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- 1 - 宙へ。2段式ロケットの設計 Ⅰ 概要 ロケットの飛行原理と設計、打ち上げ。 Ⅱ 研究テーマ もともと自分達の手でロケットを作りたいという思 いがあったが,米国研修の際に見たアポロ計画で使われた 3段式の SaturnⅤロケットに憧れ,ステージング(多段式 にすること)に挑戦することにした。 Ⅲ 設計に関して a.はじめに まず、ロケットの飛行原理、製作方法等を学び、モデルロケットエンジンという火 薬エンジンを扱うのに必要なライセンスを取得した。ライセンス取得に際しては、桐 生高校(現前橋女子高校)の茂木先生に講習をしていただき、物理部の打ち上げ見学 もさせていただいた。桐生高校で2段式ロケットの難しさでもある、製作時の留意点 を2つ教わった。 ①重量制限 エンジンの打ち上げ最大重量は 113g であるが、余裕を持って全体の質量を 90g 以下におさえる方が好ましい。しかしエンジンだけで 38g あるため、機体自体を軽 く作らないと打ち上げられなくなってしまう。 ②姿勢維持 2 段目点火時に上空で機体の姿勢が傾いていると、軌道がその方向に曲がってし まうため、まっすぐ打ち上げることが打ち上げ成功のための最大の課題となる。打 ち上げ後まっすぐ打ちあがっていくよう機体に偏りを作らないことは勿論、1段目 がスムーズに分離できるように作る必要がある。 b.エンジン エンジンには A~J 型があり、型ごとにおおよそ トータルインパルス(全力積)が決まっている。 AC 型は黒色火薬, DJ 型はコンポジット燃料 を使用している。エンジンには推進薬、延時薬、 放出薬が入っており、推進薬に点火している間は 加速を続け、延時薬では慣性飛行をし、放出薬に 点火すると内部に向かって噴射しパラシュートな 2 エンジン 1 Saturn

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宙へ。2段式ロケットの設計

Ⅰ 概要

ロケットの飛行原理と設計、打ち上げ。

Ⅱ 研究テーマ

もともと自分達の手でロケットを作りたいという思

いがあったが,米国研修の際に見たアポロ計画で使われた

3段式の SaturnⅤロケットに憧れ,ステージング(多段式

にすること)に挑戦することにした。

Ⅲ 設計に関して

a.はじめに まず、ロケットの飛行原理、製作方法等を学び、モデルロケットエンジンという火

薬エンジンを扱うのに必要なライセンスを取得した。ライセンス取得に際しては、桐

生高校(現前橋女子高校)の茂木先生に講習をしていただき、物理部の打ち上げ見学

もさせていただいた。桐生高校で2段式ロケットの難しさでもある、製作時の留意点

を2つ教わった。 ①重量制限

エンジンの打ち上げ最大重量は 113g であるが、余裕を持って全体の質量を 90g

以下におさえる方が好ましい。しかしエンジンだけで 38g あるため、機体自体を軽

く作らないと打ち上げられなくなってしまう。

②姿勢維持

2 段目点火時に上空で機体の姿勢が傾いていると、軌道がその方向に曲がってし

まうため、まっすぐ打ち上げることが打ち上げ成功のための最大の課題となる。打

ち上げ後まっすぐ打ちあがっていくよう機体に偏りを作らないことは勿論、1段目

がスムーズに分離できるように作る必要がある。

b.エンジン エンジンには A~J 型があり、型ごとにおおよそ

トータルインパルス(全力積)が決まっている。

A~C 型は黒色火薬,D~J 型はコンポジット燃料

を使用している。エンジンには推進薬、延時薬、

放出薬が入っており、推進薬に点火している間は

加速を続け、延時薬では慣性飛行をし、放出薬に

点火すると内部に向かって噴射しパラシュートな 図 2 エンジン

図 1 SaturnⅤ

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どを放出する。ステージング用エンジンもあり、延時薬と放出薬の代わりに次のエン

