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⼀般社団法⼈⽇本鋼構造協会鋼構造物塗装⼩委員会
2018年7⽉25⽇ 鋼構造物の防錆・防⾷と環境保全に関する技術講演会
日本鋼構造協会
はじめに
2
鋼構造物の防⾷は、ほとんどが塗装で⾏われている。 適切な塗替え塗装計画の策定、塗替え塗装の施⼯、維持管理データの蓄積を実践
することが鋼構造物の維持管理では最も基本となる。
1993年「鋼橋塗膜調査マニュアルJSS Ⅳ03-1993」主に鋼橋塗膜を対象として、実⽤性が⾼く客観性を有する劣化程度の評価・判定
の⽅法や基準について⽰した。 2006年「鋼構造物塗膜調査マニュアルJSS Ⅳ 03-2006」
鋼橋以外の鋼構造物である鉄塔やプラント設備などの塗膜調査にも対応できるよう内容が⾒直された。 2017年「鋼構造物塗膜調査マニュアルJSS Ⅳ 03-2017」
関連する国内外の最新の規格基準類と整合を図り、最新の技術動向を取り⼊れた。
塗膜の劣化状態を的確に把握して健全度を評価するため、「塗膜調査」が必要。塗膜調査には、外観調査、計器測定、機器分析や環境測定などが含まれるが、塗膜の劣化程度の評価・判定には個⼈差があることからばらつきが出る場合もある。
鋼構造物塗装⼩委員会
3
委員長 守 屋 進幹事長 斉 藤 誠幹 事 坂 本 達 朗〃 ◎冨 山 禎 仁
委 員 井 合 雄 一〃 ○石 田 雅 己〃 ○市 場 幹 之〃 今 井 篤 実〃 ○江 成 孝 文〃 ○大 庭 哲 也〃 ○岸 慶 一 郎〃 笹 原 大 輔〃 ○高 柳 敬 志〃 竹 添 浩 司
委 員 ○田 代 稔〃 中 野 正〃 ○中 村 宏 之〃 ○中 元 雄 治〃 山内 健一郎
旧委員 宇留嶋 秀人〃 ○大 澤 隆 英〃 笠 原 潔〃 福 岡 麻 里〃 ○二 股 誠〃 ○村 瀬 正 次
○印は鋼構造物塗膜調査マニュアル改定WG委員(◎印はWG主査)
(改定版刊行時)
「鋼構造物塗膜調査マニュアル」⽬次
4
はじめに鋼構造物塗装⼩委員会名簿第1章 総則第2章 塗膜調査の種類と⼿順第3章 塗膜調査の計画・準備第4章 現地で実施する塗膜調査第5章 機器分析第6章 環境測定第7章 有害物質調査第8章 調査結果の記録あとがき付属資料
総論
各論
第1章 総則
5
1.1 適⽤範囲1.2 塗膜調査の⽬的と考え⽅
日本鋼構造協会
1.1 適⽤範囲
6
塗膜調査は,塗膜の劣化状態を的確に把握して健全度評価を⾏い,適切な塗替え計画の策定や維持管理に必要なデータを取得するために実施する.また,調査結果は,塗膜の劣化予測技術・劣化モデルの精度向上を図り,塗膜寿命を予測することに活⽤される.調査には,外観調査,計器測定,機器分析や環境測定などが含まれるが,塗膜の劣化程度の評価・判定には個⼈差があることからばらつきが出る場合もある.本マニュアルは,実⽤上妥当な評価・判定を⾏うために,実⽤性が⾼く客観性を有する塗膜劣化程度の評価・判定の⽅法や基準について⽰している.
本マニュアルは,鋼構造物の塗膜調査に適⽤する.
p. 1
1.2 塗膜調査の⽬的と考え⽅
7
塗膜調査は,塗膜の防⾷機能や景観・美観機能を合理的かつ経済的に維持していくことを⽬的として⾏うものであり,塗膜の劣化状態やその要因を的確に把握するとともに,これらの結果を適切な⽅法で記録として残し,補修や塗替えなど具体的な対策に反映させることが重要である.塗膜調査の⼿法として外観調査,計器測定,機器分析などを組み合わせて精度の⾼い結果を得るとともに,構造部位及び構造物全体の腐⾷条件を把握するために環境測定を⾏う.これら調査で得られたデータから塗膜の防⾷機能や景観・美観機能の現状を把握し,劣化状態をマクロ的な視点とミクロ的な視点で判断する.
塗膜調査は,塗膜の維持管理のために⾏う場合と,塗膜の耐久性評価や異常劣化原因究明のために⾏う場合とがある.その⽬的に応じて,(1)⼯場製作完了時調査,(2)初期調査,(3)定期調査,(4)異常時調査,(5)定点調査,(6)塗替え前調査,(7)有害物質調査などに分類される.
塗膜調査は,塗膜の防⾷機能や景観・美観機能を合理的かつ経済的に維持していくために,塗膜の現状性能や劣化原因を把握することを⽬的として⾏う.
