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(21世紀社会デザイン研究学会) マイクロファイナンス機関評価の際の着眼点 -KIVA、BRACウガンダ、CARD MRIに焦点をあてて- 2010年12月5日 日本発の社会貢献 ファンドレイジング研究会

【最新動向】MFI評価の試行 Kiva,BRACウガンダ,CARDの事例から-

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近年マイクロファイナンス分野で優れた業績を示しているKIVA、BRACウガンダ、CARD MRIに焦点をあてて、評価の着眼点を検討し、(イ)貧困削減へのコミット、(ロ)社会変革力、(ハ)アカウンタビリティ、(ニ)持続可能性の4項目について評価を試行する。

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(21世紀社会デザイン研究学会)

マイクロファイナンス機関評価の際の着眼点 -KIVA、BRACウガンダ、CARD MRIに焦点をあてて-

2010年12月5日

日本発の社会貢献

ファンドレイジング研究会

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本稿でとりあげるMF機関(MFI)について

・ KIVA :2005年10月、マット・フラネリー夫妻により設立されたインターネットを利用したMFI。米国の内国歳入法501(C)(3)に基づく免税扱いのNPO。スワヒリ語で「絆」という意味。日本語サイトを立ち上げているKIVA ジャパンは任意組織

• BRACウガンダ: BRACは、バングラデシュに本部をおく国際NGO(Bangladesh Rural Advancement Committee).1972年アベッド氏により創設。2002年のアフガニスタン進出を皮切りに海外展開開始。2006年にウガンダに進出

• CARD MRI:1986年アリップ氏により創設。MRIは、mutually reinforcing institutionsでお互いに補強しあう機関の意味。8機関より構成。借入者数においてフィリピン最大のMFI。MFは、CARD NGO、CARD Bank、Rural Bank of Sto. Tomas (RBST)の3つの機関が提供している

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デビッド・コーテン指摘のNGO進化の段階 (「NGOとボランティアの21世紀」 1995)

第一世代:救援と福祉

第二世代:自立に向けた小規模な地域開発

第三世代:持続可能なシステムの開発

第四世代:地球規模の民衆の開発運動

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第三世代、第四世代における南のNGOの台頭

仮説1:貧困の現場に身をおき、その中から持続可能なシステムを開発・改良した南(途上国)のNGOの方が、北(先進国)のNGOより南の人々に対してより効果的かつ効率的な支援を提供できるのではないか。ドナーからのグラントよりローン+起業+成功体験が、南の人々の貧困からの脱出に明確な道筋を提供するのではないか

仮説2:途上国の人々への直接的なサービス提供における北のNGOの役割は今後ますます縮小し、環境の変化に気づいて革新的変革を成し遂げた北のNGOのみ生き残るのではないか

(参考)マイケル・エドワーズは、国際開発NGOを取り囲む情勢は劇的に変化しており、安定している組織ですら外部の環境の変化に合わせていかなければ仕事を失うだろうと警告(エドワーズ

「フューチャー・ポジティブ-開発援助の大転換」 2006,254)

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本稿でとりあげる3つのMFIにおける仮説の検証(その1)

仮説1との関連: 南のNGOによるMFをツールとする持続的システムの開発・改良と国内外への規模の拡大

●BRACは、2000年代に入り、MFの顧客に、保健や教育、所得向上のための研修・ノウハウの提供するMF+アプローチを開発。アフガニスタン、スリランカ、タンザニア、ウガンダ、南スーダン、シエラレオネ、リベリア、パキスタンに進出。中でも、BRACウガンダは創設後3年余で、顧客10万人を達成 。貧困ライン上下をBRACアフリカ研究所が開発した貧困削減スコアーカードを用いてモニター

●CARD MRIは、90年代後半の顧客離れを踏まえ集団責任システムから個人(家族)責任システムへの移行で業績を拡大し、10年10月までにフィリピンにおける全貧困層580万人のうち、140万人にMFサービスを提供。さらに技術指導・技術協力ベースでカンボジア、ラオス、ベトナム、香港、インドネシアに進出。CARDは顧客に貸出額の段階的拡大方式で貧困脱出を支援。貧困ライン上下をグラミン基金が開発したPPIに基づく貧困削減スコアーカードを用いてモニター