ジンに点火するための着火薬が入っている。エンジンの表示をみればエンジンの性能

を判断できるようになっており、例えば、A8-3 だとトータルインパルスが 2.5 N・

S、平均推力が 8.0N、噴出終了からパラシュートが放出されるまでに 3.0 秒かかると

いうことがわかる。今回私たちが扱えるステージング用エンジンは C6-0 しかないた

め、2段目は安全性を考慮してトータルインパルスの小さい 1/2A6-2 を使用した。 表 1 エンジンスペック

エンジン A B C D E F G H I J

トータルインパルス 2.5N 5.0N 10N 1280N

必要なライセンス 4級 3級 2級 1級

当初1段目のエンジンはB6-0を考えていたが、製造終了につき入手できなかった。

C6-0 では高度・速度が出すぎるのではないかという懸念があったので、計算で簡単な

高度予測を行った。方法は以下に示す。その結果、質量を増やせば C6-0 でも充分に

安全な打ち上げができると判断し、2段式の試みを続行することにした。 〈方法〉

Vb=It÷ma-2g×tb ma=mb+mi-1/2mp tc=Vb÷2g

h=1/2 Vb(tb+tc) 表 2 エンジンのデータ A 型 C型

エンジン質量 0.0176kg 0.0269kg

推進薬質量 0.0033kg 0.0108kg

トータルインパルス 2.5N・s 9.0N・s

燃焼時間 0.73s 1.86s

表 3 機体のデータと結果

1+2 段目 2 段目

mb ma Vb mb ma Vb tc h

1 0.0210kg 0.06kg 114m/s 0.013kg 0.03kg 183m/s 9.34s 1069m

2 0.0709kg 0.11kg 45m/s 0.064kg 0.08kg 62m/s 3.16s 179m

3 0.0609kg 0.10kg 54m/s 0.054kg 0.07kg 75m/s 3.83s 240m

Vb:燃焼終了速度 It: トータルインパルス tb:燃焼時間 ma:平均質量 mb:質量(機体のみ) mi:質量(エンジン) mp:質量(推進薬) tc:慣性飛行時間

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c.エクセルを用いたシミュレーション 計算の後、エクセルを用いた数式等を代入して行うシミュレーションを行った。そ

の結果、質量を増やす方法の他に、直径を大きくして抗力を大きくすることでも高度

を押さえることができると判明した。

d.シミュレーション インターネット上でシミュレーションを繰り返した結果、製作のしやすさ、安全性

の面から直径 4cm が最適だと判断した。シミュレーション結果は以下の通りである。 使用したサイト(http://webalt.markworld.com/multistage.html)

