66
平成30年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業 (海外における物流・サプライチェーンの動向調査事業) 経済産業省 御中 報告書 2019年3月8日 © Euromonitor International 2019. All rights reserved. The material contained in this document is the exclusive property of Euromonitor International Ltd and its licensors and is provided without any warranties or representations about accuracy or completeness. Any reliance on such material is made at users’ own risk. This document is confidential and for internal use by Japan Ministry of Economy, Trade & Industry and its affiliates only. Publication or making available to any third party of all or part of the material contained in this document (or any data or other material derived from it) without Euromonitor’s express written consent is strictly prohibited. Please refer to the applicable terms and conditions with Euromonitor.

¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

平成30年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(海外における物流・サプライチェーンの動向調査事業)

経済産業省 御中

報告書

2019年3月8日

© Euromonitor International 2019. All rights reserved. The material contained in this document is the exclusive property of Euromonitor International Ltd and its licensors and is provided without any warranties or representations about accuracy or completeness. Any reliance on such material is made at users’ own risk. This document is confidential and for internal use by Japan Ministry of Economy, Trade & Industry and its affiliates only. Publication or making available to any third party of all or part of the material contained in this document (or any data or other material derived from it) without Euromonitor’s express written consent is strictly prohibited. Please refer to the applicable terms and conditions with Euromonitor.

Page 2: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

2

• 調査の背景・方法…………….. P. 3

• 市場レポート:中国…………….. P. 5

• 市場レポート:ドイツ…………….. P. 19

• 市場レポート:米国…………….. P. 34

• 要旨:調査結果のまとめ及び日本の政策への示唆

…………….. P. 47

• 補足資料:日本…………….. P. 57

目次

Page 3: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

3

物流スマート化は喫緊の課題。本調査の目的は、海外事例から物流施策の方向性について示唆を得ること

調査背景

日本の現状

日本の産業の根幹を支える物流部門における人材不足が深刻化している。

現在の物流システム・商慣行のまま、ドライバーが減少し、荷物数が増え続けると、経済活動に不可欠な「物流」という機能が維持できなくなる可能性がある。

近年の物流コストの上昇、宅配料金の値上げ等により、荷主や消費者にとっても「物流危機」への危機感が高まっており、商慣行の見直しが起こりつつあるが、企業レベルでの取り組みでは限界がある。

物流におけるデジタル変革を成し遂げることが必要

事業者の枠や旧来のサプライチェーンの枠を超えた連携及びデジタル技術の活用による、物流部門ひいては物流に支えられた各産業のさらなる効率化・サプライチェーン最適化が求められている。

海外

各国のビジネス環境・制度に対応する形でデジタル化による独自の産業構造変化やスマート物流が進行している。

海外事例から、今後の物流施策の方向性について示唆を得る必要

今後の物流施策の立案に活用するため、海外の物流に係る各民間大手企業の動向を中心に、技術基盤、経済的・産業構造的背景、法制度、規制等を調査・整理する必要がある。以下、主な重点調査項目。

ドイツ:物流×Industry4.0の視点での、民間企業と政府における協力動向

中国:中国企業の投資動向と海外進出方針及び中国企業をグローバルに活躍させるための施策の有無・動向

米国:自由競争の中における物流大手及びプラットフォーマー企業の投資動向とその背景

Page 4: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

4

現地調査 ~ 日本との比較 ~ 日本の物流施策に向けた提言、の3ステップ

調査方法

ステップ1:現地調査

ステップ2:日本と海外3ヵ国の比較

ステップ1の結果をもとに、4か国を横断比較することにより今後の戦略策定への糸口を探る

ステップ3:今後の日本物流部門におけるデジタル変革に向けたレコメンデーション

調査に基づき、今後の戦略策定に向けたキーポイント・レコメンデーションの分析・まとめ

各国政府の協力状況や関連する法制度・規制

各国事業環境 各国大手民間企業の取組事例

各項目について、日本と海外の違いは何か?

米国・中国・ドイツ・日本各国での現地調査員による現地調査

Page 5: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

5

中国

Page 6: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

6

約14億人の人口を抱える中国は、人口増加率こそ過去と比べて低下も、経済成長率はなお高水準が見込まれる。力強い内需が流通市場の急速な拡大をサポートし、企業は潤沢な手元資金を使って大胆に投資し続けることが可能とみられる

マクロ環境概要

指標 2018年 2023年*1 年平均成長率*1

人口(1000人) 1,390,080.0 1,411,628.4 0.3%

世帯数(1000世帯) 473,844.2 503,909.6 1.2%

GDP(PPPベース、10億Intl.$)

25,294,8 38,337.5 8.7%

実質GDP成長率 6.6% 5.1% 5.6%

実質民間最終消費支出成長率

7.4% 5.3% 6.2%

1人あたり可処分所得(米ドル)

5,955.0 8,959.2 8.5%

インフレ率 2.1% 2.5% -

*1: 弊社予測値(2019年1月28日時点)

Page 7: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

7

主要分野別オンライン小売業界の成長(百万米ドル) オンライン小売業界の競合状況(2018年)

5,879億米ドル

2兆4,855億米ドル

14.9%23.7%→34.2%

インターネット小売の普及率は世界的に見て既に高水準だが、市場はなおも高い伸びをもって拡大し続

ける見込み。市場の75%を中国の大手2社、AlibabaグループとJD.comが占めており、市場集中度は極めて

高い。2大プレーヤーの動向が電子商取引市場の今後の発展に大きく影響を及ぼすと考えられる

41.0%

34.2%

4.1%

2.7%2.3%

15.7%

Alibaba Group Holding Ltd JD.com Inc

Suning Commerce Group Co Ltd Vipshop Holdings Ltd

Pinduoduo Inc Others

0

100000

200000

300000

400000

500000

600000

2013 2018 2023

衣料品・靴 家電製品

家庭用エレクトロニクス製品 食料品・飲料

メディア製品 鞄・装飾品

その他

電子商取引市場

オンライン小売販売総額

(2018年)

小売販売総額

(2018年)

オンライン小売販売額予測の年

平均成長率(2018~2023年)

オンライン小売の普及割合

(2018年→2023年)

Page 8: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

8

収益 倉庫の床面積 速達郵便(市場シェア) 貨物運送状のデジタル化率

560億人民元 最大稼働倉庫:1,000万㎡以上 51.9% 最大94%

最大300億人民元 稼働倉庫:1,000万㎡以上 - 約100%

710億人民元 保有倉庫:140万㎡ 8.2% 96%以上

410億人民元 保有倉庫:360万㎡ 6.2% -

民間大手は自前の物流ネットワークを持ち、先端技術に多額の投資を行っている。一方、市場には30万を超える物流業者が存在すると言われており、断片化された広大な市場がなお残る

Cainiao Smart Logistics Network

• Cainiaoを保有するAlibabaは中国における最大の電子商取引企業である。• Cainiaoは、輸送能力の向上を目指す上で、物流施設等の構造物に対する投資よりも、データ共有、クラウドコンピューティング、人工知能等の技術を発展させ、物流のコスト構造や効率性の最適化を図ることに軸足を置いている。

• Cainiaoは現在、4大配送サービス業者のデータを取り扱う唯一の民間プラットフォームとなっている。JD Logistics

• 中国第2位の電子商取引企業により創業。JD Logisticsは当初、消費者向けプレミアム配送サービスを提供するために設立された。• JD Logisticsは倉庫や配送業者向け駐車スペースを含めてすべての物流施設を保有しており、資本集約型となっている。• JD Logisticsは配送業務、倉庫業務等に幅広く適用できる無人機の開発に積極的に取り組んでいる。

SF Express

• SF Expressは、電子商取引小売業者以外にも幅広い顧客基盤を持ち、中~高級配送部門で高いシェアを誇っている。Cainiaoと共同設立した4つの配送会社との差別化を図っており、2017年6月にはCainiaoとのデータ共有を中止した。

• SF Expressは、時間厳守と質の高いサービスの提供に向け、自前の物流施設に多額の投資を行っている。

• SF Expressは業界内で最高水準の収益率を確保しているとみられている。

EMS(国際スピード郵便)

• 中国郵政により設立された唯一の国有大手企業であり早くからスピード配送サービスを提供してきた一社である。

• 政府の強力な資金援助により大規模なサービス網が整備され、2010年頃にはスピード配送市場において高い占有率を誇っていた。しかし、政府が2014年以降、民間の物流開発を支援するようになったことで、同社はここ数年間、成長の原動力を失いつつある。それでも、同社は依然として遠隔地や農村部、県級市に強力な足がかりを築いている。

注:Cainiaoは企業連合であり独立企業ではない。同社のデータはSTO、YTO、ZTO、Yunda Expressの輸送企業4社の合計値。

物流業界の主要企業

注:上記の4社は、売上高や市場シェアの他、業界トレンドの観点から弊社が重要と判断したプレーヤー。

Page 9: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

9

1

2

3

物流業の発展に関する中長期計画(2014~2020年)

• 中国国務院は2014年、「物流業の発展に関する中長期計画(2014~2020年)」を発表した。この中では、「近代的かつスマートな物流システム」を発展させ、「物流業界を年8%で成長させることによって、2020年までに同業界を対GDP比7.5%の規模まで拡大すること」が目標として掲げられており、優先すべき技術としてIoTとインテリジェント機器(倉庫内の配達ロボットなど)が挙げられた。物流の発展にスマート化が重要な手段となっていることが浮き彫りとなった。

• 物流業の発展に関する中長期計画(2014~2020年)に続き、中国国務院は2016年、「物流業のコスト削減・効率化に関する特別行動計画(2016~2018年)」を発表した。近い将来の物流が展望され、全国規模の物流プラットフォームであるLOGINKの役割が以下のように明記されている。

物流におけるデジタル化の推進、政府部門との連携による企業の信用システムの開始、業界のセキュリティ水

準の向上、商品トレーサビリティなどの革新的サービスの提供。

• 同措置の導入以前は、無人航空機(UAV) は保安上の理由から複数の省において全面的に禁止されていた。しかし、保有者の属性に制限を設け、保安管理を強化することで、UAVの利用が全国的に許可された。

• 同措置は、UAVを運航に用いる際、実名での登録、トレーニング修了、地上賠償責任保険の加入、企業による保有を条件とする旨を規定している。

• UAV利用が全国的に認められたことを受け、大手企業による実証実験が本格化している。特に遠隔地域のラストマイル配送の分野においてスマート物流への応用が加速している。

物流業のコスト削減・効率化に関する特別行動計画(2016~2018年)

2018年民用無人航空機の運航の管理に関する措置(暫定)

政府は2014年、スマート物流の発展を強く推し進めるべく中長期計画を公表。2016年には短期的な行動計画を発表し、全国規模の物流プラットフォームであるLOGINKがデジタル化やトレーサビリティなどに関わる重要な役割を担う旨を明記した

物流業界に対して影響力のある政策・法規制

Page 10: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

10

主要企業は潤沢な手元資金をもとに高度なスマート化を各自進める。ただ、業界全体での発展には、インフラや人手不足、デジタル化の後れ、企業間の激しい競争意識が連携の妨げになるなど、課題が多い

物流業界のSWOT分析

強み(Strength)

膨大な注文数に対する大手企業の処理能力の高さ

主要企業、特にSF ExpressとJD Logisticsは、すでに国内受注(香港を含む)に対して24時間以内の配送を確約している。

2018年の「双十一」(独身の日、中国最大のオンラインショッピングセール日)における小包配送数は8億1,200万個に及んだが、そのうち1億個は2.6日以内に配送された。