仮説2との関連 : 北のNGOの革新的アプローチ

●KIVAは、インターネットの活用、MFサービスの可視化を通じて支援会員数78万人(現行融資者数49万人)におよぶ新たなファンドレージングに成功するとともに、44万人の途上国の起業家に新たなMFサービスを可能にした。ただし、現場オペレーションはすべて現地MFIに委ね、現地MFIの能力強化を間接的に支援するとともに財務管理状況を綿密にモニター)

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北のイニシアティブ+南の協力(MF標準化への試み) 1.マイクロクレジット・サミット・キャンペーン

●ワシントンDCに本部をおく世界規模でのMF振興のための民間アドボカシー機関。08年11月18日までに、7478機関がキャンペーンの15の委員会のいずれかに所属。3552機関よりアクションプランを受領。

●キャンペーンの主要テーマは、①貧困者を対象、②女性のエンパワー、③財政的に持続可能な機関の立ち上げ、④貧困者とその家族への積極的かつ計測可能なインパクトの4項目

●1997年に2005年までの9年間で1億の貧困家庭にMFを届けるキャンペーンを打上げ

2. MIX Market

● Microfinance Information Exchange の略称で、 MFIに関する情報の標準化を進める民間団体。1896のMFIが10年11月現在登録。地域別、国別、団体別の情報をMIX MARKETといわれるウェブ上に掲載(http://www.mixmarket.org/)。

個別のMFIの実績を確認できるのみならず、そのMFIの国内における他のMFIとの実績の比較、国別、地域別のMFのデータを全体として確認できる。 MIX Marketへの情報の提供と情報公開自体が、MFIの信頼性の証と認識される傾向にある(例えば、KIVAは現地MFIの取引申請にあたって、MIX登録をひとつの目安としている)。

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CARDとBRACウガンダのMFIとしての位置づけ(その1)

-マイクロクレジットキャンペーンの中での位置づけ-

◆上位目標: 14億人の貧困者にMFサービスを届けること

◆現在の目標: (2006年に新たなキャンペーンを打ち上げ)2015年までに1.75億の家庭にMFを提供し、1億の家庭が1日1ドルの貧困ライン(その後1.25ドルに修正)を脱出すること

◆実績: 2007年末時点でのデータを報告した世界の284MFIのランキング(貧困借入者数8490万人をカバー)

①CARD MRI (フィリピン) 貧困借入者数 46万8千人 (女性比率100%) アジア太平洋地区第20位(220MFI中)

(参考)1位 農業・農村開発ナショナルバンク(インド)3895万人(同85%) 2位 グラミン銀行(バングラデシュ) 741万人(同97%) 5位 BRAC(バングラデシュ) 456万人(同99.3%)

②BRAC ウガンダ 貧困借入者数 3万4千人(女性比率100%) サブサハラ・アフリカ 第13位(28MFI中) (参考) 1位 アムハラ・クレジット貯蓄協会(エチオピア)61万1千人(同50%)

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CARDとBRACウガンダのMFIとしての位置づけ(その2-1)

Mix Marketでの位置づけ(2009年末現在。但し、MFI登録数は10年11月現在)

.

融資残高(億ドル)

借入者数

(万人)

一人あたり融資残高(ドル)

MFI登録数

世界 652 9,240 (521.3) 1896

東アジア太平洋

243 1,370 (331) 241

南アジア 76 5,040 (143.7) 321

ラ米 196 1,410 (965.7) 434

欧・中央アジア 74 280 (1854.1) 404

中東北アフリカ 13 260 (434.6) 69

アフリカ 48 800 (333.9) 427

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アフリカにおけるBRACウガンダ(その2-2)

Mix Marketでの位置づけ(2009年末現在。但し、MFI登録数は10年11月現在)

融資残高

(億ドル)

借入者数

(万人)

一人あたり平均融資残高(ドル)