p. 2
第2章 塗膜調査の種類と⼿順
8
2.1 塗膜調査の種類2.2 塗膜調査の⼿順
日本鋼構造協会
2.1 塗膜調査の種類
9
塗膜調査の種類 塗膜調査の⽬的 調査の時期
(1)⼯場製作完了時調査 塗装完了部材に⽣じた塗膜損傷や,保管中に付着した汚れや汚染物などに対する処置検討のための調査を⾏う.⼯場製作完了時
(出荷前)
維持管理のための調査
(2)初期調査 現場組み⽴て,架設時の塗膜損傷や施⼯不良・品質不良に起因する初期⽋陥の有無,及び維持管理のための初期値を測定する.供⽤・稼動後
2年以内
(3)定期調査 防⾷機能,景観機能の劣化の進⾏状態から塗膜の環境適合性の判断と塗替え塗装計画のためのデータ収集を⾏う.初期調査後
5年毎※
(4)異常時調査 塗膜の早期劣化の原因究明のための調査,及び⾃然災害などによる塗膜劣化,損傷程度の調査を⾏う. 異常発⽣時
(5)定点調査 塗膜の劣化メカニズムの解明や耐久性評価に関するデータ収集のために同⼀箇所で詳細調査を⾏う. 必要に応じて
塗替え塗装のための
調査
(6)塗替え前調査 塗膜の劣化程度や表⾯の付着物調査などから,塗替え塗装時の適⽤素地調整種別と塗替え塗装系の適性を評価する. 塗替え塗装前
(7)有害物質調査 塗膜に含まれる有害物質の種類や含有量を把握するため,対象となる構造物の代表的な箇所から塗膜を採取し,化学分析等の調査を⾏う.塗替え塗装前
及び必要に応じて
表解-2.1.1 塗膜調査の⽬的と調査時期
※定期点検等で塗膜に不具合が⾒つかり経過観察が必要な場合などは、5年より短い間隔で点検する。
p. 4
2.2 塗膜調査の⼿順
10図解-2.2.1 塗膜調査フロー
p. 7
第3章 塗膜調査の計画・準備
11
3.1 事前調査3.2 調査対象物の概略図作成3.3 調査位置及び部位の設定3.4 重防⾷塗装系塗膜の重点調査部位3.5 調査項⽬の選定
日本鋼構造協会
3.1 事前調査
12
事前調査では,塗膜調査に先だって,調査計画の作成や塗膜調査の準備のために次の項⽬を確認する.(1)調査⽬的、(2)緊急度、(3)設置状況及び稼働状況(4)塗装履歴、(5)既往の塗膜定期調査結果、(6)調査の難易度
塗膜調査の種類 情報収集(例)
(1)⼯場製作完了時調査
・構造物(部材)の形状,製作⼯場の⽴地環境・適⽤塗装系,塗装時期・保管場所と保管期間,出荷予定時期・運搬経路と⽅法,仮置き場所,設置⽅法
維持管理のための調査
(2)初期調査・構造物の形状,設置環境・適⽤塗装系,塗装時期・接近⼿段に関する情報
(3)定期調査・構造物の形状,設置環境・適⽤塗装系,塗装時期・初期調査結果とこれまでの塗膜調査記録
(4)異常時調査
・構造物の形状,設置環境・適⽤塗装系,塗装時期,塗料製造業者,塗装業者・初期調査結果とこれまでの塗膜調査記録
(5)定点調査・構造物の形状,設置環境・適⽤塗装系,塗装時期・初期値及び過去の調査データ
表解-3.1.1 塗膜調査の種類と情報収集例(1)
p. 8
3.1 事前調査
13
塗膜調査の種類 情報収集(例)
塗替え塗装のための調査
(6)塗替え前調査
・定期調査結果・塗装履歴・予定されている塗替え塗装系・構造物形状・接近⼿段
(7)有害物質調査・対象構造物形状・塗膜採取可能箇所・塗料の種類と有害物の種類・含有量
表解-3.1.1 塗膜調査の種類と情報収集例(2)
p. 8
3.2 調査対象物の概略図作成
14
p. 11
調査対象物の概略図を作成し,形状や部材構成に対する調査符号を付記する.調査記録には,これらを⽤いて調査位置や部位に対する符号を記す.
(○○方向) (△△方向)終点側
注1:起点側橋台をA1、終点側橋台をA2とする。
起点側
P4 A2P1 P2 P3A1
△ △ △ △ △ △
注3:桁下状況を示す。
注2:起点側、終点側の方向を地名で示す。
注1:桁番号は、起点側を背にして左側からG1~G5とする注2:G1桁、G5桁の方向を示す。
□□方向(東西南北を示す)
☆☆方向(東西南北を示す)
G5
↑
↓
G4
G1
G2
G3
図解-3.2.1 鋼橋の調査位置符号例
3.3 調査位置及び部位の設定
15
表解-3.3.1 調査部位選定例
調査項⽬調査の種類 外観調査 計器測定 機器分析 環境測定
1.⼯場製作完了時調査 部材全体 任意選定注) ― ―
2.初期調査 構造物全体 任意選定 ― ―3.定期調査 構造物全体 任意選定 ― ―
4.異常時調査 異常発⽣部⽐較対照部異常発⽣部⽐較対照部
異常発⽣部⽐較対照部
異常発⽣部⽐較対照部
5.定点調査 構 造 物 全 体注) 定点測定部 定点測定部 定点測定部
6.塗替え前調査 構造物全体 任意選定 ― ―7.有害物質調査 ― ― 試料採取部 ―
注:必要と認められる場合に行う
p. 12
3.3 調査位置及び部位の設定
16図解-3.3.1 鋼橋の調査測定点選定例
p. 14
3.4 重防⾷塗装系塗膜の重点調査部位
17
重点的な調査部位 塗膜劣化の原因 事例写真番号
部材の端部 ・塗膜が付きにくく,塗膜厚不⾜が起こりやすい. 写真解-3.4.1
下フランジ下⾯・塗膜厚不⾜が起こりやすい.・製作,運搬,架設時,供⽤後に当て傷を受けやすい.・結露・漏⽔・滞⽔,塩分の付着・濃縮の影響を受けやすい.
写真解-3.4.2
現場継⼿部(ボルト)
・鋼材のエッジ部やボルトのねじ部などは,素地調整が不⼗分になりやすい.
・同様な理由で塗料がつきにくく,塗膜厚が不均⼀になりやすい.・塗り残しが⽣じやすい.
写真解-3.4.3
溶接部,溶断部・溶接ビードや溶断⾯の凹凸部などは,素地調整が不⼗分になり
やすい.・同様な理由で塗膜厚が不均⼀になりやすい.・アルカリ性スラグやスパッターの付着により塗膜の付着が悪い.
写真解-3.4.4
⽀承,伸縮装置周辺部
・漏⽔や⼟埃がたまりやすい.・排⽔の終点となり,湿気がこもりやすい.・凍結防⽌剤や⾶来塩分などの腐⾷促進因⼦が,⾬⽔で洗い流さ
れず濃縮されやすい.写真解-3.4.5
鋼床版裏⾯
・作業姿勢が上向き塗装となり,塗膜厚が不⾜しやすい.・⽇射により⾼温になりやすく,⼤きな温度変化の繰返しが多い.・結露により,⾼湿度になりやすい.・凍結防⽌剤や⾶来塩分などの腐⾷促進因⼦が⾬⽔などにより洗
い流されず,濃縮されやすい.