民間企業のスマート技術を巡る研究開発能力は極めて高い

ここ数年の中国における物流産業の発展は、豊富な資金力を持つインターネット企業が主導している。CainiaoとJD Logisticsはともに国内のインターネット大手が設立しており、クラウドコンピューティング、ビッグデータインフラ、アルゴリズムや無人機を自社内で提供することが可能である。

弱み(Weakness)

業界全体でのデジタル化は低水準

中国の物流業界は多くの中小企業を抱えており、特に企業間(B2B)の輸送サービスにおいては顕著である。中小企業にとってスマート物流への第一歩は、標準化やデータ共有ではなく、日々のオペレーションで主に利用されている旧式の電子システムの近代化である。

企業間の強い競争意識がデータ共有の妨げに

大手企業の間では熾烈な競争が繰り広げられており、これが業界のデータ集約を妨げている。データのアクセスや共有を巡る紛争や訴訟は年に何件も起きている。主要企業の紛争例としては、SF Expressが2017年6月、Cainiao(Alibaba)に対してデータアクセスを停止した件、JD.comが2018年5月、同社サイトに出店する小売業者に対してCainiao Electric Waybillsの利用を禁止した件が挙げられる。

機会(Opportunity)

政府のスマート物流への関心

政府は以下の認識を持ち、物流のスマート化を重要な課題として捉えている。

物流業界のコスト効率は低く、物流コストはGDPの約15%を占めるに至っている。中国が世界の製造大国を目指すうえで、これが障害になっている。

一帯一路構想

複数大陸にまたがる強力な経済・貿易協力関係の構築を目指す一帯一路構想の中で、物流産業に期待される役割は極めて大きい。

インターネットの普及と電子商取引発展の盛り上がり

インターネットの普及とそれに伴う電子商取引の増加は、物流をスマート化させる原動力となる。

脅威(Threat)

人手不足

人口流動の偏りや少子高齢化を背景にインフラ整備や荷物輸送等の際の人手不足が深刻化している。

不十分な道路、水路、航空網

遠隔地への物流を支える道路や水路、航空網は不足しているが、それらの整備には多額の投資資金を要するため、早期の解消は見込まれていない。

公的資金の乱用

中国政府は、物流産業の発展を促すために、税金の還付や土地取得の際の割引などの支援策を実施している。ただ、こうした政策の下で相当額の公的資金が乱用されたと報じられている。

プラス要因 マイナス要因

内部環境

外部環境

Page 11: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

11

物流業者は、物理的インフラとデジタルインフラの改善をまず必要としている。データプラットフォーム

に関しては、提供者が参加者の増加を図るも、参加者はデータ共有に後ろ向き

物流業界のギャップ分析

供給側 需要側ギャップ

インフラ

の観点

データ共有

基盤の観点

• 資金と人手が不足しているため、道路建設は遠隔地や開発の進んでいない都市や県に限られてきた。

• 5Gやクラウドプラットフォームは中国では初期段階にあり、物流業界で広く適用される準備は整っていない。

• 政府機関が主導するLOGINKは無償のサポートを通じて中小企業のデジタル化を推進するも、資金と人手不足が活動の進捗を妨げている。

• CainiaoやJD Logisticsなどのプラットフォーム提供者は、データ共有がスマート物流の基盤となるという認識の下、クラウドコンピューティングの強化やAIアルゴリズムの改良に向けて提携先を積極的に模索している。

• 物流企業は、より広い地域で、より速い配送サービスを提供することに苦慮している。

• 企業はスマート物流を推進するためにデジタル環境の整備を必要としている。これには5G(第5世代移動通信システム)やクラウドプラットフォームが含まれる。

• 大多数の企業はプラットフォームを利用し、データを共有することに依然として慎重である。すべてのデータを保有する者が最終的には市場を制することになるのではないかという根強い疑念が存在している。

• インフラ、なかでもデジタルインフラは特に不完全。以下の分野で政府による取り組みが期待されている。

o 遠隔地におけるインフラo 商品の配送状況をリアルタイム

で追跡するための、高速Wi-Fiまたは5Gによる高速なインターネット接続環境

o 物流データを保存および処理するためのプラットフォーム技術

• 各企業のヒストリカルデータの共有、CainiaoとJD Logistics間のような、異なるプラットフォームをまたいだデータの共有が特に進んでいない。

デジタル化

の観点

• 特に、企業間(B2B)物流企業、中小規模の物流企業、国有企業および税関のデジタル化度合いは低く、物流合理化、サプライチェーン効率化の妨げになっている。

• デジタルシステムを構築する技術と資金が不足しているため、多くの物流企業は依然として紙または旧式の電子システムに頼っている。そうした企業が輸送する商品は追跡不可能である。

Page 12: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

12

政府は物流業界の連携基盤の発展に重点を置いている。

o 業界関係者の要望を基に、全国規模のデータ連携基盤であるLOGINKを構築。

o 異なる輸送モードをまたいだ単一の基準を確立。

o 企業向けに技術面や財政面での支援を提供。特に中小規模の物流企業に対してデータシステムのアップグレードとプラットフォームへの接続を促進。

o 政府部門間の情報格差を解消し、業界関係者にとって利用可能なデータの範囲を拡大。

連携・統合(政府)

JD LogisticsやSuning Logistics等の大手電子商取引企業や小売業者は、低コストでより良いサービスの提供を目的に、より高度な配送システムを構築する傾向があり、川上へ向かって垂直統合を主導している。

連携・統合(民間)

政府は標準化やデジタル化の推進に重点を置き、LOGINKを構築する等、取り組みを主導している。一方、民間主導の関連事業に対しても、全体対応、個別対応の両方をもって支援している

スマート物流を巡る主要な動向

政府は、民間主導のサプライチェーン統合を間接的にサポートしている。

o スマートな駐車スペースを目的とした土地に対する価格割引

o スマート物流に関する設備やソフトウェアに対する優遇税制

o 民間部門との地域物流産業計画

o Cainiaoの国際基準化活動の支援(物流可視化タスクフォース)

o 大手データ規格プロバイダー間の紛争の仲裁。例)SF Expressが同社のデータベースにCainiaoがアクセスすることを拒否した件

政府の民間支援

Page 13: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

13

民間 詳細 公的機関

Cainiao (Alibaba)

中国税関がCainiaoに輸出入業者のヒストリカルデータを提供し、信用格付システムを開発。税関は通関時の事前スクリーニングにおける重要な指標として用いている。

同システムにより、海外受注の急増へ対処することが可能となった。

中国(杭州)越境電子商取引総合試

験区*1

JD.COM

E-Logistic Index*2の発行において協力。JD.COMは一次データを収集。協会の加盟企業がインデックス作成の議論を主導した。

このインデックスは政策立案者や業界関係者の意思決定を支援するものである。

中国物流・購買連合会

Cainiao (Alibaba)STO、Yundaなど大

手運送業者

Green Innovative Lab Programを2018年10月に設立。速達サービスの持続可能な発展を見据え、業界動向や技術の研究開発、データ分析、人材開発の面で協力することを目的とする。

中華人民共和国国家郵政局

国有企業は民間部門と様々な分野で協力し、情報共有の在り方を模索しつつ、業界発展の前例作りに取り

組んでいる

*1:政府は2015年、国際的な電子商取引の推進、同分野における国際競争力の改善と輸出拡大を目的に、杭州に最初の越境電子商取引総合試験所を設置。その後、34都市(うち22都市は2018年に設置)に拡大させている。*2:電子商取引業界における様々なロジスティックデータ(合計物流量、在庫回転率、コンプライアンス率、配達員数など)を合成し、作成された月次指標。日々の物流オペレーションのためではなく、政策立案者や業界のプレーヤーの意思決定を支援することを目的に作成され、JDグループ及びChina Logistics&Purchasing Associationによって公表されている。

スマート物流に関する官民の協力

Page 14: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

14

ケーススタディ• LOGINK(国家交通運輸物流公共情

報プラットフォーム)LOGINKは、全国規模のプラットフォームであり、データの標準化、データの交換、データベースの提供といった機能を持つ。ただ、資金不足とデジタル化を推進するための人材不足により、普及率は依然低い

© Euromonitor International

Page 15: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

15

組織名LOGINK(国家交通運輸物流公共情報プラットフォーム)

本部所在地 浙江省杭州市

設立主体 交通運輸部、国家発展改革委員会

協力政府機関

工業情報化部、科学技術部、商務部、公安部、海関総署、国家品質監督検験検疫総局、民用航空局、国家郵政局、中国鉄路総公司財政部国家税務総局省政府(主体はプロジェクトごとに異なる)

主な情報

中央政府によるトップダウン型アプローチ

主な特長

2012年、交通運輸部は物流産業における情報の分断を解消するためにLOGINKを設立した。民間によるデータの統合・共有に向けた取り組みが奏功しなかったことが背景にある。

インフラとしての役割が期待される政府主導のプラットフォーム

LOGINKに期待される主な役割は、物流に関わるすべての部門のデータ統合を推進すること。

輸送モード(例:鉄道と水路)、政府部門(例:公安部と税務総局)、民間のプラットフォーム(例:Cainiao対JD.com)、国などをまたいだデータの標準化や共有は、民間企業による努力では実現困難である。対して、LOGINKは政府主導のプロジェクトである。

ただ、類似の連携基盤を提供しているCainiaoと比較すると、LOGINKはそれ自体で物流サービスや配送サービスを提供していないため、利便性に劣り、民間部門、特に企業消費者間(B2C)セクターにおいての普及率も低い。

また、参加企業は不利益を懸念してデータ提供には後ろ向きである(義務付けられていない)。結果、プラットフォーム上のデータのほとんどは政府機関や第三者から提供されたものとなっている。

LOGINKは中小企業向けの支援を積極的に行っている。

中国ではなおデジタル化されていない多数の企業が存在している。LOGINKは、第三者を通じて必要な資金と技術支援を提供しつつ、そうした企業がデータの国家規格を利用するよう促している。

ケーススタディ:LOGINK

Page 16: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

16

LOGINKの3つのサービス:1.標準化

標準化は、物流に関する公共輸送情報プラットフォームへの基本支援である。地域やセクターを越えた物流情報の交換を実現し、各種アプリケーションシステムの相互接続を保証し、質の高い物流情報サービスを提供することが重要である。

運輸・物流情報の相互接続・共有規格(2015年)

基本規格

データスキーマ

コードセット

道路輸送に関する電子文書

物流現場における電子文書

在庫に関する電子文書

海上輸送契約書および領収書に関する電子文書

コンテナ貨物引換証および機器受渡証に関する

電子文書

プラットフォームの連携と交換に関する

規格データ交換インターフェースの一般技術規格

サービス機能呼び出し

インターフェースの技術規格

本人確認方法に関する規格

アプリケーションおよびサービスの規格

貨物追跡アプリケーション

車両カードアプリケーション

物流リソースアプリケーション

コンテナ追跡アプリケーション

船舶追跡アプリケーション

信用アプリケーション

ケーススタディ:LOGINK

基本規格

メタデータ

データソース

コード E-文書

プラットフォームの連携と交換に関する規格

統一の組織確認

交換・接続の規格

情報の安全管理

アプリケーションサービスの規格

・データの入力

・プラットフォームとの連携

・データの利活用

Page 17: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

17

LOGINKの3つのサービス:2.データ交換

データ交換に関しては、データ

交換に関する標準規格の欠如、

情報伝達の効率性の低さ、統合

能力の低さ、国境や部門、セク

ター、組織を越えた物流情報プ

ラットフォームや産業チェーン

における川上企業と川下企業間

の交換コストの高さなどの問題

を解消する。2016年現在(最新

の数値)、国家物流プラット

フォームは13組の交換サーバー

を配備し、1日平均で2,000万件

のデータ交換と4,500万人以上

によるサービス利用を達成して

いる。

標準システム

その他の情報提供システム(国家レベル)

