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OSS モデルカリキュラムの学習ガイダンス 3-1- . ネットワークアーキテクチャに関する知識 1. 科目の概要 TCP/IP プロトコルの全体像について解説し、TCP/IP を用いた通信で構成されているイ ンターネットや LAN (Local Area Network)の仕組みと特徴を説明する。また OSI 7 層モ デルと対比しつつ、現代におけるコンピュータネットワークの階層構造について説明する。 2. 習得ポイント 本科目の学習により習得することが期待されるポイントは以下の通り。 習得ポイント 説明 シラバスの対応コマ 3-1-基-1. ネットワークの構成とOSI7層モデ IT社会の基盤となる基本的なネットワークの構成と、各構成要素の機能につ いて解説する。またOSIの7階層モデルについて言及し、階層構造を成す意 味と、物理層からアプリケーション層まで各層の機能を説明する。 1,2 3-1-基-2. インターネットの構成と特徴・通信 プロトコル インターネットの基本概念とアーキテクチャのモデルを解説する。インター ネットはルータによって接続されたネットワークでパケットを交換することに よって通信が行われるモデルであることを説明する。 3 3-1-基-3. LAN(Local Area Network)の仕組 みと特徴 LAN (Local Area Network)について、データリンク層におけるプロトコルの観 点からその仕組みと特徴を解説する。ここでは有線LANを取り上げイーサ ネット(IEEE 802.3) のCSMA/CD方式においてコリジョンを回避する方法、ス イッチング技術なども紹介する。またVLAN (Virtual LAN)の話題についても 触れる。 4 3-1-基-4. 無線ネットワークの種類と特徴 無線通信によるネットワークの仕組みと特徴、有線ネットワークとの違いと留 意点などを解説する。具体的には、現在広く利用されているIEEE802.11およ び802.15.1のプロトコルとその内容について言及する。 5,6 3-1-基-5. TCP/IPの仕様とOSI7層モデルと の対応 インターネットにおける通信の概要を説明し、インターネット上におけるアプリ ケーション間の通信がどのように実現されているかを示す。またTCP/IPの仕 様を解説し、TCP/IPとOSIの7層モデルの対応関係を説明する。 7,9,10 3-1-基-6. IP通信(IPv4)の仕組みとデータグ ラム IP通信の形態と通信プロトコルの種類、IPの基本機能や通信の仕組み、特 徴について解説する。またIPパケット(IPデータグラム)の構造や取扱い方な ど、IP通信に関連するいくつかのトピックを紹介する。 7,8 3-1-基-7. IPアドレスとルーティングの基礎 IPアドレスの構成と、インターネット上に存在するふたつのノード間の通信を 実現するために考案されたルーティングの仕組みを説明する。ルータの機 能、ルーティングテーブル、デフォルトゲートウェイなど、ルーティングを実現 する個々の概念について解説を加える。 9,10 3-1-基-8. UDP通信の仕組み UDP通信の仕様、役割とその特徴について解説する。UDP通信はコネクショ ンレスの通信を行うプロトコルである。確実に相手ホストにUDP通信が到着 するかは保証していない。シンプルな構造なプロトコルである。 11 3-1-基-9. TCP通信の仕組みと応用 TCP通信の仕様、役割とその特徴について解説する。TCPの接続開始時の スリーウェイハンドシェイクやアプリケーション通信におけるTCPの役割や TCP通信の制限事項について触れる。 12 3-1-基-10. ICMP / RIP / ARPプロトコル IPプロトコル以外にもTCP/IPネットワークを制御するにはいくつかの重要な プロトコルがある。ここではICMP(Internet Control Message Protocol)、 RIP(Routing Information Protocol)、ARP(Address Resolution Protocol)を取 り上げ説明する。 3 【学習ガイダンスの使い方】 1. 「習得ポイント」により、当該科目で習得することが期待される概念・知識の全体像を把握する。 2. 「シラバス」、「IT 知識体系との対応関係」、「OSS モデルカリキュラム固有知識」をもとに、必要に応じて、 従来の IT 教育プログラム等との相違を把握した上で、具体的な講義計画を考案する。 3. 習得ポイント毎の「学習の要点」と「解説」を参考にして、講義で使用する教材等を準備する。

3-1-基 ネットワークアーキテクチャに関する知識 - IPAいて解説する。またOSIの7階層モデルについて言及し、階層構造を成す意 味と、物理層からアプリケーション層まで各層の機能を説明する。1,2

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OSS モデルカリキュラムの学習ガイダンス

3-1-基. ネットワークアーキテクチャに関する知識

1. 科目の概要

TCP/IP プロトコルの全体像について解説し、TCP/IP を用いた通信で構成されているイ

ンターネットや LAN (Local Area Network)の仕組みと特徴を説明する。また OSI の 7 層モ

デルと対比しつつ、現代におけるコンピュータネットワークの階層構造について説明する。

2. 習得ポイント

本科目の学習により習得することが期待されるポイントは以下の通り。

習得ポイント 説 明 シラバスの対応コマ

3-1-基-1. ネットワークの構成とOSI7層モデル

IT社会の基盤となる基本的なネットワークの構成と、各構成要素の機能について解説する。またOSIの7階層モデルについて言及し、階層構造を成す意味と、物理層からアプリケーション層まで各層の機能を説明する。

1,2

3-1-基-2. インターネットの構成と特徴・通信プロトコル

インターネットの基本概念とアーキテクチャのモデルを解説する。インターネットはルータによって接続されたネットワークでパケットを交換することによって通信が行われるモデルであることを説明する。

3

3-1-基-3. LAN(Local Area Network)の仕組みと特徴

LAN (Local Area Network)について、データリンク層におけるプロトコルの観点からその仕組みと特徴を解説する。ここでは有線LANを取り上げイーサネット(IEEE 802.3) のCSMA/CD方式においてコリジョンを回避する方法、スイッチング技術なども紹介する。またVLAN (Virtual LAN)の話題についても触れる。

4

3-1-基-4. 無線ネットワークの種類と特徴無線通信によるネットワークの仕組みと特徴、有線ネットワークとの違いと留意点などを解説する。具体的には、現在広く利用されているIEEE802.11および802.15.1のプロトコルとその内容について言及する。

5,6

3-1-基-5. TCP/IPの仕様とOSI7層モデルとの対応

インターネットにおける通信の概要を説明し、インターネット上におけるアプリケーション間の通信がどのように実現されているかを示す。またTCP/IPの仕様を解説し、TCP/IPとOSIの7層モデルの対応関係を説明する。

