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外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
R&D投資を導入した一般均衡動学モデルを用いた 日本の経済成長分析
一橋大学経済研究所
外木暁幸
2015年9月
R&D投資を導入した一般均衡動学分析
INTRODUCTION
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 1
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
Corrado, et.al (2012)は先進各国の無形資産投資及びそのストックを推計し,経済成長への貢献が高いと結論
2008SNAにおいて,R&D資本を初めとする様々な非物的資本を計上することが勧告される
McGrattan and Prescott (2010,2012):非物的資本を導入することで米国の景気循環に対するモデルの説明力が向上
→問題意識:
日本経済のR&D投資データに対応するマクロ経済モデルを構築し,非物的資本投資の経済環境がその成長経路や定常均衡に与える影響を数値的に検証したい
なぜR&D投資か?
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 2
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
部分均衡分析:1つの財あるいはサービスの市場における価格と需要,供給の分析を行う
一般均衡分析:財・サービス市場,資本市場,労働市場といった複数の相互に関連した市場が同時に均衡する際の,それぞれの価格,需要,供給の分析を行う
→マクロ経済の政策の分析では一般均衡分析の視点が欠かせない
何故一般均衡モデルか?
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 3
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
複数の財が存在するモデルでは,価格と財間の財需要の代替関係の分析が欠かせない
R&D投資と物的資本投資の機会があれば,投資機会間のそれぞれの資本収益率と資本供給の代替関係の分析が欠かせない
こうした代替関係を,家計の効用最大化問題,企業の利益最大化問題という切り口で分析するのがミクロ経済学
マクロ経済を構成するのはこうした家計や企業といった最適化行動を行う経済主体
→マクロ経済モデルにもミクロ経済学的基礎は必要不可欠
なぜミクロ経済学的基礎が必要か?
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 4
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
経済的な意思決定においては,投資は今期の消費による満足を我慢することで貯蓄し,来期以降の将来の消費の満足を高めようとするトレードオフ(異時点間代替)
この異時点間代替を考察できるのが通時的な効用を最大化しようとする家計行動を導入した動学モデル
R&D投資もこうした消費-貯蓄のトレードオフの関係に服する
様々な経済政策は経済主体の消費-貯蓄の意思決定に重大な影響を与える 例(1):消費税の引き上げ
消費税の引き上げ前に駆け込み需要で購入,引き上げ後は消費を減らすことで費用を節約できる
例(2):金融政策による金利操作
政策金利を引き下げて,実質金利を低下させれば,金利収入の低い今期の貯蓄を減らして,消費財の購買に当てる.あるいは,低金利でローンを借りて耐久消費財や持ち家を購入する
何故,動学モデルか?
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 5
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
① 日本のR&D資本ストック,人的資本水準のデータを計測McGrattan and Prescott (2010)のモデルをベースに,観測可能な非物的資本を導入した動学的一般均衡モデルを構築
② 計測したマクロ経済データから,モデルのパラメーターを構造推定
③ 労働投入ウェッジ,物的資本投資ウェッジ,R&D資本投資ウェッジ,最終財部門の生産性ウェッジ,R&D生産部門の生産性ウェッジを計測して,景気循環会計
④ R&D投資減税,公的R&D支出といった科学技術政策の定常均衡,経済成長経路への影響を評価する政策シミュレーション
この研究の貢献
R&D投資を導入した一般均衡動学モデル 6
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
① 構造推計:最終財生産におけるR&D資本分配率は0.017程度と小さい.
② 成長会計:最終財のTFP上昇率が1990年代以降低下しているのみならず,R&D生産のTFP成長率も同時期に低下している.
③ 景気循環会計①:物的資本投資ウェッジは1990年代から,労働投入ウェッジは2000年代からGNIにマイナスの影響を持った.
④ 景気循環会計②:R&D投資ウェッジは1990年代以降,一貫して投資補助金と同様の効果を持った.
⑤ 政策実験:2003年以降,R&D税額控除がR&D生産にプラスに影響した.
