52
1 2019 III(3. 4.) ノート 2019 7 24 宿題の締め切り: T1 題を していただきます。 題を 6 6 () 午後 4:00 して さい。 いした さんに して らっ いません。 スケジュール 1. ブラ ン運 a)ブラ ン運 ランダム (6 23 ) b)ランジュンバン (30 ) c)フォッカープランク (6 6 ) d)第 2 (6 13 ) e)第 2 (6 20 ) 2. a(27 ) b(7 4 ) c(7 11 ) dフーリエ変 (7 18 ) e(25 ) (8 1 )

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1

2019年度 統計物理学 III(3.と 4.) 授業ノート

吉森 明

2019年 7月 24日

宿題の締め切り: T1で一端宿題を提出していただきます。単位の必要な人は宿題を

6月 6日 (木) 午後 4:00

までに提出して下さい。物理事務室に御願いしたので、小林さんに提出してもらっ

ても構いません。

スケジュール

1. ブラウン運動

(a)ブラウン運動とランダム力 (6月 23日)

(b)ランジュンバン方程式 (30日)

(c)フォッカープランク方程式 (6月 6日)

(d)第 2種揺動散逸定理の導出 (6月 13日)

(e)第 2種揺動散逸定理の応用 (6月 20日)

2. 線形応答

(a)時間相関関数の物理的な意味と定義 (27日)

(b)時間相関関数の性質と例 (7月 4日)

(c)時間遅れの応答の一般的な式 (7月 11日)

(d)時間遅れの応答のフーリエ変換と応用 (7月 18日)

(e)久保公式 (25日)

予備 (8月 1日)

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2 3 ブラウン運動

目次

3 ブラウン運動 2

3.1 ブラウン運動とランダム力 (5月 17日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2

3.2 ランジュバン方程式 (6月 6日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7

3.3 フォッカー・プランク (FP)方程式 (6月 6日) . . . . . . . . . . . . . . . 12

3.4 第 2種揺動散逸定理の導出 (6月 13日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16

3.5 第 2種揺動散逸定理の応用 (6月 20日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21

4 線形応答理論 27

4.1 時間相関関数の物理的な意味と定義 (6月 27日) . . . . . . . . . . . . . . 27

4.2 時間相関関数の性質と例 (7月 4日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31

4.3 時間遅れの応答の一般的な式 (7月 11日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38

4.4 時間遅れの応答の応用 (7月 18日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42

4.5 久保公式 (7月 25日) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 47

3 ブラウン運動

3.1 ブラウン運動とランダム力 (5月 17日)

(シラバスから名前を変更)

目標 不規則な運動の特徴をわかり、ランダム力が何かについてイメージをつかんで、仮

定 (下記「仮定」参照)を分かる。

目次 (1) 不規則な運動

(2) ブラウン運動のモデルとランダム力

(3) まとめ

仮定 tを時間、V をブラウン運動する微粒子の 1次元の速度とした時、ブラウン運動を

次の式で表す。mV (t) = −λV (t) +R(t) (3.1.1)

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3.1 ブラウン運動とランダム力 (5月 17日) 3

ただし、mは微粒子の質量、λは抵抗係数、を表す。また、R(t)はランダム力で

⟨R(t)⟩ = 0 (3.1.2)

⟨R(t1)R(t2)⟩ = Dδ(t1 − t2) (3.1.3)

(Dは正の定数)を満たす。

結論 (3.1.1)式は、不規則な運動を再現するモデルとして有効。

例題 (この subsectionが終わった段階で解けるようになる問題。宿題ではない。) 水の

中でブラウン運動する微粒子の複雑な運動を (3.1.1)式で表すとき、「ランダム力」

が持たなければいけない性質は何か。

(1)不規則な運動

○ 不規則な運動の代表例としてブラウン運動がある。ブラウン運動とは、花粉を水に溶

かすとそこから出てくる微粒子が水の中で行う非常に細かい運動をいう。花粉の微粒子の

他、牛乳、墨汁、線香等でも観察できる。この現象は、ブラウンの研究より以前から知ら

れていたが、ブラウンが系統的な研究をしたので、この名前がついている。ブラウンの主

な発見は、ブラウン運動が生命活動とは関係ないと言う事だ。

○ wwwにあるブラウン運動のページ

ブラウン運動のページは wwwにたくさんある。実際に動いている様子を見る事の出来

る動画は、

http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/WYP2005/brown.html

シミュレーションは、

http://www.geocities.co.jp/Hollywood/5174/indexb.html

「4.ブラウン運動のシミュレーション」で、粘性抵抗と温度を選んで開始ボタンを押すと

粒子が動き出す。軌跡も書ける。

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4 3 ブラウン運動

○ どういう運動を不規則と感じるのか。

*規則的な運動: -

&%'$

?

図 3.1.1

(2)ブラウン運動のモデル

○ 1908年、ランジュンバンは、ブラウン運動を表す数式をつくった。

&%'$微粒子

e水分子@@�

�� 6e

?e e-

ランダム力R(t)

抵抗力

−λV(t)� -- 速度V(t)

図 3.1.2

微粒子は、水分子から 2種類の力を受ける。時刻を tとすると、

1. 止まっていても受ける力 (ランダム力): R(t)

2. 動きを止めようとする力 (抵抗力): −λV(t)

運動方程式は、mを微粒子の質量とすると、

mV(t) = −λV(t) +R(t) (3.1.4)

○ ランダム力R(t)の性質

1⃝R(t) ∝ δ(t− t0): デルタ関数 (t0 は力の働く時刻)

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3.1 ブラウン運動とランダム力 (5月 17日) 5

2⃝R(t)は確率変数。

■もし、毎回同じ力が働くとすると、100発 100中で必ず予想出来る。 たとえば、フィ

ギュアスケートではストレートラインステップという技があるが、これはとても複雑な動

きをする。しかし、試合のたびにまったく同じ動きを示すので、不規則な運動ではない。

k���@@@�

���??R(t)

66R(t′)

1回目

k���@@@�

���??R(t)

66R(t′)

2回目図 3.1.3

■不規則な運動は測るたびに R(t)がちがう。 100発 100中では予想出来ない。つまり、

R(t)は確率変数。

k���@@@�

���??R(t)

66R(t′)

1回目

k���@@@�

��

??R(t)

R’(t′) = R(t′)

2回目

図 3.1.4

■ 確率変数なので、平均 ⟨R(t)⟩ や相関 ⟨R(t1)R(t2)⟩ が定義できる。 また、もっと一

般的に f(x1, x2, . . . ) を任意の多変数関数とする時、⟨f(R(t1),R(t2), . . . )⟩ も定義できる (宿題 4参照)。今、i番目の測定で得られた R(t)を Ri(t)と書くと、次の関係が成り

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6 3 ブラウン運動

立つ。

⟨R(t)⟩ = limn→∞

1

n

n∑i=1

Ri(t) (3.1.5)

⟨R(t)R(t′)⟩ = limn→∞

1

n

n∑i=1

Ri(t)Ri(t′) (3.1.6)

⟨f(R(t),R(t′), . . . )⟩ = limn→∞

1

n

n∑i=1

f(Ri(t),Ri(t′), . . . ) (3.1.7)

nは測定回数。これらの平均は時間平均では無いことに注意しなさい。

○ R(t) の 2 つの性質 1⃝ 2⃝を満たす最も簡単なモデル (他にもあるかもしれない) として

(3.1.2)式と (3.1.3)式を仮定する。(3.1.2)式は全ての時刻で平均が 0を表す。(3.1.3)式

は、他の時刻との相関が無い事を表す。

宿題:

1 (10 点) 講義では不規則な運動として、次の 2点の性質を挙げた。

(a)軌道がガタガタしている。(いたるところ微分不能)

(b)同じ初期条件から始めても違う運動。つまり予測できない。

上の 2つの性質を同時に満たすのに、規則的な感じがしてしまう例を挙げなさい。

また、その例が「上の 2 つの性質を同時に満たすのに、規則的な感じがしてしま

う」ことを説明しなさい。

2 (9 点) ランダム力 R(t) の 2 つの性質をまとめ、それらを不規則な運動の特徴を

使って説明しなさい。

3 (5 点) ブラウン運動の例を挙げよ。例 1つにつき、5点とする。

4 (20 点) R(t) ∝ δ(t − t0) という性質から、R(t) は一般に R(t) =∑

i diδ(t − ti)

と書くことが出来る。この場合、R(t) が確率変数という事は、{d1, d2, . . . }と {t1, t2, . . . } が確率変数となることと等価になっている。{d1, d2, . . . } と{t1, t2, . . . } に対してどのような確率分布 ρ(d1, d2, . . . , t1, t2, . . . ) を考えれば、

(3.1.2)式と (3.1.3)式を満たすか、具体的な ρ(d1, d2, . . . , t1, t2, . . . )の式の形を 1

つ以上書きなさい。

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3.2 ランジュバン方程式 (6月 6日) 7

3.2 ランジュバン方程式 (6月 6日)

目標 ランジュバン方程式の形を覚え、ブラウン運動以外にも不規則な時間変化に応用で

きることを理解する。

目次 (1) はじめに

(2) ランジュバン方程式

(3) 具体例

(4) まとめ

仮定 tを時間、X(t)を不規則に時間変化する変数とすると、次の式をランジュバン方程

式と呼ぶ。

線形 : X(t) = −γX(t) +R(t) (3.2.1)

非線形 : X(t) = F (X(t)) +R(t) (3.2.2)

ただし、γ は定数、F (X(t))は X(t)の関数を表す。また、R(t)はランダム力で

⟨R(t)⟩ = 0 (3.2.3)

⟨R(t1)R(t2)⟩ = Dδ(t1 − t2) (3.2.4)

(Dは正の定数)を満たす。さらに、t = 0の X(0)の値も分布して、

線形 : ⟨X(0)R(t)⟩ = 0 t ≥ 0 (3.2.5)

非線形 : ⟨g(X(0))R(t)⟩ = 0 t ≥ 0 (3.2.6)

