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軽度外傷性脳損傷(MTBI)について、労災認定基準(精神・神経系統の障害等級)の明確化を 軽度外傷性脳損傷友の会 12.10 交通事故・労災事故によるむち打ち・ねんざ(局部、末梢神経損傷)ではなく、中枢神 (脳など)損傷が解明されてきた。 1981 K 氏の労災事故(頭部打撲)2008 年労災再発裁判勝訴 1985 S 氏の公務災害(転倒)――敗訴したが、K 氏の勝訴に結びついた。 2009 年友の会を結成――国会活動や、交流・相談などを継続 1 MTBI の規模――Traumatic Brain Injury(外傷性脳損傷) TBI の多くが MTBI であり、MTBI の多くがなおるが、 重症 MTBI が埋もれている。 たとえば、祇園の暴走事故は、てんかんのためではなく、 TBI による高次脳機能障害 (脱抑制)が原因らしい、とわかってきた。 TBI――毎年世界で 1000 万人の外傷性脳損傷(TBI) ――10 万人当たり、150~300 MTBI――TBI 8,9 Mild:受傷後の意識障害が軽度(≠軽症 Minor) 重症 MTBI――MTBI 1 miserable minority 軽症 MTBI は、なおる。 画像にうつるものと・うつらないものとがある。 中度、重度 TBI 日本国 1 2700 万――毎年 19 万の TBI→そのうち 17 万が MTBI→そのうち 1.7 が重症 MTBI--潜在・数十万人→そのうち今まで 900 症例が石橋徹医師のもとに TBI(MTBI を含む)の主な症状――身体面・精神面に分類できる。 身体性機能障害 精神性機能障害 知覚障害 運動障害 膀胱・直腸障 脳神経まひ てんかんな ど意識障害 高次脳機能 障害 身体面では知覚まひ・運動まひ・膀胱まひ・脳まひが、精神面では発作性意識障害や 認知障害(日本語では、高次脳機能障害)が起きる。

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軽度外傷性脳損傷(MTBI)について

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軽度外傷性脳損傷(MTBI)について、労災認定基準(精神・神経系統の障害等級)の明確化を

軽度外傷性脳損傷友の会 12.年 10 月

交通事故・労災事故によるむち打ち・ねんざ(局部、末梢神経損傷)ではなく、中枢神

経(脳など)損傷が解明されてきた。

1981 年 K 氏の労災事故(頭部打撲)→2008 年労災再発裁判勝訴

1985 年 S 氏の公務災害(転倒)――敗訴したが、K 氏の勝訴に結びついた。

2009 年友の会を結成――国会活動や、交流・相談などを継続

1 MTBI の規模――Traumatic Brain Injury(外傷性脳損傷)

TBI の多くが MTBI であり、MTBI の多くがなおるが、

重症 MTBI が埋もれている。

たとえば、祇園の暴走事故は、てんかんのためではなく、TBI による高次脳機能障害

(脱抑制)が原因らしい、とわかってきた。

TBI――毎年世界で 1000 万人の外傷性脳損傷(TBI) ――10 万人当たり、150~300 人

MTBI――TBI の 8,9 割

Mild:受傷後の意識障害が軽度(≠軽症 Minor)

