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20190409

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20190409版

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陸上装備研究所においては、火器、弾火薬類、耐弾材料、耐爆構造、車両、車両用機器、施

設器材についての研究、試験などを行っています。

Ground Systems Research Center undertakes research and conducts testing on

firearms, ammunition, ballistic material, blast-resistant structures, vehicles,

vehicular equipment, and engineer equipment.

任 務 MISSION

沿 革 HISTORY

2

昭和27年 8月 保安庁技術研究所設置昭和29年 7月 防衛庁技術研究所となる昭和32年 8月 技術研究所に目黒試験場及び相模原試験場新設昭和33年 5月 防衛庁設置法の一部改正に伴い、技術研究所は技術研究本部となる

目黒試験場は技術研究本部第1研究所と改称相模原試験場は技術研究本部第4研究所と改称

平成13年 7月 第1研究所及び第4研究所の研究室統廃合を実施平成18年 7月 システム装備品の研究を充実するため、技術研究本部の研究所の体制を見直し、

第1研究所第1部、第2部と第4研究所を統合して、陸上装備研究所を新編平成19年 1月 防衛庁の防衛省への移行により、防衛省技術研究本部陸上装備研究所となる平成22年10月 相模原地区への統合が完了平成26年平成27年

4月10月

陸上装備研究所の組織改編を実施防衛装備庁の新設により、防衛装備庁陸上装備研究所となる

Aug. 1952 Technical Research and Development Center (TRDC), National Safety Agency was founded.

Jul. 1954 National Safety Agency was transformed to Japan Defense Agency (JDA).Aug. 1957 Meguro Test Center (MTC) and Sagamihara Test Center (STC) were founded.May 1958 Due to partial revision on the Law of Defense Agency Establishment, TRDC was transformed to

Technical Research and Development Institute (TRDI).MTC was renamed to the First Research Center (1st RC). STC was renamed to the Fourth Research Center (4th RC).

Jul. 2001 Restructuring of the 1st RC and of the 4th RC was implemented.Jul. 2006 Major reorganization of TRDI was implemented. The Ground Systems Research Center(GSRC) was

formed by merging the 1st div. and 2nd div. of the 1st RC with the 4th RC.Jan. 2007 JDA was renamed to Ministry of Defense, Japan.Oct. 2010 Integration of the GSRC into the Sagamihara site was completed.Apr.Oct.

20142015

Restructuring of the GSRC was implemented.TRDI was transformed to Acquisition, Technology & Logistics Agency(ATLA).

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防衛装備庁陸上装備研究所の任務は、火器、弾薬、

耐弾・耐爆、車両、施設器材等に関して、陸上自

衛隊をはじめとする各自衛隊に信頼される防衛装

備品を創り上げ、我が国の防衛や安全保障に貢献

することです。そのためには、各幕や自衛隊が必

要としている装備品のニーズを十分把握するとと

もに、研究所の持つ技術的知見や将来見通しを背

景として技術シーズに基づく提案を積極的に行っ

ていく必要があります。ニーズとシーズのすり合

わせを十分行うため、関係各部署と日常的に密接

な連携を図っています。

陸上装備研究所

所長 野間 俊人

Dr. Toshihito NOMADIRECTORGround Systems Research Center, ATLAMinistry of Defense

陸上装備研究所の活動を幅広く知ってもらうことも重要です。様々な機会を通じて、他

省庁、企業、国内外の研究機関、大学等とも、我々の技術研究開発の計画や状況を適切

な形で共有し、産学官の連携により、優れた防衛装備品に結びつく技術力の強化を目指

します。

陸上装備研究所全員の力を結集し、任務をより良く達成できるように努めます。

ごあいさつ

3

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防衛装備庁長官Commissioner, ATLA

防衛技監Deputy Commissioner and Chief

Defense Scientist

先進技術推進センターAdvanced Defense Technology Center

飯岡支所Iioka Branch

電子装備研究所Electronic Systems Research Center

川崎支所Kawasaki Branch

艦艇装備研究所Naval Systems Research Center

陸上装備研究所Ground Systems Research Center

航空装備研究所Air Systems Research Center

土浦支所Tsuchiura Branch

新島支所Niijima Branch

千歳試験場Chitose Test Center

下北試験場Shimokita Test Center

岐阜試験場Gifu Test Center

防衛装備庁 組織図

装備開発官(統合装備担当)Joint Systems Development Division

装備開発官(陸上装備担当)Ground Systems Development Division

装備開発官(艦船装備担当)Naval Systems Development Division

装備開発官(航空装備担当)Aerial Systems Development Division

装備官Director General of (Joint, Ground,

Naval, Aerial) Systems

艦船設計官Naval Ship Design Division

装備政策部Department of Equipment Policy

プロジェクト管理部Department of Project Management

技術戦略部Department of Technology Strategy

調達管理部Department of Procurement Management

調達事業部Department of Procurement Operations

審議官Assistant Commissioner

長官官房Secretariat

ACQUISITION, TECHNOLOGY & LOGISTICS AGENCYORGANIZATION

(一部の組織は省略)4

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5

プロジェクト調整官Project Coordination Officer

庶務係General Affairs

陸上装備研究所 組織図

所 長Director

会計管理専門官Assistant Specialist

技術分析官Division Analyst

技術分析官Division Analyst

技術分析官Division Analyst

研究企画官Deputy Director

総務課長Head,

General Affairs Section

システム研究部長Director,

Systems Division

弾道技術研究部長Director,

Ballistics Research Division

機動技術研究部長Director,

Mobility Research Division

課長補佐Assistant Head

GROUND SYSTEMS RESEARCH CENTERORGANIZATION

業務係Research and Test Support調達係Procurement出納係Accounting

火力システム研究室Fire Power Systems Section戦闘車両システム研究室Ground Combat Vehicle Systems Section 無人車両・施設器材システム研究室Unmanned Ground Vehicles and Engineer Equipment Systems Section

火力・防護力評価研究室Firepower and Survivability Assessment Research Section終末効果・防護研究室Warheads and Ballistic Protections Research Section弾道要素研究室Ammunition and Energetics Research Section管制・自動化研究室Fire Control and Autonomous Weapons Research Section

機動力評価研究室Mobility Evaluation Research Section車体・動力研究室Turret Chassis and Propulsion Research Section 脅威探知・対処研究室Threat Detection and Measure Research Section 障害構成・啓開研究室Obstacle Construction and Exclusion Research Section

研究調整官Research Coordinator研究企画係Research Programs

用度係Property Management

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分でわかるりく そう けん

「陸上装備」の研究所ですが、実は、陸だけじゃないんです!陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の将来装備を研究開発しています。

はい、防衛省・自衛隊の組織です。防衛省防衛装備庁に属する研究機関です。

CBRN※汚染の下でも活動できる車両や、レールガン、ハイブリッド動力など防衛装備の性能を高めるための研究をしています。これらは、最先端技術の研究であり、良い研究成果を上げられるよう専門的な議論を重ねています。

※:Chemical (化学剤),Biological (生物剤),Radiological (放射線),Nuclear(核)

どんな研究しているの?

