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国立公園とジオパークの連携によ る自然環境の保全と活用の推進 目代邦康(公益財団法人 自然保護助成基金) 2015.1.10 「ジオパークでつながる人と地域」 プラザヴェルデ 沼津

国立公園とジオパークの連携

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国立公園とジオパークの連携による自然環境の保全と活用の推進

目代邦康(公益財団法人 自然保護助成基金)

2015.1.10 「ジオパークでつながる人と地域」        プラザヴェルデ 沼津                    

自然環境の保全プログラム● 国立公園

– 1872年– アメリカ合衆国で誕生

● ジオパーク– 1997年– ヨーロッパで誕生

国立公園の誕生

● 1832年:アーカンソー州ホットスプリングス保護区.

● 1864年:ヨセミテ渓谷を公的利用やレクリエーションのために保護.州立公園.1890年国立公園化.

● 1872年:イエローストーン国立公園の設立.

● 「風景,自然,史跡,および野生動物を保存すること」

キリスト教的世界観における「開発」と「保護」

● この霊域はすべての人類、すべての生物に自由と幸福を与えるために神が創造されたもので、決して私有物にしたり、少数の利益のために開発すべきものではない.

● この地を国民のために永久に保存するには国立公園とすることが適当.

東(1948)「アメリカ国立公園考」淡路書房

日本にも国立公園を● 1923(大12)年:内務省衛生局により16の公立公園候補地が選ばれる.

● 1931(昭6)年:国立公園法.● 1934(昭9)年:瀬戸内海,雲仙,霧島を指定.

日本の国立公園制度の成立● 風光明媚な既存の観光地が指定される.● 外国人観光客の誘致,外貨獲得(1929年世界恐慌,

1931年満州事変,1933年国際連盟脱退).

● 荒廃した名所旧蹟の国家的な修復と大景勝地の保全,遊覧所の拡充,交通機関の利便化(村串,2005)

● 自然の風景地を核として,場所の伝統や文化のauthenticity(真実性)が作り出される制度(荒山,1995)

多様化する日本の国立公園の意義● 黎明期:日本を代表する景観を持つ観光地のリスト.

● 戦時中:「国民精神の涵養,鍛錬,体力向上」の場.→レクリエーション機能.

● 戦後~現代:優れた自然の風景地の保護.生物の多様性の保全に寄与.

→国家が保護・管理の責任を負う.

→国家による国家/国民のための公園「制度」

世界遺産の誕生● イエローストーン国立公園制定100周年.アメリカ世界遺産トラスト構想.

● 1972年 国連人間環境会議(ストックホルム会議)で世界遺産条約成立.

● 人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」

→「国」から「人類」へ

→Local から Global へ

自然保護の国際問題化

年号 組織・制度

1867年 イーストライディング海鳥保護協会設立

1872年 イエローストーン国立公園 世界最初の国立公園

1890年 ヨセミテ国立公園

1895年 ナショナルトラスト設立

1900年 アフリカの野生動物・鳥類・魚類の保存条約

1946年 国連教育科学文化機関(UNESCO)設立

1948年 国際自然保護連合設立

1965年 アメリカ世界遺産トラスト構想

1971年 人間と生物圏(Man and Biosphere)計画設立 BR

1972年 国連人間環境会議

1972年 世界遺産条約

1980年 日本でBRに4ヶ所推薦

1992年 世界遺産条約日本批准

1997年 ユネスコ地球科学部がジオパーク提唱

2008年 日本にジオパーク誕生

Only One Earth と Sustainable development

● 1972年 国連人間環境会議(ストックホルム会議).「かけがえのない地球(Only One Earth)」.国連環境計画UNEP設立.

● 1982年 UNEP管理理事国特別会合(ナイロビ会議)

● 1992年 環境と開発に関する国連会議(リオサミット,地球サミット).→リオ宣言(持続可能な開発).アジェンダ21,気候変動枠組み条約,生物多様性条約.

持続可能な開発● IUCN(世界自然保護連合)(1980)「World Conservation

Strategy(世界自然保護戦略)」で概念の提示.(UNEP, WWF)

● 国連 Brundtland委員会(1987)「Our Common Future」.

– 「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」 「無限な成長」批判

– 環境問題と経済問題(南北問題)の接近● リオサミット(1992)でアジェンダ21に盛り込まれる.

● 日本が「ESDの10年」(2005~14)提唱(2002)

● 環境,開発,貧困,平和,人権,ジェンダー,保健・衛生問題を包括.

持続可能な発展のための仕組み保全の対象 恩恵 禍い 保全 国際的な活動

生物多様性biodiversity

生態系サービスEcological

service

生態系の保全bioconservation

・MAB・世界自然遺産

ジオ多様性geodiversity

大地の恵みGeological

service

自然災害Geological

hazard

ジオ遺産の保全geoconservation

・GP

文化多様性cultural diversity

文化の保全cultural

conservation

・世界文化遺産・GP・文化多様性世界宣言

*文化の多様性に関する世界宣言(2001):文化的多様性は人類共通の遺産であり、現在及び将来の世代のためにその重要性が認識され、主張されるべきである.

制度の比較

運営主体 目的 保全の根拠 存在形態

国立公園 行政機関 場所を管理.土地利用規制.

法令 制度・ルールsystem, rule

ジオパーク 地域住民を中心とした関係者

保全をベースにした持続可能な開発(sustainable

development)

関係者の意思 運動movement

「場」は共通していても,存在形態が異なる.

地域住民による地域資源の管理と利用→ コモンズの議論

コモンズ● Commons.共有地.入会地.共有資源.● 共有資源の管理

1. 中央集権的な管理

2. 市場原理に任せる

3. 当事者による自主的なルールの策定と資源の利用.

エリノア=オストロムの設計原則● 2009年ノーベル経済学賞● 長期持続型の制度研究に由来するサステイナブルな資源管理のための設計原則(Ostrom,

2005)

1. コモンズの境界が明確

2. 利用と維持管理のルールが地域的条件と調和

つづき

3. 集団の決定に構成員が参加

4. ルール遵守についての監視

5. 段階的な違反へのペナルティー

6. 紛争解決のメカニズム

7. コモンズを組織する主体に権利が承認

8. コモンズの組織が入れ子状

ジオパークをコモンズとして見た場合

1. コモンズの境界が明確 ○

2. 利用と維持管理のルールが地域的条件と調和 △

3. 集団の決定に構成員が参加 △

4. ルール遵守についての監視 ? 

5. 段階的な違反へのペナルティー ?

6. 紛争解決のメカニズム ?

7. コモンズを組織する主体の権利が承認されている △

8. コモンズの組織が入れ子状 △

△:できつつあるか改善が必要.?:必要性がないか

目代(2014)

協働のしくみ

国立公園とジオパークとの連携の形

ジオサイト

コモンズ

ジオサイト

コモンズ

ジオサイト

コモンズ

国立公園(地域制公園)

ナショナルトラストジオパーク

ジオサイト

コモンズ