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研究とバイオリソース〈NO.13〉 BioResource Now ! Issue Number 8 December 2012 BioResource Now ! Vol.8 No.12 「森のバロック」 お薦め Book! No12 P2 じょうほう通信 No.76 研究とバイオリソース No.13 P2 P1 - 2 今井(佐藤)薫・佐藤ゆたか(京都大学大学院理学研究科) 今井(佐藤)薫・佐藤ゆたか 京都大学大学院理学研究科 日本学術振興会特別研究員RPD(元特任助教) 京都大学大学院理学研究科 准教授 国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。 ホヤは脊索動物であり、ホヤを含む尾 索類(被嚢類)は我々脊椎動物にもっ とも近縁な動物群である。実際にホヤ の幼生はオタマジャクシ型であり、そ れを見れば、我々と近縁であることは 納得していただけると思う。一方で、 ホヤのゲノムは脊椎動物に比べはるか に単純であり(ゲノムサイズは160 Mb、 遺伝子数は約16,000)、ゲノムレ ベルでの研究にとっての大きな強みと なっている [1]図1)。 動物の体には、ほぼ例外なく背と腹の区 別があり、それは発生のごく初期に決め られる。この背腹の決定にはほとんどの 場合、分泌性の BMP * 1 と呼ばれるタンパ ク質が使われている。脊椎動物(例えば カエル)では、腹側に BMP分子が発現し、 背側には BMP 分子の働きを阻害する分子 (アンタゴニストと呼ばれる)が複数発現 している [2]。我々は過去に、ホヤ胚発生 をコントロールする遺伝子調節ネット ワークの概要を明らかにしたが [3]、ホヤ の背と腹側の区別に BMP 分子が決定的な 役割を果たしている証拠を見つけること はできなかった。 URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ ニュースレターのダウンロード先 NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転 載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、 及び国際条約により保護されています。 動物の背腹をつくる新しい転写調節メカニズム 動物の背と腹の区別 ホヤ ホヤ尾芽胚の背腹 図1: ホヤの孵化直前の尾芽胚。 オタマジャクシ型をしている。 図 2 : Admp と Pinhead のフィードバック 3 : Pinhead 遺伝子が発現している時に Admp 遺伝子が発現できない理由。ピンク色の領域は プロモーターを指す。 新しい転写調節メカニズム 他の動物と違って、ホヤでは本当に背と 腹の区別に BMP 分子が使われていない のだろうか?(ホヤはそんなに特殊な動 物なのだろうか?)この疑問に答えるた め、ホヤでは神経胚から尾芽胚にかけて の時期に表皮細胞が背腹の軸にそってい くつかの領域にわかれて分化するので、 その分子機構を解析してみた。すると、 ホヤでも他の動物と同様に、この背腹の 領域が生じる時期に分泌性の BMP 分子 が腹側で発現し、腹側の領域形成に関 わっていることがわかった。また、BMP に類似の Admp * 2 とよばれる分泌性のタ ンパク質は、BMP 分子とは異なり背側 で発現するが、BMP 分子と同様に腹側 領域形成に必要とされていた。 さらにこのメカニズムを詳しく調べる過 程で、Admp に特異的に結合してその働 きを阻害する新奇アンタゴニストを発見 した(このタンパク質は Pinhead と呼ば れる)[4]。実際には Pinhead は Admp シグナルを受けて発現するので、Admp に対するネガティブなフィードバックが 存在している(簡単には BMP と Admp が 「腹側領域を作るタンパク質」 、Pinhead が「歯止めをかけるタンパク質」と考え ていただいて差し支えない)(図2)。 面白いのは Pinhead はタンパク質のレベ ルだけではなく、遺伝子の発現、つまり 転写レベルでも Admp の抑制を行なって いたことである。この抑制は Pinhead Admp が隣接してコードされているとい う、ゲノム上の遺伝子の配置に由来する。 つまり、Pinhead が転写されるとき、 エンハンサーとプロモーター * 3 の間に相 互作用が起こり、DNA のループが形成 されるが、そのループの中に Admp のエ ンハンサーがあり、結果として、物理的 にエンハンサーが隔離されてしまう。こ うして、タンパク質と転写の両方のレベ ルで二重に抑制をかけることで、腹側の 領域を適正にコントロールしているので ある(図3)。 他の動物のゲノムを調べてみると、昆虫 から両生類にいたるまで幅ひろい動物の ゲノムで、ホヤと同様に Pinhead 遺伝 子が Admp 遺伝子に隣接してゲノム上に コードされていた(残念ながらヒトには Admp Pinhead も無いようである)。 この高度な保存性は、この調節メカニズ ムの起源は左右相称動物の起源に遡るこ とができることを示している(図4)動物の背腹をつくる 新しい転写調節メカニズム 動物の背腹をつくる 新しい転写調節メカニズム * 1 * 2 BMP:Bone morphogenetic protein の略。細胞外に分泌され、近隣の細胞に対してシ グナルを送るために使われる。ヒトでは10種類程度のタイプがあり、ホヤでは少なく とも2種類のタイプがある。本稿で述べるホヤの BMP は正確には BMP2/4 と呼ばれる Admp:Anti-dorsalizing morphogenetic protein の略。BMP に類似の分子で、同様に 近隣の細胞に対してシグナルを送るために使われる。 エンハンサーとプロモーター:いずれも遺伝子が発現して RNA を作る(転写)ために 必要な DNA の領域。プロモーターにはすべての遺伝子に共通の転写のために必要なタ ンパク質が結合する。エンハンサーにはその配列ごとに異なる転写調節因子と呼ばれる タンパク質が結合し、プロモーターへの共通タンパク質の結合を助ける。 * 3 腹側 背側 次ページへ続く 1 1 2 2 ソフトウェアの脆弱性の確認方法

BioResource Now ! - SHIGEN - 国立遺伝学研究所

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研究とバイオリソース〈NO.13〉

BioResource Now !I s sue Numbe r 8 D e c embe r 2 012

BioResource Now ! Vol.8 No.12

「森のバロック」お薦めBook!No12

P2

じょうほう通信No.76

研究とバイオリソースNo.13

P2

P1 - 2

今井(佐藤)薫・佐藤ゆたか(京都大学大学院理学研究科)

今井(佐藤)薫・佐藤ゆたか京都大学大学院理学研究科 日本学術振興会特別研究員 RPD(元特任助教)京都大学大学院理学研究科 准教授

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

ホヤは脊索動物であり、ホヤを含む尾索類(被嚢類)は我々脊椎動物にもっとも近縁な動物群である。実際にホヤの幼生はオタマジャクシ型であり、それを見れば、我々と近縁であることは納得していただけると思う。一方で、ホヤのゲノムは脊椎動物に比べはるかに単純であり(ゲノムサイズは160Mb、遺伝子数は約16,000)、ゲノムレベルでの研究にとっての大きな強みとなっている [1](図 1)。

動物の体には、ほぼ例外なく背と腹の区別があり、それは発生のごく初期に決められる。この背腹の決定にはほとんどの場合、分泌性の BMP*1と呼ばれるタンパク質が使われている。脊椎動物(例えばカエル)では、腹側にBMP分子が発現し、背側には BMP 分子の働きを阻害する分子(アンタゴニストと呼ばれる)が複数発現している [2]。我々は過去に、ホヤ胚発生をコントロールする遺伝子調節ネットワークの概要を明らかにしたが [3]、ホヤの背と腹側の区別に BMP 分子が決定的な役割を果たしている証拠を見つけることはできなかった。

URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

動物の背腹をつくる新しい転写調節メカニズム

動物の背と腹の区別

ホヤ ホヤ尾芽胚の背腹

図1:ホヤの孵化直前の尾芽胚。オタマジャクシ型をしている。

図 2 : Admp と Pinhead のフィードバック

図 3 : Pinhead 遺伝子が発現している時に Admp遺伝子が発現できない理由。ピンク色の領域はプロモーターを指す。

新しい転写調節メカニズム他の動物と違って、ホヤでは本当に背と腹の区別に BMP 分子が使われていないのだろうか?(ホヤはそんなに特殊な動物なのだろうか?)この疑問に答えるため、ホヤでは神経胚から尾芽胚にかけての時期に表皮細胞が背腹の軸にそっていくつかの領域にわかれて分化するので、その分子機構を解析してみた。すると、ホヤでも他の動物と同様に、この背腹の領域が生じる時期に分泌性の BMP 分子が腹側で発現し、腹側の領域形成に関わっていることがわかった。また、BMPに類似の Admp*2 とよばれる分泌性のタンパク質は、BMP 分子とは異なり背側で発現するが、BMP 分子と同様に腹側領域形成に必要とされていた。

さらにこのメカニズムを詳しく調べる過程で、Admp に特異的に結合してその働きを阻害する新奇アンタゴニストを発見した(このタンパク質は Pinhead と呼ばれる)[4]。実際には Pinhead は Admpシグナルを受けて発現するので、Admpに対するネガティブなフィードバックが存在している(簡単には BMPと Admpが「腹側領域を作るタンパク質」、Pinheadが「歯止めをかけるタンパク質」と考えていただいて差し支えない)(図2)。

面白いのは Pinhead はタンパク質のレベルだけではなく、遺伝子の発現、つまり転写レベルでも Admp の抑制を行なっていたことである。この抑制は Pinhead とAdmp が隣接してコードされているという、ゲノム上の遺伝子の配置に由来する。つまり、Pinhead が転写されるとき、エンハンサーとプロモーター*3 の間に相互作用が起こり、DNA のループが形成されるが、そのループの中に Admpのエンハンサーがあり、結果として、物理的にエンハンサーが隔離されてしまう。こうして、タンパク質と転写の両方のレベルで二重に抑制をかけることで、腹側の領域を適正にコントロールしているのである(図 3)。

他の動物のゲノムを調べてみると、昆虫から両生類にいたるまで幅ひろい動物のゲノムで、ホヤと同様に Pinhead 遺伝子が Admp遺伝子に隣接してゲノム上にコードされていた(残念ながらヒトにはAdmp も Pinhead も無いようである)。この高度な保存性は、この調節メカニズムの起源は左右相称動物の起源に遡ることができることを示している(図4)。

動物の背腹をつくる新しい転写調節メカニズム動物の背腹をつくる新しい転写調節メカニズム

*1

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BMP:Bone morphogenetic protein の略。細胞外に分泌され、近隣の細胞に対してシグナルを送るために使われる。ヒトでは10種類程度のタイプがあり、ホヤでは少なくとも2種類のタイプがある。本稿で述べるホヤのBMPは正確にはBMP2/4 と呼ばれるAdmp:Anti-dorsalizing morphogenetic protein の略。BMP に類似の分子で、同様に近隣の細胞に対してシグナルを送るために使われる。

エンハンサーとプロモーター:いずれも遺伝子が発現して RNA を作る(転写)ために必要な DNA の領域。プロモーターにはすべての遺伝子に共通の転写のために必要なタンパク質が結合する。エンハンサーにはその配列ごとに異なる転写調節因子と呼ばれるタンパク質が結合し、プロモーターへの共通タンパク質の結合を助ける。

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腹側

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ソフトウェアの脆弱性の確認方法

BioResource Now ! Vol.8 No.12

Contact Address

連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Editor's Note 2012年の最終号は、Scienceに発表された「ホヤの背腹を決定するスイッチ」で、著者の先生方には専門的な内容を部外者にも判り易く解説していただきました。面白いことに、幼生の背腹は区別できるのに、成体になると区別が難しいそうですよ。カタユウレイボヤを見たことのない方は是非こちらへ。http://marinebio.nbrp.jp/ お薦め Book は今回で終わりです。K.N. 先生はジャンルを問わず、大の読書家でいらっしゃいますが、毎月の選書には大変御苦労をされたそうです。読者の好奇心を全開にして最終回を締めくくってくださいました。 BioResource now! は 8 年目も無事に終えることができました。ご執筆くださった先生方と読者の皆様に心から御礼申し上げます。よいお年をお迎えください。(Y.Y.)

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Issue Number 8 December 2012

図 4: Pinhead-Admp 遺伝子のゲノム上での配置は進化上の広く保存されている

Dehal P, Satou Y, Campbell RK et al: The draft genome of Ciona intestinalis: insights into chordate and vertebrate origins. Science 2002, 298(5601):2157-2167.De Robertis EM: Spemann's organizer and the self-regulation of embryonic fields. Mech Dev 2009, 126(11-12):925-941.I m a i K S , L e v i n e M , S a t o h N e t a l : Regulatory blueprint for a chordate embryo. Science 2006, 312(5777):1183-1187.Imai KS, Daido Y, Kusakabe TG et al: Cis-acting transcriptional repression establishes a sharp boundary in chordate embryos. Science 2012, 337(6097):964-967.

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参考文献

お薦め Book!〈NO.12〉 お薦め Book!〈NO.12〉

中沢新一著(講談社学術文庫、2006年)「森のバロック」およそ百年前に活躍した博覧強記の天才といわれる南方熊楠の全体像を、哲学者にして思想家、宗教学者である著者が活写した書(単行本の刊行は 1992 年)。「粘菌の研究者としての南方熊楠」という関連で評者は本書に辿りついたが、本書では「粘菌とオートポイエーシス」(第5章)にとどまらず、南方民俗学(第4章)、エコロジー(第6章)、「南方マンダラ」と呼ばれる独特の世界観(第7章)などが、縦横に語られており、その全容の理解は評者の能力を超えている。そのため、以下では本書の一部を引用することで紹介に代えさせていただく。「宇宙は巨大な神秘として、できあがっている。・・神秘である宇宙は、無数の襞を自分の内部に折りたたんでいく。無尽無究。そのすべてが、「大日如来」というマンダラの全体運動の中に、つつみ込まれ、それは変化し、運動しながら、つぎつぎと新しい自分の姿を、人間の知性の前にしめしてみせるのだ。わずかに顕微鏡一台を手に入れることによって、それが実現される。人間が生きているこの宇宙は、なんと不思議な場所なのだろう。学問とは、その様子を見て楽しむためにあるのである。またその楽しみを、十分に知りぬいた人のやる学問でなければ、ほんとうに人間を豊かにすることなどはできない。熊楠は一生涯、そういう学問しかやらなかった。そうでない学問などには、なんの関心もしめさなかった・・」第2章より抜粋。(K.N.)

最後に

我々の実験に用いたホヤは、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)である。このホヤは、ほぼ世界中の海に分布しており、外国の研究者は今でも自分で海に行って材料を採集している。日本ではナショナルバイオリソースプロジェクトによって、自然集団種(野生型)がふんだんに、しかも安定に入手できる。今回の研究はまさにこうした、安定した材料供給体制に負うところが大きい。■

ソフトウェアの脆弱性の確認方法 じょうほう通信 [第 76 回 ] 10分

パソコンでは様々なソフトウェアを使用していますが、ソフトウェア毎にセキュリティの問題 ( 以下脆弱性 ) が見つかる事がたびたびあります。脆弱性が見つかった場合、ソフトウェアの製造・公開元 ( 以下ベンダ ) はソフトウェアのアップデート版を公開しますが、脆弱性によってはアップデート版の作成に時間がかかったり自動更新通知などが送られない場合があるので、利用者が脆弱性についての情報を確認する必要があります。

そこで JVN:Japan Vulnerability Notes ( 脆弱性対策情報ポータル ) サイトで公開しているMyJVN 脆弱性対策情報収集ツール(http://jvndb.jvn.jp/apis/myjvn/mjcheck.html)を使用することで、ソフトウェアやセキュリティ問題の深刻度、脆弱性の発見日などを指定して脆弱性の影響や対策情報を収集できます。

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まず、ブラウザから上記の MyJVM のページにアクセスします。初回接続時の条件設定では[既定]ボタンを選択します。( 図 1)既定の製品リストが表示されるので [ 完了 ] ボタンを押すと一覧が表示されます。

以上のようにソフトウェアの脆弱性を知り、表示された対策情報やアドバイザ情報に従って対策を講じる事でウィルスに感染するリスクを低下させ、悪意のある第三者からの攻撃を受けにくくすることが出来ます。

上記のツールの他にも、IPA(独立行政法人情報処理機構)のサイト(http://www.ipa.go.jp/) でセキュリティの情報やよくある脆弱性について詳しく記載しているので確認してみてはいかがでしょうか? (渡辺 拓貴 )

このままでは、既定の製品リストの脆弱性しか表示されないのでパソコンにインストールされているソフトウェアの登録を行います。

図 1. 初回接続時の設定画面

「規定」を選択「規定」を選択

脆弱性情報を表示するソフトウェアの脆弱性情報の追加・削除、表示条件の変更を行う場合は、脆弱性の一覧 (図 2)から [設定 ] ボタンをクリックしてます。

表示されるベンダ・ソフトウェア・脆弱性の深刻度や、脆弱性情報の更新日などの表示条件を変更する場合は、設定内容の確認から [ 設定変更へ ] ボタンをクリックして変更します ( 図 3)。

左側のリストから脆弱性を表示するソフトウェアのベンダを選択して、中央の [>>] ボタンをクリックすると右側のリストにベンダが移動します。ベンダを選択したら次へ進みます ( 図 4)。

図 2. 脆弱性の一覧

図 3. 設定内容の確認

図 4. 設定変更画面

「設定」ボタンをクリック

「設定」ボタンをクリック

「設定変更へ」ボタン

「設定変更へ」ボタン

ソフトウェアのベンダを選択

2[ 選択したベンダ名 ] のリストから対象ベンダを選択すると左側の製品名リストに選択したベンダが公開しているソフトウェアが表示されます。対象のソフトウェアを選択して、中央の [>>] ボタンをクリックするとソフトウェアが移動します。右側のリストが脆弱性を表示するソフトウェアになります。表示条件を設定するため次へ進みます。

ソフトウェアを選択

3深刻度・脆弱性発見日・脆弱性更新日・脆弱性発行日の条件を指定して [ 完了 ]ボタンをクリックすると指定した条件の脆弱性が表示されます。

また、ソフトウェア毎の脆弱性の詳細情報を確認するには左上の[VEND]ボタン(図5-①)からソフトウェア毎に表示順の切り替えを行い、脆弱性の一覧(図5)から対象のソフトウェアの脆弱性の見出しをクリックすることで、詳細情報が確認できます (図 6)。

表示条件を選択

「ベンダ」を選択「ベンダ」を選択

「次へ」をクリック「次へ」をクリック

①VENDボタン①VENDボタン

概要影響を受けるシステム想定される影響対策情報アドバイザ情報参考情報更新履歴

脆弱性の概要影響を受けるソフトウェアのバージョン脆弱性により想定される攻撃や脆弱性の深刻度など脆弱性の対策方法や回避方法この脆弱性についての情報を公開しているサイトへのリンク脆弱性の発見日・脆弱性の更新日・脆弱性の発行日

①②③④⑤⑥

図 5. 脆弱性の一覧 ( 表示順の切り替え )

図 6. 脆弱性の詳細情報

表示される脆弱性の詳細情報

注意:脆弱性対策情報収集ツールの設定はブラウザのcookie に保存されるので、cookie を削除すると設定が削除されます。

研究とバイオリソース〈NO.12〉

BioResource Now !I s sue Numbe r 8 Novembe r 2 012

BioResource Now ! Vol.8 No.11

「ハエ、マウス、ヒト」お薦めBook!No.11

P2

じょうほう通信No.75

研究とバイオリソースNo.12

P2

P1 - 2

庫本高志 (京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設)

庫本高志京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設 准教授

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

実験用シロネズミは、世界中でひろく用いられている代表的な実験動物です。しかし、その起源は知られていませんでした。我々は、全世界で利用されているシロネズミ117系統のDNAを調べて、すべての系統が共通してたったひとつのアルビノ突然変異を持っていることを突き止めました。さらに、このアルビノ変異は、まだら模様をもったラットに生じた可能性が非常に高いことがわかりました。つまり、ラットが実験動物化された19 世紀後半、あるいはそれ以前に、まだら模様のラットがまず利用され、その繁殖の過程でシロネズミが出現したと考えられます。このシロネズミ(アダムあるいはイブ)の子孫たちは、性質が温順で人にもよくなれたことから、実験動物としてひろく用いられるようになったと思われます。

19 世紀半ばから現在まで、おもに利用されているラットは「シロネズミ」と「まだらネズミ」です(図1)。特に「シロネズミ」は広く用いられました。そのため、「シロネズミ」はラットの代名詞ともなりました。現在でこそ、ラットという言葉が用いられていますが、古くは、シロネズミ、ダイコクネズミ、ラッテなどと呼ばれていました。

「まだらネズミ」とは、ラットの hooded (頭巾斑)変異体をいいます。Hooded 変異をホモにもつことで、体毛の色素分布

が変わり、胸部から臀部が白くなります。頭部から上腕部にのみ色素が分布し、あたかも「頭巾」をかぶったかのような模様になります。そのためこのような模様を「頭巾斑」と呼びます。

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実験用シロネズミの起源

シロネズミ(アルビノラット)とまだらネズミ(hooded ラット)

実験用シロネズミの起源をもとめて

図1: シロネズミ(左)とまだらネズミ(右)

図2: シロネズミとまだらネズミとの関係世界中の「シロネズミ」は例外なく、Hooded 変異もつ。このことは、以下のように考えれば説明がつきやすい。 最初に、野生ネズミに Hooded 変異が生じ「まだらネズミ」が出現した。 次いで、「まだらネズミ」にアルビノ変異が生じ「シロネズミ」が出現した。

実験用シロネズミの起源実験用シロネズミの起源

一方、我々は、「まだらネズミ」の原因遺伝子が Kit 遺伝子の変異であることをみつけ、この変異の有無を117系統の「シロネズミ」系統で調べました。その結果、すべての「シロネズミ」系統が、Kit 遺伝子の変異をもっていることが分かりました [2]。以上の結果から、以下の 2 点が考えられます(図2)。①「シロネズミ」の起源となる一頭のネ ズミ(アダムあるいはイブ)がいた。②その「シロネズミ」は、「まだらネズミ」 から出現した。

我々は最新の遺伝子解析技術を使って、「シロネズミ」の起源を探ることにしました。NBRP-Rat を通じて世界各国から集められた 117 系統の「シロネズミ」系統を対象に、「シロネズミ」の原因遺伝子であるアルビノ変異の有無を調べました。その結果、すべての系統が同一のアルビノ変異をもっていることが分かりました。つまり、世界中で用いられている数百万頭の「シロネズミ」には、起源となる「シロネズミ」がいたことが分かったのです [2]。

遺伝子に残された記録今回の研究は、「シロネズミ」の起源を明らかにしたと同時に、新たな謎~「まだらネズミ」の起源は?~を生み出しました。これにこたえるひとつのアプローチとして、ゲノムの比較研究があります。Kit 変異の近傍のゲノム領域には、Kit 変異が生じたラットのゲノム情報が残されている可能性があります。この領域を対象に、世界中の実験用ラット、愛玩用ラット、あるいは野生ラットのゲノムを比較することで、Kit 変異がどのようなラットに生じたのか分かるかもしれません。

新たな謎:「まだらネズミ」の起源は?

アルビノ変異

Hooded変異

野生ネズミHooded 変異:なしアルビノ変異:なし

まだらネズミHooded 変異:ありアルビノ変異:なし

まだらネズミHooded 変異:ありアルビノ変異:なし

シロネズミHooded 変異:ありアルビノ変異:あり

現在、「シロネズミ」系統は、100 系統以上存在し、少なくとも年間数百万頭が利用されています。これらのラットが、すべて同一のアルビノ変異をもつのか、あるいは、特定の「シロネズミ」系統ごとに別々のアルビノ変異をもつのか定かではありませんでした。また、「シロネズミ」と「まだらネズミ」はどちらが、先に発見、家畜化されたかは不明でした。

古い文献でも、「シロネズミ」と「まだらネズミ」が併記されており、その起源は明確に書かれていません。例えば、ウィスター研究所の Donaldson (1915) は以下のように記しています [1]。

“ラットは、野生または飼い馴らされたものを入手できた。後者は、アルビノか、まだらが主であった。アルビノの由来は、ひとつなのか複数なのかわからなかった。ヨーロッパのコロニーに関係しているのかもわからなかった。”

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iOS デバイスによる FileMaker の利用

BioResource Now ! Vol.8 No.11

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Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Issue Number 8 November 2012

今月はリソースセンターならではの研究成果をご紹介いただきました。200 年以上も前の日本の書物、100 年前の米国の文献、そして最先端技術を使って得られたDNAの解析結果が一本の線で繋がったようですね。もしかしたら海を渡ったかもしれない日本のまだらネズミに思いを馳せてしまいました。(Y.Y.)

お薦め Book!〈NO.11〉 お薦め Book!〈NO.11〉

著者は「ジャコブ・モノーのオペロン説」(細菌の遺伝子発現調節モデル)の提唱者として有名。J. モノーとともに 1965 年度のノーベル賞に輝いた。本書は一見、ノーベル賞科学者の研究回顧や、エスプリの効いた知的なエッセー集にみえるが、読み進むと「20世紀の生物学が明らかにしたパラドックス」というテーマで貫かれていることがわかる。そのパラドックスとは、ハエとマウスの胚発生で共通に働くことが発見されたホックス遺伝子群にはじまり、その後もっと一般的に明らかにされた、魚類と哺乳類など、形態のきわめて異なった生物もほぼおなじ遺伝子群で形成されている、という驚くべき事実である。この新しい認識は生物学にパラダイム変換をもたらしたという。そして、古いパラダイムには「進化の綜合学説」も含まれるという指摘は重要であろう。遺伝子の突然変異が酵素に変化をもたらし、個体の形質(表現型)を変えるという、よくある説明はもはや成り立たない。表現型と遺伝子型のあいだの単純な連続性は断ち切られ、むしろ生物は一種のメカノ(組み立て玩具)に似ているという。限られた種類のブロックを組み合わせて玩具の建物や乗り物ができるように、生物は遺伝子/タンパク質の限られた種類のモジュールの大規模な組み合わせの結果であり、組み合わせの配合法をすこし変える(ブリコラージュ)ことで生物は進化する、と主張される。(K.N.)

「ハエ、マウス、ヒト」フランソワ・ジャコブ著 原 章二訳(みすず書房、2000年)

用意するもの

別のアプローチとして、古い文献調査があります。例えば、ハーバード大学教授の Castle は、1914 年 The American Naturalist 誌に、「まだらネズミは、1900年ごろ Japanese rat と呼ばれていた」と報告しています [3]。また、日本では江戸時代、ネズミを飼い馴らしてペットとして飼うという豊かな文化がありました。ネズミを飼うガイドブックとして、『養鼠玉のかけはし』(1775年)や『珍玩鼠育草』(1787年)が出版されていました [4]。

もしかしたら、日本の「まだらネズミ」がヨーロッパ、アメリカへとわたり、実験用ラットのアダムあるいはイブになった の か も し れ ま せ ん。21 世 紀 のNBRP-Rat 事業とあわせて、「日本はラットを用いた科学研究を支えている」と思いをめぐらせることができます。■

Donaldson HH (1915) The Rat data and reference tables.Kuramoto T, Nakanishi S, Ochiai M, Nakagama H, Voigt B, et al. (2012) Origins of albino and hooded rats: implications from molecular genetic analysis across modern laboratory rat strains. PLoS One 7: e43059.Castle WE (1914) Some New Varieties of Rats and Guinea-Pigs and Their Relation to Prob lems of Color Inher i tance. The American Naturalist 48: 65-73.Kuramoto T (2011) Yoso-tama-no-kakehashi; the first Japanese guidebook on raising rats. Exp Anim 60: 1-6.

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参考文献

iOS デバイスによる FileMaker の利用 [ 第 75 回 ] 10分じょうほう通信

図 2.FileMaker ネットワーク設定

図 1.FileMaker レイアウト

図 3. 左からFileMaker Go、ファイルブラウザ、ホストを追加の画面

図 4. 左からファイルブラウザ、ホストを選択、登録フォーム、登録の画面

FileMaker Pro 12 と iOS デバイスで使用する FileMaker Go 12(無料)を用意します。

はじめにデータベースを新規に作成します。ここでは日付、系統名、写真の 3 つのフィールドを持つ “系統写真管理” というデータベースを作成します。日付と系統名はテキストタイプ、写真はオブジェクトタイプでフィールドを作成します。(図1)

次にファイルメニューの「共有設定」から“FileMaker ネットワーク” を選び、ネットワーク共有をオン(図2 - A)、現在開いているファイルの “系統写真管理 .fmp12” を選択し(図 2 - B)、ファイルへのネットワークアクセスの “すべてのユーザ” をチェックします(図 2 - C)。準備は以上です。

iOS デバイスでのデータベース利用iOS デバイス上の FileMaker Go を起動し、“ファイルブラウザを開く”をタップします (図 3 - ①)。“ホストを追加” をタップし (図 3 - ②)、FileMaker Pro が動作しているマシンの IP アドレスを入力し保存します( 図 3 - ③) 

IP アドレス ( 図 4 - ④) をタップし FileMaker Pro で作成したデータベース ( 図 4 - ⑤) をタップするとフォームが表示され ( 図 4 - ⑥)、iOS デバイスからデータベースを利用することができます。写真についてはその場で撮影することも撮影済みの写真を選ぶこともできます(図4 - ⑦)。

今回の説明は、iOS デバイスと FileMaker Pro のデータベースが同一ネットワークにあり無線 LAN による接続になりますが、実験圃場など無線 LAN のない場所では 3G 回線を利用することになると思います。この場合は別途 FileMaker Server が必要になりますが、FileMaker Server を導入することで、日頃のフィールドワークから採集旅行先でのデータ登録まで広く対応することができます。

FileMaker 社のホームページから FileMaker Pro、FileMaker Server の評価版がダウンロードでき、FileMaker Go 12 も無料ですので一度試してみてはいかがでしょうか?           (佐賀正和)

FileMaker Pro での準備

みなさんの中には、FileMaker で系統情報などを管理されている方もいらっしゃると思いますが、多くの場合パソコンにインストールされたFileMaker 単独での使用ではないでしょうか?今回は、FileMaker をiPhone や iPad(以下 iOS デバイス)から利用する方法を紹介したいと思います。

FileMaker Go 12は iPhone用と iPad用があり、App Storeからダウンロードできます。お持ちの FileMaker が FileMaker Pro 11/10/9/8.5/8/7 の場合は FileMaker Go 11(こちらは有料)となります。

B C

⑤ ⑥⑦

ファイルを選択ファイルを選択ネットワークアクセスですべてのユーザを選択ネットワークアクセスですべてのユーザを選択

ネットワークの共有をオンネットワークの共有をオン

BioResource Now ! Vol.8 No.10

リソースセンター紹介〈NO.42〉

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 8 O c t o b e r 2 0 1 2

じょうほう通信No.74

リソースセンター紹介No.42

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江面浩 ( 筑波大学生命環境系 )

江面浩 筑波大学生命環境系 教授

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

リソース整備で加速するトマト研究

トマト NBRP リソースを活用した果実重要形質研究の事例を2つ紹介します。1つめは、日持ち性形質の研究です(図1)。果実の日持ち性が短いと、生産、流通、消費の各段階で多くの果実が消費されずに廃棄されてしまいます。そのため、果実の日持ち性を向上させる研究が果実研究の重要テーマとして取り組まれています。NBRP リソースを最大限活用し、トマト重要形質制御遺伝子を見つけ出す TILLING 技術が開発され、果実の日持ちを制御する新規遺伝子変異が見つかりました。この遺伝子(変異)があると、収穫果実を室温で2ヶ月以上保存できます。今後、トマトの日持ちを制御する有用遺伝子として利用されることが期待されます。2つめは、果実の着果性の研究です(図2)。

リソースを使った研究事例

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お薦め Book!No.10 「知恵の樹」 URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/

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リソース整備で加速するトマト研究リソース整備で加速するトマト研究

図 1:マイクロトムの日持ち性変異体の選抜と育種素材としての性能評価A: 新規遺伝子から作られるタンパク質の一次構造と変異の位置B : 変異体( )と原系統(WT)の日持ち性の比較C: 変異体(上段)と育種系統 (下段 ) との F1系統果実の日持ち性比較

Sletr1-2図2:マクロトムの単為結果性変異体の選抜A, B, C: 変異体 (        ) の 遺伝子変異D: 変異体の葉の形態、E, F: 変異体の着果性

iaa9-1, -2, -3 IAA9

遺伝子保有F1系統

Sletr1-2

育種系統

WT0日後

A B

C

0日後 10日後 30日後

60日後WT

etr1-2

etr1-2

SIETR1

Sletr1-2 (V69D)

A

B

C

D E F

第 3期 NBRP がスタート

マイクロトムの利用増加

第 3 期ナショナルバイオリソースプロジェクト (NBRP) が始まりました。トマトは、中核機関・筑波大学(代表:江面浩)、分担機関・大阪府立大学(代表:青木考)、バックアップ機関・岡山大学(代表:久保康隆)及び東北大学(代表:金山喜則)の体制で実施し、筑波大学及び岡山大学が個体レベルリソース、大阪府立大学及び東北大学が DNA レベルリソースを担当します。今期は、リソースの質の向上を目標に掲げています。現在までに収集整備した形態変異体に新たに果実成分データを付加します。果実成分は、果実の重要形質であり、そのため研究者コミュニティーの要望の多い形質です。これらの情報付加ができれば、リソース利用の一層の促進が期待されます。

トマト NBRP は、矮性小型品種マイクロトム(Micro-Tom)を基盤として、変異誘発系統、個別変異体及び

完全長 cDNA クローン、BAC クローンの整備に取り組んできました。更に、NBRP 事業の中で BAC エンドシークエンス及びマイクロトムの全ゲノム配列解読に取り組み、これらの情報を順次公表しています。この間、トマト研究者コミュニティーでは、NBRP リソースを効果的に利用するための TILLING*1 プラットホームの構築や、トマトを実験植物として利用するための形質転換体作成の支援(理研植物形質転換ネットワーク)、新たなリソースとしての、トマトFOX*2変異誘発系統開発などが行われています。トマトNBRP は 2007 年に開始し、リソース及び関連情報の提供を行ってきました。その結果、マイクロトムを材料とした研究が世界的に活発になり、特に、2009 年以降顕著で、マイクロトムを使った論文数、被引用数とも飛躍的な増加を示しています(トムソンロイター・ Web of Science)。

[ 第 74 回 ] 10分じょうほう通信

Google ではたくさんの便利なサービスを提供しています。BioResource now! Vol8 No.5 のじょうほう通信No.69 で紹介しましたSkyDriveと同様のストレージ機能がGoogleからも提供されています。GoogleDrive では、より直感的にドラッグ&ドロップでファイル操作をすることができます。

使用までの手順も簡単です。

本年、国際コンソーシアムによりトマト詳細全ゲノム解読情報が公表され、この情報を基にリシークエンスを行ったマイクトロトム全ゲノム解読情報も直に公表されます。現在、これらの情報と次世代シークエンサーを組み合わせたトマト変異体の解析が行われており、重要形質に係わる遺伝子が次々に解明される見込みです。新しい植物育種技術として注目されている、人工ヌクレアーゼ *4を活用したゲノム編集技術の開発もトマトで始まっています。トマトを

研究材料とした研究が益々ホットになってきました。■

ゲノム解読で益々ホットに

図 1.ダウンロードページ

図 2.利用規約

図 3.スタートガイド

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連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

トマトは本ニュースレター Vol.3(No.1) でも一度ご紹介しましたが、今年は全ゲノム配列が解読され、トマト研究者にとって記念すべき年になりました。日本の研究者が大きく貢献をしていることも注目に値します。今後トマト研究の発展が加速することは間違いなく、リソースのニーズがますます高まることでしょう。(Y.Y.)

