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人工知能のための哲学塾 #Act_5 メルロ=ポンティの知覚論 三宅 陽一郎 @miyayou 人工知能のための哲学塾(コミュニティサイト) https://www.facebook.com/groups/1056157734399814/ 第零回資料 (2015.5.28) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-48781470 第一回資料(2015.9.30http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-53507300 第二回資料(2015.12.3http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-55700355 第三回資料(2016.2.1http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-57713927 第四回資料(2016.3.7http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-59171186 https://www.facebook.com/youichiro.miyake http://www.slideshare.net/youichiromiyake [email protected]

人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

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人工知能のための哲学塾 #Act_5 メルロ=ポンティの知覚論

三宅 陽一郎 @miyayou

2016.3.7 @小田急サザンタワー

人工知能のための哲学塾(コミュニティサイト) https://www.facebook.com/groups/1056157734399814/ 第零回資料 (2015.5.28) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-48781470 第一回資料(2015.9.30) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-53507300 第二回資料(2015.12.3) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-55700355 第三回資料(2016.2.1) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-57713927 第四回資料(2016.3.7) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-59171186

https://www.facebook.com/youichiro.miyake http://www.slideshare.net/youichiromiyake [email protected]

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人工知能のための哲学塾(資料)

• 第0夜 概観

• 第一夜 フッサールの現象学

• 第二夜 ユクスキュルと環世界

• 第三夜 デカルトと機械論

• 第四夜 デリダ、差延、感覚

• 第五夜 メルロ=ポンティと知覚論

第零夜 資料 http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-48781470 レポート記事 http://g-x.jp/556c38f5-2c84-4f9f-a10b-478acaac1ca2 動画 https://www.youtube.com/watch?v=L-989_hir-E 第一夜 資料 http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-53507300 レポート記事 http://www.igda.jp/?p=2407 動画 https://www.youtube.com/watch?v=qyv91RBTy5w 第二夜 資料 https://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-55700355 レポート記事 http://www.igda.jp/?p=2563 動画 https://www.youtube.com/watch?v=Or1Te4pLBsM 第三夜 資料 http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-57713927 レポート記事 http://www.igda.jp/?p=3238 動画 https://youtu.be/pmTGKRUQH44 第四夜 資料 http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-59171186 レポート記事 http://www.igda.jp/?p=3493 動画 https://www.youtube.com/watch?v=twoiUKW5dd0 第五夜 資料 http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-61299899 レポート記事 動画

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「ゲーム、人工知能、環世界」

• 現代思想 12月号

(青土社)

• 2015年11月28日発売

• 「人工知能特集」

http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791713097

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WIRED A.I.

• WIRED A.I.+ Wired City

• 12月1日発売

• 「人工知能+街 特集」

なぜぼくらには人工知能が必要なのか──『WIRED』Vol.20「人工知能+未来都市」 2大特集・特別保存版 刊行に寄せてhttp://wired.jp/2015/12/01/vol20-editors-letter-ai/

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「IT、都市、ヘルスケア、あらゆる領域で 人工知能と人間が共創する未来」

• WIRED 「INNOVATION INSIGTS」

http://wired.jp/innovationinsights/post/analytics-cloud/w/cocreation_with_ai

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本日のテーマ説明(少し長い)

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• キャラクターの中にはボーン構造が入っていて、この動かし方=アニメ―ションデータを • 再生することでキャラクターが動く。周りとの衝突に合す。

http://positionx.sblo.jp/article/141677768.html

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今回の目標

• キャラクターの身体的空間を構築すること。

• 哲学として、エンジニアリングとして、サイエンスとして。

• 身体はすでに世界を解釈している。

• それを意識が感じることはできない。

• 身体運動によって解釈される世界とは何か?

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「身体、空間、知能、時間」

• 身体(運動)、空間、知能、知覚、そして時間の関係とは?

• 運動と知覚、知覚と運動は連動する。

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身体と身体の拡張、身体空間

• 道具を持つことで身体が拡張する

• 道具を持つことで身体空間が拡張する

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我々は身体運動の対象として 世界を捉えている。

• 身体は拡張する。

• 身体運動は拡張する。

• 我々は身体運動の対象として世界を捉えている。

• 我々は為し得る身体の活動を積極的に認識しに世界へ向かっている。

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行為と感覚

• 空間を捉えようとする志向性

• 柔道、剣道、ボクシングを考えてみる。スポーツを始めると、それに特化した感性になる。行為によって感覚が再編されている。

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今回の哲学者・科学者

• 運動構築

• ベルンシュタイン

(露、1896-1966)

• 空間経験

• メルロ=ポンティ

(仏、1908-1961)

• 環境認識

• ギブソン

(仏、1908-1961)

• 知能と環境

• 谷淳

(日)

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• キャラクターの中にはボーン構造が入っていて、この動かし方=アニメ―ションデータを • 再生することでキャラクターが動く。周りとの衝突に合す。

http://positionx.sblo.jp/article/141677768.html

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現在のキャラクター・アニメーション

ケース毎のアニメーション再生

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現在のキャラクター・アニメーション

ケース毎のアニメーション再生

+ 加算アニメーション

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現在のキャラクター・アニメーション

ケース毎のアニメーション再生

+ 加算アニメーション

+ ある程度の計算による補正(I.K.)

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AI + Animation

A.I.

アニメーションA 再生 アニメーションB 再生 アニメーションC 再生

加算アニメーション 加算アニメーション 遷移 加算アニメーション 遷移

補正 補正 補正

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はじめに

• ゲームのAIキャラクターには、共通して欠けているものがある。それは、身体感覚。

• ユーザーから見ても、キャラクターに身体感覚がないことが感じられる。

• 現代のゲームのAIキャラクターは、意思決定

からアニメーションを再生して、環境から補正しているのみ。

• 内部の身体感覚が根本的に欠けている。

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本日のテーマ

• 知能が行動をする、時に、知能全体で起こっていることを明らかにする。

• 知能が自分自身を認識する・構成するやり方を明らかにする

• 知能全体=身体、知能、環境

身体を含む人工知能を構成することで、 人工知能そのものを根本から再構成する。

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本日のテーマ

• 人工知能には自己感がない。

• 人工知能に自己感を与えたい。

「内側から生きられる世界」としての身体を 人工知能に与える。

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問1 「ゲームキャラクターの身体」

ゲームキャラクター、

或いは、ロボットに、

身体感覚を

与えることはできるか?