⑥ 政策シミュレーション:公的 R&D投資の伸び率引き上げがR&D部門のTFPを上昇させ,R&D生産をかなり押し上げる.また,FGP部門の生産,消費についても小幅ながら増加させる
明らかになったこと
R&D投資を導入した一般均衡動学モデル 7
THE MODEL
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 8
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
最終財生産(FGP)の生産関数 𝑌𝑌𝑡𝑡 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 𝜃𝜃1 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼 𝜙𝜙1 𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇𝑍𝑍𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇 𝜑𝜑1
𝜃𝜃𝑇 + 𝜙𝜙𝑇 + 𝜑𝜑𝑇 = 1 ,かつ, 𝜃𝜃𝑇, 𝜙𝜙𝑇, 𝜑𝜑𝑇>0 物的資本 (𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇),R&D資本 (𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼),及び労働投入 (𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇) 𝜃𝜃𝑇, 𝜙𝜙𝑇, 𝜑𝜑𝑇はそれぞれ,FGP部門の所得における物的資本分配率,R&D資本分配率,労働分配
率に相当
𝑍𝑍𝑡𝑡は人的資本の水準,𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇は最終財生産関数におけるTFP
R&D生産の生産関数 𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 𝜃𝜃2 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼 𝜙𝜙2 𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇𝑍𝑍𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇 𝜑𝜑2
𝜃𝜃𝑇 + 𝜙𝜙𝑇 + 𝜑𝜑𝑇 = 1 ,かつ, 𝜃𝜃𝑇, 𝜙𝜙𝑇, 𝜑𝜑𝑇>0
物的資本 (𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇),R&D資本 (𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼),及び労働投入 (𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇) 𝜃𝜃𝑇, 𝜙𝜙𝑇, 𝜑𝜑𝑇はそれぞれ,R&D部門の所得における物的資本分配率,R&D資本分配率,労働分
配率に相当
𝑍𝑍𝑡𝑡は人的資本の水準,𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇は最終財生産関数におけるTFP
R&D投資のあるDGEモデル:企業
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 9
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
企業の利潤関数 𝛱𝛱𝑡𝑡 = 𝑌𝑌𝑡𝑡 + 𝑞𝑞𝑡𝑡𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼 − 𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇(𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) + 𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼 + 𝑤𝑤𝑡𝑡(𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇 + 𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇)
𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇 及び𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼 はそれぞれ,物的資本の収益率,R&D資本の収益率.𝑤𝑤𝑡𝑡は労働賃金,𝑞𝑞𝑡𝑡はR&D生産物の相対価格
企業の目的はFGP部門及びR&D部門の生産関数を前提に,𝑞𝑞𝑡𝑡, 𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇 , 𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼 , 及び𝑤𝑤𝑡𝑡 が与えられた下で次の需給量を決定することで利潤を最大化すること
最終財,R&D生産物の供給量:𝑌𝑌𝑡𝑡 ,𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼 FGP部門における物的資本,労働の需要量:𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇,𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇 R&D部門における物的資本,労働の需要量: 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇,𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇 両部門で用いるR&D資本の需要量:𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼
R&D投資のあるDGEモデル:企業
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 10
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇 = 𝜃𝜃𝑇𝑌𝑌𝑡𝑡𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇1