交通運輸部における

関連業務システム

閣僚レベルにおける関連業務

システム

その他の情報プラットフォーム

企業情報システム

全国管理提供システム

全国的なプラットフォーム

全国的な交換ノード統合交換ノード

道路輸送 水路 航空貨物 鉄道 郵便

安全システム

地域交換ノード

32地域における交換ノード

地域交換ノード

データ交換

運営管理 その他の情報提供システム(省レベル)

関連業務システム

関連情報プラットフォーム

企業情報システム

基礎的な交換網管理システム

出所:LOGINK

ケーススタディ:LOGINK

Page 18: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

18

LOGINKの3つのサービス:3.データベース

データベースによって、主に、公開情報の分断やデータ照会に対する需要増といった問題を解決する。LOGINKは、政府と業界の物流に関する既存の公開情報源に依存しているが、物流情報に関する「ワンストップサービス」をユーザーに提供することになっている。

LOGINKは、信用データ、追跡データ、リソースデータ、および参考情報という4分野のデータサービスを提供している。データ一覧は以下の通り(2016年現在)。

信用データベース 追跡データベース リソースデータベース 参考情報

人事登記 物流パークへの車両入場履歴 物流パークの基礎情報 政策および規制に関する情報

国民識別番号 トラックの高速道路利用履歴 港湾に関する基礎情報 ユースケース

車両登録 コンテナ船の状況 定期航路の追跡

所有者登録 コンテナの状況 天候情報

所有者の商業登記 空輸の状況 道路情報

司法に関する情報 鉄道による物流の状況

A級物流企業の評価情報 通関状況

車両の位置情報

AIS(自動船舶識別装置)情報

ケーススタディ:LOGINK

Page 19: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

19

ドイツ

Page 20: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

20

ドイツ経済は目先、一定の底堅さを保ち、欧州全体を牽引していくと予想される。その中において、国際競争力の高いドイツ企業は、政府によるインダストリー4.0に関連するバックアップを受けながら、欧州の物流改革を主導していく可能性を秘めている

マクロ環境概要

*1: 弊社予測値(2019年1月28日時点)

指標 2018年 2023年*1 年平均成長率*1

人口(1000人) 82,520.0 83,483.9 0.2%

世帯数(1000世帯) 41,538.2 42,211.7 0.3%

GDP(PPPベース、10億Intl.$)

4,343.6 4,986.2 2.8%

実質GDP成長率 1.6% 1.0% 1.3%

実質民間最終消費支出成長率

1.6% 1.1% 1.4%

1人あたり可処分所得(米ドル)

28,987.2 33,694.0 3.1%

インフレ率 1.9% 2.0% -

Page 21: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

21

主要分野別オンライン小売業界の成長(百万米ドル) オンライン小売業界の競合状況(2018年)

661億米ドル

オンライン小売販売総額

(2018年)

5,987億米ドル

小売販売総額

(2018年)

9.2%

オンライン小売販売額予測の年

平均成長率(2018~2023年)

11.0%→14.1%

オンライン小売の普及割合

(2018年→2023年)

インターネット小売は、他の先進諸国と比べてペースは若干緩やかながらも、着実に普及していくと予想される*1。製品別に見ると、衣料品・靴の割合が高く、ラストワンマイル問題の深刻化が返品に伴う配送ニーズによって齎されている側面が大きいかもしれない。市場の約半分をAmazon.comが占めるなど欧米系多国籍企業のプレゼンスが高く、市場の発展に関しては国際的な潮流を受けやすい構図となっている

電子商取引市場

47%

10%

9%

3%

3%

28%

Amazon.com Inc eBay Inc Otto Group

Apple Inc Zalando SE Others

0

10000

20000

30000

40000

50000

60000

2013 2018 2023

衣料品・靴 家電製品

家庭用エレクトロニクス製品 食料品・飲料

メディア製品 鞄・装飾品

その他

*1: オンライン小売販売額予測の年平均成長率(2018~2023年)、普及率(2018年、2023年)について、OECD平均はそれぞれ13.0%、8.8%、13.1%である(弊社予想)。

Page 22: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

22

Deutsche Bahn AG

• バルク輸送とトラック輸送の最大手。空路・陸路・貨物・鉄道輸送を網羅。

• ネットワーク化された自動運転トラック(プラトゥーニング、隊列走行)技術を追求。

• 欧州水準のマルチモーダル輸送の革新を進める。

• 消費者向け、企業間(B2B)等、物流の各領域で世界規模の物流業者。

• スマート倉庫への多額の投資を実施。例) 倉庫内のオーダーピッキングを補助すべく、ヒートマップや拡張現実(AR)を用いて作業オペレーションをリアルタイムでモニターするためのセンサーを開発。

• より柔軟な配送サービスに向けた取り組み:消費者宅に設置するDHL宅配ボックス、VW(フォルクスワーゲン)車のトランクに直接配送するDHLパックステーション(宅配受け取り機)と呼ばれるサービス等。

• ドイツで2008年に創業されたスタートアップだが、欧州最大規模のアパレル電子商取引に成長、世界各地に拠点を持つ。

• Magazinoと協力し、倉庫ロボット工学の分野で投資。

• 物流業者のLiferyと連携し、都市部における同日配送に注力。

DHL

Zalando*1

市場は少数の国際的に事業を展開する大手企業と大多数の中小企業から構成されており、国内の物流ネットワークは分断されている。物流業界全体の効率化を進める上では、会社間での規格の違いや下請け企業の存在などが阻害要因になる

物流業界の主要企業

*1: Zalandoの本業は、物流業ではなく電子商取引小売業。しかし、顧客企業に対して、インバウンド物流から返品物流に至るまでのフルフィルメントサービスを提供するなど、物流プレーヤーとしての顔も持つ。

Page 23: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

23

1

2

3

EU一般データ保護規則(GDPR)

同法令は個人データの収集、保管、利用、共有の方法を規制している。個人データとは、識別された、または識別され得る自然人に関するあらゆる情報を意味する。物流業界は顧客、従業員、運転手の個人データを多く取り扱うため、プライバシー法は多方面で関係する。例えば、本人との同意なしに住所等の個人情報を企業同士で共有できない点、運転手に対する監視の禁止により輸送の追跡情報が制限される点は、物流活動の効率化を進めるうえで大きな障壁になる。また、個人のプライバシーを侵害することなくどのようにデータを収集するのかも大きな課題である。

同規則により、EU加盟国は企業や団体に対してデータの保管や処理を自国内で行うことを義務付けることができなくなる。データが自由に流通することで、企業はITシステムを複数作成したり、同じデータを異なる場所で保存することなく、より簡単かつ安価で国境を越えて業務を行うことが可能になる。データ共有プラットフォームの国際展開はより低コストで実現可能となる。

同法では、行政機関は法律により求められる文書をすべてデジタル形式で受け入れるべきと定められている。物流業者は、道路管理当局等の行政機関との通信をデジタル化することで、効率性を改善することが可能となっている。

非個人データ*1の欧州連合域内の自由な移動に関する規則案

行政文書の電子化を推進する「電子政府法」

*1: 非個人データとは、機械生成データや商業データなど、個人を特定できないデータを指す。

目下、物流事業に大きな影響を及ぼしているのは、データの取り扱いを巡るEUレベルの規制である。個人データの保護が厳格化される一方、非個人データは流通円滑化が図られている

物流業界に対して影響力のある政策・法規制

Page 24: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

24

EU一般データ保護規則(GDPR)は世界中で適用

GDPRは企業の所在地に関係なく、EU市民に関するすべてのデータに適用される。国際的な物流企業は、取得する情報がEU市民1人に限る場合であっても、EU法に従うようにポリシーを調整する必要が生じる。

本人の「同意」は、強制を受けず、特定的に、情報提供を受けたうえで積極的に為される必要があり、本人は同意内容やどのような種類のデータが誰により何の目的で収集されるのかについて正確に詳細を知る必要がある。これは消費者のみならず、運転手にも適用され、例えば、運行時間や詳細な位置情報といった交通データの取得には本人との同意が必要となる。また、得られたデータをサプライチェーン内の他の会社に転送する際には事前の同意が必要となる。例えば、電子商取引企業は顧客のEメールアドレスを追跡目的でCEP(宅配便・速達便・小包)サービス業者へ転送することはできない。

データ交換の際にはデータコントローラー(管理者)とデータプロセッサー(処理業者)間で契約を都度結ぶ必要があり、サプライチェーンパートナーも同法の規定に基づき契約に含まれることになる。物流企業は事業内のすべてのデータフローを文書化し、サプライチェーン上のあらゆる場面においてどのように情報が処理されるかについて詳細を提供する必要がある。ITサービスやクラウド上の保管も対象となるため、デジタルサービスの外部委託は複雑化する。

データ保護の観点で消費者からの信頼を失った場合、競合に市場シェアを奪われる恐れがある。GDPRの遵守は競争上の優位性になり得るとも捉えられている。

処分対象となった場合、2,000万ユーロまたは年間売上高の4%のどちらか高い額の罰金を科されることになる。

GDPRにおいて、「本人の同意」には高いハードルがある

データを収集する事業者はサプライチェーン上のあらゆる場面でデータ保護に責任を負う

違反は消費者の信頼を毀損し、財務面でも多額のコストを伴う

物流企業はサプライチェーンのあらゆる場面で個人情報の保護に対して責任を持つことになり、例えば、物流業者にとって重要な位置情報である「トラックの追跡」も対象になる。「本人の同意」のハードルは高く、罰則は極めて重い

GDPRの概要

Page 25: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

25

強み(Strength)

輸送業務に適した環境

世界銀行による輸送パフォーマンス指数で世界第1位(2018年)に相当するような、物流業者にとって適した環境が整備されている。なかでも、輸送の適時性、貿易および輸送関連のインフラ(道路、線路、積込ターミナルなど)や輸送サービスの質の高さが評価されている。

企業はデジタル化の必要性を認識

企業はデジタル化の必要性を認識しており、効率的なデジタル化、他の企業や機関とのネットワーク、関連イベントへの参加に対して積極的である。

弱み(Weakness)

市場が細分化されており、業界全体での取り組みは困難

断片的な市場により、リソースの共同利用等、業界全体の最適化に向けた取り組みは前途多難とみられる。

デジタル化に後れを取る中小企業の割合が高い

中小企業のデジタル化能力は低く、ソフトウェアの利用度合いは大企業に大きく後れを取る。より多くの企業をデータ連携基盤に参加させるには時間を要する。

大手によって引き起こされる価格競争

AmazonやZalandoのような大手電子商取引企業は自前の物流ネットワークを拡大し、ラストマイルや都市部における輸送産業を熾烈な価格競争へ追いやっている。

機会(Opportunity)

電子商取引の拡大

堅調な内需と電子商取引市場の拡大を背景とした受注増により、業務効率化への意識が高まるとともに、物流産業の成長機会が創出されている。

脅威(Threat)

高い都市化率と、都市部の配送に配慮した法律の欠如

ドイツでは、都市の過密化が駐車スペースや積載スペースの不足に繋がり、都市部におけるラストマイル問題を深刻化させている。また、都市部の配送に配慮した法規制が不足している。

ブロードバンドインフラの弱さ

ブロードバンド契約に占める光ファイバの契約割合が2%と他の先進諸国(OECD平均:23%)に大きく後れを取っているなど、デジタル化に適した環境が整備されていない。政府は社会をデジタル化する取り組みを後回ししてきたとの批判がある。

GDPR法を巡る不透明感がデータの円滑な流通を妨げる要因に

2018年5月に施行されたGDPR法を巡っては、解釈の余地が広く、業界に強い不透明感を齎している。罰則の重さもあり、企業はデータの取り扱いに慎重になっており、物流データの円滑な流通を妨げる要因になっている。