ここで、 g(X)は X の任意関数

結論 ランジュバン方程式は、不規則な運動を再現するモデルとして有効。

例題 (この subsectionが終わった段階で解けるようになる問題。宿題ではない。) 回路

に電源をつながなくても、微小な電流が流れることがある。電気容量が C のコン

デンサーと値が Rの抵抗をつないで、コンデンサーにたまる電荷 Q(t)の時間変化

を記述する式を導け。

(2) ランジュバン方程式

○ 微粒子の運動では、注目している物理量は、微粒子の速度 V だった。一般に、不規則

な時間変化をする量 X(t)に対して、ランジュバン方程式を考える事ができる。

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8 3 ブラウン運動

○ (3.2.5)式の条件: t > 0で

• R(0)は X(t)に影響するので、⟨R(0)X(t)⟩ = 0とは限らない。

• 一方、X(0) は未来のランダム力 R(t) に影響しないと仮定する。つまり、独立な

ので、⟨R(t)X(0)⟩ = ⟨R(t)⟩ ⟨X(0)⟩ = 0 (3.2.7)

(3) 具体例

1⃝水中の微粒子 (1次元)

(3.1.1)式の両辺を微粒子の質量mで割ると、

V (t) = −γV (t) +R(t)

m, γ =

λ

m(3.2.8)

X(t) = V (t)すれば、線形ランジュバン方程式を表す (3.2.1)式に対応する。

宿題:

5 (10 点) 宿題 1の不規則の運動の条件 (a)は満たすが、(b)を満たさない例を挙げ

よ。これは、不規則な運動ではない。また、例としては粒子の運動でなくても良い。

6 (11 点) (3.1.2)式の授業の説明を、不規則な運動の性質との関係を中心にまとめな

さい。

7 (10 点) 1次元の微粒子のブラウン運動が

mV (t) = −λV (t) +R(t) (3.2.9)

で表されているとする。ただし、V (t) は微粒子の速度を表す。R(t) はランダム

力で、(3.1.2)、(3.1.3) を満たす。t = 0 で、V (0) = V0 が分かっているときに、⟨V (t)2

⟩− ⟨V (t)⟩2 を求めなさい。

8 (20 点) 宿題 7で、t = 0で、V (0) = V0 のときに、⟨V (t)V (t′)⟩を t < t′ と t > t′

の場合に分けて計算しなさい。

9 (13 点) (3.2.1)式と (3.2.3)-(3.2.5)式で計算されるX(t)が不規則な時間変化をす

ることを数値的に確かめよ。ただし、時刻 tを ti(i = 1, . . . , n)のように離散化し、

(3.2.1)式をX(ti+1)−X(ti) = −γX(ti)∆t+W (ti) (3.2.10)

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3.2 ランジュバン方程式 (6月 6日) 9

のように差分化しなさい。W (ti)は、それぞれの時間で独立なガウス分布 (平均 0、

分散 D∆t) になるように乱数を使って値を決めよ。適当な初期条件 X(t1)を与え

て、実際に計算機で計算して、横軸 t、縦軸 X(t)のグラフを書け。γ や D も適当

に与えて良い。ただし、γ の大きさを 10倍以上変え、グラフの形がどう変るか調

べよ。

10 (9 点) (3.2.5)式の授業の説明をまとめなさい。

11 (20 点) 授業で扱った例以外に、ランジュバン方程式で記述できる現象を探し、ラ

ンジュバン方程式を書いて説明しなさい。どの式がランジュバン方程式かがはっき

り分るようにし、F (x)のあらわな形を書きなさい。使った記号はすべて説明する

こと。ランジュバン方程式の各項を説明し、特にそれぞれの場合にランダム力に

相当するのが何か、その実体を詳しく説明しなさい。さらに、P7 の仮定 (3.2.3)、

(3.2.4) 式をなぜ満たしていると考えられるか述べなさい。ただし、ここで言うラ

ンジュンバン方程式は、P7の仮定に書いてある式を指す。配点は、例 1つに付き

20点とし、いくつ答えても良い。その場合は、20点を超えて採点される。

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10 3 ブラウン運動

(3) 具体例

2⃝熱雑音の回路 (例題)

����

熱雑音V (t)

Q(t) −Q(t)V0(t)

C

R

6

I(t)

電位 0

図 3.2.1

左図で Q(t) をコンデンサーにたまる電荷、C をコンデ

サーの様量、Rを抵抗とする。

今、電流 I(t) の向きを図の様に取ると、熱雑音の電圧

V (t) = 0のとき、コンデンサーにかかる電圧 V0(t) > 0

ならば I(t) < 0なので、

−V0(t) = RI(t) (3.2.11)

V (t) = 0でなければ、抵抗にかかる電圧は−V0(t)+V (t)

だから、−V0(t) + V (t) = RI(t) (3.2.12)

一方、コンデンサーの電気容量の定義から、

V0(t) =Q(t)

C(3.2.13)

および、I(t) = Q(t)を (3.2.12)式に代入して

RQ(t) = −Q(t)

C+ V (t) (3.2.14)

γ = 1/(RC)、R(t) = V (t)/Rとすれば線形ランジュバン方程式に対応する。

3⃝レーザーにトラップされたコロイド粒子水中のコロイド粒子は、放っておけばブラウン運動して、動き回る。しかし、レーザー

によってある程度、位置を束縛する事ができる。

今、コロイドの 3次元の位置をX(t)、レーザーが作るポテンシャルを u(X)、コロイド

の質量をmとすると、運動方程式は、

mX(t) = −λX(t)−∇u(X) +R′(t) (3.2.15)

ここで、−λX(t)は水分子からの抵抗、R′(t)はランダム力を表す。mが充分小さい極限

で加速度の項は無視できるので、

X(t) = − 1

λ∇u(X) +

R′(t)

λ(3.2.16)

つまり、コロイド粒子は多変数の非線形ランジュバン方程式にしたがう事がわかる。

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3.2 ランジュバン方程式 (6月 6日) 11

レーザー

力が働く

コロイド粒子

図 3.2.2

4⃝ スチルベンの異性化反応

クラマースは 1940年に化学反応をランジュバン方程式で考えた。ここでは、スチルベ

ンの異性化反応を例に説明する。スチルベンは C6H5CH=CHC6H5 で表される炭化水素

の 1 種で、クラマースの理論を実験的に検証するためにその異性化反応が多く研究され

た。炭素の 2 重結合は 1 重結合に比べ回転しにくいが、安定な位置が 2 つあることが知

られている。溶液中では、液体分子がぶつかってエネルギーを得ることができるので、片

方の安定な所からもう片方の安定な所に回転する。これが異性化反応と考えられる。クラ

マースの理論にしたがえば、2重結合のまわりの回転角を時刻 tの関数として Θ = Θ(t)

と書くと、

Θ(t) = −γ du(Θ(t))

dΘ(t)+R(t) (3.2.17)

のような非線形ランジュバン方程式が書ける。ここで、γ は正の定数、u(Θ)は Θについ

てのポテンシャルを表し、Θ =0◦ と 180◦ に極小が、その間に極大がある。R(t)は液体分

子から受けるランダム力を表す。

(4) まとめ

○ 不規則に変化する物理量 X(t)をランジュバン方程式でモデル化

X(t) = −γX(t) +R(t) : 線形ランジュバン方程式 (3.2.18)

X(t) = F (X(t)) +R(t) : 非線形ランジュバン方程式 (3.2.19)

ブラウン運動だけでなくいろいろ使える。

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12 3 ブラウン運動

○ 上のX(t)のように確率変数が時間変化するものを確率過程という。それに対して、初

期値から一意的に決まるものを決定論という。

○ (3.2.4)式の条件

(3.2.4) 式をフーリエ変換すると、デルタ関数は定数になる。これは色に例えると白な

ので、白色雑音ということがある。

3.3 フォッカー・プランク (FP)方程式 (6月 6日)

目標 分布関数とその時間変化がイメージできるようになり、ランジュバン方程式から

FP方程式を自分でつくれるようにする。具体的には以下のことを分かる。

• 分布関数 P (x, t)は時刻 tに不規則な変数 X が xから x+ dxにある確率と関

係し、FP方程式は、その時間変化を表す。

• FP方程式は連続の式と確率の流れで導ける。確率の流れの各項の物理的な意

味を分かる。

• FP方程式は連続の式と確率の流れから導ける。

• 確率の流れは、「分布が広がる」という原理から導ける。

• ランジュバン方程式が与えられた時の FP方程式の形。

目次 (1) 分布関数と FP方程式

(2) FP方程式の導出

(3) ランジュバン方程式との関係

(4) 具体例

(5) まとめ

仮定 1 P (x, t)は確率の生成消滅がない。

2 確率の流れ J(x, t)は、「P (x, t)は時間とともに広がる」という条件のもとで、

微分が最も低い次数を持つ。

結論 分布関数 P (x, t)の時間変化を表す FP方程式

∂P (x, t)

∂t= {− ∂

∂xF (x) +

∂2

∂x2D

2}P (x, t) (3.3.1)

が成り立つ。

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3.3 フォッカー・プランク (FP)方程式 (6月 6日) 13

例題 (宿題 14参照) ブラウン運動で、微粒子の位置の分布の時間変化を表す式をたてな

さい。

(1) 分布関数と FP方程式

○ 例えばブラウン運動を考える時、微粒子の位置をX = X(t)とすると、X(0)が同じで

あっても、X(t)は分布する。1回目の測定で、ある位置にあっても、2回目、3回目の測

定では微粒子は全然別の場所に行く可能性がある。

一般に、不規則に変化する変数 X に対して、分布関数 P (x, t)が定義出来る。

分布関数 P (x, t):

時刻 tに X が xから x+ dx にある確率 = P (x, t)dx

○ 分布関数は時間変化する。

ブラウン運動の場合、t = 0 で微粒子に位置がはっきり決まっていれば、分布はない。

しかし、時間が経てば、分布ができ、時間とともに分布は広がっていく。これを P (x, t)

で考えると、t = 0では P (x, t)は幅の無いデルタ関数だが、時間が経つと幅が出来て、時

間とともに幅が広がっていく。

この P (x, t)の時間変化は FP方程式によって表せる。

○ 平均

任意関数 f(X)の平均 ⟨f(X)⟩は、

⟨f(X)⟩ =∫ ∞

−∞f(x)P (x, t)dx (3.3.2)

(3) ランジュバン方程式との関係

○ ランジュバン方程式と FP方程式の対応

X(t) = F(X(t)) +R(t), ⟨R(t)R(t′)⟩ = D δ(t− t′) (3.3.3)