= 𝜃𝜃𝑇𝑞𝑞𝑡𝑡𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼
𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇2
・物的資本の収益率はFGP生産関数の物的資本の限界生産性に等しい
・ FGP生産関数の物的資本の限界生産性とR&D生産関数の物的資本の限界生産性×R&D価格は等しい
→この関係を満たさないような物的資本の偏った資源配分は最適ではない
𝑤𝑤𝑡𝑡 = φ𝑇𝑌𝑌𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡1
= φ𝑇𝑞𝑞𝑡𝑡𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼
𝐻𝐻𝑡𝑡2
・労働賃金はFGP生産関数の労働投入の限界生産性に等しい
・ FGP生産関数の労働投入の限界生産性とR&D生産関数の労働投入の限界生産性×R&D価格は等しい
→この関係を満たさないような労働投入の偏った資源配分は最適ではない
𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼 = 𝜙𝜙1𝑌𝑌𝑡𝑡+𝜙𝜙2𝑞𝑞𝑡𝑡𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼
𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼
• R&D資本の収益率はFGP生産関数のR&D資本の限界生産性とR&D生産関数のR&D資本の限界生産性× R&D価格を足しあわせたもの
→𝑞𝑞𝑡𝑡は相対価格で1前後なため,𝑌𝑌𝑡𝑡, 𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼 , 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼の相対的な大きさが,𝜙𝜙𝑇, 𝜙𝜙𝑇の値を決める
R&D投資のあるDGEモデル:企業の利潤最大化条件
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 11
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
家計のt期の効用関数 𝑈𝑈 𝑐𝑐𝑡𝑡 , 𝑙𝑙𝑡𝑡 = ln(𝑐𝑐𝑡𝑡) + 𝜓𝜓ln (𝑙𝑙𝑡𝑡)
• 消費(𝑐𝑐𝑡𝑡)と余暇(𝑙𝑙𝑡𝑡)から効用を得る.効用関数の形状は対数関数
• 𝜓𝜓 は余暇から生じる効用のウェイト
• 家計は1期あたり,1の時間を保有し,それを余暇(𝑙𝑙𝑡𝑡)とFGP部門への労働投入(ht𝑇), R&D部門への労働投入(ht𝑇)に振り分ける
家計の通時的な効用関数
�𝛽𝛽𝑡𝑡𝑈𝑈 𝑐𝑐𝑡𝑡 , 𝑙𝑙𝑡𝑡
∞
𝑡𝑡=𝑇
• β (1≥β≥0)は,時間選好要因であり,βが1未満であればより遠い将来の効用をより低く評価することを意味する
• 通時的な効用は1期あたりの効用の時間選好要因による割引現在価値を通時的に合計したもの
R&D投資のあるDGEモデル:家計
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 12
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
家計の予算制約式 𝑐𝑐𝑡𝑡 + 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼 = 𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) + 𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼𝑘𝑘𝑡𝑡𝐼𝐼 + 𝑤𝑤𝑡𝑡 ℎ𝑡𝑡𝑇 + ℎ𝑡𝑡𝑇 + 𝜁𝜁𝑡𝑡 − 𝜏𝜏𝑡𝑡 ,
• 左辺は家計の支出を,右辺は家計の可処分所得を表している
• 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇, 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇, 及び 𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼 はそれぞれ,FGP部門への物的資本投資,R&D部門への物的資本投資,R&D資本投資
• k𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇, 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇, 及び 𝑘𝑘𝑡𝑡𝐼𝐼 はそれぞれ,FGP部門の物的資本ストック,R&D部門の物的資本ストック,R&D資本ストック
• 𝜁𝜁𝑡𝑡は政府からの一括(lump sum)移転所得であり,家計の所得に加算される. 𝜏𝜏𝑡𝑡 は家計が負担する税の総額
租税 𝜏𝜏𝑡𝑡 = 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑐𝑐𝑐𝑐𝑡𝑡 + 𝜏𝜏𝑡𝑡h𝑤𝑤𝑡𝑡 ℎ𝑡𝑡𝑇 + ℎ𝑡𝑡𝑇 + 𝜏𝜏𝑡𝑡k 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 − 𝜅𝜅𝑡𝑡𝐼𝐼𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼
+ 𝜏𝜏𝑡𝑡p 𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) + 𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼𝑘𝑘𝑡𝑡𝐼𝐼 − 𝛿𝛿𝑇𝑇 (𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) − 𝜏𝜏𝑡𝑡k(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) − 𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼
+ 𝜏𝜏𝑡𝑡d�𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) + 𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼𝑘𝑘𝑡𝑡𝐼𝐼 − 𝛿𝛿𝑇𝑇 (𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) − 𝜏𝜏𝑡𝑡k(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) − 𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼
− 𝜏𝜏𝑡𝑡p 𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) + 𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼𝑘𝑘𝑡𝑡𝐼𝐼 − 𝛿𝛿𝑇𝑇 (𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) − 𝜏𝜏𝑡𝑡k(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) − 𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼 �
• 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑐𝑐, 𝜏𝜏𝑡𝑡h, 𝜏𝜏𝑡𝑡k, 𝜏𝜏𝑡𝑡p, and 𝜏𝜏𝑡𝑡d はそれぞれ,消費税率,労働所得税率,固定資産税率,企業利益税率(法人
税等の税率),資本所得分配税率(利子所得税,配当所得課税等の税率)
• 𝜅𝜅𝑡𝑡𝐼𝐼 はR&D投資に関わる税額控除率である
R&D投資のあるDGEモデル:家計
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 13
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
資本遷移式 𝑘𝑘𝑡𝑡+𝑇𝑇𝑇𝑇 = 1 − 𝛿𝛿𝑇𝑇 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 1 + 𝜂𝜂𝑡𝑡 −𝑇 𝑘𝑘𝑡𝑡+𝑇𝑇𝑇𝑇 = 1 − 𝛿𝛿𝑇𝑇 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 1 + 𝜂𝜂𝑡𝑡 −𝑇 𝑘𝑘𝑡𝑡+𝑇𝐼𝐼 = 1 − 𝛿𝛿𝐼𝐼 𝑘𝑘𝑡𝑡𝐼𝐼 + 𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼 1 + 𝜂𝜂𝑡𝑡 −𝑇
• 𝛿𝛿𝑇𝑇は物的資本減耗率,𝛿𝛿𝐼𝐼はR&D資本減耗率である
終端条件
lim𝑖𝑖→∞
�1
1 + 𝑟𝑟𝑗𝑗𝑘𝑘𝑖𝑖+𝑇𝑇𝑇𝑇
𝑖𝑖
𝑗𝑗=𝑇
= 0, lim𝑖𝑖→∞
�1
1 + 𝑟𝑟𝑗𝑗𝑘𝑘𝑖𝑖+𝑇𝑇𝑇𝑇
𝑖𝑖
𝑗𝑗=𝑇
= 0, lim𝑖𝑖→∞
�1
1 + 𝑟𝑟𝑗𝑗𝑘𝑘𝑖𝑖+𝑇𝐼𝐼
𝑖𝑖
𝑗𝑗=𝑇
= 0
• 𝑟𝑟𝑡𝑡 は割引率(資本利回り)
• 何れかの終端条件の右辺が正であれば,生涯所得が生涯消費を上回り,貯蓄を使い残す
• 何れかの終端条件の右辺が負であれば,生涯所得が生涯消費を下回り,借金を残す
• 全ての終端条件が成立することが,経済が発散経路に乗らずに定常均衡に収束するための条件である
R&D投資のあるDGEモデル:家計
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 14
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
家計は予算制約式と資本遷移式を毎期満たしつつ,通時的効用関数を最大化するように,次のように最終財の需要,保有時間の配分,及び,R&D資本投資額を決定する
消費の需要, FGP部門への物的資本投資,R&D部門への物的資本投資:𝑐𝑡 , 𝑥𝑡
𝑇1, 𝑥𝑡𝑇2
余暇消費,FGP部門への労働供給,R&D部門への労働供給: 𝑙𝑡 , ℎ𝑡1, ℎ𝑡
2
R&D資本投資(R&D生産物への需要)を決定する: 𝑥𝑡𝐼
今期のFGP部門への物的資本ストック,R&D部門への物的資本ストック, R&D資本ストックの供給は前期のそれぞれの投資額の決定によって既に決まっている(先決変数): 𝑘𝑡
𝑇1, 𝑘𝑡𝑇2, 𝑘𝑡
𝐼
R&D投資のあるDGEモデル:家計
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 15
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
同時期の消費と余暇の限界代替率と価格比の均等式
𝑈𝑐 𝑐𝑡, 𝑙𝑡𝑈𝑙 𝑐𝑡, 𝑙𝑡
=1 + 𝜏𝑡
𝑐
𝑤𝑡 1 − 𝜏𝑡ℎ
同時期の物的資本投資とR&D資本投資の利回りの均等式
1 + 𝑟𝑡+1𝑇 − 𝛿𝑇 − 𝜏𝑡+1
𝑘 (1 − 𝜏𝑡+1𝑑 − 𝜏𝑡+1
𝑝+ 𝜏𝑡+1
𝑑 𝜏𝑡+1𝑝
)
=𝑟𝑡+1
𝐼 + 𝑞𝑡+1 1 − 𝛿𝐼 1 − 𝜅𝑡+1𝐼 + 𝑟𝑡+1
𝐼 + 𝑞𝑡+1(1 − 𝛿𝐼) (−𝜏𝑡+1𝑝
− 𝜏𝑡+1d + 𝜏𝑡+1
d 𝜏𝑡+1𝑝
)
𝑞𝑡 1 − 𝜅𝑡𝐼 − 𝜏𝑡
p− 𝜏𝑡
𝑑 + 𝜏𝑡𝑑𝜏𝑡
𝑝
今期の消費と来期の消費の限界代替率と資本利回りの均等式
𝑈𝑐 𝑐𝑡, 𝑙𝑡𝛽𝑈𝑐 𝑐𝑡+1, 𝑙𝑡+1
= 1 + 𝜂𝑡−1
1 + 𝜏𝑡𝑐
1 + 𝜏𝑡+1𝑐 1 + 𝑟𝑡+1
𝑇 − 𝛿𝑇 − 𝜏𝑡+1𝑘 (1 − 𝜏𝑡+1
𝑑 − 𝜏𝑡+1𝑝
+ 𝜏𝑡+1𝑑 𝜏𝑡+1
𝑝)
R&D投資のあるDGEモデル:家計の通時効用最大化条件
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 16
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
一人あたり変数と集計変数
𝑌𝑡 , 𝑋𝑡𝐼 , 𝐾𝑡
𝑇1, 𝐾𝑡𝑇2, 𝐾𝑡
𝐼 , 𝐻𝑡1, 及び 𝐻𝑡
2は集計量であり,𝑦𝑡 , 𝑥𝑡𝐼 , 𝑘𝑡
𝑇1, 𝑘𝑡𝑇2, 𝑘𝑡
𝐼 , ℎ𝑡1, 及び ℎ𝑡
2の 𝑁𝑡倍である
外生変数の成長率
労働人口(𝑁𝑡),及び,人的資本水準 (𝑍𝑡),はそれぞれ外生的に成長率 𝜂𝑡,及び 𝑧𝑡で成長する
𝑁𝑡+1 = 1 + 𝜂𝑡 𝑁𝑡 𝑍𝑡+1 = 1 + 𝑧𝑡 𝑍𝑡
両部門の全要素生産性,𝐴𝑡1と𝐴𝑡
2,は次のように,共通のトレンド成長率,γ,と個別の外生的な成長率,𝑎𝑡
1と𝑎𝑡2に従って成長する
𝐴𝑡+11 = 1 + 𝑎𝑡
1 (1 + γ)𝐴𝑡1
𝐴𝑡+12 = 1 + 𝑎𝑡
2 (1 + γ)𝐴𝑡2
R&D投資のあるDGEモデル:その他の仮定
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 17
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
代表的家計は予算制約式と資本遷移式を毎期満たしつつ,価格,𝑞𝑡 , 𝑟𝑡𝑇 , 𝑟𝑡
𝐼 , 及び𝑤𝑡 が与えられた下で通時効用関数を最大化するようct,xt
𝑇1,xt𝑇2,ht
1,ht2を決定する.