プラス要因 マイナス要因

内部環境

外部環境

これまでドイツの物流は世界的に見て高い効率性を発揮してきた。ただ、今後、更なる効率化を目指し、業界全体のスマート化を進めていく上では、社会全体のデジタル化の後れや断片化した市場など大きな障壁がある

物流業界のSWOT分析

Page 26: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

26

スマート物流を進めるにあたって、特に農村部におけるブロードバンドインフラの整備は緊急の課題であ

り、政府も予算を割り当てて優先的に対応する構えを見せている。都市部では、過密とそれに伴う問題が

ラストマイル問題を深刻化させている

物流業界のギャップ分析

• 政府はデジタルインフラの優先度を引き上げ、2018年には24億ユーロの予算を同分野に新たにあてた。

• ブロードバンド5Gネットワークの拡大に向けて100~120億ユーロを投資。

• インフラ改善を目的として電気通信業者に対する規制を導入。

供給側 需要側ギャップ

デジタル

インフラの観点

インフラ

の観点

データ連携基盤

の観点

• 光ファイバー接続のブロードバンド契約はわずか2%であり、農村部においてはデッドスポットが多い。

• サプライチェーンに関わる企業は多様化する配送ニーズへの対応としてデジタル化で業務効率の改善を図っている。

• 製造業者はサプライチェーンのリスク管理のためにOEM(相手先ブランド製造業者)とリアルタイムで通信。

• 物流企業は積載場所の利用状況改善に向け、トラックの追跡と到着予定時刻をリアルタイムで伝達。

• 政府がデジタルインフラに関連する取り組みを着実に履行することが期待される。

• 深刻化する都市の物流問題に対する政府の努力は不十分。産業界からは以下の要望がある。

• 政府はスマートシティへの投資を拡大させるべき。

• 政府は物流企業の視点を都市計画に取り入れるべき。

• CEP(宅配便・速達便・小包)サービス業者は経路を計画し都市部の交通渋滞に柔軟に対応する必要がある。

• 返品配送の増加により、配送の柔軟性や消費者に近い場所での倉庫保管の必要性が生じている。

• 駐車・積載スペースの不足がドライバーの荷待ち時間の増加を引き起こすなど、都市の過密とそれに伴う物流スペースの確保のしにくさが輸送業務の効率性低下に繋がっている。

• データ共有を巡る懸念に対し、政府は企業向けにユースケースを用いたトレーニングを行っているが、現時点で成果は限られている。

• 積載能力超過などのデータ共有が価格再交渉のきっかけとなり競争上の不利益をもたらすとの懸念がある。

• 大企業と中小企業の間でデータを購入する資金力に大きな差があることについて、議論の俎上に載せられるべきとの声がある。

• 大量の位置情報を取得しつつも、利用方針が不明瞭な一部の大企業に対する懸念が存在(例:Google)。

• データ共有を巡る競争上の懸念が根強く、データ連携基盤の発展を妨げている。

Page 27: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

27

物流スマート化は、一部の主要企業によって、自社レベルと業界レベルで進められている。政府は市場経済への介入に慎重であり、自らの役割を、インフラ整備と自由市場でのソリューションの発展を促進することへ集中させている

スマート物流を巡る主要な動向

主要企業はサプライヤーの垂直統合を進めており、特に自動車産業のOEM(相手先ブランド製造)において顕著である。しかし、主要企業以外の多くの企業は垂直統合に必要な資金を持ち合わせておらず、取り残されている。

物流業界では、企業は自前のプラットフォームや自社内で開発された情報共有システムを利用しており、情報が分断化されている。統合が容易なIoTプラットフォームや、規模拡大が容易なモジュール式のソリューションに対するニーズがある旨がヒアリングで聞かれた。

一部大手企業は、業界団体等が運営するインダストリー4.0に係る取り組みに参加し、業界標準化やデータ共有の可能性を模索している。

連携・統合(民間)

政府はインフラ整備の他、ユースケースやベストプラクティスの共有を通じた意識改革において、主導的役割を果たしている。後者については、企業にデータ共有を促すため、連携することによる具体的な利点を認識させつつ、投資リターンの時間軸への理解を広めようとしている。

政府は、公平性の観点から、市場経済への深入りを避ける傾向にある。インダストリー4.0を巡る政府の取り組みのほとんどは、広く開かれた取り組みに対する、研究用の資金援助である。

ドイツにおいて、公的機関のデータ公表は自由市場の公平な競争の観点から適切ではないと考えられている。なお、フランスでは、2016年に施行されたLa loi pour une République numériqueにより、公的機関のデータ公表が義務付けられ、オープンデータ化が大きく進捗した。

連携・統合(政府) 中小企業向け支援

デジタル化を巡っては、資金力や投資回収期間の限界、人材などの面で、大企業・中小企業間には著しい格差が存在するが、それを緩和するための中小企業向け支援が為されている。専門家による助言やプラットフォームへのアクセスを目的とした資金支援などがある。以下、具体的な措置となる。

連邦経済エネルギー省は、Central Innovation Programmefor SMEs (ZIM)と呼ばれる、革新的な中小企業を支援する中心的な取り組みの中で、中小企業のインダストリー4.0に関する研究や取り組みを資金面でサポートしている。

同省はまた、ミッテルスタンド・デジタルという、中小企業のデジタル化の無償支援も実施。特に、ミッテルスタンド4.0と呼ばれるプログラムでは、個々の企業に対し、デジタル化の現状把握から、ロードマップ作成、実行までをマンツーマンでサポートしている。

連邦経済技術省及び連邦教育研究省が資金援助をする、産業界主導の標準化に向けた取り組み、Labs Network Industire 4.0は、中小企業をプラットフォームに取り込むべく、中小企業に対してテストベッドを提供し、ユースケースを蓄積している。

政府は2018年8月、特定の機関を設立し、技術革新の初期段階において小規模企業が買収されることがないよう支援する旨を発表した。

Page 28: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

28

民間 詳細 公的機関

インダストリアル・データ・スペース協会(加盟企業:Audi、

Bayer、Bosch、Huawei、CAICT、SAP、

Siemens、Deutsche Telekom、Volkswagen

他)

インダストリアル・データ・スペース協会(以下IDSA)は、2014年に活動を開始した、オープンなデータ・スペース向けITアーキテクチャであり、企業が安全にデータの交換・結合ができるようにすることを目標としている。同協会はデータの匿名化、統合サービス、「有効期限」の管理といったサービスを提供している。

最大の強みは、データ保有者がデータを十分に管理できているという感覚を持っている点であり、これが企業による自発的な取り組みを促進している。

アーキテクチャの研究は独フラウンホーファー研究機構が主導しているものの、インダストリアル・データ・スペース(以下IDS)は設立当初から国際的なプラットフォームとして想定されている。複数のIDSAハブがヨーロッパの複数の国に存在しており、IDSAはそれらハブを通じて概念を各国に広め、新たな会員を獲得し、そしてユースケースを作成している。IDSのコア技術はヨーロッパの複数の研究技術組織(Research and Technology Organisation、以下RTO)によって保護されており、RTOはIDSに関する作業部会に参加して互いに情報交換を行っている。

デジタル主権の原則に基づき運営されている。

フラウンホーファー研究機構(公的研究機関)、連邦教育科学研究技術省(資

金援助)

プラットフォーム・インダストリー4.0(加盟団体:BITKOM、VDMA、

ZVEI他)

インダストリー4.0の名の下に、皆でデジタル化を進める際の前競争領域における研究を目的とした取り組みが民間主導で開始され、ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)、ドイツ機械工業連盟(VDMA)、ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)の業界団体*1により、 プラットフォーム・インダストリー4.0が2013年に創立された。

プラットフォーム・インダストリー4.0は以下の事項に重点を置いている。o 有志の民間企業によるネットワーク作りと学習促進のためのプラットフォームの提供。o 業界の専門家による標準化の支援*2。o 国際化戦略の支援:ドイツ企業と海外パートナーとの協力関係の促進や、海外企業のイン

ダストリー4.0への誘致。

連邦経済技術省及び連邦教育研究省(資金援

助)

Deutsche Bahn、各地の交通当局

mCLOUDは連邦交通デジタルインフラ省が収集した公表データのアクセスポイントであり、物流業者はオンラインで輸送に関する静的データにリアルタイムでアクセスすることができる。

データはユーザーが保有するアプリケーションに統合することが可能だが、データ保有者は管理を継続できる。

キーワードによる検索機能を有する。ダイレクトリンクやユーザーが保有するアプリケーションへの動的統合を通じてダウンロードが可能。

企業はデータのダウンロードには興味を示しているものの、アップロードには消極的である。結果的に、同プラットフォーム上のすべてのデータは、これまでも別の場所から入手可能だったものに限られている(交通データ、気象データなど)。

連邦交通デジタルインフラ省

官民産学の多様な関係者が絡み、業界団体等が運営するゆるいナレッジシェアリングのグループが存在。その中で、企業同士が連携してスマート化の可能性を追求している

スマート物流に関する官民の協力

*1:BITKOM、VDMA、ZVEIに加盟する企業は、合計6,000社以上。*2:Standardization Council Industrie 4.0とLabs Network Industrie 4.0が設立され、産業の標準化が進められている。前者は専門家や国内外の規格化機関等と連携を取りつつ規格の調整・設定を担当。後者は、中小企業への適用可能性の検証やユースケース作成、テストベッド運用を行う。

Page 29: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

29

ケーススタディ

© Euromonitor International

• インダストリー4.0デジタル化のあらゆる側面とあらゆる産業を含む「新製造プロセス」の社会実装化であり、その影響力はなお未知数

• インダストリアル・データ・スペース協会

民間部門主導でデータ交換アーキテクチャの設立を促す

• DHL/アクセンチュアブロックチェーン技術を物流に導入

Page 30: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

30

Ind

ustr

y 4

.0Industrie 4.0

インダストリー4.0の9つの柱

自律型ロボット

3Dプリンター

水平・垂直統合

シミュレーション

拡張現実(AR)

モノのインターネット(IoT)

クラウドコンピューティング

ビッグデータ、ビッグデータ分析

サイバーセキュリティ

サプライヤー

物流

コンピューター・サーバー

クラウド

センサー

インダストリー4.0

デジタル生産

物理的な生産ロボットとのコミュニケーションを

行う人間

カスタマイズされた製品

バーチャルプロダクション

スマート製品

インダストリー4.0とは、デジタル化と機械同士の相互連携を加速することによって実現される、製造プロセスの変質である。新たな製造プロセスの下では、製造の高速化、サプライチェーンの効率性と柔軟性の向上が可能となる。また、製造過程で生み出されるビッグデータは企業に更なる成長機会を齎す。

インダストリー4.0の概念は、9つの主要な技術的柱に基いている。 業界の専門家は、政府のインダストリー4.0を巡る取り組みのほとんどが研究活動

支援に集中している旨を指摘している。企業間のデジタル化格差は残されたままであり、この分野の先駆者は大手企業に限られている。

ドイツの国策であるインダストリー4.0は、デジタル化のあらゆる側面(ロボット工学、IoT、クラウドコンピューティングなど)とあらゆる産業を含む「新製造プロセス」の社会実装化である。政府は主に研究用の資金援助を通じて関与している

ケーススタディ①:インダストリー4.0

Page 31: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

31

機関名称 インダストリアル・データ・スペース協会

本部所在地 ドイツ・ドルトムント

地理的カバレッジ 欧州連合内の18カ国

ウェブサイトのURL

https://www.internationaldataspaces.org

主な事業内容国際規格化を視野に入れた、信頼性の高い、データ交換アーキテクチャの設立

主な情報

アーキテクチャが信頼ある独立系研究機関によって開発された点、ユーザーが自らのデータを管理し続けることが可能な点から、企業にとって参加の要件であるセキュリティに対する信頼が醸成された。