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本日のコンテンツ

第一部 人工知能に身体感覚を与える

第二部 人工知能に運動感覚を与える

第三部 人工知能に主観的環境を与える

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人工知能に身体感覚を与える

第一部

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最も基本的な自己感

• 身体保持感(sense of self-ownership)

• 運動主体感(sense of self-agency)

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身体意識にかかわる症状

• 病態失認

麻痺した身体の一部を麻痺していないと感じる

• 身体失認

麻痺した手足が自分のものでないと感じる

• 半側空間無視

自分の身体の半分、世界の半分をないものとして扱う

• 運動主体感の障害

自分の行いが自分が行っていると感じられない

• 身体部位失認

自分の身体の部位を指差せない

(ソーシャルブレインズ、「他者」と出会う」、P.128)

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自己を獲得する

• 知能にとって自己は与えられるものではない。実現しているものである。

• 知能にとって自己は獲得するもの、実現させるものである。

人工知能にも、自分が自分であるという感覚を 与えるように実装する。 それ自身も重要だが、その方針が、 正しい人工知能の実装の方向に導くはずだ。

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自己確認の方法

• あらゆる感覚、あらゆる行動を通して、自己が確認されている。

• 逆に言えば、自己を確認しない感覚も行動も存在しない。

遠心性コピー 視覚フィードバック 体性感覚フィードバック

運動の主体の認識 自己身体部位の認識

P.87 (ソーシャルブレインズ、「脳の中にある身体」、P.87)

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最も基本的な自己感

• 身体保持感(sense of self-ownership)

• 運動主体感(sense of self-agency)

http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/utokyo-research/research-news/does-seeing-ice-really-feel-cold/

ラバーハンド錯覚

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ラバーハンド錯覚

• 偽物の腕(ラバーハンド)を、自分の腕の横に置き、自分の腕の方はついたての向こうで見えなくする。

• 最初は自分の腕とラバーハンドに同時に、くすぐるとか、つつくとか、同じ作用をする。

• すると次第に、ラバーハンドを自分の腕と錯覚するようになる。 • すると、ラバーハンドに氷が置かれると、本物の腕も冷たく感じる。

• これは「冷たいはずなので、身構えろ」という脳からの指令が腕に行っている効果と考えられる。

予測には感覚を調整する機能がある。

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身体保持感

• 身体保持感は「この身体はまさに自分のものである」という感覚であり、運動主体感は「この運動を引き起こしたのはまさに自分自身である」という感覚である。これらは一見似ているが、意図的な行為と非意図的な身体の動きとを対比してみれば区別できる。

• たとえばコーヒーカップに手をのばすなど、意図的な行為の時に自分の腕を意図通りに動かせていれば、身体保時間と運動主体感の両方が引き起こされる。しかし、誰がぶつかってきたときの腕の動きのような非意図的な身体の運動の場合、身体保持感は相変わらず感じられるものの運動主体感を感じることはない。

(ソーシャルブレインズ、「脳の中にある身体」、P.107)

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運動主体感

• 運動主体感は基本的な自己感の一つであり、その運動を引き起こしているのは自分自身であるという感覚である(Gallagher,2000)。

• 基本的には自分の身体運動に対して感じるが、拡張してパソコンのマウスなど、道具を操作している時にも感じられる感覚とも考えられる。

• 運動主体感を基礎づけるのは、主に脳から筋肉に出される運動指令ーより正確にはそのものではなく、脳内の別の部位(頭頂葉)へ送られるそのコピー情報(遠心性コピー)ーとその結果として得られる感覚(特に視覚)フィードバックの整合性である。

(ソーシャルブレインズ、「自己」と「他者」の境界、P.76)

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メルロ=ポンティ

1908年 フランスに産まれる。 1925年 エコール・ノルマル・シュぺリュ-ル。 サルトル、ボーヴォワール、レヴィ=ストロース、 ポール=二ザン、と知りあう、 1928年 フッサールの現象学の講演を聴く。 1946年 サルトルと「レ・タン・モデルヌ」創刊 1948年 リヨン大学教授 1949年 パリ大学教授 1952年 コレージュ・ド・フランス教授 1961年 急逝

フランス現象学の牽引する。特に身体に対する現象学は、大きな影響を持つ。 サルトルが世界中を飛び回っていたのに対して、メルロ=ポンティは、フランスを 中心に活躍した。

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メルロ=ポンティ「知覚の現象学」 (原著:1945, 翻訳:1967,竹内芳郎・小木貞孝訳)

• フランス現象学。 • 感覚と身体の現象学。 •

• 身体性の問題の名著。 用される

http://www.msz.co.jp/book/detail/01933.html

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メルロ・ポンティ「表現としての身体と言葉」 (原著:-年、訳:1999年 モーリス・メルロ=ポンティ、中山元編訳)

• 対象はすみずみまで客体であり、意識はすみずみまで意識である。存在するという語には二つの意味があり、そしてこの二つの意味しかない。物として存在するのか、意識として実存するのかのいずれかである。

(メルロ=ポンティ・コレクション、ちくま学芸文庫、P.53)

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メルロ・ポンティ「表現としての身体と言葉」 (原著:-年、訳:1999年 モーリス・メルロ=ポンティ、中山元編訳)