陸上装備研究所では、火器弾薬、戦闘車両、施設器材などの研究を行っています。戦闘機や潜水艦などの研究開発は、防衛装備庁にある他研究所において取り組んでいます。

一般の大学・大学院等の理工学系を卒業した研究職技官と防衛大学校等を卒業した幹部自衛官が研究開発に取り組んでいます。

誰が研究しているの?

戦闘機や潜水艦もやっているの?

自衛隊なの?

陸装研とは?

陸 装 研上 備 究所

6

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研究所の敷地内にある試験研究施設を用いて試作した車両などの性能値を測定しています。また、北海道や青森県にある試験場や陸上自衛隊演習場などに出張して野外試験を行うこともあります。

国内の大学や研究機関と共同研究を行っています。これは、将来装備をつくるにあたって、先進技術を取り込み、より効率的な研究開発を進めていくことが大切だからです。また、米国や英国などとも国際交流を進めています。

防衛装備の研究開発という性格上、国の安全を脅かすおそれのある情報は公表しておりませんが、これ以外の研究成果については学会やシンポジウムなどで積極的に発表しています。毎年1回程度、研究所一般公開を行っ

ています。また、適宜、企業・団体・学校などの方々に見学していただいています。

陸上装備研究所は、旧陸軍兵器学校や相模陸軍造兵廠等の跡地に建てられています。研究所の周辺には、これらの史跡が今も残されています。

研究施設はあるの?

他機関との交流はあるの?

秘密研究なの?

見学できるの?

昔はどんなところ?

7

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図解でみくらべる

★インホイールモータとは、

ホイール内側の空間にモー

タを配置する電気自動車の

駆動系レイアウトのひとつ

です。乗用車と同じように

走ることができる上、履帯

の車と同じようにその場で

旋回すること(超信地旋

回)や、車内レイアウトの

自由度を大幅に向上するこ

ともできます。12ページも

見てください。

軽量戦闘車両システム(インホイールモータ駆動)

6040

200

100

最高速

80km/h

6040

200

100

最高速

75km/h

タイヤ

モータ

車体

バッテリーディーゼルエンジン

インホイールモータ駆動のしくみ

すべての駆動輪の内部にモータ(赤色)を配置し、バッテリー(黄色)に蓄えた電気エネルギーを利用してホイール・タイヤ(黒色)を直接駆動させています※。

どれかひとつのモータが動かなくなっても、残りのモータで走行することができます。

シリーズハイブリッド駆動のしくみ

ディーゼルエンジン(橙色)で発電した電気をバッテリー(黄色)に蓄えます。この蓄えられた電気でモータ(赤色)を回転させ、履帯(黒色)を駆動させています。

ディーゼルエンジンで発電した電気を直接モータに送ることもできます。

モータ

車体

履帯バッテリー

「動くしくみ」

※:未来の戦闘車両として、エンジンを搭載したハイブリッド駆動にすることも技術的には可能です。

防衛技官

長倉 将太郎

8

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未来の戦闘車両

注:装輪車と装軌車を性能比較したものではありません。

ハイブリッド動力システム(シリーズハイブリッド駆動)

このモータを各ホイールの内側に装着することにより、すべての車輪の駆動力をそれぞれ個別に制御することができ、発進加速、旋回性能などの機動性が大幅にアップできます。

現在は、モータの冷却に液体を使わない空冷式のインホイールモータの研究を行っています。

バッテリーの電気だけで静かに走ったり、ディーゼルエンジンからの電気だけで走ることもできます。瞬発力がいる時は右図のように両方の電気を足してモータに送ってダッシュします。

ハイブリッドシステムはステルス性や燃費が向上できるなど、将来の自衛隊車両に役立つと考えています。

インホイールモータの外観

走るために必要な電気を自在にあやつるシステム

「機動性」 「キーテクノロジー」

バッテリー

履 帯 電気の流れ

★シリーズハイブリッドは、ハイブリッド車の駆動系レイアウトのひとつです。ハイブリッド乗用車に乗られていてご存じの方も多いのではないでしょうか。

★左の写真の車は装軌車(履帯の車)で、タイヤ式の車と比べて走る時に、より大きな力が必要です。低い速度から大きな力が出せるモータを使ったハイブリッドシステムはそんな車にも適しています。ぜひ19ページもご覧ください。

防衛技官

吉川 毅

9

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従来の爆弾、ミサイル等による直接的な破壊によらず、敵のセンサ・情報システムの機能を一時的または恒久的に無力化するために、強力な電磁パルスを発生させるEMP*弾の構成システムに関する研究を行っています。

The research on EMP* ammunition, which creates strong electro-magnetic pulse, is conductedto make the capability of sensor and information system of enemy troop be suppressedtemporary or permanently without any secondary damage caused by conventional ammunition,missiles, etc.