7,9,10

3-1-基-6. IP通信(IPv4)の仕組みとデータグラム

IP通信の形態と通信プロトコルの種類、IPの基本機能や通信の仕組み、特徴について解説する。またIPパケット(IPデータグラム)の構造や取扱い方など、IP通信に関連するいくつかのトピックを紹介する。

7,8

3-1-基-7. IPアドレスとルーティングの基礎

IPアドレスの構成と、インターネット上に存在するふたつのノード間の通信を実現するために考案されたルーティングの仕組みを説明する。ルータの機能、ルーティングテーブル、デフォルトゲートウェイなど、ルーティングを実現する個々の概念について解説を加える。

9,10

3-1-基-8. UDP通信の仕組みUDP通信の仕様、役割とその特徴について解説する。UDP通信はコネクションレスの通信を行うプロトコルである。確実に相手ホストにUDP通信が到着するかは保証していない。シンプルな構造なプロトコルである。

11

3-1-基-9. TCP通信の仕組みと応用TCP通信の仕様、役割とその特徴について解説する。TCPの接続開始時のスリーウェイハンドシェイクやアプリケーション通信におけるTCPの役割やTCP通信の制限事項について触れる。

12

3-1-基-10. ICMP / RIP / ARPプロトコル

IPプロトコル以外にもTCP/IPネットワークを制御するにはいくつかの重要なプロトコルがある。ここではICMP(Internet Control Message Protocol)、RIP(Routing Information Protocol)、ARP(Address Resolution Protocol)を取り上げ説明する。

3

【学習ガイダンスの使い方】

1. 「習得ポイント」により、当該科目で習得することが期待される概念・知識の全体像を把握する。2. 「シラバス」、「IT 知識体系との対応関係」、「OSS モデルカリキュラム固有知識」をもとに、必要に応じて、

従来の IT 教育プログラム等との相違を把握した上で、具体的な講義計画を考案する。3. 習得ポイント毎の「学習の要点」と「解説」を参考にして、講義で使用する教材等を準備する。

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OSS モデルカリキュラムの学習ガイダンス

3. IT 知識体系との対応関係

「3-1-基. ネットワークアーキテクチャに関する知識」と IT 知識体系との対応関係は以下の通り。科目名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

3-1-基. ネットワーク・アーキテクチャに関する知識

オープンネットワークの概念

通信の形態とプロトコル

インターネット通信の仕組み

LANネットワークの仕組み

無線ネットワークの種類

無線ネットワークの仕組み

オープンネットワークの通信仕様

IPネットワークの仕組み

ルーティングの仕組み

ルーティングプロトコルの仕様 UDPの仕組み TCPの仕組み

科目名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

1

IT-IAS1.基礎的な問題

IT-IAS2.情報セキュリティの仕組み(対策)

IT-IAS3.運用上の問題

IT-IAS4.ポリシー

IT-IAS5.攻撃 IT-IAS6.情報セキュリティ分野

IT-IAS7.フォレンジック(情報証拠)