• この考えに対して、自己の身体の経験は、両義的な存在様態があることを知らせる。もしも身体を三人称のプロセス、たとえば「視覚」「運動性」「性」などのプロセスの<束>として考えようとしても、こうした「機能」を互いに結びつけるもの、こうした機能を外部に結びつけるものは、因果関係ではないことに気づく。

(メルロ=ポンティ・コレクション、ちくま学芸文庫、P.54)

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身体の不随性

自分の身体の中にも意のままにならぬ性質があること

=身体は完全に自分自身ではない。

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身体の両義性

• 物質存在であると同時に、意識的に生きられるもの。

• 対象であると同時に自分自身である。

• 触れると同時に触れられる。(触れているということは、触れているものから触れられている、ということ)

• 見ると同時に見られる。(見ているものからも、見られている)

Page 41: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

メルロ・ポンティ「表現としての身体と言葉」 (原著:-年、訳:1999年 モーリス・メルロ=ポンティ、中山元編訳)

• これらの機能は一回限りのドラマの中で、互いに関連した区別しがたいものとして存在しえるからである。

• だから身体は一つの対象ではない。同じ理由から、わたしが自己の身体についてもつ意識は、思考ではない。わたしはこの意識を分解し、再構成して明晰な観念を形成できないのである。

(メルロ=ポンティ・コレクション、ちくま学芸文庫、P.54)

Page 42: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

メルロ・ポンティ「表現としての身体と言葉」 (原著:-年、訳:1999年 モーリス・メルロ=ポンティ、中山元編訳)

• 身体の統一性は暗黙的なものであり、混乱したものである。身体はそこに<ある>ものとはつねに別のものである。身体は性的な存在であると同時に、自由な存在である。自然に根差すとともに文化によって変容された存在である。それ自体のうちに閉じていることはなく、完全に超えでることもない。

• 他者の身体でも自己でも、人間の身体というものを認識するためには、これを<生きる>しかない-これを貫くドラマを自らのものとして引き受け、それと渾然一体となるしかないのである。

(メルロ=ポンティ・コレクション、ちくま学芸文庫、P.54)

Page 43: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

メルロ・ポンティ「表現としての身体と言葉」 (原著:-年、訳:1999年 モーリス・メルロ=ポンティ、中山元編訳)

• このように自己の身体の経験は、反省的な態度の運動とは対立する。反省的な態度では、対象を主体から分離し、主体を対象から分離する。そしてわたしたちに、身体についての思考、あるいは観念としての身体しか与えない。デカルトはこのことをよく認識していた。

• (メルロ=ポンティ・コレクション、ちくま学芸文庫、P.54)

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ポリゴンとボーンの連結的集合である キャラクターが「身体を生きる」ことは可能か?

http://positionx.sblo.jp/article/141677768.html

Page 45: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

身体性とインテリジェンス

Gray’s anatomy

脳の中心の部位は身体とつながっている。 生理機能を司っている。 それを囲うように、辺縁体、大脳がある。

http://square.umin.ac.jp/neuroinf/brain/005.html

http://www.amazon.co.jp/Grays-Anatomy-Anatomical-Clinical-Practice/dp/0443066841

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本日のテーマ

我々が運動を起こしている時に、

何が知能で起こっているか?

遠心性コピーから身体をイメージする

自分自身に対する予測から運動を把握する。

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環境

身体 知能

人工知能とは?

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

入力(センサー) 行動(アウトプット)

身体

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環境

身体 知能

人工知能とは?

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

入力(センサー)

身体

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環境

身体 知能

人工知能とは?

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

行動(アウトプット)

身体

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環境

身体 知能 知能

人工知能とは?

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

行動(アウトプット)

身体

身体知性

(身体を統御・制御するOS)

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環境

身体 知能 知能

人工知能とは?

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

行動(アウトプット)

身体

遠心性情報 (身体への命令)

身体知性 (身体を統御・制御 するOS)

Page 52: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

環境

身体 知能 知能

人工知能とは?

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

行動(アウトプット)

身体

遠心性情報 (身体への命令)

遠心性コピー (身体への命令の 複製)

身体知性 (身体を制御 するOS)

Page 53: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

環境

身体 知能 知能

人工知能とは?

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

行動(アウトプット)

身体

身体知性 (身体を制御 するOS)

遠心性情報 (身体への命令)

遠心性コピー (身体への命令の 複製)

身体イメージ

(遠心性コピーにより頭の中に再構築される身体のイメージ(シミュレーション可能))

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ベルクソン「意識・対象・身体」

意識

イマージュ

感覚

身体

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イマージュ(アンリ・ベルクソン)

しばらくのあいだ、われわれは、物質の諸理論と精神の諸理論について、外界の実在性もしくは観念性をめぐる諸論争について、何も知らないふりをしよう。そうすると私は、数々のイマージュ(image)と直面することになるのだが、ここでイマージュと

いうのは、私が感覚を開けば知覚され、閉じれば知覚されなくなるような、最も漠然とした意味でのイマージュのことである。

しかしながら、ほかのすべてのイマージュと際立った対比を成すようなイマージュが一つある。私はそれを単に外部からの諸知覚によって知るだけでなく、内部からの諸感情(affection)によっても知る。そのイマージュとは身体のことである。

(ベルクソン「物質と記憶」(合田正人・松本力訳)ちくま学芸文庫、p.008)

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環境

身体 知能 知能

人工知能とは?