表 4 シミュレーションデータ1

Rocket Name Grancheola

Grancheola

Grancheola

Ⅲ CieloⅠ Cielo Ⅱ

Body Diameter 40mm 40mm 40mm 30mm 30mm

First moter size C6-0 C6-0 C6-0 C6-0 C6-0

Second moter

size A8-3 A8-3 A8-3 A8-3 A8-3

Mass First 8g 15g 15g 10g 10g

Mass Second 55g 40g 53g 20g 15g

Chute Diameter 300mm 300mm 300mm 300mm 300mm

Flight Duration 50.6s 55.9s 49.4s 105.6s 116.3s

Max Attitude 172.70m 165.54m 165.20m 222.49m 211.20m

Peak Speed 84.60m/s 92.58m/s 82.75m/s 139.60m/s 146.41m/s

Max Acceleration 20.79G 23.96G 19.19G 45.10G 54.29G

Turn Over 5.1s 4.7s 5.1s 4.6s 4.1s

Chute

Deployment 4.41m/s 8.24m/s 5.10m/s 9.11m/s 12.11m/s

Shock 1.00G 5.61G 1.00G 16.50G 43.07G

Impact 3.8m/s 3.2m/s 3.7m/s 2.2m/s 1.8m/s

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表 5 シミュレーションデータ 2

Rocket Name Stella

Ⅰ Stella Ⅱ

Espacio

Espacio

Espacio

Espacio

Body Diameter 30mm 30mm 30mm 30mm 30mm 30mm

First moter size C6-0 C6-0 C6-0 C6-0 C6-0 C6-0

Second moter size A3-4T A3-4T 1/2A6 1/2A6 1/2A6 1/2A6

Mass First 8g 15g 10g 8g 15g 15g

Mass Second 55g 53g 20g 55g 53g 20g

Chute Diameter 300mm 300mm 300mm 300mm 300mm 300mm

Flight Duration 68.3s 66.2s 95.2s 67.3s 65.6s 115.6s

Max Attitude 237.71m 225.66m 201.05m 241.13m 229.8m 245.71m

Peak Speed 86.6m/s 82.67m/s 123.00m/s 98.80m/s 94.85m/s 125.88m/s

Max Acceleration 20.89G 19.27G 45.10G 20.89G 19.27G 38.52G

Turn Over 6.3s 6.2s 4.5s 4.5s 4.5s 4.3s

Chute Deployment 6.21m/s 7.19m/s 0.94m/s 29.57m/s 28.13m/s 10.26m/s

Shock 1.64G 2.68G 1.00G 58.86G 55.50G 21.81G

Impact 3.8m/s 3.7m/s 2.2m/s 3.8m/s 3.8m/s 2.2m/s

図 3 GrancheolaⅠ飛行予測

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実際に製作してみたところ重さ自体に問題は無かったが、カードボード法(※1)により、ネガティブ(※2)になることが判明した。ポジティブ(※3)にするには、

ノーズコーンに錘を入れる、フィンの枚数を増やす、大きくする、後退翼にするとい

う方法があるが、重量が増える、すでに後退翼であるという理由でどの方法も適用で

きなかった。フィンの形状や取り付ける位置を変えることでポジティブにならないか

と何種類も試してみたが改善には至らなかった。(SfidaⅡのフィンの形状決定の際に

試したデータも併記。)