お薦め Book!〈NO.10〉 お薦め Book!〈NO.10〉

この本は、オートポイエーシス(自己創出)概念を提唱したチリの二人の生物学者による「認識の生物学」の試みだとある(訳者あとがきより)。ただし、ふつうの生物学とは異なり、DNA や遺伝子にはほとんど触れることなく、むしろ自律的システムとしての細胞に注目する。細胞は、自分自身の力によって立ち上がり、自分自身のダイナミックスによって環境から区別され、自身の境界(膜)を作りだす。境界によって区切られたシステムを単体と呼べば、細胞は典型的なオートポイエーシス単体だという。これは細胞とその働きに基礎をおく一種の有機体論であって、DNA の遺伝情報やタンパク質の機能に基礎をおく分子生物学の機械論的理解とは対照的である。たとえば「遺伝」という現象は、歴史的に連結された単体群において、なんらかの構造的特徴が世代を超えて維持されてゆくこと、とされる。また生物の進化はナチュラル・ドリフトとして捉えられ、適応(生物と環境との正常な相互作用)と淘汰(同破壊的相互作用)はよいが、「自然選択」は観察者の主観的解釈にすぎないとされる。さらに考察の対象は、神経システム、認識、言語にまで及ぶ。全体に親しみやすく平易な文章で書かれているが、内容は何やら古代の賢人が語る深淵な「知恵」のようでもある。既成の学問にとらわれることなく、生命現象を根本から問い直してみたいという向きにはお薦めの書。(K.N.)

H.マトゥラーナ、F.バレーラ 著 菅 啓次郎訳(ちくま学芸文庫、1997年)

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BioResource Now !Issue Number 8 October 2012

インストールする

Google アカウントにログインする

ドライブサービスでは先にも述べたように、ドラッグ&ドロップでファイルをアップロード・ダウンロードすることができます。是非一度、利用してみてください。          (相場 厚輝 )

下記 URL よりインストールできます。https://www.google.com/intl/ja/drive/start/download.htmlリンク先では図 1のページが表示されます。

1)

今回はWindows 版をダウンロードしてみます。ダウンロードボタンを押すと、ページが移動します。移動先では、利用規約が表示されるので、熟読し同意した上でインストールボタンを押してください ( 図 2)。

2)

同意し、インストールボタンを押すと、アカウント情報を入力するフォームが表示されるので、ログインしてください。

3)

ログインが完了すると、スタートガイドが表示されます。( 図 3)

4)

GoogleDrive について重要な注意事項利用規約を理解して頂きたいのですが、簡潔に言えば、アップロードしたデータの機密性が守られない可能性があるということです。機密性の高いデータを取り扱っている場合は十分に気を付けてください。

BioResource Now ! Vol.8 No.10

周年栽培が行われるトマトは、着果性が収穫量を決定する重要な形質です。トマトの周年栽培では、冬期と夏期に花粉発達の異常により、着果率が低下し、収量減の大きな要因となっています。そのため、花粉がなくても着果する性質、単為結果性は重要な形質で、精力的に研究が行われています。トマト NBRP リソースの中から単為結果性変異体が選抜され、その原因遺伝子の研究が進んでいます。今後、単為結果 *3 の分子機構が明らかにされ、その制御技術の開発が期待されています。

スタートガイド 2ページ目に、同期するフォルダを選択するメニューがあります。詳細設定を開き、フォルダの場所を設定してください。そのほかいくつか設定できる部分がありますので、必要に応じて設定を行ってください。( 図 4)

“同期を開始ボタン” を押せば、インストール完了です。

図 5.ドライブの利用画面

同意してインストール同意してインストール

インストール完了後、Google ページへ行き ログインすると、新しくドライブメニューが追加され、サービスを利用することができます(図 5)。

図 4.詳細設定画面

同期を開始ボタン同期を開始ボタン

Targeting Induced Local Lesions IN Genomesのことで、ゲノムや遺伝子上の遺伝子置換を検出する方法。塩基対を形成できない変異点を特異的に切断する事により、野生型と異なる塩基の位置を知る方法である。 FOX は Full-length cDNA Over-eXpressing のこと。目的の遺伝子を過剰に発現させることによって生じる変異。受精が行われずに子房壁や花床が肥大して果実を形成すること。果実は通常種なしである。DNA に特異的に結合するドメインと、DNA 切断ドメインを連結させたキメラタンパク質で、Zinc-Finger Nuclease(ZFN),Transcription Activator-Like Effector Nuclease (TALEN) などが使われている。2つの人工ヌクレアーゼが近接する標的配列に結合すると DNA 切断ドメインが2量体となり DNA を切断する。切断された DNA は、相同組換えあるいは非相同末端連結により修復されるが、この時に目的の遺伝子を改変することが可能となる。

*1

*2

*3

*4

「知恵の樹」

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

BioResource Now !I s s u e N um b e r 8 S e p t em b e r 2 0 1 2

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じょうほう通信 No.73

第3期NBRP 中核拠点の新規採択リソースの代表者からのメッセージ 「強い者は生き残れない」

お薦めBook! No.9

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リソースセンター紹介 No.41

第3期NBRP中核拠点、新規採択リソースの代表者からのメッセージ

第3期NBRP中核拠点、新規採択リソースの代表者からのメッセージ今月のニュースレターは、第3期で新規採択リソースの代表者4名の先生方に自己紹介と抱負を寄せていただきました。

「ニワトリ・ウズラ」「ニワトリ・ウズラ」 第 3 期より開始された NBRP「ニワトリ・ウズラ」を担当することになりました。これまで名古屋大学、北海道大学において、鳥類を中心に、両生類から哺乳類に至る幅広い脊椎動物を対象とした分子細胞遺伝学的研究に従事してきました。平成 21 年度より、鳥類バイオサイエンス研究センターで家禽の遺伝学研究に取り組んでいます。 我が国は、日本鶏を中心に様々な遺伝的特性をもつニワトリ・ウズラ系統を有する鳥類の遺伝資源大国です。しかし、研究用の鳥類リソースを取り巻く状況は厳しく、産業を目的とした系統の偏在化や研究費の制約などにより、多くの貴重なリソースが失われつつあります。NBRP「ニワトリ・ウズラ」では、現在、ニワトリの野生原種である赤色野鶏、高度近交系、長期閉鎖系、疾患モデル系などを含む 20 を超えるニワトリ系統を維持し、ニホンウズラは突然変異系統を含む長期閉鎖系 7系統を保有し、提供が可能です。今後は、質と量ともに世界最高水準のニワトリ・ウズラリソースの保存と育成、ならびに安定供給を実現することによって、鳥類を用いたライフサイエンス研究の基盤を補完し、研究者コミュニティへのさらなる貢献を目指します。

松田 洋一 (名古屋大学大学院 生命農学研究科 附属鳥類バイオサイエンス研究センター)松田 洋一 (名古屋大学大学院 生命農学研究科 附属鳥類バイオサイエンス研究センター)

藤島 政博 (山口大学大学院理工学研究科)藤島 政博 (山口大学大学院理工学研究科)「ゾウリムシ」「ゾウリムシ」 第3期から採択された NBRP ゾウリムシの代表機関課題管理者を担当いたします山口大学の藤島です。東北大学の院生の時から、ゾウリムシを使い続けて34年になります。ゾウリムシは、普遍的生命現象が多数みつかった重要な研究材料です。28年前から細胞内共生の成立機構を明らかにする目的で、国内外の研究者にご協力いただいて、ゾウリムシ属の多数の種や株の収集と保存をしてまいりました。凍結保存ができず、細胞分裂回数に依存して老化するので、株の保存には労力を伴います。 この事業では、ゾウリムシ属の多様な株をシンジェン、接合型、採集年、採集地、特徴などの情報と共に提供いたします。ゲノムの解読や、トランスクリプトーム解析に使用された株や突然変異株も提供いたします。細胞内共生細菌や、共生藻を維持している株の提供にもご相談に応じます。山口大学は、ゾウリムシとその細胞内共生生物に対する、モノクローナル抗体の保有数も世界最大規模です。これらの抗体の使用にもご相談に応じます。ゾウリムシ属は、記載種が約50種存在しますが、現在でも野外から採集可能な種は約半数です。この事業は、ゾウリムシ属の種の保存の機能も担います。

「ネッタイツメガエル」「ネッタイツメガエル」 第 3 期から新規に NBRP ネッタイツメガエルを担当することになりました。多様化機構研究部門に所属しております。どうぞよろしくお願いします。ネッタイツメガエルは、サイエンスコミュニティに登場して日が浅い発展途上の実験動物で、研究方法や情報共有などの基盤整備が十分とはいえませんが、リソースとして以下の利点があります。アフリカツメガエルより小型で、省スペースでの飼育が可能です。5 つの野生系統が存在し、系統間での比較が可能です。さらに 2 倍体で世代時間が短く、全ゲノム情報が利用できます。このため、アフリカツメガエルでは困難だった遺伝的解析が容易で、遺伝子破壊やゲノム情報を利用した研究が可能です。このため、ネッタイツメガエルはライフサイエンス研究に大きく寄与しうる「発展が見込まれるバイオリソース」と考えられます。本事業では、このような利点を持つネッタイツメガエルのさらなる普及と研究の発展を促進するため、高品質近交系作出と標準系統確立、供給体制改善、実験プロトコル整備発信、ユーザ支援、国際連携などを実施して、本リソースユーザーの拡大を図りたいと考えています。皆様のご意見・ご要望をいただければ幸いです。

住田 正幸 (広島大学大学院理学研究科 附属両生類研究施設)住田 正幸 (広島大学大学院理学研究科 附属両生類研究施設)

「研究用ヒト臍帯血幹細胞 」「研究用ヒト臍帯血幹細胞 」 第3期から「研究用ヒト臍帯血幹細胞」を担当させていただくことになりました。本事業は、平成15年~24年6月まで文部科学省の「再生医療実現化プロジェクト」の一環として行われてきたものを、平成24年7月からNBRPの一部門として継続することになったものです。 わが国における、臍帯血移植と臍帯血幹細胞に関する研究は世界でも群を抜いており、日本さい帯血バンクネットワークを介しての臍帯血移植は累計で 9,000 例を超え、世界全体の約 3 分の1を占めています。臍帯血バンクに提供される臍帯血のうち移植に用いることができないもので、研究用の提供同意をいただいた臍帯血を、本事業を通じて国内外の研究者に提供いたしております。 本事業においては、移植用の臍帯血バンクと連携して、造血幹細胞や間葉系幹細胞を始めとする幹細胞研究、がん研究、免疫研究、感染症研究、アレルギー研究、創薬研究、遺伝学的研究、環境医学研究、さらには iPS 細胞に関する研究など、広く医学・生物学研究に利用できる同意をいただいております。 提供可能な臍帯血幹細胞として凍結された臍帯血幹細胞(単核細胞、有核細胞、CD34 陽性細胞)と新鮮臍帯血(採取後 36時間以内)があります。研究の用途に応じてご利用下さい。

加藤 俊一 (東海大学 医学部)加藤 俊一 (東海大学 医学部)

リソースセンター紹介 〈No.41〉

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

Linux サーバまるごとバックアップソフト紹介「Mondo Rescue」

BioResource Now ! Vol.8 No.9

次ページへ続く

サーバ運用において、バックアップが重要であることは言うまでもありません。当センターにおいても、先日落雷による停電により、古くから稼働していたサーバが故障したため、バックアップからシステムの復旧作業を行いました。ただ、OS イメージやアプリケーションの設定等が一部バックアップ出来ていなかったため、復旧に多くの時間を費やしてしまいました。バックアップをしているだけでは不十分で、迅速に復旧させるための OS イメージバックアップや、リカバリ手順整備等の重要性を再認識したところです。

必要なファイルは、「afio」「buffer」 「mindi-busybox」 「mindi」「mondo」の 5 ファイルで、Mondo Rescue の公式 FTP サイトから該当する rpm ファイルをダウンロードして次のコマンドでインストールして下さい。

じょうほう通信 [第 73 回 ] 10分Linuxサーバまるごとバックアップソフト紹介「Mondo Rescue」

BioResource Now ! Vol.8 No.9

バックアップすべき最重要なデータは、Web サーバであればコンテンツファイル、DB サーバであればデータベースファイル等のユーザデータであることは言うまでもありません。これに加え、復旧スピードを考えると OS イメージのバックアップも取っておくとベストです。今回は、Linux サーバ上で OS やデータをまるごとバックアップ出来るソフトウェア「Mondo Rescue」を紹介します。

「Mondo Rescue」は Linux 上で動作するオープンソースのソフトウェアで、通常のファイルバックアップ機能に加え、OS イメージをまるごとバックアップしてリカバリメディアを作成することができ、障害発生時には、このメディアから簡単に復旧できるリストア機能も備えています。

バックアップの重要性コマンドプロンプトから以下の様なコマンドを実行することでバックアップが実行されます。

上記オプションの説明を以下に記載します(表1)。

② 使い方

最後に

サーバの障害発生時には、代替機を準備した後に手順②で作成したリカバリメディアからブートすることで、サーバをバックアップ時の状態にリストアする事が出来ます。

備えあれば憂い無しということで、バックアップについて十分な運用体制が確立しているか再検討してみてはいかがでしょうか?バックアップというと初回設定をするだけで安心してしまいがちですが、障害発生時に慌てないよう、リカバリ手順の整備、復旧訓練、バックアップが正常に稼働しているかの定期監視等、日々の運用も含めて考えていくことが重要と思います。              (山川 武廣 )

③ メディアからのリカバリ機能

コマンドの実行が終了すると「-d」オプションで指定したディレクトリに ISO イメージファイルが生成されますので、リストアに備えて DVD メディアに書き込んでリカバリメディアを作成したり、テープや他の媒体に移動します。また、上記コマンドを「cron」等から実行することで定期的に自動バックアップすることが出来ます。

www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

BioResource Now !Issue Number 8 September 2012

お薦め Book!〈NO.9〉

著者は、素数年(13 年とか 17 年)周期で大発生するセミ、いわゆる「素数ゼミ」の謎をみごとに解明したことで有名になった人。本書では、副題に「環境から考える新しい進化論」とあるように、対象を生物一般に広げて従来の進化理論とは異なる独自の視点から進化のメカニズムを論じている。ダーウィンをはじめ従来の進化論では「環境は変化しない」という前提のもとに、自然選択がどう起こるかが研究された。たとえば、集団遺伝学を中心とする進化の総合学説では、変異体の適応度は野生型からのズレ、すなわち相対適応度(W = 1+s)として与えられる。しかし野生型=安定型という前提には、環境が変化すれば現在の野生型はもはや「安定型」ではなくなる、という当たり前の認識が欠除している。もちろん環境変化が小さければ問題はないが、十分大きな環境変化が起これば、それまでの野生型はその変化に耐え、新しい環境に適応するか、それができなければ絶滅せざるをえない(進化と絶滅は表裏の関係)。環境は変動するものだという著者の視点に立てば、環境 A に適応した者はその環境では強くても別の環境 B では不適となり滅亡するが、両方の環境に「ほどほどに」適応した者は生き残る。したがって、著者の主張する環境変動説は「多くの子供を残す者」ではなく、十分に長いタイムスパンでみて生き残る者こそが勝者になる、という自然選択説である。(K.N.)

「強い者は生き残れない」吉村 仁 著(新潮選書、2009年)

図 1. OS イメージやアプリ設定のリカバリが可能な場合のリストア時間の差

表 1. バックアップコマンドのオプション説明

OS イメージバックアップ

バックアップソフト「Mondo Rescue」とは

ハードウェア用意

OSインストール

ネットワーク等のOS設定

アプリインストール

アプリ設定

動作検証

データリストア

ハードウェア用意

動作検証

バックアップリカバリ

時間短縮

# rpm -ivh *.rpm

まずは、バックアップ対象サーバに「Mondo Rescue」をインストールします。今回は CentOS5.8 でのインストール方法、バックアップ手順を解説します。

① インストール方法

# mondoarchive -Oi -d /backup -s 4480m -E /data -p backup20120920

( Mondo Rescue の公式 FTP サイト: ftp://ftp.mondorescue.org/rhel/5/i386/ )

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

Editor's Note

連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

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ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の第3期新規採択課題の代表者の先生方に自己紹介と抱負を寄せていただきました。新規とはいえ皆ベテランの先生達ばかりですので、立ち上げにスピード感があり、プロジェクトの更なる充実・発展が期待できそうです。本ニュースレターでは新規採択リソースの特集記事も予定しておりますので、楽しみにお待ちください。(Y.Y.)

オプション 意味

-Oi isoイメージを生成

-d バックアップイメージを保管するディレクトリやデバイスを指定する

-s メディアのサイズを指定する。

-E バックアップ対象外のディレクトリを指定する

-p バックアップ出力ファイル名を指定する

お知らせThe 4th ANRRC が韓国・済州島にて開催されます。日程:2012 年 10 月 17 日(水)- 10 月 19 日(金)

創立 90周年記念 第 64 回日本生物工学会大会にて、附設展示会を行います。日程:2012 年 10 月 24 日(水)- 10 月 26 日(金)

第2回モデル生物細胞性粘菌トレーニングコース日程:2012 年 11 月 23 日(金・祝)- 25 日(日)会場:筑波大学第2エリア地区内 参加費:無料(ただし、交通・宿泊にかかる費用は自己負担でお願いします。)

第35回日本分子生物学会年会NBRP 実物つきパネル展示:「バイオリソース勢ぞろい」 日程:2012年 12月 11日(火)- 12 月 14日(金) 9:00 - 17:00 ( 最終日は 16:15 まで ) 会場:福岡国際会議場・マリンメッセ福岡

BioResource Now ! Vol.8 No.8

新企画:リソースセンターの現場から

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 8 A u g u s t 2 0 1 2

じょうほう通信No.72

リソースセンターの現場から

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簑原由布子 (九州大学大学院農学研究院 )

簑原由布子 九州大学大学院農学研究院 テクニカルスタッフ

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

NBRP カイコのスタッフとして働き出して早 4 年、初めて繭調査をお手伝いした時には繭と蛹のどっちが必要なのかすらわからない事務スタッフだった私が、テクニカルスタッフとなり実験や飼育やデータベースを通してカイコというリソースと触れ合ううちに、すっかりその魅力にとりつかれてしまいました。そんな折に、現場の声を伝えるこの新企画のお話をいただき、拙筆ながら私が日頃感じているカイコの魅力について述べたいと思います。

まずは何と言っても幼虫のフォルム。孵化直後はアリくらいの大きさしかない幼虫が 20 日ほどの間に 4 回脱皮し小指くらいのムッチリとした姿に変わります。ひたすら桑だけを食べて日々成長する様は、もはや感動です。繭を作る前のぱつぱつでぷりぷりで、さらっとした終齢幼虫のその感触はまるで赤ちゃんの肌のよう・・・しかも小さなたくさんの足でギュッと掴んでくる感じなんかは、もうさながら我が子。体の模様も遺伝子によって様々です。標準的なのは、白い体の背中に月と星のような模様(半月紋と星状紋)と頭側に眼のような模様(眼状紋)があるタイプ(図 1)ですが、黒や縞やゴマ塩斑点のようなものもあります(図 2)。

カイコに魅せられて

変えたり飼育道具を変えたりと、春蚕の時期は一日があっという間です。無事に大きく育って糸を吐きだした熟蚕(じゅくさん)を蔟(まぶし:繭を作るための枠)に移し、1 週間ほどしたら繭を蔟から外して、羽化の邪魔にならないように毛羽を取ってあげ、羽化後交尾が終われば引き離して卵を産ませると、ようやく次代へ更新が完了されます。受精卵は 1 年の寿命で凍結保存技術は未だ研究中なので、毎年この作業が繰り返されます。1911年から代々の先生方が残された野帳を見ると、歴史の重さと責任を感じずにはいれません。

かわいいかわいいと育てるだけでは私の仕事は成り立つわけがなく、1 年の大半は結構残酷なことをしています。氷麻酔した 4 齢のカイコから卵巣を取り出して凍結したり移植したり。オス蛾の貯精嚢を引っ張り出して精子を掻き出して凍結、その後解凍した精子をメス蛾に人工授精するなど(図 4)。

一番のお気に入りは眼状紋がニコちゃんのようになっているもので、こちらスタッフ人気No.1 です。

さらに名前。カイコは日本で長く飼育された歴史があるので、和名がついている系統がいろいろあります。姫蚕(ひめこ)、虎蚕(とらこ)、竹蚕(たけこ)、樽蚕(たるこ)、臭蚕(くさこ)などどこかの姉妹みたいで愛着がわきます。仕草にも心揺さぶられます。私の一番は小さな穴から頭を出す 5 齢幼虫(図 3)。繭からひょっこり顔を出す蛾もかわいいですし、蛹がフリフリするのもクセになります。

そして、長い年月をかけて人の手なしでは生きられない家畜化された昆虫である点が、カイコの魅力を増していると思うのです。温度と湿度を管理して 1 日 2 回の給餌と除沙(じょさ:ふんや食べ残しの除去作業)をし、成長に合わせて桑の大きさを

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位置情報に御用心

お薦め Book!No.8 「シマウマの縞 蝶の模様」 URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/

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NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

カイコに魅せられてカイコに魅せられて

図 1 :標準的なカイコ

図 4 A:卵巣摘出 B:卵巣移植後のカイコ   C :オス蛾の貯精嚢を取る D:人工授精

図 3:小さな穴から顔を出す5齢幼虫

図 2:幼虫の模様いろいろ

AA

DD

BB

新企画!新企画!

CC

[ 第 72 回 ] 10分じょうほう通信

カメラアプリに対して位置情報の記録を拒否することで、未然に位置情報が記録される事態を防ぐことができます。他のGPS 機能を持つスマートフォンやデジタルカメラをお持ちの方は、是非一度、写真撮影時の位置情報の取り扱いについてマニュアルを参照して下さい。

皆さんがスマートフォンやデジタルカメラでリソースの写真を撮影する時、被写体以外の情報も記録されている事を御存じでしょうか?最近発売され始めたスマートフォンやデジタルカメラには写真撮影時の位置情報を自動的に記録する機種が多くなっています。この様な機種で貴重なリソースの写真を撮影し、位置情報を削除せずに一般公開すると、人知れず生息地や保管場所を公開してしまうことになります。今回は、写真に位置情報を残さない方法を紹介します。

iPhone4S を例に写真に位置情報を記録しない方法を紹介します。iPhone のカメラアプリは初回起動時に位置情報取得の許可を訪ねてきます。ここで拒否すればその後の写真に位置情報は記録されませんが、許可した場合は以下の手順で位置情報の記録を行わないようにすることができます。

「設定」アプリを起動します。(図 1)1)

「カメラ」を「オン」から「オフ」にスライドします。(図 3)

3)

ースの充実を図るとともに、データベースでも随時情報をお届けしていきますので、ぜひのぞいてみてください。■

図 3:位置情報サービス画面

図 2:設定画面

位置情報に御用心

カイコにはどうか私を恨まないでと、毎年放生会(ほうじょうや:箱崎宮大祭)で祈るのみです。これが、これからの系統保存の効率化や負担軽減となったり、いろいろな研究の役に立てればと思います。

カイコは刺さないし噛まないし逃げたり飛んだりしない、扱いやすい昆虫です。多くの人の様々なリクエストにお応えできるようリソ

連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

リソースセンターの日々の活動は多くのテクニカルスタッフの方々によって支えられていますが、お仕事の様子を拝見したりお話を伺うことは普段なかなかできません。先日カイコのセンターにお邪魔した際、蓑原様とお話をする機会を得、お仕事への情熱とカイコに対する思い入れの深さに感動し、今回のご執筆をお願いしました。大きな黒い瞳を輝かせて愛情たっぷりに説明してくださった様子は、紙面からも皆さまにお伝えできると思います。(Y.Y.)。

お薦め Book!〈NO.8〉 お薦め Book!〈NO.8〉

本書の副題は「エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源」とあり、エボデボ(進化発生学)革命の立役者の一人であるキャロルによって書かかれた一般向けの科学書である。

1980 年代にショウジョウバエとマウスで見出されたホックス遺伝子群の共通性は、生物学における世紀の大発見といわれ、これにより発生学は遺伝子と関連づけて研究されるようになり一挙に現代化された。しかし、胚発生の過程は複雑であり関与する遺伝子の種類も多く、さらにモデル生物ごとに遺伝子名が異なるので、発生学の教科書を開いてもなかなか理解が進まない。ところがキャロルの筆致は力強く、細部にとらわれることなく要点を説明してくれるので、私のような門外漢でもフォローしやすい。キャロルは、動物の形態形成に関わる遺伝子を一括して「ツールキット遺伝子」と呼び、分類上は遠く隔たる節足動物と脊椎動物のあいだでも基本的な体制(体節、付属肢、眼や心臓などの器官)を決める遺伝子には共通性があることを強調する。そして、その反面われわれが目にする動物ごとの形態のちがいや多様性は、ツールキット遺伝子の発現を制御する遺伝子スイッチ(正確には、シス制御エレメント)の個数と種類のちがいに由来するという。題名にある蝶の翅の「目玉模様」は、キャロルたちがツールキット遺伝子の働きによって生じることを実証して話題になった成果にちなむ。(K.N.)

「シマウマの縞 蝶の模様」ショーン・B・キャロル著 渡辺政隆 他訳(光文社、2007年)

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BioResource Now !Issue Number 8 August 2012

http://silkworm.nbrp.jp/http://www.shigen.nig.ac.jp/silkwormbase/

カイコギャラリーカイコギャラリー

写真に位置情報を記録しない!

写真から位置情報を削除する方法はいくつかあります。大別すると画像の拡張子を変更する方法と、専用ソフトを使用して位置情報を削除する方法です。それぞれの方法について紹介します。

位置情報などを写真に記録する技術は Exif として昔から知られていました。しかし、最近のスマートフォンやデジタルカメラの発達により、撮影者が知らないうちに位置情報など被写体以外の情報も記録されるようになっています。リソースを写真で記録する際は位置情報の有無についてご確認下さい。                                         (渡邉 融)

写真から位置情報を削除する!

「位置情報サービス」をタッチします。(図 2)

2)

拡張子を JPG から変更する位置情報が追加される写真の拡張子は JPG です。そのため、写真の拡張子をペイントソフトで JPG 以外の拡張子(例 GIF)に変換して保存し直すことで、位置情報を写真から削除することができます。

位置情報は「ExifEraser(フリーソフト)」等でも削除することができます。ソフトをダウンロードして指示に従ってインストールします。その後、位置情報を持つ写真をアイコンにドラック&ドロップするだけで位置情報を削除できます。(図 4)

1)

専用のソフトを使用して削除する2)

図 1:iPhone4s の設定アプリ図 1:iPhone4s の設定アプリ

図 4:写真をドラック&ドロップする

ExifEraser:http://www13.plala.or.jp/himanote/exiferaser.html

BioResource Now ! Vol.8 No.8

BioResource Now ! Vol.8 No.7

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BioResource Now !I s s u e N u m b e r 8 J u l y 2 0 1 2

じょうほう通信No.71

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三浦 励一 ( 京都大学農学研究科 雑草学分野 )

三浦 励一 京都大学農学研究科 雑草学分野 講師

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

多くの栽培植物には、雑草型があるといわれる。雑草イネ、雑草オオムギ、雑草スイカ、雑草ヒマワリというように。「雑草」は学術用語なのだろうか? 野生とは違うのだろうか? ここでは、栽培植物近縁種を念頭において、雑草(型)という語がどのような意味で使われているのかを紹介してみたい。

学術用語としての「雑草」(weed)は、田畑にはびこって農業に害をおよぼす植物をさすところからはじまった。この意味では、明治時代には「害草」と「雑草」という用語がほとんど同様に使われていたが、やがて「雑草」のほうに統一されていったようである。一方、植物生態学では、人の生活圏に生育する植物群をどう位置づけるかという別の観点があった。農耕地だけでなく、路傍や空地に生える植物種には、人為の影響の及ばないところには生育しないものが多い。雑草はたくましいとよくいわれるが、じつは人間がかまってやるときにだけ強さを発揮する内弁慶なのだ。そこでたとえば、「たえず外的な干渉や生存地の破壊が加えられていないとその生活が成立・存続

「雑草」と「雑草型」の意味について

写真 : 雑草メロン(左)と雑草モスビーン(右)。インドのグジャラート州で。

とだえれば消滅してしまうような集団をさす。例えば、アジアイネの野生祖先種の典型的なものは、河辺などの湿地に生えるほふく性の植物であるが、雑草イネ(weedy rice)といっているのは、水田内に生える脱粒性のイネのことで、植物体は直立し、脱粒性をもつ点以外は栽培イネによく似ている。インドやアフリカの農村を歩くと、畑の中や生け垣に長さ4 cm 程度の実をつける野生のメロンが生えているのをよく見かけるが、これも生育環境からは雑草型と位置づけることができる。

農耕地の中や周辺に生える栽培植物の雑草型の由来については、(1) その作物が栽培化された頃からずっと作物の近辺につきまとっている、(2) 栽培型の突然変異や

できないような特殊な一群」(笠原安夫)のような定義がなされ、そのような植物群に共通した生態学的特性をさぐる研究が進められた。「雑草」について農学的定義と生態学的定義が並立しているのは欧米でも同様である。

では、栽培植物の同種や近縁種について「雑草型」というときはどういうものをさしているのか。まず、雑草型は広い意味での野生型形質をもち、人に播かれることなく、自ら種子(あるいは栄養繁殖体)をばらまき、個体群を維持していく。穀類の場合はわかりやすい判別形質があって、種子が熟したときに離層ができて脱落する「脱粒性」をもつものが野生型(場合によっては雑草型)、これをもたないものが栽培型である。

しかし、「雑草型」という言葉を用いる研究者は、それを「野生型」ともまた区別しながら使っていることが多い。そこでは、雑草の生態学的なほうの定義が意識されている。「野生型」は人為的攪乱に依存せずに世代を繰り返している集団をさすのに対し、「雑草型」は耕地内や人里近辺の攪乱環境に適応し、人為的攪乱が

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スマートフォン向けのサイトをドラック&ドロップで作ろう !