EMP弾構成システムの研究Research on EMP ammunition system

EMP弾構成システムEMP ammunition system

センサ・情報システムを導入した敵部隊Enemy Troops with C4I capabilities

EMP弾EMP Rocket

制御部・ロケットモータ部Control & Propulsion section

EMP放射部EMP warhead

EMP弾構成システムの研究Research on EMP ammunition system

基礎研究において製作したEMP試験装置Experimental equipment for EMP emission test

EMPとは、電磁パルス(Electro-MagneticPulse)の略で、瞬間的に発生する電磁波を指します。近年、装備品の多くにセンサーが多用されているほか、精密電子機器が組み込まれており、特に指揮通信、情報収集活動にとって必要不可欠なものとなっています。敵の装備品に強力なEMPを照射することで、アンテナ、ケーブル等を経由し、レーダやセンサー等の内部の精密電子機器の機能を喪失または一時的に阻害できれば、弾丸や破片により直接破壊することなく、敵の装備品の能力を低減することができます。陸上装備研究所では、弾薬に搭載可能で強力な電磁パルスを発生させるEMP弾構成システムの研究を行っています。防衛技官

松崎 友美

* EMP : Electro-Magnetic Pulse (電磁パルス)

10

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多種目標対処弾技術の研究Research on Multi-Purpose Ammunition

敵陣地・集結地対処(破片効果)Assembled Target (Fragmentation Effect)

掩蔽目標対処(破片効果)Non-line-of-sight Target (Fragmentation Effect)

構造物対処(壁面開口・内爆効果)Structure (Penetration and Inside Blast Effect)

戦闘車両等(間接照準)Combat Vehicle etc. (Indirect Fire)

戦闘車両等(直接照準)Combat Vehicle etc. (Direct Fire)

発射薬Propellant

薬きょうCartridge Case

主弾頭Warhead

先駆弾頭Shaped Charge

前方信管Sub Fuze

主信管Main Fuze

多種目標対処弾のイメージImage of Multi-Purpose

Ammunition

戦闘車両等から発射でき、単弾種で、対処目標に応じて最適な効果を発揮可能な多種目標対処弾に関する研究です。信管モード(時限、着発、延期)を設定することにより、敵陣地・集結地、掩蔽目標及び構造物に対して、同一弾種で対応することが可能となります。

We conduct the applied research on multi-purpose ammunition, which can be fired fromcombat vehicles, that would demonstrate the most appropriate effect in accordance with thetarget, in spite of a single type of ammunition. By pre-setting up the fuze (time function, impactaction, delay action), the ammunition can deal with various targets such as assembled target,non-line-of-sight target and hard structure.

多種目標対処弾とは、その名のとおり「多種」の「目標」に「対処」することを目的とした砲弾です。市街地や島嶼部での戦闘では、障害物の陰やビル等の建造物内に敵が潜んでいる場合が想定されます。本来であれば、局面に応じた砲弾が必要ですが、炸薬を起爆させる信管のモードを切り替え、適切なタイミングで起爆させることで、一種類の砲弾で様々なシチュエーションに対応できます。

多種目標対処弾における信管のモードには、主に「時限」「着発」「延期」があります。「時限」は設定した秒時で作動するモード、「着発」は物体に衝突した際に作動するモード、「延期」は砲弾が物体に侵入した後に遅れて作動するモードです。特に延期作動に関しては、コンクリートのような堅固な対象への衝突に耐えられる強度と、衝突後でも確実に作動する高い作動率が求められ、本研究の大きな技術課題となっています。

防衛技官

吉田 一洋 11

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空冷式インホイールモータの研究Research on Air-cooled system of In-Hub Motor

軽量戦闘車両システムの研究の成果の一つである水冷式インホイールモータと同等の性能を維持しつつ、残存性及び部隊での整備性の向上並びに軽量化に寄与する戦闘車両用インホイールモータの空冷化について研究を行っています。

We conduct the research on air-cooled in-hub motor for combat vehicles. A scope of theresearch includes to reduce the weigh as well as to enhance survivability and maintainability ofcombat vehicles by maintaining the same level of water cooled in-hub motor, which isconsidered as one of the results of the previous research on the Lightweight Combat VehicleSystem.

研究の流れ Research Method

軽量戦闘車両システムの研究(H22 ~ H28)Research on Lightweight Combat Vehicle (LCV) System

クーラント(水冷水)が通るホースを省略できる空冷化の検討Study on Air-Cooled System of In-Hub Motor withoutliquid coolant hose

水冷式インホイールモータ(軽量戦闘車両システムの研究)

Water-Cooled In-Hub Motor(Research on LCV System)

空冷化ハブ構造の設計Structural Design of Air-Cooled In-Hub Motor

台上試験 & シミュレーション検討Bench Test & Examination by Simulation

供試品の製造Manufacturing of Prototype

ホースCoolant Hose

インホイールモータIn-Hub Motor

軽量戦闘車両システムの研究ではインホイールモータ(8ページ参照)を採用することにより既存車両以上の機動力、その場で旋回する超信地旋回機能及び車高調整機能の付加といった利点があることを実証できましたが、一方で水冷式とするとクーラント(冷却水)が循環するホース類が車の外に暴露する構造となってしまいます。これではIED等によりインホイールモータを直接壊されなくても、ホースを破断等されることによりインホイールモータの冷却が上手くいかず、インホイールモータの性能を発揮できなくなってしまいます。

空冷式インホイールモータの研究は、クーラントに代わる冷媒によりインホイールモータを冷却しつつ、インホイールモータの性能も水冷式と同等を維持できる空冷式インホイールモータに着目し、実現を目指したものです。

防衛技官

遠山 幸博12

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オペレータOperator

走行・作業エリアの3D地図作成3D Mapping for driving & working

遠隔操縦に適した俯瞰表示Optimized Bird View for remote control

遠隔操縦Remote Control

私は無人機システムの研究をおこなっています。ここで紹介しているCBRN対応遠隔操縦作業車両システムは、現場の情報が事前に得られない災害現場等へ、真っ先に投入されることを想定した無人車両システムであるため、遠方の安全な地点から遠隔操縦によって、自己完結的に情報収集や各種作業などが可能です。また、各種車両は現場にいち早く展開できるように、民間重機の最高速度(5km/h~10km/h程度)と比べて最高速度が高く、遠隔操縦時には約30km/h、有人操縦時には約50km/hの最高速度を出すことができます。

CBRN対応遠隔操縦作業車両システムの環境認識向上技術の研究

Improvement of Environment Recognition for Remote Controlled Engineering Vehicle System for CBRN Threats

本研究ではCBRN対応遠隔操縦作業車両システム※に対して、複数車両からの情報が統合可能な環境認識向上技術に関する研究を行っています。これにより、本システムが地形・気象等が変化する野外環境においても、より安全・効率的に複数無人車両による作業等が可能となります。

In this study, we have been improving the environmental recognition technology for RemoteControlled Engineering Vehicle System for CBRN Threats*. The system can be operated safelyand effectively by integrating information from several unmanned vehicles even in harshenvironmental conditions, such as dramatically changeable weather and terrain.

