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ブブブブブブブブブブブブブブブブブ A Discussion on an Optimal Framework for Broadband Quality Measurement ブブブブ ブブブブ Toshiya Jitsuzumi, Kyushu University 2014/6/29 ブ 31 ブブブブブブブブブ ブブブブブブブブブブブ 1

ブロードバンド品質計測に関する考察

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第31回情報通信学会大会(2014/6/29 @大阪大学中之島センター)でのプレゼンスライド

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Page 1: ブロードバンド品質計測に関する考察

ブロードバンド品質計測に関する考察A Discussion on an Optimal Framework for Broadband Quality Measurement

九州大学 実積寿也Toshiya Jitsuzumi, Kyushu University

2014/6/29第 31回情報通信学会大会@大阪大学中之島センター 1

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報告概要• ブロードバンドインターネットが先進各国において経済社会活動のインフラとなり、高速なインター

ネット接続の存在を所与の前提条件としたエコシステムの構築がすすんでいる今日、利用者にとって通信速度等の品質がサービスを選択する上での重要な要素となってきている。

• 現在、総務省では、インターネットの品質計測方法に関する検討が進んでいるが、計測に関する統計的パラメータについての情報が明らかではないため、その検討は机上プランの構築にとどまっている。

• 本報告では、 2014 年 1 月から 3 月にかけて報告者が実施した品質計測結果を基に、各種統計パラメータを紹介し、最適な品質計測方法の構築の際に留意すべきポイントについて考察を行う。

• アジェンダ1. 問題の背景2. 固定環境下における計測3. モバイル環境下における計測4. 政策提言

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1. 問題の背景( 1/5 )• ブロードバンドインターネットは先進各国にお

いて経済社会活動のインフラとなりつつあり、わが国においても高速なインターネット接続の存在を所与の前提条件としたエコシステムの構築がすすんでいる。

• 2012 年 3 月末時点で、超高速ブロードバンド が利用可能な世帯は 5,235 万世帯、利用可能率は97.3 %。 3.5 世代携帯電話を含むブロードバンド の利用可能率は 100 %。

• 固定網の最高速度は 1Gbps に、近年進展が著しいモバイルの分野では 150Mbps に達している。

• ただし、これらのブロードバンド環境はそのほとんどがベストエフォートと呼ばれる品質基準で提供。

• 実効速度が上限速度を大幅に下回っても、利用者は契約上の義務の不履行を主張することが困難。

• ベストエフォート品質については詐欺的な過大広告や虚偽表示が蔓延する可能性が指摘。

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136.395.0

89.776.3

74.568.3

66.863.9

53.652.352.0

48.944.744.4

41.341.3

36.535.7

34.533.5

32.031.731.430.5

29.429.2

26.225.724.9

23.322.722.121.9

17.511.2

0 20 40 60 80 100 120 140 160

SwedenJapan

NetherlandsPortugalNorway

KoreaCanada

SloveniaFinland

DenmarkFrance

United KingdomUnited States

OECDSpain

LuxembourgAustralia

BelgiumCzech Republic

EstoniaSlovak Republic

ItalyNew Zealand

AustriaPoland

HungaryIceland

ChileGermany

SwitzerlandIreland

IsraelGreeceTurkeyMexico

出典:OECD Broadband statistics [http://oecd.org/internet/broadband/oecdbroadbandportal.htm]

上限ダウンロード速度の平均値( 2012 年 9 月)

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1. 問題の背景( 2/5 )• 優秀なブロードバンド環境が整っているとされ

るわが国では、実効速度は高水準であるものの、速度表示に関する誠実性は他国に比して劣る。

• 同様の事態は近年利用が急速に進んでいるモバイルブロードバンドの分野でも発生。

• 問題解決を市場メカニズムを通じて実現するには、実効品質情報をネットワーク利用者に示し、その購買行動に影響を与えることでプロバイダのネットワーク投資行動を最適化することが必要

• 総務省では、 2013 年 11 月より「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」を開催し、モバイルブロードバンドの実行品質計測方法に関する検討を進めている。

• 本来は同様の検討を固定網に関しても行う必要がある。とくに近年、携帯電話端末に Wi-Fi機能が備えられていることが通常である点を考慮すれば、利用者にとってモバイル網の実効品質と固定網のそれを区別すべき必然性は存在しない。