行動(アウトプット)

身体

身体知性 (身体を制御 するOS)

遠心性情報 (身体への命令)

遠心性コピー (身体への命令の複製)

求心性情報 (末端からフィードされる情報)

身体イメージ

(遠心性コピーにより頭の中に再構築される身体のイメージ(シミュレーション可能))

Page 57: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

遠心性情報、求心性情報

• 遠心性情報=知能から身体へ送れる制御信号

• 求心性情報=末端から知能へフィードバックされる信号

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自己受容感覚、運動感覚

• 深部感覚=筋、関節など深部組織に起こる感覚すなわち、筋覚、関節覚などに分類されている。

• 自己受容感覚(固有感覚)=自分の起こす身体の動きによって刺激される受容器により感覚。実際には、自己の動きに刺激されるのは深部受容器に限らず、皮膚受容器も関与する。

• 運動感覚=四肢の動きの感覚。関節の感覚。重さの感覚。筋の努力感。

(オーム社、「感覚・知覚・認知の基礎」、P.40)

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遠心性コピー

• 遠心性コピー(von Holst,1953)とは、運動指令の

コピー信号のことである。これとほぼ同じ意味で、随伴反射(Sperry,1950)という言葉もある。

• こうした運動指令のコピーを使うことにより、順モデルによって軌道がシミュレーションされ、実際の運動の時に起こす感覚やフィードバックや目標とする軌道との照合を行うことが可能になる。

(ソーシャルブレインズ、「脳の中にある身体」、P.107)

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遠心性コピー

• 脳内でも、運動領野から信号が感覚領野に戻ってきている証拠はいくつか知られており、遠心性コピーと考えられる活動が見られる。また、遠心性コピーは、意識にのぼる感覚にも影響を与えると考えられている。

• (ソーシャルブレインズ、「脳の中にある身体」、P.107)

Page 61: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

遠心性コピー

• たとえば、眼で見た物体の大きさは、物体の眼の距離が変わると網膜上では大きさが変化するにもかかわらず、知覚的には大きさが変わらない。これは大きさの恒常性と呼ばれるが、フォン・ホルストは、このときに目の輻輳運動(寄り目になること)のため遠心性コピーが知覚に影響を与えて、大きさが変化しないようにしていると推測している。

(ソーシャルブレインズ、「脳の中にある身体」、P.107)

Page 62: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

遠心性コピー

• またブレイクモアらは、自らが自分の身体をくすぐるとくすぐったくない現象を、遠心性コピーが感覚フィードバックに影響を及ぼしていると説明している。

(ソーシャルブレインズ、「脳の中にある身体」、P.107)

Page 63: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問2 「遠心性コピーと運動感覚」

遠心性コピーを利用して、

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットに、

運動感覚を与えることはできるか?

Page 64: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

エージェント・アーキテクチャと 遠心性情報、遠心性コピー、 求心性情報

Page 65: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

センサー・身体

記憶体

情報処理過程

情報 統合

Page 66: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

記憶体

情報処理過程

情報 統合

Page 67: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

記憶体

情報処理過程 運動創出過程

身体部分

情報 統合

運動 統合

Page 68: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

Page 69: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

Page 70: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

遠心性出力

Page 71: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

遠心性出力

求心性情報

Page 72: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

遠心性出力

求心性情報

遠心性コピー

Page 73: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

遠心性出力

求心性情報 身体のイメージ

遠心性コピー

Page 74: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

• 感覚調整

• ベルンシュタインは、運動を行う際の感覚の役割を強調した。解剖学の分野では、すでに二十世紀半ばには脳からの下行繊維系が末梢からの上行路の調整を行うことが知られていた。つまり遠心性出力は求心性情報を直接変化させる。したがって感覚と運動は表裏一体である。巧みな運動を行うためには、相応の繊細な感覚に基づいた動作の調整が必要であり、優れた運動選手は例学なく感覚にも優れている。例えば熟練のスキーヤーは、足裏の感覚や全身に伝わる振動などから雪面の微妙な違いを感じ取ることができる。

(訳者による主要語句解説、P.307)

ベルンシュタイン「巧みさとその発達」(原著:1940-年代, 英語版:1996, 翻訳:2003)

Page 75: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

• 自己受容感覚

• 自己受容感覚とは、筋-関節感覚や内臓感覚など、自分自身についての情報をもたらす感覚を指す。固有受容感覚とも呼ばれる。一方、視覚や聴覚、外部環境に関する情報をもたらす感覚は遠感覚と呼ばれる。

• ベルンシュタインはこれらの感覚が運動の際に果たす役割を強調し(→感覚調整)、さらにいかなる感覚であろうとも自己受容感覚と同じ役割を果たし得ることを指摘した。遠隔受容器による自己情報の知覚は、exproprioceptionと呼ばれている。

(訳者による主要語句解説、P.309)

ベルンシュタイン「巧みさとその発達」(原著:1940-年代, 英語版:1996, 翻訳:2003)

Page 76: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

遠心性出力

求心性情報 身体のイメージ

遠心性コピー

感覚調整 (相互調整機能)

遠心性情報と 求心性情報は お互いを調整する

(例)スキーをすると、

足の裏からの情報で、力を加減する

Page 77: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問3 「身体のイメージ」

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットが、

身体のイメージを持つことは

できるか?

Page 78: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

どのように知能と身体は結びつているのか?

Page 79: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

知能

言語による 精神の構造化

外部からの情報

言語化のプロセス シニフィアン /シニフィエ

言語回路 (=解釈)

意識の形成

世界を分節化している

Page 80: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

外部からの情報

言語・非言語境界面 (シニフィアン/シニフィエ)

意識の境界面 (表象)

知覚の境界面

知能と身体の境界面 (仏教で言う:阿頼耶識)

Page 81: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

外部からの情報

知能と身体の境界面 (仏教で言う:阿頼耶識)

言語・非言語境界面 (シニフィアン/シニフィエ)

意識の境界面

知覚の境界面

意識は常に何かについての意識である。(志向性) フッサール『イデーン』

我々は知覚によってこの世界に住み着いている。 メルロ=ポンティ『知覚の現象学』

ソシュール「一般言語学講義」

大乗仏教 「阿頼耶識」

Page 82: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

外部からの情報

人の意識が為しえる知能

人の無意識に為しえる知能

Page 83: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

外部からの情報

人工知能の研究はこの部分に 集中している

この部分を作るのが難しい。

Page 84: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

外部からの情報

生態学的人工知能 ※生態=環境・身体との 結びつきを考える

伝統的な人工知能

身体知

Page 85: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

知能

言語による 精神の構造化

外部からの情報

言語化のプロセス シニフィアン/シニフィエ

言語回路 (=解釈)