クロスセクター向けのプラットフォーム*1

組織の沿革

• 現在参加している企業・団体は業種を越えて90団体。• ユニバーサルなITアーキテクチャにより、業界をまたいだ利用が

可能となっている。• ドイツにおける製造業の存在感の大きさを反映し、物流分野にも

ユースケースが集中している。

• 国内で高い評価を得ている公的研究機関が開発したITアーキテクチャを利用することにより、業界から信頼を獲得することに成功。

• 業界団体からの資金提供を受けながら先進的な研究を行うことができる点が企業にとって魅力となっている。

信頼性の高いITソリューションにより、業界から信頼を獲得

信頼性の高いITソリューションは、業界内で信頼を築き、企業の参加を確実なものにするために重要

ケーススタディ②:インダストリアル・データ・スペース協会

*1:プラットフォーム・インダストリー4.0の重点分野が製造業であるのに対して、IDSAの取り組みは小売、銀行等を含めたクロスセクターに向けたものである。両グループは、類似するプロジェクトや取り組みについては、共同ワーキングチームを結成するなど、協力し合うことに前向きである。

主な特長

1. 2014年末、複数のアクターが、後に「IDSイニシアチブ」と呼ばれる非公式のグループに結束。

2. 2015年10月、フラウンホーファー研究所は、IDS研究プロジェクトのために連邦教育研究省から487万ユーロの政府資金を調達。プロジェクトは2018年4月までとされ、12のフラウンホーファー研究所が参加。

3. 2016年以降、「IDSイニシアチブ」が協会として正規に登録され、以後、「インダストリアル・データ・スペース」と呼ばれる。設立メンバーは次の通り:PwC、KOMSA AG、SICK、Salzgitter、Volkswagen、Fraunhofer IML、Fraunhofer-Gesellschaft、thyssenkrupp、ATOS。組織名称は2018年11月、International Data Spaces Associationに変更される。

4. 「InDaSpacePlus - インダストリアル・データ・スペース・プラス:インダストリアル・データ・スペースに基づくビジネスエコシステムにおけるデータ主権のためのアーキテクチャトポロジ」と呼ばれる別の研究プロジェクトが連邦教育研究省によって承認される。支援額は494万ユーロで期間は2020年9月までとされた。

Page 32: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

32

ThyssenKrupp Steelによる国内物流分野での取り組み

• 配送トラックのリアルタイム追跡により、トラックの積載・搬出時間を最適化し、アルゴリズムを用いて輸送ルートや交通渋滞に柔軟に対応。

Audi及びBoschによるサプライチェーンリスク管理

• Boschの工場が生産能力の余剰分をAudiとリアルタイムで共有することによって、Audiが状況に合わせて他社の生産能力を利用できるようになった。

• データの共有を一時に限定することにより、競合相手によって中長期的に生産能力を分析されるリスクを防止した。

Logistics Community*1の主な目標

1. IDSを物流分野に適用させる。具体的には、IDSの一般的な参照アーキテクチャをダウンロードし、変更を加えたりしながら物流への適用を各自で試みる旨、IDSが具体的にどのように利用されたかを示すユースケースを作る旨、IDSの適用を促進するためのポジションペーパーを作成する旨、データの利活用に着目したビジネスモデルを考案する旨をそれぞれ取り組みとして挙げている。

2. IDSユーザー同士を繋げる。IDSの導入、利活用に関するベストプラクティスをプレゼンテーション等を通じて共有することで、メンバー同士の協力関係を促す、としている。

3. 業界を研究活動に巻き込む。業界にとっての実際的な要件の特定と、研究結果に対する評価と業界への普及を具体的な成果として想定。

物流業界からの参加者は限られる。同協会において、物流関連の取り組みを主導するのは製造業者

ケーススタディ②:インダストリアル・データ・スペース協会(続き)

*1:2018年11月20日時点においてメンバーは10団体(うち6団体は民間企業)。ただ、物流企業はDB Schekker1社のみ。最大手のDHLはIDSA自体に参加していない。

物流分野のユースケース

Logistics Communityの取り組みや物流分野のユースケース作成は主に製造業者によって為されている。物流ニーズが高度化・増加する中、物流業者はドライバー不足や都市の混雑などのオペレーション上の問題解決が最優先事項となっており、デジタル化、ひいては物流革新への意欲は高くない。

Page 33: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

33

ブロックチェーン導入の最大の利点は、サプライチェーン全体の透明性を高めることにより、コスト低下と安全性の確保を実現できることである。

主な特長

• ブロックチェーンは、データと取引を記録、管理、認証する新しい種類のデータベースシステムである。 サプライチェーンの中で各製品には固有の識別子が割り当てられ、最終消費者は全取引履歴を確認することが可能になる。すべてのステークホルダーはそうした一連の情報をリアルタイムで参照することができ、これが履歴の改ざん、変更、または削除に対する障壁となり、データの真正性を担保する。

• それぞれの医薬品を追跡する帳簿は、製造業者、倉庫、流通業者、薬局、病院、医師を含むすべての関係者と共有される。サプライチェーンのすべての参加者が医薬品の製造元と流通経路を把握できる。

• 世界保健機関(WHO)は、年間730億ユーロ相当の偽造医薬品が取引されていると推定している。発展途上国では状況がより深刻であり、アフリカ、アジア、南アメリカの特定の地域では流通している医薬品の30%以上が偽造品とみられている。

• 偽造者は、真正品よりも低コストで、有効成分をほとんどまたは全く含まない、あるいは違う成分を含む類似の製品を製造している。

• 電子商取引小売業の拡大が偽造医薬品問題の深刻化に拍車を掛けている。所在地が不明なオンライン薬局は、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、米国など、世界中の消費者に製品を届けている。

• シリアル化:製造業者は各製品に固有のIDを割り当て、その製品がDHLに引き渡されたことを確認する。

• DHLは商品が倉庫に到着したことを確認し、情報を更新する。

• 倉庫では、カートン、箱など、すべてのプロセスが追跡される。

• 倉庫は箱が送られたことを確認する。

• 受取人による確認:受取人が配達と製品の真正性を確認。真正性は、集約された情報の一致に基づいて確認される。

偽造医薬品は健康被害や経済的損失の問題を引き起こしている

ブロックチェーンによるソリューション

製造業者

入荷

ピック&パック

出荷

目的地

ブロックチェーンはサプライチェーン全体の透明性を高め、市場から偽造品を排除する可能性を持つ

ケーススタディ③:DHLとアクセンチュアによるBC技術を用いたモデル

Page 34: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

34

米国

Page 35: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

35

米国経済は内需主導で拡大傾向を辿る見込み。特に、GDPの約7割を占める個人消費が堅調に推移する中で、流通業者はイノベーションに絡むような前向きな投資を継続しやすいだろう

マクロ環境概要

*1: 弊社予測値(2019年1月28日時点)

指標 2018年 2023年*1 年平均成長率*1

人口(1000人) 327,719.6 338,113.0 0.6%

世帯数(1000世帯) 127,180.9 131,659.7 0.7%

GDP(PPPベース、10億Intl.$)

20,504.6 24,741.2 3.8%

実質GDP成長率 2.9% 1.6% 1.8%

実質民間最終消費支出成長率

2.7% 1.7% 2.0%

1人あたり可処分所得(米ドル)

46,498.2 54,832.7 3.4%

インフレ率 2.4% 2.0% -

Page 36: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

36

主要分野別オンライン小売業界の成長(百万米ドル) オンライン小売業界の競合状況(2018年)

4,444億米ドル

オンライン小売販売総額

(2018年)

3兆2,541億米ドル

小売販売総額

(2018年)

15.7%

オンライン小売販売額予測の年

平均成長率(2018~2023年)

13.7%→22.2%

オンライン小売の普及割合

(2018年→2023年)

0

100000

200000

300000

400000

500000

600000

2013 2018 2023

衣料品・靴 家電製品

家庭用エレクトロニクス製品 食料品・飲料

メディア製品 鞄・装飾品

その他

52.50%

6.20%

4.50%

3.50%

1.90%

31.40%

Amazon.com Inc eBay Inc Walmart Inc

Apple Inc Macys Inc Others

インターネット小売市場は他の先進諸国と比べて急速なペースで拡大し続けると予想される。市場は、Amazon.comが半分強を占めて1強状態だが、2位以下のeBay、Walmartなどの市場シェアはいずれも1割未満となっており、混戦模様である。熾烈な競争はほとんど米国企業によって引き起こされている

電子商取引市場

Page 37: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

37

米国郵便公社

• 米国郵便公社(USPS)は、米国市民に質の高いサービスを提供できる、先進性と機敏性に優れた企業を目指している。

• 同社の配送先は 1億5,700万箇所余りに上り、米国のすべての州、市、町を網羅。

• United Parcel Service(UPS)は、物流業界における世界的なリーダー。

• 貨物輸送、国際貿易のサポート、高度な技術の導入などの幅広い物流ソリューションを提供。

• 220以上の国と地域にサービスを提供。

• FedExは輸配送、電子商取引、関連ビジネスサービスといった幅広い事業ポートフォリオを持つ。

• 世界中で40万人以上の従業員を抱え、220以上の国と地域にサービスを提供。

• Amazonは、ラストワンマイルへの取り組みとして様々なビジネスモデルを試みている。

• 2018年7月には「配送サービスパートナー」プログラムを開始し、地域の起業家が20~40台のトラックで配送会社を設立することを支援している。

United Parcel Service

FedEx Corporation

Amazon.com, Inc

民間大手企業は、世界中で高いレベルの総合物流サービスを提供。世界各地において物流の発展に大きな影響力を持つ

物流業界の主要企業

Page 38: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

38

1

2

32018年郵便改革法(H.R. 756(下院)・S. 2629(上院))

連邦政府および議会は、連邦政府の財政負担を減らすべく、業績悪化が続いている米国郵便公社(USPS)のビジネスモデル見直しに着手している。具体的には、USPSの民営化、配達日の削減(現在の週7日から6日へ)、農村部における集合型郵便受け(クラスターボックス)の利用、価格設定や賃金交渉を巡る管理の柔軟化などが検討されている。

クラウドスマート戦略は、クラウドコンピューティングの導入促進を目的に導入され、連邦政府機関が新規投資を行う際に、クラウドコンピューティングの利用を安全面とセキュリティ面から評価し、選択肢として検討することを定めている。

連邦政府機関は2015年会計年度以降、ブロックチェーン関連プロジェクトに対して、840万米ドルを資金提供している。国土安全保障省による投資が目立ち、 偽造防止ソリューション開発を目的としたブロックチェーン関連スタートアップ企業への資金提供は80万ドルに及んでいる。

クラウドスマート戦略(2018年)

連邦政府機関によるブロックチェーンの採用

米国は「小さな政府」で経済全体のコスト効率改善とイノベーション創出を目指している。政府は、中国やドイツと異なり、民間部門と協調してデータ連携基盤を構築することに関心を持っておらず、民間のサービスを自ら積極的に利用していく方針を打ち出すことにとどまる

物流業界に対して影響力のある政策・法規制

Page 39: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

39

強み(Strength)

世界的なリーダーによって産業の新陳代謝が促されやすい

世界中で幅広い物流サービスを展開する、世界的大手が多く存在している。それらの企業は世界各地で絶えず競争に晒されているため、事業の新陳代謝が図られやすく、米国物流産業全体も恩恵を受けやすい。

