2
パラレル配置した圧電バイモルフの共振を利用した 触覚インターフェースの開発 Development of a Tactile Interface Using a Resonance of Piezoelectric Bimorphs Arranged in Parallel 元木陽平 ,昆陽雅司,田所諭 (東北大),前野隆司(慶応大) Yohei Motoki , Masashi Konyo, Satoshi Tadokoro (Tohoku Univ.) and Takashi Maeno (Keio Univ.) We developed an ultrasonic vibrator for a tactile interface using ultrasonic resonance of piezoelectric bimorphs arranged in parallel. The vibrator is required for a compact in order to attach it to a pointing device. This vibrator has mechanism that amplifies vibration amplitude using resonance of piezoelectric bimorphs, which are combined in a cross shape. The vibrator consists of eight piezoelectric elements, a shim, jigs and a contactor of an elastic metal. Tactile stimulation is generated by amplitude modulations of an ultrasonic vibration. In order to make large generative force and vibration amplitude, the ultrasonic vibrator was designed by finite element analysis. We confirmed analytically that the vibrator could generate a vibration amplitude of more than tens of micro meters. φ 30 mm 1. 緒論 本研究では,小型情報端末などのポインティング デバイスに搭載することが可能な,小型でも豊富な 触覚情報を呈示可能な触覚インターフェースの開発 を目的とする.触覚のリアリティの向上には自発的 な触運動が重要である.筆者らはヒトの自発的な触 運動を積極的に利用した触覚呈示法を提案している [1].そこでポインティングデバイスが取得する運動 情報を,仮想的な触運動と見立てることにより触感 を呈示する.これにより,ヒトが携帯端末などに表 示されるキャラクタなどと触れ合うことが可能とな る. 本研究では,シム板に十字方向に配置した圧電バ イモルフと接触子の連成振動の超音波域の共振を利 用することで,振動振幅・発生力を増幅することよ り振動子の小型化を実現する.超音波振動子はスク イズ膜を利用した摩擦感の提示に多く用いられてき たが,筆者らは超音波振動の振幅変調を用いて振動 刺激の周波数成分を生成する方法を提案している [2].この方法より摩擦感だけではなく多彩な触感が 呈示できると考えられる.本稿では有限要素解析に より,振動子の共振を利用した小型超音波振動子の 設計について検討する. 2. 超音波振動子の構造 筆者らが開発した超音波振動子の構造を Fig.1 示す.この振動子は 8 枚の圧電素子とりん青銅のシ ム板とジグと接触子から構成される.ジグと接触子 はアルミ合金とした.十字型のシム板に対称に圧電 素子を配置することで圧電バイモルフとし,中心部 の振幅を拡大する機構となっている. --------------------------------------------------------------------- {motoki ,konyo, tadokoro}@rm.is.tohoku.ac.jp Contactor Jig (a) Cross section drawing 各圧電バイモルフの両面には電極が設けられてい る.シム板側は接地させ,反対側の電極は短絡し, 振動子の共振周波数近傍の交流電圧が印加される. また振動子を制御するために圧電バイモルフの一部 にセンサ極を設けている.センサ極は十字型の 4 所全ての圧電バイモルフに設けており,センサ極か らの出力を利用することで十字キーとして利用でき るように設計している.これは,振動子を指で押さ えた際の各センサ極の応答の違いから,どの方向に 力が作用しているかを判断する. Fig.1(a)に示すように,シム板の外周を金属のジグ で押さえる.接触子はシム板とジグにネジで拘束さ れる.圧電バイモルフは外周部を強く拘束されるた め,中心部に向かってたわみ振動するような固有振 動モードを示す.シム板の中心部は圧電バイモルフ によりたわみ振動し,接触子はシム板により,中心 部を押し上げられるような変形を示す. 発生力・振動振幅を増幅するために,この圧電バ イモルフの超音波域の共振を利用する. Piezoelectric bimorph Shim (b) Top view of piezoelectric bimorphs (c) Assembled view Fig.1 Structure of the ultrasonic vibrator Proceedings of Symposium on Ultrasonic Electronics, Vol.28, (2007), pp. 149-150 14-16 November, 2007 1-05-02

1 -05 -02 - use-jp.org/å5¸ D D G 6é.3. 02 E;Ç/> å. õ #n-áÔÚüæê9Ø"¹) æ" !¢Ô ÏÇ Káé.-á zé D G D ÷4c o âåÌëåå¿9ÚØéÚüæê9Ø D