Page 86: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

知能

言語による 精神の構造化

外部からの情報

言語化のプロセス シニフィアン/シニフィエ

言語回路 (=解釈)

Page 87: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

求心性 情報

知能

解釈

顕在化

運動統合

意志

意識の境界面

知覚の境界面

遠心性 情報

Page 88: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人間の精神

意識

前意識

無意識

求心性 情報

知能

解釈

顕在化

運動統合

意志

意識の境界面

知覚の境界面

2つの見えている世界(知覚世界、作用世界)

知覚世界 作用世界

遠心性 情報

Page 89: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

身体知能

人間の精神 意識

前意識

無意識

求心性 情報

知能

解釈

顕在化

運動統合

意志

意識の境界面

知覚の境界面

2つの見えている世界(知覚世界、作用世界)

知覚世界 作用世界

遠心性 情報

遠心性 コピー

Page 90: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

身体知能

人間の精神 意識

前意識

無意識

求心性 情報

知能

解釈

顕在化

運動統合

意志

意識の境界面

知覚の境界面

2つの見えている世界(知覚世界、作用世界)

知覚世界 作用世界

遠心性 情報

遠心性 コピー

身体イメージ

Page 91: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

感覚

• 感覚とは差異である。

• 特に運動を生成するための情報は、

予測と実測の差異から生成される

(=求心性情報と遠心性情報の感覚調整)

Page 92: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

予期と感覚、差異による身体感覚

遠心性コピーによる身体のシミュレーション

実際の身体の状態 時間

時間

Page 93: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

予期と感覚、差異による身体感覚

遠心性コピーによる身体のシミュレーション

実際の身体の状態

差異=身体の感覚を生成する

身体意識

時間

時間

Page 94: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

予期と感覚、差異による身体感覚

遠心性コピーによる身体のシミュレーション

実際の身体の状態

差異=身体の感覚を生成する

身体意識

遠心性コピーによる運動の予期があるから、

自分の運動を認識できる。

時間

時間

Page 95: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

運動主体感

• 運動主体感は基本的な自己感の一つであり、その運動を引き起こしているのは自分自身であるという感覚である(Gallagher,2000)。

• 基本的には自分の身体運動に対して感じるが、拡張してパソコンのマウスなど、道具を操作している時にも感じられる感覚とも考えられる。

• 運動主体感を基礎づけるのは、主に脳から筋肉に出される運動指令ーより正確にはそのものではなく、脳内の別の部位(頭頂葉)へ送られるそのコピー情報(遠心性コピー)ーとその結果として得られる感覚(特に視覚)フィードバックの整合性である。

(ソーシャルブレインズ、「自己」と「他者」の境界、P.76)

Page 96: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

予期と感覚、差異による身体感覚

遠心性コピーによる身体のシミュレーション

実際の身体の状態

差異=身体の感覚を生成する

身体意識=運動主体感

遠心性コピーによる運動の予期があるから、

自分の運動を認識でき、 運動主体感を生成できる。

Page 97: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問4 「予測と感覚」

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットが、

予測能力によって、

感覚を獲得することはできるか?

Page 98: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

谷淳先生の仕事

Page 99: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

谷淳

• 1981年に早稲田大学理工学部機械工学科を卒業。

• 千代田化工建設株式会社にてプラント配管設計。

• スタンフォード大学、ミシガン大学 人工知能(修士号)

• ソニーコンピューターサイエンス研究所

• 理化学研究所 脳科学研究センター

動的認知行動研究チーム チームリーダー

• KAIST 教授

認知ロボットの実験から考える「自己」とは? ~理研の谷淳氏が東京財団「VCASI」で講演 http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20091217_336516.html

Page 100: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

主体と客体(谷淳)

谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、脳・身体性・ロボット-知能の創発をめざして (インテリジェンス・ダイナミクス 1) 土井 利忠 (編纂) 、 丸善出版、2012

Page 101: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

主体と客体(谷淳)

• この図では、まず仮に主体と客体という二項対立の構造を想定してみる。客体環境からボトムアップするセンソリの流れを主体はある構えを持ちトップダウン的に予測し解釈しようとする。両者の相互作用を経て認識が成立し、行為が生成される。

谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、Springer

心と環境は溶け合っている 身体と環境も溶け合っている Chaotic

Page 102: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

主体と客体(谷淳)

• 認識の結果は主体の内部を変化させ、また生成された行為は環境を変化させる。この相互作用を通して、主体から出発したトップダウンの流れと客体から出発したボトムアップの流れは分離不可能になり、もはや主体と客体といった区別は無意味になる。この時に初めて、古典的な認知論で想定されてきた、客体として操作される表象と、それを操作する主体といった構図からも自由になれるのである。

• いかにこのような相互作用の場を構築するか、本文では筆者らが行ってきた一連の認知ロボット実験について解説しながら、本問題について議論していく。

• 谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、Springer

Page 103: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

主体と客体(谷淳)

谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、脳・身体性・ロボット-知能の創発をめざして (インテリジェンス・ダイナミクス 1) 土井 利忠 (編纂) 、 丸善出版、2012

自己判断をフィードバックループのように、ニューラルネットワークの入力に再帰入力 することで、センサーの情報と自分の予測情報を同時にインプットする力学系が発生する。 これによって自己と客体を混合する力学系が発生する。

Page 104: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

主体と客体(谷淳)

谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、脳・身体性・ロボット-知能の創発をめざして (インテリジェンス・ダイナミクス 1) 土井 利忠 (編纂) 、 丸善出版、2012