IT-IAS8.情報の状態

IT-IAS9.情報セキュリティサービス

IT-IAS10.脅威分析モデル

IT-IAS11.脆弱性

2

IT-SP1.プロフェッショナルとしてのコミュニケーション

IT-SP2.コンピュータの歴史

IT-SP3.コンピュータを取り巻く社会環境

IT-SP4.チームワーク

IT-SP5.知的財産権

IT-SP6.コンピュータの法的問題

IT-SP7.組織の中のIT

IT-SP8.プロフェッショナルとしての倫理的な問題と責任

IT-SP9.プライバシーと個人の自由

3

IT-IM1.情報管理の概念と基礎

IT-IM2.データベース問合わせ言語

IT-IM3.データアーキテクチャ

IT-IM4.データモデリングとデータベース設計

IT-IM5.データと情報の管理

IT-IM6.データベースの応用分野

4

IT-WS1.Web技術 IT-WS2.情報アーキテクチャ

IT-WS3.デジタルメディア

IT-WS4.Web開発 IT-WS5.脆弱性 IT-WS6.ソーシャルソフトウェア

5

IT-PF1.基本データ構造

IT-PF2.プログラミングの基本的構成要素

IT-PF3.オブジェクト指向プログラミング

IT-PF4.アルゴリズムと問題解決

IT-PF5.イベント駆動プログラミング

IT-PF6.再帰

6

IT-IPT1.システム間通信

IT-IPT2.データ割り当てと交換

IT-IPT3.統合的コーディング

IT-IPT4.スクリプティング手法

IT-IPT5.ソフトウェアセキュリティの実現

IT-IPT6.種々の問題

IT-IPT7.プログラミング言語の概要

7

CE-SWE0.歴史と概要

CE-SWE1.ソフトウェアプロセス

CE-SWE2.ソフトウェアの要求と仕様

CE-SWE3.ソフトウェアの設計

CE-SWE4.ソフトウェアのテストと検証

CE-SWE5.ソフトウェアの保守

CE-SWE6.ソフトウェア開発・保守ツールと環境

CE-SWE7.ソフトウェアプロジェクト管理

CE-SWE8.言語翻訳

CE-SWE9.ソフトウェアのフォールトトレランス

CE-SWE10.ソフトウェアの構成管理

CE-SWE11.ソフトェアの標準化

8

IT-SIA1.要求仕様

IT-SIA2.調達/手配

IT-SIA3.インテグレーション

IT-SIA4.プロジェクト管理

IT-SIA5.テストと品質保証

IT-SIA6.組織の特性

IT-SIA7.アーキテクチャ

9

IT-NET1.ネットワークの基礎

IT-NET2.ルーティングとスイッチング

IT-NET3.物理層 IT-NET4.セキュリティ

IT-NET5.アプリケーション分野

IT-NET6.ネットワーク管理

CE-NWK0.歴史と概要

CE-NWK1. 通信ネットワークのアーキテクチャ

CE-NWK2.通信ネットワークのプロトコル

CE-NWK3.LANとWAN

CE-NWK4.クライアントサーバコンピューティング

CE-NWK5.データのセキュリティと整合性

CE-NWK6.ワイヤレスコンピューティングとモバイルコンピューティング

CE-NWK7.データ通信

CE-NWK8.組込み機器向けネットワーク

CE-NWK9.通信技術とネットワーク概要

CE-NWK10.性能評価

CE-NWK11.ネットワーク管理

CE-NWK12.圧縮と伸張

CE-NWK13.クラスタシステム

CE-NWK14.インターネットアプリケーション

CE-NWK15.次世代インターネット

CE-NWK16.放送

11

IT-PT1.オペレーティングシステム

IT-PT2.アーキテクチャと機構

IT-PT3.コンピュータインフラストラクチャ

IT-PT4.デプロイメントソフトウェア

IT-PT5.ファームウェア

IT-PT6.ハードウェア

12

CE-OPS0.歴史と概要

CE-OPS1.並行性 CE-OPS2.スケジューリングとディスパッチ

CE-OPS3.メモリ管理

CE-OPS4.セキュリティと保護

CE-OPS5.ファイル管理

CE-OPS6.リアルタイムOS

CE-OPS7.OSの概要

CE-OPS8.設計の原則

CE-OPS9.デバイス管理

CE-OPS10.システム性能評価

13

CE-CAO0.歴史と概要

CE-CAO1.コンピュータアーキテクチャの基礎

CE-CAO2.メモリシステムの構成とアーキテクチャ

CE-CAO3.インタフェースと通信

CE-CAO4.デバイスサブシステム

CE-CAO5.CPUアーキテクチャ

CE-CAO6.性能・コスト評価

CE-CAO7.分散・並列処理

CE-CAO8.コンピュータによる計算

CE-CAO9.性能向上

14

IT-ITF1.ITの一般的なテーマ

IT-ITF2.組織の問題

IT-ITF3.ITの歴史

IT-ITF4.IT分野(学科)とそれに関連のある分野(学科)

IT-ITF5.応用領域

IT-ITF6.IT分野における数学と統計学の活用

CE-ESY0.歴史と概要

CE-ESY1.低電力コンピューティング

CE-ESY2.高信頼性システムの設計

CE-ESY3.組込み用アーキテクチャ

CE-ESY4.開発環境

CE-ESY5.ライフサイクル

CE-ESY6.要件分析

CE-ESY7.仕様定義

CE-ESY8.構造設計

CE-ESY9.テスト CE-ESY10.プロジェクト管理

CE-ESY11.並行設計(ハードウェア、ソフトウェア

CE-ESY12.実装

CE-ESY13.リアルタイムシステム設計

CE-ESY14.組込みマイクロコントローラ

CE-ESY15.組込みプログラム

CE-ESY16.設計手法

CE-ESY17.ツールによるサポート

CE-ESY18.ネットワーク型組込みシステム

CE-ESY19.インタフェースシステムと混合信号システム

CE-ESY20.センサ技術

CE-ESY21.デバイスドライバ

CE-ESY22.メンテナンス

CE-ESY23.専門システム

CE-ESY24.信頼性とフォールトトレランス

IT-SIA システムインテグレーションとアーキテクチャ

IT-NET ネットワーク

CE-NWK テレコミュニケーション

複数領域にまたがるもの

IT-PT プラットフォーム技術

CE-OPS オペレーティングシステム

CE-CAO コンピュータのアーキテクチャと構成

IT-ITF IT基礎

15

IT-PF プログラミング基礎

コンピュー

タハー

ウェ

アと

アー

キテク

チャ

IT-IM 情報管理

IT-WS Webシステムとその技術

IT-IPT 技術を統合するためのプログラミング

CE-SWE ソフトウェア工学

応用技術

ソフトウェ

アの方法と技術

システム基盤

10

CE-ESY 組込みシステム

分野

組織関連事項と情

報システム

IT-IAS 情報保証と情報セキュリティ

IT-SP 社会的な観点とプロフェッショナルとしての課題

<IT 知識体系上の関連部分>

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OSS モデルカリキュラムの学習ガイダンス

4. OSS モデルカリキュラム固有の知識

OSS モデルカリキュラム固有の知識は少ない。各回の内容は IT 知識体系と共通した内容

を主に扱い、ソフトウェアの例として OSS を紹介する。科目名 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回

(1)ネットワークの構成と機能

(1)通信の形態とプロトコル

(1)インターネット通信とはどのようなもの

(1)LAN ネットワークの仕組み

(1)無線ネットワークの意義

(1)無線通信プロトコル

(1)アプリケーション通信の流れ

(1)IP 通信の仕組み

(1)IP アドレスの仕組み

(1)ルーティングプロトコルの種類とその機

(1) UDPの特徴

(1)TCPの通信仕様

(2)OSI 7 階層モデルとは

(2)通信プロトコルの役割

(2)インターネット通信の構成

(2)LAN ネットワークの構成

(2) 無線ネットワークの種類

(2) 無線ネットワークを利用するソフトウェア

(2)TCP/IP の仕様

(2)IP データグラム

(2)IP ルーティング

(2)ルーティングテーブルのサイズとCIDR

(2) UDPの通信仕様

(2)アプリケーション通信におけるTCP の役割と制限

(3)OSI 7 階層モデルとTCP/IP の対応

(3) UDPを利用したアプリケーション例

3-1-基 ネットワークアーキテクチャに関する知識

(網掛け部分は IT 知識体系で学習できる知識を示し、それ以外は OSS モデルカリキュラム固有の知識を示している)

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3-1-基-1

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-1. ネットワークの構成と OSI 7 層モデル

対応する

コースウェア

第 1 回 オープンネットワークの概念

第 2 回 通信の形態とプロトコル

3-1-基-1. ネットワークの構成と OSI 7 層モデル

ICT 社会の基盤となる基本的なネットワークの構成と、各構成要素の機能について解説する。また

OSI の 7 階層モデルについて言及し、階層構造を成す意味と、物理層からアプリケーション層まで

各層の機能を説明する。

【学習の要点】

* ネットワークは、情報化社会の基盤をなす存在として日常生活の中に溶け込んでいる。

* ネットワークを構成する機器には、メーカや機種により様々なものが製造されているが、これらの

異なる機器で通信することができるのは、各機器が同一のプロトコルを利用しているからであ

る。

* OSI の 7 階層モデルのように、プロトコルを機能によって階層化することで、各層のプロトコルは

すぐ下の層のプロトコルのみ考慮することで、通信が可能となる。

図 3-1-基-1. OSI 7 層モデルと階層化の概念

物理層

プレゼンテーション層

データリンク層

ネットワーク層

トランスポート層

セッション層

アプリケーション層

物理層

プレゼンテーション層

データリンク層

ネットワーク層

トランスポート層

セッション層

アプリケーション層

プレゼンテーションプロトコル

セッションプロトコル

トランスポートプロトコル

ネットワークプロトコル

アプリケーションプロトコル

データリンクプロトコル

物理プロトコル

ホストA ホストB

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3-1-基-2

【解説】

1) ネットワークの構成要素

* ノード

通信を行う主体。具体的には、コンピュータ、プリンタ等の周辺機器、ハブやルータ等のネットワ

ーク機器のように、通信の処理を行う機器のこと。

* エンドポイント (端末)