写真解-3.4.6写真解-3.4.7写真解-3.4.8写真解-3.4.9
表解-3.4.1 重防⾷塗装系塗膜の重点調査部位
p. 17
18
部材端部からの腐食 製作時受台部跡からの腐食 ボルト継手部の腐食
鋼床版裏面の膨れ(赤点線内)
鋼床版裏面の剥離 狭隘部溶接線からの腐食
鋼床版裏面現場溶接部の腐食 支承部の腐食
Uリブ下面の腐食
p. 18~19
3.5 調査項⽬の選定
19
調査の種類
項⽬初期調査 定期調査 異常時調査
塗替え前調査
有害物質調査 定点調査
外観調査
錆 ◎ ◎ ○注2 ◎ ○剥がれ ◎ ○ ○注2 ◎ ○割れ ○ ○ ○注2 ○ ○膨れ ○ ○ ○注2 ○傷 ◎ ○ ○注2 ○ ○⽩亜化 ○ ○注2 ○ ○変退⾊ ◎ ○注2 ○ ○上塗塗膜の消耗 ○注2 ○ ○汚れ ◎ ○ ○注2 ○ ○
計器測定
光沢度測定 ○注1 ○ ○注2 ○⾊差測定 ○注1 ○ ○注2 ○付着性 ○注2 ◎ ○膜厚測定 ◎ ○注2 ◎ ○ピンホール検査 ○ ○注2 ○劣化⾯積の算出 ○ ○注2 ○付着塩分量測定 ○ ○注2 ◎ ○
表解-3.5.1 調査の種類と項⽬の組み合わせ例
◎:⼀般的な調査項⽬ ○:必要に応じて選定される調査項⽬注1:初期値測定注2:異常内容に該当する場合に選定
p. 21
3.5 調査項⽬の選定
20
調査の種類
項⽬初期調査 定期調査 異常時調査
塗替え前調査
有害物質調査 定点調査
機器分析
腐⾷原因物質の特定及び定量 ○注2 ○ ○塗膜劣化と鋼材腐⾷の状態確認 ○注2 ○表⾯観察 ○注2 ○
環境測定
塩分 ○ ○注2 ○ ○⼤気汚染因⼦ ○ ○注2 ○気象因⼦ ○ ○注2 ○構造因⼦ ○ ○注2 ○ ○
有害物質調査 ◎調査結果の記録 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
◎:⼀般的な調査項⽬ ○:必要に応じて選定される調査項⽬注1:初期値測定注2:異常内容に該当する場合に選定
表解-3.5.1 調査の種類と項⽬の組み合わせ例(つづき)
p. 21
第4章 現地で実施する塗膜調査
21
4.1 外観調査4.2 計器測定
日本鋼構造協会
4.1 外観調査
22
4.1.1 錆4.1.2 剥がれ4.1.3 割れ4.1.4 膨れ4.1.5 傷4.1.6 ⽩亜化(チョーキング)4.1.7 変退⾊4.1.8 上塗塗膜の消耗(中塗塗膜の露出)4.1.9 汚れ
4.1 外観調査
23
⽇本規格協会(JIS)
国際標準化機構(ISO)
⽶国材料試験協会(ASTM)
膨 れ JIS K 5600-8-2:2008 ISO 4628-2:2003ASTM D714-
02:2009
錆 JIS K 5600-8-3:2008 ISO 4628-3:2003ASTM D610-
08:2012
割 れ JIS K 5600-8-4:1999 ISO 4628-4:2003ASTM D660-
93:2005
剥がれ JIS K 5600-8-5:1999 ISO 4628-5:2003ASTM D772-
86:2005
⽩亜化(テープ法) JIS K 5600-8-6:2014 ISO 4628-6:2011 ASTM D4214-07:2007
⽩亜化(ビロード法) - ISO 4628-7:2003
表解-4.1.1 各国規格における外観調査の評価⽅法
防⾷性に視点を置いた評価として,錆,剥がれ,割れ,膨れ,傷の項⽬を調査し,景観及び美観に視点を置いた評価では,⽩亜化,変退⾊,上塗塗膜の消耗,汚れについて調査する.
p. 26
4.1.1 錆
24
錆は、発⽣⾯積により4段階で評価する.
評価点(RN)
発生状態 JIS K 5600-8-3:2008錆の等級
(錆の面積%)発生面積(%) 外観状態
0 X<0.05
錆が認められず,塗膜は健全な状態. Ri1以下
(0.05%以下)
1 0.05≦X<0.5
錆がわずかに認められるが,塗膜は機能を維持している状態. Ri2
(0.5%)
2 0.5≦X<8.0
錆が顕在化し,塗膜は一部防食機能が損なわれている状態.
Ri3,Ri4(1.0%,8.0%)
3 8.0≦X
錆が進行し,塗膜は防食機能が失われている状態.
Ri4以上(8.0%以上)
図解-4.1.1 錆発生限度標準図
表解-4.1.2 錆評価点
0.05%
0.5%
8.0%
p. 28
4.1.1 錆
25
錆発錆面積
(%) 本マニュアル
JIS K 5600
-8-3:2008 1)塗膜の評価
基準 2003 2)
ASTM D610-08
:20123)
ISO 4628-3
:2003 4)
0 0 Ri0 RNO 10 Ri0
0.02
0.03 9
0.05 1 Ri1 RN1 Ri1
0.1 8
0.2
0.3 RN2 7
0.5 2 Ri2 Ri2
0.6
1 Ri3 RN3 6 Ri3
2
3 5
5 RN4
8 3 Ri4 Ri4
10 4
15
16 3
20
33 2
40 Ri5(40/50) RN5 Ri5
50 1
75~85
95
100
表解-4.1.3 錆発⽣度基準の⽐較
p. 30
4.1.2 剥がれ
26
剥がれは、発⽣⾯積により4段階で評価する.
評価点(RN)
JIS K 5600-8-5:1999剥がれの量の等級
剥がれの⾯積(%)
0123
012
3以上
00.10.3
1以上
塗膜の剥がれは錆の発⽣と同様,塗膜にとって重⼤な⽋陥であり,外観上の問題にとどまらず,塗膜の防⾷性の低下に直結する.
調査に当たっては,剥がれが発⽣した層,剥がれの⼤きさ,密度(剥離⾯積)などをできるだけ詳細に観察することが重要である.
1点(等級1)2点(等級2)3点(等級3)( )内はJIS K 5600-8-5:1999剥がれの等級を⽰す.(⾯積は1〜2 dm2とする)
図解-4.1.2 剥がれ標準図
表解-4.1.4 剥がれ評価点
4.1.6 ⽩亜化(チョーキング)
27
⽩亜化(チョーキング)は、JISの⽩亜化標準画像と⽐較して4段階で評価する.