※CBRN対応遠隔操縦作業車両システム : 化学(Chemical)、生物(Biological)、放射線(Radiological)及び核(Nuclear)で汚染された地域においても無人車両を用いて自己完結的に情報収集や各種作業等の初動対処が可能なシステム。* Remote Controlled Engineering Vehicle System for CBRN Threats : The system which can gather information and work for initial response even under Chemical, Biological, Radiological and Nuclear contaminated area.

防衛技官

渡邉 嵩智13

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レールガン(電磁砲)の研究Research on Electromagnetic Railguns

火薬の燃焼ガスではなく、電磁力(ローレンツ力)により、飛翔体を加速させるレールガン(電磁砲)の研究を行っています。火薬を使った従来火砲に比べて、レールガンでは飛翔体の初速や飛距離を大幅に増大させることが可能です。

We have been conducting numerous research onelectromagnetic railguns which utilize theelectromagnetic force, also known as the Lorentzforce, to accelerate a projectile instead of usinggases from burning powder. Railguns canenhance the muzzle velocity of a projectile andits range extensively comparing to otherconventional powder guns.

みなさん、レールガンってご存知ですか。これは、2本のレールの間に弾丸を装填し、電気エネルギーのみにより弾丸を発射する未来型の砲です。この砲の特長は、弾丸初速が速く、射程を延伸できること、それと火薬エネルギーを用いないため安全性に優れていることです。クルマに例えるなら、100%電気自動車と同じです。現在、技術的には、米国が最先端を走っていますが、わが国も少し後ろを全速力で追いかけているところです。よく一般の方から、リニアモーターカーと同じですかという質問を受けますが、実は少し違います。電気と磁気の力を利用している点では同じですが、リニアモーターカーは、N極・S極の効き合う力と反発する力により推進させます。他方、レールガンは、高校物理で学習するローレンツ力により弾丸を発射するしくみです。防衛技官

古賀 貴史

チャンバーChamber

砲身Barrel

小口径レールガンSmall Caliber Railgun

飛翔体Projectile

電機子Armature

電磁力(ローレンツ力)Lorentz Force

導体レールConducting Rail 磁場

Magnetic Field電流

Current

電源Power Supply

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人員防護解析技術の研究Research on Personnel Protection Analysis

防弾チョッキ等の着用時における被弾時の衝撃による人体への影響を解析し、人員の生存性を定量的に評価するための、人体模擬模型と人体数値モデルについて研究を行っています。

To evaluate personnel vulnerability quantitatively, we develop human torso experimental modeland numerical model that can simulate shock propagation in human torso under ballistic impacton protective equipment.

高速で飛んでくる銃弾や破片などから自衛隊員を守る最後の砦となるのが、防弾チョッキなどの個人防護装備です。防弾チョッキに銃弾が衝突した際には、貫通を防ぐことができた場合でも、防弾チョッキの変形や体の中を伝わる衝撃により打撲や骨折、内臓の損傷といった大きな怪我が発生する可能性があります。この現象の解明には医学・工学双方の知見が必要とされ、陸上装備研究所においても実際の射撃とシミュレーションを組み合わせた研究を行っております。研究の中では、生体の各部位の材料特性を再現した人体模擬模型への射撃により、変形の様子や衝撃圧力といったデータを取得し、シミュレーション上で構築された人体数値モデルの更新を行います。そのようにして得られた成果より、弾着衝撃から防護するための材料や構造を検討し、自衛隊員を守るための装備品へと活用します。

防衛技官

石野 貴之

防弾板ProtectiveEquipment

銃弾等Bullet etc.

衝撃伝搬Shock Propagation

Induced by Ballistic Impact人体模擬模型

Human Torso Experimental Model人体数値モデル

Human Torso Numerical Model

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先進対艦・対地弾頭技術の研究Advanced Anti-surface Warhead Technology

我が国の島嶼及びその周辺海域に展開する部隊等に有効に対処できる誘導弾用弾頭を研究目標とし、各種艦艇に対処可能なシーバスター弾頭と陸上に展開する部隊等に対処可能な高密度EFP*弾頭の研究を行っています。

The objective of “Advanced anti-surface warhead technology” is to develop warheads of guidedmissiles to attack warships and military vehicles deployed around/on the small islands and theirsurrounding sea area. As a project, we conduct the research on a tandem type warhead for antisurface ships and a multi EFP* type warhead for anti ground vehicles.

誘導弾Guided missile

目標Target

高密度EFP弾頭Multi EFP type

warhead

誘導弾Guided missile

従来型EFPSingle EFP

ライナーLiner

本研究Multi EFP

EFP

目標Target

誘導弾Guided missile

先駆弾頭Precursor warhead

主弾頭Main warhead

シーバスター弾頭Tandem type

warhead

陸上装備研究所では、陸海空自衛隊で装備する誘導弾(ミサイル)等の弾頭及び信管の研究行っています。

「先進対艦・対地弾頭技術の研究」は、島嶼及びその周辺海域に展開する敵部隊等に対処するための弾頭であり、その中で、シーバスター弾頭は、先駆弾頭により目標に侵徹痕を生じさせた後、その侵徹痕に向けて主弾頭を侵徹・起爆させて、主弾頭の爆風効果により、目標を破壊するタイプの弾頭です。また、高密度EFP※弾頭では、EFPを生成するライナー※を、積み重ねて配置することで従来の倍以上の個数のEFPを生成し、より多数のEFPによる攻撃が可能となります。

※ライナー:EFPを生成する元となる皿状の小さな金属円盤

防衛技官

関口 和巳

* EFP:Explosively Formed Projectile(爆発成形弾)

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隊員の安全を守る技術は、自衛隊において非常に重要な技術であり、他国と同等またはそれ以上の技術が要求されるため、日々研究を進化させる必要があります。

「アクティブ防御システムの研究」では、敵の弾頭威力を無力化し、我の被害を軽減することはもとより、我が発射する迎撃体による副次的被害※を、我が国の材料技術及び金属加工技術を駆使して、極限化することを目指しております。

試作品は、ロケット弾の探知・標定を検証するためのセンサ-、副次的被害の軽減効果を検証するための迎撃体及び至短リアクション時間で発射筒が指向でき、迎撃体発射を検証するための発射器に関する構成要素を設計し、性能を評価しています。

※副次的被害:迎撃体からの爆風・破片等により我が受ける被害防衛技官

武部 良亮

アクティブ防御システムの研究Research on the Active Protection System

国際平和協力活動において、脅威となるロケット弾等から、装甲車や隊員を守るための装備品の研究を行っています。電波レーダ及び光波センサーにより遠方でロケット弾等を探知し、副次的被害を軽減した迎撃体で迎撃することで、装甲車や隊員の安全が確保できます。

Missiles and rockets have been posing threats to combat vehicles and personnel in theinternational peace cooperation activities. We conduct the research on active protectionsystems that can detect them at a sufficient standoff range by optical sensors and radars andintercept using counter-ammunition with less collateral damage.

