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認知症在宅ケアの新たな取り組み -初期集中支援を中心に- 医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック 遠矢純一郎 28回東京精神科病院協会学会 ランチョンセミナー 2014.10.28

第28回 東京精神科病院協会学会 20141028

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第28回 東京精神科病院協会学会 20141028にて講演した 「認知症在宅ケアの新たな取り組み   −初期集中支援を中心に−」 のスライド資料です。

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Page 1: 第28回 東京精神科病院協会学会 20141028

認知症在宅ケアの新たな取り組み -初期集中支援を中心に-

医療法人社団プラタナス

桜新町アーバンクリニック

遠矢純一郎

第28回東京精神科病院協会学会

ランチョンセミナー 2014.10.28

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2

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周辺症状 行動心理症状(BPSD)

幻覚

妄想 せん妄

抑うつ

徘徊 暴言暴力

異食 不眠

性格・ 素質

環境・ 心理状態

中核症状

脳細胞のダメージ

記憶障害 理解・判断力障害

実行機能障害 見当識障害

認知症の病理

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認知症の治療

薬物治療 認知症治療薬

抗精神病薬

ケアによる対応

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海外の認知症への国家戦略

国名 高齢化率 認知症数 国家戦略名 開始時期

オランダ 15% 25万人 認知症統合ケア プログラム(第2期)

2004

フランス 17% 80万人 プラン・アルツハイマー2008-2012(第3期)

2001

イギリス 17% 85万人 国家認知症戦略 2009

日本 23% 462万人 なし

オランダ 認知症デイケア フランス 国立病院老年科病棟 イギリス メモリーサービス

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オランダの家庭医(GP)センター

• オランダは各地域に必ずGP(家庭医)が配置され、 GP1人あたり2-3千人程の住民の健康や疾病管理を行なう

• 地域医療センターには、GPや看護師、ソーシャルワーカーなどが居て、協業しながら地域医療を支える基地になっている

GP向け

診療マニュアル

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オランダの認知症の統合ケア Geriant

• 初期集中支援に始まり、最期まで切れ目無いサービスを提供

• 中心的役割を果たすのが「ケースマネージャー」

*認知症ケアの経験を持つ看護師で、専門的な研修を習得

*その方が生涯を終えるまでずっと担当する

• 介護者への統一した教育マニュアルがある

認知症のケースマネジメントを中心に「コーディネートされたケア」を提供

介護者向け

教育マニュアル

ヘリアント

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Odensehuis 認知症専用デイホーム

• 認知症初期の方や家族、友人、近隣の人らが自由に 出入りし、絵を描いたり情報交換したりして過ごす

• 認知症の人も支援を受ける側だけでは無く、 一緒に買い物したり昼食を作ったりする

• 皆が自分に出来ることをして支え合うのが特徴

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認知症専用の小規模ホーム WarmThuis De Hulst

70年代から身体拘束を行わず、

自宅の家具やペットを持ち込むなどして、認知症の方の気持ちに沿ったケアを行ってきた

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ケアファーム Green care farming

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アルツハイマー・カフェ • オランダ全土の200カ所近くのアルツハイマー カフェが、月1回程度定期的に開催

