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電子ジャーナルへのアクセスとは何か
佐藤翔 ([email protected]) 同志社大学社会学部教育文化学科(図書館司書課程担当)
2014/12/8 UniBio Press / J-STAGEセミナー
• 同志社大学社会学部教育文化学科助教
• 学術情報流通論/利用者行動分析
• 博士論文:機関リポジトリやCiNii Articles
のログ分析
2
自己紹介
1. アクセスとは?
2. 論文のアクセスは多い方が良いのか?
3. 機関リポジトリで公開するとジャーナル
へのアクセスは減るのか?
4. 意味のあるアクセスを増やすには?
概要
1. アクセスとは?
アクセスとは?
5
利用者 システム
1. ブラウザがシステムにリクエストを送信
2. システムはリクエストに応じファイルを送信
3. どんなリクエストがあったかログに記録
ログ
アクセスログとは?
6
• タイトル単位
– 利用者に直接聞く
• 冊子単位
– 図書館等での閲覧状況を調査する
– 貸出回数を調査する
• 論文単位
– 被引用数を調べる7
電子ジャーナル以前の「閲読」調査
• アクセスログに基づく分析の一般化
–利用頻度(ダウンロード回数)が把握できる
–誰(正確にはどのPC)がどんな時間に、どんな経路をたどって(どんな検索語で)アクセスしてきているかも把握できる
• 論文単位でのアクセス状況把握が可能
• アクセス方法や時間等、より精緻な実態把握が可能に
8
電子ジャーナル後の閲読調査
アクセスログからわかること
9
• IPアドレス・クッキー(利用者の情報)
• アクセス日時
• アクセス先URL(コンテンツ・検索語)
• 参照元(アクセス方法・検索語)
• User Agent(利用者の環境)
ログを集計するとわかること
10
• 検索回数
• アクセス回数(抄録・本文)
• アクセス元(機関・種類・地域)
• アクセス方法(検索語やリンク元)
• より詳細な利用者行動(色々できる)
• 自動的にデータが収集できる
• 人間の意志が介在しない– Cf)インタビュー調査/質問紙調査
• サンプリングの必要性がない–利用の全数が記録に残っている
出典:Galyani Moghaddam, Golnessa; Moballeghi, Mostafa . How Do We Measure Use of Scientific Journals?: A Note on Research Methodologies. Scientometrics. 2008, vol.76, no.1, p. 125-133.
11
アクセス分析のメリット
「アクセスがあった」
=
「読まれた」?
「アクセスがあった」
=
「読まれた」?
そうは言えない
2. 論文のアクセスは
多い方が良いのか?
アクセス=閲読と言えない3の理由
15
• 画面設計の影響がある
• 人間以外のアクセスがある
• アクセスしても読まないことがある
16
画面設計の影響
17
画面設計の影響
このリンクを
出さないと増やせる
•サーチエンジン等のロボット
•正体不明の大量アクセス
18
人間以外のアクセス
• ユーザを特定できない–同じパソコンを違う人が使う
–違うパソコンを同じ人が使う
–図書館では特に起こりうること??
• ユーザパフォーマンスとシステムパフォーマンスの区別ができない–フィルタリングの必要性
出典:Galyani Moghaddam, Golnessa; Moballeghi, Mostafa . How Do We Measure Use of Scientific Journals?: A Note on Research Methodologies. Scientometrics. 2008, vol.76, no.1, p. 125-133.
19
アクセス分析のデメリット
フィルタリングの例
(出典:佐藤義則. 動向レビュー:機関リポジトリの利用統計のゆくえ. カレントアウェアネス. 2008, (296), p.12-16. (http://current.ndl.go.jp/ca1666, 2008-11-05参照))
20
• COUNTERでも不十分な例として・・・カレントアウェアネス・ポータルの例を画面に出して説明する
21
• COUNTERでも不十分な例として・・・カレントアウェアネス・ポータルの例を画面に出して説明する
22
謎の大量アクセス
• ソーシャルメディアにおける調査
–シェアされたものも数行しか読まれていない
• 論文タイトルの研究
–?を使うとアクセスは伸びる
–しかし引用は増えない
23
アクセスしても読まない
24
メタデータ 文献本文Google
100 25
Googleから来た利用者が本文までアクセスする割合:
25%
75
「アクセスがあった」
=
「読まれた」?
「アクセスがあった」
≠
「読まれた」?
• タイトル単位
– 利用者に直接聞く
• 冊子単位
– 図書館等での閲覧状況を調査する
– 貸出回数を調査する
• 論文単位
– 被引用数を調べる27
電子ジャーナル以前の「閲読」調査
3.機関リポジトリで公開すると
ジャーナルへのアクセスは
減るのか?
機関リポジトリとは?