∂P (x, t)

∂t= {− ∂

∂xF(x) +

∂2

∂x2D

2}P (x, t) (3.3.4)

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14 3 ブラウン運動

(4) 具体例

1⃝ ブラウン粒子

x = v で、F (v) = −γv となる。ここで、γ = λ/mで、λは抵抗係数、mは微粒子の質

量を表す。この時、確率の流れ J(v, t)は、

J(v, t) =

{−γv − D′

2

∂v

}P (v, t) (3.3.5)

FP方程式は、∂P (v, t)

∂t=

∂v{γvP (v, t)}+ D′

2

∂2P (v, t)

∂v2(3.3.6)

ここで、D′ は正の定数。

2⃝ 熱雑音の回路

x = q で、F (q) = −q/CRとなる。確率の流れ J(v, t)は、

J(q, t) =

{− q

CR− D′

2

∂v

}P (v, t) (3.3.7)

FP方程式は、∂P (q, t)

∂t=

∂q

{ q

CRP (q, t)

}+D

2

∂2P (q, t)

∂q2(3.3.8)

ここで、D は正の定数。

3⃝ レーザーにトラップされたコロイド粒子 (1次元)

簡単のため 1 次元を考える。x をコロイド粒子の 1 次元の位置とすると、F (x) =

−u′(x)/λで∂P (x, t)

∂t=

∂x

{u′(x)

λP (x, t)

}+D

2

∂2P (x, t)

∂x2(3.3.9)

ただし、 u′(x)は、レーザーがつくるポテンシャル u(x)を xで微分したもの、λは抵抗

係数、D は正の定数。

4⃝ 高分子

簡単のため 1次元を考える。Xi を端から i番目の原子の 1次元の位置として、∆W を

ボンド長とすると、Xi+1 −Xi = ∆W (3.3.10)

t = i∆t、X(t) = Xi とすると、X(t +∆t) = Xi+1 だから、X(t +∆t) −X(t) = ∆W

と書ける。この式は、∆W の分布が iによらず独立とすれば、∆t→ 0で F (X) = 0のラ

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3.3 フォッカー・プランク (FP)方程式 (6月 6日) 15

ンジュバン方程式と一致する。また、∆t→ 0の極限で、分布関数 P (x, t)は、

∂P (x, t)

∂t=D

2

∂2P (x, t)

∂x2(3.3.11)

にしたがう。ここで、D は⟨∆W 2

⟩= D∆tで定義されているとする。また、tは時刻で

はなく、高分子の端からの長さを表す。(3.3.11)式を t = 0で P (x, 0) = δ(x)の初期条件

で解けば、P (x, t)を求める事ができる (宿題 14参照)。

5⃝ スチルベンの異性化反応

分布関数 P (θ, t) が周期的な境界条件 P (θ + 2π, t) = P (θ, t) であれば、x = θ、

F (θ) = γdu(θ)/dθ で、FP方程式

∂P (θ, t)

∂t=

∂θ

{γdu(θ)

dθP (θ, t)

}+D

2

∂2P (x, t)

∂θ2(3.3.12)

が成り立つ。

宿題:

12 (7 点) FP方程式の導出を授業の説明に沿ってまとめなさい。

13 (5 点) 自分で適当にランジュバン方程式をつくり、それに対応した FP方程式を

書き下せ。ランジュバン方程式は宿題 11で挙げたものでも、それ以外でも良いが、

授業で扱ったものと、このノートに載せてあるものは除く。FP方程式 1つに付き

5点とし、いくつ答えても良い。n個答えれば、5n点となる。

14 (15 点) γ = λ/mが充分に大きい 3次元のブラウン運動は、

X(t) = R(t) (3.3.13)

のように書ける。ここで、X(t) は、ブラウン粒子の位置ベクトルを表す。これに

対応する FP方程式を答えよ。導出仮定は必要ない。また、答えた FP方程式の解

を、t = 0で P (X, 0) = δ(X) の初期条件で求めなさい。それを使って、時刻 tに

微粒子が rから r+∆rにある確率を求めなさい。ただし、r = |X|で、∆rは充分小さいとする。

15 (20 点) t = 0の初期条件が P (v, t) = δ(v − v0)の時の (3.3.6)式の解を、文献で

調べてレポートしなさい。

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16 3 ブラウン運動

宿題の補足: 宿題 3の例は 2つまでにして下さい。3つ以上例を挙げても 10点以上は得

点しませんので、注意して下さい。

3.4 第 2種揺動散逸定理の導出 (6月 13日)

目標 第 2 種揺動散逸定理 (2nd FDT) の概略を理解する。具体的には以下のことを分

かる。

• 物理 (化学)系の研究の特徴

• 第 2種揺動散逸定理 (2nd FDT)は、平衡分布とランジュバン方程式の F (x)

とランダム力の大きさ D の 3つの量の関係を与える。

• 2nd FDTの導出。

• 2nd FDTがなぜ役立つか。

目次 (1) はじめに

(2) 第 2種揺動散逸定理 (2nd FDT)の導出

(3) まとめ

仮定 1 X を不規則に変化する変数として、X = X(t)がランジュバン方程式

X(t) = F (X(t)) +R(t) (3.4.1)

⟨R(t)⟩ = 0 (3.4.2)

⟨R(t)R(t′)⟩ = Dδ(t− t′) (3.4.3)

にしたがっている。

2 FP方程式と等価である条件を満たしている。

3 FP方程式の平衡解 Peq(x)が存在する。ここで、平衡での確率の流れを

Jeq(x) =

{F (x)− D

2

∂x

}Peq(x) (3.4.4)

とすると、Peq(x)は定常であるという条件

− ∂

∂xJeq(x) = 0 (3.4.5)

を満たすだけでなく、系が閉じているという条件

x→ ±∞ Jeq(x) = 0 (3.4.6)

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3.4 第 2種揺動散逸定理の導出 (6月 13日) 17

も成り立つ。

結論Peq(x) = eS(x) (3.4.7)

とすると、

F (x) =D

2

dS(x)

dx(3.4.8)

特に F (x) = LdS(x)/dxと書ける時、

L =D

2(3.4.9)

例題 (3.4が終わった段階で解ける様になる問題。宿題ではない。) 第 2種揺動散逸定理

を平衡解の存在から導きなさい。

(1) はじめに

○ 緩和過程を表す式をつくりたい。ここで緩和過程とは、

非平衡状態 t→∞−−−→緩和

平衡状態 (3.4.10)

これまで、説明したランジュバン方程式や FP方程式は使えそうだ。しかし、F (x)や D

はどうしたら良いのだろうか。

○ 物理系の研究の特徴

物理 (化学)系: ブラウン運動、熱雑音、レーザートラップのコロイド粒子、スチルベン

↕それ以外: 株価の変動、生物集団の個体数

物理 (化学)系の研究とそれ以外の研究で大きく違う特徴は何か?

ヒント: ブラウン運動

mを微粒子の質量、T を温度、kB ボルツマン定数、とすると、微粒子の速度 v の分布

関数は t→ ∞でマクスウェル分布になる。

Peq(v) =

√m

2πkBTexp[− m

2kBTv2] (3.4.11)

○ F (x)や D を決めるのに平衡状態の情報を使う。

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18 3 ブラウン運動

2nd FDT: F (x)、D、Peq(x)の関係を与える

2nd FDTとは、

2nd Fluctuation Dissipation Theorem (第 2種揺動散逸定理)

どれか 2つ分っていれば、残りが分る。

例 F (x)、Peq(x)が分っている。— D がわかる。

D、Peq(x)が分っている。— F (x)がわかる。

(2) 第 2種揺動散逸定理の導出

P (x, t)は分布関数なので、確率が保存することから、連続の式

∂P (x, t)

∂t= −∂J(x, t)

∂x(3.4.12)

を満たす。ここで流れ J(x, t)は単位時間あたりに xを横切る量で、(3.4.12)式は、xか

ら x+ dxの中の増減が流れ J(x, t)と J(x+ dx, t)で決まることから導ける。J(x)は

J(x, t) =

{F (x)− D

2

∂x

}P (x, t) (3.4.13)

で与えられる。また、この流れという考えで、「系が閉じていると言う条件」(3.4.6)式を

説明すると、両端に流れが無いということになる。

今、仮定から平衡解 Peq(x)が存在して、(3.4.5)式を積分すると、

Jeq(x) = C : xによらない定数 (3.4.14)

ところが、x→ ±∞で、Jeq(x) = 0だから C = 0。つまり、平衡分布では

Jeq(x) = 0 (3.4.15)

(3.4.13)式から

Jeq(x) =

{F (x)− D

2

∂x

}Peq(x) (3.4.16)

= F (x)Peq(x)−D

2

∂Peq(x)

∂x(3.4.17)

ここで、後の式変形を簡単にするために、Peq(x) = eS(x) とする。S(x) ≡ lnPeq(x)だか

ら、これを、(3.4.17)式に代入する。2項目は、

D

2

∂Peq(x)

∂x=D

2

d

dxeS(x) =

D

2

dS(x)

dxeS(x) =

D

2

dS(x)

dxPeq(x) (3.4.18)

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3.4 第 2種揺動散逸定理の導出 (6月 13日) 19

だから、

Jeq(x) = F (x)Peq(x)−D

2

dS(x)

dxPeq(x) =

{F (x)− D

2

dS(x)

dx

}Peq(x) = 0 (3.4.19)

Peq(x) > 0だから、(3.4.8)式が導ける。 F (x)の形が S(x)により、完全に決まる。

特に F (x) = LdS(x)/dxと書ける時、つまり、X = LdS(X)/dx+R(t)の時、(3.4.9)

式が導ける。 これが、第 2種揺動散逸定理 (FDT)だ。

(3) まとめと補足

○ 今回、新しい仮定として Peq(x)の存在を仮定したが、Peq(x)が存在しない場合もある

(宿題 18参照)。

○ まとめ

平衡状態 S(x)

第 2種揺動散逸定理 (FDT)3つの要素をつなぐ

L,F (X)(散逸) ランダム力の強さ (揺動)D

?

