻、を取り上げた。また、イノベーション活動の代理変数として、研究開発投資集約度(研究開発

費/売上高)と特許出願件数に注目した。彼らは、役員四季報(東洋経済新報社)と日経 NEEDS 企業財務

(日本経済新聞社)から得られるデータのうち、有価証券報告書を提出する一般事業会社の 2000~2012 年度

のパネルデータを用いて分析を行った。

2007年 2008年 2009年 2010年 全サンプル

Panel A:ROA女性役員比率

Panel B:トービンのQ女性役員比率 + + + + +ROA + + + +

Panel C:ROA(1期ラグ)女性役員比率 + n/a

Panel D:トービンのQ(1期ラグ)女性役員比率 + + + n/a +ROA + + + n/a +

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124

分析の結果、企業の固有の要因をコントロールすると、ダイバーシティは何れも統計的に有意な影響をもた

らさないことが明らかとなった。ただし、幾つかのサブサンプルに分類した分析によると、外資比率の高い企業

や、国際化が進展している産業に属する企業においては、女性役員比率が企業のイノベーション活動の一部

にプラスの影響を与えることが示された。この結果について、彼らは、取締役会のダイバーシティがイノベーショ

ン・インセンティブを高めるためには、ダイバーシティ・マネジメント能力の蓄積が必要であると述べている。

以上の 2 つの研究結果は、女性役員を登用することのダイバーシティ効果として、生産性の上昇やイノベー

ション活動の促進を示唆するものであり、互いに矛盾するものではないと考えられる。しかしながら、我が国に

おける女性役員の登用に関する議論は緒に就いたばかりであり、海外に比べると、女性役員を登用することの

効果について十分な研究が行われているとは言い難い。今後、多くの実証研究の蓄積が望まれるところであ

る。

4.3.3 小括

4.3節のサーベイ結果について、次のようにまとめることができる。第1に、業界レポートや学術論文によると、

いずれも女性取締役と企業の財務パフォーマンスにはプラスの関係があることが示される。第 2に、財務パフォ

ーマンスを高める要因として、製造業では女性役員や女性管理職を雇うことによる人件費節約の効果とともに、

女性の経営参画が企業の生産性を高める効果があることを指摘する研究がみられた。また、外資比率の高い

企業や国際化が進展している産業に属する企業において、女性役員比率が企業のイノベーション活動にプラ

スの影響を与えることを指摘する研究がみられた。以上のサーベイ結果は、女性取締役と企業の財務パフォー

マンスにはプラスの関係があることを明らかにした海外の先行研究と整合的なものであると考えられる。ただし、

海外に比べると、日本における先行研究は少ないため、ここで得られた知見をさらに検証していくことが求めら

れるだろう。

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125

4.4 我が国におけるボードダイバーシティの現状

我が国企業においては、女性役員の登用に関する議論は緒に就いたばかりであり、女性役員の数は徐々

に増えているものの、国際的にみると登用水準は低いものとなっている。したがって、ボードダイバーシティが

企業業績に与える影響について詳細な分析を行うためには、データの蓄積を待って検証する必要があると考

えられる。

そこで本節では、詳細な分析は将来の課題とした上で、まず、女性役員の有無による企業特性の違いや企

業業績との関係について分析することにより、我が国における現状を把握する。分析に際しては、Siegel・児玉

(2011)に依拠して、製造業と非製造業にサンプルを分類するほか、乾ほか(2014)の示唆を援用して、企業の多

角化度合との関係に注目する。この点について、企業経営が複雑になるほど取締役会のアドバイザーとしての

役割が重要になることを指摘した Coles et al.(2008)の議論を踏まえると、事業領域の複雑性が高いと考えられ

る多角化企業においても、アドバイザーとしての機能がより重要になると思われる。乾ほか(2014)が示唆するよ

うに、女性役員比率とイノベーション活動の間に相関関係がみられる点を考慮すれば、多角化が進展する企

業ほど、イノベーションにつながるようなアドバイザー機能を期待して女性役員を登用する可能性が考えられ

る。

(分析データ)