ノードのうち、通信の中継点ではない、互いに最終的な通信相手となる機器のこと。

* リンク

ケーブルや無線などによってノード間を接続すること、またはそのメディア。

* PC、NIC、ケーブル、ハブ、スイッチ、ルータ、WAN回線

* 通信速度、バッファ長、タイマ値、アドレス

2) プロトコル

各ノードが通信を行う際の形式や手順。同じ信号やデータに対し、各ノードが異なる解釈をしてい

ては、通信ができない。各ノードが同一のプロトコルで通信する必要がある。

3) OSI の 7 階層モデル (OSI 参照モデル)

コンピュータネットワークでは各層プロトコルレイヤーを通過することによってデータのやりとりを実

現している。ISO(国際標準化機構)では、異機種間通信を実現するためのネットワーク設計方針で

ある OSI(開放型システム間相互接続)において、プロトコルを機能により以下の 7 階層(下位の第 1

層から上位の第 7 層まで)に分割した概念モデルを提唱した。

* 第 7 層 アプリケーション層

ファイル転送、メール転送など、ユーザに提供されるサービス。

* 第 6 層 プレゼンテーション層

データの変換。

* 第 5 層 セッション層

通信状態の確立や解放。

* 第 4 層 トランスポート層

データ圧縮や誤り訂正、再送制御。

* 第 3 層 ネットワーク層

通信経路の選択や経路内のアドレスの管理。

* 第 2 層 データリンク層

通信路の確保や、通信路を流れる信号のエラー検出。

* 第 1 層 物理層

ケーブルのコネクタ形状や電気的な変換など、ハードウェア面としての規約。

4) OSI 参照モデルの意義

OSI 参照モデルでは、特定の層の機能を実現するのに、その層以下の機能のみ必要となるよう階

層化されている。よって、通信を行う際、当該層のプロトコルはすぐ下の層のプロトコルのみ考慮す

ればよく、さらに下位の層や上位層を考慮せずに済む。

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3-1-基-3

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-2. インターネットの構成と特徴・通信プロトコル

対応する

コースウェア

第 3 回 インターネット通信の仕組み

3-1-基-2. インターネットの構成と特徴・通信プロトコル

インターネットの基本概念とアーキテクチャのモデルを解説する。インターネットはルータによって接

続されたネットワークでパケットを交換することによって通信が行われるモデルであることを説明す

る。

【学習の要点】

* パケット交換方式とは送信するデータをパケットと呼ばれる小さなサイズに分割し、そのパケット

をやり取りすることによって通信を行う方式である。

* 1つの伝送路上にいくつもの送り元・行き先の違うパケットを流すことによって伝送路利用の効

率化を図る

* インターネットはルータを介してパケット交換が行われる通信モデルである。

* インターネットはネットワークとネットワークをルータによって接続されたネットワークである。

図 3-1-基-2. パケット交換方式とインターネットの概念図

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3-1-基-4

【解説】

1) パケット交換

通信データを、パケットと呼ぶ小さなサイズに分割し、各パケットに宛先(アドレス)を付けてネットワ

ーク上に送出する。

パケットは、宛先との間にあるノードを経由し、受信相手のエンドポイントまで届けられる。複数の端

末で伝送路や交換設備の共有が可能で、利用効率が良いが、帯域幅の保障が困難であり、輻輳

などにより伝送遅延時間が変動する。

2) インターネットの仕組み

インターネット(The Internet)は、世界中のネットワークを相互接続しているネットワークである。イン

ターネットでは、TCP/IP プロトコルが利用されている。

通信する各々のノードは IPアドレスがつけられており、IPパケットの送信先アドレスによりノード間を

転送され、相手ノードに IP パケットが到達する。ネットワーク間の接続に使う装置をルータと呼ぶ。

3) 身の回りのインターネット

インターネットを利用する家庭や企業のコンピュータやネットワークは、ISP(インターネット接続業者)

と接続されている。

ISP や学術ネットワークは各々を直接接続するか、あるいは IX(インターネットエクスチェンジ)と呼ば

れるポイントにおいて相互接続され、さらに IX 同士が相互接続されることによって遠く離れたノード

まで通信が出来るようになっている。

インターネットを構成する個々のネットワークは、他のネットワークがなくても自律して動作することが

でき、ネットワーク同士が協調することによって、全体としてのネットワーク間の通信を実現してい

る。

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3-1-基-5

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-3. LAN(Local Area Network)の仕組みと特徴

対応する

コースウェア

第 4 回 LAN ネットワークの仕組み

3-1-基-3. LAN(Local Area Network)の仕組みと特徴

LAN (Local Area Network)について、データリンク層におけるプロトコルの観点からその仕組みと特

徴を解説する。ここでは有線LANを取り上げイーサネット(IEEE 802.3) のCSMA/CD方式において

コリジョンを回避する方法、スイッチング技術なども紹介する。また VLAN (Virtual LAN)の話題につ

いても触れる。

【学習の要点】

* 有線 LAN では多くの場合、イーサネット(Ehernet / IEEE 802.3) が使われている。Eternet は

CSMA/CD という方式で通信制御が行われている。

* スイッチング技術は、イーサネットパケットの情報でパケットを制御する技術で、効率がよく高速

なデータ転送が行える。

* VLAN により、物理的に同一のネットワークを論理的に複数にすることが可能である。

* 集線装置であるハブはレイヤー2(データリンク層)で処理するため明示的にL2スイッチング・ハ

ブとも呼ばれることもある。

( )

MACxxxxxxxxxxxx

MACxxxxxxxxxxxx

MACxxxxxxxxxxxx

MACxxxxxxxxxxxx

IPxxx.xxx.xxx.xxx

IPxxx.xxx.xxx.xxx

IPxxx.xxx.xxx.xxx

IPxxx.xxx.xxx.xxx

IPxxx.xxx.xxx.xxx

図 3-1-基-3. CSMA/CD とスイッチング技術

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3-1-基-6

【解説】

1) LAN とイーサネット

有線 LAN (Local Area Network)の多くはイーサネットを利用して構築されている。イーサネットでは、

OSI 参照モデルの物理層とデータリンク層にあたる。物理層には各種の方式があるが、データリン

ク層は次のような共通点がある。

* MAC アドレス

リンクに接続するノードにつけられる一意に割り当てられるアドレス。イーサネットがデータリンク

層で扱うパケット(イーサネットではトークンと呼ぶ)は、この MAC アドレスによって転送制御され

る。

* CSMA/CD (Carrier Sense Multiple Access/Collision Detection)