代表的企業はFGP部門とR&D部門の生産関数を前提にしつつ,価格,𝑞𝑡 , 𝑟𝑡𝑇 , 𝑟𝑡
𝐼 , 及び𝑤𝑡 が与えられた下で利潤関数を最大化するように生産要素の投入量,𝐾𝑡
𝑇1, 𝐾𝑡𝑇2, 𝐾𝑡
𝐼 , 𝐻𝑡
1, 及び 𝐻𝑡2を決定する.
最終財市場(𝑦𝑡 = 𝑥𝑡𝑇1 + 𝑥𝑡
𝑇2 + 𝑐𝑡),R&D生産物市場,FGPの労働市場,R&Dの労働市場,FGP部門の物的資本市場,R&D部門の物的資本市場,及びR&D資本市場が需給均衡する.
政府の予算制約式が毎期,均衡する( τt = 𝜁𝑡 ).
R&D投資のあるDGEモデル:動学的一般均衡の条件
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 18
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
経済が動学的一般均衡の条件を満たすためには,家計は保有する3つの資本全てで終端条件を満たさなければならない
このとき,全ての発散経路(資本=資産がプラス無限大かマイナス無限大に発散する経路)は排除され,生涯所得と生涯消費が均等して,通時効用関数を最大化する条件がそろう
このとき,経済は定常状態と呼ばれる成長経路に乗ることになる
定常状態の条件を与えるには,1人あたりの経済変数を外生的なトレンドを持つ人的資本水準,及び,成長トレンドで割って,トレンド除去済みの変数を定義する必要がある
x t =xt
1 + 𝛾 𝑡𝑍𝑡
R&D投資のあるDGEモデル:定常状態
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 19
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最終財,R&Dの生産
𝑦 𝑠𝑠 = 𝑘 𝑠𝑠𝑇1 𝜃1
𝑘 𝑠𝑠𝐼 𝜙1
𝑎 𝑠𝑠1 ℎ𝑠𝑠
1 𝜑1
𝑥 𝑠𝑠𝐼 = 𝑘 𝑠𝑠
𝑇1 𝜃2𝑘 𝑠𝑠
𝐼 𝜙2𝑎 𝑠𝑠
2 ℎ𝑠𝑠2 𝜑2
物的資本収益率 1 = 𝛽 ss 1 + 1 − 𝜏𝑠𝑠
𝑑 1 − 𝜏𝑠𝑠𝑝
r𝑠𝑠T − 𝛿𝑇 − 𝜏𝑠𝑠
𝑘
R&D資本収益率とR&D価格
1 = 𝛽 𝑠𝑠
𝑟𝑠𝑠𝐼 + 𝑞𝑠𝑠 1 − 𝛿𝐼 1 − 𝜅𝑠𝑠
𝐼 + 𝑟𝑠𝑠𝐼 + 𝑞𝑠𝑠(1 − 𝛿𝐼) (−𝜏𝑠𝑠
𝑝− 𝜏𝑠𝑠
d + 𝜏𝑠𝑠d 𝜏𝑠𝑠
𝑝)
𝑞𝑠𝑠 1 − 𝜅𝑠𝑠𝐼 − 𝜏𝑠𝑠
𝑝− 𝜏𝑠𝑠
𝑑 + 𝜏𝑠𝑠𝑑 𝜏𝑠𝑠
𝑝
賃金と労働投入の限界生産性
𝑤𝑠𝑠 = 𝜑1
𝑦 𝑠𝑠
ℎ𝑠𝑠1 = 𝜑2
𝑞𝑠𝑠𝑥 𝑠𝑠𝐼
ℎ𝑠𝑠2
物的資本収益率と物的資本の限界生産性
𝑟𝑡𝑇 = 𝜃1
𝑦 𝑠𝑠
𝑘 𝑠𝑠𝑇1
= 𝜃2
𝑞𝑠𝑠𝑥 𝑠𝑠𝐼
𝑘 𝑠𝑠𝑇2
R&D投資のあるDGEモデル:定常状態の条件
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 20
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
R&D資本収益率とR&D資本の限界生産性
𝑟𝑠𝑠𝐼 =
𝜙1𝑦 𝑠𝑠 + 𝜙2𝑞𝑠𝑠𝑥 𝑠𝑠𝐼
