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全国河川における マイクロプラスチック汚染の実態
東京理科大学理工学部土木工学科
助教 片岡 智哉
公益財団法人河川財団名古屋研究発表会
2019年11月21日(木) ウインチあいち901大会議室
講演の概要
2
1. 海洋プラスチック汚染の概要
2. 国内河川におけるマイクロプラスチック汚染の実態
3. 海洋プラスチック汚染に対する対策
→プラスチックを介した海洋生態系の化学物質汚染
→人口の集中する市街地を流下する河川でプラスチッ
ク汚染が進行
→プラスチックの排出抑制だけでなく,環境中のプラスチックごみの除去もリスク軽減において重要
1. 海洋プラスチック汚染の概要
3
プラスチックの原料は原油
4プラスチック循環利用協会(2018)を参考に作成
原油 (19,112万kl)
ガソリン 5,411万kl
(28%)
ナフサ 2,000万kl
(10%)
灯油 1,590万kl
(8%)
軽油 4,108万kl
(21%)
重油 3,328万kl
(17%)原油年使用量の3%
→プラスチックの原料
プラスチック ポリエチレン ポリプロピレン 塩化ビニル樹脂 ポリスチレン その他可塑性樹脂 熱硬化性樹脂 その他樹脂
1,076万t 257万t 247万t 165万t 118万t 173万t 90万t 26万t
プラスチック用途以外の化学原料
輸入ナフサ 2,409万kl
原油使用量と製品別生産量 (2016年実績)
5
添加剤による耐久性の向上可塑化 成形 固化
中間材料 (レジンペレット)
添加剤
添加剤の種類
1. 高分子用安定剤
2. 機能付与剤
耐久性向上(酸化防止剤),耐候性向上(紫外線吸収剤)など
柔軟性付与(可塑剤),難燃性付与(難燃剤)など
冷却型枠
プラスチック生産量は増加
6
年間生産量(2015年)
世界:3.81億トン アジア:1.91億トン(50.1%)
中国: 1.12億トン(29.4%)
EU:0.07億トン(18.5%)
アメリカ:0.067億トン(17.7%)
日本:0.014億トン(3.9%)
Geyer et al.(2017)を基に作成
世界プラスチック生産量(1950-2015)
プラ
スチ
ック
生産
量(億
トン
)
0.02億トン
3.81億トン
注)Geyer et al.(2017)の生産量にPlastic Europe(2018)の国別生産比率を乗じて推計
多くのプラスチックは軽量
7
Polyethylene PE
0.91-0.965
-CH2-
29.3%
Polypropylene;PP0.90-0.91
-CH3-
19.2%
Polyvinylchloride;PVC1.35-1.45 CH2=CHCl
10.3%
Polystyrene;PS
1.04-1.09
C6H5CH=CH2
7.0%
Polyethyleneterephthalate;PET
1.34-1.39
7.0%
国内生産率: 24.0%
国内生産率: 22.6%
国内生産率: 15.4%
国内生産率: 7.0%
国内生産率: 3.8%
プラスチックの三大長所
8
軽量安価 高耐久性
高い 輸送効率
大量生産大量消費
難分解性 有毒性
プラスチックの三大長所が海洋プラスチック汚染を深刻化
荒川河口付近(東京都江戸川区)
東京都江戸川区・荒川
チタルム川(インドネシア・ジャワ島)
10http://karapaia.com/archives/52093330.html
安価のため,先進国だけでなく, 発展途上国を含む多くの国で大量消費
河川から海へのプラスチック流出量
11
年間流出量:115万トン〜241万トン 年間流出量の内,67%はアジアから 年間流出量の内,74%は5月〜10月に流出
Lebreton et al, Nature Commun., 2018
大串海岸(長崎県奈留島)
12
西表島海岸(沖縄県石垣市)
13
海に流出したプラスチックは, 海流で輸送されて他国の海岸を汚染する
ハワイ諸島に集積するプラスチック
14
ハワイ・オアフ島
長崎県奈留島
ハワイ諸島の海岸には
細かなプラスチックが多い
→海流によって輸送される過程
でプラスチックの劣化が進行し
微細化する
プラスチックは陸域で細かくなる
15
暴露時間(月)
プラ
スチ
ック
の耐
性 (
%)
陸
海
暴露実験
Andrady, MPB, 2011
マイクロプラスチックとは?