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 1 -05 -02 - use-jp.org/å5¸ D D G 6é.3. 02 E;Ç/> å. õ #n-áÔÚüæê9Ø"¹) æ" !¢Ô ÏÇ Káé.-á zé D G D ÷4c o âåÌëåå¿9ÚØéÚüæê9Ø D

パラレル配置した圧電バイモルフの共振を利用した

触覚インターフェースの開発 Development of a Tactile Interface Using a Resonance of Piezoelectric Bimorphs

Arranged in Parallel

元木陽平‡,昆陽雅司,田所諭 (東北大),前野隆司(慶応大) Yohei Motoki , Masashi Konyo, Satoshi Tadokoro (Tohoku Univ.) and Takashi Maeno (Keio Univ.)

We developed an ultrasonic vibrator for a tactile interface using ultrasonic resonance of piezoelectric bimorphs arranged in parallel. The vibrator is required for a compact in order to attach it to a pointing device. This vibrator has mechanism that amplifies vibration amplitude using resonance of piezoelectric bimorphs, which are combined in a cross shape. The vibrator consists of eight piezoelectric elements, a shim, jigs and a contactor of an elastic metal. Tactile stimulation is generated by amplitude modulations of an ultrasonic vibration. In order to make large generative force and vibration amplitude, the ultrasonic vibrator was designed by finite element analysis. We confirmed analytically that the vibrator could generate a vibration amplitude of more than tens of micro meters.

φ 30 mm 1. 緒論

本研究では,小型情報端末などのポインティング

デバイスに搭載することが可能な,小型でも豊富な

触覚情報を呈示可能な触覚インターフェースの開発

を目的とする.触覚のリアリティの向上には自発的

な触運動が重要である.筆者らはヒトの自発的な触

運動を積極的に利用した触覚呈示法を提案している

[1].そこでポインティングデバイスが取得する運動

情報を,仮想的な触運動と見立てることにより触感

を呈示する.これにより,ヒトが携帯端末などに表

示されるキャラクタなどと触れ合うことが可能とな

る. 本研究では,シム板に十字方向に配置した圧電バ

イモルフと接触子の連成振動の超音波域の共振を利

用することで,振動振幅・発生力を増幅することよ

り振動子の小型化を実現する.超音波振動子はスク

イズ膜を利用した摩擦感の提示に多く用いられてき

たが,筆者らは超音波振動の振幅変調を用いて振動

刺激の周波数成分を生成する方法を提案している

[2].この方法より摩擦感だけではなく多彩な触感が

呈示できると考えられる.本稿では有限要素解析に

より,振動子の共振を利用した小型超音波振動子の

設計について検討する. 2. 超音波振動子の構造

筆者らが開発した超音波振動子の構造を Fig.1 に

示す.この振動子は 8 枚の圧電素子とりん青銅のシ

ム板とジグと接触子から構成される.ジグと接触子

はアルミ合金とした.十字型のシム板に対称に圧電

素子を配置することで圧電バイモルフとし,中心部

の振幅を拡大する機構となっている.

--------------------------------------------------------------------- {motoki ,konyo, tadokoro}@rm.is.tohoku.ac.jp

Contactor

Jig

(a) Cross section drawing

各圧電バイモルフの両面には電極が設けられてい

る.シム板側は接地させ,反対側の電極は短絡し,

振動子の共振周波数近傍の交流電圧が印加される.

また振動子を制御するために圧電バイモルフの一部

にセンサ極を設けている.センサ極は十字型の 4 箇

所全ての圧電バイモルフに設けており,センサ極か

らの出力を利用することで十字キーとして利用でき

るように設計している.これは,振動子を指で押さ

えた際の各センサ極の応答の違いから,どの方向に

力が作用しているかを判断する.

Fig.1(a)に示すように,シム板の外周を金属のジグ

で押さえる.接触子はシム板とジグにネジで拘束さ

れる.圧電バイモルフは外周部を強く拘束されるた

め,中心部に向かってたわみ振動するような固有振

動モードを示す.シム板の中心部は圧電バイモルフ

によりたわみ振動し,接触子はシム板により,中心

部を押し上げられるような変形を示す.

発生力・振動振幅を増幅するために,この圧電バ

イモルフの超音波域の共振を利用する.