• 認知症者と家族、友達、地域住民、専門職など 誰でも参加でき、和やかに集うカフェ

• 2時間程度、おしゃべり、レクチャー、音楽など

– 認知症者と家族のエンパワーメント、仲間作り

– 「治療」の強調ではなく、感情的社会的交流を促す

– 認知症に対する知識の普及

– 認知症に向き合う

• Alzheimer Nederlandによる ガイドライン、運営マニュアルの提供 教育プログラム、コーディネーターの教育

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

アルツハイマーカフェの数

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12

1. 仕組みの開発・多様化

2. ケアラーの教育システム

3. ケアラーの健康管理

4. 国内全域のMAIA(ワンストップ相談窓口)の設置

5. ケースマネージャーの配置

6. 在宅ケアの強化

(在宅看護以外の新たな多職種チーム) 7. Domotique(ホームオートメーション)の開発

8. 告知から最期までのケアの仕組みの作成と適用

9. 専門職への新しい支払い体系の開発

10. 認知症情報カードの作成

11. 国内全域のメモリーセンターの設置

12. 国内27地方にメモリー資源研究センターを設置

13. メモリーセンターの強化

14 .医原性事故(薬害)の監視

15. 薬物療法の適正使用

16. 行動障害に特化したケアユニットを設置

17. 認知症専門認知行動ユニットを設置

18. 若年性認知症の居住施設

19. 若年性アルツハイマーのセンター

20. 専門職の開発

21. 研究ネットワークの創出

22. 臨床研究と非薬物療法の評価法改善

フランス認知症国家戦略 44の施策

23. 博士・ポスドクの採用

24. ケア・教育・研究の3つを両立できる人材の登用

25. 神経心理学研究と社会学研究

26. 革新的研究の支援

27. 研究の方法論の開発支援

28. 画像研究(人体用11.7テスラMRI) 29. コホート研究

30. 遺伝子研究

31. ネズミキツネザルのゲノム解析

32. 臨床医に対する臨床疫学教育

33. 官民連携

34. 疫学研究

35. 電話相談窓口の設置 Allo France Alzheimer

36. 国内27地方ごとの計画実施の進捗会議の開催

37. 国民への啓発活動

38. 倫理を考える場

39. 施設処遇に対する法整備

40. 自己決定をテーマとした公開討論

41. 研究の情報公開

42. EUの優先課題へ

43. EUでの研究促進

44. 欧州会議の開催(2008年秋)

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13

UCC : unité cognitivo-comportementale 認知作業療法士によるその方にあった生活支援

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イギリスの認知症国家戦略 < 5つの重点課題 >

1. メモリーサービスによる初期集中支援

2. 介護施設でのケアの充実

3. 急性期病院での対応改善

4. 抗精神病薬を減らす

5. 家族・介護支援者へのケア

14

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•それを実現するのが、多職種チームによる キュアとケアの包括的な提供

• 認知症への理解のある社会、地域作り

• 医療費介護費はすでにパンク状態につき、 低コストで良質なケアを考える

• 抗精神病薬の使用を減らし、ケアによる対応を

• そのためにも適切なタイミングで医療やケアに つなげられるような体制作りを行う

• 認知症者と介護者のQOLを維持しながら、 できる限り住み慣れた家での暮らしをサポート

オランダ・フランス・イギリスの 認知症施策に共通していたこと

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認知症の社会的費用 2012年 イギリス

認知症 70万人

0

4

8

12

16

20

がん 心疾患 脳卒中 認知症

£10億 (=1.7兆円)

英国アルツハイマー病協会 2012

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認知症数

85万人

80万人

25万人

イギリス

フランス

オランダ

462万人 2012年

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認知症の入院患者数の推移

160,000

170,000

180,000

190,000

200,000

210,000

220,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

1996 1999 2002 2005 2008 2011

認知症 統合失調症

精神科病院での認知症入院患者の平均在院日数 695.3日

認知症の入院が

増えている

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厚労省から国の認知症施策の基本方針が発表

「今後の認知症施策の方向性について」 平成24年6月18日

「かつて私たちは認知症を何も分からなくなる病気と考え、徘徊や大声を出すなどの症状だけに目を向け、認知症の人の訴えを理解しようとするどころか、多くの場合、認知症の人を疎んじたり、拘束するなど不当な扱いをしてきた。」

このプロジェクトは「認知症の人は、精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方を改め、認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会の実現を目指している

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認知症ケアのポイント

住み慣れた自宅や地域での生活を続ける

ことが、症状緩和や予後の改善につながる

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認知症施策推進5か年計画 (2013年-2017年 オレンジプラン)

1.標準的な認知症ケアパスの作成・普及

2.早期診断・早期対応 「認知症初期集中支援チーム」の設置

早期診断等を担う医療機関を500カ所整備 など

3.地域での生活を支える医療サービスの構築 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定

精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援 など

4.地域での生活を支える介護サービスの構築

5.地域での日常生活・家族の支援の強化

6.若年性認知症施策の強化

7.医療・介護サービスを担う人材の育成

1.標準的な認知症ケアパスの作成・普及

2.早期診断・早期対応

認知症初期集中支援チームの設置 早期診断等を担う医療機関を500カ所整備 など

3.地域での生活を支える医療サービスの構築 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定

精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援 など

4.地域での生活を支える介護サービスの構築

5.地域での日常生活・家族の支援の強化

6.若年性認知症施策の強化

7.医療・介護サービスを担う人材の育成

21

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認知症ケアの流れを変える

認知症の進行 認知症の初期

危機的状況

精神科入院や 施設入所へ

早期診断・介入

自宅での生活を出来るだけ長く

これまで これから

さらに悪化 予後の改善 22

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認知症初期集中支援チーム モデル事業が目指すもの

23

認知症になっても、本人の意思が尊重され、出来る限り

住み慣れた地域の良い環境で暮らし続けるために、

認知症のひとに「初期集中支援チーム」が訪問し、

適切な診断や早期対応に向けた支援体制を構築する

「初期」とは?

