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情報産業・職業論 ③ 情報職業の特徴と 情報サービス産業 h ttp : //aka. o o p s . jp /

Sangyo2010 03

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情報産業・職業論 ③

情報職業の特徴と情報サービス産業

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情報職業とは

情報 (知識 )の生産・加工・流通などに携わる専門的職業。一般に,高専・短大・大学など高等教育機関の修了と国家認定資格の保有などを前提とする

士 (さむらい )職業―弁護士・弁理士・公認会計士など

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情報部門と情報職業

情報部門の根幹には情報職業従事者が多いが,非情報職業従事者も多い

逆に,非情報部門であっても,企業内部向けなどに情報サービスを提供する情報職業従事者が存在する

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新聞社の場合

情報職業としての新聞記者・カメラマンなど

境界的職業としての印刷工・配送トラック運転士など

非情報職業としての社員食堂調理員・清掃員

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新聞社の賃金体系

基本給は全職種で共通調整給で職種ごとの特殊性を吸収

諸手当により労働内容 (勤務実態 )に見合った給与に

非情報現場では「残業手当」があるが,情報現場では「打切手当」

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小リポート課題(新聞社以外の )ある情報部門企業の従事者 (正規雇用者 )を例として,情報職業・境界的職業・非情報職業の 3種類に具体的に分け挙げてみよう

メールで re p o rt@ akao ko ic h i.jp へ(携帯メールで O K!)

表題に学籍番号・名前を書くこと締切 : 本日 20日の 1 8:00

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情報職業を考えるに際して

外部の情報部門との代替性を考える (経理部員→ 税理士・公認会計士,総務部は ?)

営業部員は代替性が効くか ?

最近の企業では外部化・非正規化が進む (例 : 産業医・看護師 )

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情報職業の特徴

雇用の市場化―中途採用・中途退職の増加。流動化

年功型賃金体系の崩壊―成功報酬・年俸制の先駆的採用

新たな就業形態―テレワーク,フリーランス,裁量労働時間制

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テレワーク

ネットワークを活用し,時間・場所に制約されずに労働すること

雇用型 (在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワーク型: 2000年 246万人→ 2005 年445 万人 )と非雇用型 (独立自営型・エージェント組織登録型 )。

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裁量労働制の種別フレックスタイム制度→出社・退社時刻は自由だが, 1 日単位で所定労働時間を充たす必要。コアタイムが設定されることが多く,裁量の余地は相対的に小さい

裁量労働制→週単位で所定労働時間を充たす必要

自由労働制→ 労働の成果を上げる限り,労働時間の縛りを設けない

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情報 ( 知識 ) 職業の特質 1

頭脳集約的 (^^;)

相対的に高い報酬水準労働 (拘束 )時間ではなく「成果」で評価しやすい→自由な就労形態

知識・スキルの陳腐化が激しい―常に再投資が必要

リタイア年齢が相対的に若い

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頭脳集約性になぜ ( ^ ^ ; )人 * 月→プログラム開発などのコスト計算の基本 (何人が何ヶ月間従事するか )。予想を下回れば儲け,上回れば損益

全体を設計・統括するリーダー (頭脳集約性 )と,ルーティンワークをこなすワーカー (労働集約性 )の存在

厳しい納期の存在→ 最後は労働集約。徹夜続きの作業,ヘルパーとしての下請け企業

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「 35 歳定年」説①技術進歩が激しく,知識・技能の陳腐化が著しい。再教育を施しても限界がある②納期が近づくと,不眠不休・徹夜の連続になるが,「身体の曲がり角」である 35 歳を過ぎると,体力的に無理がきかなくなる (管理職〈マネジャー〉か,生涯現役か,転職か )

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多重下請構造

ユーザー系ソフト子会社

ユーザー企業

メーカー系ソフト子会社

コンピュータメーカー

独立系ソフト子会社

独立系ソフト会社

フリーランサー ← お針子集団

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お針子集団多重下請構造は繊維工業 (呉服 ),建設業 (元請けのゼネコン )など,日本の伝統的産業構造でもある

末端では低賃金で労働集約型の内職従事者 (針子 )が産業を支える

アニメ,ゲーム,編集などコンテンツ産業でも同様の構造がみられる

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情報 ( 知識 ) 職業の特質 2

高いレベルの教育で専門知識の体系に精通することを要求

大きな自律性を有する (他者から制約を受けることが少ない )

職業への加入を管理し業務の基準を定める専門家組織が存在する

重要な社会的機能を果たしたり,社会的な「善」に関係したりする

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コンピュータ関連職業人いくつかの資格が必ずしも職業人の

“ ”質 を保証しない (知識の陳腐化が著しい ) AC M→ 倫理綱領

“ ”弁護士・医師・教師ほどの 専門職ではない (自律性・絶対善の面で )