評価点(RN)
JIS K 5600-8-6:2014
評価点状態
0 1 ほとんど変化なし
1 2 僅かに⽩っぽい
2 3 かなり⽩っぽい
3 4以上 ほとんど真っ⽩である
表解-4.1.7 ⽩亜化の評価点
図解-4.1.4 数値化した⽩亜化の等級1〜5の標準画像
接近して調査ができる場合は,⽬視評価の際に予め塗膜表⾯を指先などでこすり,⽩亜化であることを確認してから初期の⾊に該当する標準⾊⾒本帳(⽇本塗料⼯業会編)などと⽐較して評価する必要がある.
詳細な調査を⾏う場合には,JIS K 5600-8-6:2014(ISO 4628-6:2011)“⽩亜化の等級”の粘着テープを⽤いた評価を参照する.
4.2 計器測定
28
4.2.1 光沢度測定(鏡⾯光沢度)4.2.2 ⾊差測定(測⾊:⾊差の計算)4.2.3 付着性4.2.4 膜厚測定4.2.5 ピンホール検査4.2.6 劣化⾯積の算出4.2.7 付着塩分量測定
4.2 計器測定
29
測定項⽬ ⽬的 留意点(1)光沢度測定
(鏡⾯光沢度)上塗塗膜の耐候性の劣化程度を把握する. 平滑な⾯で測定する.
(2)⾊差測定(測⾊(⾊差の計算))
上塗塗膜の景観機能の劣化程度を把握する. 平滑な⾯で測定する.
(3)付着性 塗膜の付着性の低下程度を把握する. 破壊検査のため,測定後は補修塗装が必要である.
(4)膜厚測定 膜厚を把握する.電磁式膜厚計,カット・スコープ式膜厚計などがある.カット・スコープ式は破壊検査のため,補修塗装が必要である.
(5)ピンホール検査 ピンホールの有無を把握する. 過⼤電流が塗膜を破壊する可能性がある.
(6)劣化⾯積の算出 構造物全体の塗膜の劣化程度を把握する.(7)付着塩分量測定 塗膜表⾯の付着塩分量を把握する.
表解-4.2.1 計器測定項⽬
塗膜の各種性能の初期値に対する変化(劣化状態)を定量的に評価し,その結果から塗膜状態を把握する
⽬視評価で判断できない膜厚減少や付着性低下について把握する
p. 44
4.2.1 光沢度測定(鏡⾯光沢度)
30
データの精度向上のため,構造物の部材群など各部位で⾏うことが望ましい.
光沢保持率(初期の鏡⾯光沢度データとの⽐率)で評価する場合には,初期に測定した箇所と同⼀の箇所で測定するのが望ましい.
測定は⽔洗前と粉化物やこびりついた汚れを⽔洗除去した後に実施する.
測定は塗⾯のはけ⽬に沿った⽅向とはけ⽬に対して90度回転した⽅向で計り,同⼀点2回の平均値でもって表す.ただし,数値のばらつきが⼤きい場合は繰返し測定することが望ましい.
p. 45
上塗塗膜の初期の光沢度に対する経時的な変化から上塗塗膜の耐候性の劣化程度を評価する.
写真解-4.2.1 光沢度測定箇所の例(周辺部が⽔洗前,中央部が⽔洗後)
写真解-4.2.2 光沢度測定状況
4.2.3 付着性
31
(1)碁盤⽬カットテープ付着試験法切り込みをいれた塗膜を粘着テープにて強制的に剥離させることにより,素地
及び塗膜層間の付着性を評価する.
JIS K 5600-5-6:1999(ISO 2409:2013)における試験⽅法では,膜厚が250μmまでしか評価を想定していない.厚膜の塗装系や無機ジンクリッチペイントを含む塗装系での評価を考慮すると,膜厚の限度がないJIS K 5400 8.5:1990に基づいた試験及び評価が適している.
評価点(RN) 0 1 2 3
剥離⾯積50%以上
表解-4.2.3 碁盤⽬試験評価点
p. 55
写真解-4.2.5碁盤⽬カットテープ付着性試験作業状況
4.2.3 付着性
32
(2)アドヒージョンテストアドヒージョンテスターを使⽤して,素地及び塗膜層間の付着性を評価する.
アドヒージョンテストは,塗膜の付着⼒を測定するために,垂直引張⼒による付着性を評価する.塗膜の付着⼒を具体的な数字(例えば,MPa)で⽰すことができるので,詳細調査のとき実施されることが多い.
評価点(RN) 引張付着力(MPa)
0 2.0≦X
1 1.0≦X<2.0
2 0<X<1.0
3 X=0
表解-4.2.4 引張付着力の評価点の例写真解-4.2.6 アドヒージョンテスター(手動式)を用いた付着性試験作業状況
写真解-4.2.7 破断面の写真
p. 58
4.2.3 付着性
33
(3)布ガムテープによる付着試験法布ガムテープを使⽤して素地及び塗膜層間の付着性を評価する.
塗膜に布ガムテープを貼り付けて強制剥離することにより,塗膜の層間付着性を評価する.重防⾷塗装系の健全性の評価に⽤いられることがある.
写真解-4.2.8 布ガムテープ⽤いた付着性試験作業状況
p. 61
4.2.7 付着塩分量測定
34
付着塩分量の測定は,塗膜表⾯に付着している塩分量を定量測定し,塗膜の劣化原因の評価や,塗替え時の⽔洗処理の要否などの決定の指標となる.
ガーゼ拭き取り塩化物イオン検知管法は,塗膜を拭き取った液が懸濁しており発⾊反応の⾊を⾒極めるのに個⼈差が⼤きく,数値の信頼性が⾮常に低いとともに,検知管にクロムが使⽤されており,使⽤後の廃棄などの観点から推奨されない.