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0 5 10 15 20 25 30 35 400%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

Actual QoS

平均実効速度( Mbps )

表示速度と実効速度の比率(%)

日本( 2009 年 11月)

日本( 2011 年 1月)

日本( 2012 年 3-4月)

日本( 2013 年 3月)

米国( 2009年)

英国( 2010 年 5月)

豪州( 2008 年Q4 )

アイルランド( 2008年)

注:測定方法や対象が一定ではないので国際比較については参考値である。出典: Akamai、 Epitiro、 FCC資料等より作成

日本( 2014 年 3月)

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1. 問題の背景( 3/5 ):総務省の認識

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1. 問題の背景( 4/5 ):わが国における実効品質計測• 我が国では、ネットワークの品質管理やエリア改善等を目的に通信事業者によって実効速度等のサービス品質の計測が実施されている。また、調査会社等においても、通信事業者ごとのサービス品質の比較結果等を利用者に情報提供することを目的にモバイルの実効速度等の計測が実施されている。

• 通信事業者によるサービス品質計測: NTT ドコモ、 KDDI 、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス

• 調査会社等によるサービス品質計測:MM 総研、日経 BP コンサルティング、イード

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1. 問題の背景( 5/5 ):諸外国での実効品質計測• 諸外国では、『消費者のサービス選択に関する

情報提供』及び『事業者間競争の促進によるサーボス品質の向上』等を目的に、政府・規制機関等が主体となって、モバイルの実効速度等の計測及び計測結果の公表が行われている。

• イギリス• フランス• アメリカ

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2. 固定環境下における計測( 1/7 )• 固定環境下におけるブロードバンドの実効品質計測については、 FCC や EU において既に先行事例が存

在。• ユーザー宅内に特別のハードウェアを設置してサーバーとの間での実効品質を計測する手法(ハード

ウェア型)と、ユーザーの所有のパソコン等の端末機器に予めインストールした専用ソフトウェアあるいはウェブブラウザを介して計測サーバーとのやり取りを行って実効品質を計測する手法(ソフトウェア型)が存在。

• サンプル数についてはある程度妥協しつつも、個々の計測の精密さを優先するのであれば、ハードウェア型の計測手法を、個々の計測のばらつきはサンプル数でカバーするという方針を採用するのであればソフトウェア型を選択することが望ましい。

• 実効品質は計測環境に大きく左右されてしまうことから、そういった要因をできるだけ排除できるハードウェア型の方がより統計的に頑健な結果が期待できる。

• ソフトウェア型はハードウェア型と比較して計測コストを大きく節減できるため、投入可能資源が限られている中でサンプル数をできる限り確保したいケースにおいては合理的な選択。

• 今回採用したのはソフトウェア型の計測方法であり、 Ookla 社が提供する実行品質計測サービス( speedtest.net )を利用し、計測サーバーをアカロク㈱が提供している東京サーバーに指定したうえで、平日と週末を含む午後 2 時からの 30 分間を原則的な計測時点とし、複数の端末機器を利用して可能な限り大量に反復計測を実施。

2014/6/29第 31回情報通信学会大会@大阪大学中之島センター

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2. 固定環境下における計測( 2/7 ) : 計測パラメータ

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計測パラメーター 研究室での計測 自宅での計測

計測日時 Sat., Jan. 18, 2014, 14:00-14:30; Mon., Jan. 20, 2014, 14:00-14:30;Wed., Jan. 22, 2014, 14:10-14:40; Thu., Jan. 23, 2014, 15:10-15:40;Fri., Jan. 24, 2014, 14:00-14:30; Sat., Jan. 25, 2014, 14:00-14:30;Sun., Jan. 26, 2014, 14:00-14:30; Wed., Jan. 29, 2014, 14:00-14:30;Thu., Jan. 30, 2014, 14:00-14:30; Fri., Jan. 31, 2014, 14:00-14:30;Sat., Feb. 1, 2014, 14:00-14:30; Sun., Feb. 2, 2014, 14:00-14:30;Sun, Mar. 2, 2014, 14:00-14:30