アクティブ防御システムの運用構想例Operation Image of Active Protection System

装甲車Combat Vehicle

ロケット弾Rocket

発射器Launcher

防御範囲Protection range

迎撃体Counter-ammunition

センサーSensor

センサーSensor

研究試作品Prototype

発射器Launcher

迎撃体Counter-ammunition

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車両用多種環境シミュレータの研究Ground / Amphibious Vehicle Simulator (GAVS)

従来の陸上だけでなく、水際や水上など様々な環境下における各種車両の機動力評価のためのシミュレータの研究を実施しています。

The research on the simulator for both ground and amphibious vehicles has been conducted inorder to evaluate the mobility of the vehicles under various environment, including on thewater, shore and land.

陸上装備研究所では、陸上環境における車両の機動力評価に役立つシミュレータを構築してきました。近年、水陸両用車が陸上自衛隊に導入されたことから、陸上環境のみならず、水際環境及び水上環境での車両の機動力評価が可能なシミュレータの構築が必要となっています。

「車両用多種環境シミュレータ」では、陸上、水際及び海上のすべての環境モデルや各種車両モデルを構築することにより、構想段階における新規開発車両の代替案分析、運用段階における既存車両の改良・改善等のための強力なツールとして活用することを目指しています。

防衛技官

上村 圭右18

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ハイブリッド装軌車両の試験状況Tracked HPS Demonstrator

電力変換装置Converter/Inverter

モータMotor

エンジンEngine

バッテリーBattery

発電機Generator

操縦画面Driver’s Monitor

ハイブリッド装軌車両の主要構成品Components of Tracked HPS Demonstrator

ハイブリッド動力システムの研究Research on Hybrid Propulsion Systems (HPS)

装軌車両へのシリーズ方式のハイブリッド動力システムの適用性を実証する研究を実施しました。また、日米共同研究により、ハイブリッド動力システムを搭載した車両の試験手法を確立しました。

The research was conducted to demonstrate the applicability of series-hybrid propulsion systemto traced vehicle. In addition, by the U.S.-Japan cooperative research, the test operationprocedure was established for vehicles with hybrid propulsion systems.

車を電気の力で動かす発想は意外に古く、19世紀には電気自動車が出現しています。当時の技術ではガソリン車に対抗することができず一度姿を消すことになりますが、その後の技術進展により、今日では確固たる地位を築いています。

防衛技官

椿 尚実

制御が容易で蓄積もできる電気を利用し、機械式動力装置と組み合わせるハイブリッドシステム(9ページ参照)は燃費の向上、動力機器の配置自由度の向上、非常用電源としても利用できる等、様々な利点があります。本研究は、このようなハイブリッドシステムが持つ利点を生かした自衛隊車両を実現するため実施したものです。研究試作した車両はモータのみで駆動するシステムを採用し、バッテリーのみで静粛に走行することも可能です。この成果を生かし、年々複雑化、高度化する自衛隊の活動を支える装備品の創製を目指します。

19

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試験用車両(陸上自衛隊の高機動車ベース)Vehicle based on High Mobility Vehicle of the JGSDF

探知センサDetection Sensors

研究試作品Prototype

*IED : Improvised Explosive Device (即製爆発装置)

IEDの威力範囲IED effective area

一定領域をまとめて探知Detection over wide area

走行しながら探知Detection while running

IEDの威力圏外から探知Detection from outside IED effective area

隠蔽されたIEDhidden IED

IED走行間探知技術の研究Research on Counter-IED Systems

郊外及び都市部に敷設されたIED*の脅威から人員及び車両を防御するために、IEDの敷設位置を高速に探知することが可能な器材に関する研究です。

We engage in a research project on counter-IED* system to protect crews and vehicles from the threat of IED set up in suburban and urban areas.

地中や地表のIEDによって、米軍等ではこれまでに多くの被害を受けており、大きな問題となっています。地中等に隠れた目標物や対象を探知するため、様々なセンサーを用いた探知器について、国内外の研究機関で基礎的な研究が進められています。陸上装備研究所ではこれらの複数のセンサー技術を応用し、離れた場所から広域を迅速に探知するため、電磁波と光波のセンサを車載してIEDを探知する技術について研究を進めています。

防衛技官

中島 弘朋20

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研究成果の実装イメージOperation Image of Light-weight Bridge

材料試験Material Property Tests

構造解析Finite Element Analysis

*CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics(炭素繊維強化プラスチック)

橋梁長の延伸、到着後の迅速な架設Long Span and Rapid Launch

架設地点への高速機動性High Strategic / Tactical Mobility

各種車両への搭載適合性の向上Compatibility to Various Vehicles

CFRP供試体による検証CFRP Test Component

自衛隊で使用する橋梁は、主にアルミニウム等の金属製でできています。材料として軽量で高強度、腐食しない炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)を用いることで、高性能化や運用性の向上が図れ、また、この研究で得られる成果は、自衛隊のみならず一般の応急橋梁等に適用可能なものと考えています。

将来軽量橋梁構成要素の研究Research on Components of the Future Light-weight Bridge

有事や大規模災害などで橋が壊れてしまった場所において部隊を迅速に展開させるために使用する自衛隊用応急橋梁の更なる高性能化を目指して、橋梁の主要構造部に軽量かつ高強度なCFRP*を適用するための要素技術について研究を進めています。

The research in relation to the component technology is being conducted to utilize CFRP* withlight weight and high strength for the main structural parts of military bridges. We aim toproduce high-performance temporal bridges for Self Defense Force use. The unit must actpromptly in the location where a bridge was collapsed by an emergency case or a large disaster.

防衛技官

鈴木 洋史 21

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将来、より良い防衛装備品を創製するため、試作と試験、シミュレーションを繰り返し、さまざまな技術課題の解明に取り組んでいます。ここでは、陸上装備研究所が研究試作した「CBRN対応遠隔操縦作業車両システム」の試験の一部を紹介します。

試作品の試験を紹介します

車両から見える前方の景色ですが...