お薦め Book!No.7 「移行化石の発見」

Oryza rufipogon

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「雑草」と「雑草型」の意味について「雑草」と「雑草型」の意味について

[ 第 71 回 ]じょうほう通信

ダウンロードしたファイルをそのまま公開することも可能ですし、細部を修正することも可能です。気軽にスマートフォン向けのサイトの作成を試すことができますので、1 度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。                     (木村 学)

これで問題ない場合は、図 2の④「Download HTML」をクリックすると、

ページを構成するファイルをダウンロードすることができます。ダウンロードせずにブラウザを閉じてしまうと、作成したページのデータが消えてしまいますので、注意してください。

皆さんの周りでスマートフォンをお持ちの方はどれくらいいるでしょうか。株式会社ディーツー コミュニケーションズの調査結果 (※1) によると、2012 年 2 月時点で普及率は 23.6% とのことです。PC 向けのサイトもスマートフォンで問題なく閲覧できますが、PCに比べて画面サイズが小さいため、スマートフォンに最適化されたサイトを用意すると、ユーザーはより快適に訪問してくれるはずです。しかしながら、スマートフォン向けのコードを一から記述するのは大変です。スマートフォン向けのサイトは、どのように作成すれば良いのでしょうか。

そこで「Codiqa」(※2) を紹介します。Codiqa は、ブラウザ上でページのパーツをドラッグ & ドロップしていくことにより、直感的にjQuery Mobile(※3) ベースのスマートフォン向けのサイトのプロトタイプを作っていくサービスです。jQuery Mobile とは、Appleの iOSや、Android などのスマートフォン向けに最適化された、JavaScript のフレームワークです。Codiqa のサイトではアカウントを作成する必要がありますが、jQuery Mobile のサイトでは不要なのでこちらで試してみましょう。

図 1 の緑枠①に囲まれたページのパーツの中から、追加したいパーツをドラッグし、緑枠②の箇所にドロップするとパーツが追加されます。

jQuery Mobile のサイトにアクセスすると、ページの中頃に図 1 の よ う な「Easy to use: Try it now!」が表れます。

1)

2)

パーツを追加したら、上部にある「BUILD-PREVIEW」のスライドバーを「BUILD」から「PREVIEW」に変更します ( 図 2の③)。

もし修正する必要がある場合は、「BUILD」に戻せば、パーツの追加・編集・削除を行うことができます。

3)

4)

受け入れられてきている。なお、作物そのものの種子が、たまたま目的外の場所にこぼれて発芽したものは、feral ではなく volunteerという。たとえば、近年、北海道で問題化している「ノライモ」はvolunteer potato である。

念のためにつけ加えておくと、英語の weedy が栽培植物などの雑草型という意味で使われる頻度は高くない。Weedy のもっとふつうの意味は、畑などが雑草だらけということである。管理が悪くて雑草だらけになってしまったコムギ畑を weedy wheat などということもあるのでご用心を。

BioResource Now ! Vol.8 No.7

図 1. ページ作成画面

図 2. プレビュー画面

②※1. 株式会社ディーツー コミュニケーションズ - スマートフォン普及動向調査    http://www.d2c.co.jp/news/2012/20120418-1340.htm※2. Codiqa    http://www.codiqa.com/※3. jQuery Mobile   http://jquerymobile.com/

③ ④

スマートフォン向けのサイトを ドラック&ドロップで作ろう !

10分

品種間の交雑・組み換えに由来する、(3) 栽培型と野生型の最近の交雑に由来する、などの可能性が考えられる。従来はこれらに対して、みな雑草型(weedy)の語をあてていたが、Gressel(2005)は (2) と (3) に対して、動物の例にならって feral という用語を用いることを提案し、これがしだいに

連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

いろいろな植物の研究者が集まった時、「雑草の定義」の話題で大いに盛り上がったことがありました。そこで雑草学のプロにお伺いしようということになり、今回ようやく三浦先生にご執筆いただくことができました。やはり雑草は「深い」です。feral(野良)に対して食べられるものには"volunteer" がつくというのも面白いですね。三浦先生お忙しいところ本当にありがとうございました。酷暑の夏、熱中症に気を付けて、オリンピックも楽しみましょう(Y.Y.)。

お薦め Book!〈NO.7〉 お薦め Book!〈NO.7〉

アメリカの若い古生物学者による著作で、原題は邦訳よりもかなり控え目の” Written in Stone”。ダーウィンが、進化の中間段階の化石(つまり、移行化石)が見つからないことに悩んだという話は有名である。ところが本書によると、この 2,30 年の間に動物の移行化石はぞくぞくと見つかってきたという。本書では、魚類から陸上四肢動物への進化、爬虫類から鳥類への進化、哺乳類の祖先、陸で生活していたクジラの祖先、ゾウとウマの進化、類人猿からヒトへの進化といった問題が取り上げられ、豊富な化石試料とともに専門家以外には知られていない多くの事実が開示される。

それぞれの生物進化に共通するのは、進化が直線的ではなく、多数の枝が放散し、その一方で絶滅によって枝が刈り込まれるといった、いわば生成と消滅を含んだ錯綜したパターンを示す点だという。たとえば、鳥類への進化では多種類の羽毛恐竜への放散がまず起こった。始祖鳥はその中の1つにすぎず、鳥に至る中間形態というよりも途中で絶滅した化石種に当たるという。こうした多くの事例から、かつて言われた「定向進化」は真でないことがよく分かる。また、進化の歴史を巻き戻すと人間にまで至る進化のプロセスが再現するだろうか、という「グールドの問題」にも自ずと答えられる。(K.N.)

「移行化石の発見」ブライアン・スウィーテク著 野中香方子訳(文芸春秋、2011年)

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BioResource Now !I s sue Numbe r 8 J u l y 2012

ホット情報〈NO.40〉

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 8 J u n e 2 0 1 2

BioResource Now ! Vol.8 No.6

「粘菌 -その驚くべき知性」お薦めBook!No.6

P2

じょうほう通信No.70

ホット情報No.40

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金子 武人 ( 京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設 )

ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設 特定講師

金子 武人

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

2001 年 8 月、私はハワイ・ホノルル空港に降り立った。これが、フリーズドライ精子保存法開発の始まりである。柳町隆造博士率いるハワイ大学の研究グループは、1998 年にフリーズドライ精子からマウスを誕生させることに成功した。柳町グループの NIH プロジェクトに参画し、マウスフリーズドライ精子保存法をより効率の良いものにすることが私に与えられた課題であった。2 年間という短い期間の中で、絶対的な観光地である「ハワイ」の誘惑と闘いながら、フリーズドライに対する精子の耐性や作出効率向上に関する研究を行った。その甲斐もあって、保存液への金属キレート剤の添加、pH、保存温度、そして精子の成熟度がフリーズドライ後の精子の受精能に大きく影響することを明らかにすることができた。

液体窒素による凍結保存法が主流の中、なぜ「フリーズドライ」にこだわるのか?それは、この技術が携わっていたバイオリソース事業に大きなメリットがあると感じたからである。フリーズドライ精子保存法は、

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10 年ひと仕事-フリーズドライ精子保存法開発への道-

写真 1:フリーズドライ精子のアンプルと冷蔵庫(4℃)で 5 年間保存した精子から得られたラット(左)および3年間保存した精子から得られたマウス(右)

○ 特殊な凍結保護剤・保存液が不要 (トリス -EDTA 保存液で保存可能)○ 液体窒素タンクや定期的な液体窒 素の購入・補充が不要(冷蔵庫で 保存可能)○ 設備・維持費の大幅なコストダウ ンが可能○ 保有サンプルの管理、バックアッ プが容易○ ドライシッパー・ドライアイス不 要の常温国際輸送が可能(常温で 3ヶ月保存可能)

今後も起こりうるであろう大災害においても、安全に遺伝資源を守ることのできる液体窒素不要の新しい遺伝資源長期保存法の実用化が、急務の課題であるとあらためて強く認識した瞬間であった。

そのような状況の中、フリーズドライ精子の長期保存が成功した。ラットで 5 年間、マウスで 3 年間、冷蔵庫(4℃)で保存したフリーズドライ精子から正常な繁殖能力を持つ子供が産まれたのである ( 写真 1)。どちらの精子もフリーズドライ直後の精子を用いた時と変わらない産子作出率が得られたことから、保存中の劣化や受精能の低下は認められなかった。この結果により、フリーズドライ精子保存法は実用化に大きく前進した。フリーズドライ精子長期保存法の実用化によって、これまでの液体窒素による凍結保存法よりも「安全・簡易・低コスト」の遺伝資源保存・輸送が可能となるのである。また、精子のみで遺伝子を次世代に伝えることができるトランスジェニック・コンジェニック系統の保存や、保存系統の簡易・安価なバックアップとしてフリーズドライ精子保存法は有効なツールになる。

である。このため私は、帰国後もバイオリソース事業を行いながら、フリーズドライ精子保存法の効率向上を目的とした研究を継続した。バイオリソース事業において、貴重な遺伝資源を安全に次世代に受け継ぐことは最重要課題である。そこで、マウスやラットでは、生体維持による感染症や遺伝的汚染のリスクを軽減するために、凍結精子・受精卵による系統保存が行われてきた。しかしながら、保存系統数の増加に伴う設備の増設、液体窒素使用量の増加、定期的な設備メンテナンス等によるランニングコストは決して安価とは言えない。

また近年、安全面でも今後のバイオリソース事業において大きく考えさせられる事件が起きた。2011年3月、東日本を襲った大震災である。この事件により、これまでフリーズドライ精子保存法の開発は、研究レベルであり実用化については将来的なものとしか考えていなかった私の思いは大きく変わった。震災では、長期停電により冷蔵庫・冷凍庫で保存されていた多くの研究用サンプルが失われた。液体窒素タンクは、供給システムが停止してもタンクが破損しない限り液体窒素の液面は維持されるため、震災直後の遺伝資源は守られた。しかしながら、1日 5~ 10 リットル気化する液体窒素は、生産工場被災による製造停止、道路の寸断による交通機能のマヒにより供給が途絶えたことで危機的な状況に陥った。

10年ひと仕事-フリーズドライ精子保存法開発への道-

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BLAST+ のインストール

[ 第 70 回 ] 10分じょうほう通信

BioResource Now ! Vol.8 No.6

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連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

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(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Issue Number 8 June 2012

リソース保存技術の革新は、リソースセンターの運営に大きく貢献することはもちろんのこと、今後世界中の研究室に浸透することを考えるとその影響力は計り知れないですね。それにしても、新技術の発見から実用化まで 10 年間の金子先生の弛まないご努力に頭が下がります(Y.Y.)。

お薦め Book!〈NO.6〉 お薦め Book!〈NO.6〉

著者はイグ・ノーベル賞を2度も受賞したことで有名な人。ちなみに、イグ・ノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる」研究に対して与えられるという。

本書では単細胞の真正粘菌が示す「優れた能力」が紹介されているが、その1つが 2008 年のイグノーベル賞を受賞した「粘菌の迷路解き」である。迷路の中に粘菌を入れ、迷路の入り口と出口に餌を置くと、粘菌は2つの餌を同時に食べようとして、入り口と出口をつなぐ最短の経路に沿って身体を伸ばす。つまり粘菌としては、餌は食べたいし身体は2つに分断したくないので、最短の管(原形質)でつないで身を1つに保つということらしい。

もう1つは、2010 年のイグノーベル賞に輝いた「関東圏の鉄道網を再現した粘菌」の話だ。寒天プレート上に描いた関東地方の地図の主要な都市に餌を置き、粘菌を東京の位置から出発させると、原形質流動によって広がり、餌に集まる。多数の餌を同時に食べようとするので、結果的に粘菌はネットワーク状の管を形成し、その形が現実の JR 路線図とよく一致したという。このとき、粘菌は管の総延長を短くすると同時に、管の一部が断線しても身体は2分されないように(連結保証性)、二重の最適化を行ったのだという。ここまでくると、たしかに粘菌は「驚くべき知性」をもっていると言えそうだ。(K.N.)

「粘菌 -その驚くべき知性」中垣俊之著(PHPサイエンス・ワールド新書、2010年)

今回の成果が得られるまでの道のりは 10 年を要した。まさに「10 年ひと仕事」である。フリーズドライ精子保存法は、野生動物の保護や優良家畜の保存においても応用できる可能性が高いことから、他の動物種での長期保存の成功を期待し、今後は精子の常温長期保存、受精卵のフリーズドライ保存法の開発という新たな道を歩んでいきたい。■

先生のご発表論文 PLoS One 7(4): e35043, 2012 Cryobiology 64: 211-214 (2012)

http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/reproduction/sperm_freeze-drying_jp.aspxhttp://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/reproduction/home_jp.aspxhttp://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120410_1.htm

現在までに受精卵のフリーズドライに成功した報告はない。近交系は受精卵で保存しなければならないので、全てのラット・マウス系統をフリーズドライで保存することはできないが、「精子=フリーズドライ、受精卵=液体窒素保存」とするだけでもコスト・安全面での貢献度は大きい。

$ blastn -version

blastn: 2.2.26+Package: blast 2.2.26, build Feb 9 2012 16:01:19 図 2:バージョン情報例

・・

・・

関連記事のサイト

BLAST+ のインストール手順

BLAST+のインストール2009 年、NCBI は従来の BLAST(Legacy BLAST)の改良版である BLAST+ をリリースしました。長大なクエリ配列の分割や、Trace-back での部分検索の導入などが主な改善点とされ、これまで処理に時間のかかっていた大規模な検索も、短時間で実行できるようになりました。

図 1 は BLAST+ と Legacy BLAST とで、検索実行時間にどれほどの違いが生まれるのかを示した図です。大腸菌の全ゲノム配列 (4.6Mbases)をデータベースとし、その任意の箇所から取得した 5kbases、50kbases、500kbases の配列をクエリとして tblastx( フィルタオフ )を実行し、その処理時間を計測しました。

その結果、クエリ配列が長くなるほど BLAST+ と Legacy BLAST の実行時間の差が大きくなることがわかります。BLAST+ は Legacy BLAST同様、ローカル環境にインストールして利用することが可能です。今回は、Linux での BLAST+ のインストールから、処理の実行までを紹介します。

※実行環境は、表 1の通りです。

① NCBI の BLAST のダウンロードページから、BLAST+ 最新版のダウン ロードページ (ftp://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/blast/executables/blast+/LATEST/) を開きます。② 2012 年 6 月現在の最新版である ncbi-blast-2.2.26+-x64-linux.tar.gz を任意のディレクトリへダウンロードします。 注)マシンの性能により時間のかかる場合があります。③ gz ファイルをダブルクリックで解凍します。④ 端末からコマンドを入力し(表 2-a)、BLAST の実行ファイルの格納 されている bin までの PATH を通します。⑤ 最後に、” blastn -version” と入力して実行してください。BLAST+   のバージョンが表示されれば、イントールは成功です。(図2) 

① NCBI の BLAST ダウンロードページから、データベースのダウンロー ドページを開きます。(ftp://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/blast/db/)② FASTA ディレクトリへアクセスし、目的のファイルを任意のディレ クトリへダウンロードします。③ 端末からコマンドを入力し ( 表 2-b 又は 2-c) 実行してください。 注)出力するデータベース名とハッシュインデックスの作成は必須ではありません。④ 実行後、作成したデータベースの情報が端末に表示されれば、デー タベースのフォーマットは成功です。

データベースのフォーマット

BLAST の実行

① FASTA 形式のクエリを用意します。② 端末からコマンドを入力し ( 表 2- d 又は 2-e) 処理を実行します。③ 現在のディレクトリに結果のファイルが出力されていれば処理は  成功です。

大規模な検索であるほど性能を発揮する BLAST+ を、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。

(生物遺伝資源センター データベース事業部 松野 恭兵 )

表 1:マシンのスペックOSCPUメモリHDD

CentOS 6.2 (32bit)AMD Athlon(tm) 64 X2 Dual Core Processor 3800+(2.0GHz) 2.0Gbyte1Tbyte, SATA 3.0, 7200rpm

表 2:コマンド一覧

実行時間(sec.)

クエリ配列長 kbases

BLAST+Legacy BLAST

a

b

c

d

e

PATH を通す

blastn

blastp

塩基配列DBのフォーマット

アミノ酸配列DBのフォーマット

目的項番 コマンドexport PATH=$PATH: 指定ディレクトリまでの絶対パスmakeblastdb -in FASTAファイル -dbtype nucl -out データベース -hash_indexmakeblastdb -in FASTAファイル -dbtype prot -out データベース -hash_indexblastn -db データベース -query クエリファイル -out 出力ファイルblastp -db データベース -query クエリファイル -out 出力ファイル

図 1:BLAST+と Legacy BLASTにおける tblastx 実行時間

クラウドにデータを保存する

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 8 M a y 2 0 1 2

BioResource Now ! Vol.8 No.5

P2

P1 - 2

じょうほう通信 No.69

第3期NBRP 中核拠点の新しい代表者からのメッセージ 「動的平衡2 - 生命は自由になれるのか」お薦めBook! No.5

P2

リソースセンター紹介 No.40

5th International Biocuration Conference 報告ホット情報 No.39

P2

第3期NBRP中核拠点の新しい代表者からのメッセージ第3期NBRP中核拠点の新しい代表者からのメッセージ2002年に立ちあがったナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP) は、今年の4月から第3期に入りました。今月のニュースレターは、第3期で新たにリソース機関の代表者になられた5名の先生方に自己紹介と抱負を寄せていただきました。

「ラット」「ラット」[ 自己紹介 ]  1967 年生、大阪府出身、京都大学農学部畜産学科卒(牛追いできます)。学部時代の実験動物学の講義に興味をもち、この道に入りました。現在は、所属施設(芹川忠夫施設長)で、実験動物を対象とした管理・教育・研究に従事しています。専門は、ラットの遺伝学、特に、疾患モデルラットの遺伝解析と病態発症機構の解明です。第1期、第2期とも、芹川教授のもとで本事業に参画しました。[ 抱負 ]  第 1 期、第 2 期で整備された事業を着実に推進します。加えて、リソースがセンター化されている優位性を最大限生かした研究を提案していきたいです。例えば、疾患感受性遺伝子や特定の表現形質について、系統間スクリーニングを行う。また、亜系統間の遺伝子型と表現型の違いに着目した研究などがあります。さらに、「ラット」だけではなく、他のリソースを横断的に利用した研究をできればと思っています。よろしくお願いいたします。

庫本高志 京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設庫本高志 京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設

「ショウジョウバエ」「ショウジョウバエ」 京都工芸繊維大学の山本雅敏先生の御退職を受けて、第 3 期の代表機関をお引き受けしました。今期のショウジョウバエリソースは、これまでの 4機関(遺伝研、京都工芸繊維大学、愛媛大学、杏林大学)に加えて、宮崎大学にDNAリソースのバックアップをお願いし、計5機関のコンソーシアムで事業を運営して参ります。 これまでの 10 年間で NBRP ショウジョウバエは収容系統数でも世界最大規模にまで発展しました。100 年間のショウジョウバエ遺伝学で蓄積された歴史的な系統から、最近のゲノムシーケンスの対象となった種々の系統まで、遺伝学を基盤とするライフサイエンス研究に有用な系統が日々、多くの研究者に提供されています。また最近は、新しい遺伝子工学的技術の適用によって、体系的な変異体ライブラリ作成も国際的に展開されています。国際連携の下に、最新の研究にも対応できる有用なリソースの収集に努めるとともに、その質の向上にも努力していきたいと思っています。

上田 龍 国立遺伝学研究所系統生物研究センター 上田 龍 国立遺伝学研究所系統生物研究センター

「コムギ」「コムギ」 第 3 期 NBRP・コムギの中核機関課題管理者となりました京都大学の那須田です。専門は、ムギ類(コムギ、オオムギの仲間)の分子細胞遺伝学です。これまでずっと、コムギを材料として研究を行ってまいりました。遺伝子や分子マーカーの染色体マッピングを主な手法とする私の研究において、NBRP・コムギの保有する異数体や構造異常染色体は、なくてはならない重要な研究材料です。 NBRP・コムギには 12,000 を超える種子リソースと 78 万の DNA クローンが保存されています。第1期、第2期NBRPそして、それに先立つ遺伝資源保存事業で収集されてきたこれらの貴重なリソースを、ユーザーにとって使いやすい形で提供するのが責務と思っています。所蔵する系統の高付加価値化・高品質化をめざして、表現型データやジェノタイプ情報を付加した、研究の即戦力となるリソースの保存・配布の体制を作っていきたいと考えています。どうぞ、よろしくお願いいたします。

那須田周平 京都大学大学院農学研究科 那須田周平 京都大学大学院農学研究科

「病原微生物」「病原微生物」 NBRP では「病原微生物」を担当させていただいております、千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志です。病原微生物は「真菌」「細菌」「原虫」と扱う生物種の幅が広く、単一の機関で取り扱うことができません。そのため、中核機関である千葉大学が「真菌・放線菌」を、分担機関として大阪大学及び岐阜大学が「細菌」を、長崎大学が「原虫」を担当し、各機関が責任を持って収集、保存、提供を実施しています。 どの機関においても (1) 基準株、(2) 高度病原菌、(3) 新鮮な臨床分離株を収集することで、今後いかなる感染症が起っても、それに対応できる病原微生物株コレクションを目指しております。また、MTA の作成、新感染症法への対応、提供における実費徴収システムの構築、実務担当者の確保・育成など運用面に関しては、情報を共有化し共通の課題として対処しております。今後も、研究コミュニティの要望を取り入れ、ユーザーの拡大を図っていきたいと考えておりますので、皆様のご意見・ご要望をいただければ幸いです。

矢口貴志 千葉大学真菌医学研究センター 矢口貴志 千葉大学真菌医学研究センター

「藻類」「藻類」 第 3 期から NBRP 藻類を担当することになりました。これまで大学院時代から一貫して藻類に関わる研究に携わってまいりました。岩手県釜石市にあった(株)海洋バイオテクノロジー研究所におきまして、藻類の応用利用を想定した藻類カルチャーコレクションを担当した後、現在の国立環境研究所に異動、前任者の笠井文絵先生の研究室で藻類コレクションの整備等を分担させていただく傍ら、藻類に関わる様々な研究プロジェクトを担当させていただきました。 これまでに笠井先生のご尽力で、国内藻類リソースの集約、保存株の付加価値向上や情報の整備等が行われた結果、藻類の主要な分類群を網羅する、多様な保存株の保存・提供を行う体制が整備されてきました。2012年 4月の時点でNBRP藻類では、50に及ぶ綱レベルの大分類群を網羅する443属 870種 2,664株の多様な系統の保存株を公開するに至りました。第3期では、これまでの活動を継承しつつ、更に発展させるとともに、モデル生物やその候補となる保存株の拡充と整備等の、新たな活動にも取り組む所存です。NBRP の諸先生方との連携、藻類研究コミュニティとの連携、微生物系統保存機関との連携のもとで、藻類の多様性や重要性をアピールしつつ、ユーザー視点でのリソース整備に取り組みたいと考えております。どうぞよろしくお願い致します。

河地 正伸 独立行政法人国立環境研究所河地 正伸 独立行政法人国立環境研究所

リソースセンター紹介 〈No.40〉

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現在、インターネット上でサーバの容量を貸し出すサービス(以下オンラインストレージ)が、数多く提供されています。複数のパソコンやスマートフォンを使って作業する場合、ネットワーク上にファイルを保存する事で、異なる端末から同じファイルを簡単に使用できるサービスです。その中で、Microsoft 社が無料で提供している「Windows Live SkyDrive」(以下 SkyDrive)を紹介します。

SkyDrive を利用するには Windows Live ID が必要になります。ログインサイト (https://skydrive.live.com/) から「Windows Live ID をお持ちでない場合」をクリックし、メールアドレスの登録を行って下さい。

じょうほう通信 [第 69 回 ] 10分クラウドにデータを保存する

BioResource Now ! Vol.8 No.5

①アップロードするには上メニューより「アップロード」をクリックし、そこにファイルをドロップします。ブラウザによっては、ファイル選択画面が表示されるので、アップロードしたいファイルを選択します。(図 1)

②ダウンロードするにはファイル名の左にあるチェックボックスにチェックをすると、右にメニューが表示されるので「ダウンロード」をクリックします。(図 2)

③ファイルの共有共有方法は、まず共有したいファイルにチェックをし、右メニューに表示される「共有」をクリックします。次に、共有方法の設定画面が表示されるので、「リンクの取得」をクリックします(図 3)。共有方法を選択してリンクを取得すると、作成したリンクからファイルの表示と保存ができます。

共有を停止する場合は、公開したファイルのチェックボックスにチェックをし、右メニューの共有から×ボタンを押します(図 4)。

SkyDrive アプリはインストールが必要です。SkyDrive アプリ(https://apps.live.com/skydrive) から、アプリの入手ボタンで「セットアッププログラム」をダウンロードし、プログラムを実行します。サインインでWindows Live ID とパスワードを入力します。

次に、サーバと同期を行う場所となるローカルの SkyDrive フォルダを指定します。変更する場合は、「変更」ボタンで場所を変更します(図 5)。 これでインストールは完了です。

SkyDrive では、無料で 7GB のファイルの容量を使用することができ、ユーザはその容量内で、ファイルのアップロード(表 1)とダウンロードを行うことができます。※支払いをすれば容量を増やせます。

・ファイルの公開を行う際は、利用方法を確認して必要なファイルだけを公開しましょう。著作物を公開することでアカウントが停止される場合があります。・アップロードするファイルのバックアップを必ず保存しましょう。サービスやアカウントの停止がされた場合に、サーバ上のファイルが削除される事が考えられます。

クラウドを利用しファイルを保存する事で、パソコン間のデータのやり取りがとても簡単にできます。一度使ってみてはいかがでしょうか?                           (渡辺拓貴)

オンラインストレージ使用時の注意事項

アップロードツール 1ファイルのサイズWEBブラウザ 300MB までアップロード可能

100MB までアップロード可能2GB までアップロード可能

スマートフォンアプリデスクトップアプリ

表1.アップロードツール 毎のサイズ制限

Webブラウザからの利用

SkyDrive アプリを利用

www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先Contact Address

連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 系統情報研究室 TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]'s Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Is sue Number 8 May 2012

バイオリソースセンターでは3大ミッションである「リソースの収集・保存・提供サービス」を継続するために弛まぬ努力を続けています。しかし代表者の定年や異動は避けることができませんので、機関やコミュニテイの話し合いを通して次の代表者に引き継がれてきました。第 3 期でも 5 名の新代表者が前任者からのバトンを受けて 4 月 1 日から活動していらっしゃいますので、この機会に自己紹介と抱負などを寄せていただきました。第 3 期 NBRP の新規採択4課題(ニワトリ・ウズラ、ゾウリムシ、ネッタイツメガエル、研究用ヒト臍帯血幹細胞)も決まり、第 3 期 NBRP は32のバイオリソースセンターと当情報センターがプロジェクトを推進して参ります。(Y.Y.)

お薦め Book!〈NO.5〉

今や売れっ子の著者による前著「動的平衡」の続編であるが、福岡節はますます快調であり、心地よくずんずん読める。腸内細菌、フェロモン、花粉症や、水道の浄水器と腎臓のちがいなど、知的で楽しい話題が続く。そして、それらすべてに通底する著者の主張は、生命はデカルト流の捉え方=機械的な存在ではなく、絶え間ない流れの中にある持続的なもの=動的平衡だという。

生命=動的平衡という捉え方は、1930 年代の生化学者シェーンハイマーの実験に由来するという。アイソトープラベルしたアミノ酸をマウスに食べさせ追跡すると、ラベルされた分子はマウスの全身から検出される。つまり、アミノ酸は新しく合成された種々のタンパク質に組み込まれて全身に分布し、それとほぼ同量のタンパク質が分解され除去されたことを意味した。こうして生体内の物質代謝の一端が実験的に直接観察された。

著者は「生命は秩序を維持するために堅牢な構造を作るのを諦めた」のだという。そのかわり、「生命のシステムは、ミスが蓄積し、やがて障害が起こることをあらかじめ織り込み、エントロピー増大の法則が秩序を壊すよりも先に自らを壊し、そして再構築する」とみる。さらに、「動的平衡(=生命)には因果律も決定論もなく」それゆえ「生命は自由」なのだという。また「動的平衡には美が宿る !」とも。(K.N.)