写真解-4.2.10 電導度法の測定状況
第5章 機器分析
35
5.1 機器分析の概要5.2 腐⾷原因物質の特定及び定量5.3 塗膜劣化と鋼材腐⾷の状態確認5.4 表⾯観察
日本鋼構造協会
5.1 機器分析の概要
36
⽬的 分析⽅法
鋼材腐⾷原因物質の特定及び定量 イオンクロマトグラフィー(IC),吸光光度法
鋼材腐⾷物質の存在状態確認 EPMA, SEM-EDX
塗膜の劣化程度確認 EPMA, SEM-EDX, FT-IR, ラマン分光法
錆の種類特定 X線回折, ラマン分光法
形態観察 SEM, 三次元表⾯粗さ計
略語/IC: Ion Chromatography, EPMA: Electron Probe Micro Analyzer, SEM: Scanning Electron Microscope, EDX: Energy dispersive X-ray spectroscopy, FT-IR: Fourier Transform Infrared Spectrometry
表解-5.1.1 機器分析の⽬的と分析⽅法
機器分析は,鋼材腐⾷原因の特定や塗膜の耐久性の判断などを⾏うために分析機器を⽤いて塗膜や鋼材に対して⾏う.
p. 80
5.2 腐⾷原因物質の特定及び定量
37
分析⽅法 ⽬的・活⽤⽅法
イオンクロマトグラフィー 塗膜表⾯のNaイオン,Kイオン,塩化物イオンなどの定量をし,鋼橋の部位ごとのなどの付着量を把握する.
吸光光度法 塗膜表⾯やさび中の塩化物イオンなどの定量をする.さび中の塩化物イオンはさびとともに溶解して測定する.
表解-5.2.1 腐食原因物質の特定及び定量の方法と目的・活用方法
腐⾷原因物質の特定及び定量は腐⾷原因の特定や環境情報を得るために⾏う.
p. 81
5.3 塗膜劣化と鋼材腐⾷の状態確認
38
塗膜劣化と鋼材腐⾷の状態確認は,塗膜の劣化程度,腐⾷原因物質の存在状態,⽣成した錆の種類などの情報を得て,塗膜の耐久性や鋼材の腐⾷度合いを評価するために⾏う.
分析方法 目的・活用方法
(1) EPMA, SEM-EDX
①塗膜の分析:塗膜中の元素の種類と分布状態から,表面付着物や塗膜内部に侵入した不純物などの情報が得られる.②塗膜表面及び断面観察:塗膜表面及び断面を拡大観察することで,塗膜の劣化に関する情報を得ることができる.
(2)X線回折金属の結晶などの区別が可能なため,錆の種類の特定など金属酸化物の種類を特定できる.
(3)FT-IR 塗膜中の樹脂の特定と,その劣化度を知ることができる.
(4)ラマン分光法塗膜中の樹脂,顔料の特定,特にFT-IRでは検出できないチタン等の特定ができる.また,錆の種類を特定できる.
表解-5.3.1 塗膜劣化と鋼材腐食の状態確認方法
p. 83
5.4 表⾯観察
39
表⾯観察は,塗膜劣化による表⾯性状及び腐⾷による表⾯状態などの情報を得るために⾏う.
(1)SEMによる塗膜表⾯観察
(促進試験前)
ふっ素樹脂塗膜 ポリウレタン樹脂塗膜 フタル酸樹脂塗膜
(2000時間後)
塗膜表⾯の微⼩領域の形状を正確に⽴体的に把握し,その変化で塗膜の劣化,異物の塗膜内分布,塗膜厚みの変化,表⾯形状劣化などの情報を得る.
p. 89
5.4 表⾯観察
40
(2)表⾯粗さによる鋼材腐⾷⾯の性状観察表⾯粗さ計には触針式と⾮接触型の形状検出装置(CCDレーザーなど)が
ある.塗膜の表⾯形状の平滑度,形状異常,ピンホール,はじき,割れの深さや錆の深度,幅,変化の情報が得られる.
塗装系:A-2 カット部沖縄暴露 4年
断面観察箇所
(μm)
塗装系:A-2 カット部沖縄暴露 4年
断面観察箇所
(μm)
(μm)
板厚減少2.4mm
*:板厚減少は鋼材面からの深さ鋼材面(-170μm)
塗装系:C-2 カット部沖縄暴露 4年
(μm)
断面観察箇所
(μm)鋼材面(-250μm)
一般塗装系(下塗り:さび止めペイント) 重防食塗装系(防食下地:ジンクリッチペイント)
図解-5.4.2 防食下地,下塗りの種類による鉄の錆の進行の相違(沖縄暴露4年)
p. 91
付属資料3 主に研究⽬的で⾏われる機器分析付属資料4 携帯型分析機器
41
分析⽅法 ⽬的・活⽤⽅法
(1)GPC 塗膜中の樹脂の分⼦量を同定することで,樹脂が分解して劣化した度合いに関する情報が得られる.(2)XPS 塗膜最表層部の極薄い数Åから数μmまでの元素組成に関する情報が得られる.(3)GC/MS 塗膜中に含まれる溶剤,硬化剤に関する情報が得られる.(4)原⼦間⼒顕微鏡
(AFM)原⼦間のトンネル効果による情報を表⾯の三次元化情報として整理する.SEMのように真空でなく,通常の⼤気下で測定が可能である.
(5)ESR(電⼦スピン共鳴)
活性酸素や光触媒作⽤などによって発⽣したラジカル種の同定,定量などに関する情報が得られる.
付表-3.1 主に研究⽬的で⾏われる機器分析の⽬的と分析⽅法
略語/ GPC: Gel Permeation Chromatography, XPS: X-ray Photoelectron Spectroscopy, GC/MS: Gas Chromatography-Mass Spectrometry, AFM: Atomic Force Microscope, ESR: Electron Spin Resonance
分析機器の種類 ⽬的・活⽤⽅法
携帯型蛍光X線分析計 塗膜中の顔料や添加剤の同定が可能であり,塗膜中の有害物質の検出に有効.携帯型FT-IR分光計 現場で塗膜中の樹脂の特定とその劣化度を知ることが可能.携帯型デジタルマイクロスコープ 詳細な表⾯観察が可能.