MFI登録数

アフリカ 48 800 (333.9) 427

ケニヤ ①11.1 ①146 (362.3) 29

南ア ②7.3 ②80.5 (1009.7) 14

タンザニア ③5.9 ④23.3 (187.1) 13

ウガンダ ④3.1 ③43.1 (491.6) 28

Centenary bank 1)1.87 1)10.9 1,708 -

BRAC Uganda

5)0.13 2)10.3 125.3 -

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アジアにおけるCARD(その2-3)

Mix Marketでの位置づけ(2009年末現在。但し、MFI登録数は10年11月現在)

アジア 融資残高

(億ドル)

借入者数

(万人)

一人平均融資残高(ドル)

MFI登録数

中国 ①186 ⑤160 (1747.4) 20

インド ②46.1 ①2,660 (144.4) 147

ベトナム ③39.8 ③780 (146.5) 20 バングラデシュ ④23.5 ②2,060 (115.6) 73

カンボジア ⑤8.3 ⑦110 (556.2) 16

フィリピン ⑥5.9 ④270 (276.0) 110 First Valley 1)0.56 5.3 1054.6 - CARD NGO 2)0.46 1)49.7 92.9 - CARD BANK 5)0.31 4)22.8 135.7 -

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BRACウガンダとCARD(BANK、NGO)の実績の推移

(その1)

Mix Marketより作成

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BRACウガンダとCARD(BANK、NGO)の実績の推移

(その2)

Mix Market より作成

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仮説の検証(その2)

1.持続可能なシステム開発とインパクト

・南のNGOが牽引車となっているMFは、グラミン方式を中心に2007年までに、1億の貧困家庭、推定で5億人の貧困者にサービス提供実現

2.地球規模の民衆の開発運動

・アジア最大の3つのMFI(NABRD、グラミン銀行、BRAC)はいずれも南南協力開始

(参考)MFIは世界最大の北の最大手のNGOを凌駕する規模をカバーしている(09年実績比較)

1)MFI世界合計:融資残高652億ドル。借入者数9240万人

2)北のNGO

①WV:収入25.7億ドル②SC:同12.9億ドル、③Plan:同4.68億ユーロ(約632億円)

②チャイルドの数:WV380万人、Plan194万人

③スポンサー数:SC140万人、Plan114万人

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マイクロクレジット・サミットキャンペーンが

MFIに提出を求めるアクション・プランの項目

(www.microcreditsummit.org)

①借入者数

②借入者数に占める女性の割合

③第一回目のローンの時点での貧困借入者数

④貧困計測のツールの使用の有無

⑤貧困借入者の中の女性の割合

⑥初回ローン平均融資額

⑦貯蓄者数

⑧一人当たりの平均貯蓄額

⑨貧困ラインを脱出した貧困借入者の割合

⑩初回ローンを受けた時点での貧困者の貧困ライン脱出者を計測するツールの使用の有無

⑪提供されている金融・ビジネスサービス

⑫自主運営比率(収益での経費をカバーできる割合)

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MIX Market

1.掲載している個別MF情報

①財務データ(総融資残高、借入者数、一人当たりの平均融資残高、貯蓄総額、資産総額、貯蓄者数、資産あたり収入額ほか)及び年毎の実績推移

②組織情報(ミッション、設立年、発展の経緯、課題、責任者連絡先、法的位置づけ、活動内容、法的規制の有無、パートナーシップほか)

2.国別MFIの基本データ

① 国全体のMF情報(ネットワーク、融資・各種サービス提供者、MFIの総数、総融資残高、借入者数、一人当たりの平均融資残高、貯蓄総額、資産総額、貯蓄者数、資産あたり収入額ほか)

② MIXに情報提供したMFIの総融資残高、借入者数他の比較

3.地域別・世界全体の基本データ

・上述の情報の地域別、世界全体としての集計

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MFのステークホルダーは何に注目するのか

1.個人融資者

(1)投資家:①利回り、②リスク(返済率、延滞率、借金帳消し率等)、③現地MFIの組織・財務状況、④社会貢献目的(貧困削減等)

(2)個人サポーター:①誰(途上国の貧困者起業家、現地MFI)を支援するのか、②社会貢献目的(貧困削減等)、③絆・連帯、④リスク(返済率、延滞率、借金帳消し率等)