「動的平衡2 - 生命は自由になれるのか」福岡伸一著(木楽舎、2011年)

図1. ファイルのアップロード

図2. ファイルのダウンロード

図 3. ファイルを共有するためのURKを作成

利用する方法は、WEB ブラウザから行う方法と、SkyDrive アプリをインストールする方法があります。

アカウント設定の設定完了メールを受信した後、SkyDrive サイトから Windows Live ID とパスワードを入力して、サインインを行います。ここで、ファイルのアップロードやダウンロードなどの機能を利用する事が出来ます。

Microsoft Office Web Apps( 一部機能 : 図 1A)WEB ブラウザから SkyDrive を使用する事で、Microsoft Office がインストールされていないパソコンからも Word、Excel、PowerPoint、OneNote が利用できます。

自動で同期を行うため、サーバの SkyDrive フォルダのファイルを削除した場合、ローカルの SkyDrive フォルダのファイルも自動で削除されます。ファイルを削除する際は、注意して下さい。

図5.SkyDrive と同期と行うフォルダの設定

図 4. ファイルの共有をキャンセル

アップロードをクリックアップロードをクリック

ファイル名の左をチェックファイル名の左をチェック

リンクの取得をクリックリンクの取得をクリック

×ボタンで共有の停止×ボタンで共有の停止

ダウンロードをクリックダウンロードをクリック

AA

右メニュー

右メニュー

SkyDrive のオンラインストレージ機能

ホット情報 〈No.39〉

4 月 2 日 - 4 日にWashington DC の Georgetown University Hotel and Conference Center で、Biocuration 2012 ( 第 5 回目 ) が開催されました。 参加者は過去最多数の 307 名(17 カ国)で、USAと UKからの参加者が 80%、日本からは 6名でした。Plenary talk 3 題(Dr. Mark Yandell, Dr. Fritz Roth, Dr. Amos Bairoch)、7つの Session と4つのWorkshop、ポスターセッション 159題と終日大変充実した内容でした。プログラムなどは http://pir.georgetown.edu/biocuration2012/ こちらから公開されています。聴衆の席が円卓で、食事も同じテーブルでしたので非常にコミュニケーションが取りやすく、情報交流を図る上では効果的だったと思います。刺激と元気をもらって帰国しました。(山崎由紀子)

5th International Biocuration Conference 報告 - April 2-4, 2012 Washington DC, USA -

ホット情報〈NO.38〉

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 8 A p r i l 2 0 1 2

BioResource Now ! Vol.8 No.4

「ウェットウェア ‒ 単細胞は生きたコンピュータである」お薦めBook!No.4

P2

じょうほう通信No.68

ホット情報No.38

P2

P1 - 2

鈴木 睦昭 ( 国立遺伝学研究所 知的財産室 室長 )

国立遺伝学研究所 知的財産室 室長 鈴木 睦昭

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

生物遺伝資源や研究成果有体物などのマテリアル配布時にはマテリアルトランスファーアグリーメント (MTA) が必要である。非営利間の MTA は、交渉に時間をかけるべきではないが、いまだ、理想的な状況には達していない。今回、AUTM ( 米国大学技術移転者協会 ) 2012 年次大会(アナハイム)、MTA 分科会に筆者が講演パネリストとして参加した。本稿では米国の MTA の最新事情として本 MTA分科会について報告する。

本 MTA 分科会モデレーター Stephen Harsy (Wisconsin 大学 ) により、MTA の現 状、MTA ワ ー キ ン グ グ ル ー プ(MTA-WG) が紹介された。米国科学アカデミーは、報告書 2010 の 第8項で、将来的に科学的なマテリアルについて、技術移転機関は(1) 非営利間での、非毒性、ヒトサンプルではなく、in vitro 使用のマテリアルにおいては、MTAをやめるべきである。(2) 非営利間では NIH が勧める UBMTA(生物統一MTA)または SLA( 簡易同意書 )のみを使用する。の二点を推奨している。

さらに、AUTM が行った MTA サーベイ2011 の結果から、UBMTA/SLA の使用頻度はそれほど高くなく、UBMTA を使用しない理由としては、

などであった。これらの課題に対応するために、昨年、Stephen Harsy らは MTAワーキンググループ (MTA-WG) を立ち上げた。MTA-WG のゴールは、UBMTA や SLA の使用しない理由を明確にし、普及のため

の推奨案、ガイダンスを作成する。また、「NO-MTA*」活動に関してのレビューを行うことと設定した。

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米国のMTAの行方

*NO - MTA : アカデミア間のマテリアルトランスファーを迅速に行う為にペーパーレスによるMTAを実現しようという仕組み。(http://www.tmd.ac.jp/tlo/gakunai/material/nomta/ より

米国のMTAの行方

1. MTA をやめる?統一? MTA-WGの活動

最後に筆者が国際的なマテリアル移転の円滑化について話をした。今回、前述のAUTM MTA サーベイを日本の 12 大学に対して行った。回答された日本と米国の大学を比較すると、MTA は、米国は技術移転の部署で取り扱うが、日本では技術移転部門と学部事務の両者で行われていた。また興味深かった結果は、日米の MTA 条項に関する許容性の違いである。論文前のレビュー、研究者の署名の必要性、他国の法律、に関する MTA 条項に関しては、日本が米国に比べ許容性が高く、一方、提供者への無償のライセンス使用の許可、特許出願検討のための公表延期、5年以上の秘密情報の取り扱いの条項については、日本が米国に比べ容認できない傾向が示された。さらに豊橋技術科学大学と行ったサーベイ結果より、日本のMTAの国際体制の不十分さを指摘した。

結論として、マテリアル移転の国際的な障害を低くするためには、各国のMTA体制の違いの理解、MTA 共通認識とひな形の国際標準化が必要であると提唱した。

4. マテリアル移転の国際的な障害を低くするために

この改良UBMTAは前述の原則とともにAUTMのMTA分科会のホームページ (www.autm.net/Proposed_MTAs.htm) で現在公表、意見を求めている。また、電子署名などが含まれるNIHでのMTA管理システム、TAD(Transfer agreement Dashboard) の紹介があった。

AUTM ( 米国大学協議者協会 )2012 年次大会でのMTA分科会セッション筆者(右)とWisconsin大学 Steve Harsey (左)

MTA-WG メ ン バ ー の 一 人 の Wendy Streize (University of California) から MTAの考え方の基礎概念として、ガイドライン作成のための原則 (Guiding Principle) の作成が説明された。これは論文などで公表された、非毒性、人への使用はしない前提での、アカデミア間のマテリアル移転の14項目の原則から構成される。たとえば、受領者は第三者にマテリアルの移転はできないが、マテリアル使用で作成した新規物質は、論文の再現の非営利の研究目的には使用できるようにするべきであり、また、提供者は受領者の発明に関して権利を主張すべきでない。提供者は論文に関してのレビュー、論文の別刷りを求めるべきでない、などの項目がある。

2. マテリアル移転:ガイドライン作成のための原則

次 に MTA-WG メ ン バ ー の 一 人 のMichael R. Mowatt ( 国立アレルギー感染症研究所 ,NIAID) が UBMTA の改良について説明した。MTA WG は普及促進のために、UBMTA の改良を提案した。UBMTA の実行書への研究目的の記載を可能にして、輸出規制等の記述を追加した。また、化学物質、ヒトサンプル、iPS 細胞などのマテリアルの種類に特定したUBMTAを作成した。

3. UBMTAの改良1)それぞれの大学が UBMTA に似た    ひな形を使用。2)守秘義務、発表前の論文レビュー   など項目が必要なため。3) UBMTAは理解しにくい条項がある。4)署名者がない。

会場の様子 (Mariott Anahaim Hotel)

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スマートフォン用のサイトを作ってみませんか ?

BioResource Now ! Vol.8 No.4

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連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 系統生物研究センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Issue Number 8 Apr i l 2012

鈴木知財室長には MTA の国際動向として米国の最新情報を紹介していただきました。国内におけるMTAへの理解はかなり定着したと思われますが、国際標準化や簡易化に向けた試みが進められていることがわかりました。そしてこの議論に日本の代表として鈴木様が参加してくださっていることは、大変心強いですね。本ニュースレターでも折々に MTA に関する最新情報をお届けする予定です(Y.Y.)。

お薦め Book!〈NO.4〉 お薦め Book!〈NO.4〉

細菌は、栄養源となる有機物の濃度を感知し、短期記憶によって直前の濃度と現在の濃度を比較しながら、濃度の上昇する方向に運動する(走化性)。著者によると、これは一種の微分計算ではないかという。コンピュータのハード / ソフトウェアに対し、細胞はウェットウェア(wetware) によって計算を行っているのだという。

同じ単細胞でもアメーバなどの真核生物になると、さらに驚嘆すべき動きを示す。アメーバが餌(ミドリムシの包嚢)を喰えようとして追いかける姿は、まるでボールを追いまわす小犬のようだという。また、アメーバは餌と砂粒を区別し、砂粒ならば即座に吐き出してしまう。このようなアメーバを含む滴虫類の挙動からは、飢えや疲労、さらには快・不快といった細胞の「内的状態」(あるいは萌芽的な “意識”)の存在が伺えるという。

百年前なら滴虫類の観察は生物学の最前線の一つであったといえるが、その後の生物学は時代とともに分析的な研究に突き進んでいった。著者は分子生物学など現在の分子レベルの豊富な知見を動員して、単細胞生物に再び立ち向かうべきだという。著者のデニス・ブレイは、生物学の研究者にはお馴染みの教科書「Essential 細胞生物学」の執筆陣の一人でもあり、以上のような主張には傾聴すべきものがある。(K.N.)

「ウェットウェア ‒ 単細胞は生きたコンピュータである」デニス・ブレイ著、熊谷玲美 他訳(早川書房、2011年) 

作成に必要なもの

今回の Stephen Harsy らの活動は、永らく混沌としている MTA の状況を変えていくものである。非営利機関同士のマテリアル移転は、できるだけ効率的に行われるべきで、今回の Guiding Principle やUBMTA の改良提案により、マテリアルの移転がより円滑になることを期待したい。今後、大学間における MTA は、ある程度MTAの省略が可能となり、同時

に統一形式が、今以上に普及するよう願う。一方、各大学特有の MTA がなくなるには、長い道のりが必要である。

また、米国最大の細胞バンクであるATCC は、UBMTA には改変物の分譲などの項目があるため、品質の担保などを理由に、配布機関としての目的と合致しないと考え、ATCC の独自の MTA の必要性を提唱している。当然、NO-MTA も導入は考えていないであろう。

今後、生物遺伝資源配布に関しても、MTA の議論は出てくるかもしれないが、生物遺伝資源配布においては、NO-MTAや統一形式の採用というよりも、Webベースでの MTA システムや、より簡易的な MTA システムの導入を行い、MTAの迅速化、簡易化の方向に向かうと予測する。■

まとめ:今後の対応と生物遺伝資源配布としての立場

スマートフォン用のサイトを作ってみませんか ? [ 第 68 回 ] 10分じょうほう通信

図 . 上記 HTML をスマートフォン表示した例

図 1. 各 OS での仕様を比較

基本はHTML5 です。必要に応じて CSS3 と javascript を使います。スマートフォンではタッチ操作が基本となりますので、タップ/スライド/フリック/ピンチなどの操作を使う場合には javascript で実現します。

作成してみましょうHTML を次のように作成してみます。

この様に通常のHTML とほとんど変わりありませんが、聞きなれないviewport というmeta タグがあります。これは、携帯機器 ( デバイス )のディスプレイに合わせた表示デザインを指定するためのものです。また、最初のDOCTYPE 宣言もシンプルになりました。

基本的な部分はとても簡単です。是非、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。                      (服部 学)

スマートフォンの仕様について各OSの仕様は図 1に示したとおりです。簡単なWebサイトの作成では機種の違いをあまり意識しなくて良いでしょう。

(生物遺伝資源情報総合センター 系統情報研究室       )

OS 標準ブラウザ 解像度 制限

Android

iPhone

WindowsPhone7

ブラウザ (Chrome Lite とも呼ばれる)

Safari

IE9

製品による

480x320px又は 960x640px 製品による

プラグイン非対応 (flash には対応 )プラグイン非対応

プラグイン対応 ( ベースが SilverLight)

最近では、携帯端末におけるスマートフォンの利用率が約 20%を超えたという統計が出ています。外出先での web 閲覧の機会が増えたり、パソコンを起動する必要がないことから、利用者の非パソコン化は加速しており、ネットワークに対してアクティブな利用スタイルもうかがえます。Web 閲覧端末としての存在も大きいスマートフォンですが、yahoo や google の様に「お手本」と言われているサイトでは、検索窓のみのデザインという共通した特徴があります。今回は、スマートフォンで表示するためのシンプルなサイト作成の例を紹介します。

<!DOCTYPE html><html><head><link rel="stylesheet" href="base.css" type="text/css" /><meta charset="UTF-8"><meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1, maximum-scale=1"> <script type="text/javascript" src="js/load.js"></script><title> スマートフォン用サンプルサイト</title></head><body onload="load()"><h1> サンプルサイトです</h1><p> 基本的な部分を作成しました。</p></body></html>

よりシンプルに

CSS へのリンク

javascript へのリンク

ホット情報〈NO.37〉

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 8 M a r c h 2 0 1 2

BioResource Now ! Vol.8 No.3

「ヒトのからだ - 生物史的考察」お薦めBook!No.3

P2

じょうほう通信No.67

ホット情報No.37

P2

P1 - 2

山村研一

山村研一

(熊本大学生命資源研究・支援センター )

熊本大学生命資源研究・支援センター 教授

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

AMMRAは、マウスリソースの活用を通して、アジアにおける生命科学の振興をはかる目的で 2006 年に発足した。当初は、日本、中国、台湾、韓国、シンガポールのマウスリソースを保存・供給しているリソースセンターが創始メンバーとなって立ち上げたものである。

2006 年の最初の年には上海で、以降2007 年に南京、2008 年に Daejion、2009 年 に 熊 本、2010 年 に 台 北、2011 年にシンガポール、そして今回2012 年は南京で開催された。最初の4 年間は、各リソースセンターの成長を見守るため、各リソースセンターの進捗状況を聞きつつ、研究トピックスの発表もあるといった程度の、非常に緩い結合の会議体であった。

しかし、ノックアウトプロジェクトでい え ば、2006 年 に は EUCOMM1 、NorCOMM 2 、KOMP3とともに中国でも始まり、遅れはしたが 2010 年には日本と韓国で始まるといったように、ここ数年で著しい進展が遂げられることとなった。これらを受け、きちんとした会議体にすべきとの意見が巻き起こり、2010 年 11 月に開催された、台北での第 5 回の会議の時に、Policy, Charte(Definition, Mission, Goal, Purpose, Structure and Governance)などの大枠を決めた。

そして、それまで何となく私が座長を務めてきたが、この会から会長の任期を2年と定め、新しい AMMRA の初代会長に山村が選任された。副会長は、南京大学のXiang Gao 氏となった。

また、2年後には、副会長が会長に就任することとなった。そして、2011年の 11 月30日にシンガポールで開催された第6回会議において Head office, Web si te , Membership, IT committee (座長は理研 BRC の桝谷氏), Annual Report Committee(座長は、台北 NLAC:National Laboratory Animal Center の Wang 氏)の設立などの残った問題を討議し、ほぼ中身が固まったAMMRAが出来上がった。

一方、欧米では、2006 年に始まったEUCOMM, NorCOMM, KOMP が 予 定通りの成果を上げ 2011 年末で終了する予定を受け、その後の動きとして表現型解析プロジェクトが提案されて、IMPC4 が結成され、2011 年9月にKOMP2 5が始動した。このプロジェクトは、先のノックアウトプロジェクトで作製された2万種類の相同組換えES クローンを用いてマウスを作製し、その表現型解析を行うという壮大なプロジェクトであり、これに我が国の理研 BRC および中国の南京大学も参加することになった。このような動きを受け、AMMRA においても、ノックアウトマウス作製後の課題が論じられ、表現型解析についても組織化がはかられ、AMPC 6が発足することとなった。

2012 年 3 月 15 日に開催された第7回 AMMRA では、副会長として理研BRC の小幡氏が選出された。AMMRAの直近の一つの課題としては、IMPCとどこまで歩調を取るのか、あるいはとれるのかということである。AMPCの中で、IMPC に正式に参加しているのは日本の理研 BRC のみで、台北のNLAC や韓国も参加しておらず、独自のプロジェクトとして開始している。参加すれば、IKMC 7の ES クローンから年間 50 系統のマウスを樹立し、その表現型解析を自分たちの経費で行うことが義務づけられ、その達成度が問われるためと思われる。IKMCの ES クローンは、そのまま用いれば生殖系列に乗る確率は 1/3 であり、効率は悪い。そこで、担当センターが自分たちでquality control を行わねばならず、大変な労力と経費がかかると予測される。

また、中長期的な課題としては、AMMRA は今後も継続的にその役割を果たせるのかということである。これまでの国際コンソーシアム、例えばFIMRe8 や IGTC9の成り行きをみると、最初は活発な論議が繰り広げられるが、一定の役割が果たされると、その後はコンソーシアムとしての活動は消失しているのが常である。

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Asian Mouse Mutagenesis and   Resource Association (AMMRA)

Asian Mouse Mutagenesis and Resource Association (AMMRA)Asian Mouse Mutagenesis and Resource Association (AMMRA)

写真:南京大学のModel Animal Research Centerの前で。

山村先生(前列左から2番目)と熊本大学のメンバー

写真:AMMRA会場の風景(2012.3.15 於 南京)

1. EUCOMM2. NorCOMM3. KOMP4. IMPC5. KOMP2

・・・ European Conditional Mouse Mutagenesis Project・・・ North America Conditional Mouse Mutagenesis Project・・・ Knockout Mouse Project・・・ Internatinal Mouse Phenotyping Consortium ・・・ Knockout Mouse Phenotying Project

6. AMPC7. IKMC8. FIMRe9. IGTC10. IMSR

・・・ Asian Mouse Phenotyping Consortium・・・ International Knockout Mouse Consortium・・・ Federation of International Mouse Resources ・・・ International Gene Trap Consortium・・・ International Mouse Strain Resources

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BioResource Now ! Vol.8 No.3

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Issue Number 8 March 2012

山村先生は AMMRA 立ち上げの中心人物でいらっしゃいます。発足から 7 年の歩みと、マウスリソースをとりまく世界の最新動向についてわかりやすく解説していただきました。立ちあがりもフェードアウトもスピーデイな目的達成型の国際プロジェクトが多い中で、長期的な協力・連携体制の実現を目指すAMMRAの活動に期待したいですね。日本では、第 3 期ナショナルバイオリソースプロジェクトが4月から始まります。情報センターも採択されましたので、BioResource now! はまだまだ続きます(Y.Y.)。

例えば、FIMRe においては、結局2つのセンター間で凍結胚のやり取りに関する Agreement ができたこと、ノックアウトマウスプロジェクトが立ち上がったこと、各国のリソースセンターのデータを IMSR10に送ることで目的は達成され、その後のコンソーシアムとしての活動はない。また、IGTCでは、やはり統合データベースができ、ノックアウトマウスプロジェクトが立ち上

がったことで目的は達成され、その後のコンソーシアムとしての活動はない。みていて面白いのは、国際的な活動においてもいろいろ矛盾があり、なかなか解消されないことである。例えば、IKMC は、独自にデータベースを作成したが、IMSR や IGTC のデータベースと統合されておらず、それぞれ独立したままである。

AMMRA は、プロジェクト研究費の獲得やデータベースの整備、あるいは統合データベースの構築を持って終了というのではなく、あくまで、アジア地域内のリソースの利用を通しての研究活動の活性化を目的としており、それが今後も継続できるのかが最大の課題であろう。■

お薦め Book!〈NO.3〉

決して新しい本ではない(著者はすでに故人)が、これは他に類を見ないような観点から人体のしくみについて述べた新鮮な解剖学の書である。著者によると、人体は植物的要素と動物的要素からなり、進化的により古い植物性器官(消化吸収系、循環系、性腺と排出系)が身体の中心軸を貫き、より新しい動物性器官(感覚系、神経系、筋肉系)がその周囲をとり巻くように配置されているという。

本書の記述の仕方はユニークであり、通常の解剖学の教科書とは記述の順序がまるで違っている。また、美しい日本語で語られる文章とともに、随所に出てくる「目から鱗」の表現に感心させられる。いわく、「泌尿系は植物性器官に含まれるが、植物自体は泌尿器官をもたない」、「舌は口の中にはえた腕である」、「肺には自力で伸縮する能力はなく、胸壁の動物性筋肉によって呼吸が行われる」、「人間以外の動物では子宮の待ちぼうけ(月経)ということはおよそあり得ない」など。

そして、最後にクライマックスを迎える。いわく、「陸上の動物たちは中世代、新世代を通じて “横ばい” という無理な姿勢を続けたが、人類の出現によって、にわかに立ち上がることに成功した。・・直立の姿勢こそ重力の方向に応じたもっとも自然な姿勢である」と。(K.N.)

「ヒトのからだ - 生物史的考察」三木成夫(うぶすな書院、2005年)

別名アドレスの設定手順

別名アドレスを使ってメールを作成

別名アドレスが追加されると、自動的にFromのプルダウンメニューが作られるので、自由に選択して利用できます(図4)。

なお、この設定は Gmail において、独自ドメインのアドレスを使用している場合でも利用可能です。また、他アカウントのメールアドレスや、他フリーメールのアドレスを利用したメールの送信も同様の設定で可能です。その場合は、利用したいアドレス宛てに確認メールが通知されるので、承認する必要があります。

このように複数アドレスとフィルタを利用して、メールを管理を効率的にされてみてはいかがでしょうか。            (相場厚輝)

- Gmail でメール管理を効率的に -ひとつのアカウントで複数アドレスを利用する

これで、一連の作業は完了です。登録が完了すると、アカウントに別名アドレスが追加されていることが分かります(図3)。

[ 第 67 回 ] 10分じょうほう通信

様々な Web サービスが展開されている現代、多くの方が何らかのWeb サービスを利用されていると思います。そして、Web サービスを受けるためには、メールアドレスの登録が必須となっています。このような場面において、フリーメールのアドレスを利用される方が多いのではないでしょうか?

普段利用しているメールアドレスをサービスに登録した場合、継続的に宣伝メールを受信する必要や、アドレス漏えいによる迷惑メールの受信を招く可能性があります。このようなことを防ぐため、サブアカウントを取得することがあると思います。しかし、サービス毎にアカウントを作成するのは煩わしいものです。Gmail では、サブアカウント取得の代替となる機能が備わっているので、その機能についてご紹介します。

方法は簡単です。アドレスのローカル部分の最後に+ ( プラス )とお好きな文字を追加すればよいだけです(※)。具体的には、元のアドレス[email protected] に xxxx + example(任意の文字列)@gmail.com というように文字追加をして、別名アドレスとして設定します。

図2. アカウントメニュー

① まずは google アカウントへログインし、Gmail を開きます。

② 次に、右上にある歯車のメニューを開き設定を選択します(図 1)。

③ アカウントメニューにある名前から“メールアドレスの追加” をクリックします(図 2)。

④ 「別のメールアドレスを追加」画面が表示されるので、名前の部分に使用したい名前を入れます。メールアドレスに先ほどの ※のようにアドレスを記載し、“エイリアスとして扱います”にチェックを入れ、「次のステップ」をクリックします。

図 1. 設定メニュー

図 3. アドレスが追加された画面

画面右上メニュー

※別名アドレスでは一部のウェブサービスが受けられない場合がありますので、ご注意ください。

最後に、利用が終了した別名アドレスはアカウントメニューから削除し、不要なメールの受信を防ぐために、フィルタに別名アドレスを登録しておきます。

まず、フィルターメニューの “新しいフィルタを作成” をクリックし、To の部分に登録していた別名アドレスを入力し “この検索条件でフィルタを作成” をクリックします(図 5-A)。

次の、この検索条件に一致するメールが届いたときの画面で “削除する” をチェックし、“フィルタを作成” をクリックします(図 5-B)。

フィルタの設定が完了しました(図 5-C)。

図 5. フィルタ設定図 5. フィルタ設定

BBC

To に登録していた別名アドレスを入力Toに登録していた別名アドレスを入力

A

図 4. プルダウンメニュー図 4. プルダウンメニュー

どちらを選択しても、同じ画面へ移動します。

BioResource Now !I s s u e N um b e r 8 F e b r u a r y 2 0 1 2

BioResource Now ! Vol.8 No.2

「親指はなぜ太いのか」お薦めBook!No.2 P2

じょうほう通信No.66 P2

P1 - 2

常脇恒一郎

常脇恒一郎京都大学名誉教授

(京都大学名誉教授 )

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

世界の近代コムギ遺伝学は、1916年から 1924 年の間に北海道大学農学部で行われた2つの画期的事績、“坂村徹博士によるコムギ属の染色体数の決定と倍数性の発見”(Sakamura 1918)および “木原均博士によるコムギ属種間雑種の染色体対合の解明に基づくゲノム分析法の確立”(Kihara 1919, 1924)に始まる。本稿は、この世界的発見に用いられたコムギの来歴を尋ねた記録である。(以下、札幌農学校と東北帝国大学農科大学も北大農学部と表記する。)

坂村博士がコムギの染色体研究を始めた経緯は定かでない。岡澤養三博士(当時、北大農学部教授)の「作物生理学講座史」と題する原稿に、「坂村助教授は農学部卒業後、大学院特別給費生として東京帝国大学細胞学研究室において藤井健次郎教授のもとでコムギの染色体に関する研究に従事していた。」と記されている。これは、坂村博士とコムギの出会いを物語る貴重な記録であるが、北大農学部にも東大理学部にもこの研究歴に関する記録が残っていない。因に、坂村博士が大学院特選給費生であった期間は 1916 年 12 月~1918 年 8 月の約2年間であり、坂村博士がコムギの染色体数決定とその論文の準備および4倍性 x6倍性の種間交配を行った時期に重なるので、長期に亘り東大の藤井博士のもとで研究に従事することは不可能であったはずである。

北大農学研究科生物資源生産学部門に受け継がれてきた資料に、「農学科第一講座古文書資料」がある。この資料に、Flaksberger 博士宛にロシアのコムギを含む4種作物の種子分譲を依頼した、南博士の 1915 年 10月 7 日付けの手紙が含まれている。この要請に応え Flaksberger 博士からコムギ 18 系統を含む4種作物の種子が送られてきたことが、同博士宛の南博士の礼状(1916 年 5 月 19日付)から分かる。従って、この種子は 1915 年 11 月~1916 年 5 月の間に北大に到着したことになる。Flaksberger 博士はコムギ分類学者であるから、送付されてきたコムギ系統は、当然学名で記されていたと想像される。残念ながら受領系統の記録が残っていないので、坂村・木原両博士の使用材料が Flaksberger 博士由来か否かの確認ができない。

このように坂村博士とコムギの出会いの経緯は不明であるが、その画期的研究に、後述する南鷹次郎博士(当時、北大農学部農学科第一講座担任教授兼初代農場長)の収集になるコムギ系統を用いたことは、その論文「コムギ属の種の染色体数と系統関係についての短報」(1918 年)に、「すべての材料は本学作物学講座のT. Minami 教授と M. Ito 助手の好意による」と注記されていることから明らかである。

坂村博士は、引き続き、1917 年夏に4倍性コムギを母親、6倍性コムギを花粉親とする種間交雑を行い、3組合せの5倍性雑種の種子を得ている。これを 1918 年春に播種しているが、文部省から植物生理学講座担当の教授候補者として在外研究を命じられ、秋には欧米に向けて出立することが決まっていたので、坂村博士は、その年の8月に大学院進学が決まったばかりの木原均博士に、これら5倍雑種の研究を託している(木原均著の「小麦」による)。

この年の夏、木原博士は坂村教授作出の5倍性雑種コムギの減数分裂のスライドを作成し、坂村博士に見て貰い指導を仰いでいる。木原博士は、

その著「一粒舎主人写真譜」で、「先生の出発前に見て頂いたプレパラートに関する数分間の指導は、その後小麦研究に従事する発端をなすものであった。」と述べている。

このような事実から、坂村・木原両博士の近代コムギ遺伝学の基礎を築いた研究材料が、南鷹次郎博士の収集品に由来することは確かである。南博士は、1900 年から 1927 年の長きに亘り北大の農場長および農学部長を務め、引き続き北大第2代総長に就任している。農学部在任中の一時期、博士は海外からのコムギ、オオムギなどイネ科作物の導入に尽力している。この収集品のうち、唯一坂村・木原両博士の研究材料になった可能性があるのは、ロシア農務省応用植物局の C. Flaksberger 博士より入手したコムギ系統である。

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近代コムギ遺伝学の基礎となった遺伝子源を尋ねて

近代コムギ遺伝学の基礎となった遺伝子源を尋ねて近代コムギ遺伝学の基礎となった遺伝子源を尋ねて

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USB メモリの暗号化対策「Bitlocker To Go」

BioResource Now ! Vol.8 No.2

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Windows7 徹底活用! 

Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Issue Number 8 February 2012

常脇先生は、かつては核・細胞質雑種系統の解析から、近年はオルガネラゲノムの解析からコムギの起源や系統関係を明らかにされた植物オルガネラ遺伝学の第一人者です。2005 年にコムギのミトコンドリアゲノム解析をご一緒にさせていただいた際には、組み換え箇所が多くコンピューター上で配列のアセンブルに苦労している時、先生が紙と糊で見事に問題を解かれたことは、忘れられません。今回は北大文書館年報に書かれた論文(2011 年 3 月)をニュースレター用に書きおろしてくださいました。コムギの歴史的な研究に使われたリソースの謎解きはいかがでしたか。Flaksberger 博士から送られた種子の目録を探したくなりました。(Y.Y.)

そこで、このコムギ系統の到来時期と坂村・木原両博士の研究成果の発表時期との整合性を探ってみた。両博士使用のコムギ系統は春播性である。北大における春播コムギの栽培は、南博士遺存の資料によれば、播種が5月上旬、出穂が7月上・中旬、収穫が8月下旬である。Flaksberger博士のコムギ系統が 1916 年4月までに到着しておれば、その年の5月

に播種し、8月に収穫できる。こうして北大で一度増殖された種子の分与を南博士から受けた坂村博士が、同年冬~1917 年春先に、体細胞分裂を観察して染色体数を決定し、その成果を論文に取りまとめ、残りの種子を 1917 年4月に播種し、夏に染色体数の異なる系統間の交配を行い、その交配種子を 1918 年春に播種し、夏に花粉母細胞を固定して木原博士

と一緒に検鏡したとすれば、先に述べた坂村・木原両教授の研究とその成果の刊行時期に合致する。このよう な 状 況 証 拠 か ら、南 博 士 がFlaksberger 博士から受領したコムギ系統が、坂村・木原両博士の世界的発見の材料になった可能性が極めて高いと考える。(本稿は「北海道大学大学文書館年報第6号」掲載の拙文に依拠)■

お薦め Book!〈NO.2〉

タイトルからは気楽な読み物に思われるかも知れないが、副題に「直立二足歩行の起原に迫る」とあるように中身はまじめな学術書である。著者紹介によると、著者はアイアイ(原猿類)研究の第一人者であり、マダガスカル島で野外観察を続けたとある。したがって、本書もアイアイの奇妙な手の話から始まり、異様に細長い中指をもつその手は、ラミーという果実の種をほじくって食べるのに絶妙に適応した結果だと語られる。

著者は、霊長類の手と口(とくに歯)が、それぞれの種の「主食」に見合ったかたちに適応していることから「口と手連合仮説」を唱え、ロリス、キツネザル、インドリ、メガネザル、クモザル、ニホンザル、チンパンジー、ゴリラなど、それぞれの種ごとに著者の仮説が成り立つことを検証してゆく。そして最後に、考察の対象がヒトに及ぶと俄然話はミステリー小説のように面白くなる。

これまでに初期人類の主食に関しては諸説があるが、どれも決定打に欠けるという。そこで著者は上記の仮説を適用してみたところ、ヒトの手と歯の特徴から導き出される初期人類の主食は、想像もつかない意外なもの(それが何かは読んでのお楽しみ)だったはず、という。またその主食を仮定すると、人類進化における最初の大きな謎とされる直立二足歩行も無理なく説明できるという。 (K.N.)