最初に、研究所内にある試験施設を用いて、車両の基本性能を確認しました。写真は、試作車両の傾斜安定性を確認している試験の模様です。

陸上自衛隊訓練場において市街地を模した構造物の間を遠隔操縦して走行させ情報収集する試験を行いました。

操縦者は、車両外の離れた地点から、こんな具合で遠隔操縦しています。

CBRNで汚染された危険な地域において、遠方の安全な地点から情報収集や各種作業などを遠隔操縦できる自己完結型の無人車両システムです。

基本性能(車両安定性)

基本性能(傾斜安定性)

基本性能(車両安定性)遠隔操縦走行

基本性能(車両安定性)

情報収集(市街地環境)

CBRN対応遠隔操縦作業車両システム

千歳試験場のテストコースにて、遠隔操縦による走行試験を行いました。

複数台同時走行も決まっています!

試験の流れ

CBRN: Chemical (化学剤),Biological (生物剤),Radiological (放射線),Nuclear(核)

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基本性能(車両安定性)遠隔操縦作業

基本性能(車両安定性)

衛星通信による遠隔操縦

基本性能(車両安定性)雲仙普賢岳に

おける総合試験

陸上装備研究所・陸上自衛隊演習場において、遠隔操縦による掘削・把持などの基本動作や瓦礫の撤去など通路の啓開など各種作業の試験を行いました。

20km離れた千歳試験場・陸上自衛隊演習場間において、衛星通信により遠隔操縦して、不整地走行や各種作業の試験を行いました。

長崎県雲仙普賢岳において、実際の火山岩を排除する通路啓開や火山灰の壕・崖を整地しながら進む試験を行いました。この試験は国土交通省の協力を得て行いました。

★本試験に関する成果は、将来の防衛装備品に反映するほか、学会・シンポジウムなどで公表しています。

通路の啓開:瓦礫等を撤去し、道路を通行できるようにすること。

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耐弾に関する研究開発において、各種材料の高速高圧下における動的材料特性や侵徹現象を解明するための装置です。

The Powder Gun launches a projectile bygunpowder combustion, while the Two-stage LightGas Gun launches a projectile through the pressureof the light gas which was originally compressed bythe pressure generated by gunpowder combustion.Both guns are used to evaluate dynamic materialproperties and ballistic properties of variousmaterials under high strain rates and pressures.

高速弾撃試験装置 ・ 超高速飛しょう体発射装置Powder Gun and Two-stage Light Gas Gun

信管衝撃シミュレーション試験装置Fuze Impact Simulator

砲弾・誘導弾・ロケット弾等の各種信管に関する研究開発において、試作品の野外試験に先立ち、屋内において着発機構部、S&A(安全解除機構部)、光波近接機構部などの作動特性及び耐衝撃性を解明するための装置です。This device is to simulate impact shock and firingacceleration of various detonating fuzes, such as anartillery shell, a guided missile, and a rocket indoors. Itis able to solve operational characteristic and impactresistance of a graze burst mechanism, S&A (Safetyand Arm device), a light wave proximity mechanism,etc., in advance of the field examination of a trialproduct.

車両等の質量、重心位置及び最大安定傾斜角度を測定する装置です。

Test bench to measure vehicle static characteristics suchas weight, center of gravity and safe incline angle.

静特性測定装置Vehicle Static Characteristic Test Bench

試験研究施設を紹介します TEST FACILITIES

試験槽 Test Chamber

ランチャ Launcher

高圧ガスチャンバHigh-pressure Gas Chamber

超高速飛しょう体発射装置Two-stage Light Gas Gun

高速弾撃試験装置Powder Gun

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車両の走行時の負荷を与えることにより、車両の動力装置(エンジン、トランスミッション及び冷却装置を一体化したもの)を評価する試験装置です。

Test facility to evaluate the powertrain (engine, transmission,and cooling system) of tracked and wheeled ground vehiclesby simulating driving resistance, etc.

動力性能試験装置Power Simulator for Vehicle Powertrains

車両、施設器材等の寒冷地及び酷暑地における環境試験が可能な施設です。

Test facility to evaluate environmental performances of ground vehicles, engineer equipment, etc. under various temperature and humidity conditions.

環境試験室Environmental Testing Chamber

管理土槽室Mine Detection Test Facility

地雷の探知試験を一定状態に管理された土壌で実施するための施設です。

Test facility for mine detection system under constant soilcondition.

動力装置Power Train

渦流電気動力計Eddy Current Dynamometer

負荷装置Load Equipment

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16式機動戦闘車陸上装備研究所においては、主に、火力、機動力、防護力の性能試験を担当しました。機動戦闘車の懸架装置は、レーシングカーにも採用されているダブルウィッシュボーン型であり、走行性能に優れています。陸上自衛隊演習場で行った走行試験でも路面の変化に合わせてタイヤが良く動きました。特に、車両振動試験において限界を見極める試験などは、強く印象に残っています。

NBC偵察車陸上装備研究所においては、主に、車体の性能試験を担当しました。NBC*偵察車の車体は、既存のベース車体が存在せず、新たに設計した車両であることから、性能試験する現場はいつも緊張感が高まっていました。また、現場以外でも、秋田・新屋での砂地走行試験のため、毎朝、交通量の激しい秋田市街を、NBC偵察車(試作車)を自走させるときは、緊張の連続でした。

10式戦車陸上装備研究所においては、主に、火力、機動力、防護力の性能試験を担当しました。このうち連続走行試験では、防衛省規格(NDS)の規定距離4,950キロメートルを走破できるか時間との闘いでした。しかし、千歳試験場への試験の集中と陸上自衛隊支援隊の多大な協力により、無事、NDS規定を遙かに超える距離を連続走行することができて、ほっと胸を撫で下ろしました。

陸上装備研究所が

性能試験を担当しました ~開発装備品~

装輪155mmりゅう弾砲陸上装備研究所においては、主に、火力、機動力の性能試験を担当しました。99式自走りゅう弾砲ベースの155mm口径火砲を8輪の装輪車両に搭載したもので迅速に機動、展開できます。平成30年7月から9月までの約3ケ月間、米国のユマ試験場において火力性能の試験を行いましたが、最大射程での迫力満点の射撃、毎日の気温が40℃を超える酷暑環境での試験、米側との交流は、特に思い出深いものとなりました。

* NBC: Nuclear(核),Biological(生物剤),Chemical(化学剤)

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攻撃に対する弱点を低減することは、装備品設計の上で極めて重要です。脆弱性解析シミュレータを用いると、様々な脅威を装備品の数値モデルに仮想的に射撃して弱点を見出し、対策を施すことができ、防護コンセプトを効率的に机上検討することが可能です。

Vulnerability reduction is essential for weapon systems. The simulator assesses and visualizesthe weak points against various threats using the digital mockups. That realizes the rapidprototyping of weapon systems from the protection viewpoints.