イーサネットの採用しているアクセス制御プロトコル

2) CSMA/CD (キャリア検知多重アクセス/コリジョン検出)

イーサネットでは、各ノードが自由に信号を送出できるようになっており、そのために以下のような制

御を行い、問題を防いでいる。

* キャリア検知

ノードが自分のデータを送出する際、すでに他のノードが送出したデータが流れているかどうか

を検知し、他のデータが流れている場合にはしばらく送信を延期し、他のデータが無くなってか

ら送出する。

* 多重アクセス

あるノードから送出されたデータは、他のデータとの衝突が起こらない限り、ネットワーク内のす

べてのノードに到達する。各ノードは、到達したデータの送信先 MAC アドレスが自分と一致す

る場合はこのデータを処理し、一致しない場合はデータを破棄する。この方式によって、ネット

ワークの伝送媒体を、複数のノードで共用する。

* 衝突検出

複数のノード端末が同時にデータを送出した場合、互いのデータは衝突(コリジョン)を起こし、

データが壊れるので、相手先には正常なデータが届かない。この衝突を検知すると、直ちにデ

ータの送出を中止し、ランダムな時間待機し、データを再送する。

3) スイッチング(スイッチング・ハブ)

複数のリンクをまとめて接続できる集線装置をハブと呼ぶ。現在はスイッチング機能を持つものが

主流である。受け取ったパケットの MAC アドレスを確認し、該当するノードのみに送ることによって

CSMA/CD の欠点である衝突を避け、異なる相手同士で同時に複数のデータを流せ、また通信の

効率化/高速化が図られている。

4) VLAN (Virtual LAN)

VLAN は仮想的に複数のセグメントを実現する機能である。VLAN には、スイッチング・ハブとケー

ブルとの接続端子(ポート)をグループ分けして複数セグメントとするポート VLAN という方式や、デ

ータにタグという識別子を付与してどのセグメントかを判別するタグ VLAN という方式がある。セグメ

ントを隔離できるので、効率化・高速化だけではなく、アクセス制御によるセキュリティにも寄与する

ことができる。

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3-1-基-7

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-4. 無線ネットワークの種類と特徴

対応する

コースウェア

第 5 回 無線ネットワークの種類

第 6 回 無線ネットワークの仕組み

3-1-基-4. 無線ネットワークの種類と特徴

無線通信によるネットワークの仕組みと特徴、有線ネットワークとの違いと留意点などを解説する。具

体的には、現在ひろく利用されている IEEE802.11および802.15.1のプロトコルとその内容について

言及する。

【学習の要点】

* 無線ネットワークの主流は電波方式で、現在では IEEE 802.11 (いわゆる無線 LAN) および

802.15.1 (Bluetooth 互換) の規格が多く使われている。

* 無線ネットワークは便利な反面、セキュリティや電波干渉などについては慎重になる必要があ

る。

( )

MACxxxxxxxxxxx1

MACxxxxxxxxxxx2

MACxxxxxxxxxxx3

CAMA/ CD

xxxxxxxxxxx2

×

MACxxxxxxxxxxx1

MACxxxxxxxxxxx2

MACxxxxxxxxxxx3

)

MACxxxxxxxxxxx1

MACxxxxxxxxxxx2

MACxxxxxxxxxxx3

MAC

xxxxxxxxxxx2

図 3-1-基-4. 有線ネットワークと無線ネットワークとの比較

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3-1-基-8

【解説】

1) 無線ネットワークの規格

無線ネットワークの規格には主に以下のものがある。

* IEEE 802.11

IEEE(電気電子学会)のワーキンググループが策定している無線 LANの規格群である。

規格 速度 周波数帯

802.11a 54Mbps 5.15 - 5.35 GHz / 5.47 - 5.725GHz

802.11b 11Mbps 2.4 - 2.5GHz

802.11g 54Mbps 2.4 - 2.5GHz

802.11n 300Mbps(国内) 2.4 - 2.5GHz / 5.15 - 5.35 GHz / 5.47 - 5.725GHz

* IEEE 802.15.1

Bluetooth(Bluetooth は Bluetooth SIG Inc. の登録商標) として知られている規格である。IEEE

802.15.1 は 2.4GHz帯の周波数帯を使用する。電波強度により3つのクラスがあり、到達距離は

1m - 100m までの範囲となる。速度もバージョンで異なり、現在、最大 24Mbps である。

2) CSMA/CA (キャリア検知多重アクセス/コリジョン回避)

IEEE 802.11 に用いられている通信制御方式で、CSMA/CD と類似しているが、無線 LAN では信

頼できるコリジョン検出手段が無いため、コリジョン検出ではなくコリジョン回避という方式がとられる。

ノードは通信路がランダムな時間空いていることを確認してからデータを送出する。実際にデータ

が正しく送信されたかは受信ノードから正常な応答が到着したかどうかで判定し、応答がなければ

通信障害があったとみなしてデータの再送出を行なう。

3) 無線ネットワークの特徴と留意点

* ケーブルの敷設が不要であり、ケーブル敷設が困難な場所でも利用できる。

* 異なるネットワークに接続する場合、ケーブルをつなぎかえる手間が無い。

* 経路盗聴が比較的容易であり、セキュリティの確保に十分な注意が必要。

* 現時点においては、有線ネットワークを代替するような高速なネットワークではない。

* 壁などの電波遮蔽物の影響、あるいは周囲環境の電波ノイズに影響を受ける。

* 複数の無線ネットワークで同一の周波数帯を使用する場合、電波干渉の影響がある。

* 2.4GHz 周波数帯を使用する場合、電子レンジや医療用機器などが電波ノイズ源になる可能性

がある。

* 5.15 - 5.35 GHz は、屋内での利用のみ免許不要である。

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3-1-基-9

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-5. TCP/IP の仕様と OSI7層モデルとの対応