企業は研究開発とイノベーションの重要性を認識

民間大手(Amazon、UPS、FedEx)は業務のリアルタイムでの自動化、最適化の重要性を認識しており、研究開発やイノベーションに対する投資に積極的。

USPSの事業改革は業界の活性化要因

大手輸送企業USPSは事業改革の中で電子商取引向けの輸送事業を拡大。特に、中小規模の電子商取引小売業者が低コストの水平協調型の連携を通じて恩恵を受けている。また、USPSの持つラストマイル配送網は、Amazonなど民間との事業連携を背景に効率化が図られており、ラストワンマイル問題の解消に寄与する見込み。

弱み(Weakness)

企業は自社単独の研究開発を志向、業界全体では非効率に

企業は独自に研究開発を行う傾向があるため、企業間で取り組みが重複しやすい。ドイツのように他社と協力的に開発を進める場合に比べ、効率は低い。

業界の志向する垂直統合は高コスト、企業間格差が拡大

業界では多額の投資費用を必要とする垂直統合型物流モデルが普及しており、統合を推進できる一部の中堅企業と大企業と、資金力に劣る大部分の中小企業との格差が拡大している。特に、ラストマイル配送の領域では大手企業による寡占化が顕著である。Amazonの1時間配送サービスは中小企業にとって採算面で持続不可能である。

機会(Opportunity)

電子商取引市場の拡大

米国における電子商取引市場は、2018年から2023年にかけて年平均15.7%のペースで拡大すると予測されている。物流業界は大きなビジネスチャンスを享受できる。

RFID等の技術の実装コストは低下傾向

物流業界において、RFID(ICタグ)、RTLS(リアルタイム位置情報システム)、ZIGBEE、GPS、BLE(Bluetooth Low Energy)などの追跡・自動化ツールは高コストを主因に実装化に到っていない。ただ、開発が進む中で、実装コストは徐々に低下してきている。

脅威(Threat)

政府は業界の標準化に無関心

米国政府は業界の標準化やデータ連携基盤を主導することや民間の技術開発を支援することに対して強い関心を持っていない。例えば、中国やロシア、カナダでは政府がブロックチェーン技術の開発に多額の資金を投じている。民間による自社単独の研究開発に大きく依存する米国は、上記の国に対して技術面で後れを取る可能性がある。

プラス要因 マイナス要因

内部環境

外部環境

世界的な物流総合大手が集まっており、そうしたプレーヤーの存在によって産業の新陳代謝が促されやすい。他方、各社は垂直統合を強く志向し、水平連携への関心が薄い。マイナス面としては、業界レベルでの資源の最適分配や協調によるシナジー効果といった機会の損失、企業間の格差拡大等の問題が起こりやすい点が挙げられる

物流業界のSWOT分析

Page 40: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

40

多くの企業にとって、業務システムは近代化や統合という面で課題を抱えている。また、即日配送などの

高いレベルのサービスを米国全土において提供するために、サプライチェーンを最適化する必要も生じて

いる

物流業界のギャップ分析

供給側 需要側ギャップ

ソフトウェア

の観点

サプライチェーン

の観点

• SAP、Oracle、およびIBMなどのソフトウェア業者は、物流業者のインバウンド、アウトバウンド、倉庫管理など各段階間の連携・統合を促進すべく、オーダーメイドのアプリケーション開発に取り組んでいる。

• UPSやFedExなどの輸送業者は、消費者のラストマイル配送ニーズに対応するために、マテリアルハンドリングや注文処理、出荷業務の自動化などの効率化を継続的に行っている。

• 一部の電子商取引企業は、RFID、音声によるピッキング、拡張現実などの技術を倉庫管理に適用し、ピッキングや梱包作業を合理化し、リードタイムの目標達成を試みている。Amazonは、より速い配達ニーズに対処するためにフルフィルメントサービスの改善と流通センター拡大に対して多額の投資を続けている。

• FLEXEによる倉庫需給のマッチングサービスなど、クラウドベースのプラットフォームを利用する中小企業が増加している。

• 物流業者の利用しているアプリケーションの多くは十分に近代化されておらず、グローバルな物流を相互に連携・管理することに適していない。また、そうしたレガシーアプリケーションの運用、更新、保守コストは高く、競争力低下を齎している。

• 米国の消費者、特に都市部のミレニアル世代は、オンライン注文の迅速な配送を求めている。消費者は異なるチャネルを利用しつつも、迅速で一貫したサービスを期待している。例えば、買い物客はオンラインで商品を注文し、小売店で商品を受け取り、電話、電子メール、またはチャットでサービスを要求したりする。

• 電子商取引の急成長と利用者ニーズの高度化に対応するために、物流業者はデジタル統合、自動化を加速させる必要に直面している。

• 一部の企業はグローバルな取引、輸送、在庫の可視化、注文履行などのオペレーションを統合するも、複数のベンダーのアプリケーションを利用しているため、市場ニーズへの適応力に課題を抱えている。

• 大規模な人口密集地域、農村地域などあらゆる場所において、より迅速な配送を実現するために、企業は流通センターやテクノロジーへの投資、FLEXE等のプラットフォームの利用などの努力を続けていかざるを得ない状況にある。

• 消費者のニーズが多様化し、サプライチェーンが複雑化する中、企業はビジネス機会を最大化するべく機敏に行動する必要がある。それにはバリューチェーンやビジネスモデルの見直しも含まれる。

Page 41: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

41

OracleやSAP等のERPベンダーが、社内の各部門、サプライヤー、物流業者、販売業者、最終消費者の間でリアルタイムの情報共有を可能にするプラットフォームを提供しており、 米国企業は、業務プロセスの合理化を推進している。

UPSやFedEx等の輸送会社は、自動化やリアルタイムのデータ分析による配送最適化に取り組んでいる。

連携・統合

Amazon Primeは人口密度が高い地域において2時間以内の無料配送サービスを段階的に拡大している。高級スーパーWhole Foodsの食料品も配送対象になっている。

UPS、FedEx、DHL等の輸送会社は、即日配送に対する需要の高まりに対応すべく、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を用いたリアルタイムの調整ソリューションの改善に常時取り組んでいる。

即日配送

USPS、UPS、およびAmazonは、顧客の荷物受取時間の柔軟化につながる、宅配ロッカーのネットワークを拡大している。

Amazonは2017年、集合住宅に設置する宅配ロッカー「TheHub」を導入し、顧客が好きな時間帯に大型荷物の受取を行うことができるようにした。

USPSは2018年、電子宅配ロッカー「goPost」を開始し、顧客が24時間、指定の場所において荷物の受取を行うことができるようにした。

宅配ロッカー

米国国土安全保障省は2018年、入国審査の際に機器から収集されるデータの完全性を証明するためのブロックチェーン開発事業を発注。

米国食品医薬品局(FDA)は2017年、提携病院との間で特定の医療データをリアルタイムで共有することに向け、ポータブルインタラクティブデバイスのリアルタイムアプリケーション(RAPID)*1に関する公募市場調査通知(Sources Sought)*2を公表。

政府の民間発注

民間部門は、垂直統合やスマート化を通じ、独自で物流の合理化を進めている。米国政府は軍事や国境管理などのオペレーションを効率化するためにブロックチェーンやクラウドコンピューティング等の技術に関心を持っているものの、業界内での役割は民間部門の「顧客」にとどまる。結果的に、業界全体を巻き込んだ動きは起こりにくい

スマート物流を巡る主要な動向

*1: 医療データの安全性と患者の転記を保護するために開発された、クラウドベースのカスタマイズ可能なブロックチェーンシステム。*2: 政府機関は調達プロセスの初期段階において、Source Soughtを発行し、特定の製品に対する関心を公に示す。

Page 42: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

42

民間 詳細 公的機関

Amazon他、電子商取引業者

USPSは2017年、Amazonなどの電子商取引小売業者からの受注により、195億米ドルを生み出した。

USPSは2013年、Amazonとの契約に基づき、日曜配送サービスを開始した。

Amazonにとって、連携相手であるUSPSの役割はラストマイル輸送の提供。

USPS

Oracle

Oracleは連邦政府機関向けのクラウドソリューション「Oracle Federal Cloud」を開発。この中には、物流クラウドシステムが含まれており、コスト削減、オペレーションの柔軟性と機敏性向上をもたらす。

連邦政府機関

IBM

Army Logistics Support Activity(兵站支援業務、LOGSA)は、世界規模の装備品調達及び流通分析のための情報を統合している。適時の先見的な意思決定をサポートするため、軍資産の可視化を実現している。

LOGSAはスマート物流、ライフサイクル支援、技術助言、現有部隊および将来部隊に対する特定業務の支援を提供している。

米国陸軍

SAP SAPは、グローバル戦闘支援システム(GCSS)や物流近代化プログラム(LMP)の物流データを分析・処理するERPを開発。

米国陸軍

米国においては、公的部門と民間部門は「消費者」と「サービス提供者」の関係であり、政府が企業と協調して業界発展を主導していくような動きはない。クラウドスマート戦略の導入もあり、政府部門では行政のスマート化が一層進むとみられるが、これが間接的に産業のデジタル化を促進するとみられている

スマート物流に関する官民の協力

Page 43: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

43

ケーススタディ• USPS

Amazonとの連携はUSPSの業務効率化を促し、両者にとって高いシナジー効果をもたらす可能性がある

• Amazon垂直統合型プラットフォームを国際展開

• FLEXE「倉庫のAirbnb」は差別化を重視し、協調志向は希薄

© Euromonitor International

Page 44: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

44

企業名 USPS-連邦政府機関

本社所在地

470 L'Enfant Plaza SW Ste 604, Washington, DC 20024(米国)Amazon:410Terry Ave N,Seattle,WA98109(米国)

地理的カバレッジ

米国全土

ウェブサイトのURL

www.usps.comwww.amazon.com

主な事業内容 電子商取引、ラストマイル配送

主な情報

USPSとAmazonの提携は、民間部門(Amazon)の革新性やノウハウと、公共部門(USPS)ならではのラストマイル配送ネットワークを併せ持つことになり、高いシナジー効果を発揮する可能性がある。

USPSの小荷物配送事業は2桁成長

主な特長

USPSは2017年、Amazonからの受注により102億米ドルを生み出した。荷物配送量ベースでは、2015年の45億個から2017年には57億個にまで増加させた。

USPSは、AWSを用いて業務を最適化できる可能性

専門家によると、USPSはアマゾンウェブサービス(AWS)などのクラウドコンピューティング物流プラットフォームを整備することにより恩恵を受ける可能性がある。物流やラストマイル配送の分野でAmazonのノウハウが発揮されると見込まれる。

将来、幅広い分野で物流サービスが改善する可能性も

USPSが現在取り扱い可能なパッケージのサイズと重量はそれぞれ、長さ27インチ×幅17インチ×高さ17インチ以下、25ポンド以下に限定されている。今後、事業改革が進み、議会の承認を経て大型荷物や重量品が取り扱い可能となれば、幅広い製品においてラストワンマイル配送の改善が見込まれる。

Amazonとの連携は業務効率化を促し、高いシナジー効果をもたらす可能性

ケーススタディ①:USPS

Amazonにとっては、ラストワンマイル問題を改善する機会

Amazonは他のプレイヤーと同様、ラストマイル配送ニーズの増大と高度化に対する対応に課題を抱えている。Amazonにとって、公的部門ならではの広大なラストマイル配送網を有するUSPSとの連携は、ラストワンマイル問題の改善を見据えたものである。Amazonは2017年に米高級食品スーパーのホールフーズを買収したが、その目的もラストワンマイル問題の改善にあると言われている。

Page 45: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

45

企業名 Amazon.com, Inc.