Mon., Jan. 27, 2014, 14:00-14:30; Tue., Jan. 28, 2014, 14:00-14:30;Mon., Feb. 3, 2014, 14:00-14:30; Tue., Feb. 4, 2014, 14:00-14:30;Wed., Feb. 5, 2014, 14:00-14:30; Thu., Feb. 6, 2014, 14:00-14:30;Fri., Feb. 7, 2014, 14:00-14:30; Sat., Feb. 8, 2014, 14:00-14:30;Sun., Feb. 9, 2014, 14:00-14:30; Mon., Feb. 17, 2014, 14:00-14:30;Tue., Feb. 18, 2014, 14:00-14:30; Wed., Feb. 19, 2014, 14:00-14:30;Thu., Feb. 20, 2014, 14:00-14:30; Fri., Feb. 21, 2014, 14:00-14:30;Sat., Feb. 22, 2014, 14:00-14:30; Sun, Mar. 2, 2014, 14:00-14:30

計測場所 九州大学箱崎キャンパス経済学部棟 6F の研究室 福岡市東区の自宅マンション

ブロードバンド環境 有線 LAN および無線 LAN学内 LAN

有線 LAN および無線 LANNTT西日本フレッツ光プレミアム、マンションタイププラン1

プロバイダ Kyushu University hi-ho

計測サービス Speedtest.net

計測サーバー アロカク株式会社(東京都)が設置するサーバー

計測項目 ダウンロード速度 ; アップロード速度 ; レスポンス時間( latency )

端末機器(有線接続)

DELL XPS 8500; DELL XPS 420 DELL Inspiron

端末機器( Wi-Fi 接続)

MacBook Air; Surface 2 Surface 2

Wi-Fi ルーター LYNKSIS Wireless-N Home Router (WRT150N) BUFFALO AirStation NFINITI (WZR2-G300N)

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2. 固定環境下における計測( 3/7 ): Ookla システムの性質

• レスポンス時間( Latency )• 10 回計測を行い、最速値を出力

• ダウンロード速度( Download )• 最高 8 本の HTTP スレッドを設定した上で、一秒間に最大 30

回計測• 計測自体は 10秒間実施

• 計測値順に 20 の計測結果にグルーピングし、速い方の 10 %と遅い方の 30 %をカットし、平均値を計算して出力

• Flash 利用による計測雑音、および、接続当初のランプアップを考慮

• アップロード速度( Upload )• 最高 8 本の HTTP スレッドを設定した上で、計測を実施• 速い方の半分の平均値を出力(つまり、遅いほうの半分をカット) 2014/6/29第 31回情報通信学会大会@大阪大学中之島センター

http://www.ookla.com/support/a21110547/what+is+the+test+flow+and

• Ookla 社の提供する speedtest はサーバーとクライアント間で以下の三つを計測

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2. 固定環境下における計測( 4/7 ):計測結果の集約

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Download Speed (Mbps) Upload Speed (Mbps) Latency (ms)N Average s.d. Average s.d. Average s.d.

研究室での計測

Weekday 1672 20.09 12.36 18.13 10.35 29.08 14.10Mon 228 19.63 10.77 18.26 8.83 28.50 9.52Wed 498 20.77 13.19 18.20 11.07 27.78 9.59Thu 486 19.93 11.59 18.61 9.35 27.89 9.72

Fri 460 19.74 12.94 17.47 11.19 32.02 21.61Weekend 1283 22.55 11.65 20.52 9.26 27.78 8.26

Sun 620 21.99 11.97 20.34 9.04 27.84 8.56Sat 663 23.07 11.32 20.68 9.46 27.72 7.98

Wired 1503 31.28 8.28 26.99 7.66 21.55 5.12XPS 420 729 30.35 7.68 22.56 6.34 17.63 4.25

XPS 8500 774 32.17 8.73 31.15 6.35 25.24 2.40Wi-Fi 1452 10.67 3.38 11.07 3.49 35.72 12.67

Macbook Air 792 10.67 3.63 11.32 3.23 33.24 13.89Surface 2 660 10.66 3.04 10.77 3.76 38.70 10.29

All Samples 2955 21.15 12.11 19.17 9.96 28.51 11.94

自宅での計測

Weekday 1510 31.74 19.26 34.88 20.30 32.24 6.71Mon 375 31.39 19.24 36.45 21.36 32.70 6.85