対応する

コースウェア

第 7 回 オープンネットワークの通信仕様

第 9 回 ルーティングの仕組み

第 10 回 ルーティングプロトコルの仕様

3-1-基-5. TCP/IP の仕様と OSI7層モデルとの対応

インターネットにおける通信の概要を説明し、インターネット上におけるアプリケーション間の通信が

どのように実現されているかを示す。また TCP/IP の仕様を解説し、TCP/IP と OSI の 7 層モデルの

対応関係を説明する。

【学習の要点】

* TCP/IP は LANやインターネットなどで広く使われている通信プロトコルである。

* インターネットを構成するネットワークを管理する上で、TCP/IP の理解は必須となる。

* TCP/IP プロトコルは、OSI 参照モデルと同様にレイヤーモデルであるが、各層が一対一には対

応しているわけではない。

図 3-1-基-5. TCP/IP と OSI 参照モデルとの対応

物理層

プレゼンテーション層

データリンク層

ネットワーク層

トランスポート層

セッション層

アプリケーション層

OSI参照モデルTCP/IPモデル

ネットワークアクセス層

インターネット層

トランスポート層

TCP/IPモデルではここにあたる層はない

アプリケーション層

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3-1-基-10

【解説】

1) インターネットにおける通信

インターネットでは、TCP/IP プロトコルが利用されており、TCP/IP の上位層のプロトコルによって、

アプリケーション間の通信が行われる。例えばWWW(World Wide Web)で利用される HTTP プロト

コル、ファイル転送で利用される FTP プロトコルなどはアプリケーション層のプロトコルである。

2) TCP/IP

TCP/IP は、インターネットなどで使われている基本的な通信プロトコルである、TCP、UDP、IP、お

よびそれらの周辺のプロトコルの総称である。

* IP (インターネットプロトコル)

インターネットの基本的な通信を担うプロトコル。ネットワークに接続されたノード同士が各々の

ノードに付与された IP アドレスを用いてルータ経由で通信を行い、エンド・ツー・エンドの通信を

実現する。

* TCP (伝送制御プロトコル)

ストリーム(順番が保証されたデータ列)の通信を行う。セッションという形で1対1の通信を実現

し、送達確認、パケット順のチェック、欠損パケットの再送といったエラー訂正などの機能などを

持つ。信頼性の必要な通信でよく使用される。

* UDP (ユーザデータグラムプロトコル)

送達確認などを行わない無手順方式での通信に用いるプロトコル。通信中のパケット紛失や、

エラー訂正等は上位のプロトコル(アプリケーション)で行う必要がある。信頼性が重要で無い通

信、速度重視の通信でよく使用される。

* ARP (アドレス解決プロトコル)

IP アドレスから MAC アドレスを取得する機能を有する、IP の補助的なプロトコル。

* RARP (逆アドレス解決プロトコル)

MAC アドレスから IP アドレスを取得する機能を有する、IP の補助的なプロトコル。

* ICMP (インターネット制御通知プロトコル)

IP におけるエラーや通信情報などの通知の機能を有する、IP の補助的なプロトコル。

3) TCP/IP モデルと OSI 参照モデルとの対応

TCP/IPのレイヤーモデルTCP/IPモデルは、OSI参照モデルとは独立して作られたが基本モデル

は双方ともプロトコルの階層化という点では同じある。OSI 参照モデルの物理層とデータリンク層は

TCP/IPモデルではネットワークアクセス層にあたる。OSI参照モデルのセッション層とプレゼンテー

ション層にあたるものは TCP/IP モデルでは明確には存在していない。

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3-1-基-11

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-6. IP 通信(IPv4)の仕組みとデータグラム

対応する

コースウェア

第 7 回 オープンネットワークの通信仕様

第 8 回 IP ネットワークの仕組み

3-1-基-6. IP 通信(IPv4)の仕組みとデータグラム

IP 通信の形態と通信プロトコルの種類、IP の基本機能や通信の仕組み、特徴について解説する。

また IP パケット(IP データグラム)の構造や取扱い方など、IP 通信に関連するいくつかのトピックを紹

介する。

【学習の要点】

* IPプロトコル自体はコネクションレスな通信で、IPデータグラムを送信先まで届ける機能を持つ。

* レイヤー毎にプロトコルは異なり、そのプロトコルに必要なヘッダ情報が付加される、パケットは

入れ子状態になっている。

* IP パケットの配送に必要な必情報は IP ヘッダに含んでいる。

IP TCP

IP

TCP

IP

TCPIP

TCP

IP TCP

IP

TCP

IP

TCPIP

TCP

図 3-1-基-6. IP パケットの流れ

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3-1-基-12

【解説】

1) TCP/IP の基本構造

TCP/IP は「アプリケーションサービス」「(通信の信頼性を提供する)トランスポートサービス」「コネク

ションレスでパケット配送するサービス」の3つのサービスを提供する。図では「アプリケーション」

「TCP」「IP」のレイヤーにあたる。

2) コネクションレス

IPレイヤーでの通信はIPデータグラムを配送するコネクションレスな通信である。必ずしも IPパケッ

トの到着を保証しているわけではない。

3) IP レイヤーの役割

IP レイヤーの役割は IP パケットの中にある送信先アドレスにパケットを届けることである。その上に

より IP パケットは通信路上にある複数のルータを経由してエンドポイントに到着する。

4) IP パケットの構造

IP プロトコルバージョン 4の場合、IP パケットは以下のような構造をとる。

* IP プロトコルのバージョン (4 ビット)

* IP ヘッダの長さ (4 ビット)

* サービスタイプ (8 ビット)

優先度、伝送遅延、伝送量、信頼性などの品質を定める部分。ほとんど利用されない。

* ヘッダを含めた IP パケットの長さ (16 ビット)

* 分割されたパケットを再構成するための識別子 (16 ビット)

* パケットの分割の際に用いるフラグ (3 ビット)

* 分割されたパケットの元の位置 (13 ビット)

* TTL (8 ビット)

送信経路中でルータ等を通過するたび、この TTL(Time To Live)値を 1ずつ減らす。TTL が 0

になると、そのパケットは破棄される。パケットがネットワーク上を無限に循環するのを防ぐため

の仕組み。

* IP の上位層のプロトコルを表す番号 (8 ビット)

* チェックサム (16 ビット)

IP ヘッダの誤り検出のための検査値。

* 送信元の IP アドレス (32 ビット)

* 宛先の IP アドレス (32 ビット)

* オプション (可変長)

あまり利用されない。

* パディング (可変長)