����

@@@I

3つのうち 2つが分れば、残りも分る。物理系の場合、平衡状態が分っている事が多い。

宿題:

16 (7 点) 1次元のランジュバン方程式 X(t) = R(t)に対する FP方程式を書きなさ

い。ただし、R(t)はランダム力で ⟨R(t)R(t′)⟩ = Dδ(t− t′)を満たす。

17 (20 点) 物理系や化学系以外の系、つまり、平衡系の統計力学が使えない系におけ

る「平衡分布」の例を挙げなさい。ただし、ここでいう「平衡分布」は P. 16の仮

定を満たすものとする。

18 (20 点) FP方程式

∂P (x, t)

∂t=

∂x

{LdU(x)

dx− f(x) +

D

2

∂x

}P (x, t) (3.4.20)

で、分布関数 P (x, t) と U(x) が周期的境界条件 P (x, t) = P (x + L, t)、U(x) =

U(x + L) を満たしている時、平衡解があるための f(x) の条件を求めなさい。た

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20 3 ブラウン運動

だし、P (x, t)は 0 < x ≤ Lで定義されていて、f(x+ L) = f(x)を満たす。ここ

で、平衡解とは、(3.4.4) 式に F (x) = LdU(x)/dx + f(x) を代入して定義される

Jeq(x)が 0になる分布関数の解のことをいう。さらに、f(x)が xによらない定数

f( = 0)のとき、平衡でない定常解 Pst(x)を∫ L

0

Pst(x)dx = 1 (3.4.21)

という条件で求めなさい。

19 (7 点) 2nd FDT(3.4.8)式の導出について、 1⃝ 授業の説明に沿ってまとめ、 2⃝ ど

の仮定をどこに使っているかを明らかにして、 3⃝ (3.4.9)式も導出しなさい。 2⃝の仮定は仮定についている番号を書いてその仮定がどこに使われているか明らかに書

くこと。また、 1⃝、 2⃝、 3⃝と分けて解答すること。20 (10 点) 1次元のブラウン運動に対し、授業では微粒子の速度 V (t)しか考えなかっ

たが、位置 X(t)を考えた次のランジュバン方程式

X(t) = V (t) (3.4.22)

mV (t) = −λV − dU(X(t))

dX(t)+R(t) (3.4.23)

を考える。m、−λV、U(X)、R(t)は、それぞれ微粒子の質量、抵抗力、ポテンシャ

ル、ランダム力を表す。分布関数 P (x, v, t) がしたがう FP 方程式を求めなさい。

ただし、導出の過程は書かなくて良い。また、求めた FP方程式を使って、D、m、

λ、T の関係式を導きなさい。3.4と同じように、まず Peq(x, v)を求め、それから

導きなさい。ここで、T は温度を表す。この問題では変数が 2つあるので、(3.4.8)

式は使えない。

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3.5 第 2種揺動散逸定理の応用 (6月 20日) 21

お知らせ: 授業のホームページをつくりました。

http://bussei.gs.niigata-u.ac.jp//~yoshimori/tk319.html

連絡を載せたり、授業ノートを pdfでおいておきますので、ご覧ください。

3.5 第 2種揺動散逸定理の応用 (6月 20日)

目標 第 2 種揺動散逸定理 (2nd FDT) の応用を理解する。具体的には以下のことを分

かる。

• 2nd FDTをブラウン運動に応用して関係式を導くこと。それを使って原子の

実在が証明できること。

• 熱雑音の回路に応用してナイキストの定理が得られること。

目次 (1) はじめに

(2) ブラウン運動への応用

(3) 熱雑音の回路への応用

(4) まとめと補足

仮定 1 ブラウン運動で微粒子の速度 v の平衡分布がマクスウェル分布

Peq(v) =

√m

2πkBTexp[− m

2kBTv2] (3.5.1)

で与えられる。ここで、mを微粒子の質量、T を温度、kB ボルツマン定数と

するまた、ランジュバン方程式 (3.2.8)式から、微粒子の速度 V (t)(確率変数)

はV (t) = −γV (t) +R′(t) (3.5.2)

にしたがっている。ここで、

γ =λ

m, (3.5.3)

R′(t) =R(t)

m, ⟨R′(t)R′(t′)⟩ = D′δ(t− t′), D′ =

D

m2(3.5.4)

λは抵抗係数、R(t)はランダム力を表す。

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22 3 ブラウン運動

2 熱雑音の回路で、コンデンサーにたまる電荷 q の平衡分布は、

Peq(q) ∝ exp[− q2

2CkBT] (3.5.5)

ここで、C はコンデンサーの容量を表す。ランジュバン方程式は、(3.2.14)式

の両辺を抵抗 Rで割って

Q(t) = −Q(t)

CR+R(t), (3.5.6)

ここで、

R(t) =V (t)

R, ⟨V (t)V (t′)⟩ = DV δ(t− t′) (3.5.7)

V (t)は熱雑音の電位で、 DV は正の定数。

結論 1

λkBT =D

2(3.5.8)

これから原子の実在が証明できる。

2 ナイキストの定理2RkBT = DV (3.5.9)

(2) ブラウン運動への応用

(3.5.1)式から、S(v) = lnPeq(v)として、

S(v) = − m

2kBTv2 + ln

√m

2πkBT(3.5.10)

と書ける。微分すると、

dS(v)

dv= − m

kBTv (3.5.11)

一方、ランジュバン方程式は、(3.5.2)式なので、第 2種揺動散逸定理 (3.4.8)式から

−γv =D′

2

(− m

kBTv

)(3.5.12)

D′ に (3.5.4)式を代入すると、

=D

2m2

(− m

kBTv

)(3.5.13)

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3.5 第 2種揺動散逸定理の応用 (6月 20日) 23

両辺を −v でわって、γ に (3.5.3)式を代入すると

λ

m=

D

2mkBT(3.5.14)

これから、(3.5.8)式が導ける。(3.5.8)式を使うと、アインシュタインの関係式と呼ばれ

る有名な式を導けが、ここでのDはいわゆる「拡散係数」とは違う事に注意しなさい。多

くの文献では λと kBT と拡散係数の関係をアインシュタインの関係式という。

ここで、λは抵抗、つまり散逸を表し、kBT は平衡分布から来ている。さらに、Dはゆ

らぎの大きさなので、揺動と関係している。したがって、(3.5.8)式は平衡を保つために、

揺動と散逸がつり合っていることを表している。

(3) 熱雑音の回路への応用

(3.5.5)式から、S(q) = lnPeq(q)とすると、

S(q) = −βq2

2C+定数, (3.5.15)

dS(q)

dq= − β

Cq (3.5.16)

ここで、β = 1/kBT

一方ランジュバン方程式は、(3.5.6)式だから、F (q) = −q/(CR)で、第 2種揺動散逸

定理 (3.4.8)式にこの式と (3.5.16)式を代入すると、⟨R(t)R(t′)⟩ = Dδ(t− t′)として、

−qCR

=D

2

{− β

Cq

}(3.5.17)

両辺を −q で割って、1

CR=Dβ

2C(3.5.18)

β = 1/(kBT )だから1

CR=

D

2CkBT(3.5.19)

両辺に CkBT をかけると、kBT

R=D

2(3.5.20)

(3.5.7)式から、

D =DV

R2(3.5.21)

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24 3 ブラウン運動

だから、kBT

R=DV

2R2(3.5.22)

両辺に 2R2 をかけると (3.5.9)式が導ける。

この場合も、Rは電気抵抗なので散逸、kBT は平衡分布、DV は電圧のゆらぎなので揺

動に対応し、(3.5.9)式は揺動と散逸と平衡分布の関係を表す。

宿題:

21 (7 点) ブラウン運動の FP 方程式 (3.3.6)式で、確率の流れ (3.3.5)式の右辺第 1

項 −γvP (v, t)の役割を v < 0の場合に、授業と同じようにグラフを使って説明し

なさい。

22 (30 点) 変数が 2個以上ある線形ランジュバン方程式

Xα =

n∑β

γαβXβ +Rα(t) (3.5.23)

を考える。ここで、ランダム力は、⟨Rα(t)⟩ = 0、⟨Rα(t)Rβ(t′)⟩ = Dαβδ(t − t′)、

⟨Xα(0)Rβ(t)⟩ = 0(t ≥ 0) をみたす。(3.5.23)式を直交化して、

X ′µ = −λµX ′

µ +R′µ(t) (3.5.24)

とする時、t = 0 で X ′µ = 0 という条件で

⟨X ′

µ(t)X′ν(t)

⟩を求めなさい。た

だし、λµ > 0、⟨R′

µ(t)R′ν(t

′)⟩= D′

µνδ(t − t′) としなさい。また、t → ∞ で⟨X ′

µ(t)X′ν(t)

⟩=

⟨X ′

µX′ν

⟩eqを仮定して、⟨X ′

µX′ν

⟩eq(λµ + λν) = D′

µν (3.5.25)

を証明しなさい。

これらの結果から、t = 0で Xµ = 0の時の ⟨Xα(t)Xβ(t)⟩を求め、∑γ

{γαγ ⟨XγXβ⟩eq + γβγ ⟨XγXα⟩eq} = Dαβ (3.5.26)

となる事を示せ。

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3.5 第 2種揺動散逸定理の応用 (6月 20日) 25

23 (45 点) 変数が 2つ以上ある時、{X1, X2, . . . , Xn} = {Xα}として、

Xα(t) = F ({Xα}) +Rα(t) (3.5.27)

⟨Rα(t)⟩ = 0 (3.5.28)⟨Rα(t)Rβ(t′)

⟩= Dαβδ(t− t′) (3.5.29)

で表される多変数のランジュバン方程式で、Fµ({xµ}) =∑n

ν Lµν∂S({xµ})/∂xνの時、次の詳細釣合の条件

Peq({xµ})T ({xµ}, {x′µ}; t) = Peq({x′µ})T ({x′µ}, {xµ}; t) (3.5.30)

が成り立てば、

Lµν =Dµν

2(3.5.31)

となることが知られている。ただし、T ({xµ}, {x′µ}; t)は多変数の遷移確率で、初期条件

T ({xµ}, {x′µ}; 0) =n∏µ

δ(xµ − x′µ) (3.5.32)

を満たす FP方程式の解になっている。ここでは、

S({xµ}) = −n∑µ

kµ2x2µ (3.5.33)