29
• 学術機関が、機関で生産されたコンテン
ツを、収集・管理・発信するシステム
(サービス)
• オープンアクセス運動の一翼を担うもの
として2001年頃にあらわれる
• 2004年頃から国内でも普及
• 機関リポジトリ数
–世界全体:2,534
–国内:404
• 収録文献数
–国内:約143万
–2年で40万件以上増
30
機関リポジトリの整備・拡充
出典:IRDBコンテンツ分析システム
(http://irdb.nii.ac.jp/)[3]
• ジャーナル本体のアクセスが減る?
• ジャーナルの購読数が減る?
31
機関リポジトリへの懸念
大丈夫、
減りません
それどころか、
増えます
Science Citation Index
北海道大学
京都大学
投稿
電子ジャーナルサイト(J-STAGE)
アクセスログ
被引用データ
分析
HUSCAP
KURENAI
利用データ
登録
実証実験
45
40.5
44
0 20 40 60 80 100
機関リポジトリ登録
機関リポジトリ未登録
電子ジャーナルアクセス数(中央値)
機関リポジトリアクセス数(中央値)
回
回 回
実験結果:アクセス数
PEER Usage Study
36
• EUの助成を受けて行われた機関リポジト
リに関する大規模実験
• 電子ジャーナル掲載論文を機関リポジト
リにも載せるとどうなるか?
• 電子ジャーナルアクセス数は増える
専門DB
専門DBあった
論文入手
なかった
専門DBあった
なかった
論文入手
専門DBあった
なかった
論文入手
Google 機関リポジトリ
専門DBあった
なかった
論文入手
Google 機関リポジトリ
EJも確認
専門DBあった
なかった
論文入手
Google 機関リポジトリ
専門のDBにないとき機関リポジトリが重要
EJも確認
ビジビリティこそが
王様である
4. 意味のあるアクセスを
増やすには?
意味あるアクセスを増やす2の方法
45
• ビジビリティを高める
• 「意味のない」アクセスを増やす
ビジビリティを高めるには?
46
• 多くの検索サービスと連携する
• 複数のソースで公開する
• 多くの場所からリンクされる
多くのサービスと連携する
47
• CiNii Articles
• Google、Google Scholar
–研究者・学生に使われる場所で見えるように
–ジャーナルプラットフォームで探す奴は玄人=
購読者だけだ!
複数のソースで公開する
48
• サーチエンジンには漏れがある
• 複数のページにあることで漏れが防げる
• 複数のサーチエンジンに含まれていること
の効果もある
多くの場所からリンクされる
49
• リンク元からの流入がある
• サーチエンジンでの順位に影響
「意味のないアクセス」の意義
50
• 機械的アクセスは人間のアクセスの呼
び水
• 機械によるアクセスなしに人のアクセ
スは伸びない
「意味のないアクセス」を増やすには
51
• robots.txtで規制しない
–耐えられないならサーバを増強!
• 必ず本文をテキスト化・コピー許可
–機械が「持ち帰る」ものを用意
–中身を検索できないと人間も来ない
• アクセスだけで全てわかることはないが、アクセスを見なければ何も言えないのも確か・・・といった感じのイメージ図を入れる
52
参考文献
53
1) 佐藤翔. 電子リソースのアクセスログ分析. 情報の科学と技術. 2013, 63(2), p.51-56.
2) 佐藤翔. “ビジビリティの王国人文社会系学術雑誌という秘境”. DHjp No.4 オープンアクセスの時代. 勉誠出版, 2014, p.18-24.
3) Galyani Moghaddam, Golnessa; Moballeghi, Mostafa . How Do We Measure Use of
Scientific Journals?: A Note on Research Methodologies. Scientometrics. 2008, vol.76,
no.1, p. 125-133.
4) Davis, Phillip M.; Price, Jason S. eJournal interface can influence usage statistics:
implications for libraries, publishers, and project COUNTER. Journal of the American
Society for Information Science and Technology. 2006, vol.57, no.9, p.1243-1248.
5) 佐藤義則. 動向レビュー:機関リポジトリの利用統計のゆくえ. カレントアウェアネス.
2008, (296), p.12-16.
6) 佐藤翔,逸村裕,「CiNii-機関リポジトリ連携の有効性の検証」,日本図書館情報学会第58回研究大会,札幌,2010年10月,pp.133-136.
7) 佐藤翔,永井裕子,古賀崇,三隅健一,逸村裕,「機関リポジトリへの登録が論文の被引用数と電子ジャーナルアクセス数に与える影響」,情報知識学会誌,Vol.21,No.3,2011,pp.383-402.
8) Rowlands, Ian; Clark, David; Nicholas, David. PEER usage study: Rondomised controlled
trial results. Publishing and the Economy of European Research, 2012, 38p.