重症 MTBI――MTBI の 1 割

miserable minority

軽症 MTBI は、なおる。

画像にうつるものと・うつらないものとがある。

中度、重度 TBI

日本国 1 億 2700 万――毎年 19 万の TBI→そのうち 17 万が MTBI→そのうち 1.7 万

が重症 MTBI--潜在・数十万人→そのうち今まで 900 症例が石橋徹医師のもとに

TBI(MTBI を含む)の主な症状――身体面・精神面に分類できる。

身体性機能障害 精神性機能障害

知覚障害 運動障害 膀胱・直腸障

脳神経まひ てんかんな

ど意識障害

高次脳機能

障害

身体面では知覚まひ・運動まひ・膀胱まひ・脳まひが、精神面では発作性意識障害や

認知障害(日本語では、高次脳機能障害)が起きる。

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2 MTBI の定義と対策

Mild は、受傷後の意識障害が軽度ということで、軽症とは限らない。

MTBI には、軽症 MTBI と重症 MTBI がある。

時間軸(上から下へ) 所見

受傷直後 ① WHO のMTBI定義

・ 混迷・見当識障害、30分以内の意識喪失、24時間未満

の外傷後健忘症、けいれんなど

・ 30分後など、Glasgow昏睡尺度13点から15点

(=軽度 Mild:MTBI の M)

2,3 週間は、安静に。同じ受傷機転を繰り返すな

診断(正しい原因の究

明)

② 他覚的・体系的な神経学的検査(2,3 週以降に実施)

→ 脳の器質的障害がわかる。

具体例:別添「原告の神経学的所見」参照

① かつ②なら、TBI(脳の器質的障害)であり、特に①により、事故との因果関係がわか

る。

労災障害認定基準では、中枢性か・末梢性かをみきわめ、事故との因果関係も判定する。

労災事故による外傷性脳損傷と判断されれば、後遺症の程度も判定できる。

・MTBI の主な病態は、軸索の損傷

生涯細胞(life cell)たるニューロン(神経細胞)の特質――器質的障害をあとからでも把

握できる。

ミクロな軸索の多発性損傷は、マクロな画像でとらえにくい。

画像にうつらない中枢損傷の存在を指摘

外傷性脳損傷

・ 画像にうつるのは、32-57%(2001,2004年の論文)

・ 脳や脊髄の損傷があっても画像上に病変が見つからないのは、世界の医学界の共通認識

(渡辺孝男元厚生労働副大臣)

脊髄損傷

・ 脊髄自体の損傷をとらえることは困難(日大脳外科・坪川論文)

・ 画像所見で見られない脊髄損傷がある。・・・出血巣があっても無くてもMRですべて

が描出できる訳ではない。(北九州病院・岩坪意見書)

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3 労災認定基準の明確化が必要――労災の趣旨は、労働能力喪失への補償

画像所見あり 画像所見なし

1-7級 基準なし

8-14級 14級はあ

るが、これ

は通常労務

可能

労災――MTBI

・ 春日部署5級 横浜労災病院で鑑定――高次脳機能

障害と身体性機能障害を総合判断

・ 神奈川労災審査官9級 北里大学病院で鑑定――高

次脳機能障害のみ認定

判決

・ 長野地裁2007.12.26地方公務員 石橋医師

による鑑定により、外傷性脳損傷と判断

・ 東京高裁2008.6.4上野署 画像にうつらない

脊髄損傷2級

・ 東京高裁2010.3.25地方公務員 脊髄損傷

・ 東京高裁2010.9.9交通事故 MTBI 9級

基準の明確化のために、

① 国際基準である WHO の MTBI 定義と、

② 石橋先生が実践する、他覚的・体系的な神経学的検査(古典的な方法論であり、成書

『ベッドサイドの神経の診かた』にもとづく)を採用すべきである。

4 労災認定と予防

正しい原因の究明がされてこそ、適確な予防ができ、被害者をへらせる。

傷病 赤字の生活保護・健康保険から労災保

険へ誘導

適確な予防、被害の根絶

外傷性脳

損傷

労災認定基準の改正が必要 交通事故・スポーツ事故

などから、脳を守る運動

職業がん ・石綿関連肺がん、特に建設作業者―

―認定基準の緩和

・放射線による白血病・多発性骨髄

腫・悪性リンパ腫など

・印刷労働による胆管がん

・既存石綿対策

・原発労働の廃絶=原発即

ゼロ方針

・労働安全衛生の強化

過労性疾

・過労死、脳・心疾患、精神疾患の認

・頚肩腕障害の認定

・残業規制、いじめ嫌が

らせの根絶、PC 作業の管