Page 105: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

第二部 人工知能に運動感覚を与える

第二部

Page 106: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタインの運動学

Page 107: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

進化と運動

• 化学物質から興奮性の伝達

• 電気インパルスによる筋肉の一斉収縮

http://coneta.jp/2705.html/img_0934

Retron http://free-photos.gatag.net/2015/01/12/060000.html

身体の発達

Page 108: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

協応構造 (連携と自由度の制限)

高い自由度を持つ人間の身体 (自由度が高すぎる)

一つの目的を持った行動

Page 109: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

協応構造 (連携と自由度の制限)

たくさんの自由度

組み合わされ、制限された自由度

Page 110: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

協応構造 (連携と自由度の制限)

たくさんの自由度

自由度を制限して一つの方向に身体の運動を導く

Page 112: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「巧みさとその発達」(原著:1940-年代, 英語版:1996, 翻訳:2003)

• 動作構築のレベル (P.132)

• 緊張のレベル ー レベルA 動的平衡

• 筋-関節リンクのレベル ー レベルB 動作のリズムを制御する

• 空間のレベル - レベルC 外部空間を利用するための能力

• 行為のレベル - レベルD 人間のレベル 連鎖構造

• これらの階層が協応して動作が構築される。

Page 113: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

対世界

活動神経網 知覚神経網

興奮(記号)

興奮

対世界

興奮

興奮

興奮

運動形態

さまざまな興奮(=記号)の 組み合わせから、事物を分別する。

特定の筋肉を動かすように 興奮を促す。

中枢神経網

進化と共に、この筋肉と神経の使い方が 高度に(巧みに)なっている。

Page 114: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

対世界

活動神経網 知覚神経網

興奮(記号)

興奮

対世界

興奮

興奮

興奮

運動形態

さまざまな興奮(=記号)の 組み合わせから、事物を分別する。

特定の筋肉を動かすように 興奮を促す。

中枢神経網

進化と共に、この筋肉と神経の使い方が 高度に(巧みに)なっている。

http://pictkan.com/ http://coneta.jp/2705.html/img_0934

Page 115: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

対世界

活動神経網 知覚神経網

興奮(記号)

興奮

対世界

興奮

興奮

興奮

運動形態

さまざまな興奮(=記号)の 組み合わせから、事物を分別する。

特定の筋肉を動かすように 興奮を促す。

中枢神経網

進化と共に、この筋肉と神経の使い方が 高度に(巧みに)なっている。

http://freephoto.artworks-inter.net/ https://www.pakutaso.com/20130846218post-3136.html

Yafüt™ http://free-images.gatag.net/2013/03/19/160000.html

Page 116: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

対世界

活動神経網 知覚神経網

興奮(記号)

興奮

対世界

興奮

興奮

興奮

運動形態

さまざまな興奮(=記号)の 組み合わせから、事物を分別する。

特定の筋肉を動かすように 興奮を促す。

中枢神経網

進化と共に、この筋肉と神経の使い方が 高度に(巧みに)なっている。

Page 117: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

対世界

活動神経網 知覚神経網

興奮(記号)

興奮

対世界

興奮

興奮

興奮

運動形態

さまざまな興奮(=記号)の 組み合わせから、事物を分別する。

特定の筋肉を動かすように 興奮を促す。

中枢神経網

進化と共に、この筋肉と神経の使い方が 高度に(巧みに)なっている。

我々は常に行為をドライブされている。

Page 118: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルA

緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

Page 119: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルA

緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルA 緊張のレベル = 動的平衡 = 持続的な動作の中で平衡を維持する = 身体のバランスを取る = 体幹(胴体)と首の筋 (例) スキーのジャンプの最中など。

Page 120: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

Page 121: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルB 筋-関節リンクのレベル = 動作のリズムを制御する = 動作を自動化する = 意識の関与なしに機能する = 背景として動く (例) バネのように規則正しい自動的な運動 =移動運動など。

Page 122: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

Page 123: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルC 空間のレベル 空間利用能力 = 外部空間を利用するための能力 = 狙いを定めて対象を移動させる運動 = 感覚調整が動作の中間部分にまったく無関心でありながら、 同時に終末部分に対してきわめて敏感 (例) スキーのスラローム 重量挙げ スプリント走 アコーディオン演奏 円盤投げ ハードル飛び

Page 124: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」 生成の順番 = 進化で獲得して来た順番

レベルD 行為のレベル 運動を連鎖させて行為を作り出す(連鎖構造)

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

Page 125: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」 生成の順番 = 進化で獲得して来た順番

レベルD 行為のレベル 運動を連鎖させて行為を作り出す(連鎖構造)

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

レベルD 行為のレベル 行為の連鎖構造と適応的な変動 = レベルDが下位のレベルB,Cを呼び出し、計画を達成する。 = 行為を制御する = 記憶によって蓄えられた先行経験の痕跡を多く含む。 (例) ボクシング レスリング ひげ剃り ボルトを締める

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ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルD 行為のレベル 運動を連鎖させて行為を作り出す(連鎖構造)

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

Page 127: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」

レベルD 行為のレベル 運動を連鎖させて行為を作り出す(連鎖構造)

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

Page 128: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」 巧みさの発展 = 運動生成の順番 = 進化で獲得して来た順番

レベルD 行為のレベル 運動を連鎖させて行為を作り出す(連鎖構造)

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

Page 129: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「動作構築のレベル」 巧みさの発展 = 運動生成の順番 = 進化で獲得して来た順番

レベルD 行為のレベル 運動を連鎖させて行為を作り出す(連鎖構造)

レベルC 空間のレベル その運動を周囲の空間に合わせる

レベルA 緊張のレベル 身体の静的な姿勢のための微調整(動的平衡)

レベルB 筋-関節リンクのレベル 関節の連合による運動の原型の生成(動作のリズム)

各レベルの自律性を強調 低次のレベルは背景レベルとして自律的に高次レベルを支える (P.312、解説)

Page 130: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ベルンシュタイン「巧みさとその発達」(原著:1940-年代, 英語版:1996, 翻訳:2003)