「親指はなぜ太いのか」       島 泰三著(中公新書、2003年)

③ パスワードを紛失した際に用いる回復キーの保存をうながされます。

「回復キーをファイルに保存する」をクリックするとファイルの保存先を指定するダイアログが表示されますので、適当な場所を指定して回復キーファイルを保存します。

USB メモリの紛失対策として一番大切なのは、無くさない様に自分でしっかり管理することは言うまでもありませんが、万一の紛失時に備え、「Bitlocker To Go」を有効にしてご使用されることをおすすめします。                            (山川 武廣 )

④ 最終確認画面が表示されますので、「暗号化の開始」ボタンをクリックして暗号化処理を開始します。処理が完了したら暗号化の操作は完了です。

USBメモリの暗号化対策「Bitlocker To Go」情報漏洩事故の上位は依然USB メモリが原因

暗号化された USB メモリを使用する際には、暗号化の際に設定したパスワードを入力する必要があります。

暗号化されたUSB メモリを使うには

設定手順は至ってシンプルです。

① 暗号化するUSBメモリを右クリックし、メニューから「BitLocker をオンにする」を選択します。

② 「パスワードを使用してドライブのロックを解除する」にチェックを入れ、パスワード入力後に「次へ」ボタンをクリックします。

「Bitlocker To Go」の設定手順

[ 第 66 回 ] 10分じょうほう通信

日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)が昨年夏に公開した「2010 年度情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」によれば、個人情報の流出人数は、インターネットに次いでUSB メモリなどの可搬記録媒体からが 100 万人を超えるという調査報告が出ています ( 図 1)。これは、USB メモリの低価格化、大容量化が進んだことで、社外へ容易に持ち出せる情報量や利用者が増加しているものの、媒体の取り扱いや管理体制が不十分なことが影響していると分析されています。

家電量販店に行って、数千円出せば 16GB や 32GB の大容量USB メモリが簡単に手に入るものの、その大容量さ故に紛失してしまったときのダメージは計り知れません。そこで今回は、「Bitlocker To Go」という機能を紹介します。

図 1.漏えい媒体・経路(人数)[出展:2010 年度情報セキュリティインシデントに関する調査報告書 ]

チェックする

クリックする

右クリック

「Bitlocker To Go」機能は、データが格納されている USB メモリや外付け HDD 全体を暗号化することにより、ドキュメントからパスワードまで、すべての情報を保護します。この機能を有効にしておくと、そのドライブに保存したファイルはすべて自動的に暗号化されます。万一 USB メモリを紛失してしまっても、パスワードが破られない限りは、全体が暗号化されていますので、内部のデータを一部でも盗み見られる事はありません。

USB メモリや外付けHDDをまるごと暗号化する「Bitlocker To Go」機能

パスワードの入力

BioResource Now !I s s u e N um b e r 8 J a n u a r y 2 0 1 2

BioResource Now ! Vol.8 No.1

「エピジェネティクス 操られる遺伝子」お薦めBook!No.1 P2

Ebot で楽々データ取得じょうほう通信No.65 P2

P1 - 2

森脇和郎

森脇和郎理化学研究所 BRC 特別顧問

(理化学研究所 BRC 特別顧問 )

第2期NBRP の終わりにあたって

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

第2期NBRPの終わりにあたって第2期NBRPの終わりにあたって

バイオリソース事業の成りたち

事業の継続性と人材

バイオリソースの先導性と歴史性

私はこの10年間、NBRP や理研BRC でバイオリソースに関わりをもってきましたが、それ以前の30年ほどは、国立遺伝学研究所の系統保存事業に参加していました。そこでは、野生コムギを研究素材とした2 代目の木原均所長以来、野生イネを対象とした岡彦一・森島啓子博士、野生クマネズミに着目した吉田俊秀博士等、生きている「生き物」から諸々の生命機能の原理を見出そうという、大きな流れがありました。そうしてこれらの研究活動は、それぞれ対象とする生物系統の収集・開発・保存につながることになりました。

研究者の研究が、リソースの収集・保存の原動力となるという系統保存の基本は、今日も大きく変わるものではありません。現在、マウスリソースセンターとして大きく発展した米国のジャクソン研究所も、その成り立ちを見れば、研究者が自分の研究のためにマウス系統を収集したことに始まります。この研究所の例からもわかるように、各々の研究分野の発展とともに、リソースの利用に対する Research Community の要望が大きくなり、リソースをもつ研究者の個人的な努力では、応え切れなくなりました。

継続性はバイオリソース運営の基本的な方針のひとつであり、そのため最も大切なものは人材であります。特に、リソースを基盤とする優れた研究業績を持ち、且つリソース事業の意義をよく理解する研究者の存在が不可欠です。

研究者の先導的な研究が、バイオリソース整備の原動力であるという視点に立てば、バイオリソース事業を進めるには、ライフサイエンスの進んでゆく方向を見極めることが大切です。近年のゲノム解析技術の進歩によって、遺伝子発現機構が分子レベルで解明されるようになって来ました。構造にかかわる遺伝子の解明はもとより、その発現を調節する遺伝子、更にはその上流の活性化システム等に解析の手が伸びています。発現形質の各々に、遺伝子調節ネットワーク(GRN)が存在することも明らかになってきました。

膨張するマウスリソースに対して、米国ではジャクソン研究所を強化しましたが、ヨーロッパでは、EU 諸国に分散型のセンターを設けて対処しました。我が国でも、半世紀以上前の 1951 年に、当時の先駆的な研究者の要望に応えて旧文部省の系統保存費が措置され、その継続性も担保されましたが、予算規模は如何にも小さいものでした。ただネズミ類リソース事業に対しては、ガン特別研究から長年貴重な支援が続けられました。2000年代に至って、やっと理研 BRC とNBRPが発足することになり、わが国のリソース事業が国際的なレベルに達するものになりました。

このようなネットワークを形成している各々の遺伝子は、それぞれ突然変異と環境への適応の長い進化的な歴史を持っており、現在 NBRP が対象としている各々のリソースは、この歴史の上に成り立っていると云えましょう。

ゲノムレベルの分析研究の発展とともに、遺伝子ネットワークの機構の研究が一段と進展し、それに用いられるリソースは、ゲノムの歴史までもが研究素材としての構成要素になってくることでしょう。モデルリソースの遺伝的特性の中には、リソース開発の途上、微生物学的および遺伝学的純化のために加えられた遺伝的選択の影響を受けている部分があり、本来の「生きもの」を映す正しいモデルとしての資質に、問題がなくはありません。例えば、モデルとして広く用いられている実験用マウスは、元々野生マウスが持っていた発ガン抵抗性、選択的交配等に関する遺伝子を、欠落してしまっている可能性があります。

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お知らせ

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

第 5回ラットリソースリサーチ研究会日程:2012 年 2月 3日(金)13:00 - 17:30 会場:京都大学 百周年時計台記念館 国際交流ホール I詳細は http://www.nbrp-hokokukai.jp/ よりご覧いただけます。

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BioResource Now ! Vol.8 No.1

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センター TEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail:[email protected]

Editor's Note

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

BioResource Now !Issue Number 8 January 2012

NBRP 第 3 期目を迎える年の1月号は、NBRP の産みの親とも言える森脇先生にご執筆いただくことができました。バイオリソースに対する先生の熱くて深い思いが短い言葉に凝縮されているにもかかわらず、読み手に威圧感を感じさせないところは流石、先生のお人柄でしょうか。ありがとうございました。「お薦め Book」はとある先輩からの贈り物です。今年は幸先のよいスタートになりました。(Y.Y.)

リソース事業は優れた研究者が先導し、信頼性の高い技術者が実務を受け持つという形が望ましいです。長期間活発に運営されていたリソース事業でも、主体となる研究者がいなくなると忽ち廃止され、貴重な遺伝資源が散逸してしまう例は少なくありません。リソース事業の継続性を確保するためには、これを牽引する

研究者を得るとともに、優れた技術者を育てることが肝要です。研究者のキャリアパスはありますが、技術者に用意されているとは云えません。この人々が、専ら学術論文の成果によって昇進を図ることは容易ではないし、あるべき姿でもないでしょう。技術者にも独自のキャリアパスが必要です。いずれにしても、

ライフサイエンス分野の技術者を育成し、安定した地位を確保するには、研究者の理解と協力が欠かせません。一般論としては研究者の理解は得られますが、具体的には両者は同じパイを分ける立場になり兼ねません。研究者コミュニティーの理解と協力が特に求められる所以です。■

お薦め Book!〈NO.1〉

この本は、一般向けに書かれたエピジェネティクスについてのおそらく最初の単行本だと思われる。

エピジェネティックな変化とは、DNA 上にコードされた遺伝情報(塩基配列)自体は変化せずに、情報の媒体とでもいうべき染色体(DNAと蛋白質)が種々に修飾されることによって、遺伝子発現が制御されることをいう。したがって、その変化は基本的には子孫に遺伝しない(ただし、例外はあるとのこと)。エピジェネティックな変化は細胞分化に伴って起き、その変化は細胞分裂後の娘細胞にもコピーされて伝わる。つまり、個体発生に直接関係するし、またガンをはじめとする種々の病気の発症にも関わる。それぞれの事例が、原著論文を引用しつつエピソード的に語られる。

著者によると、エピジェネティクスは「遺伝子万能論」といった従来の遺伝子概念に対して再考を迫るものでもあるという。これまでに、「遺伝か環境か」というテーマで書かれたそれなりに面白い本(E.R. ケラー「遺伝子の新世紀」や M. リドレー「やわらかな遺伝子」など)があったが、本書を読むとこれらの遺伝子本が完全に時代遅れに思われるくらいのインパクトがある。それだけ生物学の進み方が速いということか。(K.N.)

「エピジェネティクス 操られる遺伝子」       リチャード・フランシス著 野中香方子 訳(ダイヤモンド社)

NCBI から提供されている Ebot サービスを利用して、Pubmed のキーワード検索と、検索結果を XML で取得する方法を紹介します。Ebotは対話型のサービスで、入力内容に応じて Perl スクリプトを自動的に作成して提供してくれます。Windows では Perl 実行環境の構築が必要ですが、Mac や Linux ならばスクリプトをすぐに使用することができます。それでは早速始めましょう。

Active Perl から、Perl の実行環境をダウンロードしてインストールします。32bit 版をお使いの場合は、「Windows x86」を、64bit版でしたら「Windows 64-bit, x64」を選択します。

Ebot の入力画面に従って、データを記入していきます。今回は、Pubmed からキーワードに一致したデータを取得するスクリプトを作成します。各画面の入力内容(※)は、最後に纏めていますので、参考にして下さい。Ebot:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Class/PowerTools/eutils/ebot/ebot.cgi

始めに検索クエリーの入力方法と、検索対象サーバを指定します(※1)。検索クエリーは直接指定する方法と、ファイルから読み込む方法が選択できます(図2-①)。検索時に選択できる検索対象サーバは一つだけです。PubMed以外にもProtein, Nucleotide, EST等々を対象にスクリプトを作成することができます(図2-②)。

検索結果の出力内容を選択します(図 4 A)(※3)。Summary や Full data などが選択できます。その後に、検索結果を保存する出力ファイルと出力形式を設定します(図 4 B)(※4)。ダウンロードしたデータをブラウザで見るならHTML を、加工するなら XMLを選択します。

最後にスクリプト名を設定します(※5)。スクリプトは Perl で出力されるので、スクリプト名に「.pl」の拡張子を付けて入力します(図 5-①)。「Generate Perl」(図 5-②)をクリックして、ファイルをダウンロードして完成です。

Ebot でのスクリプト作成はいかがでしたでしょうか? Perl の実行環境が整っていれば、すぐにスクリプトを実行してデータを取得することができます(※6)。また、作成されたスクリプトを独自に拡張して、かゆい所に手が届くスクリプトに仕上げることも可能です。NCBI のページをブラウザで開いて、一件ずつデータを取得することに疲れを感じた際は、是非このサービスを利用してみてください。(渡邉 融)

ページ毎の入力内容※1: 検索クエリーの入力方法と検索対象サーバの指定  検索対象サーバ:「In this database:Pubmed」  検索クエリーの入力方法:「Start with a text query」ボタン※2: 検索パラメータの設定  検索クエリー:「Text query in PubMed: NBRP」  検索範囲:「Retrieve records for all dates」 ※3: 出力内容の設定  出力内容:「Download full records for the data(efetch)」※4: 出力ファイルと出力形式の設定  出力ファイル:「Output file name: ebot_sample_result.xml」  出力形式:「Choose an output format: Full record in XML」※5: スクリプトファイルの設定  スクリプト名:「Enter the filename for your Perl script: ebot_sample.pl※6: スクリプトファイルの実行  コマンドプロンプトを開いて「perl ebot_sample.pl」と入力します。スクリ  プトファイルと同じフォルダに「ebot_sample_result.xml」が出力されます。

Ebot で楽々データ取得

Perl 実行環境の構築(Windows のみ)

Ebot

図 1: Active Perl Download 画面

図 2: Ebot トップページ

図 3: 検索クエリーと検索範囲設定ページ

図 5: スクリプト名設定と作成ページ

図 4: 出力内容選択ページ (A) と出力形式選択ページ (B)

Active Perl: http://www.activestate.com/activeperl/downloads

② ①

Generate Perl

検索クエリーと検索範囲を指定します(※2)。検索クエリーには、「キーワード」を入力し(図 3-①)、必要ならば期間を指定することができます(図 3-②)。特に指定しなければ全期間のデータが検索対象になります。

[ 第 65 回 ] 10分じょうほう通信

A B

  ナショナルバイオリソースプロジェクト (NBRP) の発足から、早くも十年を迎えました。開始直後は、国立遺伝学研究所の微生物保存研究センターの大腸菌変異株が中心でしたが、大腸菌の全遺伝子破壊株のコレクションといった、ゲノム情報を元にして開発されたポストゲノム時代のリソースが加わりました。さらに、枯草菌の遺伝子破壊株のコレクションも収集し、全世界に向けて年間 20 万株を超える菌株の分譲を行うまでになっています(図 1)。 国立遺伝学研究所が保存と分譲を担い、九州大学ではリソースのバックアップ保存を行い、リソースを守っています。

  この 2 つの細菌で全部の原核生物の遺伝子機能がわかるほど、原核生物は単純ではありません。しかし、もっとも実験的に遺伝子の機能がよく研究されてきたこの 2 つの原核生物を基準として、原核生物のゲノムの研究が進められており、大腸菌と枯草菌のバイオリソースは多くの原核生物の研究者にとって、なくてはならない研究材料となっています。

BioResource Now !I s sue Numbe r 7 D e c embe r 2 011

BioResource Now ! Vol.7 No.12

リソースセンター紹介 〈NO.39〉

Internet Explorer 6 から新型ブラウザ へじょうほう通信No.64 P2

P1 - 2

リソースセンター紹介No.39

仁木 宏典 (国立遺伝学研究所 )・片山 勉 (九州大学薬学研究院 )

仁木 宏典1 ・片山 勉2

国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 教授 1九州大学 薬学研究院 分子生物薬学分野 教授 2

原核細胞のモデル生物、大腸菌と枯草菌のバイオリソースセンター

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

  大腸菌と枯草菌はそのゲノム配列が明らかになった直後から、全遺伝子の欠損株のコレクションの作成がすすめられました。2 つの菌ともに、4,000 を超える遺伝子が塩基配列から予想されています。この遺伝子をすべて破壊することで、生育に必須な遺伝子が判ってきました。

  大腸菌には、遺伝子領域を薬剤耐性遺伝子で置換した遺伝子破壊株コレクション(KEIO コレクション)と、トランスポゾンの挿入による遺伝子破壊株コレクションの2 つがあります。薬剤耐性遺伝子による置換法では、当然のことながら生育に必須な遺伝子の破壊株は作成できません。

この点を補うため、トランスポゾンの挿入による遺伝子破壊株コレクションでは、部分的に染色体領域を重複させ、この重複領域内の遺伝子にトランスポゾンの挿入を行なっています。重複部分は組み換え反応で除去することができます。37 度以上で培養することで、この組み換えが起こった株を選択することができ、トランスポゾンの挿入による遺伝子破壊の効果を調べることが出来る点で便利です。

  枯草菌の遺伝子破壊株は、組み換えを利用して、薬剤耐性遺伝子を標的遺伝子に人為的に挿入した遺伝子変異株です。ただ、遺伝子変異株は 2,000 株ほどしかありません。予想では、1,900 株ほどの遺伝子についてはまだ本コレクションに入っていません。今後、これを完成させることも本リソースセンターの重要な役目となっています。

  原核生物とはいえ、この 2 つの生物は大きく違っています。大腸菌は腸内の常在菌です。一方、枯草菌は土壌細菌の一種で、実は納豆菌と同種です。枯草菌は栄養が不足すると胞子を作ります。どちらも私たちの生活に身近な細菌ですが、生物としては全く異なった生活環をしています。実際に遺伝子の組成を見ても、共通している遺伝子は全体からみればわずかで、ほとんどの遺伝子はそれぞれの種に特異的です(図 2)。

図1:年度の別の菌株の分譲件数

大腸菌と枯草菌のゲノムワイドなリソース

大腸菌と枯草菌はそんなに違うものなのでしょうか?

  原核生物そのものを研究していなくても、研究の道具として大腸菌を利用している人は多いでしょう。特にタンパク質の発現に大腸菌を利用することは多いと思います。大腸菌には、多種多様の発現ベクターがこれまで開発されて来ました。その一部ですが、400 種を超えるベクターのコレクションを、本センターから提供しています。あなたの実験に使える有用なものを、思いがけず見つけることができるかもしれません。

充実したタンパク質の発現ベクターコレクション

写真:全遺伝子の欠損株のコレクションの発送作業。レプリカ用剣山を使い一度に96株の遺伝子破壊株をプレートに植菌して発送します。

図2:大腸菌と枯草菌の共通遺伝子枯草菌には遺伝子の重複が見られるため共通遺伝子の数が大腸菌よりも多くなっている。

原核細胞のモデル生物、大腸菌と枯草菌のバイオリソースセンター原核細胞のモデル生物、大腸菌と枯草菌のバイオリソースセンター

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Internet Explorer (IE) 6 が 2001 年にリリースされて 10 年が経過しましたが、あなたは現在も使用されていますか?そろそろ新型ブラウザへの切り替えを検討してはいかがでしょう。

IE の開発元であるマイクロソフト自身が IE6 のシェアを 1% まで引き下げることを目標としたキャンペーンサイト

「The Internet Explorer 6 Countdown」(http://www.ie6countdown.com/) を開設しています。そこでは世界中でIE6 が、どのくらいのユーザーに使用されているかを知ることができます。

それによると、世界中では 2011 年 10 月現在、平均 7.9% 使用されているとのことです。日本は 6.8% で世界平均よりも低いですが、地域ごとにみるとアメリカやヨーロッパに比べ、東アジアではシェアが高いことが分かります。IE6 Service Pack (SP) 3 に対する更新プログラムのサポートは 2014 年 4月 8 日まで行われる予定ですが、2010 年 6 月 17 日に内閣官房情報セキュリティセンターが、「旧型ブラウザから新型ブラウザへの移行に係る取組について」という発表の中で、各府省庁に対して「IE6 から IE8への移行を推奨すること」を指示しています。参考:http://www.nisc.go.jp/press/pdf/browser_transition_press.pdf

じょうほう通信 [第 64 回 ] 10分Internet Explorer 6 から新型ブラウザ へ

BioResource Now ! Vol.7 No.12

グラム陰性菌*1、グラム陽性菌*2のそれぞれを代表する大腸菌と枯草菌、この 2 つのリソースが手に入るリソースセンターに発展して来ました。ホームページから、あなたの研究にとって有用な情報をぜひ見つけ出し、研究に活用してください。■

具体的な例を挙げると、新型ブラウザにはタブという機能が備わっているため、次々に新しいウィンドウが開いて画面が IE6 だらけになるということがありません。また新型ブラウザには、フィッシング詐欺や悪意のあるソフトウェアをダウンロードさせようとするサイトにアクセスした場合、アクセスをブロックするような機能も備わっています。

さらに新型ブラウザの方が IE6 よりも使い勝手がよく、安全性も高いことや、IE6 と新型ブラウザでは動作の振る舞いが大幅に異なること、サポートするためにコストがかかることから、Yahoo! JAPAN やGoogle などでサポートが終了され始めており、各種サービスの機能が利用できないようになっています。

Windows XP をお使いの方でも、以下の手順で IE8 にバージョンアップすることが可能です。① まず、OS が Windows XP SP2 または SP3 であるかどうかを確認する。② Windows XP 用 Windows Internet Explorer 8 のダウンロードページ(http://www.microsoft.com/downloads/ja-jp/details.aspx?FamilyID=341c2ad5-8c3d-4347-8c03-08cdecd8852b) からファイルをダウンロードする。③ ダウンロードしたファイルを実行して IE8 をインストールする。

情報センターで公開しているウェブサイトも、新型ブラウザで閲覧されると表示速度などが向上するので、IE6 をお使いの方はこの機会に新型ブラウザに乗り換えてみませんか?       ( 木村 学 )

URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

お知らせ

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 December 2011

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報大腸菌はゲノムリソースがコレクションに加わって以来、提供量が急増していることがわかりました。総合検索サイトの利用者数や情報センターへのお問い合わせ件数を生物種別でみると大腸菌が一番であることも頷けます。スタッフの皆様の丁寧な対応に、脈々と受け継がれてきたリソースセンター魂をいつも感じています。お陰様で 2011 年最後のニュースレターも無事発行することができました。3.11 の大震災で時間が止まってしまった1年でしたが、一歩踏み出して来年を是非よい年にいたしましょう(Y.Y.)。

図 1:The Internet Explorer 6 Countdown

NBRP 発足 10 周年記念ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)公開成果報告会

日程:2012 年 1 月 20 日 ( 金 ) 13:00 - 17:00 会場:東京コンファレンスセンター・品川 5F 大ホール B参加費 : 無料 事前登録 : 必要

詳細は http://www.nbrp-hokokukai.jp/ よりご覧いただけます

  今後は枯草菌の遺伝子破壊株の整備を進め、枯草菌リソースを充実させることが大きな目標の一つとなっています(表 1)。また、大腸菌と枯草菌ともに最小ゲノム株の収集と公開の準備を始めています。ゲノムの中で不必要な遺伝子領域を削り取り、導入した遺伝子を効率良く発現させようというような取組みがなされてきました。元のゲノムから1Mbp以上も削ったものが、大腸菌と枯草菌でそれぞれ作成されています。この最小ゲノム株も近いうちに提供できるようになります。

新たなリソースの充実

表1:原核生物リソースの概要

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

大腸菌ホームページ http://www.shigen.nig.ac.jp/ecoli/strain/枯草菌ホームページ http://www.shigen.nig.ac.jp/bsub/

NBRP 原核遺伝資源(大腸菌・枯草菌)のリソース

突然変異株

■KEIO コレクション(遺伝子の置換による欠失株)■トランスポゾン破壊株(挿入の変異株)■広域欠失株(数キロから数十キロの欠失株)■枯草菌遺伝子破壊株コレクション(挿入の変異株)

■栄養要求性(アミノ酸、核酸の要求性変異体など)■細胞増殖関連(細胞分裂の変異体等)

■モバイルプラスミドコレクション■ASKA ライブラリー

■宿主大腸菌株■大腸菌の発現ベクター

遺伝子破壊変異株

クローン化遺伝子

組換えDNA用の宿主・ベクター系

図 2:YouTube (http://www.youtube.com/) に IE6 でアクセスした場合、「お使いのブラウザは現在サポートされていません。最新のブラウザにアップグレードしてください。」という警告が出る。

警告

*1 グラム陰性菌:グラム染色(細菌類を色素によって染色して大きく 2 種類に大別する方法)で赤色ないし赤桃色 ( 陰性 )に染まる細菌を指す。細胞壁は二層で薄い。大腸菌・コレラ菌・淋菌・根粒菌など、約 80 属が含まれる。*2 グラム陽性菌:グラム染色で青藍色ないし青紫色に染まる細菌を指す。細胞壁は一層で厚い外膜のない菌である。ブドウ球菌・ボツリヌス菌・枯草菌・乳酸菌など、約 60 属が含まれる。

ブロック!

  早いもので、線虫のナショナルバイオリソースプロジェクト中核機関業務を始めてから既に 10 年目になっている。線虫C. elegans の研究の歴史は、S. Brenner博士が英国ケンブリッジで線虫を用いた研究を始めた、1960 年代であったと思われるので、10 年間という期間はそろそろ無視できない長さになってきた。その間、我々は、東京女子医科大学医学部に、ナショナルバイオリソースプロジェクト中核機関として、「線虫」を収集・保存・提供を継続してきたが、変異体リソースを用いた研究論文発表は、着実に増えている。このことは、開始当初からここまで順調に進んで来たことが不思議な気持ちさえ感じる。というのは、新しい技術を追加することは、多少は行ってきたが、「欠失変異体を収集・保存・提供」する枠組みとしては大きな変更は行ってこなかったからである。科学の分野で同じことを長年繰り返して、生産性が維持できることが驚きであると感じている。多くの方のご理解とご支援の賜物であろう。

  新しい変異体をいち早く入手して、知りたい遺伝子機能を少しでも早く解明することは研究者にとって重要な意味がある。一方で、線虫を用いて新しい化合物の解析を行いたいというニーズもあるに違いない、と我々は考えている。線虫はモデル生物として基本的な記載が充実しており、半世紀間使われてきた。これらの情報をベースに、RNAi、変異体、トランスジェニック体などを使用することで、遺伝子機能もかなり分かるようになってきた。次は何だろう?と思うのである。

  ところで、バイオリソースというのは、他の研究者が出したデータも重要だが、現物がないと実験にはならないのである。すなわち、ここから NBRP のウェブサイト(http://shigen.lab.nig.ac.jp/c.elegans/)へ誘導することになる。変異体が表示されている場合、WormBase の変異体アリルへのリンクをクリックすると、元情報を知ることができる。NBRP のウェブサイトとWormBase のウェブサイトの、相互にリンクを貼ってもらうことで、WormBase を見ていて変異体に気づいた研究者を、NBRPホームページに誘導する仕組みが出来たのである(図 2)。

  一方で、NBRP のデータベースにも、遺伝研のサーバに NBRP 専用のページがあり、ここで、中核機関から新しいデータを随時アップロードできるようになっている。こちらは、即座に公開されるので、中核機関が新しい変異体を、NBRP サイトと WormBase サイトの両方に同時に公開するのであるが、実際に研究者が検索等で見ることができるのは、2~3ヶ月の時間差が生じるのである。従って、何度かNBRP ウェブサイトにアクセスして、公開の時間差を学習すると、多くの研究者はNBRP ウェブサイトにブックマークを付けるなどして、最初から頻繁にアクセスするようになる。そうする方が欲しい変異体に早く気づく可能性が高いからである。また、我々は、500 変異体/年程度のペースで欠失変異体を収集・保存している。もし、WormBase に変異体が見つからなかった場合、上記のようなサイトを良く理解するに至った研究者は自分で欲しい変異体をスクリーニングリクエストにエントリーすることができる。こうすると、時々は、興味のある変異体が分離・公開されるのを楽しみに、NBRP のウェブサイトにアクセスして、遺伝子名で検索するという習慣ができてくる。新しい変異体を公開すると、比較的短期間でこのような変異体の分譲依頼が中核機関宛に届くことがあり、このような使われ方がされていると想像されるのである。

BioResource Now !I s sue Numbe r 7 Novembe r 2 011

BioResource Now ! Vol.7 No.11

リソースセンター紹介 〈NO.38〉

Microsoft Office Smart Art 機能じょうほう通信No.63 P2

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リソースセンター紹介No.38

三谷昌平 (東京女子医科大学医学部 教授 )

ナショナルバイオリソースプロジェクト 線虫ナショナルバイオリソースプロジェクト 線虫三谷昌平東京女子医科大学医学部 教授

ナショナルバイオリソースプロジェクト線虫

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

  このような業務を実施するにあたり、日本の NBRP と世界の研究者コミュニティーの関係が、より良く機能する仕組み作りは大切であると思う。そのためには、まず、線虫研究者にNBRPという活動を知っていただく必要がある。線虫を使って研究する場合、研究者は、ほぼ必ず WormBase(http://www.wormbase.org/)という統合データベースを使用している。そこには、遺伝子毎の過去の情報のアーカイブが蓄積されており(遺伝子以外の情報も大量に入っている)、知られていることなら何でも検索できるような形になっている。我々は、WormBase チームからの要請を受けて、ここに NBRP のデータのコピーを送付することにしている(実際には、WormBase の変異体部門のキュレーターが在籍しているSanger センターに線虫 NBRP 用のページが用意されており、そこにデータをアップロードしている)。WormBase は、多くの

情報を収集しているため、ある時点で集まっているデータの全てについて、形式を整えて、新しいバージョンに組み込むには2~3ヶ月を要する。しかし、誰でも見ていることを考えると、意味は大きい。例えば、自分が興味のある遺伝子を検索すると、最初の画面に遺伝子構造が描出されるが、そこに、欠失変異体の欠失領域が出て来るのである(図1)。誰でも、遺伝子について知りたい場合、その遺伝子の機能喪失の表現型情報は大切な研究の糸口になるし、しばしば変異体を取り寄せてみたいと思うようになる。

図1:欠失変異体の欠失領域(○印の中)と   遺伝子構造( )

図2:NBRPのサイトから   Wormbaseへリンク

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資料を作る際に、「図を使って説明したいけど、図形を張り付けて線で繋げるなどの作業が煩わしい」と感じた事がある方は多いと思います。今回は、そんな時に役に立つ、PowerPoint / Exce l / Word (Windows 版Microsoft Office2007 以降 ・ Mac 版 Microsoft Office2008 以降 ) を使用し、簡単に手順や階層構造などの図形を作成できる Smart Art(スマートアート)を紹介します。

じょうほう通信 [第 63 回 ] 10分Microsoft Office Smart Art 機能

BioResource Now ! Vol.7 No.11

メニューバーのデザインタブから他のレイアウトを選択する事で、記載した内容を変更せずに、図形のレイアウトのみを変更することもできます。(図4)

Smart Art について解説しましたが、Microsoft Office2010 以降のPowerPoint / Excel / Word では、これまであまり無かった画像を付けられるテンプレートなどが、50 以上追加されました。

リスト・手順・循環図・階層構造・集合関係・マトリックス・ピラミッドなどにカテゴリ分けされた色々な図形が用意されているので、資料を作る際に使ってみてはいかがでしょうか。            (渡辺拓貴)

我々は、欠失変異体の分離、表現型の解析を行い、面白い遺伝子変異体(acs - 20)を見出した(E. Kage-Nakadai et al., PloS One, 2010)(図 1~図 3)。この変異体は、小分子化合物の線虫内への滲み込みが亢進している。表皮のバリアーを形成する脂質の合成に問題が起こっているようである。標準的な飼育をする限り、それ以外の重篤な表現型はでないので、知りたい表現型がacs - 20 変異体バックグラウンドで変化するかどうかを解析することができるようになると期待される。この変異体は、論文を発表した後、多くの研究室から分譲依頼が来るようになった。

線虫は、96 穴プレートで液体培養が可能なので、スクリーニングも行うことができると予想される。線虫について、蓄積された遺伝情報に加えて、多くの化合物の作用を調べるツールになってくれることを期待している。単に新しい変異体で新しい遺伝子機能を解析し、データを蓄積するだけでなく、新しい化合物の作用の解析ツールとしても NBRP 線虫が多少の貢献でもできれば幸いである。■

Smart Art で図形を作成しよう

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お知らせ 詳細はhttp://www.nbrp.jp/ からご覧になれます

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 November 2011

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報三谷先生は「不思議な気持ち」と表現されましたが、時期を得た質の高いリソースと、成熟した研究者コミュニティとが一緒に育て上げたスーパーモデル生物ならではの成果と言えるでしょう。この 10 年間で三谷先生が分離・提供されたリソースは 4400 種類、それを使って 600 報もの論文が発表されているのですから先生の貢献度はすごいですね。さらに分離したリソースの中から、時期のスーパーリソース候補も見つけられている様子。スーパーモデル生物としての線虫の地位は揺らぎそうにないですね。(Y.Y.)

図3:遺伝子変異体(acs - 20)

図 1:図形の選択

図 2:テキストの編集

図 3:要素の削除

図 4:レイアウトの変更

まず、PowerPoint / Excel / Word を開き、メニューバーの挿入タブからSmart Art(図1-A)を選択します。すると、図 1 の Smart Artグラフィックの選択ダイアログが表示されるので、作成したいテンプレートを選択します。

選択したテンプレート図形内(図2-A)で直接テキスト編集したり、またはテキストウィンドウ(図 2-B)からテキストの入力ボックス(図 2-C)が表示されるので、記載内容を編集する事ができます。

AA

また、図形に表示される要素を減らす場合や追加する場合には、テキストの入力ボックスの要素(図 3-A)を削除 (Delete Key)・追加 (Enter Key) する事で図形の要素数を変更することができます。要素を変更した際には、図形の位置が自動調節されます。(図 3-B)

AA

BB

AA

BB

CC

[ テキスト ] を削除した事で、図形の表示が調節される。

他の図形に変更したいと思った場合は・・?