※1:カットボード法ともいう。ロケットの外形を写し取り、切り抜いたものを支点

に載せ釣り合ったところを圧力中心とする方法。

※2:圧力中心より重心が後方にあり、飛行中にくるくると回転する危険な状態。

※3:圧力中心より重心が前方にある理想的な状態。

表 6 CG と CP

1+2 段 2段

Fin

CG CP 差 CG CP 差

1 290 254 -36 236 204 -32

2 284 260 -24 230 208 -22

3 282 250 -32 233 204 -29

4 286 254 -32 239 214 -25

5 290 262 -28 243 220 -23

SfidaⅠ

6 286 250 -36 232 199 -33

1 275 232 -43 228 188 -40

2 278 244 -34 228 188 -40

SfidaⅡ

3 275 250 -25 225 200 -25

表 7 フィンの形状

1 段目 2段目

Fin

a b c θ 位置 面積 a b c θ 位置 面積

1 82 40 45 20 296 27.5 82 40 45 20 214 27.5

2 57 57 50 25 296 28.5 57 57 50 25 214 28.5

3 55 27 50 25 296 20.5 82 60 50 25 189 35.5

4 55 27 50 25 296 20.5 82 60 50 25 214 35.5

5 55 27 50 20 296 20.5 82 60 50 20 214 35.5

SfidaⅠ

6 82 40 45 30 296 27.5 82 40 45 30 214 27.5

1 57 30 40 25 203 17.4 57 30 40 25 260 17.4

2 57 30 40 25 203 17.4 57 30 40 25 293 17.4

SfidaⅡ

3 55 25 40 25 205 14 55 25 40 25 295 14

θ

図 4 フィンの形状

表 6・7 とも

※ノーズコーンを

原点とする

※単位 【mm】【c ㎡】

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e.設計変更

そこで、思い切って今まで製作して

きた SfidaⅠの設計変更することにし

た。変更後の SfidaⅡは直径 2cm とエ

ンジンぎりぎりの太さにした。フィン

はロケットの姿勢を補正する役割を果

たすが、直径に対してある程度の大き

さが無いとこの役割を果たさないとい

うことから、直径を小さくすることで

フィンを小さくできるため、ポジティブにできると考えたからだ。設計変更後に同じ

方法で出してみたところ、またもネガティブになってしまったが、機体が直径の 10

倍以上の長さをもつため使用可能なバロウマン法を用いたところポジティブとなった

ので、このまま製作を進めることにした。今回は打ち上げ最大重量よりはるかに軽い

ため、万が一またネガティブでもノーズコーンに 10g程度の錘を入れることでポジテ

ィブにできると判断した。直径が小さく、軽いことで SfidaⅠより高度が出てしまう

が、ネガティブである方が危険なので高度に関しては妥協した。設計図は最終ページ

に掲載。

※バロウマン法:細長物体の理論を用いた方法で、設計図の値から電卓で求められる。

ただし、直径の約 10 倍以上の長さをもつ機体であることが条件。

f.回収装置

またこれらと並行して、最適な回収装置についても比較検討を行った。様々な素材、

形状を試した結果、パラシュートならば直径 30cm、ストリーマ(リボン状でパラシュ

ートよりも早く回収できる)ならばスズランテープの 50cm を使うことになった。2 種

類考えたのは、当日の現場の状況によってより適切な方を使うためである。なお、Sfida

Ⅱでは直径が小さく直径 30cm のパラシュートは入らないため、直径を 25cm に変更し

た。併せて、高く上がるとロケットの位置を特定しにくくなるため、チョークの粉を

回収装置とともに入れ、放出と同時に粉が出るようにした。これについても様々な色

で予備実験を行い、一番上空で目立ったピンクに決定した。

図 4 回収装置(右からパラシュート 30,パラシュート H,パラシュート 20)

図 5 回収装置(上からビニール,スズ

ランテープ,〃 Y,ガムテープ)

図 5 SfidaⅠと SfidaⅡ

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表 8 質量

パラシュート 30 3.86

パラシュート H 3.37

パラシュート 20 1.81

ストリーマ(ビニール) 1.77

ストリーマ(ガムテープ) 13.39

ストリーマ(スズランテープ) 1.34

ストリーマ(〃Y) 1.34

※単位は【g】

表 9 開傘テスト

日付 3 月 5 日 3 月 23 日

回数 1 1 2 平均

パラシュート 30 1.43 1.11 0.76 1.10

パラシュート H 1.73 0.92 1.45 1.37

パラシュート 20 1.06 0.84 1.04 0.98

ストリーマ(ビニール) 0.6 0.82 0.86 0.76

ストリーマ(ガムテープ) 1.96 0.96 0.78 1.23

ストリーマ(スズランテープ) 0.97 0.62 0.75 0.78

ストリーマ(〃Y) 1.25 0.62 0.57 0.81

パラグライダー 1.52 0.85 0.52 0.96

※単位は【s】

表 10 落下テスト

日付 3 月 5 日 3 月 23 日

回数 1 2 1 2 平均値 差

パラシュート 30 4.19 4 4.67 3.17 4.01 2.23

パラシュート H 3.73 3.33 2.38 2.43 2.97 1.19

パラシュート 20 2.74 2.99 2.67 2.48 2.72 0.94

ストリーマ(ビニール) 1.75 1.57 1.82 1.97 1.78 0.00

ストリーマ(ガムテープ) 2.01 2.06 2.04 2.03 2.04 0.26

ストリーマ(スズランテープ) 1.81 1.75 1.96 1.98 1.88 0.10

ストリーマ(〃Y) 1.88 1.81 1.71 2.13 1.88 0.10

パラグライダー 2.23 2 1.95 2.12 2.08 0.30

なし 1.85 1.93 1.81 1.53 1.78 0.00

※なしのみ 3/23 に4回実施 ※差はなしとの差を表す。 ※単位は【s】

実験場所について 校舎の高さ 13m 錘 40g±1g 風速

3 月 5 日 0m 3 月 23 日 0→1m

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表 11 損傷状況

損傷状況(パラシュート30と比べて)