本節では、CSR企業総覧 2015年版に掲載される役員(執行役員を除く)の男女別人数を用いる。女性役員

の登用と企業特性の関係を分析する際には、各変数(設立年数を除く)における 2011~2013 年度までの 3 年

間の平均値を用いる。他方、企業業績との関係を分析する際には、経常 ROE を用いる。分析に使用する財務

変数の実績値は、日経NEEDSのデータを用いる。分析対象となるサンプルは、CSR企業総覧 2015年版に掲

載される企業のうち、女性役員の人数が開示されている一般事業会社 827社である。なお、異常値への対処と

して、企業特性と企業業績を表す変数のうち上下 1%の値を超える場合には、1%の閾値で置き換える処理

(winsorization)を行う。

各変数の定義を図表 4-18 に示す。Panel A はボードダイバーシティに関する変数である。本節では、主とし

て女性役員数に注目した分析結果を報告するが、女性役員比率による分析も行い、分析結果に違いがみられ

ないことを確かめている。Panel B は、企業特性を表す変数であり、女性役員の登用と企業特性の関係を分析

する際に分析対象となる。設立年数を除く、全ての変数について、2011~2013 年度における平均を用いてお

り、女性役員の登用に影響を与える変数としてみるものである。ここでは、企業財務や企業収益などの標準的

な変数の以外に、企業の多角化の程度を表す指標として、セグメント数、コア企業ダミー、ハーフィンダール指

数18、海外売上高比率に注目する。多角化が進展するほど、セグメント数やハーフィンダール指数は大きくなる。

コア企業ダミーは、多角化の質が関連的なものである場合には 1 をとり、そうでない場合には 0 をとる変数であ

る。海外売上高比率は、グローバル化の程度を表すと考えられることから、広義の意味では多角化と捉えられ

る変数である。Panel Cは、企業の業績を表す変数であり、2013年度の実績ベースの経常 ROE と、2014年度

18 ハーフィンダール指数は、市場の集中度を測る指標であり、ここでは、企業のセグメント別売上高の集中度を測る指標として用

いる。企業における多角化が進展するほど集中度は低下する。なお、計算定義は図表 4-18 を参照。

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の予想ベースの経常 ROE を取り上げる。なお、後者については、東洋経済新報社が予想する経常利益につ