付表-4.1 携帯型分析機器例
主に研究⽬的で⾏われる機器分析や近年開発されている携帯型分析機器については付属資料にまとめた。
p. 付3-1
p. 付4-1
第6章 環境測定
42
6.1 環境測定の概要6.2 測定⽅法6.3 データの活⽤6.4 塗装施⼯時の環境測定
日本鋼構造協会
6.1 環境測定の概要
43
分類 測定項⽬ 測定⽅法(例) 内容
塩分 塩分量(⾶来塩分量)ドライガーゼ法ウェットキャンドル法⼟研法
海塩粒⼦付着度
⼤気汚染因⼦
硫⻩酸化物量⼆酸化鉛プレート法⼆酸化鉛円筒法アルカリろ紙法
硫⻩酸化物付着度
硫化⽔素濃度 吸光光度法など 平均濃度⼆酸化硫⻩濃度 溶液伝導率法 平均濃度⼆酸化窒素濃度 吸光光度法 平均濃度
気象因⼦
気温 温度計 最⾼気温,最低気温,平均気温湿度 湿度計 相対湿度(最⾼,最低,平均)など⽇照時間 ⽇照計 ⽇照時間⽇射量 ⽇照計 ⽇射量(瞬時,積算値)紫外線量 紫外線計 紫外線量(瞬時,積算値)降⽔量 ⾬量計 合計降⽔量降⽔時間 ⾬量計,積雪計 合計降⽔時間結露時間 温度計,結露計など 合計結露時間ぬれ時間 結露計など 合計ぬれ時間⾵向 ⾵向計 最多⾵向⾵速 ⾵速計 平均⾵速
表解-6.1.1 環境測定の測定項⽬
環境測定は,鋼構造物の設置場所の腐⾷環境や気象環境及び劣化塗膜周辺の腐⾷環境を把握するために⾏う.
p. 93
第7章 有害物質調査
44
7.1 塗料に含まれていた有害物質7.2 有害物質調査のための塗膜採取⽅法
7.2.1 塗膜採取計画の⽴案7.2.2 分析⽤塗膜の採取
7.3 有害物質の分析7.3.1 重⾦属類の分析7.3.2 ポリ塩化ビフェニル(PCB)の分析
日本鋼構造協会
7.1 塗料に含まれていた有害物質
45
(1)鉛化合物及びクロム化合物これらの防錆顔料を使⽤した代表的な下塗り塗料として鉛丹さび⽌めペイント(JIS K
5622),亜酸化鉛さび⽌めペイント(JIS K 5623)など7種類があった.鉛化合物の⼈体に対する有害性は,貧⾎症,肝臓病,脳及び神経障害などとして古くから知られている.クロム化合物では六価クロム化合物の毒性が⾼く,経⼝,経気道,経⽪接触部位で炎症や潰瘍,⿐中隔穿孔を起こす.⼈への発癌性がある物質ともされている.
(2)PCBPCBは⼀部の塩化ゴム系塗料の可塑剤として使⽤された.現在ではPCBを含む塩化ゴム系塗料
は製造されていないが1972年以前に塩化ゴム系塗料を⽤いて塗装された鋼構造物では塗替え塗装時に,PCB含有の有無並びに含有濃度を確認する必要がある.また,近年⼀部の着⾊顔料を製造する際に⾮意図的に副⽣成物として⽣成されるPCBもあり,50 ppm程度が検出される場合がある.PCB含有が不明な場合,専⾨の機関において分析する必要がある.PCBの含有が確認された場合は,PCBを含む塗膜を除去する際の⾶散を防⽌する対策として湿式⼯法(例えば剥離剤を使⽤するなど)を適⽤し,除去した塗膜くずは「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(2001年)を初めとする関係法令に基づいて適切に処理する必要がある.
(3)タール原料にコールタールを⽤いたタ-ルエポキシ樹脂塗料は船舶分野や海洋構造物などに幅広く使
⽤されてきた.コールタール及びコールタールピッチはベンゾピレンを1〜3%含有し発癌性を有している.発癌性ではIARCのグループ1に分類されている.労働安全衛⽣法の発癌性の認められる特別管理物質に指定されている.
p. 105
7.2 有害物質調査のための塗膜採取⽅法
46
新設時の年度や橋梁製作会社及び橋梁補修履歴等などから,新設塗装系や塗替え塗装系を確認し,塗膜分析に必要な箇所や箇所数を判定する.新設塗装系,塗替え塗装系は,既存の資料を参考に,局部的な写真判定や簡易的な試験によって⾏う.塗膜採取は,塗装系の種類が異なる部位ごとに実施する.例えば仕様が異なるスパンであれば,スパン毎での採取が必要となる.分析⽤の塗膜は,効率的かつ安全に,短時間で必要な量を採取する.分析機器の測定限界値を考慮し,必要な採取量を決定する.例えば重⾦属分析溶出試験では,乾燥塗膜で50 g以上あることが望ましく,余裕を⾒て100g程度を⽬安に採取するとよい.
塗膜の採取には,塗膜採取計画を⽴てたうえで実施する.p. 107
7.2 有害物質調査のための塗膜採取⽅法
47
写真解-7.2.1 サンドペーパーを利⽤した塗装仕様確認の簡易試験法(インバイロワンシステム株式会社カタログより)
新設時の年度や橋梁製作会社及び橋梁補修履歴等などから,新設塗装系や塗替え塗装系を確認し,塗膜分析に必要な箇所や箇所数を判定する.
塗膜採取は,塗装系の種類が異なる部位ごとに実施する. 分析⽤の塗膜は,効率的かつ安全に,短時間で必要な量を採取する.分析機器の測
定限界値を考慮し,必要な採取量を決定する.
7.2.1 塗膜採取計画の⽴案p. 108
7.2 有害物質調査のための塗膜採取⽅法
48
(a)採取箇所特定 (c)密閉型⽤具内での塗膜採取状況
(e)⽤具・カバーの廃棄
写真解-7.2.3 塗膜かき取り⼯程の例
塗膜採取作業時の塗膜⾶散を防⽌し,周辺環境の汚染防⽌や⼆次汚染廃棄物の排出を抑制するため,フィルム状の専⽤⽤具を⽤いた塗膜採取⼯法もある.
(d)塗膜サンプル計量
(b)密閉型⽤具を⽤いた作業
7.2.2 分析⽤塗膜の採取 p. 109
7.3 有害物質の分析
49
有害物質の種別 分析試験⽅法(検定⽅法) 検体数量
鉛及び鉛化合物(1次判定)
JIS K 5674:鉛・クロムフリーさび⽌めペイント 付属書 A-塗膜中の鉛の定量
1検体(含有試験)JIS K 0102下記6)
クロム酸及びクロ ム塩類(1次判定)
JIS K 5674:鉛・クロムフリーさび⽌めペイント 付属書 B-塗膜中のクロムの定量
1検体(含有試験)JIS K 0102
鉛及び鉛化合物(2次判定)
産業廃棄物に含まれる⾦属等の検定⽅法(昭和48年2⽉環境庁告⽰第13号)
1検体(溶出試験)JIS K 0102
六価クロム化合物(2次判定)
産業廃棄物に含まれる⾦属等の検定⽅法(昭和48年2⽉環境庁告⽰第13号)
1検体(溶出試験)JIS K 0102
表解-7.3.1 塗膜中の有害重⾦属物質の種別と分析試験⽅法等
注:分析塗膜の量は,含有分析20 g以上,溶出50 g以上が好ましい.