16
1次発生マイクロプラスチック
下水に 混入
2次発生マイクロプラスチック
劣化・ 微細化
UN
EP Y
EAR
BOO
K 20
14
plastics debris
49
Continous flows of plastic to the marine environment
Every year large amounts of plastic debris enter the ocean from both land- and sea-based activities, such as fisheries and tourism, and poor waste management. While the total amount in the ocean is unknown, plastic is found all over the world including in the polar regions, far from its source.
Floating plastic can be transported great distances by ocean currents. Although plastic debris is most commonly observed on shorelines, it also accumulates in mid-ocean ‘gyres’, natural circulation features that tend to trap floating material. Some of the material sinks to the ocean floor, where it remains out of sight. Environmental damage due to plastic debris is well documented. It includes:
t� Mortality or sub-lethal effects when plastic is ingested by animals such as turtles, small-toothed whales and seabirds
t� Entanglement of animals such as dolphins and large whales in nylon fishing gear (like nets) and other plastic debris
t� Damage to critical ecosystems such as coral reefs and smothering of sediments
t� Chemical contamination of marine organisms through ingestion of small plastic particles
t� Potential changes in biodiversity due to the transport of invasive species on plastic fragments
Exposure of plastic to the ocean’s physical, chemical and biological processes results in fragmentation and size reduction. Plastic on the seafloor will take far longer to fragment (due to lack of UV penetration and the cold water temperatures at these depths) than plastic on beaches or in surface waters near coastal areas. Plastic is extremely persistent in the marine environment.
Media reports and the activities of non-governmental organizations (NGOs) have improved awareness of the worldwide problem of plastic debris accumulating in the ocean, often focusing on its environmental impacts. In addition, the fishing and tourism industries in many countries are economically affected by the presence of plastic debris, which can enter nets, foul propellers and litter beaches. A growing concern is the possible contamination of fish and other marine organisms that ingest plastic debris and the possible adverse impacts on ecosystems and human health.
Read more about plastic debris in the ocean in the UNEP Year Book 2011.
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0.01 2 4 6 8 10© IPRC
© NOAA Marine Debris Programme
Gyres
Marine debris is subject to transport by ocean currents and tends to accumulate in a limited number of subtropical convergence zones or gyres. These gyres occur in the North and South Atlantic Ocean, the North and South Pacific, and the Indian Ocean.
GESAMP, 2015
5.0mm以下の大きさのプラスチック
→マイクロプラスチック
海流の渦に集積するプラスチック
17
地球上の5つの海流の渦に集まるマイクロプラスチック
Cozar et al., PNAS, 2014
海底がマイクロプラスチックのシンク?
18
海底の底質土から海表面水より
4桁多い量のマイクロプラスチック
を発見
Woodall et al., R. Soc. Open Sci., 2014
EU
ロシア
アフリカ
1 2
3 4 6
57
8
大気によるマイクロプラスチック輸送?
19
365±69個/m2/d
ピレネー山脈
110±96個/m2/d
大都市(パリ)
228±43個/m2/d
工業都市(東莞)
強風時 (>2m/s)
降雨時 降雪時
Allen et al., Nat. Geo., 2019
Dris et al., EP, 2017
Cai et al., ESPR, 2017
地球におけるプラスチックの動態
20Ryan et al., Phil. Trans. R. Soc. B, 2009
河川海岸海洋(表面)
海洋(海底)
大気ー川ー海のすべてでプラスチックが循環?