𝑘 𝑠𝑠𝐼
余暇,余暇と賃金
𝑐 𝑠𝑠 =(1 − 𝜔𝑠𝑠
𝐿 ) 1 − 𝜏𝑠𝑠ℎ
1 + 𝜏𝑠𝑠𝑐
1 − ℎ𝑠𝑠
𝜓𝑤 𝑠𝑠
資本遷移式 𝑥 𝑠𝑠
𝑇1 = (1 + 𝜂𝑠𝑠)(1 + 𝛾𝑠𝑠)(1 + 𝑧𝑠𝑠) − 1 − 𝛿𝑇 𝑘 𝑠𝑠𝑇1
𝑥 𝑠𝑠𝑇2 = (1 + 𝜂𝑠𝑠)(1 + 𝛾𝑠𝑠)(1 + 𝑧𝑠𝑠) − 1 − 𝛿𝑇 𝑘 𝑠𝑠
𝑇2
𝑥 𝑠𝑠𝐼 = (1 + 𝜂𝑠𝑠)(1 + 𝛾𝑠𝑠)(1 + 𝑧𝑠𝑠) − 1 − 𝛿𝐼 𝑘 𝑠𝑠
𝐼
最終財市場の均衡条件 𝑐 𝑠𝑠 + 𝑥 𝑠𝑠
𝑇1 + 𝑥 𝑠𝑠𝑇2 = 𝑦 𝑠𝑠
→これらの式を同時に満たす様に,𝑘ss𝑇1, 𝑘ss
𝑇2, ℎss1 , ℎss
2 を解くことで,定常状態における全ての内生変数の値を求めることができる
R&D投資のあるDGEモデル:定常状態の条件
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 21
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
R&D投資額の計測 R&D輸出入は2005年からしかデータが無いため,今回は考慮していない
カリブレーションと構造推定:データ
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 22
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
𝑿𝑿𝒕𝒕𝑰𝑰: 𝐑𝐑&𝐃𝐃総生産 = 内部使用研究費(コスト) 𝒀𝒀𝒕𝒕: 最終財総生産 𝐅𝐅𝐅𝐅𝐅𝐅 =𝐅𝐅𝐆𝐆𝐆𝐆𝟗𝟗𝟗𝟗 − 政府𝐑𝐑&𝐃𝐃 総生産 −政府𝐑𝐑&𝐃𝐃 資本減耗 −𝐆𝐆𝐅𝐅𝐆𝐆𝐍𝐍𝐍𝐍 𝐑𝐑&𝐃𝐃 総生産 − 𝐆𝐆𝐅𝐅𝐆𝐆𝐍𝐍𝐍𝐍 𝐑𝐑&𝐃𝐃資本減耗
𝑿𝑿𝒕𝒕𝑻𝑻𝑻𝑻: 𝐅𝐅𝐅𝐅𝐅𝐅部門の物的資本総投資 = 国内総資本形成 + 純輸出 − 𝐑𝐑&𝐃𝐃部門の物的資本総投資
𝑿𝑿𝒕𝒕𝑻𝑻𝑻𝑻: 𝐑𝐑&𝐃𝐃部門の物的資本投資 = 𝐍𝐍𝐑𝐑𝐃𝐃における有形固定資産購入費
𝐂𝐂𝐭𝐭: 消費= 民間最終消費支出 + 政府最終消費支出
労働投入:𝒉𝒉𝒕𝒕: 𝑻𝑻人当たり労働時間比率 = 𝑻𝑻人あたり年間労働時間𝑻𝑻人あたり年間保有時間
• 1人あたり年間労働時間=平均月間労働時間×12×就労者数
• 1人あたり年間保有時間=1日の保有時間(16時間)×年間所定労働日数(250日)×15歳以上人口
カリブレーションと構造推定:データ
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 23
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
𝛿𝛿𝑇𝑇(物的資本の資本減耗率):CY1980から2011の資本ストックに対する固定資本
減耗平均値
𝛿𝛿I (R&D資本の資本減耗率):BEA (2006)及び,内閣府経済社会総合研究所
(2012)のR&D資本ストック推計の先行研究で用いられた 値である15%
𝜓𝜓(効用関数における余暇からの効用のウェイト):余暇の限界代替率と価格比の均