で、∑n

µ′ Lµµ′kµ′ が対角化出来る時に、(3.5.31)式を証明しなさい。この場合は、

T ({xµ}, {x′µ}; t) = C(t) exp[−n∑µν

1

2σµν(t)(xµ − xµ(t))(xν − xν(t))] (3.5.34)

となることを使っても良い。ここで、C(t)は∫ ∞

−∞

n∏µ

dxµT ({xµ}, {x′µ}; t) = 1 (3.5.35)

となる様決められた規格化定数、xµ(t) は、xµ(0) = x′µ を満たす平均値、σµν(t)

は、宿題 22で計算した t = 0で 0になる分散と∑n

µ′ ⟨Xµ(t)Xµ′(t)⟩σµ′ν(t) = δµν

の関係にある。

24 (7 点) レーザーにトラップされたコロイド粒子 (1次元)で、FP方程式が (3.3.9)

式で与えられている時、その平衡分布が Peq(x) ∝ e−u(x)/(kBT ) となることを使っ

て、2ndFDTを議論しなさい。記号は、P.14の説明に従い、kB はボルツマン定数

で、T は絶対温度を表す。

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26 3 ブラウン運動

25 (30 点)授業やプリント、宿題で扱った例以外で、第 2種揺動散逸定理の例を挙げ

なさい。第 2 種揺動散逸定理を表す式を書き、何の量に対する関係かを説明しな

さい。

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27

4 線形応答理論

4.1 時間相関関数の物理的な意味と定義 (6月 27日)

目標 時間相関関数 (Time Correlation Function: TCF)を何となくイメージできるよう

にする。具体的には以下のことを分かる。

• TCFは不規則な運動を特徴付けるのに便利。

• TCFの定義はこれまでの平均の定義の他に時間平均によるものがある。

目次 (1) 4章全体の流れ

(2) 物理的な意味

(3) 定義

(4) まとめ

例題 不規則に時間変化する変数 X(t)を特徴づける物理量を求めなさい。

(1) 4章全体の流れ

4.5 久保公式

?4.1 時間相関関数の物

理的な意味と定義4.3 時間遅れの応答

� -

簡単な

関係

?

4.4 時間遅れの応答の FT と応

4.2 時間相関関数

の性質と例�

3 ブラウン運動の基礎

?

6計算できる

���

�����

��

��

計算できる

(2) 物理的な意味

○ 液体 Aに微粒子を溶かす。V (t) =微粒子の速度 (1次元)、t: 時刻

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28 4 線形応答理論

- t

6

V (t)

@@R���BBBBN���@@R�

�����@@R�

���

図 4.1.1a: 1回目の測定

- t

6

V (t)

����@@R�

����BB

BBN���CCCCCW���

���

図 4.1.1b: 2回目 (1回目と似ている。)

ところが別の液体 Bに微粒子を溶かして測ると、

- t

6

V (t)

HHj���HHj��*@@R��*@@R���

図 4.1.2a: 1回目

- t

6

V (t)

��*HHj��*���HHj���

HHj���

図 4.1.2b: 2回目 (1回目と似ている。)

Aと Bはかなり違う。液体によって違う感じがする。もちろん、軌道そのものは測る度

に違うが、同じ液体ならば、似ていると感じる。しかし、違う液体は違うと感じる。2つの

液体は平均も分散も同じなので、他に液体Aと Bの違いを定量化する方法はないのか?

(3) 定義

平均の定義の仕方で 2種類ある。

1⃝これまでの平均による定義不規則に変動する変数X(t)をそれぞれの時刻 tで確率変数と見なして平均を定義する。

これは、ランダム力の平均の定義と同じ ((3.1.6)式参照)。概念的には、何回も測定して平

均を取るのと同じだと考えて良い。つまり、i番目の測定で得られた値をXi(t)とすると、

⟨X(t)X(t′)⟩ ≡ limN→∞

1

N

N∑i

Xi(t)Xi(t′) (4.1.1)

ここで、N は測定回数を表す。これは、⟨R(t)R(t′)⟩と同じ定義。

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4.1 時間相関関数の物理的な意味と定義 (6月 27日) 29

2⃝時間平均による定義定常過程 (後述)の時だけ使える定義

⟨X(t)X(t′)⟩ ≡ limT→∞

1

T

∫ T

0

X(t+ τ)X(t′ + τ)dτ (4.1.2)

この定義では、平均は 1回の測定で得られる。つまり、1つのサンプルX(t)について、

(4.1.2)式を計算することで得られる。

- 時間

6

X(t)

CCCCCCW������AAAU������CCCCCCW���

HHj�������CCCCCCW��*HHj�

������CCCCCCW@@R�

��������*HHj

AAAUu

u6

?t+ τ

t′ + τ

t′ − t

時間軸にそってずらす

図 4.1.3:

定常過程であっても、 1⃝と 2⃝が何時も同じになるとは限らない。(宿題 30参照)

(4) まとめ

○ 時間相関関数の定義

1 確率による平均 (集団平均)

2 時間平均

宿題:

26 (30 点)中性大気組成の組成分布について、ランジュバン方程式を考えよう。105

km 以上の高度では、粒子の高度分布は直線になり、軽いものほど上に上がる。例

えば、105 km の高さでは、各成分あまり変わらないが、1000 km ほど上昇する

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30 4 線形応答理論

と、N2 が多くなる。式で書けば、平衡状態にあるとき、質量mの粒子が z にある

確率は、Peq(z) ∝ exp[−βmgz] (4.1.3)

で与えられる。ここで、β = 1/(kBT )、g は重力加速度を示す。ランジュバン方程

式を自分で考え、第 2種揺動散逸定理を議論しなさい。

27 (7 点) 図 4.1.1、図 4.1.2で液体 Aと液体 Bの時間相関関数の違いについて、授業

の説明をまとめなさい。

28 (30 点)時間相関関数と次で扱うフーリエ変換以外に、不規則に時間変化する変数

を特徴づける方法を考えなさい。

29 (7 点) 不規則な時間変化ではないが、X(t) = x0 sinωtとしたとき、時間相関関数

を計算しなさい。ただし、時間平均による定義 (4.1.2)式を少し変えた

⟨X(t)X(t′)⟩ ≡ 1

T

∫ T

0

X(t+ τ)X(t′ + τ)dτ (4.1.4)

を使え。ここで、T = 2π/ω とする。

30 (30 点) P.28にある時間相関関数の 2つの定義の片方だけを満たして、もう片方

を満たさない定常過程の例を挙げなさい。

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4.2 時間相関関数の性質と例 (7月 4日) 31

宿題の締め切り: 単位の必要な人は宿題を

8月 8日 (木) 午後 4:00

までに直接持って来られるか、物理事務室に出して下さい。範囲は T1に出題した

ものも含め、これまで出題した宿題すべてです。T1に提出したもので、50点以上

のものも含めることが出来ますので、採点して欲しい方は、申し出て下さい。

4.2 時間相関関数の性質と例 (7月 4日)

目標 時間相関関数 (Time Correlation Function: TCF)の性質を仮定とともにきちんと

覚える。具体的には以下のことを分かる。

• 定常過程の概念的な理解 (宿題 31参照)

• 2つの数学的な性質 (結論 1a、1b)は定常過程から導ける。

• 線形ランジュバン方程式が成り立つ時、時間相関関数 (TCF) は指数関数に

なる。

目次 (1) 定常過程

(2) 基本的な性質

(3) 線型ランジュバン方程式の例

(4) まとめ

仮定 1 Xµ = Xµ(t)(µ = 1, . . . , n)は、不規則に時間変化する定常過程 (時間の原点を

ずらしても、平均量は変らない)。

2 X(t)を不規則に変動する変数として、線形ランジュバン方程式

X(t) = −γX(t) +R(t) (4.2.1)

が成り立つ。γ は正の定数、R(t) はランダム力で ⟨X(0)R(t)⟩ = 0, t ≥ 0 と

する。

結論 1(a) φµν(t) ≡ ⟨Xµ(t)Xν(0)⟩ として、φµν(t) = φνµ(−t)。特に µ = ν の時、

時間相関関数は、偶関数。

(b)⟨Xµ(t)Xν(0)

⟩= −

⟨Xµ(t)Xν(0)

⟩。特に µ = ν の時、φµµ(0) = 0。こ

こで、 は時間微分を表す。

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32 4 線形応答理論

2

⟨X(t)X(0)⟩ =⟨X2

⟩e−γt t ≥ 0 (4.2.2)

例題 ブラウン運動で、微粒子の速度を V (t)、加速度A(t) = V (t)としたとき、⟨A(t)A(0)⟩を求めなさい。

(1) 定常過程

○ 時間変化する外場がある場合や、初期値が決まっている場合は、定常過程ではない。た

とえば、コロイドにレーザーをかけるとき、レーザーを動かすと時間の原点を変えられな

いので、定常過程ではない。

定常過程の場合、以下のことが成り立つ。

• 1つの時刻にしかよらない平均量 ⟨X(t)⟩定常過程ならば、tを t+ aに置き換えても値が変わらないので、

⟨X(t)⟩ = ⟨X(t+ a)⟩ (4.2.3)

が成り立つ。したがって、⟨X(t)⟩ =定数となり、tによらない。• 2つの時刻による平均量 ⟨X(t)X(t′)⟩: tと t′ による。

定常過程ならば、tと t′ をそれぞれ t+ aと t′ + aに置き換えても値が変わらない

ので、

⟨X(t)X(t′)⟩ = ⟨X(t+ a)X(t′ + a)⟩ (4.2.4)

a = −t′ とすると、

⟨X(t)X(t′)⟩ = ⟨X(t− t′)X(0)⟩ (4.2.5)

右辺は t− t′ にしかよらないので、

φ(t− t′) ≡ ⟨X(t− t′)X(0)⟩ = ⟨X(t)X(t′)⟩ (4.2.6)

○ X(t)を複数考える。{X1(t), X2(t), · · · } = {Xµ(t)} ここで、添え字は、測定を表すのではないことに注意。

φµν(t) ≡ ⟨Xµ(t)Xν(0)⟩ (4.2.7)

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4.2 時間相関関数の性質と例 (7月 4日) 33

例 3次元のブラウン運動 V (t) = (Vx(t), Vy(t), Vz(t))

φ11(t) = ⟨Vx(t)Vx(0)⟩ (4.2.8)

