当院における日本プロサーフィン連盟 公認プロサー...

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当院における日本プロサーフィン連盟公認プロサーファーの障害調査

医療法人社団南洲会 勝浦整形外科クリニック

松本悠市、稲田邦匡

有馬三郎、祢津雅彦、木原隆徳

背景 サーフィン医科学プロジェクト

競技スポーツとしての「サーフィン」を研究し、

世界で戦える日本人選手を生み出すことを目標とする

日本プロサーフィン連盟(JPSA)公認プロ選手のサポート

2009年から現在まで国内の公式戦(ツアー)に帯同

大会会場にメディカル・ステーションを設置し、選手のサポートを行ってきた。

プロ選手のフィジカル・チェックやトレーニング・プログラムの実践

2008年 サーフテック・ジャパンとの共同研究(2008.12月) 「Body Remake Project 2008 by Stand Up Surfing」 祢津雅彦ら 2009年 第20回日本臨床スポーツ医学会学術集会(2009.11.14)神戸 「日本プロサーフィン連盟(JPSA)公認プロの障害調査について」 樋口敦ら 2010年 第9回房総スポーツ医科学懇話会(2010.3.14)千葉 「プロサーフィン選手に対するメディカルサポート<日本プロサーフィン連盟(JPSA)公認プロサーファーの障害調査より>」 八亀康次ら 第36回日本整形外科スポーツ医学会学術集会(2010.9.10)横浜 第18回日本腰痛学会(2010.10.30)札幌 「サーフィンと腰痛<JPSA(日本プロサーフィン連盟)公認プロサーファーの傷害調査より> 稲田邦匡 2011年 第11回房総スポーツ医学懇話会(2011.3.6)千葉 「サーフィンと腰痛<JPSA(日本プロサーフィン連盟)公認プロサーファーの傷害調査より> 稲田邦匡 第22回日本臨床スポーツ医学会学術集会(2011.11.5)青森 「日本プロサーフィン連盟(JPSA)公認プロ選手の障害調査(第2報) サーフィンにおける体幹・股関節回旋可動域と下肢外傷について 」八亀康次ら 「プロサーファーの腰痛と身体特性の関連について 日本プロサーフィン連盟(JPSA)公認プロ選手の障害調査より 」 松本悠市ら 「橈骨遠位端骨折に対し、ロッキングプレートによる内固定を行い、早期にサーフィン復帰できた競技サーファーの1例」 丸洋平ら 2012年 第23回日本臨床スポーツ医学会学術集会(2012.11.3)横浜 「剣状突起切除術(Xiphoidectomy)を施行したレクリエーショナル・サーファーの一例」 稲田邦匡ら

「サーフィン」に関する学術研究活動

2010年4月より開設

プロ・サーファー、プロを目指すトップ・アマチュア、プロ・ボディーボーダーほか、一般のレクリエーショナル・サーファーらが対象

日本医事新報(2012年8月18日号)でも紹介された。

「サーフィン外来」

大原洋人プロ(13才) JPSA史上最年少プロ

目的

当院の「サーフィン外来」を受診したプロ・サーファーらの診療内容より、競技スポーツとしてのサーフィンの競技特性を明らかにすること

対象および方法

対象 2010年4月~2013年9月に、サーフィン外来を受診した日本プロサーフィン連盟(JPSA)公認プロ・サーファー

およびプロ候補選手

方法 診療録から診断名、 障害部位、障害誘因、 治療方法を調査した

(人)

男子 女子 計

ショートボード 20 5 25

ロングボード 9 3 12

プロ候補選手 4 3 7

計 33 11 44

結果

対象者および 初診(初回診察)のべ件数

(歴代の年間グランド・チャンピオン10名を含む)

男子 女子 合計

対象者数 (人) 33 11 44

初回診察(初診)のべ件数 (件) 98 29 127

障害発生誘因別の内訳

障害 49%(62件)

(P=0.046)

外傷 22%(28件)

障害 25%(32件)

外傷 4%(5件) サーフィンが誘因 71%(90件)

ADL・仕事が誘因 29%(37件)

(計 127件)

腰部 31%(19件)

肩関節 27%(17件)

頭・頸部 15%(9件)

下肢(股関節、

膝関節、足・足

関節) 16%(10件)

胸部・脊柱 6%(4件)

肘・前腕 5%(3件)

サーフィンによる障害(62件)

筋筋膜性腰痛症(9件) 腰部椎間板症(3件) 腰部椎間板ヘルニア(3件)

頚肩腕症候群(6件) 肩関節周囲炎(5件)

頸部筋筋膜炎(4件) 頸部椎間板ヘルニア(3件)

膝関節 39%(11件)

足・足関節 25%(7件)

頭・頭部 11%(3件)

上肢(肩、肘) 7%(2件)

胸腰部 7%(2件)

その他(大腿、

顎部、口腔) 11%(3件)

サーフィンによる外傷(28件)

膝内側側副靭帯損傷(6件) 膝内側半月板断裂(1件)

足関節外側靭帯損傷(4件) 足部打撲傷(1件)、母趾捻挫(1件)

頚椎捻挫(2件) 頭部挫傷(1件)

14%(4件) 0%(件)

86%(24件) 81%(50件)

18%(11件)

1%(1件)

保存的治療 診察・評価のみ 手術

治療方法

サーフィンによる障害(62件) サーフィンによる外傷(28件)

考察

医療機関の「スポーツ外来」を受診したエキスパート・サーファーの傷病の調査の報告は、これまで類を見ない。

サーフィンによる外傷歴 サーフィンの障害マップ

これまでの、大会会場での傷害調査の報告(2009年本学会、樋口ら)

・外傷歴では、膝・足関節の外傷が多い ・障害部位では、下肢次いで腰部の障害が多い ⇩ ⇩ 今回の結果と一致 今回も障害と外傷を合わせるとほぼ一致 病院での医師による診察・検査に基づく正確な「診断」により、 競技レベルのサーファーの障害の特徴が裏付けられた。

プロ・サーファーの抱える傷病の多くは、サーフィンに起因するものであるが、その大部分は急性外傷ではなく慢性障害であった。

これまでの一般のサーファーの障害調査の報告では、

サーフィン中の外傷(切創・打撲・捻挫など)が大多数 慢性障害では、腰痛の愁訴が最多

サーフィンの競技特性 ①波の上という不安定な環境 ②パフォーマンス(演技系)競技であること ③特異な競技姿勢 ④上達するほど効率が上がり、外傷も減る可能性 競技レベルのサーファーでは、こうした競技特性が原因となった

慢性障害が多いということが示唆される。

「サーフィン外来」のようなサーフィンを熟知した医師・理学療法士ら による専門外来への受診の啓蒙が必要と考えられる。

治療方法は、理学療法や自己管理指導を中心とした保存的治療により、いずれも競技の継続・復帰が可能であった。

これまでの、大会会場での傷害調査の報告(2009年本学会、樋口ら) プロ・サーファーは、身体に障害があっても医療機関を受診することは少なく、 トレーニングや自己身体管理もほとんど出来ていないことが判明

結語

当院の「サーフィン外来」を受診した、プロサーファー

らの障害調査を診療録より行った。

サーフィンに起因する障害が大多数であったが、

サーフィンによる急性外傷はわずかであった。

障害の多くは、理学療法や自己管理指導を中心とし

た保存的治療により、競技の継続や復帰が可能で

あった。

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