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第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 1
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動
3.1 概説
鉄筋コンクリート構造物
• 作用荷重とその累積 −→ 十分な耐力、疲労耐力
• 耐用期間中の気象作用など −→ 十分な耐久性
作用荷重: 活荷重、衝撃、自重、温度変化、風、雪、土圧、水圧など
=⇒ 曲げ、軸方向圧縮力、せん断、ねじりなどの変形や応力変化
鉄筋コンクリート部材の挙動
(1) 曲げを受ける部材
(2) 曲げと軸力を受ける部材
(3) せん断を受ける部材
鉄筋とコンクリートの相互作用
(1) イニシャルストレス
(2) 応力の再分配
(3)ひび割れ
(4) 付着および定着
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 2
3.2 作用荷重下の鉄筋コンクリートの挙動
3.2.1 曲げを受ける部材の挙動
図 -3.1 RC梁断面の応力状態 (曲げ引張破壊)
図 -3.2 RC梁のM − δ曲線
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 3
• 鉄筋コンクリート断面の曲げモーメントの作用による破壊
– 鉄筋量少ないとき =⇒ 引張側鉄筋の降伏 先行 =⇒ 曲げ引張破壊
– 鉄筋量多いとき =⇒ 圧縮側コンクリートの圧壊 先行 =⇒ 曲げ圧縮破壊
• 最終的な破壊 =⇒ 圧縮側コンクリートの破壊
鉄筋が降伏後から破断に至るまでの伸びが非常に大きい =⇒ 鉄筋の破断は生じない
• 設計鉄筋の降伏によって破壊 =⇒ 曲げ引張破壊の設計
– 経済的
– 大きなたわみ :じん性大 =⇒ 部材の破壊の予知
写真 -3.1 RC梁の曲げ破壊状況
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 4
3.2.2 曲げと軸力を受ける部材の挙動
(1) 軸力が断面図心位置に作用する場合
• 軸方向圧縮応力とひずみの関係
– 端部からある程度離れた断面:一様な圧縮応力 St.Venant の原理
– コンクリート最大応力点のひずみ ε′0 ≈ 鉄筋の降伏ひずみ εy
– 終局時 鉄筋とコンクリートは同時に破壊 終局耐力 = 全断面積 × 各強度
図 -3.3 軸方向圧縮応力とひずみの関係
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 5
• 柱の変形と耐力
– ぜい性破壊 :破壊直前まで外観は変わりなく、破壊直前にかぶりコンクリートが剥落し、急激に耐荷
力を失う
– らせん鉄筋 : かぶりコンクリート剥落後も、らせん鉄筋の内側のコンクリートは拘束され、耐荷力
を維持したまま破壊に至るまで大きな変形に耐えうる。
図 -3.4 柱の変形と耐力
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 6
(2) 軸力が偏心して作用する場合
• 軸方向圧縮力N′が図心軸から eだけ偏心して作用 =⇒ 軸力 + 曲げモーメント
• eが大きくなるにつれて、圧縮側コンクリート応力が増加 =⇒ 軸方向耐荷力低下
• 引張側鉄筋のひずみ : eが小さいとき圧縮、 eがある程度以上になると引張
• 軸力と曲げモーメントの比率によって異なる。軸方向圧縮力N
′と曲げモーメント Muの関係 : 相互作用図 (interaction curve)
図 -3.5 偏心軸方向圧縮力
図 -3.6 相互作用図と断面のひずみ分布
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 7
3.2.3 せん断力を受ける部材の挙動 =⇒ 曲げモーメント作用下とはかなり違った挙動
図 -3.7 等分布荷重を受ける梁の応力状態
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 8
図 -3.8 鋼材を用いた梁の主応力状態
図 -3.9 斜めひび割れへの伸展後の応力の流れ
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 9
写真 -3.2 斜めひび割れ発生による RC部材のせん断破壊
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 10
図 -3.10 せん断破壊耐力とせん断破壊の形式
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 11
図 -3.11 せん断補強鉄筋の配置と I形断面のせん断破壊の例
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 12
3.3 鉄筋とコンクリートの相互作用
3.3.1 相互作用の種類
1© コンクリートの収縮が鉄筋に拘束されて,外力による応力と無関係な応力が生じる.
(イニシャルストレス, initial stress)
2© コンクリートのクリープ変形により,鉄筋とコンクリートの力の分担割合の変化 (応力
の再分配)が起こる.
3© コンクリートの伸び能力が小さいため,引張りを受ける鉄筋まわりのコンクリートにひ
び割れが生じる.
4© 鉄筋とコンクリートの変状性状の違いのために,両者間の付着および定着機構が複雑に
なる.
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 13
3.3.2 イニシャルストレスと応力の再分配
(1) イニシャルストレス
• コンクリートの収縮
– 乾燥収縮 : コンクリート中の水分が
蒸発することによって収縮する現象
– 自己収縮 : セメントの水和反応によ
り水分が消費され収縮する現象
温度・湿度,部材断面の形状・寸法,コンク
リートの配合,骨材の性質,セメントの種
類,コンクリートの締固め,養生条件
• 鉄筋: 収縮しない
• 鉄筋コンクリート :コンクリートの収縮が
鉄筋によって拘束
∗ 鉄筋 −→ 圧縮応力,
∗ コンクリート −→ 引張応力
図 -3.12 イニシャルストレスの発生
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 14
問 題
引張強度が小さいコンクリートの欠点を補うために引張部に鉄筋を配置するのが鉄筋コンクリートの基本
原理である.しかしながら,図 -3.13では,鉄筋比が大きいほど,コンクリートに発生するひび割れの数
が増加している.この理由を考えよ?
