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FINANCIAL ACCOUNTING
Chapter 13
資産除去債務の会計
向 伊知郎
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§1 資産除去債務の意味
• 資産除去債務
• 有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、有形固定資産の( )に関して法令または契約で要求される法律上の( )およびそれに準ずるもの
• 資産除去債務を( )として計上
• それに対応する除去費用を( )に計上
• 電力業界で原子力発電施設の解体費用について発電実績に応じて解体引当金を計上しているような事例に限定して用いられてきた。
• 2008年 企業会計基準委員会(ASBJ) 企業会計基準第18 号「資産除去債務に関する会計基準」を公表(2010年4月1日以降適用)
• 企業が負う将来の負担を財務諸表に反映させることが投資情報として有用
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• 企業が負う将来の負担を財務諸表に反映することが投資情報として有用であるとすれば、それは法令または契約で要求される法律上の義務だけに限定されない。
• 法的債務と推定的債務を含むことになる?
• 法的債務
• 法令もしくは契約の結果または禁反言原則に基づく契約の法律上の解釈により、当事者間で決済することが要請される債務
• 禁反言原則:いったんなされた約束に基づくことが合理的に期待されるべき場合で、かつ、損害がその約束に実際に依存する場合には、たとえ無償でなされた約束であっても、不正な結果を回避するために、その約束は強制され得るという原則
• 推定的債務
• 次のような企業の行動から発生した義務
• 確立されている過去の実務慣行、公表されている政策または極めて明確な最近の文書によって、企業が外部者に対しある責務を受諾することを表明しており、かつ、
• その結果、企業はこれらの責務を遂行することについての妥当な期待を外部者の側にもたらしている。
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§2 固定資産の除去費用 に対する考え方
• 減価償却において( )に反映させる方法
• 有形固定資産の耐用年数が到来した時に、固定資産の除去費用を、その残存価額に反映させる方法
• 固定資産の除去費用を残存価額に反映させることは、残存価額をマイナス(負の値)にすることがあるため、実際には適用されていない 。
• ( )を設定する方法
• 有形固定資産の取得後、有形固定資産の除去費用が引当金概念を満たすと考えて、引当金を設定する方法
• 引当金処理は、有形固定資産の耐用年数到来時に、有形固定資産の除去に係る用役(除去サービス)の費消を、有形固定資産の使用に応じて各期間に費用配分し、それに対応する金額を負債性引当金として認識するという考え方
• しかし、固定資産の除去費用が、引当金の要件を満たすか否かの判断が困難であることから、実際には適用されていない。
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その他の処理方法
• 引当金の設定要件(企業会計原則注解・注18 )①将来の特定の費用または損失で、
②その発生が当期以前の事象に起因し、
③発生の可能性が高く、かつ
④その金額を合理的に見積もることができる
• 負債または引当金処理以外に考えられる処理方法⇒ ( )計上
• 資産除去債務に対応する除去費用を有形固定資産の稼動等にとって必要な除去サービスの享受等に関する何らかの権利に相当すると考えて資産計上する処理方法
• 将来提供される除去サービスの前払いとしての性格から長期前払費用として資産計上する処理方法
• 資産計上の会計処理には、除去費用が法律上の権利ではなく( )がないこと、また独立して( )獲得に貢献するものでもないことから問題
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§3 資産除去債務の会計処理
• 資産負債の両建処理
• 債務としての金額を合理的に見積ることができることを条件に、
• 有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって資産除去債務が発生した時点で( )に計上して、
• 同額を有形固定資産の( )に反映させる処理
• 有形固定資産の取得等に付随して不可避的に生じる除去サービスの債務を負債として計上するとともに、
• 対応する除去費用をその取得原価に含めて処理する方法
• 取得原価に含められた有形固定資産に対応する除去費用は、
( )を通じて、有形固定資産の使用に応じて各期に( )
• 資産負債の両建処理は、引当金処理を包摂した考え方
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• 負債の定義からの検討
• 資産除去債務は、有形固定資産の除去サービスに係る支払いが、法律上の( )に基づいて、将来不可避的に生じるもの
• 資産の定義からの検討
• 資産として取得原価に含める処理方法は、資産除去債務の分だけ有形固定資産への( )において将来回収すべき額が引き上げられると説明
• しかし、借方の資産項目が本当に資産としての性格を有しているか否かは、検討課題
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§4 資産除去債務の算定
• 資産除去債務
① 発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前( )を見積り、割引後の金額( )で算定
• 割引前将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定および予測に基づく自己の支出見積額による。