1.認知症の発症後のステージとしての初期

2.認知症のひとへの関わりの初期(ファーストタッチ)

平成25年7月4日 厚労省老健局

「認知症対策等総合支援事業の実施について」

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訪問支援対象者の定義

24

40歳以上で、在宅で生活しており、かつ認知症が疑われる人

又は認知症の人で、以下の1,2のいずれかに該当する者とする

1.医療サービス、介護サービスを受けていない者、または

中断している者で以下のいずれかに該当する者

(ア) 認知症疾患の臨床診断を受けていない者

(イ) 継続的な医療サービスを受けていない者

(ウ) 適切な介護保険サービスに結び付いていない者

(エ) 診断されたが介護サービスが中断している者

2.医療サービス、介護サービスを受けているが、認知症の

行動・心理症状が顕著なため、対応に苦慮している

⇒ 地域包括支援センターが対象者を選定

平成25年7月4日 厚労省老健局

「認知症対策等総合支援事業の実施について」

受診拒否

認知症の方

その疑いの方

支援困難

介護拒否

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初期集中支援チームとは

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チーム員の配置場所

市町村とする。配置は地域包括支援センター、訪問看護ステーション、診療所等に委託可能とする

チーム員の人員配置要件

以下の3項目をすべて満たすものとし、地域の事情によって複数以上の専門職にて編成する

1.保健師、看護師、作業療法士、介護福祉士など医療福祉に

関する国家資格を有する者

2.認知症のケア従事歴3年以上または在宅ケア実務経験3年以上

を有する者

3.初期集中支援チームに必要な研修を受講し、試験に合格した者

上記に加え、チーム員をバックアップし、認知症のコンサルテーション機能を有する専門医を確保すること

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初期集中支援の流れ

初期集中支援 多職種チーム

認知症早期

自宅での

生活が継続 • 医師による早期診断につなげる

• 在宅での具体的ケアの提供と指導

地域ケアマネ

に引き継ぐ

6か月後

26 チームメンバー会議

自宅での支援

チームメンバー会議 精神科医や認知症専門医を含む多職種チーム員が、訪問調査のアセスメントをチェックし、具体的な支援を検討する

看護師、作業療法士、

精神科ソーシャルワーカー等

訪問看護ステーションを

中心とした取り組み

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初期集中支援チーム サービスの流れ

27

ケアマネージャー等へ引き継ぎ

アクション・プラン立案と実施

チーム員会議(初回、中間、まとめ)

初回家庭訪問の実施・アセスメント

訪問実施対象者の把握

フィード

バック

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認知症初期集中支援事業の取り組み

28

苫小牧市

(北海道)

仙台市

(宮城)

白鷹町

(山形)

福島市

(福島)

前橋市

(群馬)

敦賀市

(福井)

長野市

(長野)

宇治市

(京都) 神戸市

(兵庫) 新見市

(岡山)

宇部市

(山口)

荒尾市

(熊本)

南大隅町

(鹿児島)

世田谷区

(東京)

平成25年度は厚労省の事業として14拠点が取り組んでいる。

認知症疾患医療センター

総合病院

精神科病院

市役所

診療所

診療所+訪問看護ST

市役所

地域包括支援センター

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事業スキームと実施状況

29

位置付け 介護保険法 地域支援事業

平成25年度は全国14か所でモデル事業として実施

事業実施者 自治体名 エリア内人口

訪問事例数

訪問のべ件数

1事例あたり訪問件数

困難事例割合

診療所+訪問看護ST 世田谷区 882,840 46 129 2.80 32.6

診療所 福島市 44,059 30 44 1.47 40.0

認知症疾患医療センター 荒尾市 55,381 17 27 1.59 88.2

病院(精神科) 白鷹町 15,307 14 25 1.79 50.0

病院(総合病院) 南大隅町 8,639 18 52 2.89 27.8

地域包括支援センター

苫小牧市 174,221 19 115 6.05 21.1

前橋市 340,945 18 32 1.78 61.1

敦賀市 68,300 20 59 2.95 40.0

長野市 385,150 32 107 3.34 68.8

宇治市 192,188 35 72 2.06 42.9

神戸市 102,344 18 33 1.83 38.9

新見市 32,852 29 72 2.48 51.7

市役所本課 仙台市 62,608 4 4 1.00 100.0

宇部市 172,377 46 164 3.57 63.0

計 2,454,603 346 935 2.70 48.8

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世田谷区のプロフィール

30

概況 平成24年10月1日現在

総人口 860,456人

65歳以上人口 163,083人

高齢化率 18.95%

地域包括支援センター数 27カ所

要支援・要介護認定者数 32,907人

うち認知症高齢者日常生活自立度Ⅱ以上 17,830人

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チーム体制図(平成25年度)