脆弱性解析シミュレータVulnerability Analysis Simulator

誘導弾用弾頭の研究において、目標とする艦艇や車両のモデルを作成し、打撃効果をシミュレーションしています。このシミュレーション結果は、試作する弾頭の設計に役立てています。詳しくは、16ページをご覧ください。

モデル作成例目標艦艇の格納庫内に駐機している艦載機群

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地味だけどスゴイ!Defense Technology

防衛技術の名脇役!

なにかと注目度が高いハイテク!それとは対照的に地味な技術もある。そんな地味な技術も、実は、最新の防衛装備を陰から支える技術であり、言わば、防衛技術の名脇役なのです。ここでは、陸上装備研究所が注目する地味だけどスゴイ防衛技術(Defense Technology)を紹介します。

通常タイプの火薬 安全化された火薬(研究中)

弾薬とは、弾丸と火薬の総称です。この弾薬には、とても大切なことが二つあります。ひとつは、敵に対して脅威であること。もうひとつは、味方には脅威でないこと、つまり安全であることです。

弾薬は、燃焼や爆発するよう設計製造されており、戦車やミサイルなどに搭載されています。

万一、敵の攻撃により被弾してしまうと、搭載している弾薬が火災や爆発を起こし、隊員が不慮の事故に遭うこととなります。

このような事故を防ぐため、弾薬の安全化が求められているのです。

火薬を詰めた容器にそれぞれ銃弾を貫通させる試験を行うと、通常タイプの火薬(左)では火災が発生するが、安全化された火薬(右)では無反応(安全)であることがわかる。

履帯とは、右図のように戦車や装甲車に装着して走行するための部品であり、無限軌道とも言います。乗用車で言えばタイヤに相当します。

現有装備の履帯は、鉄製で、車両質量の1割を占めています。これをゴム履帯に変えることにより、車両の軽量化や燃費の向上、騒音・振動の低減などを図ることができるようになります。

将来、ゴム履帯を装着した戦車をみることができるかもしれません。

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防弾チョッキを着用した人員が被弾した際に、人体のどの部分への被弾が深刻な被害につながるかを評価する技術を、陸上装備研究所と国防科学技術研究所との間で行うもので平成28年7月22日に共同研究取決めが締結されました。

防弾チョッキの開発には、衝撃による人体への影響を把握することが必要

衝撃伝搬

銃弾等

防弾板

英国・国防科学技術研究所との共同研究

将来の大型車両用ディーゼルエンジンの小型・高出力化及び低燃費化に関する研究を行うために、同エンジンの性能解析及び性能予測を陸上装備研究所と千葉大学との間で行うもので、平成26年6月26日に共同研究協定が締結されました。

大型車両用エンジン技術の研究

千葉大学との共同研究

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研究所を見学してみよう

陸上装備研究所においては、年1回程度、一般公開を行っています。ここでは、防衛装備(試作品)の展示や研究紹介など、広く一般の方々に陸上装備研究所の取組についてご理解を得るとともに、近隣にお住いの方々や自治会の方々との融和を図っております。また、開催に当たっては、地元の警察署・消防署・自治会や自衛隊関係部署のご支援をいただいております。

IED*を模した物体を探知する展示

試作した車両に体験搭乗(コックピットライド)

防弾チョッキの体験試着

試作した車両の動的展示

*IED : Improvised Explosive Device (即製爆発装置)30

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陸上装備の未来テクノロジー画コンテスト小宮有紗特別賞作品「危険探しミッケ&除去取りトリ」梶谷七奈

©陸上装備研究所

陸上装備研究所広報ビデオは、視察見学の方々をはじめ、陸上装備研究所一般公開や防衛装備庁技術シンポジウム、各種装備展などにおきまして上映させていただいております。

また、2018年8月から、インターネットの動画サイトにおきましても視聴していただくことができるようになりました。(陸上装備研究所のwebサイトから移動することができます。裏表紙をご覧ください。)

CBRN*対応遠隔操縦作業車両システムの展示

* CBRN: Chemical (化学剤),Biological (生物剤),Radiological (放射線),Nuclear(核)

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活躍する若手の職員たちBe Ambitious!! 未来のエキスパート

システム研究部 無人車両・施設機材システム研究室(平成29年度総合職(工学)採用)

こいずみ たかよし

小泉 貴義

たやま しゅんすけ

田山 俊介

あさくら たいち

浅倉 太一機動技術研究部 障害構成・啓開研究室(平成29年度総合職(工学)採用)

私は自衛隊が災害対応の際に用いる遠隔操縦車両の研究等に携わっています。現在は、車両を遠隔操縦した際の操用性について定量的に評価を行い、研究室の同僚や民間企業の技術者の方々と共に、現状の遠隔操縦における課題及びその改善策について検討しています。

我が国は、東日本大震災発生直後に米国の軍事用無人機を現場投入しました。これは、それまでの国産無人機が、過酷な状況で使用することを前提に作られていなかった、「ひ弱」なものであったことが一因だと考えます。そのため、災害対応を実際に行う陸上自衛隊の方々と協力し、災害現場で本当に使える、「タフ」な無人機を開発することで、国の安全に貢献しようと思っています。

入省3年目の浅倉太一です。大学では放電大電流によりアルミ合金を短時間で固相接合する技術の研究をしていました。入省してからは複合材を用いた軽量橋梁や揚陸に用いる浮橋の研究で構造解析等を行っています。

研究分野が大学での専攻と大きく異なり新しく勉強することも多くありますが、一つ一つ課題が解消され新たな知識・技能が得られることに大きな喜びを感じています。また教育を兼ねて他の研究室の野外試験等に参加することもあり、普段自分の研究室にいるだけではできない経験や交流をすることは、今後の業務において大いに役立ってくることと思います。

漫然と仕事をこなすのではなく、課せられた仕事の意味を正しく理解して職務に励むことで、将来の装備品に繋がる技術力の向上に貢献していきます。

弾道技術研究部弾道要素研究室(平成24年度防衛大学校卒業(第57期))