大気
海洋生態系に取り込まれる プラスチック
植物プランクトン (0.2μm-20mm)
動物プランクトン (0.2μm-200cm)
小型魚
大型魚
哺乳類
消費者
生産者
高次栄養段階
低次栄養段階
21
海洋生態系
哺乳類
大型魚
バクテリア
死骸
動物プランクトン
植物プランクトン 小型魚
必須元素 (C, N, P等)
Boerger et al., MPB, 2010
ハワイ諸島近海で採取された野生のプラ
ンクトン食生魚から
マイクロプラスチックが検出
プランクトン食生魚による摂食
22
深海にもプラスチック汚染拡大
23
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/030300136/
世界で最も深い6つの海溝で端脚類を捕獲 80%以上の個体の消化管からプラスチックの繊維や粒子を摂食 深い場所で捕獲された個体ほど摂食量が多い(マリアナ海溝の最深部では100%)
Jamieson et al., R. Soc. Open Sci., 2019
Tanaka et al., Sci Rep, 2015
東京湾のイワシによる摂食
24
東京湾のイワシ64匹中49匹からプラスチック (平均2.3個/匹,最大15個/匹)
プラスチックに含有する有害化学物質
海水中からの吸着
酸化防止剤や難燃剤としての化学物質の添加
海水中からの POPs指定物質の吸着
吸着 吸着
プラスチック製造での添加
25
海水中から吸着した有害化学物質
International Pellet Watch:http://www.pelletwatch.org
プラスチック中の 汚染物質濃度は 周辺海水中の 十万倍〜百万倍
レジンペレット ➜プラスチックの中間材料
26
Browne et al., CB, 2013
ノニルフェノール
PBDE-47 トリクロサン
フェナンスレン
PVC
全ての化学物質が消化管内に移行
低次栄養段階の海洋生物への 有害化学物質の移行(室内実験)
27
�"*A�C�y�°·¦©ª¢�3w������ 6%�$Ij�By�a`�dW
高次栄養段階の海洋生物への 有害化学物質の移行
Tanaka et al., MPB, 2013
北部太平洋で捕獲された海鳥の 消化管内から発見されたプラスチック片
28
ハシボソミズナギドリ
海洋プラスチック汚染 →環境ホルモン問題の再来
29
ノニルフェノール (プラスチックの添加剤) ➜ ヒトの乳がん細胞の異常増殖を引き起こすなど,プラスチックに起因する生殖異常に言及
1996年初版
250倍
2500万倍汚染MPの摂取
生物濃縮の強化
オンタリオ湖のPCBsの生物濃縮
2. 国内河川における マイクロプラスチック汚染の実態
31
Isobe et al. MPB, 2015
日本近海には世界平均の27倍の量のマイクロプラスチックが浮遊
Lebreton et al., Nature Commun., 2017
自国起源MP VS
他国起源MP真値は?
27倍
日本近海にあるMPはどこから?
32
市街地農地
自然地工業地
流域情報
降雨時
増水
t2
t1
t
平水時
国内河川からのMP汚染の実態解明 →日本から海洋へのMP流出量の解明
横断面分布 時間変動
国内河川におけるMP汚染の実態解明
全国調査の観測方法
�33
観測模式図
flow
橋
流心 ロープ約5-10分
プランクトンネット (目合0.1or0.335 mm)
濾水計分析フロー
①MP候補物の抽出
濾過後
候補物
②MPサイズ・質量計測
③MP材質同定 ④MP濃度算定
1. MPサイズ測定 2. MP質量計測
5mm
MP数密度(質量濃度): 河川水単位体積あたりのMP個数(質量)
フーリエ赤外分光光度計 (FTIR)
デジタル濾水計 (5572, 離合社)
簡易プランクトンネット (5512-C, 離合社)
30cm
75cm
MP数密度マップ
�34
天塩川
最上川
旭川
宮良川
四万十川物部川
声問川下エベコロベツ川
関東地方(13河川)
九州地方
(8河川)
那珂川 久慈川利根川
養老川
小糸川小櫃川
相模川
荒川多摩川
鶴見川
中川
江戸川大堀川
遠賀川彦山川菊池川 黒川
白川緑川球磨川川内川
Kataoka et al., EP, 2019
MP濃度と流域情報との関係
�35
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0
MP数密度・質量濃度
(個/m
3 , mg/m3 )
人口密度(x103人/km2)
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
0 25 50 75 100
黒:MP数密度,赤:MP質量濃度市街地率(%)
人口が集中する市街地を流域に含む河川でMP濃度が高い
y=1.190x + 0.760 R2=0.544 (P<0.05)y=0.314x + 0.118 R2=0.525 (P<0.05)
y=0.104x + 0.142 R2=0.583 (P<0.05)y=0.027x - 0.044 R2=0.560 (P<0.05)
0
5
10
