生物化学分析・輸血検査研究班合同研究会 2012.5 · Department of Clinical Laboratories, Aichi Medical University Hospital 鉄代謝と鉄欠乏性貧血生物化学分析・輸血検査研究班合同研究会

Department of Clinical Laboratories, Aichi Medical University Hospital

鉄代謝と鉄欠乏性貧血

生物化学分析・輸血検査研究班合同研究会 2012.5.12

愛知医科大学病院中央臨床検査部榎本めぐみ

鉄の体内分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

健常人では全身に約3～5ｇの鉄が存在する。



ヘモグロビン鉄（60～70％）

貯蔵鉄（20～30％）

組織鉄酵素中の鉄ｅｔｃ

ミオグロビン

血清鉄

フェリチン・ヘモジデリンとして肝・脾等に貯蔵されている。

鉄の吸収と喪失・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



1日に体に入る鉄の量は成人男性で約1mg。便、尿、汗等に含まれて体から排泄される量も約1mg。

① 鉄は食物中に約10～20mg含まれる。（Ｆｅ3＋として摂取）

Fe

FeFe

② 胃酸により還元される。（Ｆｅ3＋→Ｆｅ2＋）

胃

十二指腸

③ 約1mgが十二指腸より体内に吸収される。

④ 吸収されなかったＦｅ2＋はそのまま排泄される。

Fe

Fe ＝Ｆｅ3＋

＝Ｆｅ2＋

Fe

Fe

Fe

Fe

Fe

FeFe

Fe

FeFe

FeFe

Fe

Fe

FeFe

FeFe

Fe

Fe FeFe

FeFeFe

Fe

Fe

Fe

Fe

鉄の体内動態① ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



血清鉄

十二指腸

骨髄

ヘモグロビン鉄

脾臓肝臓

貯蔵鉄組織鉄

必要に応じて貯蔵鉄を出し入れする

老朽化した赤血球は脾臓で破壊され、鉄は再利用される

骨髄でヘモグロビン合成に利用される。

＝ﾄﾗﾝｽﾌｪﾘﾝ

FeFe

Fe ＝Ｆｅ3＋

＝Ｆｅ2＋

鉄の体内動態② ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



【血清鉄】

【トランスフェリン】

【フェリチン】

【総鉄結合能：ＴＩＢＣ】

血液中の鉄輸送蛋白。1分子のトランスフェリンに2つのFe3＋が結合する。

トランスフェリンと結合した鉄を血清鉄とよぶ。

FeFe

フェリチンとは、アポフェリチンという蛋白とFe3＋からなる水溶性蛋白質。フェリチンは一定の割合で血中に溶けだし、血清フェリチンとして測定される。（体内の貯蔵鉄量を敏感に反映する）

ＴＩＢＣ＝ＵＩＢＣ＋血清鉄

全てのトランスフェリンに結合しうる鉄の量。 FeFe

鉄欠乏性貧血・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



鉄欠乏性貧血は、鉄の欠乏によって赤芽球のヘモグロビン合成が低下して起こる小球性低色素性貧血。

【鉄が不足する原因】

【特徴的な症状】

貧血症状：頭痛、めまい、眼瞼結膜蒼白、動悸、息切れ等

組織への鉄の供給不足：スプーン状爪、萎縮性胃炎

Plummer-Vinson症候群：貧血に舌炎、口角炎、嚥下障害が合併

原因吸収低下需要増大喪失亢進

胃切除妊娠・授乳月経

無胃酸症成長期婦人科疾患

ダイエット・偏食慢性消化管出血

主な例

小球性貧血の診断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



障害部位

疾患病態血清

フェリチン血清鉄 TIBC

① 鉄欠乏性貧血●　鉄欠乏により、貯蔵鉄、血清鉄が低下、トランスフェリンが大量に産生されるためTIBCは上昇

② 慢性疾患に伴う貧血●　貯蔵鉄が十分にあるにも関わらず利用が障害され、血清鉄が低下し、鉄が骨髄に運搬されない。

③ 無トランスフェリン血症●　トランスフェリン合成障害により、TIBCが低下、血清鉄も低下し、貯蔵鉄は増加する。

④ 鉄芽球性貧血●　ヘム合成レベルにおいて鉄が利用できず、鉄過剰状態となる。トランスフェリンの産生は抑制されTIBCは低下する。

⑤ サラセミア●　グロビン鎖の1つ以上の合成障害によるヘモグロビンの代謝異常。鉄過剰状態となる。

FeFe

FeFe

FeFe貯蔵鉄

血清鉄

＝ﾄﾗﾝｽﾌｪﾘﾝ

FeFeヘム

グロビンヘモグロビン

骨髄

①

②

③ ④

⑤

赤血球指数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ＭＣＨＣ：平均赤血球ヘモグロビン濃度（基準値 31～35％）

ＭＣＨ：平均赤血球ヘモグロビン量（基準値 28～32ｐｇ）

ＭＣＶ：平均赤血球容積（基準値 81～100ｆｌ）

赤血球1個の大きさ

赤血球1個のヘモグロビン量

単位容積赤血球あたりのヘモグロビン濃度

小球性低色素性貧血正球性正色素性貧血大球性正色素性貧血

ＭＣＶ ≦80 81～100 10１≦

ＭＣＨＣ ≦30 31～35 31～35

鉄欠乏性貧血溶血性貧血巨赤芽球性貧血

鉄芽球性貧血出血性貧血

サラセミア腎性貧血

慢性疾患による貧血再生不良性貧血

骨髄異形成症候群（ＭＤＳ）

鑑別疾患

貧血の鑑別に有用



Ｆｉｎ．

スタンダード検査血液学（医歯薬出版株式会社）

ビジュアル臨床血液形態学（南江堂）

病気が見える血液（メディックメディア）

【参考文献】

Documents

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