φ12(t) = ⟨Vx(t)Vy(0)⟩ (4.2.9)

φ31(t) = ⟨Vz(t)Vx(0)⟩ (4.2.10)

(2) 基本的な性質

○ φµν(t)の基本的な性質

● 定常過程から

⟨Xµ(t)Xν(t′)⟩ = ⟨Xµ(t− t′)Xν(0)⟩ = ⟨Xµ(0)Xν(t

′ − t)⟩ (4.2.11)

t′ = 0にすると、

⟨Xµ(t)Xν(0)⟩ = ⟨Xµ(0)Xν(−t)⟩ (4.2.12)

= ⟨Xν(−t)Xµ(0)⟩ (4.2.13)

したがって、φµν(t) = φνµ(−t) (4.2.14)

● 特に µ = ν の時φµµ(t) = φµµ(−t) : φµµ(t)は偶関数 (4.2.15)

● (4.2.12)式を tで微分 ⟨Xµ(t)Xν(0)

⟩= −

⟨Xµ(0)Xν(−t)

⟩(4.2.16)

右辺の時間の原点を tだけずらす⟨Xµ(t)Xν(0)

⟩= −

⟨Xµ(t)Xν(0)

⟩(4.2.17)

● 特に µ = ν の時

φµµ(0) =⟨Xµ(0)Xµ(0)

⟩= 0 (4.2.18)

○ 具体例

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34 4 線形応答理論

水等の液体中の液体粒子 1つを考える (3次元)。液体粒子に働くすべての力の合力の x

成分 Fx と液体粒子の位置ベクトルの x成分X をX1(t)、X2(t)と対応させる。この場合

もまわりの粒子とぶつかるので、粒子の位置も合力も不規則にゆらぐ。時間相関関数は、

φ11(t) = ⟨Fx(t)Fx(0)⟩ (4.2.19)

φ12(t) = ⟨Fx(t)X(0)⟩ (4.2.20)

等等。(4.2.13)式は、

⟨Fx(t)X(0)⟩ = ⟨X(−t)Fx(0)⟩ (4.2.21)

(4.2.15)式は、

⟨Fx(t)Fx(0)⟩ = ⟨Fx(−t)Fx(0)⟩ (4.2.22)

となり、偶関数を表す。

また、 X = Fx/mだから、(4.2.17)式を使うと、

⟨Fx(t)X(0)⟩ = m⟨X(t)X(0)

⟩= −m

⟨X(t)X(0)

⟩(4.2.23)

X は速度を表すので、力と位置の相関関数は速度相関関数にmをかけたものと符号が違

うだけという事が分る。特に同時刻の場合は、速度が温度 T のマクスウェル分布してい

ると、⟨Fx(0)X(0)⟩ = −m⟨X(0)X(0)

⟩= −kBT と計算できる。ただし、mは液体粒子

の質量、kB はボルツマン定数を表す。

最後に (4.2.18)式を使うと、⟨Fx(0)X(0)

⟩= m

⟨X(0)X(0)

⟩= 0 (4.2.24)

つまり、加速度 (力)と速度の同時刻の相関は無い。

(3) 線型ランジュバン方程式の例

(4.2.1)式の両辺に X(0)をかけて平均する。t ≥ 0の時、⟨X(t)X(0)

⟩= −γ ⟨X(t)X(0)⟩ (4.2.25)

φ(t) ≡ ⟨X(t)X(0)⟩とすると、

φ(t) = −γφ(t) (4.2.26)

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4.2 時間相関関数の性質と例 (7月 4日) 35

この微分方程式は解けて

φ(t) = φ(0)e−γt (4.2.27)

φ(0) =⟨X2

⟩だから、

φ(t) =⟨X2

⟩e−γt t ≥ 0 (4.2.28)

つまり、X(t)が線形ランジュバン方程式にしたがう場合は、時間相関関数は指数関数に

なる。

例 1. ブラウン運動

ブラウン粒子の速度を V (t)とすると、ランジュバン方程式 (3.2.8)式は、

V (t) = −γV (t) +R′(t) (4.2.29)

と書ける。ここで、R′(r)はランダム力 R(t)を質量 mで割ったもの、また γ = λ/mと

定義されている。(4.2.28)式から

⟨V (t)V (0)⟩ =⟨V 2

⟩e−γt (4.2.30)⟨

V 2⟩= kBT/m(kB: ボルツマン定数、T : 温度)だから、

⟨V (t)V (0)⟩ = kBT

me−γt (4.2.31)

■例題の答え A(t) = V (t)なので、

⟨A(t)A(0)⟩ =⟨V (t)V (0)

⟩(4.2.32)

(4.2.17)式より

= −⟨V (t)V (0)

⟩(4.2.33)

φ(t) ≡ ⟨V (t)V (0)⟩とすると、

= −φ(t) (4.2.34)

(4.2.31)式から、

= −kBTm

γ2e−γt (4.2.35)

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36 4 線形応答理論

例 2. 熱雑音の回路

コンデンサーにたまる電荷を Q(t)とすると、

Q(t) = −Q(t)

CR+R(t) (4.2.36)

ここで、C はコンデンサーの容量、Rは抵抗を表す。ランダム力 R(t)は熱雑音による電

圧を V (t)とすると、R(t) = V (t)/Rという関係がある。(4.2.28)式から

⟨Q(t)Q(0)⟩ =⟨Q2

⟩exp[− t

CR] (4.2.37)⟨

Q2⟩を計算するために平衡分布を考える。

Peq(q) = A exp[−β q2

2C] (4.2.38)

ここで、Aは規格化定数で、β = 1/kBT とした。したがって、

⟨Q2

⟩=

∫q2A exp[−β q

2

2C]dq = CkBT (4.2.39)

となる。これを代入すると、

⟨Q(t)Q(0)⟩ = CkBT exp[− t

CR] (4.2.40)

(4) まとめ

○ 時間相関関数の 4つの性質

1 φµν(t) = φνµ(−t): (4.2.14)式2 φµµ(t) = φµµ(−t): (4.2.15)式

t

ϕμμ(t)

図 4.2.4

3⟨Xµ(t)Xν(0)

⟩= −

⟨Xµ(t)Xν(0)

⟩: (4.2.17)式

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4.2 時間相関関数の性質と例 (7月 4日) 37

4 φµµ(0) = 0

これらは全て定常過程から導ける。

○ X(t) が線形ランジュバン方程式にしたがう時、時間相関関数は指数関数で表される:

(4.2.28)式。

宿題:

31 (7 点) 次の二つの問題をどちらか選べ。両方解答しても 7点にしかならない。

(a)定常過程とは何かを授業の説明に沿ってまとめなさい。

(b)P.31の結論の導出について、 1⃝ 授業の説明に沿ってまとめ、 2⃝ 仮定をどこに

使っているかを明らかにしなさい。

32 (25 点) 3つの時刻を含む平均 ⟨X(t1)X(t2)X(t3)⟩について、定常過程なら成り立つ性質を導きなさい。

33 (10 点) 線形ランジュバン方程式 (4.2.1)式が成り立っているとき、⟨(X(t))3X(0)

⟩を計算しなさい。ただし、ここでも ⟨X(0)R(t)⟩ = 0, t ≥ 0を仮定する。

34 (20 点) (3.4.22)式、(3.4.23)式で、U(X) = kX2/2とした時の ⟨X(t)X(0)⟩ を計算しなさい。過減衰の場合だけで良い。また、

⟨(X(0))2

⟩はカノニカル分布で計算

しなさい。

35 (7 点) 4.2で示した時間相関関数の基本的な性質を使って、ブラウン粒子の速度に

ついての時間相関関数 ⟨V (t)V (0)⟩を t < 0で求めよ。

36 (30 点) (4.2.28)式は (4.2.18)式を満たしていないように見える。これは、(4.2.18)

式を導く時に暗にした仮定が、成り立たないためだが、その仮定を答えなさい。た

だし、線形ランジュバン方程式 (4.2.1)式は、⟨R(t)R(t′)⟩ = Dδ(t− t′)とする時、

D = 2γ⟨(X(0))2

⟩が成り立っていて、X(t)は定常過程とする。

37 (15 点) 線形ランジュバン方程式 (4.2.1) 式が成り立っているとき、ψ(t − t′) =

⟨X(t)X(t′)⟩ (t > 0, t′ > 0)を実際に計算して、ψ(t− t′) = ψ(t′ − t)を示せ。ただ

し、t = 0で X(0) = X0(X0 も確率変数)として、D = 2γ⟨X2

0

⟩とする。

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38 4 線形応答理論

4.3 時間遅れの応答の一般的な式 (7月 11日)

目標 時間遅れの線形応答の式を覚える。その式が線形応答の範囲で一般的な式であるこ

とを理解する。

• 線形応答は、外場が小さいときに応答が外場に比例する現象で、広く見られる。

• 応答は過去の外場が影響することがある。その時の式の形を 3つの特徴を中心

に概念的に理解する。

目次 (1) はじめに

(2) 時間遅れの式

(3) まとめ

仮定 1 外場 f(t)が充分弱い。

2 f(t) = 0の時、定常過程。

3 未来の時刻の外場は、現在の応答に影響しない。(因果律)

結論 時間おくれの線形応答は一般的に次の式で書ける。

x(t) =

∫ t

−∞α(t− t′)f(t′)dt′ (4.3.1)

x(t)はある物理量、α(t− t′)は t− t′ の関数を表す。

例題 アイススケートで、足で氷をける力と進む速度の関係を数式で表しなさい。

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4.3 時間遅れの応答の一般的な式 (7月 11日) 39

(1) はじめに

○ 流れ

4.5 久保公式

?4.1 時間相関関数の物

理的な意味と定義

4.3 時間遅れの応答の

一般的な式� -

簡単な

関係

?

4.4 時間遅れの応答の FT と応

4.2 時間相関関数

の性質と例�

3 ブラウン運動の基礎

?

6計算できる

���

�����

��

��

計算できる

○ オームの法則: 電流 I、電圧 V、抵抗 Rとすると、

I =V

R: 電圧 V を外場と見ると電流 I(応答)が外場に比例 (4.3.2)

他に外場と応答が比例関係にあるものはあるか?