15
20
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
MP濃度と水質との関係
�36
MP数密度・質量濃度
(個/m
3 , mg/m3 )
BOD(mg/L)黒:MP数密度,赤:MP質量濃度
BOD(水質の総合指標)と有意な相関がある 汚濁河川でMP濃度が高い
y=2.426x - 0.607 R2=0.175 (P<0.05)y=0.614x - 0.213 R2=0.156 (P<0.05)
0
3
6
9
12
AA A B C D平均MP数密度・質量濃度
(個/m
3 , mg/m3 )
水質階級汚清
37
市街地農地
自然地工業地
流域情報
降雨時
増水
t2
t1
t
平水時
国内河川からのMP汚染の実態解明 →日本から海洋へのMP流出量の解明
横断面分布 時間変動
国内河川におけるMP汚染の実態解明
河川表層と底層のMP濃度の比較
�38
江戸川
荒川
大堀川
多摩川
MP濃度の表層・底層同時観測
表層MP濃度 [個/m3]
底層MP濃度 [個/kg]
江戸川 5.0 3.8
大堀川 14 67
荒川 0.78 57
多摩川 0.40 100
MP数密度観測結果の比較
表層MP濃度: O(-1)-O(0) 個/m3
底層MP濃度*: O(3)-O(5) 個/m3
*底質の乾燥密度: O(3) kg/m3より換算
底質採取ネット濾過
採泥器
プランクトンネット 平常時:底層にMPが堆積
出水時:底層からMPが巻き上げ
千葉県
MP横断面分布観測
江戸川
利根川
観測日: 2018/10/30, 11/29
0.5m
水深: 2.1m(10/30) 1.9m(11/29)
0.25m0.5m
0.25m
分析フロー
①MP候補物の抽出
濾過後
候補物
②MPサイズ・質量計測
③MP材質同定 ④MP濃度算定
1. MPサイズ測定 2. MP質量計測
5mm
MP数密度(質量濃度): 河川水単位体積あたりのMP個数(質量)
フーリエ赤外分光光度計 (FTIR)
水位計 (U20, Onset)
観測模式図
�39
2.0m 2.0m
flowプランクトンネット (目合335μm, 径30cm)
野田橋
欄干ろ水計
MP濃度の鉛直分布
�40
MP数密度
10/30: 表層と底層でMP濃度が高い 11/29: 底層のMP濃度が高い
材質構成(10/30)
材質構成(11/29)
鉛直平均流速は 0.65m/s(10/30) > 0.47m/s(11/29)
流速が遅いは底層に堆積 流速が速いときは底層から巻き上げられてMP濃度は鉛直方向に2つのピークをもつ
研究目的横断面分布
市街地農地
自然地工業地
流域情報
時間変動
tt2
t1
降雨時
増水
平水時
流況・流域情報を考慮した MP輸送量モデルの開発
→国内河川からのMP流出量の解明
�41
平常時・出水時のMP現地観測観測日 平常時 2016/9〜 (毎月)
出水時 2017/9/17-18 2017/10/23-25
小観測サイト
千葉県
利根川江戸
川
手賀沼
5km野田橋
平常時
大
観測模式図
flow
橋
流心 ロープ約1-10分
プランクトンネット (目合0.335 mm)
濾水計
デジタル濾水計 (5572, 離合社)
簡易プランクトンネット (5512-C, 離合社)
30cm
75cm
�42
出水時
平常時MP濃度の経月変化
MPは季節変化が存在する
可能性が示唆される
102
101
10-2
10-1
100
MP数
密度
・質
量濃
度
[個
/m
3, m
g/m
3] 数密度
質量濃度
9 11 1 3 5 7 92016 2017
11 1 3 5 7 9
60
180
240
120
0流量
(江
戸川
)[m
3]
月平均流量
9 �43
冬季に比べて夏季の方
がMP濃度が高い傾向
出水時におけるMP濃度の時間変化
�44
0
5
10
15
20
500
550
600
650
700
0:00 12:00 0:00 12:00 0:00
700
9/18
650
600
550
500
20
15
10
5
0
[m3 /s
]
MP
Cn [
/m3 ]
,M
PC
[mg/
m3 ]
9/19
0
10
20
30
40
50
60
70
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
10/23 10/24 10/25 10/26
1400
200
400
600
800
1200 70
20
30
40
50
60
1000
10
0
MP
Cn [
/m3 ]
,M
PC
[mg/
m3 ]
[m3 /s
]• 数密度、質量濃度共にMP濃度は増水期にピークを迎えている
• 出水時のMP数密度ピーク:平常時(3.4個/m3)より1オーダー大きい
• 出水時のMP質量濃度ピーク:平常時(0.60mg/m3)より1-2オーダー大きい
出水時河川の浮遊ごみや汚濁物質の 輸送特性((二瓶・若月, 2010)など)と類似
MP輸送量に関するL-Q式
�45
MP濃度と流量(江戸川)
流量と共にMP濃度も上昇 する傾向あり
MP濃度の季節変動の一因?