2.顧客

①金利・返済期間、②インセンティブ(完済による次回ローンの提供等)、③付随するサービス(保健、教育訓練、保険等)、④負担(毎週の集会への出席等)、⑤責任(共同返済義務等)

3.ドナー

①開発への貢献(貧困削減、女性の社会進出等)、②インパクト、③ガバナンス、④透明性

4.規制当局

①組織・財務状況、②(金融機関としての)持続性、③(規制の対象としての)規模

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各ステークホルダーの注目点の整理

①社会貢献、開発への貢献 ⇒ 貧困削減へのコミット

②インパクト、規模、女性の社会進出 ⇒ 社会変革力

③金利・返済期間、透明性(組織・財務状況等)、責任、ガバナンス ⇒ アカウンタビリティ

④リスク(返済率、延滞率、借金帳消し率等) 、インセンティブ、付随するサービス、負担、運営の自立性

⇒ 持続性

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評価の試行

1.1万以上といわれるMFIを差別化し、誰にとってどのような意義があるのかを単純化して示す

2.4項目別の大まかな評価(★★★非常に優れている⇒★★優れているが不安あり⇒★普通⇒▲劣っている)

により、対象MFIがいかなる特徴を有する組織であるのかを概観する

① 貧困削減へのコミット

② 社会変革力

③ アカウンタビリティ

④ 持続性

3.MFIの不安点、留意点の明示

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MFI評価の際の着眼点

1.貧困削減へのコミット

①ミッション、ビジョンの中に貧困削減への強い決意が明記されているか

②貧困度を計測するツールを活用し、事業に反映させているか

2.社会変革力

①顧客の数と伸び、②総融資額とその伸び、③サポーター数の拡大、④女性起業家の顧客に占める割合

3.アカウンタビリティ

①透明性(財務状況、組織情報、年次報告書の発行等)、②延滞・デフォルトを起こした時の説明責任、③MFIの標準化への貢献

4.持続可能性

①返済リスク(返済率、延滞率、債務帳消し率等)、②返済を確実にするシステム、③運営の自立性、④返済を間接的に促すインセンティブ、⑤法的規制の可能性、⑥環境に合わせた組織の構造改革、⑦サービス提供の現地人化、組織化、⑧総合的サービスの提供(保健、教育、保険、訓練、マーケティング)、⑨研究開発、評価の活用、⑩スタッフの育成

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試行1(KIVA のイメージ) KIVA ⇒(寸評)社会的貢献に意義を見出す個人サポーター(利ざ

やを稼ぐ資産運用者を除く)、事業拡大を目指す現地MFI向

①★★★ 現地パートナーMFIとして貧困削減にコミットする機関を選定(事前審査にて、一定期間の貧困者・疎外者への融資活動実績の有無等4条件を最低クリアーする必要あり)

②★★★ 途上国121のパートナーMFIと連携。個人融資者の世界的拡がり実現(78万人の個人サポーターと120以上の現地MFIと49万人以上の顧客(途上国起業家)をリンク)

③★★★ 個別のパートナー毎にリスクを5段階評価、債務管理状況の実態公表(延滞・債務不履行に至るまでのMFIとのやりとり公表)、Mix Marketの活用を推奨

④★★現地パートナーMFIの融資管理がKIVA持続の最大の鍵。パートナーとの取引の「試行」、「一時停止」、「閉鎖」を決定し、リスクを極力回避 (しかし、154のうち約29%の現地MFIが延滞・債務不履行でKIVAとの取引中断・停止に追い込まれている。)

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KIVAの不安点 • 現地MFIの信頼性をどのように確保するのかが課題(KIVAは、厳格な事前審査、テスト期間、一時取引停止、取引停止を規定し、MFIの管理に努めているが、それでも延滞、債務不履行により、一時取引停止、取引停止に追い込まれる割合は全体の約29%に達する)。

(参考)154MFIのうち、仮取引は24件、本取引は、85件、一時取引停止は、12件、閉鎖33件(紛争の影響、ガバナンスの問題、国の規制等原因は様々。平均取引期間44.6ヶ月)。6ヶ月間の延滞で債務不履行となる