Tue 373 31.48 19.85 35.16 21.63 32.31 6.77Wed 258 31.54 18.16 31.21 17.26 33.09 6.82Thu 254 32.72 20.67 35.18 19.62 31.00 6.28

Fri 250 31.86 18.09 35.63 19.89 31.82 6.52Weekend 511 31.12 17.74 35.78 20.57 32.86 6.83

Sun 255 31.27 17.80 35.23 20.59 33.45 6.85Sat 256 30.97 17.72 36.32 20.57 32.28 6.77

Wired  Inspiron 1032 49.49 6.04 54.39 6.97 28.03 1.98Wi-Fi  Surface 2 989 12.90 2.60 14.99 1.89 36.95 6.94All Samples 2021 31.58 18.88 35.11 20.36 32.40 6.74

• 研究室よりも自宅での方が、 latency をのぞけば、高品質なブロードバンド環境が実現

• 午後の早い時間帯の計測においては、曜日差は有意ではない

• 以前行った計測では、時間帯により大きな実効速度の変動を観測

• 端末機器による差はほとんど観察されない

• 一方で有線接続は Wi-Fi 接続よりも有意に良好なパフォーマンスを記録

• 速度計測の標準偏差が大きい

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2. 固定環境下における計測( 5/7 ):時間変化

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• アップロード速度、レスポンス時間でも同じ傾向

• 日時との相関は観察できない

0

20

40

60

80

100

0 40 80 120 160 200 240 280 320 360 400 440 480 520 560 600 640 680 720 760 800 840 880 920 960 1000 1040 1080 1120 1160

Download Speed (Mbps)

XPS8500 XPS420 Inspiron MacbookAir Surface2

From my office From my home

Sat.,

Jan.

18,

201

4,

14:0

0-1

4:30

Mon

., Ja

n. 2

0, 2

014,

14:

00-1

4:30

Wed

., Ja

n. 2

2, 2

014,

14:

10-1

4:40

Thu.

, Jan

. 23,

201

4, 1

5:10

-15:

40

Fri.,

Jan.

24,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Sat.

, Jan

. 25,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Sun.

, Jan

. 26,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Wed

., Ja

n. 2

9, 2

014,

14:

00-1

4:30

Thu.

, Jan

. 30,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Fri.,

Jan.

31,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Sat.

, Feb

. 1, 2

014,

14:

00-1

4:30

Sun.

, Feb

. 2, 2

014,

14:

00-1

4:30

Sun,

Mar

. 2, 2

014,

14:

00-1

4:30

Mon

., Ja

n. 2

7, 2

014,

14:

00-1

4:30

Tue.

, Jan

. 28,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Mon

., Fe

b. 3

, 201

4, 1

4:00

-14:

30

Tue.

, Feb

. 4, 2

014,

14:

00-1

4:30

Wed

., Fe

b. 5

, 201

4, 1

4:00

-14:

30

Thu.

, Feb

. 6, 2

014,

14:

00-1

4:30

Fri.,

Feb

. 7, 2

014,

14:

00-1

4:30

Sat.

, Feb

. 8, 2

014,

14:

00-1

4:30

Sun.

, Feb

. 9, 2

014,

14:

00-1

4:30

Mon

., Fe

b. 1

7, 2

014,

14:

00-1

4:30

Tue.

, Feb

. 18,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Wed

., Fe

b. 1

9, 2

014,

14:

00-1

4:30

Thu.

, Feb

. 20,

201

4, 1

4:00

-14:

30

Fri.,

Feb

. 21,

201

4, 1

4:00

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30

Sat.

, Feb

. 22,

201

4, 1

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-14:

30

Sun,

Mar

. 2, 2

014,

14:

00-1

4:30

Page 13: ブロードバンド品質計測に関する考察

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2. 固定環境下における計測( 6/7 ):計測のばらつき

2014/6/29第 31回情報通信学会大会@大阪大学中之島センター

• アップロード速度、レスポンス時間でも同じ傾向

0

100

200

300

400

500

Fre

qu

ency

Download Speed (Mbps)

Wired

Wi-Fi

Measurement site: Speedtest.netMeasurement place: my office at Kyushu University, Fukuoka, JapanISP: Kyushu UniversityAccess Line: University LAN