第 34回日本分子生物学会年会NBRP 実物つきパネル展示:「バイオリソース勢ぞろい」 日程:2011 年 12 月 13 日 ( 火 ) - 12 月 16 日 ( 金 )     9:00 - 17:00 ( 最終日は 14:00 まで ) 会場:第 34 回日本分子生物学会年会 ポスター・展示会場NBRP コーナー(パシフィコ横浜 展示ホール)

また、Windows 版 Microsoft Office2007 のみ対象となりますが、Microsoft Office サイトから Microsoft Office2010 の一部の Smart Artテンプレートをダウンロードして追加する事ができます。追加方法は、下記 URL の Microsoft Office サイト(英語)からダウンロードしたいテンプレートを選択し、詳細画面のダウンロードボタンを選択します。ダウンロード URL:http://office.microsoft.com/en-us/templates/CL101829681.aspx?CTT=5&origin=HA010211779

これで追加は完了です。PowerPoint / Excel / Word の Smart Art に追加したテンプレートが表示されます。(日本語サイトからもダウンロード可能ですが、対象のテンプレートは英語に比べて少ないです。)

※Internet Explorer 以外のブラウザをお使いの方は、ダウンロードしたファイルを解凍し [~.glox] のファイルを [C:\Users\ ユーザ名\AppData\Roaming\Microsoft\Templates\SmartArt Graphics]

(Windows7 の場合)に移動して下さい。

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

BioResource Now !I s s u e N umb e r 7 O c t o b e r 2 0 1 1

Mac の画像ファイル編集コマンドP2

P1 - 2

リソース情報センター便り

URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

じょうほう通信No.62

  2007 年4月号のニュースレターでナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)第 2 期スタートのお知らせをしましたが、もう第 2 期最終年も後半を過ぎ、第 3 期に向けた準備の時期に入っています。リソースと共にデータベースも充実してきましたので、近況をお届けしたいと思います。

  現在 NBRP は 27 のリソース代表機関が参加しています。27 のリソースは、動物(マウス、ラット、ネッタイツメガエル、ゼブラフィッシュ、メダカ、カタユウレイホヤとニッポンウミシダ、カイコ、ショウジョウバエ、線虫、ニホンザル)、植物(イネ、コムギ、オオムギ、シロイヌナズナ、トマト、ミヤコグサとダイズ、アサガオ、広義キク属、藻類)、微生物その他(細胞性粘菌、酵母、原核生物 [ 大腸菌と枯草菌 ]、病原微生物、一般微生物、ヒト ES 細胞、動物細胞、DNA)です。これらの生物グループは、特に基礎科学研究によく使われ利用者の多い生物であること、あるいは日本固有のリソースである、などの理由で沢山の応募の中から選ばれました。情報センターは全てのリソース機関と協力し合い、情報発信と情報利用の促進に努めています。

リソース情報センター便り

BioResource Now ! Vol.7 No.10

図1-A図1-B

図1-D

図2-1

図2-2 図2-3 図2-4

  個々のデータベースは大変充実してきています。すべてを紹介するには紙面が圧倒的に足りませんので、来年のニュースレターでは毎号1つずつデータベースの紹介ができるようにしたいと考えています。したがいまして、ここでは全体の概要と情報センターからサービスしている総合検索サイトについて紹介します。

  2011 年 10 月現在の NBRP リソース総数は約 550 万件(図 1-A:4年前は 200 万件でした)、データベースの月利用者数はおよそ 17 万人(4年前は 10万人)です。第2期では特に「NBRPリソースを使った研究の成果論文の収集」に注力し、現在 7700報(図 1-B)を収集するに至っています。これは利用者の協力とリソース機関の熱心な情報収集活動の結果ですが、収集率は決して高くはないので更なる努力が必要であると言われています。「評価報告書」などを含む全ての情報はNBRP 公開ページwww.nbrp.jpから発信しています。

図1-C

  一口に “リソースの情報” って言いますが、具体的にどんな情報でしょうか。基本は、どのようなリソースが(what)、どこにあって:所在情報(where)、どうしたら (how) 入手できるのか、という情報です。What の中身は、リソースの名前や ID, 履歴、遺伝的背景、DNA配列、関連遺伝子情報、形態形質(画像を含む)、関連論文、取扱に関する情報などに分けられますが、もちろん生物種毎に異なりますし、同じ生物種でもリソースの種類によって様々です。リソースの種類を横軸に、情報を縦軸に置くと、縦軸方向は主にリソース機関が中心となってデータを集積し、データベースを拡充します。それに対して情報センターが中心になって進めるのは横軸方向の横断的情報利用の部分で、これを総合検索サイト(BRW:BioResource World)と呼んでいます。NBRP HP からは、縦軸方向(図 1-C)、横軸方向(図 1-D)のどちらからも利用することができます。

第 34回日本分子生物学会年会NBRP 実物つきパネル展示: 「バイオリソース勢ぞろい」 日程: 2011年12月13日(火) ~16日 (金) 会場:パシフィコ横浜 ポスター展示会場    (展示ホール) NBRP コーナー

お知らせ

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図1:NBRP情報公開サイト 図2:NBRP総合検索サイト(BRW)

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

一般的には圧倒的なシェアを持つ Windows ですが、アカデミック分野では、Mac を利用されている方も多いと思います。今回は Mac で簡単な画像編集を行うコマンドを紹介します。

Mac で画像編集を行う方法としては、付属の iPhoto、市販ソフトウェア、フリーソフトウェアなどを利用するのが一般的ですが、MacOS X からUNIX ベースの OS になったことで、画像編集を行う sips (scriptable image processing system) コマンドが用意されました。sips コマンドでは画像フォーマットの変換、リサイズ、回転、上下・左右の反転などが行えますが、その中から「リサイズ」について紹介したいと思います。

じょうほう通信 [第 62 回 ] 10分Mac の画像ファイル編集コマンド

BioResource Now ! Vol.7 No.10

複数の画像ファイルを一括してリサイズするには、“sips -Z ピクセル数 ワイルドカード --out 出力フォルダ” という形式で実行します。

図3-①では、デスクトップの images フォルダにあるすべてのJPEG ファイル(*.JPG)を、600 ピクセルの正方形にフィットする形でリサイズし、images フォルダに作成しておいた resizeフォルダに出力しています(図4)。

  情報センターでは、さらに、形質のオントロジーによる検索、ヒト疾患による関連遺伝子検索、代謝マップからの検索、画像検索、などの実装を計画しており、あらゆる方向からリソース情報にアクセスする方法を考えているところです。足りないところは外部のデータベースにも応援をしてもらえると思います。

  考えてみるとリソースは、提起された問題の答えを常に完璧に内包しているのです。引き出し方がうまければクリアな答えを見せてくれるし、まずければそれなりの反応しか得られないということなのです。そういう意味で、リソースの可能性は無限大です。引き出した分だけ情報量は増え続けますが、新たな知識が情報量を圧縮してくれることになるのでしょう。いつもと違った方向から情報を眺めてみるのも楽しいかもしれません。 ( 山崎由紀子 )

皆さんの中には、扱っているリソースを撮影して管理している方もいらっしゃると思います。デジタルカメラの高画素化が進み、画像ファイルのサイズが巨大化するにつれ、ウェブ上でリソース画像を公開する際も、リサイズは必要になってくると思います。縦向き横向きに関係なく、一括でリサイズできる機能は便利なので、是非使ってみてはいかがでしょうか?

コマンドでリサイズを試してみよう

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

ここでは、デスクトップに” images” フォルダがあり、その中にリサイズ対象の画像ファイルがあるものとします。

はじめに、Finder メニューの「移動」から「ユーティリティ」を選び、「ターミナル」を起動します。

次に、デスクトップの images フォルダに移動するため “cd( スペース )” と入力し、デスクトップにある images フォルダをターミナルにドラッグアンドドロップします。これにより imagesフォルダのパスが自動入力されます(図1-①)。

“sips -Z ピクセル数 リサイズ対象の画像ファイル名 --out リサイズ後の画像ファイル名” という形式で実行します。図1-②では 600 ピクセルの正方形にフィットする形でリサイズしています。横長の画像ファイルなら横が 600 ピクセル、縦長の画像ファイルなら縦が 600 ピクセルになり、それぞれの縦、横はリサイズ対象の画像ファイルの縦横比を維持したまま自動調整されます(図2)。

( 生物遺伝資源情報総合センター 系統情報研究室 佐賀正和 )

図1

図 2:リサイズされた画像ファイル

図4:resize フォルダに出力された複数の画像ファイル

図 3 :複数ファイルのリサイズ

①②

  BRW では現在、「キーワード検索(図 1-D, 図 2-1)」、「DNA 配列の相同性検索(図 2-2)」、「遺伝子オントロジー(GO)による検索(図 2-3)」、 「論文検索(図 2-4)」の 4 種類のサービスを提供しています。GO と論文はまだ情報収集中であり十分とはいえない段階ですが、前者の2つに比べると利用範囲が格段に広がる可能性を秘めていると思われます。なぜならば、たとえば同じ機能を持つ遺伝子でも生物種によって呼び名が異なると「キーワード検索」では不十分ですが、1つの機能(意味)を ID化し、同じ機能をもつ様々な名称をこの1つのID にマッピングしているオントロジーを利用すると、どのような名称からも共通の機能をもつ、すべての生物種の情報を探すことができるようになるからです。

論文検索の場合には、今のところタイトルのキーワードしか検索できないのですが、たとえば PubMed が 提供しているMeSH(Medical Subject Heading: 用語のオントロジー)を利用すると、主題の近いものをグルーピングすることができるため、研究分野と使われたリソースを関連づけることもできるようになります。

BioResource Now !Issue Number 7 October 2011

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 7 S e p t e m b e r 2 0 1 1

BioResource Now ! Vol.7 No.9

プレゼンテーションでのトラブル予防法 P2

P1 - 2

はじめに 招待講演

ホット情報 〈No.36〉

じょうほう通信No.61

ホット情報No.36

  「バイオリソースは一度失うと復元が難しい」3 月 11 日に発生した東日本大震災で、この言葉が現実味を増して感じられるようになりました。NBRP では、実施機関の各先生方が、情熱を注ぎ長年かけて整備してきた、貴重なバイオリソースを豊富に保存しています。これらは、生命科学の研究の進歩に貢献するものであり、人間にとって幸せをもたらす未来資産になるもので、まさに国の財産と言えます。

  NBRP では、去る 8 月 25 日都内でNBRP 関係者を対象に、「NBRP バイオリソースの防災対策シンポジウム」を開催しました。この度の大震災を踏まえ、NBRPとして国の財産であるバイオリソースをどのように守っていくか。将来いつ襲ってくるかわからない災害に対して、備えるためのシンポジウムになりました。

シンポジウムのプログラム  シンポジウムでは、文部科学省ライサイエンス課の石井課長および、NBRP 推進委員会主査の小原先生よりご挨拶があり(写真 1)、その後小原先生の司会で、東日本大震災で直撃を受けた東北大学の笠井憲雪先生の招待講演、今回の大震災で被害を受けた、筑波地区のリソースの先生方の事例報告、加えて今年 1 月に発生した、新燃岳火山噴火の事例報告をそれぞれ行っていただきました。文部科学省からは、今回の

大震災を踏まえリソースのバックアップ対策支援について行政措置の説明があり、最後に総合討論で締めくくられました。

講演の最後に今回の震災の教訓として以下の点を強調されました。①耐震補強対策 - 明暗を分ける ②震災マニュアル ③ 飼料の備蓄 ④自家発電 ⑤ 震災復興の先を見通すのは難しい ⑥ 職員へのケア

震災では笠井先生自身、2 週間、大学に泊まり込むことになり、復旧活動に陣頭指揮をお執りになった実体験からのご講演には、出席者一同、強く感銘し聴き入りました。

  『3.11 東日本大震災報告 -- 動物実験施設の被害と対応』と題して、東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設長の笠井憲雪教授に、招待講演をお願いしました。(写真2)

  先生の施設では、マウス、ラット、モル モ ッ ト、ウ サ ギ、イヌ、ブタ、ヒツジ、サルの動物を約 40 名の職員で、飼育管理をしています。今回の震災では、マウス・ラット以外の大きな動物では、ほとんど被害はありませんでした。マウスとラットについては、約 250 台のラックのうち転倒したのは未固定だった平棚の 2 台だけで、大部分のラックは耐震対策がなされており、無傷でした。ラックを壁、床、天井に固定することが有効な対策となることを身をもって感じたということです。動物の犠牲としては、地震の揺れのため一部の自動給水ノズルに不具合が生じ数十匹のマウスが溺死しましたが、これ以外には動物の犠牲はなかったようです。区域外への動物の逸走は、逸走防止の設備が施されていたため皆無でした。一方、耐震補強対策が余り取られていなかった実験室、洗浄室およびオフィスでは、足の踏み場がないくらい機材が落下し、手術室の酸素ボンベは全部転倒したようです。ライフラインの被害・復旧については、電気は翌日復旧、電気が復旧すると水も復旧しました。空調は 2 日間停止、ガスの復旧は最も時間がかかり 2 週間後となり、ようやく実験も再開できるようになったそうです。国動協や実験動物医学会のメーリングリストに「こういったことが今起こっているのだけれど、どうしたらいいだろうか」と緊急質問を問い掛けたところ、大勢の人から情報が寄せられ緊急時の対応に非常に役に立ったことや、筑波大学から滅菌済み床敷きの提供支援があったことなど、エピソードが披露されました。

NBRP バイオリソースの防災対策シンポジウム佐藤 清 (国立遺伝学研究所 NBRP事務局 事務局長)

国立遺伝学研究所 NBRP 事務局 事務局長佐 藤 清

NBRPバイオリソースの防災対策シンポジウム

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写真3. 事例報告の各先生左上より小幡先生、漆原先生、笠井先生、稲葉先生、明石先生

写真2. 招待講演笠井憲雪教授

事例報告  今回の震災において、NBRP 全体としてはリソースそのものに影響を受けた機関は一部で済みましたが、細胞性粘菌やニッポンウミシダに被害が出ました。事例報告では、被害を受けたリソースの先生方に被害状況、復旧状況および震災を教訓としたリソースの防災対策について、報告をしていただきました。(写真 3)震源地に近かった筑波地区においては、停電や断水、炭酸ガスや液体窒素の供給停止などインフラ上のダメージが共通して見られました。今回の震災を教訓に今後取り組むべき防災対策は、表 1 に示したようにまとめることができます。

表1. 今回の災害を教訓に今後取り組む各リソースの防災対策

写真1. 小原先生(司会)

①緊急時マニュアルの作製 ②井戸の掘削 ③非常用電源のための燃料タンクの拡充 ④液体窒素製造装置の設置 ⑤理研播磨研究所のバックアップ施設へのバイオリソースの移管 ⑥緊急時における他機関のリソースの維持保管

①地理的に隔たった場所でのバックアップ保存(筑波大学と大阪大学) ②早期のバックアップ保存③多様な方法で保存 ④危機管理体制の整備

①転倒対策 ②非常用電源の確保 ③液体窒素での凍結保存株については、環境研と神戸大でのバックアップをすでに実施、継代培養株のバックアップを今秋より北海道大学追加 ④藻類の培養には照明が必要であり、蛍光灯から電力消費の少ないLEDへ移行

①野生型ホヤの業務を東京大学と京都大学が分担していたことにより致命的な被害を免れた。ホヤのトランスジェニック系統と近交系統に関しては、筑波大学と東京大学で行っているが、相模湾に面していることから双方が同時に被害を受けることが危惧される。このため、京都大学をバックアップ機関として設置

①施設を灰の堆積しにくい、もしくは付着した灰を除去しやすい構造

理研BRC 細胞性粘菌

藻類 カタユイレイボヤ・ニッポンウミシダ

ミヤコグサ・ダイズ

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 September 2011

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(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

昨今では、プレゼンテーションの資料作りに Microsoft Office PowerPoint(以下、PP)をはじめとする、プレゼンテーションソフトが欠かせないものとなっています。しかし、自宅でプレゼンテーションの練習をしたいけれど、PP を持っていない。あるいは自分のパソコンで作成したスライドを、本番のパソコンで開いたらデザインが崩れていた。ということで困ったことはありませんか?今回は、PP がない環境で、スライドを閲覧する機能、文字化け、デザイン崩れを起こしにくくする機能をご紹介したいと思います。

じょうほう通信 [第 61 回 ] 10分プレゼンテーションでのトラブル予防法

各リソースセンターでは貴重なリソースのバックアップ態勢について以前からも議論し、具体的な対策を講じているところも多かったのですが、震災で得た教訓を基に、更に徹底強化することになりました。一瞬にして失われる可能性があり、一度失ったら取り返しがつかないのは「生もの」に限らず「情報」においても同様です。このことを肝に銘じて情報センターでも取り組んでいきたいと思います。(Y.Y.)

BioResource Now ! Vol.7 No.9

「~~にコピー」をクリックするとフォルダが作成されます(図 3)。フォルダの中には、15 個のファイルが作成されています。このファイルは常にセットで保存してください。ファイルが欠けると、起動できなくなります。

PP が使用可能な場合、フォルダ内の「~~ .ppt」を直接開いていただければ、ファイルの編集が可能です。更新された情報は、再度、プレゼンテーションパックによる保存をすることはなく閲覧が可能です。

フォルダ内の「PPTVIEW.EXE」をクリックすると、Office PowerPoint Viewer が起動します。表示したいプレゼンテーションファイルを選択すると、(図 4) PP のスライドショーが実行されます。この方法を使用すれば、意匠を凝らしたデザインでも崩れにくくなります。また、PP がインストールされていない環境でもプレゼンテーションファイルを閲覧することができます。

方法は非常に簡単です。プレゼンの資料を作成した後、PP のメニューから

「発行」をクリックしてください。サブメニューが開かれますので、その中から「プレゼンテーション パック」をクリックしてください ( 図 1)。

プレゼンテーションパックをクリックすると、ダイアログが表示されます ( 図 2)。ダイアログ内の CD 名の項目に名前をいれてください。この名前で、パソコン内の指定された場所あるいは、CDにフォルダが作成されます。

国としてのバックアップ対策支援  今回の震災による被害を踏まえバックアップ体制を可及的速やかに整備する必要が謳われています。文部科学省の土屋調整官(写真 4)より、今年度に限りゲノム情報等整備プログラムの採択数を減らし、そこで捻出された予算を基にバックアップ体制の整備を行う方針であること、要望を提出したリソースに対しては速やかに内定通知を出し計画変更の承認手続きを進めている、とのスピーディな国の支援措置について説明がありました。

まとめ  NBRP の実施機関は首都圏から西日本に偏っていますので、今回の震災ではプロジェクト全体としては幸いにも被害が少なくて済んだと思われます。しかし、将来、東海地震、東南海地震、南海地震も懸念されますし、地震だけではなく他の自然災害も危機もありますので、国の財産であるリソースをどのように守っていくか、今後しっかり取り組んでいかなければならない NBRP の課題と言えると思います。今回の予算措置では 17 リソースがバックアップ支援を受けることになりました。

困ったときにこのような方法を試してみてはいかがでしょうか?

プレゼンテーションパック

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

お知らせ 詳細はhttp://www.nbrp.jp/ からご覧になれます

図 1

図 3

図 4

図 2

発行をクリック発行をクリック

CD名の項目に名前を入れるCD名の項目に名前を入れる

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プレゼンテーションパックをクリックプレゼンテーションパックをクリック

PPTVIEW.EXEをクリックPPTVIEW.EXEをクリック

表示したいプレゼンテーションファイルを選択表示したいプレゼンテーションファイルを選択

この機能は Windows の PP 2003 以降に標準装備されています。ただし、Windows で作成したスライドを、Mac で閲覧することはできないためご注意ください。ここでは PP 2007 の画面で説明します。

※フォルダにコピーを選択した場合(図 2-A)、任意の場所へ保存することができます。CD にコピーを選択した場合(図 2-B)、CD および DVD への書き込みができます。

細胞性粘菌トレーニングコースのご案内日程:2011 年 11 月 22 日(火)- 25 日(金) 会場:筑波大学第2エリア地区内、つくば市NBRP(ナショナルバイオリソースプロジェクト)細胞性粘菌では、新規に細胞性粘菌の研究へのご利用をお考えの研究者向けに、トレーニ ングコースを開催いたします。各日独立のコースになりますので、一日だけの参加でも構いません。参加費は無料です。

( 生物遺伝資源情報総合センター 系統情報研究室 相場 厚輝 )

耐震補強対策、自家発電、液体窒素、バックアップ先の選定、長期保存方法の技術的ブレイクスルーなどリソースに応じてリスクマネージメントを積み上げていくことが重要なことと思われます。広域災害になればなるほど外からの支援は望めません。自分のリソースは自分で守るという気概が肝心ではないでしょうか。■

写真4. 土屋調整官 写真. 会場風景

図3:BACの4次元DNAプール。72枚の384穴プレートに納められたBACクローンを4つのパターンで混合してDNAを抽出し、6枚の96プレートと12本のチューブに保存している。

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

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BioResource Now ! Vol.7 No.8

スマートフォンに迫るウィルスの脅威 P2

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第2期NBRPアサガオの実施体制

アサガオと近縁種系統

アサガオのBACクローン

研究とバイオリソース 〈No.11〉

じょうほう通信No.60

研究とバイオリソース

No.11

  アサガオは日本独自のバイオリソースで、江戸時代後期に起源を持つ多種多様な変異体が保存されています。ここでは、第 2期 NBRPの 4年間(平成 19~22年度)での進展を中心にしてアサガオリソースの現状を紹介します。

  第1期(平成14~18年度)は、中核機関と 2 つのサブ機関でスタートしましたが、第 2 期では、体制を見直して九州大学(代表機関)と基生研(分担機関)が担当しています。九州大学ではアサガオと近縁種系統、基生研では主に DNA クローンを扱っています。相互に事業を補完して、バックアップ体制も整えてきています。

  昨年度末までに 552 系統を収集し、第 1 期の分と合わせて 1,750 系統を保存しています。国内の研究者や愛好家が主要な寄託元で、野生系統や近縁種は国外の研究者からも収集しています。毎年 500~800系統の 2,500 本程度を栽培して系統更新、特性の調査記録、提供用種子の確保を行っています。また、ヘテロ接合の状態で、不稔変異を保存している系統の遺伝子型調査の為、短日下で開花が早まる冬期には、数千~数万本を温室で栽培しています。これらの栽培過程では新しい変異体も発見されており(図 1)、転移活性の高い内在性トランスポゾンが変異の原因であると思われます。

  第 1 期では EST クローンを中心に収集しましたが、第 2 期では 55,296 の BACクローンを収集して提供を開始しました。BAC クローンは東京古型標準型(Q1065)の実生から抽出した DNA を用いて作成されており、ゲノム断片化に異なる制限酵素を使った 2 種類のライブラリーがあります。平均鎖長は 100 kb 前後で、ゲノムのカバー率は 5~6 倍程度になります。アサガオはゲノム配列が未解読であり、これらの BAC クローンの配列も整備されていない為、4 次元の DNA プール(図 3)を作成してクローンを提供する環境を整えました。ユーザーには最初に、DNA プールを提供してスクリーニングをして頂き、ポジティブだったクローンを改めて提供しています。アサガオのゲノムサイズは 800Mbp~1,000M bp と推測されており、現在、新学術領域ゲノム支援で解読が行われています。その一環として収集した BAC クローンの末端配列も整備できる予定です。なお、DNAプールの作成には、メダカリソース中核機関(基生研)の成瀬先生、竹花研究員のご協力がありました。この場をお借りして感謝致します。

  NBRP アサガオグループは、アサガオの研究者コミュニテイが集う研究集会を主催しています。平成 20 年と 22 年には、第 5 回と 6 回の研究集会が基生研で行われました。次回は来年(平成 24年)の夏頃に、九州大学で行われる予定です。

アサガオリソース最新情報

  アサガオは花成を研究する上で、極めて優れた特性をもつ短日植物です。芽生えに暗期を一度与えると、花成を誘導することができ、その暗期に短い光照射を行うことで誘導を解除(光中断)できます。この花成研究の材料として、標準系統「ムラサキ(Violet)」は国内外で広く利用されており、その研究成果は論文として 500 報以上あるとされています。ここまで利用された理由は、丸種(京都市の種苗会社)が販売していた均質な種子が入手し易かったことにあります。しかし、丸種に自家受粉種子を提供していた、京都大学の篠崎眞輝先生が退官された為に、販売が中止されました。NBRP アサガオでは、ムラサキを使ってきた研究者の強い要望を受けて、急遽、種子の増産に取り組むことに決めましたが、キログラム単位で種子のリクエストに応じることや、均質な種子を確保することに大きな困難が予想されました。そこで、中核機関では網室(図 2)を新設して、交雑のない均質な種子の増産を開始し、今年度から試験的に種苗会社での委託栽培を行っています。

広報啓発の取り組み

アサガオリソース最新情報仁田坂 英二 (基礎生物学研究所) (九州大学大学院理学研究院)

九州大学大学院理学研究院 生物科学部門 基礎生物学研究所 モデル生物研究センター 星野 敦 ・ 仁田坂 英二

星野 敦

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図1:第2期に見つかったアサガオの変異体。A; 左右の裂片が欠損し、花弁の伸長も抑えられて  いる。B; 向軸側の組織が背軸側の組織に転換している。C; 葉や花が萎縮し、著しい易変性を示す。D; 花芽が形成されない。E; 市販系統から見つかった新規の立田(maple)変異。F; 米田芳秋(静岡大名誉教授)によってメキシコ の自然集団から得られた夜咲き系統。

図2:標準系統ムラサキの栽培の様子。昆虫による交雑が起こらないように、網を張った施設内で栽培している。

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アサガオホームページhttp://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/ アサガオホームページhttp://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 August 2011

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(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

2011 年夏商戦に NTT ドコモや KDDI、ソフトバンクモバイルの携帯電話 3 社は Android スマートフォン ( 図1)の新製品を多数投入し、各社こぞって新機種の利便性をアピールしています。特に Android 端末は、全世界・国内共に利用者数が iPhone を超えて 1 位となり利用者が急増しています。

じょうほう通信 [第 60 回 ] 10分スマートフォンに迫るウィルスの脅威

今年の夏はアサガオやゴーヤで緑のカーテンを作って節電に貢献された方も多かったのではないでしょうか。ちょうどよいタイミングでアサガオリソースの話題を提供していただくことができました。新しい変異体の発見が続く一方でゲノムリソースも充実してきたようですので、今後の研究の発展が楽しみです。系統が愛好家の方からも寄託されるリソースは珍しいと思います。昔ながらの系統名、たとえば「青斑入蝉葉桜鼠色丸咲大輪」なんて素敵ですね。ちなみにこの系統の遺伝子型は、v1 re dg bv;;mg pr [lt] di?詳しくはホームページをご覧ください。(Y.Y.)

BioResource Now ! Vol.7 No.8

セキュリティソフトは、有償から無償のものまで各社から様々な製品が提供されていますが、以下の様な機能があるものを選ぶと良いでしょう。● 本体メモリーや SD メモリーカードのウイルススキャン● 悪意あるアプリケーションのダウンロードのブロック● 不要な電話や SMS※1 などのテキストメッセージのブロック● 紛失した際のリモートでのデータ消去やロック機能

Android アプリは、インストールする際に必ずアクセスする情報(個人情報、GPS 位置情報、ネットアクセス等)のパーミッション確認画面が表示されます ( 図3)。インストールする際には、面倒がらずにアプリの内容とアクセスする情報に不審な点が無いか、必ずチェックします。但し、アプリが潜在的に悪質かどうかを見極めるのは難しいため、信頼できるマーケット(携帯電話会社がサービスしているマーケット等)を利用することをお薦めします。Google が開発した Android は、ライセンス料がフリーで仕様も公開

されており、アプリケーションを自由に配布できるなどオープン性が特徴ですが、それ故にマルウエアも登場しやすく、パソコンと同等以上のセキュリティ対策が欠かせません。さらに、個人情報はパソコンよりも多く格納されているケースが多いため、今後 Android を狙ったマルウェアは爆発的に増加してくることが予想されます。

セキュリティ対策は、Google が機能やサービスを一通り揃えているわけではなく、サードパーティの製品やサービスをユーザが選び組み合わせる必要があります。Android 端末もインターネットにつないで情報をやりとりする以上、セキュリティ対策ソフトの導入は今後必須となってきます。また、怪しいアプリをインストールしない様、注意する必要があります。

九州大学では、来月の日本植物細胞分子生物学会(平成 23 年 9 月 6 日~8 日)に合わせて、アサガオ観察会も開催されます。

  今後、ゲノム配列に系統やDNAクローンの情報を統合することで、より研究者に優しいリソースに発展させたいと考えています。ご支援を引き続き賜りますよう、よろしくお願い致します。■

爆発的に増える Android 端末とそれを狙うマルウェア セキュリティーソフト選びは、機能の有無に留意

( 山川 武廣 )

利用者数の増加に比例して、Android 端末をターゲットとしたマルウェア(ウィルスを含む不正プログラム)も今年に入って増加しており、今まで安全と言われていた公式 Android マーケットで不正アプリが発見されたり、金銭狙いのマルウェアも発見されています ( 図2)。

以下にセキュリティ対策についてまとめた図を示します。スマートフォンには大切なデータが保存されていることを常に意識しながら、便利に使いこなしていきましょう。

図 1. スマートフォン●自由にアプリケーションをインストールし、機能拡張が出来る携帯電話●インターネット接続が前提となる

図2.Android 端末のマルウェア事例

3 月初め、米シマンテックなどが公式のAndroid マーケットで、不正アプリが発見されたと報告

ヘビがエサを食べるゲームを装っているが、裏では GPS による位置情報を外部サーバに勝手に送る

アプリは信頼できるサイトから取得、インストール時のパーミッションを必ずチェックする

図.対策まとめ図

オープンゆえにリスクも高い Android 端末

Android 端末のセキュリティ対策

ショートメッセージサービスの略。送信する側が料金を払い受信側は無料でメッセージを受け取ることが出来るサービス

※1

このアプリが下記にアクセスするのを許可する:あなたの場所粗い(ネットワークスペース)場所ネットワーク通信完全インターネットアクセスシステムツール電話がスリープになるのを防ぐ

図 3. アクセス情報の確認画面を必チェックする

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お知らせ

NBRP 事後評価報告書を公開いたしました。

平成 23 年度 NBRP「ゲノム情報等整備プログラム」(2011.4 - 2012.3) の課題選定結果発表!

[ 日本遺伝学会第 83回大会 ] NBRP シンポジウム開催 9 月 20 日午後・9 月 22 日午後

詳細は http://www.nbrp.jp/ からご覧になれます

セキュリティ対策ソフトウェアを導入する

信用できるマーケットからアプリをダウロードする

アプリインストール時のパーミッションを必ず確認する

紛失に備えてリモートでのデータ消去やロック機能を設定しておく

使用しないアプリはアンインストールする

インターネットインターネット

*1 クローンプールを用いたスクリーニング少ない実験回数で目的のクローンをスクリーニングする方法。アサガオの BAC、384 穴(16x24) プレートが72 枚の場合は、6枚を1組として以下の4種類(4 次元)のプールを作成しています。

まず、1)を鋳型にして 12 反応の PCR を行います。続いて目的クローンを含む組みの、2)から4)のプールを鋳型にして46 反応(16+24+6)のPCRを行います。合計で 58 反応の PCR で目的クローンを選抜できます。1)は 12 本のチューブ に、2)から4)は 6 枚の 96穴プレートに納められています。

1)

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6 枚のプレートの全てをまとめた 2,304 クローンを含むプール:12組み6枚のプレートの各行をまとめた144クローン (24列 x6プレート)を含むプール:16プール x12組み6枚のプレートの各列をまとめた96クローン (16行 x6プレート)を含むプール:24プール x12組み各プレートの384クローンを含むプール:6プール x12組み

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2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

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BioResource Now !I s s u e N u m b e r 7 J u l y 2 0 1 1

BioResource Now ! Vol.7 No.7

Google 画像検索サービス P2

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1. 究極のモデル生物=酵母

究極のモデル生物=酵母 の研究を支える酵母遺伝資源センター (YGRC) 究極のモデル生物=酵母 の研究を支える酵母遺伝資源センター (YGRC) 大阪市立大学大学院理学研究科 生物地球系専攻 教授

大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻 准教授

究極のモデル生物=酵母の研究を支える酵母遺伝資源センター (YGRC)

中村太郎(大阪市立大学大学院理学研究科) 金子嘉信・ (大阪大学大学院工学研究科)

リソースセンター紹介〈No.37〉

じょうほう通信No.59

リソースセンター紹介No.37

  酵母はもっとも役立つ微生物として、人間と長い付き合いがありますが、研究用生物としても非常に有用です。酵母は自然界に 1,000 種以上存在しますが、このうち、分裂酵母               と出芽酵母            (図 1)が、ライフサイエンス研究に特によく用いられます。これらの酵母では組換え DNA 技術を含め、様々な実験手法が開発されており、比較的手軽に使えます。細胞周期や細胞内タンパク質輸送、オートファジーなど、酵母の研究を基にそのメカニズムが解明された例は、たくさんあります。ゲノム配列も、真核生物では最も早く決定されました。ゲノム情報をもとに、充実したデータベースを有し、多様なポストゲノム研究も活発に進められています。研究者人口も多く、酵母研究者を中心に組織された、学会や研究会も数多くあります。このように酵母は、究極のモデル生物といってよいでしょう。

2 . YGRCは世界トップの酵母リソース センターと認められています  しかしながら、酵母リソースを提供する機関は、完備されているとは言えませんでした。NBRP の開始とともに YGRC は酵母コミュニティの熱い期待を受けて、平成14年に事業を開始しました。     を代表機関(大阪市立大学)で、      を分担機関(大阪大学)で取り扱うという、分業の仕組みもできあがりました。事業規模は年々大きくなり、ここ数年は年間約 2,000 件のリソースを提供しています。その約 60%は海外向けで、平成 22 年度は世界 24 カ国に提供しました(図 2)。分裂酵母の保存リソースは、質・量ともに世界随一です。出芽酵母リソースについても世界トップクラスで、日本の研究者が作製したオリジナリティの高いリソースを、数多く有しています。

  世界中で使用されているほぼすべての     実験室株は、スイス・ベルン大学の遺伝学者 Urs Leupold により単離された、一系統 ( Leupold 株)に由来しています。これを含む Leupold ゆかりのベルン大学保存株が、昨年度 YGRC に寄託されました。YGRC が世界中で使われている     の源流株を有していることは、YGRC の「世界の酵母リソースセンター」としての地位を象徴しています。また、      でも最初のゲノム配列決定に使用された株(S288C)や、よく使用されている系統の元株を有しています。

このように、YGRC は国際的に見ても「世界トップクラスの酵母リソースセンター」と認識されています。ここでは、最近整備した注目すべき酵母リソースを紹介します。

4. 分裂酵母のゲノムワイドな リソース  YGRC が保有する分裂酵母リソースは多岐にわたりますが、ここではゲノムワイドなリソースについて紹介したいと思います。まずは大阪大学の平岡研究室から寄託された、GFP 融合タンパク質融合ライブラリーです。分裂酵母に存在する約 5,000 の ORFのうち、1,000 の ORF に GFP 遺伝子が融合されており、個々のタンパク質の局在を観察することができます(文献1)。自分が興味を持つタンパク質だけでなく、自分の調べたい細胞内構造に局在するタンパク質のスクリーニングも可能です。この一連の株は、最も人気の高い分裂酵母リソースの1つです。また、平成 17, 18 年度のゲノム情報等整備プログラムと、遺伝研小原研究室の協力のもとにより、分裂酵母ゲノムライブラリー(文献2)の約 60,000 クローン、完全長 cDNA ライブラリーの約 22,000 クローンの挿入断片を決定しました。

5. 出芽酵母の人気リソースと おすすめのリソース  平成 22 年度の出芽酵母リソース提供トップ 10 は、出芽酵母細胞内の特異的タンパク質分解を植物ホルモン(オーキシン)で誘導して、遺伝子機能を研究するために開発された Auxin-Inducible Degron (AID)システム(文献3)のプラスミドと菌株で独占されました(表1)。国内外 12 カ国に257 クローンを発送しました。何年か後には、興味深い研究成果に結実することを期待しています。  出芽酵母にもゲノム DNA クローンがあり ま す。こ れ は、YEp51B に S288C のSau3AI 部分分解ゲノム断片がクローン化されたもの(文献4)で、現在 363 クローンが公開されています。これらのクローンも、後で述べるゲノムビュアに登録されています。クローン数は少しずつ増やしていく予定です。研究者から寄託されたクローン化遺伝子も、結構種類があります。ゲノムビュアから検索可能ですので、希望の遺伝子があれば一度検索してみてください。また、PCR 増幅した遺伝子をpTOWug2-836ベクター(YEp型)に連結したプラスミドをもつ菌株、約 5,800クローンからなる gTOW6000 リソース   (http://tenure5.vbl.okayama-u.ac.jp/~hmlab/gTOW6000/)が 7月公開です。

ゲノムライブラリーの挿入断片は、分裂酵母全ゲノムの95%以上をカバーしています。これらのドラフト配列は、国際データベースに登録しました。また、これらのクローンはあとで述べるゲノムビュア(NBRP 酵母のゲノムデータベース)に登録しました。

Schizosaccharomyces pombeSaccharomyces cerevisiae

S. pombe

S. pombe

S. cerevisiae

S. pombe

S. cerevisiae

中村太郎 ・ 金子嘉信1 2

12

3. YGRCは     の源流株を 有しています

S. pombe

次ページへ続く

図1:分裂酵母(左)と出芽酵母(右)の   微分干渉顕微鏡像

図2:平成22年度のYGRCの提供状況

北米(約25%)

北米(約25%)

YGRCYGRCヨーロッパ(約25%)ヨーロッパ(約25%)

アジア・オセアニア(約10%)アジア・オセアニア(約10%)

表1.平成22年度出芽酵母リソース   提供トップ10

順位 NBRP番号 菌株・DNAの別 提供回数 1

2

BYP6739 DNA 35 1 BYP6740 DNA 35 3 BYP6744 DNA 23 4 BYP6743 DNA 22 5 BYP6742 DNA 15 6 BY25598 菌株 14 7 BY25602 菌株 13 7 BYP6741 DNA 13 9 BY25594 菌株 11 10 BY25576 菌株 10

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 Ju ly 2011

2

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

キーワードを併用して、検索結果の精度を上げる

「画像」から「類似した画像」を検索することができたら便利だと思ったことはありませんか?スマートフォンでは、昨年からこのサービスが始まりましたが、検索対象は限定されています。さらに 2011 年 6 月からは、Google の画像検索でもこの機能が使えるようになりました。しかも検索対象の制限はありません。PC からも手軽に利用できるようになったのです。

今回はこのホットなサービスを紹介します。

じょうほう通信 [第 59 回 ] 10分Google 画像検索サービス

NBRP プロジェクトは第 2 期の最終年度に入り、各リソース機関の充実振りには目を見張るものがありますが、中でも酵母リソースはリソースの収集・保存・配布体制の整備、情報の公開、成果のフィードバックなど、すべての点で理想的な発展を遂げています。情報を通してその手ごたえを感じることができます。担当者の熱意と研究者コミュニテイの協力が成功の鍵といえるでしょう。(Y.Y.)