いて、2015年 2月末現在で取得できる直近の予想値をもとに算出する。

次に、各変数の記述統計を図表 4-19に示す。Panel Aは、分析対象企業のうち製造業の統計量を示すのに

対して、Panel Bは非製造業の統計量を示している。企業数は、それぞれ 432社、395社となっている。役員数

合計のオブザベーションが女性役員数を下回るのは、女性役員数のみ開示されるケースがあるためである。

製造業における女性役員の状況についてみると、女性役員数の平均は 0.21人となっており、中央値は 0人

である。同様に、女性役員比率は 1.8%と低い水準であることがわかる。一方、非製造業においても、女性役員

数の平均は 0.30人、中央値は 0人と、製造業と同様の傾向が示される。また、女性役員比率は 2.6%と殆ど同

程度の水準になっている。役員数合計の平均値をみると、製造業と非製造業で、それぞれ11.02人、10.78人と

なっているほか、標準偏差や中央値は殆ど同程度となっており、両者の水準に違いはみられない。その他の

変数については、後述する女性役員の登用と企業特性の関係においてみていくことにする。

図表 4-18 変数の定義

注:*の表記がある変数は 2011~2013年度の平均値

(出所) 日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

Panel A:ボードダイバーシティ

女性役員数 女性役員数

役員数合計 男性役員数+女性役員数

女性役員比率 女性役員数/役員数合計

Panel B:企業特性

外国人持株比率 * 外国人持株数/発行済株式数

経常ROE * 経常利益/自己資本

ROA * 事業利益/総資産

売上成長率 * 売上高/前期の売上高-1

有利子負債比率 * (借入金+社債+転換社債)/総資産

研究開発費率 * 研究開発費/売上高

総資産 * 総資産の対数

設立年数 社齢

セグメント数 * セグメント情報として報告される事業の数

コア企業ダミー * 任意のセグメントの売上高が売上高合計の80%以上を占める場合に1、他の場合は0

ハーフィンダール指数 * 1-Σ (セグメント別売上高/売上高)2

海外売上高比率 * 海外売上高/売上高

Panel C:企業業績

経常ROE(実績) 2013年度の実績経常ROE

経常ROE(予想) 2014年度の予想経常ROE

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図表 4-19 変数の記述統計

(出所) 日経 NEEDS、東洋経済新報社、東洋経済新報社・CSR企業総覧をもとに

日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

オブザベーション

平均 標準偏差 最小値 中央値 最大値

Panel A:製造業女性役員数 432 0.21 0.63 0 0 7役員数合計 428 11.02 5.28 2 10 34女性役員比率 428 1.8% 5.0% 0 0 31.3%外国人持株比率 565 16.0% 13.8% 0 13.2% 50.3%経常ROE 565 11.4% 9.7% -50.0% 11.1% 56.3%ROA 565 5.5% 4.8% -24.3% 5.2% 26.5%売上成長率 556 9.5% 12.7% -33.9% 8.5% 88.0%有利子負債比率 565 17.7% 14.6% 0 15.6% 69.3%研究開発費率 565 3.3% 3.8% 0 2.3% 22.5%総資産 565 11.6 1.8 6.8 11.5 15.3設立年数 565 68.4 22.1 1 67 133セグメント数 565 2.61 1.49 1 2 7コア企業ダミー 565 0.45 0.50 0 0 1ハーフィンダール指数 565 0.35 0.28 0 0.38 0.79海外売上高比率 565 31.5% 27.0% 0 28.7% 84.3%経常ROE(実績) 559 11.5% 9.3% -27.6% 11.1% 53.7%経常ROE(予想) 559 12.4% 10.5% -20.2% 11.2% 63.9%

Panel B:非製造業女性役員数 395 0.30 0.80 0 0 10役員数合計 388 10.78 5.24 2 10 34女性役員比率 388 2.6% 6.2% 0 0 31.3%外国人持株比率 591 10.6% 12.8% 0 4.3% 50.3%経常ROE 591 13.0% 12.9% -56.0% 11.8% 56.3%ROA 591 5.8% 6.0% -24.3% 4.8% 26.5%売上成長率 574 8.6% 14.4% -33.9% 6.4% 88.0%有利子負債比率 591 18.6% 17.6% 0 14.4% 69.3%研究開発費率 591 0.3% 1.6% 0 0.0% 22.5%総資産 591 10.8 2.0 6.8 10.5 15.3設立年数 591 48.8 25.2 3 48 129セグメント数 591 2.64 1.52 1 2 7コア企業ダミー 591 0.52 0.50 0 1 1ハーフィンダール指数 590 0.31 0.27 0 0.30 0.79海外売上高比率 591 5.0% 13.4% 0 0.0% 84.3%経常ROE(実績) 585 13.2% 11.8% -27.6% 11.8% 53.7%経常ROE(予想) 585 14.8% 13.1% -20.2% 12.5% 63.9%

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(女性役員の有無による企業特性の違い)