等式から推計
𝜑𝜑1(FGP部門の労働分配率):
𝜑𝜑1 = average雇用者報酬 + 混合所得
最終財生産 𝑡𝑡=1980
2011
𝜑𝜑2 (R&D部門の労働分配率):
𝜑𝜑2 = averageR&D人件費
内部使用研究費(コスト) 𝑡𝑡=1980
2011
𝛽𝛽(表的家計の時間選好要因):0.98と仮定した
カリブレーションと構造推定:構造パラメーターの推定
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 24
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
𝑲𝑲𝒕𝒕𝑻𝑻𝑻𝑻(FGP部門の物的資本ストック):𝑿𝑿𝒕𝒕𝑻𝑻𝑻𝑻のデータと𝛿𝛿𝑇𝑇を用いて恒久棚卸法
𝑲𝑲𝒕𝒕𝑻𝑻𝑻𝑻(R&D部門の物的資本ストック): 𝑿𝑿𝒕𝒕𝑻𝑻𝑻𝑻のデータと𝛿𝛿𝑇𝑇を用いて恒久棚卸法
𝑲𝑲𝒕𝒕𝑰𝑰(R&D資本ストック): 𝑿𝑿𝒕𝒕𝑰𝑰のデータと𝛿𝛿𝐼𝐼を用いて恒久棚卸法
𝑵𝑵𝒕𝒕(人口):総務省『人口推計』の15歳以上人口 𝒁𝒁𝒕𝒕(人的資本の水準):平均就学年数とミンサー型賃金関数を用いて計算した.
Zt =𝛼𝛼𝑀𝑀
1 − 𝜓𝜓𝑀𝑀𝑠𝑠𝑡𝑡average 1−𝜓𝜓𝑀𝑀
• 平均就学年数はBarro and Lee (2011)の日本の推計値を,ミンサー型賃金関数のパラメーターについては,Miyazawa (2011)の研究に従い,αM = 0.32, 𝜓𝜓𝑀𝑀 = 0.28 を用いた
カリブレーションと構造推定:データ
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 25
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
𝜏𝜏𝑡𝑡𝑐𝑐(消費税率):現実に実施されている消費税率とする.1980年から1988年までは0%,1989年から1996年までは3%,1997年から2011年までは5%
𝜏𝜏𝑡𝑡ℎ(労働所得税率):給与所得,退職所得,報酬料金等所得,非居住者所得,及び地方税の住民税
(個人分)の合計を労働所得税とし,SNAの名目雇用者報酬で割って求めた.この税率の 1980年から2011年の平均値を求めて全期間に適用
τt𝑘𝑘 (固定資産税率):標準税率1.4%を全期間で用いた.
τt𝑝𝑝 (企業利益課税率):国税の法人税額,地方税の事業所税,地方法人特別税,住民税(法人
分)を企業利益課税とし,これを営業余剰より固定資本減耗,内部使用研究費,固定資産税率×物的資本ストック額を引いた課税前企業利益で割って求めた.この税率の 1980年から2011年の平均値を求めて全期間に適用
𝜏𝜏𝑡𝑡𝑑𝑑 (資本所得税率):国税の利子所得等と配当所得の課税額の合計を課税前企業利益から企業利
益税額を差し引いたもので割って求めた.この税率の 1980年から2011年の平均値を求めて全期間に適用
κt𝐼𝐼 (R&D投資税額控除率):試験研究費の控除額等をR&D投資額で割って求めた.この税率は平均値を全期間に適用せずに,毎年変動するものとした.