DELL XPS420 and DELL XPS8500

MacBook Air and Surface2

研究室

0

100

200

300

400

500

600

700

Fre

qu

wen

cy

Download Speed (Mbps)

Wired

Wi-Fi

Measurement site: Speedtest.netMeasurement place: my home in Fukuoka, JapanISP: hi-hoAccess Line: FTTH for multi-dwelling unit provided by NTT West, 100Mbps

DELL Inspiron 17R Special Edition

Surface 2

自宅

Page 14: ブロードバンド品質計測に関する考察

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2. 固定環境下における計測( 7/7 ):計測値間の関係

2014/6/29第 31回情報通信学会大会@大阪大学中之島センター

0

20

40

60

80

0 20 40 60 80

Up

loa

d S

pe

ed

(Mb

ps)

Downloas Speed (Mbps)

Wired, Office Wi-Fi, Office Wired, Home Wi-Fi, Home

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 20 40 60 80 100

La

ten

cy (

ms)

Downloas Speed (Mbps)

Wired, Office Wi-Fi, Office Wired, Home Wi-Fi, Home

アップロード速度とレスポンス時間に関してはダウンロード速度を代理指標として用いることができる

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3. モバイル環境下における計測( 1/4 )• モバイル環境下におけるブロードバンドの実効品質計測に関する先行事例については主として民間の事業者によるものが大半

• 政府等の公的主体による計測は未だ数が少なく、 FCC でさえ昨年 11 月よりソフトウェア型モデルにより計測を開始したところ

• 今回の計測対象となった携帯電話ネットワークを用いて提供するモバイルブロードバンドについては、ソフトウェア型以外の選択肢がない。

• 共同研究者が開発したアプリを KDDI およびソフトバンクの iPhone端末にインストールした上で、東京都内に設置した計測サーバーとの間で、 2014 年 1 月 24 日および 31 日の午後 4 時から午後 6 時までの 2 時間にわたり実効品質の計測を行った。

2014/6/29第 31回情報通信学会大会@大阪大学中之島センター

Page 16: ブロードバンド品質計測に関する考察

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3. モバイル環境下における計測( 2/4 ) : 計測パラメータ

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計測パラメーター KDDI端末を用いた計測 ソフトバンク端末を用いた計測

計測日時 Fri., Jan. 24, 2014, 16:00-18:00Fri., Jan. 31, 2014, 16:00-18:00

計測場所 九州大学箱崎キャンパス経済学部棟 5F の教室

ブロードバンド環境

KDDI の提供する 3G 回線( iPhone4S ) および LTE 回線( iPhone5 )

ソフトバンクの提供する LTE 回線

プロバイダ au ソフトバンク

計測サービス 独自ソフトを利用

計測サーバー 計測協力者が東京都内に設置するサーバー

計測項目 以下の項目については 10 分間隔で自動計測• レスポンス速度:往復遅延時間( RTT )を 0.2秒間隔で 150 回計測• ダウンロード速度: 10秒間の総スループット量より計算

• TCP ストリームを 1 本、 3 本、 5 本設定したものを各 1 回、計 3 回計測• アップロード速度: 10秒間の総スループット量より計算

上記に加え、 traceroute を三回計測し、計測サーバーまでのホップ数を記録

端末機器 iPhone4S ( iOS については最新バージョンを使用)iPhone5 ( iOS については最新バージョンを使用)

iPhone5 ( iOS については最新バージョンを使用)iPhone5S ( iOS については最新バージョンを使用)

Page 17: ブロードバンド品質計測に関する考察

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3. モバイル環境下における計測( 3/4 ) : 計測結果の集約

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N

Download Speed (Mbps)Upload Speed

(Mbps)Median RTT

(ms) Number of hops1 TCP stream 3 TCP streams 5 TCP streams

Average s.d. Average s.d. Average s.d. Average s.d. Average s.d. Average s.d.