BioResource Now ! Vol.7 No.7

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

Google 検索ページの左上にある「画像」(図 1 ①)をクリックして画像検索ページに移動します。

次に、検索フォームの右端にあるカメラのマーク(図 1 ②)をクリックして、画像のアップロード (図 2)を選択し、検索に使用する画像をアップロードします。

1 検索に使用する画像をアップロードしよう

検索結果ページには Google 独自のアルゴリズムによって、アップロードした画像に類似している画像が表示されます。検索結果の画像に満足できない場合は「類似の画像」をクリックして、画像の検索対象を絞り込むことができます。

画像とキーワードで検索するには、「画像のアップロード」後、検索欄に画像のサムネイルが表示されている状態で、キーワード(例:沖縄)を入力して検索ボタンを押します。こうすることで、画像とキーワードに沿った画像を検索することができます。

画像の絞り込みでは、「サイズ(図3 ①)」、「種類(顔・写真・クリップアート・線画)(図 3 ②)」、「色(図 3 ③)」などが選択できます。今回使用した画像の花は黄色なので、「色」から、黄色を選択して絞り込みを行うと・・・似た画像を探し当てることができました(図 4)。

2 検索結果を絞り込もう

www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

図 1:Google 画像検索ページ   http://www.google.co.jp/imghp?hl=ja&tab=ii

図 2:画像のアップロードをする画面

6. ゲノムビュア: Google mapを利用した酵母ゲノム を俯瞰するデータベース

  NBRP が提供できるすべての菌株、DNA リソースの情報は、Google map を利用したゲノムビュアからも利用することができます(図 3)。それぞれの遺伝子からは、分裂酵母は英国サンガー研究所の GeneDB、出芽酵母は米国スタンフォード大学の SGDにリンクが張ってあり、遺伝子情報を簡単に参照できます。希望するリソースが見つかった場合、クリックするだけでオーダーのページにジャンプし、送付先情報を入力して、分譲依頼をすることができます。支払いは基本的にクレジットカードですが、それ以外の支払い方法も選べます。インターネットでの買物の要領です。オーダー後、通常約1週間でリソースが届きます。これらのシステムは、NBRP 情報センターの協力で実現しました。

7. YGRCは永続的なリソースセンター を目指してさらなる充実を図ります  私たちが NBRP 酵母事業で心がけているモットーは、「研究者による研究者のためのリソースセンター」です。YGRC は、酵母研究コミュニティと密接な関係を続け、さらなる発展を目指しています。■

図3:ゲノムビュア

ゲノムDNAクローン

染色体の全体像

ゲノムデータベースのORF

対応する菌株cDNAクローン

① 画像を クリック

②カメラのマーク をクリック

図 3:画像検索結果の絞り込みページ図 4:画像検索絞り込み結果

検索に使用する画像

類似の画像類似の画像

画像のアップロード画像のアップロード

②③

注意すべき点として、他人に著作権がある画像などの使用は控えた方が良いでしょう。Google プライバシーポリシー(http://goo.gl/zFr7d)のログデータに従って、処理されます。

画像検索の注意点

(渡邉 融)

沖縄

画像+キーワードで精度↑

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

文献1. Hayashi, A et.al., Genes Cells 14: 217-225 (2009)2. Nakamura, T et al., Mol. Biol. Cell 12:3955-3972 (2001)3. Nishimura, K., et al., Nat. Methods 6:917-922 (2009)4. Akada, R. et al., Mol. Gen. Genet. 254:267-274 (1997)

酵母遺伝資源センター(YGRC)から提供しているリソース1)遺伝学研究用菌株 (約2万株)2)プラスミドDNAクローン(約4500クローン)3)クローニング用ベクタープラスミド4)各種DNAライブラリー(4種類)5)挿入断片が決定されているゲノムライブ ラリークローンと完全長cDNAクローン セット(合わせて約62000クローン)

酵母遺伝資源センター(YGRC)のホームページhttp://yeast.lab.nig.ac.jp/nig/

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構 は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 後編>

情報センター便り

菅原秀明 国立遺伝学研究所

2012 年から GBIF(地球規模生物多様性情報機構)は第3期へ (後編 )

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 7 J u n e 2 0 1 1

BioResource Now ! Vol.7 No.6

Windows7 と IE9 を使ってさらに便利に

① Freebase (http://www.freebase.com/)  を使った感染症と媒介生物種の関係抽出  Freebase には、構造化された 2,000 万以上のデータが格納されている。例えばマラリアの場合、以下のようにResource Description Framework(RDF)(http://ja.wikipedia.org/wiki/Resource_Description_Framework)として知識が表現されている。

  このように構造化されたデータを用いることで、一般の検索エンジンでは抽出が困難な感染症と、その感染症を媒介する生物種の関係を取得できる。

② Animal Diversity Web を使って生物種  と感染症の情報を拡充Animal Diversity Web          (http://animaldiversity.ummz.umich.edu/site/index.html)には、さまざまな生物種の情報が文献情報を引用して整理されている。その中に「Economic Importance for Humans: Negative」という項目があり、媒介する感染症の情報も記載されている。その情報を遺伝研にて確認し、生物種と感染症の関係を抽出して、Freebase からの情報を補った。

③ Freebase の拡充Freebase は、誰でもアカウントを作成して、構造化された情報を登録することが可能である。そこで筆者らは、Animal Diversity Web から抽出した、生物種と感染症の関係を Freebase に登録した。

④ 媒介生物種の観測情報の調査  拡充した Freebase から抽出した、感染症と媒介生物種の関係を参考に、GBIF から得た           (ネズミ)の米国における分布情報と、米国における Hantavirus感染の状況を比較してみた。次ページ図4の左右を照らし合わせて見ると、東西の分布の様子が類似しており、より精密な最新データが得られれば、媒介生物種の分布から感染症の予防対策を講じることも可能になるように思われる。

Peromyscus maniculatus

• /en/Malaria(主 語)type(述 語)     /medicine/infectious_disease(目的語) :マラリアは感染症の一種である• /en/Malaria(主 語)           /medicine/infectious_disease/vector(述語)  /en/anopheles_gambiae ( 目的語 ) :マラリアを媒介する生物種は Anopheles  gambiae である

  GBIF システムと openModellar   (http://openmodeller.sourceforge.net/)の 連携が実現したことから、デフォルトのパラメーターで良ければ、(a)で分布図を表示させた状態から、4回のクリック操作のみで、5分程度で生物分布を予測することが可能になった。遺伝研では、日本原産イタドリの分布予測を例として、このニッチモデリングの動画マニュアル(http://gbif.ddbj.nig.ac.jp/niche_model/)を作成し公開している。図3に動画マニュアルの結論部分を紹介する。図2と照合すると、国外での観測結果と整合する分布が予測されていることと、観測例がない南半球での繁殖も予測されることが分かる。

  GBIF に登録されている生物種の分布情報と、その生物種が媒介する感染症の情報とを組み合わせて、感染症がどの地域で発生しているか、あるいは発生する可能性が高まっているかを推測することを試みた。(①-④)

(c) GBIF 外の情報資源とのマッシュアップ

(b)生物分布予測(Niche モデリング)

P2

P1 - 2じょうほう通信

No.58

情報センター便り

2012 年から GBI (地球規模生物多様性情報機構)は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明

日本GBIFノードは何をしているのか

2)GBIF ポータルサイトの運用  GBIF ノードの第2の役割は、それぞれの国や地域に適合した情報提供システムを用意し、生物多様性情報の利用を促進することである。遺伝研では GBIF 日本ポータル

( トイサ http://www.gbif.nig.ac.jp/) を運営して、前号 項目1)に対応する GBIF データ公開支援、和名による GBIF 検索機能、生物多様性に関連する論文やイベントの紹介、国際動向の紹介、国内活動の紹介、有用リンク集などを提供している。有用リンク集では、247 サイトについてタグと簡潔な説明文を付している。  GBIF ポータルサイトではまた、遺伝研、東大ならびに科博が 2006 年から毎年共催してきた「21 世紀の生物多様性学シンポジウム」の講演資料も公開している。

  GBIF 日本ポータルサイトの検索窓に和名を入力するだけで、生物種の分布情報を図2のように地図上で確認することができる。和名「イタドリ」をキーワードとして入力し、表示された候補学名からFallopia japonicaを選択し、GBIF 利用規約を Accept し、ubspecies や variety などへの展開された学名リストから Species を選択すると、図2が得られる。

3)分布情報から解析へ(a)分布情報

図 3 生物分布予測機能(ニッチモデリング)の利用例:日本における観測データをもとに、イタドリが世界各地で繁殖する可能性を予測。図は、動画マニュアルの画面キャプチャー。

世界各地におけるイタドリの繁殖が予測されます

2012 年から GBI国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 <後編>

2012 年から GBIF は第3期へ国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明 <後編>

されていない地域。

図 2 日本原産のイタドリの分布を表示させる。緯度経度各1度のセルにおける分布密度が高いほど、黄色から赤に段階的に表示色が変わる。緑色の地域は、分布が観測

(GBIF データポータルのイタドリのページから引用)

2006年2007年2008年

2009年

2010年

生物多様性インフォマティクスを創出する生物多様性インフォマティクスを創出する2環境・生物多様性関連の大規模情報ネットワークの構築と利用生物分布情報から探る生物多様性 - 観察情報の集積とその利用生物の学名と和名は何故ややこしいのか - 生物多様性情報探索のキー

講演スライド

  さらに、GBIF 日本ポータルサイトでは、GBIF と連携している Barcode of Life のデータベース(http://www.boldsystems.org/views/login.php菅原 2011※1))と国際塩基配列データベースhttp://www.insdc.org/)を利用した生物種同定システム(http://bol.ddbj.nig.ac.jp/ も提供している。2011 年5月時点で、CO1、rbsL、ITS、matK、trnH-psbA、16S rRNA並びに gyrB の配列に基づいた同定が可能である。

次ページへ続く

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 June 2011

2

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

2011年4月にMicrosoftは、Internet Explorer9 (IE9)の日本語版のダウンロードでの提供を開始しました。最初に Windows7 と IE9 をお使いの方に、お気に入りのウェブサイトを一般的なアプリケーションのようにタスクバーにボタンとして登録できる「ピン留め」機能を紹介します。

またサイト管理者向けに、このピンサイトとして設定したタスクバーのアイコンを右クリックすると表示される「ジャンプリスト」という、サイトごとによく使うメニューを、ワンクリックで開くことができる、メニューのカスタマイズの仕方も紹介します。

じょうほう通信 [第 58 回 ] 10分Windows7 と IE9 を使ってさらに便利に

GBIF のモデリング機能はだれでも自由に利用することができます。日本ノードのサイトからは動画マニュアルも公開されていますので是非ご自分の興味のある生物種で試してみてください。生物多様性を地球規模で体験できることでしょう。和名からスタートできるのは本当に便利ですね。(Y.Y.)

  GBIF は既に 10年の歴史を有している。その間に新しい情報技術が生まれてきている。例えば、Linked Data (http://linkeddata.org/) の考え方と仕組みである。こうした新しい情報技術を活用して、より洗練された分散統合情報システムを構築できる可能性がある。

しかし、今取り組むべきことは「データ、データ、データ」である。ABS に対応するにしても、生物多様性保全の施策を講じるにしても、侵入種を予測するにしても、感染症の広がりを分析するにしても、網羅的で信頼性の高い、時系列データが必要である。一方で、GBIF データ公開件数で1位と2位を占める米国と英国においてさえ、大規模な博物館で維持されている標本情報の、5%程度しかデジタル化されていないと言われている(GBIF Strategic Plan 2012-2016)。地を這うような作業であるが、カードやノートに記録されているデータのデジタル化と、デジタルデータの GBIF 標準での公開作業を、やりきってこその Global Biodiversity Information Facility である。

  一方で、生物多様性情報の物差しとなる標本情報は重要であるが、GBIF 第3期の旗印である “Seizing the future to benefit science and society” を達成するためには、むしろ観測データ集積と Barcode of Life との連携を推し進めることも考えられる。2011 年6月にアルゼンチンで開催される、GBIF 第 18 回総会での議論が待たれる。■

BioResource Now ! Vol.7 No.6

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

最初に「ピン留め」機能の 紹介です。タスクバーへウェブサイトを登録するには、「URL の表示されている欄の左のアイコン」または「ウェブサイトのタブ」をタスクバーにドラッグ & ドロップするだけです。

ウェブサイトをピン留めすると、タスクバーにウェブサイトのアイコンが追加され、それをクリックするとピン留めしたウェブサイトが表示されます。

ウインドウの左上は、ウェブサイトのアイコンが表示されるように変化します。( 図 2)

1 ピン留め機能

次に、ジャンプリストのカスタマイズの仕方の紹介です。

今回は、NBRP 情報公開サイト (http://nbrp.jp) の上部メニュー「NBRP について , 代表機関 , リソース検索 …」へのリンクをジャンプリストに追加してみました。例えば「NBRP について」を表示させる場合は、HTML の <head> …</head> の間に、以下のメタタグを追加します。

2 ジャンプリスト機能

※今回は Windows と IE のみを対象としてます。

www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

これから何が必要か

図4 GBIFから得た           (ネズミ)の分布(左図)とそのHantavirus感染の状況(右図)

図 1. ウェブサイトのピン留めの仕方

<meta name="msapplication-task" content="name=NBRP について ; action-uri=http://www.nbrp.jp/about/about.jsp; icon-uri=http://www.nbrp.jp/image/favicon.ico" />

上記メタタグの形式は、以下のとおりです。

<meta name="msapplication-task" content="「ジャンプリストに表示される名前」; action-uri=「ジャンプリストの項目をクリックした時の遷移先 URL」; icon-uri=「ジャンプリストの項目の左側に表示されるアイコン URL」" />

図 2. ピン留めした時のウェブサイト

図 3. カスタマイズされたジャンプリスト

(木村 学)

①タスクバーに ドラック&ドロップする

タスクバー

URL の表示されている欄の左のアイコン

ウェブサイトのタブ

②タスクバーに登録される

③アイコンが表示される

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

■参考資料※1菅原秀明「生物多様性情報とバーコード・オブ・ライフ」  / DNA多型 / Vol.19:1-12(2011)

Peromyscus maniculatus

来月は「酵母遺伝資源センター」の紹介です。お楽しみに!

次ページへ続く

図1 GBIF の Integrated Publishing Toolkit で容易になったデータ源の可視化:遺伝研から公開したデータの提供機関(by Hosting Body)、由来国(by Region)、分布(by Coordinates)の例

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 7 M a y 2 0 1 1

BioResource Now ! Vol.7 No.5

情報センター便り

2012 年から GBIF(地球規模生物多様性情報機構)は第3期へ2012 年から GBIF(地球規模生物多様性情報機構)は第3期へ

パソコンの節電対策じょうほう通信No.57 P2

その結果、2011 年5月時点で動物、植物ならびに微生物の観測または標本データを235 万件余り公開した。これは、GBIF 公開データ総数 2 億 7 千万件に対してはごく一部ではあるが、加盟国の中で 15 位、アジア諸国の中で1位にあたる公開件数である。

  国内データの公開のためには、公開のためのツールを用意する必要がある。遺伝研では、2010 年度にデータ公開プロトコルを 最 新 の Integrated Publishing Toolkit (IPT) へ更新した。その結果、より多様なデータ項目が公開可能となり、また、データを提供している機関やデータの由来を図1のように可視化することができた。科博においても GBIF 公開のためのツールに加えて自然地名の辞書を整備し、東大では学名辞書を整備している。

P1 - 2

情報センター便り

菅原秀明 (国立遺伝学研究所 )

国立遺伝学研究所 特任教授 菅原秀明

なぜ GBIF なのか

日本GBIFノードは何をしているのか

2012 年から GBIF(地球規模生物多様性情報機構)は第3期へ

  GBIF における生物多様性情報は、分散統合システムによって、網羅的検索が可能になっている。すなわち、各国や国際組織等のノードが、各地域や特定分野のデータを GBIF の標準に則って公開作業を行うと、続いてコペンハーゲンにある GBIF 本部のシステムが global indexing を行い、その結果、誰でもが、他国あるいは他組織由来のデータを検索・閲覧可能となるという仕組みである。したがって、GBIF 日本ノードの役割は第一に国内データを GBIF 標準で公開することである。GBIF 日本ノードでは、国立遺伝学研究所 (以下、遺伝研 )と東京大学(以下、東大)が協力して、主として観測データを、国立科学博物館(以下、科博)が主として標本データの GBIF 公開に努めてきた。

  GBIF は、これら COP10 で策定された名古屋議定書と愛知ターゲットが必要とする情報基盤を提供する立場にあることを自他共に認め、第3期(2012 ~ 2016 年)の旗印を“Seizing the future to benefit science and society” と設定した。事実、表1に例示する生物多様性、生態、生物分類等に関する多くの国際組織やプロジェクトが、GBIF をその情報基盤として期待し、GBIF との連携を深めている。第 3 期はまた、2011 年から 2020 年までの “United Nations Decade on Biodiversity”においても重要な役割を果たすことになろう。

  GBIF(Global Biodiversity Information Facility)は、何時でも、どこでも、誰でもが、世界中の生物多様性情報を利用できる情報環境を実現することを目指して発足し、2001年以来、各国からの拠出金と、各国や生物多様性分野の国際機関・プロジェクトの自助努力によって運営されている(菅原 2006※1)。2001 年 か ら 2006 年 ま で の 第 1 期 は“Proving the concept” を旗印とし、2007 年から 2011 年までの第2期は “Towards full operation” を旗印として、着実に歩みを進めている。2010 年末の時点で、55 カ国と 46の国際組織・プロジェクトが参加し、300 のデータ提供機関が有する 10,000 のデータセットから 2 億 7 千万件の生物多様性情報を一括検索し、分布情報を閲覧することが可能になった。

  2010 年 10 月に、生物多様性への取り組みにおいて重要な国際会議が名古屋で開催された。生物多様性条約第 10 回締約国会議(Convention on Biological Diversity 10th Conference of the Parties (CBD COP10)) で ある。この会議の重要な成果の一つは、ABS(Access and Benefit Sharing、 遺伝資源の利用から生じた利益の公平な配分)の新議定書「名 古 屋 議 定 書」策 定 で あ る(鈴 木2010-2011※2)。この ABS を具体化するには、「いつどこにどのような遺伝資源が存在していたのか/存在しているのか」のデータが必要であり、また、商品化された遺伝資源を原産国まで辿れる情報管理の仕組みも必要である。

  CBD COP10 会議のもう一つの重要な成果は、「愛知ターゲット」が設定されたことである。2002 年の第6回会議(CBD COP 6)で設定された2010年ターゲット「締約国は現在の生物多様性の損失速度を2010 年までに顕著に減少させる」が未達であることを認め、2020 年までの、より具体的な達成目標「愛知ターゲット」20項目が設定された(環境省 2010※3)。このターゲットの一つが「2020 年までに、生物多様性、その価値や機能、その現状や傾向、その損失の結果に関連する知識、科学的基礎及び技術が改善され、広く共有され、適用される」である。すなわち、生物多様性の現況を反映するデータを共有すること自体も、2020 年までの達成目標として挙げられている。

1)国内データのGBIF 公開

<前編><前編>

GEOSS Global Earth Observation System of Systemshttp://www.earthobservations.org/geoss.shtml

GEO BON The Group on Earth Observations Biodiversity Observation Network http://www.earthobservations.org/geobon.shtml

AP-BON Asia - Pacific Biodiversity Observation Network http://sites.google.com/site/asiapacificbon/

EABII East and Southeast Asia Biodiversity Information Initiativehttp://www.esabii.org/

GEF Global Environmental Facilityhttp://www.thegef.org/

BIP Biodiversity Indicators Partnership http://www.bipindicators.net/

DIVESRSITAS DIVERSITAS - An International Programme of Biodiversity Science http://www.diversitas-international.org/

DIPWA DIVERSITAS in the Western Pacific and Asiahttp://diwpa.ecology.kyoto-u.ac.jp/

IPBES Intergovernmental Science - Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services http://ipbes.net/

BioNET International - the global network for taxonomy http://www.bionet-intl.org

CBD GTI Convention on Biological Diversity, Global Taxonomy Initiativehttp://www.cbd.int/gti/

EDIT European Distributed Institute of Taxonomyhttp://www.e-taxonomy.eu/

European Distributed Institute of Taxonomyhttp://www.e-taxonomy.eu/iBoL

表1

International Barcode of Lifehttp://ibol.org/

BioNET International

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

Editor's Note

BioResource Now !Is sue Number 7 May 2011

2

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

東日本大震災の影響により、電力の最大供給が低下したため、電力不足が叫ばれています。電力は貯める事ができないため、電力会社は最大供給量以上の電力を供給することができません。毎日の消費電力のピーク時間※1 を知り、その時間だけでも消費電力を小さくする事が効果的な対策となります。電力需要が拡大する夏に向けて大停電を発生させないよう、一人ひとりができる、パソコンの節電方法を紹介します。(表 1)

じょうほう通信 [第 57 回 ] 10分パソコンの節電対策

節電設定を自動で行うプログラム

表 1:パソコンの節電対策と節電効果

表 2:Windows 自動節電設定

来年度から第 3 期に入る GBIF の、現状と今後の計画について 2 回に分けてお届けします。日本 GBIF ノードの活動はナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の課題でもあり、これまでにNBRPマウス、シロイヌナズナ、藻類のリソースも参加しています。後編では公開情報を使った解析例などもご紹介しますのでお楽しみに。パソコンの節電対策も是非参考になさってください。(Y.Y.)

  遺伝研は 2010 年に DiGIR に替えてIPT を採用したが、GBIF にはその他にも複数のデータ標準が共存している。それぞれの利用状況を表2にまとめた。簡便なDarwinCore と DiGIR の方がよく使われているように見えるのは、米国由来のデータが大部分を占めていることに因る。

BioResource Now ! Vol.7 No.5

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

節電方法 通常時 (W) 節電実行時 (W) 節電効果*2

離席時のスリープモード1 52W 1W 98%

離席時のディスプレイ設定2 52W 21W 60%

使用していない機能を切る( 例 : IEの場合 )

4 53W(起動・閲覧せず)

52W(起動せず・閲覧せず) 2%

ディスプレイの明るさ調節3 52W 33W 37%

「スリープモード」とは、作業内容をメモリに保存し、節電状態で待機させる機能です。また復帰時は、電源を切った状態よりも、高速に作業への復帰が行えます。ただし、スリープモードは電源を切った状態よりもわずかに消費電力が大きいため、就寝時や半日以上使用しない時は電源を切りましょう。

1 離席時のスリープモード

普段使用しているディスプレイですが、明るさ ( 輝度 ) を落とすことで節電をすることができます。デスクトップの場合は、ディスプレイのボタンを操作し、メニューから輝度の調整を行うことができます。また、ノートパソコンの場合は[Fn] ボタンと [Fxx] などのキーボードから行います。

3 ディスプレイの明るさ調節

パソコンに接続しているスピーカや外付け HDD などは待機状態でも電力を消費しています。また、パソコンで起動しているサービスも CPUの負荷を高め、消費電力を大きくします。使用しない機器や使っていない機能は、できるだけ OFF にする事で節電を行うことができます。( ただし、PC 本体やプリンタなど起動に時間が掛かる製品は、起動時に消費電力が大きくなるため、約 2 時間以内に再使用する場合は電源を消さない方が消費電力が少ない場合もあります。)

4 使用していない機能を切る

また、Windows 限定になりますが、Windows 節電設定を自動で行うプログラムも配布されており、このプログラムを適用した場合の節電効率は、初期設定時に比べ消費電力が平均 70% になります。(表2)

このように、ほんの些細な事で、消費電力をわずかですが抑える事ができます。一人ひとりが少しずつ節電を行う事で、生活に大きな影響がでないようにしましょう。

(生物遺伝資源情報総合センター 系統情報研究室 渡辺拓貴)

*2 Desktop ( 一体型 ) 2010 年モデル(Windows 7)のデータを基に計算しています。 参考 URL:http://technet.microsoft.com/ja-jp/windows/gg715287

(生物遺伝資源情報総合センター 系統情報研究室       )

設定項目 設定値 Windows7デスクトップ ノートブック

PC 電源プランディスプレイ輝度ディスプレイを暗くする時間ディスプレイの電源を切る時間ハードディスクの電源を切る時間スリープ状態にする時間デスクトップの背景設定ワイヤレスアダプターの設定

省電力40%2 分5 分10 分15 分

一時停止省電力 ( 高 )

○○○○○

○○○○○○○○

上記「スリープモード」ではパソコンを一時停止してしまいますので、ファイルのダウンロードやウイルススキャンなどの処理中には使えません。処理の途中で離席する場合には、ディスプレイの電源を OFF にすることで、節電することができます。

2 離席時のディスプレイ設定

*1 東京電力が公開している電力使用状況グラフ                http://www.tepco.co.jp/forecast/index-j.html

URL:http://support.microsoft.com/kb/2545427/ja?sd=gn

スリープ 電源OFF 明るさ↓使用しない機器OFF

www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

international.org/

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

■参考資料※1菅原秀明(2006)「Global Biodiversity Information Facility (GBIF)2011年GBIFは 180万種10億件の生物多様性情報を提供する」 *Bioresource Now! Vol.2, No.2※2鈴木睦昭(2010-2011)「生物多様性条約と遺伝資源をめぐる状況(3回連載)」*BioResource Now! Vol 6. No.12、Vol 7. No. 1~No.2※3環境省(2010)「条約新戦略計画(ポスト2010年目標該当箇所)」[環境省仮訳 ]

データ型式 採用機関数 データセット件数 DarwinCore 234 8,716 ABCD Schema 61 1,496

データ公開方式 採用機関数 データセット件数 DiGIR protocol 178 8,456 TAPIR protocol 60 262 BioCASE protocol 59 1,494 IPT 2 3

データ型式標準

データ公開標準

表2 GBIF データ公開プロトコルの使用状況DarwinCore と DiGIR protocol は米国グループが開発した標準で、ABCD Schema, TAPIR protocol, BioCASE protocol は、TDWG(http://www.tdwg.org/) が開発した標準。IPT は GBIF で統合化を進め 2010年から公開されたツールキットで、データ公開プロトコルとして TAPIR を選択することもできる。

  遺伝研はまた 2010 年に、観測や研究の現場ではデータが Excel に書き込まれていることが多いことに着目して、DarwinCoreへの適合性を判定できるマクロを組み込んだ、エクセルブックを開発した。これは、手元のパソコンで手軽に使えるツールであり、今後GBIFデータ公開促進のためのGBIF日本ポータルサイトの「GBIF 公開支援 」のページ(http://www.gbif.nig.ac.jp/gbif_regist.html)から公開する。(後編へ続く)

次ページへ続く

BioResource Now !I s s u e N u m b e r 7 A p r i l 2 0 1 1

BioResource Now ! Vol.7 No.4

研究とバイオリソース〈NO.10〉

堀江 健生1・笹倉 靖徳1, 2

筑波大学 下田臨海実験センター1准教授2

Kaede蛍光タンパク質を利用したカタユウレイボヤ (           )の神経系の研究

Kaede蛍光タンパク質を利用したカタユウレイボヤ (           )の神経系の研究

Ciona intestinalisCiona intestinalis

画像の一括操作をしてみようじょうほう通信No.56 P2

  Kaede はサンゴから単離された蛍光タンパク質6) で、紫外光によって色が緑から赤に変換する特性(光変換活性)を有しています。オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質も細胞を光らせることができますが、Kaede 蛍光タンパク質の場合、光交換活性を利用して細胞の位置や時期をより細かく指定してマーキングし、細胞のその後の変化を追跡することができるのです。  この Kaede を神経系全体や特定のニューロン、特にコリン作動性ニューロン、GABA / グリシン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロンで発現させたカタユウレイボヤ系統(写真 2)が作製され、ナショナルバイオリソースに寄託されています。ホヤの幼生は 100 個程度のニューロンから構成される単純な神経系を有していますので、これらの Kaede 系統は、全神経ネットワークを徹底的に研究する上で強力なマーカーとして期待されています。

さらに、 を用いてゲノム中の転写制御領域であるエンハンサー活性を検出するエンハンサートラップ法*8 や4)、   の挿入により遺伝子を破壊する挿入突然変異体の作製にも成功しています5)。   を用いて作製されたトランスジェニック系統の多くは、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)に寄託されており、提供体制が整えられています。

