Ir Hamaguchi

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Page 1: Ir Hamaguchi

TSUBASAHAMAGUCHI

[ REPORTAGE ]08180122008

PRINTERS FLOWER&

TABLEWEARES FLOWER

Page 2: Ir Hamaguchi

 

活字とは、

 

文字や模様など

 

様々な図形が彫られたハン

 

コのようなものです。主に木製や

 

金属性のものがあり、この活字を組み合わせて

 

作った版(ハン)で印刷することを一般的に活版印刷と

 

いいます。活字には普通アルファベットなどんお字形(文字)が刻まれ

 

ているのですが、花形装飾活字には字形ではなく花などの植物をモチーフとした図像などが

 

鋳造されています。この活字を並べ合わせることで、無数の装飾やパターン模様を作り出すことができるわけです。

PRINTER’S FLOWER* 活字とは?

花形装飾とは?*

 

現存する最初期の花形装飾活字

は、ヴェネツィアから西に100キロ

ほど離れたヴェローナで枢機卿ドメ

ニコ•

カプラニカが著した『往生術』

(1478)に残されている。また、

単独で用いるのではなく、並べること

でパターン構成が可能なユニット式の

装飾活字は1550年頃、ヴェネツィ

アの印刷者ガブリエル•

ジョリートに

よって用いられた。

現在確認できる二つの最古の花形装飾活字

THE 15th CENTURY’S FLOWER

誰が、いつ、どの花形装飾を作ったのか

その全容は未だに解明されていない

*最初の花形装飾活字*

花形装

飾活字と

は、西洋の活

版印刷で伝統的に使

われてきた花や模様の形を

した活字の事。

タイグラファ達にとって装飾活字は自分の

趣味と腕の見せ所であったことは間違いない。

Page 3: Ir Hamaguchi

 16世紀初期には各地ですでに使用されて

いた最も古い装飾活字のひとつが、このヴ

ァイン・リーフです。蔓の草を形取ったこ

のデザインそのものは1世紀頃までさかの

ぼりますが、印刷用の活字としては1512

年にヴェネツィアの印刷者ラッドルが制作

したタイトルページに現れた。

 16世紀中期のヴェネツィア。印刷者ガ

ブリエル・ジョリートは、東西の文化交

流の中でイスラム美術であるアラベスク

模様をモチーフにした花形装飾活字を彫

りました。花形活字を複数並べてパター

ンとして使うという発想は、その後の花

形装飾の展開に大きな影響を与えた。同

時にアラベスクをモチーフとした装飾活

が熱心に鋳造されるようになった。

Venetian Arabesque

Vine Flower

The16th century’s FLOWER

FLOWERS OF FOURNIER

 16世紀の中頃にイタリアに流行したアラ

ベスク模様。その「パターン集」が次から次へ

と出され幅広い職人たちの仕事に役立たれたよ

うです。

もちろん花形装飾活字も例外ではなく、アラベ

スクなどの既存の装飾的な模様をありのまま複

写して装飾活字を鋳造してきました。

 しかし 18世紀に入って、ピエール・シモン・

フルニエは伝統的ともいうべき花形装飾の系統

 しかし、フルニエでさえ、関心は花形装飾のデザインの方法と、制作方法であり、花形装飾活字の歴史的言及はほぼないといっていいだろう。また自信の『タイポグラフィーの手引き』でも作例として花形装飾をあげているがその起源については一言も述べていない。