入隊7年目の田山1等陸尉です。施設科自衛官です。現職の前は、母校でもある防衛大学校で修士号をとるための研究をしていました。今の研究室では、同僚の技官の方が携わる研究に自衛官としての知見を提供したり、開発装備品の性能を確認する試験に参加したりすることが主な仕事です。まだまだ未熟な幹部自衛官ですが、通常の自衛官人生では関わらない装備開発の面に触れ、感じ、学んだことを部隊に向けて発信していくことが使命だと考えています。今年度の半分は職種学校へ入校しますが、そこで施設科部隊の現状を把握し、戻ってきたときにそれを装備開発に反映できるようにしたいと思います。

総務課庶務係(平成30年度一般職採用)

やまうち かずし

山内 和史入省2年目の山内和史です。学校を卒業し、社会人になったばかりでまだ戸惑っておりますが、上司や先輩方の厳しいご指導を受けつつ、日々業務を行っています。庶務係は多岐に渡る業務にも対応しており、急な作業依頼にも迅速に対応できるよう努力しています。現在は庶務業務の中でも主に陸上装備研究所の研究開発に係る職員の海外出張手続き等に関する業務を担当しております。公用旅券発給申請関係や海外旅行傷害保険加入手続きなど、外国出張をするためにはとても大切な作業となります。そのため、常に責任感を兼ね備えております。今後は、行政文書の受付業務や職員情報の管理業務などに深く携わっていきたいと考えております。私たちの仕事の一つ一つが、自衛隊の新たな装備品等の開発や技術向上につながっているということを常に意識して、今後も業務に励んでいきたいと思います。

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相模陸軍造兵廠相模陸軍造兵廠は陸軍兵器学校の西隣に矢部駅北側から相模原駅北側にかけて現在の米軍相模総合補給廠の一部を除く広大な敷地に設置され、主に戦車、砲弾などの兵器を製造していました。軍人・軍属、地方から徴用された人々を含め、1万3千人程度が勤務していました。現在、JR矢部駅の近くにある上矢部公園にその碑があります。

戦車道路(現在の尾根緑道)

陸軍兵器学校跡の碑

相模陸軍造兵廠跡の碑

研究所周辺の歴史を歩いてみよう

今から約70年ほど前、現在の陸上装備研究所及びその周辺には、旧陸軍の兵器学校や相模陸軍造兵廠等がありました。その一部をご紹介します。

戦車道路戦車道路は、現在の東京都町田市及び八王子市の境の尾根沿いに1943年頃建設(未舗装)され、現在の多摩市まで広がる総延長約30km道路を構築する計画でした。終戦後、しばらくしてから防衛庁(現防衛省)が管理し、1965年頃まで装甲車等の走行試験に活用されていました。その後、地元に返還され、町田市等が約8kmの自然遊歩道(尾根緑道)として整備し、現在は景観豊かな桜の名所としても知られています。

陸軍兵器学校陸軍兵器学校は、兵器技術の専門家の養成や軍装備の機械化を進めることを目的として昭和14年に現在の陸上装備研究所を含む広大な敷地(陸上装備研究所の約14倍)に設置され、学生・教官等7千人以上が従事していたといわれます。現在、麻布大学敷地南側にある石碑にその痕跡をとどめるのみとなっています。

陸上装備研究所

尾根緑道(旧戦車道路)

陸軍兵器学校跡の碑

相模陸軍造兵廠跡の碑

多摩境

桜美林大学

桜並木文

麻布大学

撮影地

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徒歩 JR横浜線「淵野辺駅」北口から約 1 km、所要時間 約15分

コミュニティバス JR横浜線「淵野辺駅」北口バスターミナルから乗車できます。(淵40)

所要時間 約10分 「防衛省陸上装備研究所前」にて下車(研究所正門前にバス停)

アクセス ~陸上装備研究所までの道のり~

新横浜

橋本

新宿

町田

長津田

渋谷

相模原愛川IC

淵野辺

陸上装備研究所

品川

横浜 羽田空港(東京国際空港)

京浜急行線

*地図・路線図の縮尺は実際と異なります。

横浜町田IC

海老名JCT

大野北中学校

大野北小学校

淵野辺小学校

〒郵便局

正門

相模原・矢部 古淵・町田

JR横浜線

相模原児童相談所

バス停

バス停

バスターミナル

文房具店

徒歩

陸上装備研究所

JR淵野辺駅

コンビニエンスストア

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陸上装備研究所のロゴマーク

☆ 中央にある三つの六角形は、システム研究部、弾道技術研究部、機動技術研究部を表しており、チームワークの象徴であるハニカム構造を樽状に積み上げたものです。

システム研究部: 陸上装備をイメージする濃緑色

弾道技術研究部: 火力をイメージする鮮赤色

機動技術研究部: 車両部品をイメージする渋銀色

☆ また、六角形の線は、研究室の数を表しています。

☆ そして、三つの六角形を崩れないように抱いている青色のリングは、研究所の諸活動を支える総務課を表しています。

☆ これらを取り巻く外周には、防衛装備庁陸上装備研究所の英名を、中央には陸上装備研究所の英語略称をそれぞれあしらっています。

陸上装備研究所の正門を入ると、正面に

三階建ての庁舎(中央試験室)が建って

いるのが見えます。この庁舎の前に植込

みがあるのに気付かれましたか。(右写

真)

これって、何かの装備品に似ていると思

いませんか。そうです、戦車の砲塔を模

して造られたといわれています。

今では、当時の資料などが残されていな

いため確かめることはできませんが、諸

先輩から言い伝えられている徒然なお話

しです。

★ここでは、最新技術を結集したものではありませんが、陸上装備研究所に関するほんのちょっと興味を惹くような話題を陸装研徒然話としてご紹介しています。

りくそうけん つれづれな おはなし

上部をカイズカイブキ(ヒノキ科)、下部をツツジ(ツツジ科)により造形された戦車砲塔が、みなさまをお迎えいたします。

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〒252-0206神奈川県相模原市中央区淵野辺2-9-54TEL 042-752-2941FAX 042-752-2940

改訂 2019年11月

防衛装備庁

陸上装備研究所

https://www.mod.go.jp/atla/

このパンフレットに掲載した

情報につきましては、

その一部をWEB増補版として

ご覧いただけます。https://www.mod.go.jp/atla/rikusouken.html

陸上装備研究所webサイト