KDDI

Jan. 24, 2014 5.13 4.04 5.06 4.18 5.49 4.61 1.82 1.62 79.9 31.0 14.2 0.89

iPhone4S 17 1.85 0.84 1.82 0.84 2.05 2.06 0.80 0.17 104.7 22.9 13.8 0.54

iPhone5 17 8.40 3.18 8.30 3.59 8.93 3.79 2.84 1.78 53.6 7.8 14.8 0.99

Jan. 31, 2014 10.66 8.79 11.14 8.88 11.10 8.90 4.92 8.04 70.0 26.6 14.5 1.08

iPhone4S 5 8.98 16.20 11.60 16.56 11.31 16.69 8.23 15.24 97.0 27.1 13.3 1.35

iPhone5 12 11.36 3.89 10.95 3.84 11.02 3.74 3.54 1.57 58.8 17.3 15.1 0.23

Softbank

Jan. 24, 2014 15.42 9.10 17.22 10.56 17.41 11.16 9.13 6.06 62.9 35.0 23.8 6.10

iPhone5 75 15.48 8.42 16.99 8.25 17.73 9.04 10.20 5.97 62.6 40.3 24.8 5.27

iPhone5S 29 15.26 10.81 17.81 15.16 16.58 15.52 6.34 5.48 64.0 14.2 21.2 7.33

Jan. 31, 2014 17.85 10.72 18.37 11.83 19.47 11.22 16.67 14.16 58.9 13.3 20.2 7.47

iPhone5 63 18.27 8.23 18.56 10.22 20.44 9.40 15.44 10.29 59.3 13.7 23.2 6.62

iPhone5S 25 16.78 15.48 17.88 15.40 17.01 14.80 19.76 20.96 57.8 12.5 12.4 1.46

Page 18: ブロードバンド品質計測に関する考察

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3. モバイル環境下における計測( 4/4 ) : 計測値の分散

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0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

950 980 1010 1040 1070 1100 1130TIME(s)

KDDI-4S

KDDI-5

SB-5

SB-5S

16:00-, Jan. 24, 2014

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

1950 1980 2010 2040 2070 2100 2130TIME(s)

KDDI-4S

KDDI-5

SB-5

SB-5S

16:00-, Jan. 31, 2014

KDDI iPhone4S

KDDI iPhone5

Softbank iPhone5

Softbank iPhone5S

16:00 17:00 18:00 19:00 16:00 17:00 18:00 19:00

0

10

20

30

40

50

60

70

Download speed (Mbps)

0

10

20

30

40

50

60

70

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

• 平均値はソフトバンクの方が高く、さらに標準偏差についてもレスポンス時間を唯一の例外としてソフトバンクの方が高水準を記録。すなわち、 KDDI の実効品質は安定的であるものの、その絶対水準はソフトバンクと比較して下回る

• アップロード速度についても同傾向

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4. 政策提言( 1/9 ):有意な結果を得るための計測回数• 固定環境下における計測から判明したこと

• 計測結果の分散を考慮すると、 90 %の信頼区間がプラスマイナス 10 %に収まるような平均値を導出するためにはそれぞれ以下のサンプルを取得する必要がある。研究室での計測と比較すると、より分散の小さい自宅での計測の方が要求されるサンプル数は少ない。

• ラストマイル末端において Wi-Fi を利用している場合の方と、そうでない場合は実効品質の格差が大きく、ダウンロード速度は三分の一から四分の一に、アップロード速度は約4割に低下し、レスポンス速度は 1.3倍から 1.6倍に増加する。

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ダウンロード速度 アップロード速度 レスポンス速度

研究室での計測 有線環境 19 サンプル最大 3420有効サンプル、 5700 計

22 サンプル最大 3960有効サンプル、 6600 計

16 サンプル最大 2880有効サンプル、 4800 計

Wi-Fi 環境

28 サンプル最大 5040有効サンプル、 8400 計

27 サンプル最大 4860有効サンプル、 8100 計

35 サンプル最大 6300有効サンプル、 10500

計測

自宅での計測 有線環境 5 サンプル最大 900有効サンプル、 1500 計

5 サンプル最大 900有効サンプル、 1500 計

2 サンプル最大 360有効サンプル、 600 計測

Wi-Fi 環境

11 サンプル最大 1980有効サンプル、 3300 計

5 サンプル最大 900有効サンプル、 1500 計

10 サンプル最大 1800有効サンプル、 3000 計

Page 20: ブロードバンド品質計測に関する考察

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4. 政策提言( 2/9 ):有意な結果を得るための計測回数• モバイル環境下における計測から判明したこと