IP ヘッダの長さを 32bit 単位にするために、「0」で埋められる。

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3-1-基-13

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-7. IP アドレスとルーティングの基礎

対応する

コースウェア

第 9 回 ルーティングの仕組み

第 10 回 ルーティングプロトコルの仕様

3-1-基-7. IP アドレスとルーティングの基礎

IP アドレスの構成と、インターネット上に存在するふたつのノード間の通信を実現するために考案さ

れたルーティングの仕組みを説明する。ルータの機能、ルーティングテーブル、デフォルトゲートウ

ェイなど、ルーティングを実現する個々の概念について解説を加える。

【学習の要点】

* IP 通信においては、宛先の IP アドレスによって、通信経路が選択される。

* IP アドレスは IPv4 では 32 ビット、IPv6 では 128 ビットで表現される。

* ルータでは、ルーティングテーブルによって、宛先の IP アドレスと通信経路を管理する。

IP192.168.0.207

#0IP192.168.0.254

IP192.168.0.203

B

A

#1IP192.168.1.254

IP192.168.1.207

192. 168. 0. 0 255. 255. 255. 0 #0192. 168. 1. 0 255. 255. 255. 0 #1

192. 168. 0. 0 255. 255. 255. 0 *def aul t 0. 0. 0. 0 192. 168. 0. 254

192.168.0.207 192.168.1.207

192.168.1.207

#1

図 3-1-基-7. IPv4 アドレスとルーティング

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3-1-基-14

【解説】

1) IP アドレス

IP アドレスは、IPv4 では 32 ビット、IPv6 では 128 ビットで表現される。IP アドレスの表記の際は、8

ビットずつ4つに分け、それぞれを10進数に変換したものを「.」でつなげるドット表記(Dot notation)

を用いる。

例えば、「11000000101010000000000111001000」というアドレスの場合、8ビット毎に10進表現にし、

「192」「168」「1」「200」を「.」でつなげて「192.168.1.200」と表記する。IPv6では16ビット毎に「:」を用

いて、(例: 2001:1234:abcd:ace1:ffbb:2121:0000:1a11 ) と表現する。また 0 が続く場合はその表記

を「0」とするか、省略し「::」と表記可能である。 (例: 2001:1234:abcd:ace1:ffbb:2121::1a11 )

2) サブネットアドレス

インターネットを構成するネットワークのセグメント内において、IP アドレスの上位ビットを共通のもの

とすることでサブネットアドレスを定義する。利用しているビット数を表現するのには「/」の後ろにビ

ット数を示す CIDR 表記を用いる。「/24」と表現する場合、上位 24 ビットがサブネットアドレスとして

使われるという意味である。IPv4 では 192.168.1.0/24 という表現になる。

3) サブネットマスク

サブネットマスクとは、IP アドレスにサブネットマスクの値を用いてサブネットアドレスを導出するため

のものである。IPv4 の/24 のサブネットでは 255.255.255.0 となる。

4) デフォルトゲートウェイ

送出される IP パケットの宛先アドレスが同じサブネットアドレスの場合、同じネットワークセグメントと

して直接通信できるが、異なる場合、同一のセグメント外部であり、その場合はルータを経由して通

信をする必要である。この場合 IPパケットはルータに送られるわけだが、その際にデフォルトで送ら

ることを指定されているルータがデフォルトゲートウェイである。

5) ルーティングテーブル

TCP/IP のネットワークに接続されたホストやルータなどのノードは複数のネットワークに接続するこ

とが可能であり、そのネットワークへの経路を選択することができる。そのルールを設定・管理する

のがルーティングテーブルである。ホストでは内部的にインタフェースを選び、ルータではホストか

ら送られてきた IP パケットのヘッダを確認し、宛先 IP アドレスによって経路を選択する。

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3-1-基-15

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-8. UDP 通信の仕組み

対応する

コースウェア

第 11 回 UDP の仕組み

3-1-基-8. UDP 通信の仕組み

UDP 通信の仕様、役割とその特徴について解説する。UDP 通信はコネクションレスの通信を行うプ

ロトコルである。確実に相手ホストに UDP 通信が到着するかは保証していない。シンプルな構造な

プロトコルである。

【学習の要点】

* UDP はコネクションを持たない通信である。

* 宛先アドレスを指定し相手ホストに送られた UDP パケットは到着の保証をしないので、喪失した

り、重複したり、あるいは送付順番が正しくないなど発生する場合がある。

* インターネット上のホスト間で通信を行う上で付加される情報は少なくシンプルなプロトコルであ

る。

* ポート番号を用いて上位アプリケーションとやり取りする。

図 3-1-基-8. UDP

IP層

ポート番号により多重分離

ポート番号 53 ポート番号 2049 ポート番号 5060

UDPパケットの到着

DNS VoIPNFS

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3-1-基-16

【解説】

1) UDP (User Datagram Protocol)のヘッダ

UDP のヘッダはシンプルで以下の情報しか持たない。

* 送付元ポート (16 ビット)

* 宛先ポート(16 ビット)

* パケット長(16 ビット)

* チェックサム(16 ビット)