31

成城リハケアクリニック

訪問看護ステーション 看護師x2

医師x3

看護師x2

PTx3

OTx2

桜新町アーバンクリニック

在宅医療部

訪問看護ステーション

看護師x2

医師x2

OT x1

世田谷区(本庁) ‐地域福祉部

‐介護予防・地域支援課

世田谷区(5ブロック) ‐総合支所

‐保健福祉課

地域包括支援センター

世田谷・北沢・玉川エリア

x19か所

砧・烏山エリア

x8か所

精神科専門医x1

委託 委託 支援・指導

全事例数

46件

33件 13件

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訪問対象者の内訳

32

実訪問数=46件

本人 12%

家族 53%

民生

委員 17%

近隣

住民 2%

医療

機関 4%

その

他 12%

男性 24%

女性 76%

性別 60

代 2% 70

代 29% 80

代 65%

90

代 4%

年齢別

独居 37%

夫婦

のみ 37%

その

他 26%

世帯状況 対象者の 把握ルート

平成25年度

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訪問対象者の内訳

33

実訪問数=46件

未利

用 91%

かつ

て利

用 2%

利用

中 7%

介護保険

軽度 59%

中等

度 37%

重度 4%

認知症の

重症度

困難 33%

非該

当 67%

困難事例

未利

用 54%

かつ

て利

用 15%

利用

中 31%

認知症

専門医療

平成25年度

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認知症初期集中支援サービス

34

認知症のアセスメントと評価を行い、医療や介護につなげる、生活支援を行う

-具体的な支援内容-

認知症のご本人への治療、支援

ご家族・介護者への教育的支援 認知症に対する理解、心理教育、介護サービスの活用

認知機能が比較的保たれているうちに準備をしておく

本人の権利擁護と意思決定支援

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地域包括支援センターの役割

チーム員の役割 (世田谷区モデル事業の場合)

35

生活状況の把握、身体機能、認知機能のアセスメント

認知症の正しい理解に向けての支援、心理的サポート

医療機関受診への支援

家族の介護負担やその原因を確認

生活上の課題の整理とアセスメント

介護保険の利点を理解するための支援

必要な介護保険サービスのアセスメント

インフォーマルなサポートの必要性のアセスメント

金銭管理上の課題整理と必要な支援のアセスメント

家族への対応方法のアドバイス

チーム員の役割 (約6ヶ月間)

対象者の把握 対象者の選定 初回訪問調整 必要時同行訪問 チーム員との連絡 チーム員会議への出席

・介護保険の制度説明と導入支援

・インフォーマルサポート体制の構築

・事後フォロー ・モニタリング

在宅生活

の継続

・地域の関係機関との調整、連携

・権利擁護事業や成年後見制度の案内

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「なぜそういう行動を するのか?」を考える

• どのタイプの認知症?

• 何の機能障害が生じているか?

• 残存する機能は?

認知症のケア

中核症状

周辺症状 行動心理症状

• 買い物が出来ない

• 料理が出来ない

• 大切なものの管理が出来ない

• 無関心、無気力、うつ傾向

• もの取られ妄想

• 徘徊、夜間せん妄

• 入浴・食事・外出を拒否する

認知機能の評価により、出来るだけ自立した

生活を送るにはどのような支援が必要かを検討

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専門チームによる認知症アセスメント

37

認知症の総合アセスメント

認知症疾患、認知機能

身体の状態、生活機能

行動・心理症状、社会的状況

DASC 21 地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート

DBD13 認知症行動障がいスケール短縮版

Zarit 8 介護者の負担評価尺度

認知機能と生活機能を総合的に評価する

行動心理症状(BPSD)の有無と程度を評価する

介護者の身体的心理的負担や社会生活への支障を評価する

短時間に効率的で網羅的なアセスメントを実施

Page 38: 第28回 東京精神科病院協会学会 20141028

初回訪問アセスメント 1

38

DASC 21 (地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート) 1 財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか

記憶 近時記憶

2 5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか

3 自分の生年月日がわからなくなることがありますか 遠隔記憶

4 今日が何月何日かわからないときがありますか

見当識

時間

5 自分のいる場所がどこだがわからなくなることはありますか 場所

6 道に迷って家に帰ってこられなくなることはありますか 道順

7 電気やガス、水道が止まったときに、自分で適切に対処できますか 判断・問題解決

問題解決 8 一日の計画を自分で立てることができますか

9 季節や状況に合った服を自分で選ぶことができますか 社会的判断力

10 ひとりで買い物に行けますか 家庭外のIADL

買い物

11 バスや電車、自動車などを使ってひとりで外出できますか 交通機関

12 貯金の出入れや、家賃や公共料金の支払いはひとりでできますか 金銭管理

13 電話をかけることができますか 家庭内のIADL

電話

14 自分で食事の準備はできますか 食事の準備

15 自分で薬を決まった時間に決まった分量をのむことはできますか 服薬管理

16 入浴はひとりでできますか

身体的ADL

入浴

17 着替えはひとりでできますか 着替え

18 トイレはひとりでできますか 排泄

19 身だしなみを整えることはひとりでできますか 整容

20 食事はひとりでできますか 食事

21 トイレやお風呂などまでの移動はひとりでできますか 移動

認知症状

IADL

ADL

Page 39: 第28回 東京精神科病院協会学会 20141028

初回訪問アセスメント 2

39

DBD 13 (認知症行動障害尺度アセスメントシート)

1 同じことを何度も何度も聞く 記憶障害

2 よく物をなくしたり、置き場所を間違えたり、隠したりしている 記憶障害

取り繕い反応

3 日常的な物事に関心を示さない アパシー

4 特別な理由がないのに夜中起き出す 睡眠障害

5 特別な根拠もないのに人に言いがかりをつける 興奮・易怒性

6 昼間、寝てばかりいる 睡眠障害

7 やたら歩き回る 多動・不安

8 同じ動作をいつまでも繰り返す 多動・常同行動

9 口汚くののしる 易怒性

10 場違いあるいは季節に合わない不適切な服装をする 見当識障害 実行遂行障害

11 世話をされるのを拒否する 自己認識障害

12 明らかな理由なしに物を貯め込む 実行遂行障害 記憶障害

13 引出しやタンスの中身を全部出してしまう 多動・興奮

Page 40: 第28回 東京精神科病院協会学会 20141028

初回訪問アセスメント 3

40

Zarit 8 (介護負担尺度アセスメントシート)