7.3.1 重⾦属類の分析
p. 112
7.3 有害物質の分析
50
7.3.2 ポリ塩化ビフェニル(PCB)の分析
廃棄物中のPCB含有量の測定⽅法には,特別管理産業廃棄物の判定に係る⽅法として下記の(1)(2)が,PCB処理後の卒業判定に係る⽅法として(3)がある.
(1)低濃度PCB含有廃棄物に関する測定⽅法(第3版)(2)絶縁油中の微量PCBに関する簡易測定法マニュアル(第3版)(3)特別管理⼀般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定⽅法(平成4
年厚⽣省告⽰第192号)別表第三の第三「部材採取試験法」
p. 113
第8章 調査結果の記録
51
8.1 調査の記録8.2 写真記録8.3 データの管理
日本鋼構造協会
52
上り線
環境 ① 海岸からの距離 25㎞ ② 橋梁の周辺環境
塗膜劣化度点検・調査票(全体観察)
橋梁名 ★◎◆橋梁
上下区分
路線名 県道▽〇線 所在地自)▲☆●至)〇◆□
事務所名 ◎△■土木工事事務所
橋梁形式 前回調査結果調査年月日 (調査結果) 端支点ブロックでのさび
確認、経過観察とする。2010年5月22日
海岸 海上 その他
③ 特記事項工業地帯 市街地 ( )
田園 山間
塗装系 A-2 色 薄緑
調査年月日 2016年8月31日 天候 くもり 調査員 田中、山田、佐藤
新設時塗装年月 1987年 5月 素地調整 St3
前回塗替塗装年月 2006年 9月 素地調整 3種
( 、 m)
さび・はがれ汚れ・変退色等
さび・はがれ進展 さび・はがれ進展 さび・はがれ進展
さび・はがれ確認 さび進展
項目径間(桁下環境・桁下高さ) A1 ~ P1 P1 ~ P2 P2 ~ A2 ~
調査部材 ( 田園 、 5m) ( 河川 、 8m) ( 田園 、 7m)
その他
[記入上の注意] 各事項について該当するものを○で囲むとともに必要なものについてできる限り詳細に記入する。
縦桁 R側
特記事項
G3主桁A1~P1間中央付近
P1側端横桁
さび確認 さび・はがれ確認 さび確認
さび確認 - さび・はがれ確認
白亜化・変退色進展 白亜化確認 白亜化・変退色進展
Rc-Ⅲ 色 青
径間 非合成 箱桁 他( )
単純 合成 鈑桁 トラス3径間連続非合成鈑桁橋
架設年月 1987年 5月
さび・はがれ確認 さび確認 さび・はがれ確認
さび・はがれ確認 さび・はがれ確認 さび・はがれ確認
傷・膨れ確認 さび確認 さび・傷確認
さび・はがれ進展
傷、割れ確認 さび・はがれ進展
横桁
G1主桁
G2主桁
G3主桁
主桁
G1~G2間
G2~G3間
G1~G2間
塗装系
傷・膨れ確認
外的要因による傷、割れ発生。
顕著な膨れ発生。
全体的な白亜化・変退色進行。
G3主桁P2支点 傷・膨れ発生。
G2~G3間
L側
R側
対傾構
縦桁
8.1 調査の記録
図解-8.1.1 塗膜調査記録票の記⼊例(橋梁の全体観察)
p. 117
8.1 調査の記録
53
塗膜劣化度点検・調査票(詳細観察)
橋梁名 ★◎◆橋梁
上下区分
路線名 所在地 事務所名
調査年月日 2016年8月31日 天候
新設時塗装年月
前回塗替塗装年月 塗装系 Rc-Ⅲ
橋梁形式
⑤工業地帯 市街地 ( )
田園 山間
海岸 海上 その他
③ 桁下環境 ④ 桁下高さ環境 ①海岸からの距離25㎞
② 橋梁の周辺環境
色差測定 付着性径間 さび はがれ 割れ 膨れ
端 中 端 端 中
傷 白亜化 汚れ
中 端 端 中端 端 中 端 端 中 端端 中 端 端 中端 端 中 端端 端
A1~P1
3 1 1 2 0 1
1 0 1 0 0 0
G1 1 0 0 1 0 01 0 0 0 0 0 2 0 0 2 0 12 0 1
1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0
2 0 1 2 1 1
0 0 00 0 0 1 0 10 0 0 1 0 1
2 1 1 1 1 10 2 1 0 0 0 1 0 1 1 0 02 1 1
0 1 0 0 01 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 0 0
0 0 2 0 0 01 0 0 0 0 2
0 01 0 1 1
1 0 0 0 0 0 0
0 00 0 0 0 00 0 0 1 0 00 0 0 0
0 00 1 0 0 0 0
0 00 1
0 0 0 0 0 00 0 0 0 0 0
0 00 0 00 0 0 0 0 00 0 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0
0 0 00 0 0 0 0 01 0 0 0 0 0 0
1 1 00 0 0 0 0 0 1 0 1 2 1 1 2 1 1 1 0 1 1 0 00 0 0
[記入上の注意] 1.各事項について該当するものを○で囲むとともに必要なものについてできる限り詳細に記入する。
2.外観観察は該当する評価点を記入する。
3.調査項目の端・中の「端」は桁の端部、「中」は桁の中央部を示す。
例えば、径間A1~P1の場合、端・中・端は左からA1付近・A1~P1の中央部付近・P1を示す。
特記事項
架設年月 1987年 5月
県道▽〇線自)▲☆●至)〇◆□
◎△■土木工事事務所
(調査結果) 端支点ブロックでのさび確認、経過観察とする。調査年月日
2010年5月22日前回調査結果
単純 合成 鈑桁 トラス
径間 非合成 箱桁 他( )
塗装系 A-2 色 薄緑
特記事項
上り線
1987年 5月
2006年 9月
くもり
素地調整
素地調整
調査員 田中、山田、佐藤
St3
3種
備考
外観観察
色 青
0 0 0
※1
※20 0 0 0 0 00 0 1
0 00
0 0 0
変退色
端 中 端
1 0 1
0 0 0
2 1 1
0 0 0
調査項目
調査箇所
調査部材
G2
G3
G1~G2
G2~G3
G1~G2
G2~G3
L側
R側
主桁
横桁
対傾構
縦桁
0 0 0
※1 : G3主桁中央付近に外的要因による傷、割れ発生。
※2 : P1側端横桁に顕著な膨れ発生。
計器測定
上塗塗膜の消耗
端 中 端
0 0 0
0 0 0
1 0 0
0 0 0
0 0 0
0 0 0
0 0 0
図解-8.1.2 塗膜調査記録票の記⼊例(橋梁の詳細観察)
p. 118
8.2 写真記録
54
写真記録は,構造物のおかれた環境,塗装の履歴,調査時の塗膜劣化や損傷の状態を記録し,前回調査との変化や原因を⽐較・検討する際や塗替え塗装(塗替え塗装⽅法,着⼿時期)計画の策定の際に重要な情報となるため,適切な⽅法で⾏い,画像データとして管理・活⽤できるものとする.