• 見積額は、将来発生する可能性の最も高い単一の金額または将来発生する可能性のある複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの発生確率で加重平均した金額とする。
• 将来キャッシュ・フローには、有形固定資産の除去に係る作業のために直接要する支出のほか、例えば、保管や管理に関連した処分に至るまでの支出も含める。
② 割引現在価値を計算するときの割引率は、貨幣の時間価値を反映した( )の税引前の利率
【設例1】
• 次の[資料]をもとに、 20X1 年4 月1 日の設備の取得と関連する資産
除去債務の計上について仕訳しなさい。小数点以下は四捨五入する。会計期間は1年、4月1日から翌年3月31日までとする。
[資料]
• 名古屋商事は、20X1 年4 月1 日に設備を取得し、使用を開始した。
• 設備の取得原価は10,000千円、耐用年数は5 年であり、名古屋商事には当該設備を使用後に除去する法的義務がある。
• 名古屋商事が当該設備を除去するときの支出は1,000千円 と見積もられている。
• 20X6 年3 月31 日に設備が除去された。
• 当該設備の除去に係る支出は1,050千円 であった。
• 資産除去債務は取得時にのみ発生するものとし、名古屋商事は当該設備について残存価額をゼロとして定額法により減価償却を行っている。
• 割引率は3%とする。Copyright © 2015 ICHIRO MUKAI All Rights Reserved. 9
【解説】
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20×1年 (単位:千円)月 日 借 方 金額 貸 方 金額
4 1 設 備 現 金 預 金資 産 除 去 債 務
設備の取得と関連する資産除去債務の計上
*1) 将来キャッシュ・フロー見積額=1,000/(1.03)5=862.6=863
【設例1】をもとに、下記の設問に答えなさい。
• 20X2 年~20X6 年のそれぞれ3月31日における、時の経過による
資産除去債務の増加(小数点以下は四捨五入)および設備の減価償却(小数点以下は切り捨て)について仕訳しなさい。
• 20X6 年3 月31 日の設備の除去について仕訳しなさい。
【設例2】
【解説】
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(1) 20×2年 (単位:千円)(a) 月 日 借 方 金額 貸 方 金額
3 31 利 息 費 用 資 産 除 去 債 務 *1)〃 減 価 償 却 費 *2) 設 備減 価償 却累 計額
時の経過による資産除去債務の増加*1) 資産除去債務=863×3.0%=25.89=26
設備と資産計上されている除去費用の減価償却*2) 設備の減価償却費=10,000÷5 年=2,000
除去費用資産計上額=863÷5 年=172.6=172
(b) 20×3年 月 日 借 方 金額 貸 方 金額
3 31 利 息 費 用 資 産 除 去 債 務 *3)〃 減 価 償 却 費 *4) 設 備減 価償 却累 計額
時の経過による資産除去債務の増加*3) 資産除去債務=(863+26)×3.0%=26.67=27
設備と資産計上されている除去費用の減価償却*4) *2)に同じ。
(c) 20×4年 月 日 借 方 金額 貸 方 金額
3 31 利 息 費 用 資 産 除 去 債 務 *5)〃 減 価 償 却 費 *6) 設 備減 価償 却累 計額
時の経過による資産除去債務の増加*5) 資産除去債務=(863+26+27)×3.0%=27.48=27
設備と資産計上されている除去費用の減価償却*6) *2)に同じ。
(d) 20×5年 月 日 借 方 金額 貸 方 金額
3 31 利 息 費 用 資 産 除 去 債 務 *7)〃 減 価 償 却 費 *8) 設 備減 価償 却累 計額
時の経過による資産除去債務の増加*7) 資産除去債務=(863+26+27+27)×3.0%=28.29=28
設備と資産計上されている除去費用の減価償却*8) *2)に同じ。
(e) 20×6年 月 日 借 方 金額 貸 方 金額
3 31 利 息 費 用 資 産 除 去 債 務 *9)〃 減 価 償 却 費 *10) 設 備減 価償 却累 計額
時の経過による資産除去債務の増加*9) 資産除去債務=(863+26+27+27+28)×3.0%=29.13=29
設備と資産計上されている除去費用の減価償却*10) 設備の減価償却費=10,000÷5 年=2,000
除去費用資産計上額=863-(172×4年)=175
(3) 20×6年 月 日 借 方 金額 貸 方 金額
3 31 設備減価償却累計額 設 備〃 資 産 除 去 債 務 現 金 預 金
資 産 除 去 損 失
§5 資産除去債務の見積の変更• 資産除去債務の見積もりの変更から生じる調整の方法
① プロスペクティブ・アプローチ(prospective approach)• 資産除去債務に係る負債および関連する有形固定資産の帳簿価
額に加減して、 ( )を通じて残存耐用年数にわたり( )を行う方法
② キャッチアップ・アプローチ(catch-up approach)• 資産除去債務に係る負債および有形固定資産の残高の調整を行
い、その調整の効果を一時の( )とする方法
③ レトロスペクティブ・アプローチ(retrospective approach)• 資産除去債務に係る負債および有形固定資産の残高を過年度に
( )して修正する方法
• 会計上の見積もりの変更については、国際的な会計基準において、将来に向かって修正する方法が採用されていること、日本の現行の会計慣行において、耐用年数の変更による影響額を変更後の残存耐用年数で処理する方法が一般的であることなどから、( )・アプローチが規定されている。
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