まとめると、

物理量 x(応答)∝外場 f : 線形応答

線形応答は多くの現象で見られる。ただし、外場が小さいときに成立。例えばオームの法

則で

I =V

R+ α2V

2 + α3V3 + · · · : テーラー展開 (4.3.3)

ここで、α2 や α3 等は V によらない定数を表す。V/R以外の項は、V が小さいとき無視

できる。

(2) 時間遅れの式

○ 外場 f が時間変化するとき (f = f(t))、物理量 xがすぐに応答するとは限らない。

例 日射 (外場 f(t))と気温 (応答 x)。日射は正午がピークだが、気温のピークは正午

からずれる。これは時間遅れの応答を表す。

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40 4 線形応答理論

○ 今の時刻 tの応答は過去の時刻 t′ からの影響の累積。

t'

累積

f(t')

t

図 4.3.1

今の時刻 tに対する、過去の時刻 t′ の単位時間あたりの寄与を x(t, t′)とすると、

x(t) =

∫ t

−∞x(t, t′)dt′ (4.3.4)

仮定 1から、応答が f(t′)に比例する (線形応答)とするので、

x(t, t′) = α(t, t′)f(t′) (4.3.5)

例 日射の例で考えると

f(t′) 時刻 t′ の単位時間あたりの日射量。

x(t, t′) 時刻 tの気温に対する時刻 t′ の日射による寄与。

外場が無いとき定常過程とすると (仮定 2)、

α(t, t′) = α(t− t′) (4.3.6)

以上より (4.3.1)が導ける。ただし、積分の上限は tになっている。これは、未来の外場

は影響しないという仮定 3から来ている。

(4) まとめ

• 線形応答: 物理量 (応答)x ∝外場 f

• 線形応答はいろいろな現象で見られる。• 時間遅れがあると、(4.3.1)式が成り立つ。

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4.3 時間遅れの応答の一般的な式 (7月 11日) 41

宿題:

38 (10 点) 時間反転対称性を調べてレポートし、時間反転対称性が仮定されている

時、時間相関関数 φµν(t)に関する新しい関係式を導きなさい。導出は詳しく書き、

参考にした文献は明記すること。

39 (20 点) 時間相関関数について、Wiener-Khinchinの定理とは何かとその証明を調

べ、レポートしなさい。

40 (7 点) (4.3.1)式の導出について、授業の説明に沿ってまとめなさい。

41 (7 点) 外場が

f(t) =

{0 t < 0

f0 t ≥ 0(4.3.7)

で表される場合に、α(t) = α0e−γt として x(t)を計算せよ。

42 (30 点) 授業やプリントで説明した例以外に、時間遅れがあるときの線形応答の具

体例を挙げなさい。 1⃝ どういう状況で、 2⃝ 何の外場をかけると、 3⃝ どういう変数

が、 4⃝ どう応答するか、 5⃝ 線形応答の式を書いて具体的に説明しなさい。また、

6⃝応答に時間後れがある原因を論じなさい。43 (30 点)(4.3.1)式は、線形応答の場合の一般的な式を表すが、応答 x(t)が外場の 2

乗に比例する非線形応答の一般的な式はどうなるか。時間遅れを考慮して答えなさ

い。ただし、P38の仮定は、すべて成り立っているとする。

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42 4 線形応答理論

4.4 時間遅れの応答の応用 (7月 18日)

目標 時間遅れの線形応答の式の、線型ランジュバン方程式への応用と、フーリエ変換す

るとどのように書けるかをわかる。

• 線形応答は、線形ランジュバン方程式が成り立つ時、指数関数で表される。

• 外場が cosωt に比例する時、応答に時間遅れがあると sinωt に比例する項が

含まれる。

目次 (1) 線形ランジュバン方程式への応用

(2) 具体例

(3) まとめ

仮定 不規則に時間変化する変数 X(t)が次の線形ランジュバン方程式

X(t) = −γX(t) +R(t) + f(t) (4.4.1)

(γ は定数、R(t)はランダム力、f(t)は外場)にしたがい、外場に依存する物理量

x(t)は x(t) = ⟨X(t)⟩で定義される。

結論 時間おくれのある線形応答の式 (4.3.1)

x(t) =

∫ t

−∞α(t− t′)f(t′)dt′ (4.4.2)

が厳密に成り立ち、α(t)がα(t) = e−γt (4.4.3)

として求まる。

例題 n個の粒子が 1次元のバネでつながっている連成振動を考える。ただし、すべての

粒子は水中にあり、速度に比例する抵抗力とランダム力を受ける。最も左端の粒子

に外力 f(t) = f0 cosωtをかけ、最も右端の粒子の位置を測定することで、バネ定

数を求める方法を考えなさい。すべてのバネ定数は等しいとする。

(1) 線形ランジュバン方程式への応用

(4.4.1)式の両辺の平均をとると、⟨R(t)⟩ = 0、⟨f(t)⟩ = f(t)だから、⟨X(t)

⟩= −γ ⟨X(t)⟩+ f(t) (4.4.4)

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4.4 時間遅れの応答の応用 (7月 18日) 43

x(t) = ⟨X(t)⟩(仮定 4.4)から、⟨X(t)

⟩= −γx(t) + f(t) (4.4.5)⟨

X(t)⟩= d ⟨X(t)⟩ /dt = x(t)だから、

x(t) = −γx(t) + f(t) (4.4.6)

(4.4.6)式は係数変化法で解くことが出来る (説明略)。t = t0 のとき x = x0 とすると、

x(t) = e−γ(t−t0)x0 +

∫ t

t0

e−γ(t−t′)f(t′)dt′ (4.4.7)

ここで、t0 は外場をかけ始める時間とする。

t0 → −∞とすると、e−γ(t−t0) = e−γt+γt0 → 0だから、右辺第 1項は 0になる。2項

目の積分の下限を −∞にして、

x(t) =

∫ t

−∞e−γ(t−t′)f(t′)dt′ (4.4.8)

つまり、α(t) = exp[−γt]

(2) 具体例

例 1. 熱雑音の回路

����

熱雑音V (t)

Q(t) −Q(t)V0(t)

C

R

6I(t)

����電源E(t)

図 4.3.2

電圧が時間変化する電源 E(t) を考える。コン

デンサーにたまる電荷を Q(t)、コンデンサーの容

量を C とすると、コンデンサーにかかる電圧は、

Q(t)/C だから、電流を I(t)、抵抗を R、熱雑音の

電圧を V (t)とすると、(3.2.12)式と同様に

Q(t)

C+RI(t) = V (t) + E(t) (4.4.9)

I(t) = Q(t)で、

Q(t) = −Q(t)

RC+V (t)

R+E(t)

R(4.4.10)

これは、(4.4.1)式で、X(t) = Q(t)、

γ =1

RC, f(t) =

E(t)

R(4.4.11)

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44 4 線形応答理論

とおくのと同じ。したがって、(4.4.2)式から

q(t) = ⟨Q(t)⟩ =∫ t

−∞e−

(t−t′)CR

E(t′)

Rdt′ (4.4.12)

となる。

q(t) =

∫ t

−∞αE(t− t′)E(t′)dt′ (4.4.13)

と書いて、E(t)に対する応答を考えると、

αE(t) =1

Rexp[− t

CR] (4.4.14)

例 2. 例題の答え ただし、n = 1(1つの粒子でもバネがつながっている)として、質量も

軽く加速度項も無視できるとする。

運動方程式は、mX(t) = −λX(t)− kX(t) + f(t) +R(t) (4.4.15)

と書ける。ここで、X(t)は粒子の 1次元の位置、mは質量、λは抵抗係数、k はバネ定

数、R(t)はランダム力とした。加速度項を無視すると

0 = −λX(t)− kX(t) + f(t) +R(t) (4.4.16)

X(t)について解くと、

X(t) = −kλX(t) +

f(t)

λ+R(t)

λ(4.4.17)

これは、(4.4.1)式で、

γ → γk

f(t) → γf(t)としたもの (γ = λ−1)と同じだから、

x(t) = ⟨X(t)⟩ =∫ t

−∞α(t− t′)γf(t′)dt′ (4.4.18)

で、α(t) = e−γkt (4.4.19)

となる。

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4.4 時間遅れの応答の応用 (7月 18日) 45

f(t) = f0 cosωt = ℜAeiωt (ℜは実部を表す記号)だから、(4.4.19)式とともに、(4.4.18)

式に代入すると、

x(t) = ℜ∫ t

−∞e−γk(t−t′)γf0e

iωt′dt′ (4.4.20)

= γf0γk

γ2k2 + ω2cosωt+ γf0

ω

γ2k2 + ω2sinωt (4.4.21)

sinωtに比例する項は、外場の時間変化から位相がずれていることを表している。

(4) まとめと補足

○ まとめ

• 線形ランジュバン方程式の場合、α(t)は (4.5.25)式のように指数関数で表される。

具体例として特に熱雑音の回路は、(4.4.14)式で表される。

○ 補足: α(t)は外場によらない

x(t)︸︷︷︸外場に比例

=

∫ t

−∞α(t− t′)︸ ︷︷ ︸外場を含まない

f(t′)︸︷︷︸外場

dt′ (4.4.22)

α(t)が外場を含むと x(t)は外場の 2乗に依存することになる。したがって、α(t)は f(t)

がどんな関数形でも変わらない。

宿題:

44 (10 点)外場と応答が比例する礼を授業で扱ったもの以外で挙げよ。何が外場で何

が応答かはっきり書け。

45 (10 点)例題を解きなさい。記号は自分で定義すること。

46 (7 点) 外場が cosωtに比例する時、時間遅れがあるとなぜ sinωtに比例する項が

応答に含まれるのか、授業の説明に沿ってまとめなさい。

47 (7 点) 1次元のブラウン運動する粒子に外場 f(t)をかけることを考える。

mV (t) = −λV (t) +R(t) + f(t) (4.4.23)

が成り立つ時、

⟨V (t)⟩ =∫ t

−∞α(t− t′)f(t′)dt′ (4.4.24)

を導いて、α(t)を求めよ。ただし、記号は (3.1.1)式と同じとする。

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46 4 線形応答理論

48 (30 点) 熱雑音の回路やブラウン運動する粒子のように、授業やプリント (宿題も

含む)で説明した例以外に、線形ランジュバン方程式から α(t)が計算できる例を挙

げ、具体的にどういう形になるか計算しなさい。

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4.5 久保公式 (7月 25日) 47

4.5 久保公式 (7月 25日)