パラシュート H 30とほとんど変わらず。

パラシュート 20 30より多い。

ストリーマ(ビニール) 傷が大きく、深く、位置が集中。

ストリーマ(ガムテープ) 他のストリーマほど傷が集中しておらずパラシュートに近い。

ストリーマ(スズランテープ) 傷の位置が集中。ビニールよりも傷が多く、深い。側面にも。

ストリーマ(〃Y) 普通のスズランテープやビニールよりも傷は少ないが、深い。

パラグライダー パラシュートより多く、ストリーマより分散している。

なし

下側の傷は少ないがキャップが大きくえぐれ、側面にも傷あ

り。

g.機体製作

機体はボディチューブとノーズコーンは

ケント紙で、フィンは3㎜のバルサ材を切

り出した後削って抵抗の小さい形状(流線

型)にした。1 段目の接続部にはアルミ箔

を貼り、防火対策とした。接着後、強度向

上と表面を滑らかにして抵抗を減らすため、

ラッカーで塗装を行った。

Ⅳ 打ち上げについて

6 月 2 日(水)学校にて打ち上げを決行した。初めに風見のために上げる予定だっ

たαⅢ(ライセンス取得講習の際に打ち上げた既製品ロケット)がイグナイターのト

ラブルで打ち上がらず、時間も無かったためαⅢを打ち上げないまま SfidaⅡを打ち

上げることにした。SfidaⅡには無事に着火したが、予想以上に速度・高度が大きく

なり、2 段目に点火したあたりで見失った。また打ち上げ直後に風向き・風速が変化

し、予定していた校内での回収ができなかった。幸い 2 段目は見つかったが、1段目

は行方不明となってしまった。回収した 2 段目の様子からきちんと点火が行われたこ

とと、粉が放出されたことは確認できたものの、早い段階で見失い成果の確認が不十

分なため、もう一度打ち上げることにした。

2度目は 6 月 19 日(土)に行った。前回の失敗を踏まえ、もっと広い和田橋下のグラ

ウンドで行った。今回は無事回収できたばかりでなく、音の変化により、2 段目に点

火したことの確認と粉による位置の特定という成果も得られた。特に機体発見におい

ては,機体が点として見えるかどうかくらいまで高く上がってしまうため、ピンクの

粉の噴出は,かなり有効だった。 高度はベースラインをとり計測する予定だったが、1 度目は途中で見失ったため計

図 6 フィンの流線型形状

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測できなかった。2 度目は風向きと打ち上げ場所の地形の都合上ベースラインをとれ