本社所在地410 Terry Avenue NorthSeattle, WA 98109United States

地理的カバレッジ

米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、欧州連合、オーストラリア、中国、インド、日本。従業員数は64万7,5000人。1994年設立。

ウェブサイトのURL www.amazon.com

主な事業内容

Amazon.comを運営し、世界的に消費財の小売販売や定額配信サービスを展開

主な情報

Amazonは、顧客のサプライチェーン、輸入及び物流プロセスを改善することを通じ、eコマースの国際展開を更に推進しようとしている。しかし、Amazonは、水平型プラットフォーム上での他社との連携、ましてや開かれたデータ連携基盤の構築に対しては、他の米国企業と同様、関心を持っていない。革新的サービスの提供を実現するためには、スタートアップを買収する傾向がある。

Amazonのサービス

主な特長

Amazonは欧州と北米で共通のアカウントを提供しており、ユーザーは同じアカウントで複数の海外Amazonサイトにアクセスすることができる。一方、APACでは共通のアカウントはなくサイトごとに個別のアカウントを持つことが必要。

Amazonの強み

Amazonは顧客に対し、大量の時間やリソースを費やすことなく未進出の市場を試すことができる優れたソリューションを提供している。 顧客は、製品をどこで展開するかを決定、フルフィルメント業務を選択し、Amazonが発送や返品に関わる業務をサポートする。

Amazonの日本での強み

日本の消費者は即日配達か翌日配達かを選択でき、荷送人はAmazonのフルフィルメントサービスを利用することで対応が可能。荷送人は在庫をAmazonの日本の配送センターに保管することができ、Amazonは商品のピッキング、梱包、出荷を行う。

Amazonグローバルセリングは垂直統合モデルを積極的に国際展開

ケーススタディ②:Amazon

Page 46: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

46

企業名 Flexe, Inc.

本社所在地

159 South Jackson StreetSuite 420Seattle, WA 98104

地理的カバレッジ

米全土で約1000の倉庫ネットワークを有する。従業員数は60人。2013年に操業開始。

ウェブサイトのURL www.flexe.com

主な事業内容クラウドベースの倉庫サービス

主な情報

FLEXEは、クラウド上で倉庫市場を提供している。この市場は、垂直型プラットフォームの下で運営され、顧客と倉庫業者を結び付けている。FLEXEは他のプラットフォームプロバイダーとの差別化を重要視しており、ノウハウや情報を競合と共有することに対して消極的である。

FLEXEのサービス

主な特長

FLEXEは、追加の倉庫保管およびフルフィルメントサービスを必要としている企業と、倉庫の空きスペースを抱える企業をクラウド上でマッチングさせるサービスを運営している。FLEXEは小売業者、卸売業者、製造業者、および物流会社に対してサービスを提供している。

FLEXEの強み

FLEXEが提供するサービスによって、小売業者は在庫問題の解決を、倉庫運営者はスペースの稼働率改善を、長期契約や設備投資、固定費なしに図ることができる。

FLEXEの顧客、カバレッジ

FLEXEは多様な顧客に対してサービスを提供しているが、特に、Amazonとの差別化を必要とする、ニッチなプレミアム市場の専門小売店から強い支持を得ている。小売店が翌日配達のサービスを提供するには、全国に16~20の施設を持つ必要があり*1、比較的小規模な専門小売店はFLEXEのプラットフォームで拠点の不足分を補っている。中期的には国際展開も視野に入れている。しかし目下は、特に競合他社との差別化などによって米国で事業を拡大することに集中している。

「倉庫のAirbnb」は競合との差別化を重要視、協調志向は希薄

ケーススタディ③:FLEXE

*1: FLEXE関係者とのインタビューに基づく情報。

Page 47: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

47

調査結果のまとめ及び日本の政策への示唆

要旨

Page 48: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

48

米国実質GDP成長率 (2018) 2.9%

総人口(000s) 327,719.6

総世帯数(000s) 127,180.9

一人当たり可処分所得 $46,498.2

電子商取引市場年平均成長率(2018-2023) 15.7%

ドイツ実質GDP成長率(2018) 1.6%

総人口(000s) 82,850.0

総世帯数(000s) 41,538.2

一人当たり可処分所得 $28,987.2

電子商取引市場年平均成長率(2018-2023) 9.2%

中国実質GDP成長率(2018) 6.6%

総人口(000s) 1,390,080.0

総世帯数(000s) 473,844.2

一人当たり可処分所得 $5,955.0

電子商取引市場年平均成長率(2018-2023) 14.9%

日本実質GDP成長率(2018) 0.9%

総人口(000s) 126,388.7

総世帯数(000s) 54,150.6

一人当たり可処分所得 $23,298.5

電子商取引市場年平均成長率(2018-2023) 9.9%

いずれの国でも電子商取引市場は急拡大しており、結果、物流ニーズの多様化・高度化が観測されている

各国のマクロ環境概要

Page 49: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

49

Amazon.comを筆頭に、eBay、Apple等の世界的大手企業が、米国、ドイツ、日本市場においては支配的な存在であり、それぞれサプライチェーン全体を巻き込んだ物流改革を主導している。

電子商取引小売業界における主要企業の市場シェア (2017)*

日本 中国 米国 ドイツ

Amazon.com Inc [26.0%]Alibaba Group Holding Ltd [41.0%]

Amazon.com Inc [52.5%] Amazon.com Inc [47.2%]

楽天 [17.4%] JD.com Inc [34.2%] eBay Inc [6.2%] eBay Inc [10.0%]

ソフトバンク [6.7%]Suning Commerce Group Co Ltd [4.1%]

Walmart Inc [4.5%] Otto Group [9.1%]

Apple Inc [4.2%]Vipshop Holdings Ltd [2.7%]

Apple Inc [3.5%] Apple Inc [3.2%]

ZOZO [3.3%] Pinduoduo Inc [2.3%] Macys Inc [1.9%] Zalando SE [2.9%]

Others [42.4%] Others [15.7%] Others [31.4%] Others [27.6%]

*N.B. 緑色のハイライト部分は、複数の市場において主要なプレイヤーである。

世界的大手の電子商取引小売業者が国境を超えて物流改革を牽引している

各国の電子商取引市場の主要企業

Page 50: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

50

世界最大級の海運・空輸のロジスティクス企業。1969年に設立され、ドイツに本拠を置き、ラストワンマイル・イノベーションの先駆者であり、世界の物流業界のデジタル化に大きく貢献している。

ドイツポストDHL

2013年にアリババグループによって設立。現在、4つの主要物流会社、70の航空会社、152の国を通じ、中国全土および東南アジアへの越境輸送サービスを提供している。

カイニアオ・スマート・ロジスティクス・ネットワーク

米国内でラストワンマイル輸送の大半を取り扱っており、多くの民間企業は同社との連携に業務を依存している。 現在、政府主導でビジネスモデルが見直されており、物流産業の活性化に繋がる可能性がある。

米国郵政公社(USPS)

中小企業の多くは、資金的制約を背景にイノベーションを主導できず、競争面で厳しい立場に置かれている。ただ、企業数では市場の大半を占め、また特定の分野では依然中心的役割を担っている。産業全体のスマート化を推進する上で、そうしたプレーヤーを取り込むことは重要な課題である。

小さなプレーヤー

多様なプレーヤーが産業発展の鍵を握る

物流業界の主要プレーヤー(米・中・独3カ国)

Page 51: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

51

中国政府はスマート物流産業の推進に向け、物流業の発展に関する中長期計画(2014~2020年)を策定し、LOGINKという全国規模のデータプラットフォームを確立した。 LOGINKはデータの標準化、データの交換、データベースの提供といった機能を持つ。

米国は「小さな政府」で経済全体のコスト効率改善とイノベーション創出を目指している。政府は、民間部門と協調してデータ連携基盤を構築することに関心を持っておらず、民間のサービスを自ら積極的に利用していく方針を打ち出すことにとどまる。

インダストリー4.0を主導し、インダストリアル・データ・スペースやmCLOUDの設立、中小企業のデジタル化支援、ユースケースやベストプラクティスの共有を通じた企業や消費者の意識変革などに取り組む。ただ、企業による自主的な改革を促し、実装化の段階には関与していない。

データ連携基盤を設立し、業界の標準化を積極的に主導

「小さな政府」:業界への関与は極めて限定的

インダストリー4.0の旗振り役。ただ、実装化を担うのは民間

物流改革の中で、政府の役割は国によって大きく異なる

スマート物流を巡る政府の役割(米・中・独3カ国)

Page 52: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

52日本の政策への示唆

中国、ドイツ、米国の調査結果に基づき、スマート物流に関する主要な課題について俯瞰し、

日本の政策への示唆について分析する

データ提供に伴うコストや諸々の懸念を払拭し、企業による自主的なデータ提供を促進させることが肝要。

データ共有を巡る意識

物流データの形式や管理方法の統一により、皆でデータを円滑に利活用することが可能に。

データの標準化

スマート物流のプラットフォームに繋がるためには、高速なインターネット接続環境と近代化されたデジタルシステムがまず必要。

デジタル化

スマート物流

Page 53: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

53課題①:デジタル化

スマート物流の中ではより多くのデータがより多くのプレーヤーの間で円滑に共有される必要があり、それには、多くの企業が近代化されたデジタルシステムを利用していることが前提となる。情報のやり取りを紙や旧式の電子システムに依存している企業は、大量の情報を吸い上げることや、情報の統一的な管理を行うことができず、スマート物流のプラットフォームに加わることができない。企業のデジタル化を遅らせる主な要因としては、高速・大容量なインターネット接続網の不十分な整備と、特に中小企業にとっては、資金不足や人手不足が挙げられる。ブロードバンドの全国的な整備と、デジタル化に後れを取る中小企業等への財務的・技術的支援が必要である。また、政府自らのデジタル化も産業全体のデジタル化を促すことができる。

ブロードバンドインフラが世界的に見て強い日本において、政府はデジタル・ガバメント推進方針や官民データ活用推進基本計画を策定し、行政のデジタル化を進めている。物流に関する行政手続きのデジタル化は、企業にとってのデジタル化に対するインセンティブを高める他、産業全体の物流データの蓄積に繋がるとみられている。

ドイツは、光ファイバの普及率の低さや農村部でのデッドスポットの多さに表されるようにブロードバンドインフラが弱く、デジタル化の後れがインダストリー4.0の大きな障壁の一つになっている。政府はこうした状況を懸念し、2025年までに全国に光ファイバ網を敷設することを約束、2018年5月にはデジタル化を目的とした24億ユーロ規模の基金を設立した。また、デジタル化の能力を巡る大企業と中小企業の格差を考慮し、中小企業を対象とした資金支援や助言等を行なっている。ミッテルスタンド4.0と呼ばれるプログラムでは、個々の企業に対し、デジタル化の段階の把握から、ロードマップ作成、実行までをマンツーマンで無償支援している。

中国でも、多くの物流企業が紙や旧式の電子システムに依存する現状に鑑み、政府はLOGINKを通じてデジタル化やデジタルシステムの近代化に向けた無償のサポートを中小企業に対して提供するなど、デジタル化を推進している。

米国では、政府が2018年にクラウドスマート戦略を打ち出し、連邦政府機関自らがクラウドコンピューティングの利用を考慮することを義務化した。公的サービスの一層の効率化が図られており、産業のデジタル化も促進されるとみられる。

中国とドイツでは、ブロードバンドインフラが弱く、主に遠隔地におけるスマート物流の運用を難しくしている。いずれの国でも資金力に劣る中小企業がデジタル化で後れを取っているが、中国とドイツにおいて、これはスマート物流のプラットフォームを普及させる上で無視できない問題として見なされ、中小企業向けの手厚い公的援助が為されている

Page 54: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

54課題②:データの標準化

スマート物流においては、共有されたデータの分野を超えた利活用によって物流全体の効率化が図られる。しかし、現状では、物流データの形式や管理方法は企業や輸送モード、業界、サプラチェーンによってばらばらであり、データの対象が同じでも、出所の異なるデータを比較したり組み合わせたりすることは容易ではない。この困難を解消するためには、標準化が有効と考えられている。