やはり謎に包まれたままの花形装飾の歴史

*フルニエの代表的な花形装飾活字 とは異なる独自の華麗な装飾活字を作りました。

フルニエは模様そのものではなく、その模様の部

分的な要素だけを抜き取って活字を鋳造した。そ

れによって様々なバリエーションの花形装飾を生

み出す事に成功したのです。

 1742年のフルニエの活字見本帳は、たちま

ちコピーされヨーロッパ全土に広まりました。

ここにきて花形装飾活字は、書物を読むという体験をより豊かにするという重要な役割を果たした。

フルニエの花形装飾

Page 4: Ir Hamaguchi

1 9 世 紀 。 産

業 革 命 以 降 の イ ギ リ ス を

中 心 と し た 商 業 的 繁 栄 の 中 で 、

よ り 流 行 色 の 強 い 派 手 な 装 飾 が 好

ま れ 、 古 典 的 な デ ザ イ ン は 次 第 に 古 く さ い 物 と さ

れ て い く 。 ま た 、 広 告 や 新 聞 な ど の 印 刷 メ デ ィ ア の 発 展

の 中 で 一 目 を 引 く デ ィ ス プ レ イ 書 体 が 開 発 さ れ る と と も に 、

そ れ に 釣 り 合 う

よ う な 大 胆 で 力

強 い 装 飾 活 字 が

次 々 と つ

く り 出 さ

れ た 。

  そ し て 、 1 9 世 紀 末 に 向 か っ

て 鋳 造 技 術 と 印 刷 技 術 が 飛 躍 的 に

向 上 し 、 よ り 精 密 で 複 雑 な デ ザ イ

ン の 装 飾 活 字 の 鋳 造 が 可 能 に な る

と 、 大 型 で 過 剰 な 装 飾 が 蔓 延 し た 。

Page 5: Ir Hamaguchi

The 21st CenturyPRINTER’S FLOWER

21世紀。もう一般的に見られなくなってしまった。花形装飾活字だが現代でも日々オリジナルの花形装飾活字

の見本帳などが出版されているらしい。そんな中、日本で

も活版印刷のシステムを受け継いだ、花形ではない装飾文

字が見られることに気がついた。

それは「顔文字」といわれ主にブラウザ上でみることがで

きるものだ。

この顔文字と花形装飾のもっとも大きな違いはなんだろう

か。それは顔文字ではそれ自体が意味を持ち、またそれが

主役であるということに対し、花形装飾は意味を持つわけ

でもなく、けっして主役になることもないところだ。

しかし、システム的にはこの顔文字のつくりかたと花形装

飾とてもよく似ているんぼではないだろうか。

The 20thCentury

FLOWERSFLOWERS

無節操な19世紀のタイポグラフィへの反動

として、あるいは産業時代の術思想の反映とし

て、1920 年代のイギリスを中心に古典書体の

再検討とリバイバルが起こった。

スタンリー•モリスンが中心人物となって16世

紀以来の花形装飾であるアラベスクが現代に再

び現れる。TSUBASAHAMAGUCHI

[ REPORTAGE ]08180122008

PRINTERS FLOWER&

TABLEWEARES FLOWER

Page 6: Ir Hamaguchi

fork-01 fork-02 fork-03 fork-04 water-01 water-02 water-03 water-04

spoon-01

ladle-01

knife-01

glass-01 glass-02 glass-03 glass-04

knife-02 knife-03 knife-04

whipper-01 turner-01 tongs-01

spoon-02 spoon-03 hashi-01 cup-01 cup-02 cup-03 cup-04

pot-01 pot-02 pot-03 pan-01

bowl-01 bowl-02 dish-01 plate-01

food-01 food-02 food-03 food-04

食器形装飾活字見本

 これまでの花形装飾活字が、その歴史的文献

の少なさから全てが明確ではないにしろ、文字

通り花などの植物をモチーフとしてデザインさ

れたという起源は外れてはいないであろう。

 今回私がデザイン提案する装飾活字は、従

来「花」という言葉が冠名であった装飾活字の

フィールドを「Table Weare ( 食器 ) 」という

新たなフィールドへと開拓したものである。

 その名の通り「食器形装飾活字 ( Tableweare’

s Flower )」をここに提案する。デザインモチー

フを食器へと拡大したこの装飾活字は、食べ物

にちなんだ書物や文章、広告などに用いるこ

とを想定としている。そして、食器へのテキス

タイルデザインなどに活用するなど単純にグラ

フィックの一面としての機能も多いに期待でき

る。fork-01 fork-02 fork-03 fork-04 water-01 water-02 water-03 water-04

spoon-01

ladle-01

knife-01

glass-01 glass-02 glass-03 glass-04

knife-02 knife-03 knife-04

whipper-01 turner-01 tongs-01

spoon-02 spoon-03 hashi-01 cup-01 cup-02 cup-03 cup-04

pot-01 pot-02 pot-03 pan-01

bowl-01 bowl-02 dish-01 plate-01

food-01 food-02 food-03 food-04

Tableweare's Flower 新しい装飾活字の提案

fork-01 fork-02 fork-03 fork-04 water-01 water-02 water-03 water-04

spoon-01

ladle-01

knife-01

glass-01 glass-02 glass-03 glass-04

knife-02 knife-03 knife-04

whipper-01 turner-01 tongs-01

spoon-02 spoon-03 hashi-01 cup-01 cup-02 cup-03 cup-04

pot-01 pot-02 pot-03 pan-01

bowl-01 bowl-02 dish-01 plate-01

food-01 food-02 food-03 food-04

Page 7: Ir Hamaguchi

LADLE-01 PATTERNS

pan-01

PAN-01 PATTERN

Page 8: Ir Hamaguchi

配達物でよく見かける

「ワレモノ注意」と書か

れたシールを食器形装飾

活字を使用してデザイン

する。

装飾活字ならではの繰り

返しのパターン模様がグ

ラス同士の窮屈さと揺れ

れば崩れそうな繊細な積

み重なりが見る人に注意

を呼びかける。

NEW OPEN!FOOD CLUB [FLOWER]

2008 6/13

 泡立て器の装飾活字を用いて、新しくできる料理教室の DM を作成する。

料理にちなんだデザインが求められる場合はこのようにたくさんあるのではないだろうか。

いまこそこの食器形装飾活字が活躍する時代である。

Page 9: Ir Hamaguchi

TURNER-01 PATTERN

上記のパターン模様はフライ返しをモチーフにした 「turner-01」 から構成されたグラフィックである。        上記のパターン模様はフライ返しをモチーフにした 「tongs-01」 から構成されたグラフィックである。        

TONGS

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TSUBASAHAMAGUCHI

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