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1.感性とその検討方法について
人間の感性とは?
• 定義–対象(人,モノなど)に対する価値判断
• 例–美しさ,おもしろさ,好み,興味,似合うなど
• 特徴–主観性,あいまい性,状況依存性
• 関連用語–印象,イメージ,センス,フィーリング,直感
感性研究の「対象」
• 多くの人が感性を感じる対象
–メディア(ケータイ,パソコンなど)• デザインの美しさ →「受動的感性」
• 体験のおもしろさ →「能動的感性」
–芸術・文学・音楽・映画
–被服・ヘアスタイル など
• 受動的感性の場合
–デザイン(主に形と色と動き)が重要
感性研究の盛んな背景
• 産業パラダイムの転換
–大量生産→個の時代
–個人にとって価値あるもの
消費社会 情報化社会
人の価値観 物質的豊かさ
大量生産・消費
精神的豊かさ
美,遊び,健康
情報通信 一方向型 双方向型
人々の欲求 消費・所有 創造・表現
感性の測定方法例-SD法
• 全体として感性評価が困難
–例:服飾デザインの感性評価(長町,1989)–異なる形容詞対に細かく分けて測定
–的外れ,相関の高い形容詞対は排除
暖かい
非常に かなり どちらでもない かなり 非常に
涼しい
明るい 暗い
曲線的 直線的
派手な 地味な
191項目,74種類の服飾
感性の分析方法例-因子分析
• 各項目を規定する因子を抽出–①感性評価する少数の基準が明瞭化
–②項目と因子の関連の強さが数値化
1. 派手な-地味な2. 暖かい-涼しい3. 明るい-暗い4. 曲線的-直線的
191. 今風な-古風な
①活動性
②気軽さ
③豪華さ
⑨ハイセンス
2.化粧・ファッションの感性
化粧・ファッションのカラー
• 化粧
–ファンデーションカラー,リップカラー,
–マスカラ,チークカラー,ヘアカラー
• 被服
–ジャケット,ブラウス,スカートのカラー
–スーツ,ネクタイ,帽子のカラー
• アクセサリー
–ピアス,ペンダント,指輪のカラー
3.ネイルカラーの感性研究
~平成16年度卒業論文~
化粧・ファッションのカラーの研究例
化粧とネイルアート
• 化粧のはたらき:「隠す」と「見せる」–印象操作による対人魅力の向上
–癒し・リラクセーション・健康への効果
• 近年ネイルメイクが普及–ネイルメイク専門雑誌,ネイルサロンなど
• 他の化粧と異なる点–ファッション感覚が強い
–比較的カラーの種類が多い
–→ネイルカラーの感性評価について研究
ネイルカラーの選択基準
• 高い基準:個人の心理や環境の要因
• 低い基準:肌の色,手の形などの身体的特徴
はい どちらでもない いいえ
服装 51.3% 39.1% 9.6%
気分 82.6% 13.0% 4.3%
好きな色 87.0% 11.3% 1.7%
季節 45.2% 27.8% 27.0%
肌の色 18.3% 33.9% 47.8%
手の形 13.0% 32.2% 54.8%
ネイルカラーの種類ベージュ ブラック ディープピンク
ピンク サーモンピンク ホワイト
ネイルカラーの感性の測定
• ピンクとブラックでSD法ー21形容詞対
女っぽい
あてはまる どちらともいえない あてはまる
男っぽい
活発な おとなしい
陽気な 陰気な
明るい 暗い
癒される 癒されない
個性的な ありふれた
派手な 地味な
ネイルカラーの感性の分析
• 因子分析→3つの因子が抽出
–「優雅さ」:大人っぽく見せる
–「目立ち」:自分を引き立たせる
–「愛らしさ」:かわいらしく見せる
• 6つのネイルカラーの好みの順位は?
–カラー選択は個人の心理的要因が大きい
– AHP(Analytic Hierarchy Process)で測定
–=階層構造に基づく分析
AHPの設定例1
意思決定
評価基準
代替案
新車の選定
値段
A車
燃費 車格 乗り心地
B車 C車
AHPの設定例2
携帯電話の選定
ドコモ Vodafone au TUKA
価格 デザイン 周囲の人機能
ネイルカラー感性のAHPモデル
意思決定
評価基準
代替案
ネイルカラーの選定
優雅さ 目立ち 愛らしさ
AHPの測定と分析の方法
• 測定
–①評価基準の順位づけ
• 優雅さ,目立ち,愛らしさのすべての対で評定
–②各基準で6色の順位づけ
• 優雅さにおいて,6色のすべての対で評定
• 目立ちにおいて,・・・
• 分析
–③総合評価
• ①,②のデータをもとに6色の順位づけ
AHPの分析結果
• 3つの評価基準の順位
• 6つのカラーの順位優雅さ 愛らしさ 目立ち
1 2 3
優雅さ 目立ち 愛らしさ 総合評価
サーモンピンク 2 3 2 1
ベージュ 1 6 3 2
ピンク 4 4 1 3
ディープピンク 5 2 4 4
ホワイト 3 5 5 5
ブラック 6 1 6 6
ネイルカラー研究のまとめ
• ネイルの主な効果-大人っぽく見せる
• サーモンピンクは3つの基準で高い効果
• 上位3位=サーモンピンク,ベージュ,ピンク
– 意識せず,肌の色に合うカラーを重視
• 好きな色=似合う被服の色(辻,1995)– ネイルカラーでも同じことがいえるか?
4.AHPによる飲食店Webサイトのデザイン評価
どの店に行きたいか
画像の美しさ
画像の食欲促進度
配色の好感度
配色の適切さ
文章の量の適切さ
文章の親しみやすさ
矗矗家 賛飲家 らいさん
配色 文章画像
AHPの階層図
第一階層の評価の割合
43%
41%
17%
配色
画像
文章
評価基準のウェイト
終目的「どの店に行きたいか」の割合
37%
22%
41% 矗矗家
賛飲家
らいさん
総合評価のウェイト
飲食店A,B,Cのうちどの店に行きたいか?
5.まとめ• 生活ー対象に対して心と行動が機能
–適切な生活:「知」が必要
–快適感の高い生活:「感」が必要
• 両アプローチの必要性
–①感性の心理学:感性が喚起する原理,行動への動機づけの原理
–②感性工学:感性に訴える製品をデザイン
• 個人差をいかに考えるか?