・KIVAは、延滞・デフォルトの発生に際して、個人融資者をできるかぎり守るために、債務を延滞したとしても現地MFIに完済を働きかけ、一部でも回収されれば、融資者への返済に努めている。但し、KIVAは融資者との関係で、あらゆる債権の回収を保証しているわけではない。また、20%以上の為替差損が生じた場合、20%を超える部分は融資者が負担することとなる

・KIVAの現地パートナーとなるには、一定の条件(1000人以上の顧客サービス。少なくとも2-3年の貧困層へのローン提供実績、法的団体登録、最低1年の会計監査)をクリアーし、かつ、KIVAによる事前の審査をパスする必要があり、作業負担(transaction cost)が小さくないとの指摘あり。

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試行2(BRAC ウガンダのイメージ)

BRACウガンダ ⇒(寸評)貧困女性起業家向き、南南協力のモデルケース

①★★★MFは金融機関にアクセスできなかった最貧困女性を対象。MFプラス保健・教育・訓練アプローチにより、貧困からの離陸を総合的に支援。貧困削減スコアーカードの導入(参考)による家計の貧困度合いを計測し、業務改善に反映

②★★★MFプラスによる総合的サービスの提供により、わずか3年間でMF借入者数が10万人を超えるまでに業績が急速に拡大(マスターカード基金やBRACアフリカ融資基金からの拠出確保)。南南協力による支援

③★★★年次報告公表、4半期ごとの活動実績公表、外部評価Mix Marketでプロフィールを公表。

④ ★★スタッフの現地人化推進(95%)、保健員巡回サービス網。現在介入のないMFI第4カテゴリーに対する当局からの規制で成長が妨げられる可能性あり

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(参考)BRACウガンダの貧困度の計測

brac net説明を整理

1.貧困削減カードによる計測方法

①10の様々な視点から選択された貧困削減カードの指標を用い(家の屋根の材料、家の壁の材料、子どもの数、世帯主の教育、台所の燃料、TV/ラジオ/カセットの数、蚊帳の数、家族の一員は2セットの衣服を有しているか、家族の一員は最低一足の靴を有しているか、宝石/時計を所有しているか)実態調査

②10の指標の各得点を合計(100点満点)して得点化

2.別途集められた所得データと照らし合わせて、総得点で、貧困の度合いを推定

(例:貧困度数が20-24/100であれば、76.1%の確率で、1日1ドル以下の貧困ライン以下であると推定)

3.フィールド・スタッフが定期的にデータ収集。特定の貧困家庭の貧困ラインからの上下をモニター。ローン供与方針等に反映

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BRACウガンダの不安点

・ 政府・中銀が第4分類のMFIの規制に乗り出すのではないか。

(注)ウガンダ中央銀行は、金融機関の持続可能性を重視し、現在資産基準や担保が適用されないカテゴリー4のMFIの規制の可能性を検討し始めており、MF先進国であるバングラデシュにおけるマイクロクレジット規制当局設立の経験に学ぼうとしている。仮に、BRACが第3カテゴリーのMDIに分類されれば、貯蓄を受け付けることができるかわりに、ローンには担保に相当するデポジットが必要になるほか、中銀の介入が可能になる

・ 5人組共同責任方式は、現在のところ機能しているが、融資額の上昇が進めば、共同責任方式が崩壊する可能性がある

・ 一時的な外部資金が流入し、規模の拡大を支えているが、いずれ財政面・運営面の自立が求められる

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試行3(CARD MRIのイメージ)

CARD MRI ⇒(寸評)土地なし貧困女性、及び貧困から成長へのレベルアップを目指す起業家、ならびにCARDの技術支援を期待するMFI向き

①★★★段階式貧困からの離脱を支援。グラミン基金のPPI(貧困改善指数)による家計の貧困度合いを計測

②★★★借入人数が140万人を突破。グラミン型改良と個人責任方式採用により、借入人数が90年代後半の減少から拡大に反転。技術指導を中心に海外展開(カンボジア他4カ国)開始。