目標 線形応答の α(t)と時間相関関数の間に簡単な関係があることを理解する。具体的

には以下のことを分かる。

• 久保公式の形を覚える。何と何を結ぶ公式か。

• 久保公式には主な仮定が 3 つあり、それぞれの仮定について、概念的に理解

し、イメージできるようにする。

• 久保公式により、外場の応答から時間相関関数を得ることが出来る。

• 緩和関数で t→ ∞の場合の証明。式変形より仮定をどこに使うか。

目次 (1) はじめに

(2) 仮定について

(3) 緩和関数

(4) 応用例

(5) 証明 (t→ ∞の場合)

(6) まとめ (時間があれば)

仮定 4.3で行った線形応答が成り立つための仮定。ただし、f(t)は外場、x(t)は外場に

応答する物理量とする。量子効果は無視する。さらに、

1. X は、不規則に時間変化する変数で、X の分布は、外場をかける前は平衡

状態。

2. 外場が時間変化しない時、平衡状態はカノニカル分布になる。つまり、E(x)

をエネルギーとすると、平衡分布は exp[−βE(x)] に比例する。ここで、β =

1/(kBT )

3. E(x) = E0(x) − xf(t)が成り立つ。ただし、E0(x)は外場が 0の時のエネル

ギーを表す。

結論

x(t) =

∫ t

−∞α(t− t′)f(t′)dt′ (4.5.1)

で定義される α(t)に対して

久保公式 α(t) = −β⟨X(t)X(0)

⟩(4.5.2)

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48 4 線形応答理論

ここで、⟨· · · ⟩は f(t) = 0の平衡分布で平均を取る。

例題 双極子モーメントを持った分子に電場をかける。双極子モーメントの電場方向の成

分を µ = µ(t)として、µの時間相関関数を、電場 E を時間変化させて測る方法を考えなさい。

(1) はじめに

○ 流れ:

4.5 久保公式

?4.1 時間相関関数の物

理的な意味と定義

4.3 時間遅れの応答の

一般的な式� -

簡単な

関係

?

4.4 時間遅れの応答の FT と応

4.2 時間相関関数

の性質と例�

3 ブラウン運動の基礎

?

6計算できる

���

�����

��

��

計算できる

○ これまで 4.1では、時間相関関数:

φ(t) = ⟨X(t)X(0)⟩ (4.5.3)

(X(t)は不規則に時間変化する変数)、4.3で線形応答:

x(t) =

∫ t

−∞α(t− t′)f(t′)dt′ (4.5.4)

を説明した。

この 2つは無関係に見えるが、実は久保公式によって関係づけられる。

■熱雑音の例 具体的に求められた例で (4.5.2)式を調べる。

• (4.2.40)式

φ(t) = ⟨Q(t)Q(0)⟩ = CkBT exp[− t

CR] (4.5.5)

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4.5 久保公式 (7月 25日) 49

• (4.4.14)式: この場合、αE(t)が α(t)だから、

αE(t) =1

Rexp[− t

CR] (4.5.6)

両方とも、e−t/(CR) が共通しているので、⟨Q(t)Q(0)⟩と αE(t)は関係ありそうだ。実際、

φ(t) =⟨Q(t)Q(0)

⟩= −CkBT

CRexp[− t

CR] = −kBTαE(t) (4.5.7)

だから、β = 1/(kBT )とすると、

αE(t) = −βφ(t) (4.5.8)

(2) 仮定について

○ 仮定 1について

最近、仮定 1が成り立たない系が盛んに研究されている。例えば、ガラス系等では外場

をかける前に非平衡状態になっていることが多い。急に温度を下げると、下げた温度に対

する平衡状態になるのに時間がかかるため、非平衡状態になりやすい。 この場合は仮定 1

は成り立たない。

○ 仮定 2について

平衡分布は、カノニカル分布でなければいけない。例えばミクロカノニカル分布では久

保公式は成り立たない。温度の一定の環境で考えるために、公式に β が表れる。

○ 仮定 3について

この仮定があるため、講義で行った証明は、外場として電場、外部電圧、磁場、レー

ザーの中心等に限定される。これらは、エネルギーに含まれるので仮定 3を満たす。温度

差や濃度差等でも線形応答は考えられるが、仮定 3は満たさないので、ここでの証明は使

えない。ただし、この場合でも似た公式が成り立つ。その証明は、別の仮定が必要。

(3) 緩和関数

(4.5.1)式に外場として、

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50 4 線形応答理論

- t

6

f(t)

f(t) = 0

f(t) = f0

図 4.5.1

f(t) =

{0 t < 0

f0 t ≥ 0(4.5.9)

を代入すると、

x(t) =

∫ t

0

α(t− t′)f0dt′ (4.5.10)

τ = t− t′ に変数変換する。dτ = −dt′ で、積分範囲は、t′ = tのとき τ = 0、t′ = 0のとき τ = tだから、

=

∫ t

0

α(τ)dτf0 (4.5.11)

もし、

Ψ(t) =

∫ t

0

α(τ)dτ (4.5.12)

を定義すると、x(t) = Ψ(t)f0 (4.5.13)

となる。Ψ(t)は、緩和関数と呼ばれ、(4.5.12)式を時間微分すると、α(t) = Ψ(t)が成り

立つことが分かる。

(4) 応用例 (例題の解答)

双極子モーメントを持った分子系で久保公式を考える。仮定 3を確かめる為に、今、運動

エネルギーを無視すると、

E(µ) = E0(µ)− µE(t) (4.5.14)

と書ける。E(t) = f(t)だから、仮定 3を満たす。

したがって、

x(t) = ⟨µ(t)⟩ =∫ t

−∞α(t− t′)E(t′)dt′, (4.5.15)

この α(t)に久保公式を当てはめる。

α(t) = −β ⟨µ(t)µ(0)⟩ (4.5.16)

今、次のように電場を変動させると、

E(t) =

{0 t < 0

E0 t ≥ 0(4.5.17)

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4.5 久保公式 (7月 25日) 51

x(t)は、

x(t) = Ψ(t)E0 (4.5.18)

(4.5.19)

と書けるから、(4.5.16)式を使って、

x(t) = β⟨µ2

⟩E0 − β ⟨µ(t)µ(0)⟩ E0 (4.5.20)

となり、⟨µ(t)µ(0)⟩について解くと、

⟨µ(t)µ(0)⟩ =β⟨µ2

⟩E0 − x(t)

βE0=

⟨µ2

⟩{1− x(t)

βE0

}(4.5.21)

これで、電場を時間変化させたときの応答 x(t)から相関関数 ⟨µ(t)µ(0)⟩がわかる。緩和関数 Ψ(t)は、電場を急にかけたときに、双極子モーメントが緩和する時間変化を

表す。また、(4.5.21)式の導出には久保公式しか使っていないので、双極子モーメントの

運動運動方程式が分かっていなくても、例えばランジュバン方程式にしたがっていなくて

も成り立つ。P.47の仮定さえ成り立っていればよい。

宿題:

49 (10 点) 次のフーリエ変換を定義する。

xω =

∫ ∞

−∞x(t)eiωtdt, (4.5.22)

fω =

∫ ∞

−∞f(t)eiωtdt, (4.5.23)

αω =

∫ ∞

0

α(t)eiωtdt (4.5.24)

時間遅れの線形応答の式 (4.4.2)式をフーリエ変換して、

α(t) = e−γt (4.5.25)

を導きなさい。

50 (7 点) 久保公式について、授業の説明に沿って次の問いに答えよ。

(a)仮定 1について、成り立たない例を挙げよ。授業で説明したものでも良いが、

図を使って説明すること。

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52 4 線形応答理論

(b)(4.5.2)式で温度が含まれるのはどの仮定によるものか。

(c)仮定 3について例を挙げよ。授業で説明したものでも良いが、図を使って説明

すること。

51 (30 点) 第 1種揺動散逸定理について調べなさい。ここで「第 1種揺動散逸定理」

とは、揺動と散逸を関係付ける定理を表す。授業で説明した久保公式との違いを議

論しなさい。

52 (20 点) P.44の例題において、久保公式の左辺と右辺を具体的に計算して、等しく

なる事を示しなさい。ただし、左辺の α(t)は、(4.4.19)式ではなく、外場の定義を

仮定 3.にしたがって定義した α(t)とする。

53 (30 点) 液体に局所的な外場 f(t) = f0(t)δ(r− r0)をかける。応答として液体の密

度 ρ(r) ≡∑

i δ(r− ri)を取ったとき、線形応答と久保公式を書きなさい。ただし、

ri は、i番目の液体粒子の位置を表す。また、中間散乱関数と動的構造因子が何か

を調べ、久保公式との関係を議論しなさい。

54 (30 点) §3.2 で説明したスチルベンの異性化反応において、久保公式はどのように書けるか議論しなさい。

55 (30 点) 多変数の久保公式は、以下の仮定が成り立つ時に証明できる。すなわち、

(a)Xµ = Xµ(t), µ = 1, . . . , n は、不規則に時間変化する物理量。その分布は、

フォッカー・プランク (FP)方程式にしたがう。

(b)Xµ の分布は、外場をかける前は、外場 0の平衡状態。

(c)外場が時間変化しない時、平衡状態はカノニカル分布になる。

(d)fµ(t), µ = 1, . . . , nを外場とすると、E({xµ}) = E0({xµ})−∑N

µ xµfµ(t)

電荷を持った粒子が電場の中でブラウン運動する時、上の仮定は成り立たない。ど

の仮定が成り立たないか答えなさい。X1 を荷電粒子の位置、X2 を速度と考えよ。

56 (30 点) 久保公式の例を挙げなさい。外場や応答する変数を具体的に説明し、それ

に対応する久保公式を書き、説明しなさい。また、P.47 の仮定 3 を満たしている

かどうかを論じなさい。ただし、授業で説明したものと宿題で扱ったもの (42を含

む)を除く。参照した文献は名前を明らかにすること。

57 (30 点) 久保公式の仮定 (P.47)が成り立たない線形応答の例を調べなさい。どん

な現象で、応答と外場は何か、成り立たない仮定はどれで、α(t)がどのように表さ

れるか答えなさい。ただし、(4)で議論したものは除く。