図表 4-20は、サンプルを製造業(Panel A)と非製造業(Panel B)に分類した上で、さらに女性役員がいない

企業(図表 4-20 の①)、女性役員が 1 名の企業(同②)、女性役員が 2 名以上の企業(同③)、にそれぞれ分

類した場合の各変数の平均値を示したものである。また、女性役員がいない企業に対して、1 名および 2 名以

上の企業における企業特性の違いを明らかにするために、それぞれ平均の差を算出し、統計的な有意性を確

かめる。

図表 4-20女性役員の有無による企業特性の違い

注:有意水準 1%(***)、5%(**)に応じてアスタリスクを付与

(出所) 日経 NEEDS、東洋経済新報社、東洋経済新報社・CSR企業総覧をもとに

日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

分析の結果、製造業と非製造業に共通する傾向として、女性役員がいない企業に比べて、女性役員が 1名

もしくは 2名以上いる企業は、外国人持株比率が高く、総資産が大きい傾向がみてとれる。外国人持株比率が

高い点については、辻本(2013)の分析結果と整合的なものとなっており、外国人投資家の存在が女性登用の

ドライバーとなる可能性を示唆している。次に、製造業特有の傾向として、女性役員が 1 名いる企業では、セグ

メント数が多く、非関連多角化の傾向が強く、ハーフィンダール指数が大きい傾向がみてとれる。すなわち、女

性役員の登用と企業の多角化には相関関係があることが示唆される。ただし、女性役員が 2 名以上いる企業

では、このような傾向はみられないことから、上述の仮説(多角化が進展する企業ほど、イノベーションにつなが

女性役員なし 女性役員1名 差 女性役員2名以上 差

① ② ②-① ③ ③-①

Panel A:製造業

外国人持株比率 14.5% 22.8% 8.3% *** 28.8% 14.3% ***

経常ROE 11.2% 12.1% 0.8% 14.4% 3.2% **

ROA 5.5% 5.2% -0.3% 8.0% 2.5% ***

売上成長率 9.2% 9.0% -0.2% 10.8% 1.6%

有利子負債比率 17.7% 19.8% 2.1% 10.1% -7.6% ***

研究開発費率 3.1% 4.1% 1.0% 4.7% 1.5%

総資産 11.4 12.5 1.1 *** 12.8 1.4 ***

設立年数 68.4 70.2 1.9 64.8 -3.5

セグメント数 2.5 3.2 0.7 *** 2.6 0.1

コア企業ダミー 0.46 0.34 -0.12 ** 0.52 0.06

ハーフィンダール指数 0.34 0.43 0.09 ** 0.35 0.01

海外売上高比率 30.8% 37.4% 6.6% 29.5% -1.3%

(企業数) 349 60 23

Panel B:非製造業

外国人持株比率 9.4% 16.0% 6.7% *** 17.4% 8.1% ***

経常ROE 13.2% 12.3% -0.9% 16.7% 3.5%

ROA 5.9% 5.6% -0.2% 7.7% 1.8%

売上成長率 8.6% 8.2% -0.4% 9.1% 0.5%

有利子負債比率 18.1% 23.0% 4.9% 16.2% -1.9%

研究開発費率 0.3% 0.3% 0.0% 0.1% -0.1%

総資産 10.5 11.7 1.1 *** 12.1 1.5 ***

設立年数 49.2 46.3 -2.9 44.1 -5.1

セグメント数 2.6 2.7 0.1 2.9 0.3

コア企業ダミー 0.51 0.61 0.10 0.49 -0.03

ハーフィンダール指数 0.31 0.29 -0.02 0.37 0.06

海外売上高比率 4.8% 4.3% -0.6% 6.8% 1.9%

(企業数) 298 65 32

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るようなアドバイザー機能を期待して女性役員を登用する可能性)が示唆されると判断するのは早計である19。

consistent な結果が得られなかった要因として、女性役員が 2 名以上いる企業は 23 社と少ないため検出力が

低下した可能性があるほか、1名を登用する企業と、2名以上登用する企業では、女性役員を登用する動機が

異なる可能性が考えられる。その一方、女性役員が 2 名以上いる企業では、経常 ROE や ROA が高く、有利

子負債比率が低い傾向がみられる。

(女性役員の有無による企業業績の違い)