• 計測結果の分散を考慮すると、 90 %の信頼区間がプラスマイナス 10%に収まるような平均値を導出するためにはそれぞれ以下のサンプルを取得する必要がある。

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ダウンロード速度アップロード速度 レスポンス速度

1 TCP 3 TCP 5 TCP

KDDI

Jan. 24, 2014iPhone4S 56 サンプ

ル58 274 13 13

iPhone5 39 51 49 107 6

Jan. 31, 2014iPhone4S 881 552 590 928 22

iPhone5 32 34 32 54 24SoftBank

Jan. 24, 2014iPhone5 81 64 71 93 113

iPhone5S 136 197 238 203 14

Jan. 31, 2014iPhone5 55 83 58 121 15

iPhone5S 231 201 205 305 13

Page 21: ブロードバンド品質計測に関する考察

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4. 政策提言( 3/9 ):総務省研究会報告書

③計測回数(同一地点)同一地点における計測回数を多くすればするほどたくさんのサンプルデータを収集することができるため、より実態に近い計測結果を得ることが可能になると考えられるが、計測に係るコストも増加することになる。我が国の通信事業者・調査会社等によるモバイルのサービス品質計測や諸外国におけるモバイルのサービス品質計測では、同一地点での計測回数が 1 回から 5 回程度となっているところ、これを参考に、実証実験の結果を踏まえて、最終決定することとする。( p.21 )

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今回の計測実験で得られた結果は、総務省が念頭においている計測回数では統計的に意味のある情報提供が困難であることを示唆するものであり、要求する計測精度にも依存するが、総務省が想定している数倍から 10数倍の計測を繰り返すことが求められる。

Page 22: ブロードバンド品質計測に関する考察

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4. 政策提言( 4/9 ):計測回数再論• 必要な計測回数は推計の目的によっても異なりうる。ラストマイルを提供するネットワーク事業者間の

優劣だけが統計的に明らかになれば良いという場合、必要サンプル数は先ほどよりも大幅に減少し、ダウンロードについては(今回のような計測方式の場合) 10 サンプル程度、アップロードについては 5 サンプル程度となる。

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0 10 20 30 40

KDDI (N=1)SB (N=1)

KDDI (N=3)SB (N=3)

KDDI (N=5)SB (N=5)

KDDI (N=10)SB (N=10)

KDDI (N=20)SB (N=20)

KDDI (N=50)SB (N=50)

KDDI…SB (N=100)

KDDI…SB (N=200)

Mbps

Download, iPhone5, 2014/1/24

0 10 20 30 40 50

KDDI (N=1)SB (N=1)

KDDI (N=3)SB (N=3)

KDDI (N=5)SB (N=5)

KDDI (N=10)SB (N=10)

KDDI (N=20)SB (N=20)

KDDI (N=50)SB (N=50)

KDDI…SB (N=100)

KDDI…SB (N=200)

Mbps

Download, iPhone5, 2014/1/31

Page 23: ブロードバンド品質計測に関する考察

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4. 政策提言( 5/9 ):計測回数再論• 多数の計測を繰り返すためには、計測手法を標準化したうえで、広く計測への参加を募ることが効率的

である。計測作業に規模の経済性が働くのであれば、それぞれの資源を集約し、公平な第三者が計測を集中実施することが適切。

• 総務省研究会では以下のとおり論じている。①持続可能性(過度なコスト負担とならないこと)の観点及び②新端末の発売やネットワークの展開等に合わせた柔軟な計測の実施と計測結果の公表の観点から、通信事業者による計測の実施が効率的と考えられるが、その際、③事業者中立性の確保の観点から、実施プロセスの共通化を図ることが必要と考えられる。(p .23 )

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もちろん、計測において通信事業者の協力を得ることは不可避であるが、唯一の計測主体として想定すべきではないと思われる。なぜなら… ..