日本では、2017年より、データ流通推進協議会(DTA)*1が、経済産業省によって認定を受けた産業データ共有事業者と呼ばれる重点取組分野の業界団体などに対し、勉強会や個別相談を実施し、語彙やデータカタログ等の標準化を支援している。DTAはまた、国内外のデータ流通を巡るIT基準を調査し、標準化の取り組みの中で役立たせている。

ドイツでは、産業界主導設立されたPlatform Industrie 4.0から、業界標準化を目的にStandardizationCouncil Industrie 4.0(SCI4.0)とLabs Network Industrie 4.0(LNI4.0)が誕生し、規格の統合が進められている。SCI4.0は国内外の識者や規格化機関等と連携を取りつつ規格の調整と設定を担い、LNI4.0は、将来中小企業をプラットフォームに取り込むことを想定し、主に中小企業に対する規格の適用可能性の検証やユースケース作成、テストベッド運用を行っており、業界主導の規格設定と国際化が目指されている。

中国では、政府がほぼ全面的に標準化を主導している。交通運輸部によって2012年に設立されたLOGINK(国家交通運輸物流公共情報プラットフォーム)が、業界や輸送モード、地域をまたいだ標準化を推進する役割を一手に担っている。標準化の推進役が民間に分散されていた日本やドイツと比較し、中国ではLOGINKが資金や労働力の調達と実行を全て独力でする必要があり、規格の普及にはより多くの時間を要する可能性がある。また、LOGINKのプラットフォームは業界プレーヤーの目線をやや欠いており、民間の物流サービスの提供者によるプラットフォームと比べて利便性に劣るという指摘もヒアリングで得られた。

米国では、企業は他社との協力関係に対する関心が薄く、垂直統合とSAPやオラクル等のERPを用いた業務効率化によって、自社レベルで標準化を進めている。

中国では、LOGINKが標準化の推進役を一手に引き受けている。大きな可能性を秘めるも、足元では資金・人手不足がボトルネック。ドイツでは、規格団体と業界団体が運営する団体によって、業界主導の規格設定と国際化が目指されている。米国では、標準化に対する企業の関心は希薄

*1: DTAは、内閣官房IT室、経済産業省、総務省におけるワーキンググループの検討を踏まえて設立された経緯があるが、産学官民の連携によって運営され、大手のIT業社、製造業社を中心に64社の正会員を有する(2019年2月現在)。

Page 55: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

55課題③:データ共有を巡る意識

データ共有基盤が創立され、データの標準化が進んでも、短期的なコストと見えづらいメリット、競争上不利に働くのではないか等の懸念などが、企業に主体的、積極的なデータ提供を躊躇わせる要因として残る。スマート物流においては、各プレーヤーがそれぞれの物流データを共同で利活用することによって産業全体の最適化が図られるため、あらゆる企業に自主的なデータの提供を促す環境整備が求められる。

日本では、経済産業省が、産業データ共有事業者向けに、企業間や事業所間でのデータ連携を条件としたIoT投資に対する減税措置(コネクテッド・インダストリーズ税制)を創設したり、データ利用に関する契約を締結する民間事業者向けに、参考として契約上の主な課題や論点、契約条項例、条項作成時の考慮要素等を整理した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を改訂したりし、民間によるデータ共有の促進を試みている。また、大手企業を中心に64社が正会員として加盟するデータ流通推進協議会(DTA)は、データ共有に関するニーズと課題、データ共有に向けた必要な要件等を特定すべく、国内外で調査を行なっている。

ドイツでは、企業が安全にデータの交換・結合ができるようにすることを目標として、オープンなデータ・スペース向けITアーキテクチャである、インダストリアル・データ・スペース協会(IDSA)が2014年に設立され、この中で、有志の加盟企業が互いに協力しながらデータ共有による事業改善や新規事業の可能性を模索している。それらの企業は関連事業のデータをリアルタイムで共有し、ユースケースを他の会員と共有している。ただ、多くの取り組みは2社間でのデータ共有にとどまるなど、大きな進捗はない。また、多くの物流企業にとっては、ビジネスの最優先課題は配送ニーズの高度化・増加に伴うオペレーション上の問題解決であり、そもそも産業革新への意欲は高くない。IDSAの物流分野でのケーススタディは製造業者が作成したものであり、物流業者の多くはIDSAに加盟していない。政府はデータ共有を巡る企業の意識を改革するため、ユースケースやベストプラクティスを用いて啓蒙活動を行っている。

中国ではLOGINKが企業のプラットフォームへのアクセスを支援しており、より多くの企業がプラットフォーム上のデータを利用できるようになった。しかし、そうした企業からのプラットフォームへのデータ提供は、義務付けられていないこと、競争上の懸念が強いことから極めて限られており、データの大半は政府機関や第三者からのものとなっている。

米国では、企業は他社とのデータ共有について、競争優位性を失わせるリスクがあると考えており、垂直統合による自社レベルでの資源最適化を強く志向している。

中国では、データ共有を渋る企業に対し、官民プラットフォーマーは打つ手なしの状況。ドイツでは、少数の企業間の取り組みにとどまるが、政府支援の開かれた協会の中で企業同士がビジネスモデルを自発的に模索。米国において、企業はデータ共有のデメリットを強く意識

Page 56: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

56まとめ

日本は、ブロードバンドインフラは世界的に見て高い水準にあるものの、企業のデジタル化は諸外国と同様、特に中小企業において後れが目立つ状況にある。一方、スマート物流のプラットフォームはあらゆるプレーヤーと繋がる必要があり、そのためには、プレーヤーがある程度高度にデジタル化されたシステムを持つことが必要となる。中国やドイツのように、中小企業の業務システムの近代化はしっかり支援される必要がある。

日本のデータ標準化のアプローチはドイツに近い。両国において、ワーキンググループには官民産学の幅広い関係者が関わっているが、最終的には大手企業を中心に業界によって作られることが期待されている。中国では逆に、データ標準化は政府によるトップダウンで推し進めている。規格設定のスピードこそ速いが、政府単独の努力により、普及に時間を要している。加えて、プレーヤー目線を欠き、利便性に劣るとの指摘もある。規格の国際化を視野に入れるのであれば、規格は利便性や汎用的に優れたものでなければならず、設定の際には、業界プレーヤーを中心に様々な関係者の意見が汲み取られる必要があるだろう。

データ共有を巡る意識に関しては、どの国でも大きな前進は見られず、動機の欠如やデータ共有が競争上の不利益に繋がるのではないかという企業の懸念が最大の障壁になっている。中国では政府がトップダウンで進めようとするも、大部分の物流業者に対して打つ手なしの状況になっている。一方、ドイツでは、政府が研究資金を援助し、産学官民の多様な関係者から構成されるグループがあり、有志の加盟企業が互いにデータ共有を活かしたビジネスモデルの可能性を模索している。データ共有に絡んだユースケースやベストプラクティスは着実に蓄積されつつあるが、成功事例の規模は現時点では限定的である。また、ヒアリングによると、中国では単独のプラットフォーム上でのあらゆるデータ共有が想定されているのに対し、ドイツでは、業界や地域に特化したプラットフォームが複数作り出され、それらが高度に連携するネットワークシステムが想定されている。Connected Industriesで定められた5つの重点取組分野ごとに連携の促進を試みている日本は、ドイツの取り組みに近い。

データ標準化・データ共有の取り組みに関して、日本は、官民に期待される役割、方向性の観点から、ドイツと親和性が高い。ドイツでは、多様な関係者から構成されるゆるいナレッジシェアリングのグループの中で、企業同士が協調して取り組みを主導しているが、進捗ペースは遅々としている

Page 57: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

57

日本の関連データ及びリンク集

補足

Page 58: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

58

人口減も、経済は拡大基調を辿る見込み。物流がボトルネックとなって経済成長を阻害しないよう、物流のスマート化が期待されている

マクロ環境概要

*1: Euromonitor International予測値(2019年1月28日時点)

指標 2018年 2023年*1 年平均成長率*1

人口(1000人) 126,388.7 123,988.4 -0.4%

世帯数(1000世帯) 54,150.6 54,533.4 0.1%

GDP(PPPベース、10億Intl.$)

5,609.1 6,198.9 2.0%

実質GDP成長率 0.9% 0.6% 0.7%

実質民間最終消費支出成長率

0.4% 0.6% 0.6%

1人あたり可処分所得(米ドル)

23,298.5 25,253.7 1.6%

インフレ率 1.0% 1.3% -

Page 59: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

59

1

2

3

総合物流の最適化(物流総合効率化法)

同法は2016年に施行された。国土交通省が2社以上の企業が物流・流通業務の標準化や共有を行う取組みに対して支援や助成を行っている。対象となる取組みは、事業の最適化だけではなく環境への影響の低減にもプラスの影響を与えるものとならなくてはならない。こうした政府の支援は、電子商取引の増加による小口貨物の増加や人口減少・高齢化による労働力不足に対応するものとなっている。

経済産業省は、ヤマトホールディングス、日立物流、佐川急便、大日本印刷、経済産業省の物流公共政策チームなどの物流業界のリーダーと連携し、より効率的な物流プラットフォームを日本で実現しようとしている。電子商取引市場の拡大と労働力の減少に促進され物流ニーズが多様化していることを踏まえ、同プログラムはサプライチェーン内の企業間で必要なデータと情報を効率的に共有できるプラットフォームを構築することを目指している。

経済産業省は2017年、大手コンビニチェーンの株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社ファミリーマート、株式会社ローソン、ミニストップ株式会社、株式会社JR東日本リテールネットとの間で、小売店で販売される全商品への電子タグの導入について合意した。電子タグの活用により、サプライチェーン管理の効率化が期待されている。実現期限は2025年に設定されているが、タグのコストが1円以下となっており製造側でもソース・タギング(メーカーが商品に電子タグを付けること)を実現するという条件を付加されている。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年に大日本印刷に試験プロジェクトを委託した。

経済産業省主導の物流プラットフォームの効率化に向けた取組み

コンビニエンスストア商品向けの1,000億枚の電子タグの導入

人手不足の深刻化を背景に、政府は物流の効率性向上を主導する構え

物流業界に対して影響力のある政策・法規制

Page 60: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

60

主要分野別オンライン小売業界の成長(百万米ドル) オンライン小売業界の競合状況(2018年)

873億米ドル

オンライン小売販売総額

(2018年)

1兆163億米ドル

小売販売総額

(2018年)

9.9%

オンライン小売販売額予測の年

平均成長率(2018~2023年)

8.6%→12.4%

オンライン小売の普及割合

(2018年→2023年)

他の先進諸国との比較では若干緩やかながらも、電子商取引市場は急成長が続く見込み

電子商取引市場

0

10000

20000

30000

40000

50000

60000

2013 2018 2023衣料品・靴 家電製品

家庭用エレクトロニクス製品 食料品・飲料

メディア製品 鞄・装飾品

その他

26%

17%

7%4%3%

42%

Amazon.com, Inc. Rakuten, Inc. Softbank Corp.

Apple, Inc. ZOZO, Inc. Others

Page 61: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

61リンク集①

Page 62: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

62リンク集②

Page 63: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

63リンク集③

Page 64: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

64リンク集④

Page 65: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z

© Euromonitor International

65リンク集⑤

Page 66: ¹ B º Ø v , í § î Å «# C b4: G ì ¦ ¥ > E @ v í § É Û ³ î å b · …"@ v4 6Û f 8 Z c"@ v _ - < } S #Ø b I } ^ "á ì í § É Û ³ î å q4: ì @ Ó u } Z