株式仲買人・郵便配達人などの職業に比べると,専門職により近い

AC M: As s o c iatio n fo r C o m p uting

Mac h ine ry。倫理綱領は 1996年 7月施行

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情報職業の3モデル

代理モデル―専門的知識を持った代理に徹する。アドバイスはするが,顧客の誤った決定も受け入れる

パターナリズムモデル―顧客は意思決定の権限をすべて専門家に譲渡。顧客利益の最大化に努める

委託モデル―顧客と専門家が協議の上で意思決定

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職業倫理規定 ( 米法曹協会 )

信頼関係( c o nfid e ntial re latio n)

忠実義務( d u ty o f lo yality) を負い,その最善の利益を図る

優越的地位の濫用の禁止利害相反( c o nflic t o f in te re s t) の禁 (双方代理の禁止 )

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AC M倫理綱領一般的な道徳上の義務より特殊な,専門家としての責任–生じる可能性のあるリスクの分析を含む,コンピュータシステムとその影響を,包括的かつ徹底的に評価する

組織の指導者の義務–ユーザー及び他の人々の尊厳を守る方策をはっきり述べ,支持するht t p: / / www. f i ne. bun. kyot o- u. ac . j p/ t r 1/ 03s as aki - yu_a2. ht ml

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倫理・行為規範・法律

倫理―内発性・主体性が特徴で,外的強制を伴わない。「強制力なき法」

行為規範―道徳と同義。いかなる状況でも他者の批判を受けず,称賛を集めることが期待できる行為類型。礼儀,約束事 (プロトコル ),倫理綱領。規範集団から有形無形の拘束を受ける

法律―罰則規定を伴う

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たとえば,ファイル交換

倫理→他者の知的成果を無料で利用するのは倫理にもとる

行為規範→ 大学のネットワーク資源利用の約束事 (他者〈とくに仲間〉に迷惑をかけない )

法律→著作権 (送信可能化権 )の侵害 (一罰百戒としての逮捕 )

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情報職業に求められる倫理1

ユーザーは公平に。差別待遇をしない

知的財産権など法律を遵守するユーザーは知識をもたず,情報職業従事者の知識・経験・誠意を信頼している (知識のアンバランス )。常に専門家として最善の努力を惜しまない

ユーザーに対する説明責任を果たすユーザー・雇用者に対する守秘義務を守る (機密を漏洩しない )

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情報職業に求められる倫理2

最も無防備な人 (ユーザー )への危害を増大させてはならない

すでにリスクが存在する状況で,さらにリスクを増大させない

危険性や限界について,誠実に情報を公開する責任がある

顧客の意見を聞き,訓練を施す

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第 1 部リポートのテーマ自分が就きたい情報職業を挙げ,その職業で要求されるスキル・資格などを調べ,自分が向こう 2 年間に何をすべきかについて考察結果をまとめよ。非情報職業に就きたいと考えている者も,ここでは仮想的に情報職業について考えてみよう

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リポート提出の概要

字数 :400字程度締切 :201 1 年 1 月 7日

(金 )1 9:1 5

提出 : 電子メール o rプリントアウト– メール (report@akaokoichi . jp) の場合,添付ファイルは不可。表題に学籍番号と氏名が必ず含まれていること

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情報サービス産業とは

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情報サービス ( 産 ) 業とは〈狭義〉

①コンピュータのプログラム作成及び作成に関する調査・分析・助言等のサービス②コンピュータを用いて委託された計算・データ入力 /出力を行うサービス③各種のデータを収集・加工・蓄積し,情報として提供するサービス④ユーザーの情報処理システム・コンピュータ室などの管理運営サービス⑤市場調査やシンクタンク業務などの情報サービス業務を営む事業所

経済産業省による

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情報サービス業の歴史

① 黎明期 ~ 60 年代

大型汎用機② 形成期 70 年代

③ 成長期 80 年代

オンライン化

④ 淘汰期 90 年代前半

⑤ 再活性期

90 年代後半~

インターネット

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コンピュータ技術史の節目

1960 年代後半 ( ~1970)

未来論 大型汎用コンピュータ

社会的基盤( インフラ )の情報化

1980 年代前半( 1985)

ニューメディア

ワークステーション( WS )

オフィス・工場の情報化( OA/F A )1990 年代

前半( 1991)

マルチメディア

パソコン,テレビゲーム

生活の情報化

ミレニアム越え( 2000)

IT→ ブロードバンド

インターネット,情報家電

社会全体の情報化

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①  黎明期

コンピュータは「箱」 (+ 基本ソフト )が提供されただけプログラムはユーザー企業が内部 (システム部 )で自主開発 (内製 )