1 患者さんの行動に対し、困ってしまうと思うことがありますか

2 患者さんのそばにいると腹が立つことがありますか

3 介護があるので家族や友人とつきあいづらくなっていると思いますか

4 患者さんのそばにいると、気が休まらないと思いますか

5 介護があるので自分の社会参加の機会が減ったと思うことがありますか

6 患者さんが家にいるので、友達を自宅に呼びたくても呼べないと思ったことがありますか

7 介護を誰かにまかせてしまいたいと思うことがありますか

8 患者さんに対して、どうしていいかわからないと思うことがありますか

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チーム員会議

41

第3回 第2回 第1回

アクション

プラン

情報収集の結果から

医師による判断や見

立ての助言をもらう

今後のサービス提供

内容についての検討

と役割分担

個別的なケアに関す

る助言と引継ぎ

判断・見立て 判断・見立て アクション

プラン 実践ケア提案 実践ケア提案

多職種によるチーム員会議

医療・生活・経済状況・居住環境などの視点からのアセスメント

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アクション・プランの目標

42

生活を支える

環境整備

人的整備 今後の予測と理解

意思決定支援

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初期集中支援の実際

43

NHK ハートネットTV シリーズ認知症(3) 検証・オレンジプラン

-在宅支援の最前線(桜新町アーバンクリニック)- 2013/07/03

Page 44: 第28回 東京精神科病院協会学会 20141028

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H24年度の実施状況 2012.10-2013.02

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紹介元

認知症診断

かかりつけ医

専門医受診歴

介護保険導入

認知症テスト

診断名 認知症 重症度 CDR

具体的支援内容

Case 1 86,M 独居

地域包括

あり ○ ○ ○ MMSE

28 レビー小体型 1 軽度

住宅改修、本人への教育、意思決定支援

Case 2 79,F 独居

診療所

あり ○ ○ ○ MMSE

20

アルツハイマー型

1 軽度

身体疾患の悪化に対して、在宅医療の導入

Case 3 61,M 独居

地域包括

なし × × × HDS-R

18

アルツハイマー型

3 重度 介護保険導入、家族教育にて家族が同居することに

Case 4 82,M 地域

包括 なし ○ × ○

MMSE

27

アルツハイマー型

1 軽度 介護保険区分変更、介護サービスの導入、家族教育

Case 5 69,F 地域

包括 なし ○ ○ ○

MMSE

26 双極性障害

非認知症

精神科担当医への助言、 認知症ではなかった

Case 6 87,F 施設

在宅医

あり ○ ○ ○

MMSE

14

アルツハイマー型

1 軽度 家族、老人ホームスタッフへの教育、在宅医への助言

Case1) 86歳、男性、独居、レビー小体型認知症

2年前から発症、1年前に診断、水道や火元の止め忘れや運動障害

・ 認知症状 ⇒ 病気への理解、事前指示書などの意思決定支援

・ 生活支援 ⇒ 独居の不安に対して、電話やメールによる随時対応

住宅改修(自動止水蛇口、火元にタイマー)で自宅生活を維持

・ パーキンソン症状 ⇒ 専門医による治療、訪問リハビリの導入

具体的な支援内容 抽出された課題

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初期集中支援の課題と問題点

対象者の抽出

• 初期認知症の定義が不明

• 地域でどうやって初期認知症を見つけるか

専門チームの人材確保、ツールや教材の統一化

• 認知症ケアに詳しい看護師、作業療法士やPSWの不在

• 診断会議に欠かせない認知症専門医、精神科医の確保

• アセスメントツールやケアプラン作成、家族指導のための

標準的マニュアルの不在

地域包括ケアに関わるスタッフへの研修・教育

• 在宅医、かかりつけ医、看護師、地域包括支援員の

認知症ケアに対する知識不足、教育研修体制の不備

• 地域のケアマネや介護士、家族への効率的な認知症教育

継続的支援、地域リソースの充実

• 初期集中支援以降の継続的な支援体制

• 認知症の方のペースに合わせたデイサービスやグループホームの不足

急性増悪期への対応、継続的支援の必要性

• 症状増悪時にアウトリーチする認知症専門医の必要性

• 初期だけではなく、その後も継続的な支援を行える体制作り

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モデル事業の活動へのアウトカム評価

• アウトカム評価 実績データより

• 医療機関受診につながった事例数

• 介護保険サービスにつながった事例数

• 初期集中支援チームが関与した事例の支援目標への達成度

• 困難事例の介入事例数と解決事例数

• 認知症の行動・心理症状があっても、在宅医療が継続できた事例数

• 認知症に関する地域での普及啓発の取り組み実績

• 介入の前後比較で評価

• 本人の状態像:DASC、DBDのスコア

• 家族の介護負担感:Zarit8項目のスコア

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英国認知症施策のアウトカム

5年間の施策の最終年(2014)監査において、サービス対象者や介護者に対し、9つの質問を使って改革の達成度を確認する

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1. 私は、早期に認知症の診断を受けた

2. 私は、認知症について理解し、それにより将来についての決断の機会を得た

3. 私の認知症、ならびに私の人生にとって最良の治療と支援を受けられている

4. 私の周囲の人々、特にケアをしてくれている家族が十分なサポートを

受けられている

5. 私は、尊厳と敬意を持って扱われている

6. 私は、私自身を助ける術と周囲の誰がどのような支援をしてくれるかを知っている

7. 私は、人生を楽しんでいる

8. 私は、コミュニティの一員であると感じる

9. 私には、周囲の人々に尊重してもらいたい自分の余生のあり方があり、それが叶えられると感じられている

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これからの認知症ケアパスの概念

初期集中支援 多職種チーム

認知症疑い 自宅での生活が継続

認知症疾患医療センター

50

気づき 急性 増悪期

かかりつけ医

確定診断・日常診療

認知症専門医

ケアマネージャー 通所サービス

老健施設など

増悪時対応

精神科病院

日常診療

短期入院

引継ぎ

医療分野

介護分野

気づき~診断まで 日常在宅ケア 急性増悪期 日常在宅ケア

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Contact :

遠矢純一郎 jtoya [email protected]

医療法人社団プラタナス

桜新町アーバンクリニック