なかったため、計測は行わなかった。

Ⅴ 考察

今回は茂木先生に、αⅢは誰でも打ち上げを成功させることができる優れた機体で

あるから、αⅢから設計のヒントを得ると良いというアドバイスをいただいたことも

あり、模範機であるαⅢのデータを基にして Sfida の基幹データを作成した。完成さ

れたもののバランスをヒントに改良を加えていったこと、また一つ一つのパーツにつ

いて、綿密な計算により改良後の性能に理論的確証をとり慎重に製作を進めたことが、

軽い機体を実現し、まっすぐに打ち上げるという二段式の難しさを克服した機体を作

ることができた要因であると思う。

Ⅵ 感想

初めてロケットを作る二人が 2 段式ロケットを作るということで、無謀な挑戦だと

少なからず驚かれた。2段式にしようと決めた当時は、1段が2段になるということ

がそれほど難しいことだとは思っていなかったので、驚かれたことに驚いたくらいだ。

ライセンス取得講習の後、2段式を続けるかどうかと相談したが、私に始めかけたこ

とを引き返すつもりがなかったこともあり、結局そのまま続ける形になった。それで

もどうにか成功したのは、ロケットに対する情熱と比較的慎重に設計・製作を進めて

きた結果かと思う。全く何も知らない状態からスタートし、勉強と試行錯誤の日々だ

ったが、この課題研究で得られたものは非常に大きく、なかなか得がたいものだった

と思う。途中何度もトラブルに見舞われ、このままでは出来ないのではと思ったこと

もしばしばあった。また打ち上げ直前には、まっすぐうちあがるだろうか、空中分解

しないかなどと不安も多かったが、自分達の手で製作したロケットが一直線に空へと

向かって飛ぶ姿を見ることができたときは、夢の中のようで信じられず、またとても

嬉しかった。 この課題研究を続ける間、毎日のように悩んだりもしたが、同時にとても楽しかっ

た。ほとんど知識もなかった私を誘ってくれ、辛抱強くいろいろと教えてくれたパー

トナーには感謝してもしきれない。本当にありがとう。そしてまた、とてもたくさん

の人にご協力いただいた。もし誰か一人の協力でも欠けたならできなかっただろう。

心より感謝したい。機会があればぜひまた二人で、今回とは違うタイプの、何かしら

の挑戦要素のあるロケットを作ってみたい。(矢島) この研究は、当初自分一人で臨むことになるだろうと覚悟していた。しかし、研究

が始まる直前に、一人だが、本当に頼もしい一人が仲間になってくれた。1 月から必

要な力学の勉強やシミュレーションなどの準備を始めてはいたが、与えられた半年と

いう期間の中で私達は何百という課題に直面した。その問題一つ一つについてパート

ナーと議論を繰り返し、毎日本当に少しずつだがロケットがより良いものになってい

く一瞬一瞬がとても楽しく新鮮で、エキサイティングなキラキラした瞬間だった。 次々に起こった問題は、一人ではとても対処できなかっただろう。私のほうが準備

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期間が長かったにも関わらず、私はパートナーに助けられてばかりだった。一人では

ダメでも二人でやればなんとかなる、彼女はいつもそんな風に思わせてくれた。助け

てくれたのは彼女だけではない。茂木先生や山田誠先生、そして桐生高校物理部の皆

さんには、多忙な中で本当に丁寧で親切なアドバイスをいただいた。また本校の青木

先生、四十万先生にも大変お世話になった。私達の小さなロケットチームを支えてく

れた皆さんに、本当に感謝の気持ちでいっぱいである。 最後に、一緒に頑張ってくれた最高のパートナーへ。もしあの時 YES の返事がも

らえていなかったら、ここまで来ることはできませんでした。本当に助けてもらって

ばかりだったけど、最後まで一緒に研究ができて本当に嬉しかったし、毎日がとても

楽しかったです。これからももし同じフィールドで闘っていくことができるのなら、

またいつか一緒に戦いましょう!!トラブルも沢山あったけど最後まで一緒に走りぬ

けてくれたことに本当に感謝しています!(松永) Ⅶ 参考文献

・アマチュア・ロケッティアのための手作りロケット完全マニュアル増補 日本モデルロケット協会 監修 久下洋一 著

・手作りロケット入門 日本モデルロケット協会 編

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打ち上げの様子(写真は 0.07s毎)

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表 12 SfidaⅠ・Ⅱの基幹データ

質量(機体のみ) フィン面積

1+2 段 2 段 (1 枚あたり)

SfidaⅠ 47g 29g 27.5c ㎡

SfidaⅡ 26g 17g 16.0c ㎡

SfidaⅡ

50

210

90

20

40

30

57

【mm】

SfidaⅠ

【mm】

70

226

82

40

45

82

40

図 7 設計図