情報サービス業はプログラマー派遣業としてスタート。大手以外のユーザーの事務処理代行も

箱=筐体

I BM S/ 360

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ソフトウェア・クライシス

1 968年。システムの大規模化に伴い,生産性と信頼性が指数関数的に低下 (例 : ジグソーパズル )。プログラム滞貨 (バックログ )とバグ

構造化プログラミング手法 (ダイクストラら )・ソフトウェア工場化などで辛うじて回避

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50ピースのジグソーパズル作業時間は 10分程度

2016ピースのジグソーパズル作業時間はのべ 60 時間程度 ↓

ピースの数は 40倍。作業時間は 360倍

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構造化プログラミング

プログラム全体を,互いに独立した単位 (モジュール )に分割し,個々に開発を進め,最後に一つに組み上げる手法

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アンバンドリング政策

IBM , 69年 (日本は 72 年 )。ハードとソフトを分離して販売する手法

日本のメーカーが追随するのは70年代後半になってから。ソフトウェアが独立した商品として市場化

ユーザー企業が情報システム部や計算センターを別会社化する動き

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②  形成期特定サービス産業実態調査に「情報サービス業」が追加 (73年 )

858社, 1 672 億円, 47675 人計算事務 (42% ),データ書込み

(1 3% ),ソフト開発・プログラム作成 (1 3% ),要員派遣 (7.2% ),マシン・タイム販売 (7.1 % )

オフコン ( 富士通 )

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専業企業の躍進C S K(コンピュータサービス )。’

68年設立。ソフト開発・運用要員を人材派遣 (ファシリティ・マネジメント・サービス )。 82 年東証に株式上場

事務計算プログラムの内製比率:70年・ 77%→ 79年・ 63%に低下

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③  成長期バッチ処理→ オンライン処理化オンライン化率= 76年

21 % 89→ 年 70%

85 年通信開放: VAN(value

ad d e d ne two rk)への進化。企業内→ 業界内・異業種をつなぐオンライン

XEROX「 8000I NS 」

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メーカー系ソフト子会社

富士通,日本電気 (NEC ),日立製作所,東芝,日本 IBM などがソフトウェア子会社を全国展開

企業の情報システム部からスピンアウトした独立系ソフトウェア企業の創業 (第 1 次情報部門へ転身 )

80年代年平均 24% の市場拡大

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ユーザー系情報企業 ( 鉄鋼 )

新日鐵→ 新日鐵情報通信システム(現 : 新日鐵ソリューションズ ,80)

川崎製鉄→川鉄情報システム (83)

神戸製鋼所→コベルコシステム (83)

住友金属工業→ 内製路線を堅持 (ただし, 2000年に日本 IBM と合弁でアイエス情報システム )

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内製路線堅持のケースも内製=第 2 次情報部門自社開発を堅持しつつ,部分的外注や派遣要員でカバーする

独自の企業文化の尊重職人技的な専任 S E らの存在膨大なソフト資産との整合性良質なパッケージソフトの欠如

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④  淘汰期

企業数: 90年 (5861 社 ),売上高: 92 年 (7兆 396億円 )でピーク

「 35 歳定年」と呼ばれる,労働集約的で派遣型就業が多い特徴

多重下請構造 (お針子集団 )C・ S=クライアント / サーバ型情報システム

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バブルの崩壊 ( 93 ~ 94年 )

ダウンサイジング,オープンシステム化,ネットワーク化という技術革新とバブル経済の崩壊

ユーザー企業での,コンピュータ・システム導入の費用対効果への疑問

受託ソフト開発市場の急速な縮小中小ソフト会社が相次ぎ倒産

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90 年代の推移

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⑤  再活性期PC /WS /C ・ S システム開発に特化

特定領域のソフトウェアプロダクト /パッケージソフトの開発に特化

インター (トラ )ネットへの接続・コンテンツ作成などサービスへの特化

種々のネットワークサービス

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日本の情報サービス業の特質

優秀な人材がメーカーや大手ユーザー企業に集まる

若者の起業家精神をサポートする土壌が痩せていた

ソフトはハードの「おまけ」の因襲 (メーカーが実施する「 1 円入札」 )

国策がことごとく空振りに

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国策の失敗例日本ソフトウェア (66)。日立・日本電気・富士通・興銀の合弁。政府が 30

億円出資。汎用機で互換性がある O S

と共通開発言語IBM 互換機開発スパイ事件 (’82 年 )

TRO N プロジェクト (’84年~ )

第五世代コンピュータ開発 (’85 年~ )

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第一次情報部門の成長

情報サービス産業の成長–ユーザー系子会社 (コスト部門の第二次情報部門から,収益部門に )

–独立系・ベンチャー系情報サービス業

システムだけでなく,パッケージ系・コンテンツ系の情報業

通信事業の規模拡大 (競争 )