③★★年報、Mix Marketで融資情報等公開。8つの機関が相互に補強しあう構造。組織の変化、組織間のデマケと連携が外部からはわかりにくい

④★★★利用者のニーズ・環境の変化に合わせた組織の改革(規制のかかるCARD BankとかからないCARD NGOの並立)、リスク軽減の保険。Bankは顧客の共同所有

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CARDの不安点

・ 国内の組織の構造改革が急速に進んでおり、8つの相互互助機関の役割が外部からはみえにくい状況にある。特にガバナンス構造の説明は工夫の余地あり

・ 海外進出の際のパートナーは必ずしも強い基盤をもった組織ではないため、フィリピン国内で成し遂げた成果を海外でも維持できるのか不透明。また、国外への進出はあくまで要請ベースで技術指導を中心にした支援にとどまっており、今後の展開が注目される

・ 規模の拡大(580万人の貧困層へのMF到達を目指している)のためには、さらなる資金調達が必要であるが、低利の融資確保には苦戦しており、09年初めてMFボンドの発行に踏み切った

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日本国内でMF支援を思い立った時の選択肢(その1)

1.国際機関のMFボンド購入

(利点)規模、利回り、社会貢献

(弱点)MFの到達先がみえない

(内容)09年11月に国際金融公社(IFC)が第一回目のマイクロファイナンス・ボンドを売りだし、約250億円を調達。10年9月第二回目の約270億円の発行(予定)。両方とも大和証券グループが日本の個人投資家、法人に販売。第二回目の利率は、豪ドルで年4%。南アフリカ・ランドで年5.7%

2.カンボジア1、2,3商品購入

(利点)到達先がみえる、社会貢献、利回り

(弱点)選択肢が限られる、債権回収にリスクあり

(内容) 日本のNGO Living in Peace (LIP)は、金融業者であるミュージック・セキュリティーズと連携して2010年1月よりカンボジアMFIに向け、MFファンド「カンボジア1」「同2」(一口3万円。10年6月時点での貸付残高82万ドル)で現在「同3」を募集中(目標額1056万円。現在600万円調達)。ベトナム進出、現地通貨によるMFサービス開始も視野に入れている。

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日本国内でMF支援を思い立った時の選択肢(その2)

3.KIVAサイトから融資(カード引き落とし)

(利点)現地MFIの選択肢多し、到達先がみえる、資金協力実行の抵抗感が少ない(一口25ドルから。ローンなので、原則投入資金は1年程度をめどに返済される)

(弱点)現地MFIのパフォーマンス如何がKIVAとしての業績に直結。厳しい資金管理を現地MFIに求めれば離

脱のおそれがあり、一方、管理を甘くすれば、返済率に影響する(6か月の延滞でデフォルトを宣言)。利息はつかない。

(内容)KIVAサイトのほか、日本人向けに日本語サイトがKIVA ジャパンによって立ち上げられており、利便性は向上。さらなる規模拡大が課題

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今後に向けての検討

1.MFIの組織情報、財務状況の標準化が進行しているが、1万以上といわれるMFIに支援者として、あるいは、顧客として、あるいは規制管理当局として関わろうとする時に、その組織がいかなる特徴を示し、いかなる不安を抱えているのか、誰にとって魅力的な組織であるのかを一目で概観できることが重要

2.本稿の評価の着眼点を踏まえた評価手法を精緻化したうえで、あらゆるMFIについて、次頁のとおり第3者が簡単にアクセスできる概観評価情報として公開できることが望ましい。

3.日本のMF支援者を掘り起こすうえでは、例えばKIVA ジャパンのサイトと本手法を用いた評価サイトをリンクさせ、取引パートナーとなっている121のMFIすべての概観把握評価を実施するような活用方法が考えられる(年間30機関程度を対象に整備)

4.次のステップとして、英文での発信を視野に入れる

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MFI評価情報の公開(イメージ)

BRAC ウガンダ 2006年発足

貧困削減コミット

★★★

持続性

★★

社会変革力

★★★

アカウンタビリティ

★★★

留意点 ①中銀の法的規制が課される可能性

② 5人組共同責任方式から個人システムへの移行

③ 外部資金の急速な流入が止まった以降の安定的発展の確保

・貧困女性起業家向き

・南南協力のモデルケース

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