• 協応とは、運動器官の冗長な自由度を克服する、すなわち運動器官を制御可能なシステムへ転換すること。(P.43)

• 運動スキルとは、ある種の運動課題を解決するために発達した能力として示される協応構造である。(P.300)

• 巧みさとは、あらゆる状況で、問題に対する正しい解決策をすばやく見つけるための運動能力… (P.258)

• 動作がはじまった瞬間から、脳が継続的に注意深く感覚器からの報告にもとづいて動作を監視し、その場に応じた調整をしながら動作を操る必要があるということだ。(P.217)

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• 協応構造

• 冗長な自由度の問題を克服するために仮定された要素間の結合関係。ベルンシュタインは、学習に伴い古今の独立な自由度が協応して活動するよう、機能的に拘束されると考えた。複数の自由度が一つの機能的な単位として結合したとき、それらの自由度は相互補完的な変動を示す。

(訳者による主要語句解説、P.307)

ベルンシュタイン「巧みさとその発達」(原著:1940-年代, 英語版:1996, 翻訳:2003)

Page 132: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

• 先導レベル

• ベルンシュタインは、動作の制御を階層構造として捉え、動作の中核をなす部分の制御を先導レベルが行い、それを支える部分の制御を背景レベルが自律的に行うと考えた。運動に際に自覚可能なのは先導レベルのみである。先導レベルの行う制御は行為全体ではなく、行為達成にとってもっとも重要な一部のみである。

(訳者による主要語句解説、P.307)

ベルンシュタイン「巧みさとその発達」(原著:1940-年代, 英語版:1996, 翻訳:2003)

Page 133: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

身体知能

人間の精神 意識

前意識

無意識

外部からの情報

知能

解釈

顕在化

運動統合

意志

意識の境界面

知覚の境界面

2つの見えている世界(知覚世界、作用世界)

知覚世界 作用世界

遠心性 情報

遠心性 コピー

身体イメージ

先導レべル

背景レべル

Page 134: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

これをゲームキャラクターの アニメーションに適用してみる。

Page 135: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

AI + Animation

A.I.

アニメーション生成 アニメーション 生成 アニメーション 生成

先導レベル

背景レベル

Page 136: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

AI + Animation

A.I.

アニメーション生成 アニメーション 生成 アニメーション 生成

先導レベル (モーションの雛形。意思。

ここをなるべく精緻化する。言語化する)

背景レベル (アニメーションデータを持つ。

アニメーションを変形させるプロシージャル技術。 環境との相互作用)

Page 137: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

人工知能に主観的環境を与える

第三部

Page 138: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

メルロ・ポンティ「問い掛けと直観」 (原著:-年、訳:1999年 モーリス・メルロ=ポンティ、中山元編訳)

• 見えるものについての経験が、わたしの視覚に先立つ経験として存在するが、これは融合でも、合致でもない

• わたしがものを見る目、わたしがものに触る手は、同じように見られ、触られるからである。すなわち、この意味では、わたしの目やわたしの手は、見えるものを内側から見ており、触れるものに内側から触るからである。

• わたしたちの<肉>は見え、触れるすべてのものを覆い、さらに包み込むのであるが、しかしわたしたちの<肉>はこの見え、触れるものによって囲まれているのである。

(メルロ=ポンティ・コレクション、ちくま学芸文庫、P.103)

Page 139: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

メルロ・ポンティ「問い掛けと直観」 (原著:-年、訳:1999年 モーリス・メルロ=ポンティ、中山元編訳)

• 世界とわたしは互いに互いのうちにある。知覚すること(percipere)から知覚されていること(percipi)に向かって、

どちらかが先行するということはなく、同時性、あるいは<遅れ>が存在する。

(メルロ=ポンティ・コレクション、ちくま学芸文庫、P.103)

Page 140: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

我々に接し、 我々を包囲している世界とは何か?

Page 141: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

環境

身体 知能 知能

人工知能とは?

行動(アウトプット)

身体

身体知性 (身体を制御 するOS)

遠心性情報 (身体への命令)

身体イメージ

(遠心性コピーによる再構築される)

遠心性コピー (身体への命令の複製)

求心性情報 (末端からフィードされる情報)

Page 142: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

環境

身体 知能 知能

人工知能とは?

生物に環境はどのように見えているか?

Page 143: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ギブソンの生態学的環境の三要素

• サブスタンス

(材質、物質)

• 媒質

• 境界

Un ragazzo chiamato Bi http://free-photos.gatag.net/2014/05/19/200000.html

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ギブソン「表面幾何学」

• 地上生活をする生物を取り囲む環境は、サブスタンス性質に基づいた諸々の性質をもつ表面が多様にレイアウトされたものである。

• 彼は、このような表面レイアウトに関する一般的理論が思考の上で理念的にとらえられた数学的幾何学とは異なるものであると考え、それを「表面幾何学」という独自の幾何学として構想している。

(染谷昌義「認識の哲学」から「環境の哲学」へ 包まれるヒト<環境>の存在論、P.94)

Page 145: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ギブソン「生態学的知覚論」 (原著:1979, 翻訳:1985)

• …環境に存在する事物の「価値」や「意味」が直接的に知覚されることを示している…(P.137)

• 環境のアフォーダンスとは、環境が動物に提供するもの、良いものであれ悪いものであれ、用意したり備えたりするものである。

• アフォーダンスという言葉で私は、既存の用語では表現し得ない仕方で、環境と動物の両者に関連するものをいい表したいのである。この言葉は動物と環境の相補性を包含している。(P.137)

Page 146: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

目は最初から精緻な器官ではなかった(だろう)

Malkav http://www.gatag.net/04/18/2010/110000.html Tarotastic http://www.gatag.net/08/28/2008/234848.html

Page 147: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

眼の誕生

Page 148: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

目は最初から精緻な器官ではなかった(だろう)