パケット長はヘッダ長とデータ長を足したパケット全体の長さである。よって最小の値は 8 オクテット

である。UDP のチェックサムの値はオプショナルでチェックサムを計算しない場合は 0 の値が入っ

ている。チェックサムを計算するときは、IP ヘッダの中にある送付元アドレス、宛先アドレス、8 ビット

のゼロパディング、プロトコル種類、UDP パケット長を取り出し擬似ヘッダ(pseudo-header)と呼ばれ

る情報を構成し UDP パケット本体の先頭につけた形で計算する。

UDP の運べるデータ(ペイロード)の最大サイズは、16 ビット表現の最大値(65515)からヘッダ長の

値(8)を引いた 65507 オクテットとなる。

2) UDP を使うアプリケーションの性質

UDP はその特性から確実な通信を仮定しないアプリケーションか、あるいはアプリケーション側で

到着に関するすべての制御を行うようなものかのどちらかの性質を持ったものである。

* DNS(53/udp)、NTP(123/udp)など

* 動画や音楽などのリアルタイム性を必要とするネットワークストリーミングや VoIP など

* NFS など

DNS や NTP では必ずしも確実なパケット到着がなくとも機能するものであり、また多くのホストに対

してクェリやレスポンスを返すためコネクションレスの通信の方がよい。

リアルタイムストリーミングのような喪失してしまったパケットを再送するような必要がないようなリアル

タイム指向の通信では UDP が用いられる。

NFS のように TCP の輻輳制御に頼らず独自のコントロールを実現したいときなど UDP を用いて実

装を行う場合もある。

3) ポート番号

IP層からトランスポート層に送られたUDPパケットは、UDPヘッダ情報のポート番号によりデータが

振り分けられる。

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3-1-基-17

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-9. TCP 通信の仕組みと応用

対応する

コースウェア

第 12 回 TCP の仕組み

3-1-基-9. TCP 通信の仕組みと応用

TCP 通信の仕様、役割とその特徴について解説する。TCP の接続開始時のスリーウェイハンドシェ

イクやアプリケーション通信における TCP の役割や TCP 通信の制限事項について触れる。

【学習の要点】

* TCP は、伝送制御を行うプロトコルである。

* TCP は送信されるデータの順番、整合性を保証する。

* 接続開始時にスリーウェイハンドシェイクにより接続を開始する。

* TCP は流量制御・輻輳制御が行われる。

図 3-1-基-9. TCP パケットの流れ

送信元ホスト 宛先ホスト

SYNACK

SYN

ACK

スリーウェイハンドシェイク

Packet

PacketPacket

ACKACKACK

送信元ホスト 宛先ホスト

スライディングウインドウ

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3-1-基-18

【解説】

1) TCP の基本仕様

TCP送信は IP プロトコルの上位で機能し以下の特徴がある。

* ストリームデータ

TCP 送信を使うアプリケーション間でデータをオクテット(バイト)ストリームとして送受信できる機

能を提供する。ストリームデータは TCP パケットヘッダのシーケンス番号により転送の順番が保

証され、同じくヘッダのチェックサムによって整合性を保証されている。

* バーチャルサーキット(仮想回路)

IP パケットは LANやインターネットを経由しルータなどを経由して到着するが TCP 送信で接続

されているアプリケーション間はエンド・ツー・エンドの関係で接続している。これを回路(サーキ

ット)に例えてバーチャルサーキット(仮想回路)と呼ぶ。

* フルデュプレックス(全二重)

TCP通信は双方向で接続し通信を行う。送信元ホストからサーバ側の接続をアクティブコネクシ

ョン(active connection)、宛先ホストからクライアント側への接続をパッシブコネクション(passive

connection)と呼ぶ。

* 輻輳制御

まずここでは送信元ホストから宛先ホストにあるサイズのデータセグメントを送ることとする。デー

タセグメントが届いたとき宛先ホスト側から送信元ホスト側に ACK を返す。これでデータセグメン

トが到着したか否かを判断する。このセグメントが1つ送るたびに1つのACKを返すところから開

始する。以前のACKの到着を待たずに送るセグメント数をゆっくり増やしていく。これをスロース

タートという。この ACK を待たずに送ることが出来るデータの大きさをウインドウサイズという。パ

ケットが落ちて届かない場合、該当セグメントを再送すると同時に、輻輳回避アルゴリズムにより

一度に送るセグメント数を少なくするなどし速度を落としつつ輻輳を回避する。輻輳回避アルゴ

リズムは最初1988年頃に組み入れられ、1990年頃に高速リカバリアルゴリズムを採用し、さらに

1996 年頃に先のアルゴリズムが改良されている。

2) TCP のスリーウェイハンドシェイク

TCPの接続開始にはスリーウェイハンドシェイク(3 way handshake)によって確立される。TCPパケッ

トヘッダのフラグ部分に SYN / ACK のビットを立ててやり取りし、ホスト間で通信を確立する。図は

通信をスタートさせる側がクライアント、受ける側がサーバとした例である。

送信元ホスト→宛先ホスト : SYN フラグの立ったの TCP パケットを送る

宛先ホスト→送信元ホスト : SYN + ACK フラグの立った TCP パケットを送る

送信元ホスト→宛先ホスト : ACK フラグの立った TCP パケットを送る

3) TCP とアプリケーション

TCP は完全なストリームデータを提供するので、SSH(22/tcp)、SMTP(25/tcp)、HTTP(80/tcp)、

HTTPS(443/tcp)など幅広いネットワークアプリケーションに用いられる。

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3-1-基-19

スキル区分 OSS モデルカリキュラムの科目 レベル

ネットワーク分野 3-1 ネットワークアーキテクチャに関する知識 基本

習得ポイント 3-1-基-10. ICMP / RIP / ARP プロトコル

対応する

コースウェア

第 3 回 インターネット通信の仕組み

3-1-基-10. ICMP / RIP / ARP プロトコル

IPプロトコル以外にもTCP/IPネットワークを制御するにはいくつかの重要なプロトコルがある。ここで

は ICMP(Internet Control Message Protocol)、 RIP(Routing Information Protocol)、OSPF(Open

Shortest Path First)、ARP(Address Resolution Protocol)を取り上げ説明する。

【学習の要点】

* TCP/IP ネットワークを制御するのに必要なのは IP プロトコルだけではなく、他のプロトコルも使

われている。

* ICMP はネットワークの制御通知を行うプロトコルであり、位置づけはネットワーク層となってい

る。

* RIP と OSPF は動的なルーティングを行うためルーティングに必要な情報を送る。

* ARP はハードウェアの IP アドレスから MAC アドレスを知るための情報を送る。

図 3-1-基-10. 動的ルーティング

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3-1-基-20

【解説】

1) ICMP

ホストやルータへICMPを送ることでネットワークのエラーや状況を知るために使われるプロトコルで

ある。ホストまでパケットが届いているかチェックする ping コマンドで相手ホストに Echo Request タイ

プの ICMP パケットを送ると相手ホストは Echo Reply タイプを返送する。それによって両ホスト間で

ネットワークが通じているかなどわかる。ICMP の本体は IP パケットのペイロードに格納される。

2) RIP

動的にルーティングを処理するために古くから使われているルーティングのプロトコルである。ルー

タを経由する数のことをホップ数というが、隣接するルータ間で情報を交換し最小ホイップ数になる

ルーティングをみつける。ただしホップ数の最大15までしか処理できない。また大規模なネットワー

クで使用すると経路を決定するまでに時間がかかる。RIP は UDP 上で動作する。

3) OSPF

RIPには制約があるが、その制約を解消するためにIETFによって作られたプロトコル。RIPではホッ

プ数が15までであるが、OSPFにはそのような制約はない。また経路決定の時間収束も短い。帯域

幅によるコスト設定が可能、階層構造によるネットワークを構築できるなど RIP では足りなかった機

能も取り込まれている。

4) ARP

イーサネットで接続されたネットワーク環境おいてイーサネットのパケットを送ろうとした場合、相手

ホストの MAC アドレスが必要である。また IP 通信を行う場合、IP アドレスで相手ホストに送ることに

なるが、IP のレベルでは MAC アドレスは知らない。そこで MAC アドレスと IP アドレス対応表が必

要となる。ARP のリクエストとそれに対するリプライによりこの対応表が作成される。一定時間毎にこ

の表はアップデートされる。ARP の本体はイーサネットフレーム(パケット)のペイロードに格納され

る。