図 -3.13 ひび割れの発生
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 15
(2) 応力の再分配
クリープ : 時間とともに変形が増大する現象 コンクリート ⇐= 持続荷重
図 -3.14 クリープ変形
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 16
クリープの影響
• 鉄筋コンクリート柱,梁の圧縮鉄筋コンクリート =⇒ 応力度低下, 軸方向鉄筋 =⇒ 応力度増大,降伏点を超える場合もある!
• プレストレストコンクリート =⇒プレストレスの損失の原因
図 -3.15 コンクリートクリープによる柱断面のコンクリート応力度と鉄筋応力度の変化
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 17
クリープを考慮した設計
• デービス・グランビーユの法則 (Davice-Granville)
「持続荷重による応力が静的強度の 1/3程度以内であれば,クリープひずみは応力
度に比例する」
ε′cc = ϕε
′e = ϕ
σ′cp
Ect
ε′cc : クリープひずみ,ε
′e :載荷時の瞬間弾性ひずみ,ϕ : クリープ係数
σ′cp :作用圧縮応力,Ect :載荷時材齢のヤング係数
• 弾性ひずみとクリープひずみを分離できない場合−→ 有効ヤング係数:Ee,全測定ひずみ:ε
ε = ε′cc + ε
′e = (1 + ϕ)
σ′cp
Ect
Ee =Ect
1 + ϕ
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 18
3.3.3 コンクリートのひび割れ
(1) 横ひび割れ
– 引張鉄筋周辺のコンクリート −→ 鉄筋の伸びに追随できず発生 鉄筋と直角方向
図 -3.16 鉄筋コンクリート梁のひび割れの発生状況
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 19
– 低鉄筋応力で発生 −→ 使用状態での発生は不可避, RC: 横ひび割れの発生を前提にした設計
∗ 日射,風雨 −→ コンクリートの乾燥や乾湿繰返し −→ ひび割れ数増加,ひび割れ幅増大
∗ ひび割れ幅 −→ 大 −→鉄筋腐食– 鉄筋コンクリートの設計施工 −→ 耐久性設計 使用状態において横ひび割れ幅を制御
図 -3.17 実構造物における横ひび割れの発生状況
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 20
(2) 内部ひび割れ
写真 -3.3 引張異形鉄筋周辺のコンクリートに
発生した内部ひび割れ 図 -3.18 内部ひび割れ発生状況と鉄筋とコン
クリートとの力のやりとり
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 21
写真 -3.4 狭い間隔に並行に配置された鉄筋周辺の内部ひび割れ状況
図 -3.19 内部ひび割れの立体形状
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 22
(3) 縦ひび割れ
– 異形鉄筋まわりのコンクリート −→ 鉄筋軸に平行に割裂して発生
– 丸鋼 −→ 鉄筋腐食
鉄筋の定着部や重ね継手部 =⇒ 部材や構造物の破壊に直接つながる!
図 -3.20 梁の主鉄筋定着部における縦ひび割れ
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 23
3.3.4 付着 : 鉄筋とコンクリートとの界面でせん断に抵抗する作用
(1) 付着機構
1© コンクリート中のペーストと鉄筋表面との間の化学的粘着作用
2© コンクリートと鉄筋表面との摩擦作用
3© 異形鉄筋表面の突起による機械的作用
∗ 節とコンクリートのかみ合せ∗ 櫛歯状コンクリートの変形による鉄筋締付け作用 −→ 摩擦抵抗が増大
(2) 付着に影響を及ぼす機構
a. 鉄筋の表面の状態および形状
異形鉄筋の節間隔,高さ,傾き
節間隔:小,節高:大 −→ 付着特性 大
b. コンクリートの強度 引張強度図 -3.21 異形鉄筋の節形状
c. 鉄筋の埋込み位置と方向
∗ 水平鉄筋は鉛直鉄筋よりも付着強度が低下 ⇐= コンクリートのブリージング
∗ 上端筋より下端筋のほうが付着強度大 ⇐= コンクリートの打込み高さ
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 24
3.3.5 鉄筋の定着および重ね継手
(1) 鉄筋の定着
• 鉄筋端部の定着 : きわめて重要 !
不完全 −→ 鉄筋端部抜け出し −→ 部材の破壊
フック
• 異形鉄筋の定着破壊形式かぶりコンクリートの厚さ,鉄筋間隔,
横方向補強鉄筋量
– 普通程度のかぶり :
コンクリートが鉄筋に沿って割裂
(縦ひび割れ)
– かぶり大,横方向補強筋 :
コンクリートのせん断,圧壊
引き抜け定着破壊
図 -3.22 異形鉄筋の定着破壊の形式
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 25
写真 -3.5 マッシブなコンクリートに埋め込まれた鉄筋定着部の内部ひび割れ発生状況
図 -3.23 コーン状抜け出し定着破壊
第 3章 鉄筋コンクリートの挙動 26
(2) 重ね継手
鉄筋直径:16mm
鉄筋応力度:254N/mm2
重ね合せ長さ:25cm
純間隔:8mm
写真 -3.6 異形鉄筋の重ね継手内部のひび割れ発生状況
図 -3.24 異形鉄筋の重ね継手の補強方法の一例