Piezoelectric bimorph

Shim

(b) Top view of piezoelectric bimorphs

(c) Assembled view

Fig.1 Structure of the ultrasonic vibrator

Proceedings of Symposium on Ultrasonic Electronics, Vol.28, (2007), pp. 149-15014-16 November, 20071-05-02

Page 2: 1 -05 -02 - use-jp.org/å5¸ D D G 6é.3. 02 E;Ç/> å. õ #n-áÔÚüæê9Ø"¹) æ" !¢Ô ÏÇ Káé.-á zé D G D ÷4c o âåÌëåå¿9ÚØéÚüæê9Ø D

3. 超音波振動子の設計指針

ヒトが豊富な触感を知覚するためには,皮膚に発

生する変位が全ての触覚受容器の振動振幅閾値以上

でなければならない.そのためには,振動子は数十

μm 以上の振幅を得なければならない.また,筆者ら

が提案している振幅変調法では,入力電圧一定で共

振近傍の周波数から非共振域へ周波数を遷移させる

ことにより振幅変調を行うため,共振が単調に出現

することが必要条件となる.また共振は鋭い方が,

振幅の増幅率が大きくなるため鋭く出ることが望ま

しい.また,振動子はポインティングデバイスに搭

載可能なサイズにする必要がある.

そこで, a) 数十 μm の振幅が発生すること,b) 共振のピークが一つだけ鋭く出ること,c) サイズはφ

30 mm 以下とすること,を設計指針とする.共振の

確認には,アドミタンスを測定することより評価す

る.

4. 超音波振動子の有限要素解析

4.1 有限要素解析の条件

本研究では汎用有限要素解析ソフトANSYSを用

いることより振動子の設計を行った.振動子の解析

モデルは,Fig.1(b)のようにシム板と圧電バイモルフ

を固着し,ジグと接触子とシム板はFig.1(a)に示すよ

うに固着させる.また拘束条件は,ジグ上面と接触

子の中心からφ22~φ30 mmの範囲をz方向に完全

拘束とした.減衰率は,金属弾性体と圧電素子を接

着した振動子では一般に機械的Q値が 1000程度にな

ることが知られていることから 0.0005 とした.印加

電圧は 20 Vp-pとした.解析は固有値解析と周波数応

答解析を用いた.

設計指針のため,圧電素子の長さは 8.0 mm,厚

さは 0.5 mm,幅 3.0 mm とし,シム板の厚さを 0.2 mmとした.また,接触子の厚さは 1.0 mm とした.そ

こで,振動子が設計指針で挙げた特性を有するかを

確認するために,周波数応答解析を行った.

4.2 解析結果

接触子の振幅量を示したモード形状図を Fig.2 に

示す.Fig.2 において,矢印が指している部分が最大

振幅を示している.これより中心部の振幅が大きい

ことが分かり,振幅は 32.0 μm となっている.また,

振動子のアドミタンス特性を Fig.3 に示す.Fig.3 よ

り約 11 kHz と約 27 kHz で共振のピークが出ている

ことが分かる.約 27 kHz では,ピークが鋭く出てお

り,それ以降の周波数ではアドミタンスが安定して

Maximum amplitude 32.0 μm

Fig.2 Shape of vibration mode of the ultrasonic vibrator

Frequency [kHz]

Adm

ittan

ce [m

S]

0 10 20 30 40 500

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

Resonance

Fig.3 Admittance characteristic of the ultrasonic vibrator

いる.以上のことから,この振動子は設計指針を十

分に満たしており,触覚インターフェースの振動子

として期待できる.

4.結論

本論文では 8 枚の圧電素子をパラレルに配置した

圧電バイモルフの超音波域の共振を利用した振動子

の設計について述べた.有限要素解析より,この振

動子は数十 μm 以上の振幅が出ることを確認した.

今後はさらに詳細に振動子形状の最適化を行い,製

作した振動子の特性を評価する必要がある.また,

振動子のセンサ極の応答が,ポインティングデバイ

スとして利用できるかどうかを検討する.

引用文献 1. M. Konyo, A. Yoshida, S. Tadokoro and N. Saiwaki,

"A tactile synthesis method using multiple frequency vibration for representing virtual touch", IEEE/RSJ Intl. Conf. on Intelligent Robots and Systems, pp.1121-1127, 2005.

2. T. Maeno, K. Otokawa and M. Konyo, “Tactile Display of Surface Texture by use of Amplitude Modulation of Ultrasonic Vibration”, IEEE Ultrasonic Symposium, pp.62-65, 2006