1. デジタルカメラで記録する場合は,なるべく⼤きな画素数で記録する.⼤きな画素数とすることで,⽬視で確認した事象の⾒直しや複数の⽬での再検討が可能となる.
2. ⾊相を問題にする場合には,画像処理時に⾊相の基準となる標準カラーカードを⼊れて記録する.3. 塗膜の⾊を写真で評価すると⾁眼とは違うことが多いので,参考記録とする.4. 膨れなどの凹凸の多い部位は,光源を側⾯⽅向からあてて記録する.5. ストロボを使⽤する場合には光が反射しないように注意する.6. 調査部位,位置等の表⽰が必要な場合には,それらを記⼊した⿊板・パネル等を⼊れて記録する.7. ⿊板やパネル等で記録対象が隠れないように注意する.8. 撮影画素数が⼩さい場合やデジタルズームでの記録は解像度が下がり,⽬視での確認事象を正確に記録
できない場合があるので注意する.9. 写真記録は対象物に正対して⾏うのが望ましい.10. 記録対象物や損傷箇所の⼤きさが判るようにコンベックスや,直尺等を⽤い記録する.11. 狭隘部の記録では⼯業⽤カメラや内視鏡等の利⽤を,⾜場がなく調査者が損傷箇所へ近づくことが困難
な場合にはドローン等を⽤いた記録や拡⼤画像の利⽤を検討する.拡⼤画像撮影時は三脚で固定するなどし,画像にブレの無いようにする.
12. 必要に応じ動画を利⽤し,損傷状況とその原因となっている状況を同時に記録するなどし,判りやすく記録を残すことが望ましい.
13. 調査対象が河川上や⾼架のため,近景写真や接近(詳細)写真の撮影が困難な場合は,必要に応じリフト⾞や⾼所作業⾞,点検作業⾞,ボート,梯⼦などを使⽤する.
写真記録時の注意事項
p. 119
付属資料6 写真記録要領
55付図-6.2 近景写真の撮り⽅の例(桁下の左右両側から斜め上⽅向に撮影)
写真は塗膜を管理していくうえで重要な情報となることから,遠景,近景,接近(詳細)の3段階で⾏い,架設環境,劣化・進⾏状況,原因などが把握できるように留意して記録することが重要である.
遠景写真は,塗膜劣化の要因となる架設環境(海上,海岸,河川,都市,⼯業地帯,⽥園,⼭間,交通状況,歩道や植樹帯の有無など)が把握できるように記録することが重要である.
近景写真は,構造物全体の塗膜の状態を把握し,過去や将来の点検記録と⽐較・分析できるように記録することが重要である.近景は,⽀間中央から起点側と終点側を斜めから⾒上げたものと両⽀点部(橋台や橋脚上)で,写真1枚の記録範囲は延⻑⽅向には⽀間の半分,主桁3から4本程度とする.塗膜劣化の⽣じやすい桁端部,上・下フランジの下⾯,添接部のほか,ウェブ⾯の状態を効率よく把握できるように⾏う.これにより過去の点検記録と⽐較して,塗膜劣化の全体的な進⾏を容易に明らかにすることが可能となる.
p. 付6-1
8.3 データの管理
56
塗膜調査の結果は,今後の維持管理計画を⽴案する際の重要なデータとなるので,データベース化を図り,適切に管理する.
塗膜の調査結果は,塗膜の維持管理を適切に⾏うための重要なデータである.このため,当該橋梁が利⽤されている間はデータを管理する.また調査結果は,内容が容易に判読でき,かつ有効に活⽤できるような⽅法で調査データを蓄積することが重要である.さらに蓄積された調査データは,維持・補修等の計画を⽴案する際に活⽤する.
これらの調査データを⽤いることで,最近の道路管理では,その損傷・劣化等を将来にわたり把握することにより,最も費⽤対効果の⾼い維持管理に取組むことが進められている.
(1)損傷が発⽣してから対処する対処療法型管理(事後保全)から,塗膜劣化の推移を適切に予測し劣化進展を未然に防ぐ予防保全型管理への転換
(2)中・⻑期計画に基づいた効果的・効率的な道路投資
(3)道路施設に使われるコストの削減などの効果
p. 120
付属資料
57
付属資料1 塗膜調査対象塗装系の例付属資料2 電気化学的評価付属資料3 主に研究⽬的で⾏われる機器分析付属資料4 携帯型分析機器付属資料5 有害物質調査のための塗装履歴調査
チェックリスト付属資料6 写真記録要領付属資料7 塗膜調査結果の活⽤事例
日本鋼構造協会
おわりに
58
塗膜調査は,塗膜の劣化状態を的確に把握して健全度評価を⾏い,適切な塗替え計画の策定や維持管理に必要なデータを取得するために⾏うものです。また、その結果は,塗膜の劣化予測技術・劣化モデルの精度向上を図り,塗膜寿命を予測することに活⽤することができます。
「鋼構造物塗膜調査マニュアル JSS Ⅳ 03-2018」は,ばらつきが少なく客観性のある塗膜劣化程度の評価・判定を実現するための⽅法や基準について⽰しています。本マニュアルが活⽤され、鋼構造物塗装の適切な維持管理に繋がることを期待します。