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4. 政策提言( 6/9 ):通信事業者がふさわしくない5つの理由1. 計測されるのは利用者目線からみた end-to-end ( e2e )の通信品質

• 通信事業者は e2e 品質をコントロールできる地位にはないため、折角得られた情報を有効活用できる見込みがなく、計測結果の有効活用や計測方法の改善、さらには計測作業継続のインセンティブを期待できない。

2. 実効速度計測結果は測定場所や使用機種、周辺環境によって大きく影響を受ける• 実施プロセスの共通化は必須であるが、全てのパラメータを事前に確定しておくことは困難• 「より良い計測条件」を追及しようという各社の恣意的行動を排除することは不可能

3. 計測費用を各社負担とする場合、トライアルを数多く行う資源を有する事業者が「より望ましい計測結果」を入手

• 当該数値を用いた広告キャンペーンが結果的には競争中立性にそぐわない

4. e2e の品質改善にはコンテンツ・アプリ事業者や、バックボーン事業者の協力が不可欠• 通信事業者が主体となった計測ではその公平性に疑義が生じる恐れあり• また、事後的な協力体制の確立は、「犯人探し」の要素が加わるため達成が困難

5. 既存の実効速度計測市場との競合サービス• 計測アプリの開発等においてノウハウを既に蓄積している既存事業者の協力が効率的な計測体制確立に必須

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Page 25: ブロードバンド品質計測に関する考察

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4. 政策提言( 7/9 ):計測主体に関する提言• 通信事業者を唯一の計測主体、あるいは、計測主体の中核とするのではなく、コンテンツ・アプリ事業者

やユーザー団体、学識経験者から構成される第三者機関が計測を主導することで、エコシステムの関係者全ての合意に基づくとともに、既存の実効速度計測市場を破壊しない持続可能なフレームワークを構築することが重要

• 費用分担については、計測結果の開示による品質改善の受益者となる各利用者から、現行のユニバーサルサービス基金と類似の仕組みで徴収することで安定的に確保可能であろうと想定。

• 第三者機関で計測を行うことで、ノウハウや計測アプリの情報をエコシステム全体で共有することが可能

• 当該知識ベースの公開を行うことで、多様な利用条件にそれぞれ応じた計測実施の可能性を公的資金を用いることなく追求することができ、その結果として、民間計測事業者の追加的な登場を促し、実効速度計測市場のさらなる活性化(加えて、本邦事業者の海外市場展開)も期待できよう。

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4. 政策提言( 8/9 ):計測結果の解釈• 総務省報告書にいうところの「利用者が正確な情報に基づき契約が可能となる環境を整備」という観点

からすれば速度計測の結果を公表することだけでは目的を達成することはできない。• 計測結果を利用者が正確に解釈し、合理的な行動に反映するためには、「数値の意味を正確に理解し、

どうすればそれを改善することができるのか」に関する知識とともに、「自身が求めるインターネット経験( QoE )を実現するために最低限満たさなければならない通信品質」を認識する必要がある。

• すなわち、当初の目的を満たすためには、通信技術に関する技術的知識とともに、個々の利用者(自身)のネット利用ニーズについての理解が必須。

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• 情報提供先のリテラシーに合わせた提供方法の工夫• 公開内容は計測結果にとどまらない

• 計測条件、環境についての情報は必須• 低リテラシーの提供先に対しては、その理解を支援

するためのメカニズムの導入

提案:“ ISPソムリエ”

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4. 政策提言( 9/9 ):目指すべき方向性

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A社による計測

計測条件計測サーバーの位置 ………….計測方法 ……….計測サンプル数 ………….計測期間・頻度 ………….………..計測結果地点AにおけるISP α 利用者の実効品質電波強度平均ダウンロード速度 ○○Mbps平均アップロード速度 ○○Mbpsジッタ(通信ゆらぎ) ○○最大 msパケットロス × ×%通信遅延 □□ms………….地点AにおけるISP β 利用者の実効品質

……….

B社による計測

C社による計測

D社による計測

品質計測.com(各社の計測結果を比較表示

する情報サイト)

プロフェッショナルな利用者は詳細な実測データを直接利用

一般利用者に、個別事情を考慮し、かつ、理解容易な形にまとめた情報を提供し、ブロードバンド環境を改善

ISPソムリエ

各ISPの契約条件の情報各利用者の利用実態に対する独自調査

ソムリエ相互の競争

Page 28: ブロードバンド品質計測に関する考察

ブロードバンド品質計測に関する考察A Discussion on an Optimal Framework for Broadband Quality Measurement

九州大学 実積寿也Toshiya Jitsuzumi, Kyushu University

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