ぼんやりと明るい、暗いがわかるぐらいの目であったはずだ。

そうであるとすれば、生き物は移動することで、明暗の変化から 周囲の様子を知っていたはずだ。

生き物の認識もまた、自分が移動することで、光量が変化する ことから、周囲の環境を知っていたはずだ。

Page 149: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ギブソン「生態学的知覚論」 (原著:1979, 翻訳:1985)

• 包囲光配列の光学的流動が外界の動きとして知覚されることはめったにないのであり、包囲光配列の光学的流動は単に身体運動感覚として経験される(experienced as kinethesis)、つまり自己の身体の移動(egolocomotion)として、経験される(Warren, 1976)(P.133)

Page 150: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

目は最初から精緻な器官ではなかった(だろう)

ぼんやりと明るい、暗いがわかるぐらいの目であったはずだ。

そうであるとすれば、生き物は移動することで、明暗の変化から 周囲の様子を知っていたはずだ。

生き物の認識もまた、自分が移動することで、光量が変化する ことから、周囲の環境を知っていたはずだ。

自分が移動する 周囲の光の列が変化する 自分が移動したことを確認する

Page 151: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ギブソン「生態学的知覚論」 (原著:1979, 翻訳:1985)

• 包囲光配列の光学的流動が外界の動きとして知覚されることはめったにないのであり、包囲光配列の光学的流動は単に身体運動感覚として経験される(experienced as kinethesis)、つまり自己の身体の移動(egolocomotion)として、経験される(Warren, 1976)(P.133)

Page 152: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ギブソン「生態学的知覚論」 (原著:1979, 翻訳:1985)

• 包囲光配列の光学的流動が外界の動きとして知覚されることはめったにないのであり、包囲光配列の光学的流動は単に身体運動感覚として経験される(experienced as kinethesis)、つまり自己の身体の移動(egolocomotion)として、経験される(Warren, 1976)(P.133)

Page 153: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ギブソン「生態学的知覚論」 (原著:1979, 翻訳:1985)

• 包囲光配列の光学的流動が外界の動きとして知覚されることはめったにないのであり、包囲光配列の光学的流動は単に身体運動感覚として経験される(experienced as kinethesis)、つまり自己の身体の移動(egolocomotion)として、経験される(Warren, 1976)(P.133)

Page 154: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

ギブソンの生態学的心理学

• 主観的世界に何が現れるか?

=ギブソンの生態学的心理学

Page 157: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

機能環

効果器

客体

活動神経網 知覚神経網

前野佳彦訳・ユクスキュル「動物の環境と内的世界」 (みすず書房)

知覚世界 活動世界

知覚微表担体 対象化された機構

活動担体

内的世界

興奮

受容器(刺激→興奮(記号))

機能環 = アフォーダンス 同じことを違う言葉で指しているのはなぜ?

出自 学問 レベル アプローチ

機能環 生物 生物学 原初的 生理学・解剖学 生態

アフォーダンス 人間 心理学 認識 生態学的心理学 (心の現象)

Page 158: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

メルロ・ポンティ「知覚の現象学」 (原著:1945年、 モーリス・メルロ=ポンティ、竹内芳郎・小木貞孝訳)

• このような解明によって、最後に、根本的な志向性としての運動性を、余すことなく了解することができるようになる。意識とは、原初的には<われ思う>ではなくて<我能う>である。

• 視覚も運動も、われわれが対象と関係してゆく特殊な仕方であって、そのさい、これらすべての経験をつうじてただ一つの機能が表出されているとすれば、それこそ実存の運動なのである。

• (メルロ=ポンティ「知覚の現象学」、P.233)

Page 159: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

メルロ・ポンティ「知覚の現象学」 (原著:1945年、 モーリス・メルロ=ポンティ、竹内芳郎・小木貞孝訳)

• 運動とは、運動についての思惟ではないし、身体空間とは、思惟された、または表象された空間ではない。

• 「どんな有意的運動も、或る環境のなかで、運動自身によって規定された或る背景[地]のうえにおこるものだ。われわれが運動をおこなうのは、運動とは何の関係もない<空虚な>空間の中ではなく、逆に運動とのあいだに十分に規定された関係を持っている空間の中である。つまり、運動と背景とは、ほんとうを言えば、ただ一つの全体から人工的に分離させられた諸契機でしかないのである」

• (メルロ=ポンティ「知覚の現象学」、P.233)

Page 160: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

• Pπ ロールアウトポリシー(ロールアウトで討つ手を決める。Pπ(a|s) sという状態でaを討つ確率)

• Pσ Supervised Learning Network プロの討つ手からその手を討つ確率を決める。Pσ(a|s)sという状態でaを討つ確率。

• Pρ 強化学習ネットワーク。Pρ(学習済み)に初期化。 • Vθ(s’) 局面の状態 S’ を見たときに、勝敗の確率を予測する関数。つまり、勝つか、負けるかを返します。

Alpha Go は、どのように空間を捉えているか。

空間のとらえ方

Page 161: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問5 「主観的世界」

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットが、

ギブソンが発見したような

主観的世界を獲得することができるか?

Page 162: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問1 「ゲームキャラクターの身体」

ゲームキャラクター、

或いは、ロボット

において、

自分の身体の身体感覚を

与えることはできるか?

Page 163: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問2 「遠心性コピーと運動感覚」

遠心性コピーを利用して、

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットに、

運動感覚を与えることはできるか?

Page 164: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問3 「身体のイメージ」

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットが、

身体のイメージを持つことは

できるか?

Page 165: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問4 「予測と感覚」

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットが、

予測能力によって、

感覚を獲得することはできるか?

Page 166: 人工知能のための哲学塾 第五回 「メルロ=ポンティの知覚論」資料 (全五夜+第零夜)

問5 「主観的世界」

ゲームキャラクター、或いは、

ロボットが、

ギブソンが発見したような

主観的世界を獲得することができるか?