次に、女性役員の有無と企業業績の関係について分析する。まず、女性役員が 1名いる企業と女性役員が

いない企業について比較したところ、女性役員が 1名いる企業の企業業績がよいという傾向は見出せなかった。

そこで、女性役員が 2 名以上いる企業について分析したところ、製造業および非製造業の何れにおいても企

業業績がよい傾向が確認された(図表 4-21)。とりわけ、製造業における経常 ROE(実績)は 14.4%となってお

り、女性役員がいない企業に比べて 3.2%ポイント高いものとなっている。この差は 5%水準で有意である。また、

非製造業における経常 ROE(実績)は 16.7%と、同様に 3.5%ポイント高いものである(ただし、有意水準は

10%に低下)。これらの分析結果は、あくまで予備的な分析であり、因果関係を示すものではない。しかしなが

ら、女性役員が複数いることの重要性を指摘した海外の先行研究と整合的な結果となっており、女性役員を登

用することにベネフィットがある可能性を示唆するものと思われる。

図表 4-21女性役員の有無による企業業績の違い

(女性役員なし vs. 女性役員 2名以上)

注:有意水準 1%(***)、5%(**)、10%(*)に応じて、女性役員が 2名以上いる企業のラベルにアスタリスクを付与

(出所) 日経 NEEDS、東洋経済新報社、東洋経済新報社・CSR企業総覧をもとに日興フィナンシャル・インテリジェンス作成

19

このほか、一般に多角化の程度は企業規模と相関するため、このような他の要因をコントロールすることが必要である。

11.2%

12.4%

14.4%**

12.7%

10%

12%

14%

16%

18%

経常ROE(実績) 経常ROE(予想)

女性役員なし(製造業) 女性役員2名以上(製造業)

13.2%

14.9%

16.7%*

17.6%

12%

14%

16%

18%

20%

経常ROE(実績) 経常ROE(予想)

女性役員なし(非製造業) 女性役員2名以上(非製造業)

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4.5 結論(まとめ)

本章では、ボードダイバーシティの効果に注目して、女性役員の登用が企業経営に与える影響に関するサ

ーベイを行った。海外の先行研究によると、多くの論文において、女性役員を登用することは、企業業績にプ

ラスの影響を与える可能性があることが報告されている。この結果を説明する有力な理論として、資源依存理

論(取締役構成の多様化が異なる価値の資源を企業に供給するため、企業のパフォーマンスが向上する)が

挙げられる。ただし、ダイバーシティの効果は国や地域によって異なるため、無条件にプラスに働くわけではな

い。また、トークニズムとして説明されるような企業行動もみられるなど、女性役員が十分に活躍できないケース

も報告されている。

国内の先行研究についてみると、女性役員の登用と株価や企業業績の間にはプラスの相関関係があること

が報告されている。この要因として、差別的嗜好をもつ企業の存在、女性役員が経営に参画することによる生

産性向上やイノベーション活動の促進などが示唆される。

次に、我が国企業における女性役員の登用と企業特性および企業業績との関係を確かめた。分析の結果、

製造業および非製造業に共通する傾向として、女性役員がいない企業に比べて、女性役員が 1 名もしくは 2

名以上いる企業は、外国人持株比率が高く、総資産が大きい傾向が明らかとなった。製造業の特徴として、女

性役員が 1名いる企業では、多角化の程度が高く、女性役員が 2名以上いる企業では、経常ROEやROAが

高く、有利子負債比率が低い傾向がみられた。

企業業績との関係についてみると、女性役員がいない企業と 1 名いる企業との比較では、明確な傾向は見

出せなかったが、女性役員が 2 名以上いる企業との比較では、一部の分析結果において企業業績が優れて

いる様子が確認された。これらの分析結果は、因果関係を確かめたものではないものの、女性役員が複数いる

ことは、企業経営にプラスの影響を与える可能性があることを示唆している。この点を確認することは、今後の

課題であろう。

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