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核酸塩基の相対配置の探索 ○向⽇友宏 1 ,⾼⽥⾕吉智 1 ,⼭⾨英雄 2 ,時⼦⼭宏明 3 ,⼤野公⼀ 4,5 (和歌⼭⼤院システム⼯ 1 , 和歌⼭⼤システム⼯ 2 , HPC システムズ株式会社 3 , 量⼦化学探索研究所 4 ,東北⼤院理 5 ) ⽣物にとって、DNAは重要な物質である。DNA2重螺旋構造を形成する核酸塩 基である、Adenine(A),Guanine(G),Cytosine(C),Thymine(T)の特異な11の相補的相互作 ⽤に関する知⾒を得るため、GRRM/SCC-DFTB 1) プログラムを⽤い、核酸塩基の相対 配置を検討している。今回G-C間の構造について報告する⽅法 探索には超球面探索法 2) を、電子状態の計算はDFTB 3,4) (Density Functional tight binding)法を用い、パラメータにはmio-1-1 を用いた。初期配置は、G,C分⼦を、同⼀ 平⾯上に並べた構造をSCC-DFTB法で構造最適化した構造から出発した。今回は、 調和下方歪み(Anharmonic Downward DistortionADD)の大きい経路を3つおよび4つま でたどるようにオプション(LADD = 3,4)を設定した。 結果と考察 LADD = 3では平衡構造(EQ)30個⾒つかり計算が終了し、LADD = 4は、EQ238個⾒つかっており探索は現在継続中である。DNA中で実際に⾒られるG- Cの相対配置をSCC-DFTB法で最適化した構造、および今回⾃動で探索された代表的な 構造を図1に⽰す。今回の探索では、Cytosineの⽔素の⼀つが移動した構造が多く⾒つ かっている(図1(c)(d))実際のDNA(デオキシリボース・リン酸鎖付き)中で⾒られ G-C間の⽔素結合による相対配置 5) は、現在探索中であるが、GRRM/SCC-DFTB を⽤いた探索により、核酸塩基の相対配置の候補を⾃動探索することが可能で あると考えられる。 1) H. Tokoyama, H. Yamakado, S. Maeda and K. Ohno, Chem. Lett., 2014, 43, 702. 2) K. Ohno and S. Maeda, Chem. Phys. Lett., 2004, 384, 277; S. Maeda and K. Ohno, J. Phys. Chem. A, 2005, 109, 5742; K. Ohno and S. Maeda, J. Phys. Chem. A, 2006, 110, 8933. 3) D. Porezag, Th. Frauenheim and Th. Kohler, Am. Phys. Soc., 1995, 51, 12947. 4) B. Aradi, B. Hourahine, and Th. Frauenheim, J. Phys. Chem. A. 2007, 111, 5678. 5) P. Jurecka and P. Hobza, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 15608. (a) EQ00.0 kJ/mol (d) EQ310.3 kJ/mol (c) EQ219.2 kJ/mol (b) EQ114.4 kJ/mol 1 GuanineCytosineの相対配置。 (a)DNA中で知られている相対配置について最適化した構造。 (b)(d):今回の探索で⾒つかった相対配置。 (c),(d)ではCytosineの⽔素の⼀つが移動している。

核酸塩基の相対配置の探索 時⼦⼭宏明 ⼤野公⼀iqce.jp/SRPS/SRPS2016/Muko_T.pdf ·  · 2016-08-15Microsoft Word - シンポジウム概要.docx Created Date: 8/15/2016

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核酸塩基の相対配置の探索

○向⽇友宏 1 ,⾼⽥⾕吉智 1 ,⼭⾨英雄 2 ,時⼦⼭宏明 3 ,⼤野公⼀ 4,5

(和歌⼭⼤院システム⼯ 1, 和歌⼭⼤システム⼯ 2, HPC システムズ株式会社 3 ,

量⼦化学探索研究所 4,東北⼤院理 5)

序 ⽣物にとって、DNAは重要な物質である。DNAの2重螺旋構造を形成する核酸塩

基である、Adenine(A),Guanine(G),Cytosine(C),Thymine(T)の特異な1対1の相補的相互作

⽤に関する知⾒を得るため、GRRM/SCC-DFTB1)プログラムを⽤い、核酸塩基の相対配置を検討している。今回G-C間の構造について報告する。 ⽅法 探索には超球面探索法2)を、電子状態の計算はDFTB3,4)(Density Functional tight

binding)法を用い、パラメータにはmio-1-1 を用いた。初期配置は、G,C分⼦を、同⼀

平⾯上に並べた構造をSCC-DFTB法で構造最適化した構造から出発した。今回は、 非

調和下方歪み(Anharmonic Downward Distortion:ADD)の大きい経路を3つおよび4つまでたどるようにオプション(LADD = 3,4)を設定した。 結果と考察 LADD = 3では平衡構造(EQ)が30個⾒つかり計算が終了し、LADD = 4で

は、EQが238個⾒つかっており探索は現在継続中である。DNA中で実際に⾒られるG-

Cの相対配置をSCC-DFTB法で最適化した構造、および今回⾃動で探索された代表的な

構造を図1に⽰す。今回の探索では、Cytosineの⽔素の⼀つが移動した構造が多く⾒つ

かっている(図1(c)、(d))。 実際のDNA(デオキシリボース・リン酸鎖付き)中で⾒られ

るG-C間の⽔素結合による相対配置5)は、現在探索中であるが、GRRM/SCC-DFTBを⽤いた探索により、核酸塩基の相対配置の候補を⾃動探索することが可能であると考えられる。

1)H. Tokoyama, H. Yamakado, S. Maeda and K. Ohno, Chem. Lett., 2014, 43, 702.

2)K. Ohno and S. Maeda, Chem. Phys. Lett., 2004, 384, 277; S. Maeda and K. Ohno, J. Phys. Chem. A, 2005, 109,

5742; K. Ohno and S. Maeda, J. Phys. Chem. A, 2006, 110, 8933.

3)D. Porezag, Th. Frauenheim and Th. Kohler, Am. Phys. Soc., 1995, 51, 12947.

4)B. Aradi, B. Hourahine, and Th. Frauenheim, J. Phys. Chem. A. 2007, 111, 5678.

5)P. Jurecka and P. Hobza, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 15608.

(a) EQ0:0.0 kJ/mol (d) EQ3:10.3 kJ/mol (c) EQ2:19.2 kJ/mol (b) EQ1:14.4 kJ/mol

図1 GuanineとCytosineの相対配置。

(a):DNA中で知られている相対配置について最適化した構造。

(b)〜(d):今回の探索で⾒つかった相対配置。 (c),(d)ではCytosineの⽔素の⼀つが移動している。