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『動物化するポストモダン』は なぜ『過視的なものたち』
と呼ばれたか
声幽ネットワーク論とはなにか
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目次
1. 問題意識:動物化するポストモダンはなぜ過視覚化論と呼ばれたか?
2. 背景:90年代とゼロ年代の声優の環境の変化 3. 主題:声幽ネットワーク論とは何か. 4. 比較検討:声優と俳優,声優とVOCALOID 5. 結論
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1.問題意識:動物化するポストモダンはなぜ『過視覚化論』と呼ばれたか?
1. 問題意識:動物化するポストモダンはなぜ過視覚化論と呼ばれたか? 2. 背景:90年代とゼロ年代の声優の環境の変化 3. 主題:声幽ネットワーク論とは何か. 4. 比較検討:声優と俳優,声優とVOCALOID 5. 結論
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動物化するポストモダン
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『動物化するポストモダン』
近代では,まず小さな見えるものがあり,その背後に大きな見えないものがあり,前者から後者へと遡って,見えないものをつぎつぎと見えるものに変えていくことが世界理解のモデルだったと言うことができる.(図19a). しかし,ポストモダンのデータベース型世界では,その両者はもはや直接に繋がることがない.小さな物語は大きな非物語を部分的に読み込むことで生まれるが,同じ非物語からはまた別の小さな物語が生まれうるのであり,そのいずれが優位かを決定する審級はない.つまり小さな物語から大きな物語へと遡ることはできない.したがってここでは,まず目の前に小さな見えるものがあり,そしてそこから見えないものに遡ろうとしたとしても,それは見えた瞬間にただちに小さな物語へと変わってしまい,それに失望してふたたび見えないものへと向かう,という際限のない横滑りの運動が生じることになる(図19b). [東浩紀, 『動物化するポストモダン-‐-‐オタクから見た日本社会』 2001,160]
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『存在論的,郵便的』
• 「脱構築」とはなによりもまずこのダブル・バインド,さきほどの表現を繰り返せば「目と耳のあいだの空間」の経験だ. [東浩紀, 『存在論的、郵便的−−ジャック・デリダについて』 1998, 20]
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『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか』
彼らの(注:アニメオタクのこと)感情移入が向けられる登場人物の同一性は,まさに目の知覚(セル画)と耳の知覚(声),イメージとシンボルのあいだに開いた不気味な裂け目に求められている. [東浩紀, 『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+』 2011, 130]
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2.背景:90年代とゼロ年代の声優の環境の変化
1. 問題意識:動物化するポストモダンはなぜ過視覚化論と呼ばれたか? 2. 背景:90年代とゼロ年代の声優の環境の変化 3. 主題:声幽ネットワーク論とは何か. 4. 比較検討:声優と俳優,声優とVOCALOID 5. 結論
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地上波, BS,CSで放送された 国産のテレビアニメの本数
0
50
100
150
200
250
300
継続
新作
10
ゼロ年代 深夜アニメ 本数
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
深夜アニメ 本数
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3. 主題:声幽ネットワーク論とは何か
1. 問題意識:動物化するポストモダンはなぜ過視覚化論と呼ばれたか? 2. 背景:90年代とゼロ年代の声優の環境の変化 3. 主題:声幽ネットワーク論とは何か. 4. 比較検討:声優と俳優,声優とVOCALOID 5. 結論
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hAp://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%95%E5%8F%A3%E8%A3%95%E9%A6%99
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声幽ネットワーク論
• 声優が,二次創作的に消費されていること,それを可能にする声優を媒介としたネットワーク
• 背景:アニメ数の増加,アニラジ • 特徴1:切断による接続 • 特徴2:2.5次元性 – ①獲得可能性 – ②持続可能性
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4. 比較検討:声優と俳優,声優とVOCALOID
1. 問題意識:動物化するポストモダンはなぜ過視覚化論と呼ばれたか? 2. 背景:90年代とゼロ年代の声優の環境の変化 3. 主題:声幽ネットワーク論とは何か. 4. 比較検討:声優と俳優,声優とVOCALOID 5. 結論
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声優と俳優:キムタク問題
• 「キムタク問題」とは,俳優としてのキムタクが,どんな配役を演じたとしても,キムタクとして,認知されてしまうこと
• 「見られる」存在であるがゆえに,いつまでも,美しくあり続けることが求められる.だが,だからこそ,キムタクは,キムタクという呪いをうけてしまう.
• 俳優は,声(聴覚)のデータベースと,イメージ(視覚)のデータベースが同時並行的に形成されていき,だんだんとそれが同化していくが,声幽の場合は,二つのデータベースの形成が全く別々の時間軸で形成されていく.
二つのデータベースのずれ =不気味な感覚=声優の幽霊性
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声優とVOCALOID: 初音ミクは藤田咲の夢を見るのか
• ミクは,声優,藤田咲の声をサンプリングしてつくられたVOCALOIDにもかかわらず,ミクの声と藤田咲の声との間には大きな隔たりがある.それは,現在のVOCALOID技術の一つの限界である.だが,技術が洗練していくことで,藤田咲本人と全く違いが分からないようになっていくとすれば,そのとき,初音ミクは,藤田咲であろうとするのか,もしくは,初音ミクであろうとするのか.
• そもそも,藤田咲というオリジナルがありながら,オリジナルの存在が忘却されている初音ミクは,藤田咲になりたいという「欲望」を持つとは思えない.
• 初音ミクというデータベースは,藤田咲というデータベースを既に超えている.
• 声優にとってのキャラクター≒VOCALOIDにとっての歌い手,絵師,作曲者
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5. 結論:声優を愛するとはなにか
1. 問題意識:動物化するポストモダンはなぜ過視覚化論と呼ばれたか? 2. 背景:90年代とゼロ年代の声優の環境の変化 3. 主題:声幽ネットワーク論とは何か. 4. 比較検討:声優と俳優,声優とVOCALOID 5. 結論
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不気味な感覚を愛すること
• 「不気味な」効果は,ひとつの情報が同時に複数の知覚回路で処理され,たがいに衝突するために,生じる.したがって,エクリチュールの集積,つまり「目と耳のあいだ」に面したインターフェイス的主体は,またつねに,不気味なものに曝された主体であると言える. [東浩紀, 『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+』 2011, 110]
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おまけ:阿澄佳奈結婚について
• 声幽ネットワーク論的に言えば,もこたん(阿澄佳奈)の結婚に対する周囲の激烈な反応の理由は、阿澄佳奈自身が結婚するという事実そのものではなく、阿澄佳奈ネットワークにまつわる全てのデータベースが書き換えられてしまうことへの戸惑いなのだろう。
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いぇす! アスミス! 結婚おめでとう!
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参考文献みたいなもの
• 引用文献 • ハイデガー. 『ヒューマニズムについて』. • 関西クラスタ. “アニメルカ特別号『反=アニメ批評2012autumm』.”
声の幽霊が回帰する?-‐-‐声幽論をめぐって. 2012. 56-‐67. • 東浩紀. “「想像界と動物的回路-‐-‐形式化のデリダ的諸問題」.” 著:
『文学環境論集 東浩紀コレクションL』, 脚本: 東浩紀. 2007. • —. 『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+』. 河出書房, 2011. • —. 『存在論的、郵便的−−ジャック・デリダについて』. 新潮社, 1998. • —. 『動物化するポストモダン‐‐オタクから見た日本社会』. 講談社,
2001. • その他色々
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