102
103
101
104
MP輸送量
Ln[個
/s]
10-1102 103101
MP輸送量
L m[m
g/s]
流量Q[m3/s]
Ln=0.097Q1.76 R2=0.83
Lm=0.0095Q1.84 R2=0.73
105
104
MP輸送量と流量(江戸川)輸送量Ln[個/s], Lm[mg/s]の算出
=MP濃度C ×流量Q
L-Q式の算出 輸送量算定
MP輸送量Ln MP輸送量Lm
104
MP数密度
Cn[個
/m3 ]
,
102
10
1
10-2
10-1
Cn=0.097Q0.76 R2=0.48
MP質量濃度
Cm[m
g/m
3 ]
Cm=0.0095Q0.84 R2=0.35
102 103101流量Q[m3/s]
数密度 質量濃度
まとめ
�46
横断面分布 時間変動
流域情報
MP濃度の鉛直分布を明らかにした 平常時(低流速時): 底層にMP濃度のピークをもつ
出水時(高流速時): 表層と底層に2つのピークをもつ
江戸川のL-Q式を構築した MP輸送量(MP濃度)は流量と有意な相関がある
人口が集中する市街地を流域にもつ河川(汚濁河川)でMP濃度が多い MP濃度は流域情報(人口密度や市街地)
やBODと有意な相関がある 清 汚
国内河川からのMP汚染の実態解明 →日本から海洋へのMP流出量の解明
3. 海洋プラスチック汚染に対する対策
47
世界プラスチック廃棄の将来予測
Geyer et al., Sci Adv, 2017 48
•1950年〜2015年までに83億トンが生産され,63億トンが廃棄された
•廃棄されたプラスチックごみの12%が焼却,79%が埋立・環境中に流出
•リサイクルされているプラスチックはたった9%
•2050年までに120億トン以上が埋立・環境中に流出
国際的な対策の推進
49
大阪・ブルー・オーシャン・ビジョンの提唱 →2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロに
2019年G20大阪サミット
2018年G7シャルルボワ・サミット引用: 外務省HP
海洋プラスチック憲章の策定(日本未署名) →プラスチックの資源効率的なライフサイクル管理に向けた取り組みをG7各国で推進する
2015年国際サミット
持続可能な開発目標(SDGs)の策定 →2016年から2030年までの国際目標 SDG14: 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
何をすべきか?
50
プラ
スチ
ック
の存
在量
プラ
スチ
ック
起因
のリ
スク
1. プラスチックの流出抑制(ex: 3R政策推進,消費削減,モラル向上) ➜存在量は維持できるが、リスクは増大
2. プラスチックの流出抑制+除去(ex: 洋上回収、海岸清掃) ➜存在量とリスクを軽減
時間 時間
海岸清掃によるMPリスク軽減
51
劣化した 海洋プラスチック
表面
剥離
初期状態の 海洋プラスチック
表面
熱
紫外線
剥離によって生じた プラスチック微細片
紫外線や熱 による劣化
清掃した 場合
清掃しない 場合
紫外線や熱による劣化
粉々になった 海洋プラスチック
劣化した 海洋プラスチック表面
時間プラ
スチ
ック
微細
片
の蓄
積量 海岸清掃
効果海岸清掃
Kataoka and Hinata, MPB, 2015
講演のまとめ
52
1. 海洋プラスチック汚染の概要
2. 国内河川におけるマイクロプラスチック汚染の実態
3. 海洋プラスチック汚染に対する対策
→プラスチックを介した海洋生態系の化学物質汚染
→人口の集中する市街地を流下する河川でプラスチッ
ク汚染が進行
→プラスチックの排出抑制だけでなく,環境中のプラスチックごみの除去もリスク軽減において重要
ご清聴ありがとうございました
53
本研究はJSPS科研費若手研究A(課題番号:17H04937)及び河川基金(課題番号:2017-5211-016及び2019-5211-050)の助成を受けて実施されました.また,国内河川におけるマイクロプラスチックの観測については東京理科大学理工学部水理研究室の学生に協力頂いた.ここに記して深甚なる謝意を表す.