P1 - 2

研究とバイオリソースNo.10

堀江 健生・笹倉 靖徳 (筑波大学・下田臨海実験センター )

モデル生物としてのカタユウレイボヤ

Kaede を発現するカタユウレイボヤ系統

カタユウレイボヤ・トランスジェニック系統の作製

www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

Kaede蛍光タンパク質を利用したカタユウレイボヤ(       ) の神経系の研究Ciona intestinalis

  カタユウレイボヤのもう一つの特徴は、世代時間が2-3ヶ月と比較的短いことです。この短さに着目し、我々の研究グループではこのホヤの遺伝学的技術基盤を整備することを進めてきました。まず、室内閉鎖飼育系を構築しました。これにより、カタユウレイボヤを研究室内で飼育し子孫を得ることや、遺伝子組換え体を封じ込めて飼育すること、つまり遺伝学的な実験を行うことが可能になりました。続いてトランスジェニック系統*4の作製を進めることにしました。我々は、Tc1/ スーパーファミリーのトランスポゾン*5の1つ    がこのホヤで転移活性を有していることを明らかにし2)、   をカタユウレイボヤゲノムへと挿入させたトランスジェニック系統を作製することに成功しました ( 図 1)。

トランスポゾンベクターと転移酵素*7 mRNA を初期発生の時期に導入した個体を飼育し、その子孫を得ますと、およそ 30%程度の個体が  挿入を子孫に伝えます。つまり、 がホヤゲノムに挿入され、それが遺伝することを意味しています。最近では転移酵素を生殖細胞で発現させる系統が作製され、この系統と の挿入を持つ系統を掛け合わせることにより、生殖細胞のゲノム中で が転移酵素の働きで別の領域へと転移し、新しい挿入を持つ系統を作製できる系も構築されました3)。

Minos

MinosMinos

  カタユウレイボヤ(写真1)を含むホヤのグループは脊索動物門に属する動物で、その幼生は典型的なオタマジャクシ型の体制を取り(写真1A)、脊索や背側中枢神経系といった脊椎動物と共通のボディプラン*1を備えています。多くのホヤの発生は単純で、例えば初期胚や幼生は数えられる程度の細胞から構成されており、細胞系譜*2 が明らかとされています。さらにホヤは、卵のそれぞれの領域が将来の体のどの部分になるかが発生初期に決められている「モザイク卵」であるため、発生の研究においても注目されている動物です。

  カタユウレイボヤは、ホヤの中でも遺伝子機能解明に適した研究材料です。ゲノム配列は 2002 年に決定され1)、ゲノムサイズは半数体辺り約 160Mbp で、遺伝子をおよそ 15,852 個含んでいると推定されました。この数値から、カタユウレイボヤが非常にコンパクトなゲノムを有していることが分かります。また、カタユウレイボヤにおいては卵への顕微注入による外来 DNAや RNA の導入による遺伝子機能解析法が盛んに進められています。特に遺伝子の機能阻害法としてはモルフォリノオリゴ*3 の顕微注入による翻訳阻害が利用可能です。さらに、外来 DNA を何百もの卵や初期胚にエレクトロポレーション法(電気穿孔法)により一度に導入ことも可能です。このように、遺伝子の配列情報を入手でき、遺伝子機能解析の各種実験技術が確立しているという特徴から、カタユウレイボヤは脊索動物のモデル生物とも言われています。

(A) カタユウレイボヤの幼生。幼生の時期はオタマジャクシ型の体制を取り活発に遊泳する。(B) 変態直後のカタユウレイボヤ。変態後は尾部を失い固着生活を送る。(C) カタユウレイボヤ成体B C

A

B写真 2:Kaede を幼生の神経系で発現させるトランスジェニック系統(A) 神経系全体でKaede を発現させる系統  の幼生 (B) コリン作動性ニューロンで特異的に    Kaede を発現させる系統の幼生 

写真1:ホヤの一種 カタユウレイボヤ

*1 生物の体をつくる設計図*2 受精卵から成体ができるまでの各細胞の分化の道筋*3 モルフォリノオリゴヌクレオチド。人工的な核酸類似物質。遺伝子の研究では主に    mRNA の翻訳開始点付近に相補的な塩基配列を持つモルフォリノオリゴが作製され、そ  のオリゴを細胞に注入するとmRNAに結合して翻訳を阻害することができる。*4 その生物が本来は有しない、外来性のDNAをもつ系統

*5 生物のゲノム DNA 中を転移する性質を持つ DNA のこと。末端に繰り返し配列を持つ  などの特徴がある*6 特定の生命現象を簡便に検出するために用いられる遺伝子の総称*7 トランスポゾンの転移に必須の働きをする酵素*8 レポーター遺伝子がエンハンサー活性のあるゲノム DNA の近傍に挿入された時、    レポーター遺伝子の発現がそのエンハンサーにより制御されて変化することを利用して、   ゲノム中のエンハンサーを検出する方法

Minos

Minos

Minosmariner

Minos

Minos

図 1: トランスポゾンによるカタユウレイボヤの形質転換

レポーター遺伝子 *6を組み込んだ    ベクターを転移酵素mRNA と共にホヤ卵に導入する。導入された個体の一部は    挿入を次世代に伝える。

Minos

Minos

Minos

Minos

カタユウレイボヤ卵に導入

飼育

ファウンダー個体野生型個体

掛け合わせて次世代個体を得る

蛍光タンパク質を発現させる個体を選別し系統を樹立する。

Promoter

Minos

Kaede

ter 転移酵素 mRNA

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

Minos

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 Apr i l 2011

2

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

画像を処理するツールには、MS ペイント、フォトショップなど様々なものがあります。例えばサイズやフォーマットの変更、文字の記載を行う場合、少量の画像であれば問題ないのですが、大量の画像を処理する場合には大変手間が掛かります。今回はその様な場面で有用な「ImageMagick」をご紹介します。

「ImageMagick」(http://www.imagemagick.org/) は、豊富な機能 ( サイズ変更・フォーマット変換・文字描画・合成など )を持った画像処理ツールです。コマンドラインからの使用を基本としていますが、大量画像の効率的な処理に適しています。

じょうほう通信 [第 56 回 ] 10分

2

1

上記URLにアクセスしダウンロードを行います。Linux 版、Windows 版、MacOS 版がありますが、今回は Windows バイナリパッケージ版を利用しています ( 図 1)。ダウンロードした exe ファイルを実行するとインストールが始まります。インストーラの指示に従って進めてください。

インストールが完了しましたら、コマンドプロンプトを起動します。(スタートメニュー → アクセサリ → コマンドプロンプト)

「処理する画像のディレクトリ」に移動し、コマンドを実行します。コマンドには convert( 単一画像変換 )、mogrify( 複数画像変換 )、combine( 合成 ) などがあり、オプションには resize( サイズ変更 )、annotate( 文字描画 )、format( フォーマット変更 ) など豊富なコマンドが用意されています。※参考ページ:http://www.imagemagick.org/Usage

画像の一括操作をしてみよう

インストールしてみよう

コマンドで処理してみよう 図 1図:コマンドの実行処理前後の画像

mogrify△-resize△320x240△-pointsize△18△-annotate△+50+50△"National△BioResource△Project"△-format△png△*.jpg

※ページの都合で複数行となっていますが、1 行のコマンドです。 △は半角空白を意味します。

National BioResource Project

National BioResource Project

National BioResource Project

1024px

768px

240px

320px

処理前 処理後

サイズ変更文字を描く場合のフォントサイズ

書き込む文字とその座標

出力する画像のフォーマット指定

処理する画像名(今回はワイルドカード (*) で指定)

Binary Release で使用している環境に合わせて選択

今回は、『全jpeg画像(*.jpg)に対し、サイズを、高さ320px幅 240pxに変更、“ National BioResource Project ” という文字の書き込み ( 書き込み座標50px, 50px、フォントサイズ 18px)、png 画像として出力』という処理を行ってみます。

微細な生命現象を位置特異的、時間特異的に追跡することができる出来立てホヤホヤのホヤリソースを紹介していただきました。昨年 12 月のメダカに続く日本の研究グループの快挙です。NBRP を通して世界中の研究者がこれらのリソースを利用できるということは、誇らしいことですね。(Y.Y.)

さらに、上衣細胞の一部は変態中にニューロンに分化し成体ニューロンを補っていること、つまり、カタユウレイボヤの変態過程では、幼生のグリア細胞が神経幹細胞的に働き、成体ニューロンのソースとなっているということが分かりました7)。このようにKaede 系統は細胞のトレース実験に強力なツールとなります。Kaede に限らず、蛍光タンパク質で組織を特異的にラベルしたトランスジェニック系統も、発生メカニズムの解明の強力なツールになります。世界でもこのようなホヤ系統が整備されているのは、日本のNBRPリソースだけになります。その日本独自のリソースを利用して、ホヤの発生メカニズムを独創的な視点から解明したいと考えています。■

BioResource Now ! Vol.7 No.4

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

  このことに対して、上記の Kaede 系統を利用してアプローチしました。具体的には、Kaede の光変換を利用して幼生の中枢神経系の細胞を Kaede の赤色蛍光でラベルし(写真3A)、その赤色蛍光を発する細胞が、変態後に残っているのか消失するのかを解析しました。その結果、幼生の中枢神経系由来の細胞の多くは変態後も残っており、成体の中枢神経系を構築していることが分かりました(写真3B,C)。続いて中枢神経系のどの細胞タイプが残るのかを追跡したところ、幼生のニューロンの大多数は消失すること、変態後にメインに残っているのは、幼生のグリア細胞である上衣細胞であることが分かりました(上衣細胞はホヤの中枢神経系から報告されている唯一のグリア細胞です)。

1) Dehal et al., 2002. Science 298:2157-2167.2) Sasakura et al., 2003. PNAS 100:7726-7730.3) Sasakura et al., 2008. Dev. Dyn. 237:39-50.4) Awazu et al., 2004. Dev. Biol. 275:459-472.5) Sasakura et al., 2005. PNAS 102:15134-15139.6) Ando et al., 2002. PNAS 99:12651-12656.7) Horie et al., 2011. Nature 469:525-528.

Kaede の光変換を利用した神経細胞の変態過程での追跡

写真 3:Kaede を用いた幼生神経系の細胞の変態過程でのトレース実験(A) 幼生の神経系の細胞をKaede の光変換を利用して赤色蛍光でラベ   ルした状態。(B) (A) の幼生を変態後まで飼育し、赤色蛍光でラベルされた神経系の  細胞が変態後の中枢神経系に残っていることを示した写真。(C) (B) の四角い枠の部分を拡大したもの

  前述の Kaede 系統を利用した研究を一つ紹介します。ホヤは、幼生の時期にはオタマジャクシ型の体制をとり活発に泳ぎますが、変態後は固着生活を送るようになります(写真1参照)。このように、生活スタイルまでが大きく変化するホヤの変態過程では、中枢神経系が大規模な改変を受けると考えられてきました。これまでは、ホヤ幼生の中枢神経系は一度完全に失われ、成体の神経系は変態過程で新たに形成されるというのが通説になっていました。しかしながら、ホヤ幼生の神経系の細胞を、変態過程で正確にトレースした実験はこれまでなく、幼生の神経系の細胞が消失するのか残るのかについては、議論になっていました。

最後に一言: magick, mogrify はスペルミスではありません・・。 (生物遺伝資源情報総合センター 系統情報研究室 服部 学)

文 献

上図のように、コマンド 1 つで画像の一括処理が行うことができます。さらに ImageMagick には画像操作画面も付属しています。デスクトップに imdisplay アイコン ( 又はスタートメニュー内の “ImageMagick Display”)から起動して下さい。但し、コマンド版ほど多機能ではありません。また、ImageMagickは様々な言語から呼び出すことができます。

(Perl の場合、Image : : Magick の実装で利用可能となります。)

皆さんも多くの画像を 1 回のスクリプトで処理したい場合、使ってみてはいかがでしょうか?

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A

B C

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BioResource Now !I s sue Numbe r 7 F eb rua r y 2 011

BioResource Now ! Vol.7 No.2

ホット情報〈NO.35〉

生物多様性条約と遺伝資源をめぐる状況(3)全3回連載P2

  ムギ類は中東において、約1万年前に祖先型の野生植物から起源したとされている。私たちは、起源地から日本までのルートに、自生あるいは栽培されているムギ類を野外調査している。岡山大学を中心とするムギ類の調査研究グループは、カスピ海西側のコーカサス地方から調査を始め、ウズベキスタンを経て、この度はヒマラヤ山地の西端の辺境タジキスタンを訪れた。このような中央アジア地域での調査は、シルクロードに沿ったムギ類の伝播を意識する必要がある。今回のタジキスタン山岳部の調査においては、これまで訪問した中央アジア中部以西の地域には、認められなかった、東アジアのムギ類の特徴を示す個体を、初めて確認したことが強く印象に残った。

  タジキスタンはヒマラヤ山脈の西端に位置し、南にアフガニスタン、西にウズベキスタン、北にキルギスタン、東は中国に接する山国である。タジキスタンは民族および文化の面から、アフガニスタンおよびイランの影響を強く受けているが、ソビエト時代は中央アジア最南端の領土であった。また、1990 年代の内戦の影響で、中央アジアでも最も貧しい国とされている。国土の 50%以上は 3,000m を超える山岳地帯で、国土の南半分はパミール高原と呼ばれ、民族的、文化的にも他の地域とは異なっている。比較的大規模な農耕が可能な地域は、北部のフェルガナ盆地周辺の低地と、南部のアムダリヤ川支流周辺である。

P1 - 2

ホット情報No.35

佐藤和広 (岡山大学 資源植物科学研究所 大麦・野生植物資源研究センター 教授 )

  この地域は、中近東を起源とするムギ類の野生種が分布する地域としては東端に位置しており、さらに、中国やヒマラヤ山地周辺の栽培ムギ類の多様性の分布域の西端にあたることからも、ムギ類の多様性を研究する者にとっては憧れの地域である。

  日本から2名、ロシアバビロフ研究所から2名、国内の研究者2名、および運転手からなる調査隊は、日本の3 分の1強の国土の南部、パミール高原を中心に、車で 8月 10日~ 8月 23日の14日間、収集活動を行った。収集地点は、標高 818m から 3,417m の57 カ所であった。約 118 サンプルのオオムギおよびコムギの栽培種および近縁植物を収集した。

写真:川を隔てた国境から望むアフガニスタンの農地

  野生種の分布は少なく、おもに在来種の収集を試みたが、アガ・ハーンとよばれるイスラム教のリーダーが率いるイスマーイール派が、農産種子を配布する事業を行っており、穀物種子、特にコムギの種子の移動はかなり頻繁に行われている。比較的条件の良いコムギの圃場では、この事業による改良品種が多く栽培されていた。一方で、条件の悪い山岳地域では、在来的なコムギ品種が栽培されていた。これらのコムギの中には、穂や芒の形態が中国に分布するコムギと類似しており、葉舌のない珍しい変異が在来種として栽培されていた。一方、オオムギはほとんどが六条であり、中央アジア地域の収集において初めて裸性が認められ、ヒマラヤ周辺の特徴を強く示した。裸性には、ロシアの研究者が緑色と表現する着色した粒と通常の粒があるものの、チベットおよびネパール地域に特徴的な芒の形態、穂の形態および着色の多様な変異は認められなかった。この原因を現地の農業技術者に尋ねたところ、1950 年代にソビエトが、在来種から優良な系統を選抜して配付した2系統が、これらの2種類のオオムギの由来である可能性が高いとみられた。従って、残念ながら栽培オオムギの多様性は、既に大部分が失われた可能性が高い。

国立遺伝学研究所 知的財産室室長 鈴木 睦昭

日本のムギ類のルーツを求めて Ⅱ ~タジキスタン山岳部での麦類野外調査 ~日本のムギ類のルーツを求めて Ⅱ ~タジキスタン山岳部での麦類野外調査 ~ 佐藤和広

岡山大学 資源植物科学研究所 大麦・野生植物資源研究センター 教授

写真:パミール地域の典型的な農家とオオムギ圃場

アフガニスタン

キルギスタン

タジキスタンタジキスタン

中国

アフガニスタン

キルギスタン

中国

イランイラン

フェルガナ盆地フェルガナ盆地

カス ピ  海

カス ピ  海

アムダリヤ川アムダリヤ川

コーカサス地方

コーカサス地方

ウズベキスタン

日本のムギ類のルーツを求めて Ⅱ ~タジキスタン山岳部での麦類野外調査 ~

写真:パミール地域のオオムギ

写真:コムギの穂の形態

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 February 2011

2

(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報ナショナルバイオリソースのコムギとオオムギのグループが共同で採取地マップを作り、以下のアドレスから公開しています。http://www.shigen.nig.ac.jp/wheat/collectionMap/map.html佐藤先生達は野外調査で収集した種を保存するだけではなく、特性を詳しく調べて情報とともに公開し、世界中の研究者が利用できるようにしています。ITPGRFA にはコムギが含まれていますので、今後議論の対象になるのでしょうか。いずれにしても皆が知恵を出し合って、遺伝資源の円滑な流通と活用を促進する方向に進んで欲しいと思います。(Y.Y.)

画像の一括操作をしてみよう

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

  アフガニスタン南部に向かう河川沿いの道路は、アフガニスタンと国境を接しており、見上げるような岩壁を持つ山々に囲まれていた。治安で不安を感じることはほとんどなく、地元の人々は皆親切にもてなしてくれた。ただし、農業技術のレベルはかなり低く、現地における農業教育の必要性を強く感じた。

生物多様性条約と遺伝資源をめぐる状況全3回連載

各国の動き

食料農業植物遺伝資源国際条約について今回は、諸外国の生物多様性条約への対応の動きを紹介するとともに、生物多様性条約と関係の深い、食料農業植物遺伝資源国際条約 (ITPGRFA) について述べる。

国立遺伝学研究所 知的財産室室長 鈴木 睦昭

「最終回 名古屋議定書の周辺状況」

BioResource Now ! Vol.7 No.2

(左)農家でもらったオオムギおよび(右)コムギの種子パミールの女性家族

URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

  現在、遺伝資源のアクセスと利益配分に関係した国内法は、インド、フィリピンなど 加盟国の1割程度しか制定されていないが、各国において生物多様性条約への対応が進められている。  中国においては、すでに、特許出願時の遺伝資源の出所の記載表示を義務とし、中国内での遺伝資源の特許出願についてモニターができるようになっている。また、保護を目的とし、国内の遺伝資源と伝統的知識を一括管理するデーターベースの作成を計画している。さらに遺伝資源の関連法案を起草中であり、 外国人の遺伝資源へのアクセスについては、中央政府に届け出を行う義務があり、利益配分は申請者と権限ある当局間での契約を行うことが決められている。法案作成のグループは、日本でも使用されている漢方薬なども対象とした、利益の一部を集める専用ファンドの作成を希望している。これに対して日本の漢方関係者は、漢方薬は日本が育てたものであると主張している。  スイスでは、スイス科学アカデミーが啓蒙活動や非商用利用の手引きの作成や、契約書ひな形の作成を行っている。そのなかで、アカデミアの研究では、金銭的な利益配分は困難であり、共同研究、研究成果の情報の共有、教育などの非金銭的な利益とすべきであると主張している。  一方、米国は条約非加盟国であるが、公的機関・大学、民間団体において、対応には熱心である。NIH*1では対応ガイドラインを用意している。また、iBOL*2 は、生物種の同定方法に DNA 鑑定の一つ「barcode of Life」を生物多様性条約の保全に応用するべく活動を行っている。

  生物多様性条約とは別に、遺伝資源に関連する条約として、FAO(国際連合食糧農業機関)により、食料農業植物遺伝資源国際条約(以下、ITPGRFA 条約) が発効されている。日本は、本条約にはこれから批准する方向で動いている。 ITPGRFA 条約ではイネ、小麦、リンゴ、ジャガイモなどを含む 35 作物、29 属牧草類に関して特定の農作物が対象植物であり、中国やメキシコの反対により、大豆やトマトは含まれていない。移転の際は、標準試料移転同意書 SMTA を用いることが義務付けられ、その中で、成果物を商業使用するときは、売上から 30% 引いた額の 1.1% を FAO に支払うと規定されている。このシステムは、具体的な多国間の利益配分のメカニズムとしても注目されている。これには 、食料、農業や育種のための研究の目的にのみ利用し、化学的利用、医薬的利用、そのほかの非食料および非飼料に関する産業上の利用は含まれない。今回の名古屋議定書では、ITPGRFA 条約などで取り扱われるものは、除外対象と取り決められた。今後、該当する遺伝資源について、生物多様性条約との使い分けについての議論が必要となろう。  以上、3回にわたり、生物多様性条約と遺伝資源をめぐる状況について、説明した。遺伝資源の円滑な流通と活用の為に、今後も生物多様性条約関連に関しては注目していきたい。

● スイス科学アカデミー:http://www.biodiversity.ch/index.en.php● ITPGRPFA:http://www.planttreaty.org/● 国際 DNA バーコード:http://www.ibol.org

関連リンク

写真:スイス科学アカデミー 生物多様性条約 利益配分に関する契約のモデル条項が記載されているパンフレット

*1 :National Institutes of Health *2 :International Barcode of Life

お知らせコムギの仲間(Triticum属、Aegilops 属)の外部形態による分類と、染色体観察の講習会 日程 :2011 年 5 月 31 日(火)、6 月 1 日(水) 会場 :京都大学北部構内 植物遺伝学研究室圃場 他 参加費用 :無料(交通費、宿泊費などは各自負担)

平成 23年度「研究開発施設共用等促進費補助金(ナショナルバイオリソースプロジェクト)」の実施機関公募について 公募期間:2011 年 2 月 25 日(火) - 3 月 22 日(火)18:00 今回公募するプログラム : ゲノム情報等整備プログラム

詳細は http://www.nbrp.jp/ からご覧になれます

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BioResource Now !I s s u e N um b e r 7 J a n u a r y 2 0 1 1

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BioResource Now ! Vol.7 No.1

  開会式においては、オーガナイザー芹川の開会挨拶、湊 長博 京都大学大学院医学研究科長の歓迎の挨拶に引き続き、文部科学省研究振興局 ライフサイエンス課 ゲノム研究企画調整官 田中一成様より来賓の挨拶を頂いた。学術研究発表は、招待講演、一般口頭発表、および一般ポスター発表に区分して行われた。内容は、

・ ラット研究の歴史・ ヒト疾患モデルとしての重要性・ トランスレーショナル研究への利用・ がん、高血圧症、糖尿病、生活習慣病、  腎炎、てんかん、本態性振戦、多動症、 白内障など各種ヒト疾患モデルラット の病態解明研究・ ラット系統の全ゲノム DNA シークエ ンス情報・ ミトコンドリアゲノム解析と疾患・ 疾患の遺伝子ネットワーク解析・ ラット ES 細胞と iPS 細胞の開発応用  研究・ 新規の遺伝子改変ラットの作製システ ムとそれを用いた疾患解析・ ラットリソースセンターとデータベー  スに関する情報などいずれもラット研究の新鮮な話題であり、ラット研究を推進している日欧米三極の先導的研究者を含めた活発な意見交換がなされた。参加者は、国外から 66名(米国 29名、ドイツ 14名、英国 11名、チェコ共和国 7名、オランダ 2名、中国1 名、ガーナ共和国 1 名、台湾 1 名)、国内から114名で、合計180名であった。37 パーセントが国外からの参加者であったこと、国際ラットコミュニティーの代表者に加えて国内外の若手研究者が多く含まれていたことから、この国際ラット会議を起点として、新たな国際共同研究の開始や研究者間の交流が大いに活性化すると期待された。

Scientific programNov 30 (Tue)- Welcome lectures (History/Model/Translational research)Dec 1 (Wed)- Disease model-1 (using SHR, FH, LH, BN strains)- Disease model-2 (Common disease, Mitochondrial genome)- Genome- Transcriptome/Network- Poster presentations: History, Reproduction, ES/iPS, ZFN, Transcriptome, Disease models (Cancer, Hypertension, Diabetes, ADHD, Behavior, Tremor, Epilepsy, Cataract, Eosinophilia, …)Dec 2 (Thu)- Disease model-3 (Hypertension, Nephritis, LDLR, Netrin4)- Stem cells- Manipulating the genome (using ZFN)- Behavior/NeuroscienceDec 3 (Fri)- Cancer- Resource/Database

写真:会場の様子

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

ホット情報No.34

全3回連載 生物多様性条約と遺伝資源をめぐる状況(2)国立遺伝学研究所 知的財産室室長 鈴木 睦昭

ホット情報〈NO.34〉

第18回際ラット遺伝システムワークショップの報告

  第 18 回国際ラット遺伝システムワークショップが 2010 年 11 月 30 から4日間、京都大学で開催された。このワークショップは、1977 年の初会合より原則として偶数年に開催されてきた歴史あるラットコミュニティーの国際会議である。1994 年の札幌、2002 年の京都に続く、日本では 3 度目、京都では 2度目の開催であった。近交系ラットが移植研究に利用されていたことから、当初は組織適合遺伝子に力点が置かれており国際ラットアロアンチゲンワークショップ(Internat ional workshop on rat alloantigenic system in the rat)名称であった。遺伝的に制御したラット系統を使用することの重要性は、移植研究に限定されることではないことから、2000 年から現在の名称に変更された。NBRP-Rat の本ワークショップとの繋がりは深く、第 14 回ワークショップ(2002 年、京都)は、第 1期 NBRP-Ratのスタートに呼応させて開催した。

3)その結果、平常時および疾患時における生理的状態を遺伝子のネットワークとして知ることができるようになり、ヒトとラットの生物機能をより深く比較解析できるようになったこと、および、4)日本の NBRP-Rat、米国のRRRC (Rat Resource and Research Center) 及び RGD (Rat Genome Database)、そしてヨ ー ロ ッ パ の EURATRANS (European large-scale functional genomics in the rat for translational research) といった研究基盤が整備、拡充されたことによる。

URL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

芹川 忠夫 (京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設長 教授 )

第18回国際ラット遺伝システムワークショップの報告

芹川 忠夫京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設長 教授

  今回の第 18 回ワークショップは、大変魅力的なものであった。その理由は、堰を切ったごとくの最近のラット研究の進展に基づいている。すなわち、1)遺伝子ノックアウトラットあるいは遺伝子変異ラットが人工的に創れるようになったこと、2)次世代シークエンスが利用できるようになり、遺伝育種学的手法で開発された疾患モデルラット系統の全ゲノムシークエンスあるいは発現プロファイルが得られるようになったこと、

Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 7 January 2011

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(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

バイオリソースとしては扱い易いマウスの陰に隠れがちなラットでしたが、ノックアウトラットが作製できるようになって今新たな注目を集めているようです(Science, vol. 330, 1607,2010 参照 )。今や芹川先生が率いるラットリソースセンターは規模、品質ともに世界 No1. を誇り、世界中の研究者から期待されています。COP10 の名古屋議定書にもありますが、バイオリソースへのアクセスと利用にあたって今後リソースセンターの役割が益々重要になりそうです。今年もホットな情報をお届けします。(Y.Y.)

画像の一括操作をしてみよう生物多様性条約と遺伝資源をめぐる状況全3回連載

● COP10 支援実行委員会 公式ウェブサイトhttp://kankyojoho.pref.aichi.jp/cop10/index.html 

議定書の要点

  大昔は動植物や微生物などの遺伝資源は「人類共通の資源」であったが、1992 年に作られた生物多様条約で、遺伝資源は「各国の資源」と規定され、利益配分の必要性が記載された。その後、国際的な話し合いが長年に渡って行われ、途中 2002 年ボンガイドラインができたものの、長らく具体的な国際的かつ法的な取り決めがない状態であった。  今回、はじめての国際的な法的取り決めである名古屋議定書が、採択されたのである。これにより、提供国における国内法や規制の設置義務が明確化された。また、利益配分については金銭的、非金銭的利益を含め具体的に相互合意(MAT)上で規定することとされた。さらに、利用国側での事前同意、相互合意事項や遺伝資源の利用についてモニタリングするチェックポイントの設置の義務が規定された。  そのほか、伝統的知識に関する事項、保全に寄与する研究促進のための非商用利用、病原体などの非常事態への考慮、国際協定との関連、国際多国間利益配分メカニズムの検討などが決定された。  これらの法的規定を遵守することによって遺伝資源へのアクセスや利用が促進されると期待される。

遺伝資源の提供を受ける時の、具体的な方法について以下に示す。

1

  提供国における国内法の制定、窓口の設置や証明書の発行、利用国側のチェックポイントの設置などが、今回の議定書で追加された点である。提供する場合は逆となるが、具体的な方法は今後制定が検討される国内法で規定されることになる(図 1 参照)。  従来、国内法令、行政措置を決めていない提供国が多く、そうした国では申請方法が分かりにくく、アクセスに日数がかかるなどの課題があったが、今回の議定書で遺伝資源へのアクセス体制の透明化が図られたといえよう。

遺伝資源の提供を受けるときの具体的方法

  バイオリソース関係者として、収集する場合と提供する側の両方の立場を考えなければいけない。まず、収集にあたり、国内法などが制定されている国での遺伝資源の採取時には、相手先の研究者や販売者の許可だけでなく、相手国の政府の許可が必要となるので注意しなければいけない。たとえば、現地で胃腸薬として売られている薬草を市場で購入し、それを日本に持って帰り、遺伝資源として配布する。これは立派な違反となってしまう。必ず、提供国の政府の許可 (PIC) と使用目的における提供者との相互合意(MAT) が必要である。  また、提供する場合に、今後整備される日本の国内法に基づくシステムに従わなければいけない。どのようなシステムになるかは現時点では未定だが、予想として、国内に担当部署ができ、そこでの登録・許可が必要となるだろう、円滑な提供が可能な方法の制定を望みたい。さらにバイオリソース配布について、相互合意事項の決定の為に、非金銭的な利益を中心とした、バイオリソース配布機関としての適切な利益は何かを、明確にする必要がある。例えば、公表物などでのバイオリソース使用の確実な記載がそれにあたるであろうか?それとも、それ以上の合意事項が必要となるかは、さらなる議論を待ちたい。  現在、各国が国内法の整備を行っている。関係のある国の国内法の状況は注意したい。また、今回提案された、多国間利益配分システムは過去の遺伝資源が対象となる可能性もあるため今後の動向を注意しなければいけない。  今後、本課題の対応について大学向けの手引きや MAT のひな形などが必要となろう。また、議定書の発効はまだだが、生物多様性条約及びボンガイドラインはすでに存在し、遵守する必要があることは忘れてはいけない。  次回は、各国の状況や条約の周辺状況について述べる。

バイオリソース関係者への影響

図 1:遺伝資源の提供を受けるときの具体的方法(今後の予想)

国立遺伝学研究所 知的財産室室長 鈴木 睦昭「第 2回 名古屋議定書の内容とその影響」

BioResource Now ! Vol.7 No.1

  この国際会議は、主催:第 18 回国際ラット遺伝子システムワークショップ組織委員会、共催:ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」、京都大学グローバル COE プログラム「生命原理の解明を基とする医学研究教育拠点」、後援:(独)日本学術振興会、(財)成人血管病研究振興財団、(財)京都大学教育

振興財団、日本製薬団体連合会、関西実験動物研究会、多くの企業、および個人より多大なご支援を受けたことを記し、御礼を申し上げる。■

第 18 回国際ラット遺伝システム ワークショップ オフィシャルサイトhttp://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/workshop2010/ Progress in the Rat Community

and Researches

1. 提供者および提供国の政府と事前同意書 (PIC)(図1-①) を  交わす。2. 現地の共同研究者と採取をした場合、相互合意 (MAT)(図 1-②)  にて共同研究や教育など非金銭的な利益配分や、ロイヤリテ  ィーなどの金銭的な利益配分の条件などを合意した後、政府  の証明書とともに遺伝資源の移転が可能となる。(図1-③, ④)3. その後、使用に当たっては日本国内に設置されるチェックポ  イントでのモニターを受ける。

提供国

チェックポイント政府

① 事前同意 (PIC)① 事前同意 (PIC)

② 相互合意 (MAT)② 相互合意 (MAT)

④ 利益配分④ 利益配分

③ 遺伝資源  の提供③ 遺伝資源  の提供

国内法の整備の充実

利用国

※赤色の部分が今回追加された分

証明書

Contact Address〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111 国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL 055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]

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