カリブレーションと構造推定:税率の計算
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 26
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
𝜽𝜽𝑻𝑻,𝝓𝝓𝑻𝑻,𝜽𝜽𝑻𝑻,𝝓𝝓𝑻𝑻(FGP部門とR&D部門の生産関数パラメーター):GMM推計
データ: 𝑀𝑀 = 𝑚𝑚1980,⋯ ,𝑚𝑚2010 ,
𝑚𝑚𝑡𝑡 = 𝑌𝑌𝑡𝑡,𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼 ,𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇1,𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇2,𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼 ,𝜅𝜅𝑡𝑡𝐼𝐼 , 𝜅𝜅𝑡𝑡+1𝐼𝐼 , 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑝𝑝, 𝜏𝜏𝑡𝑡+1
𝑝𝑝 , 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑑𝑑, 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 , 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑘𝑘
モーメント条件 min𝜃𝜃1,𝜃𝜃2
Γ(𝑀𝑀;𝜃𝜃1, 𝜃𝜃2) = 𝜒𝜒 M; 𝜃𝜃1,𝜃𝜃2 Σ−1𝜒𝜒 M; 𝜃𝜃1,𝜃𝜃2 ′
• 𝜒𝜒 𝑀𝑀;𝜃𝜃1,𝜃𝜃2 =1𝑇𝑇∑ 𝑓𝑓1 𝑚𝑚𝑡𝑡; 𝜃𝜃1,𝜃𝜃2𝑡𝑡
1𝑇𝑇∑ 𝑓𝑓2 𝑚𝑚𝑡𝑡; 𝜃𝜃1,𝜃𝜃2𝑡𝑡
• 𝑓𝑓1 𝑚𝑚𝑡𝑡; 𝜃𝜃1,𝜃𝜃2 =
1 + 𝑟𝑟𝑡𝑡+1𝑇𝑇 − 𝛿𝛿𝑇𝑇 − 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑘𝑘 1− 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 − 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑝𝑝 + 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 𝜏𝜏𝑡𝑡+1
𝑝𝑝 −𝑟𝑟𝑡𝑡+1𝐼𝐼 +𝑞𝑞𝑡𝑡+1 1−𝛿𝛿𝐼𝐼 1−𝜅𝜅𝑡𝑡+1𝐼𝐼 1−𝜏𝜏𝑡𝑡+1
𝑝𝑝 −𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 +𝜏𝜏𝑡𝑡+1
𝑑𝑑 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑝𝑝
𝑞𝑞𝑡𝑡 1−𝜅𝜅𝑡𝑡𝐼𝐼 −𝜏𝜏𝑡𝑡𝑝𝑝−𝜏𝜏𝑡𝑡
𝑑𝑑+𝜏𝜏𝑡𝑡𝑑𝑑𝜏𝜏𝑡𝑡
𝑝𝑝
• 𝑓𝑓2 Χ;𝜃𝜃1, 𝜃𝜃2 = 𝜃𝜃1𝑦𝑦�𝑡𝑡𝑘𝑘�𝑡𝑡𝑇𝑇1
− 𝜃𝜃2𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥�𝑡𝑡𝐼𝐼
𝑘𝑘� 𝑡𝑡𝑇𝑇2
カリブレーションと構造推定:生産関数の推定①
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 27
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼 = 𝜙𝜙1𝑦𝑦�𝑡𝑡+𝜙𝜙2𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥�𝑡𝑡𝐼𝐼
𝑘𝑘� 𝑡𝑡𝐼𝐼,
𝜑𝜑1 = 1 − 𝜙𝜙1 − 𝜃𝜃1, 𝜑𝜑2 = 1 − 𝜙𝜙2 − 𝜃𝜃2. ウェイト行列(Σ)については,ファースト・ラウンドでは,
Σ = 1 00 1 ,を用いた.セカンド・ラウンド以降に前ラウンドのモーメント条件の推定誤差の分散
-共分散行列, 𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶(𝑓𝑓1 𝑚𝑚𝑡𝑡;𝜃𝜃1, 𝜃𝜃2 ,𝑓𝑓2 𝑚𝑚𝑡𝑡; 𝜃𝜃1,𝜃𝜃2 ), の固有値の対角行列,Σ = λ1 00 λ2
を用いた
→Γ(M; 𝜃𝜃1,𝜃𝜃2)が十分小さくなるまで,非線形Grid Searchによる推定ラウンドを繰り返すことでパラメーターが推定できる
カリブレーションと構造推定:生産関数の推定①
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 28
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
カリブレーションと構造推定:構造パラメーター
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 29
Time Discount Factor 0.980000000000000
Trend Growth Rate of TFP in FGP Sector 0.009624326842325
Weight of Utility from Leisure 1.730726793404400
Tangible Capital Share in FGP Sector 0.396956117920397
R&D Capital Share in FGP Sector 0.017111404194009
Labor Share in FGP Sector 0.585932477885594
Tangible Capital Share in R&D Sector 0.153413459575458
R&D Capital Share in R&D Sector 0.369837767290490
Labor Share in R&D Sector 0.476748773134053
Depreciation Rate of Tangible Capital 0.073503400483774
Depreciation Rate of R&D Capital 0.150000000000000
𝛽𝛽
𝛿𝛿𝐼𝐼𝛿𝛿𝑇𝑇
𝜃𝜃1
𝜙𝜙1
𝜃𝜃2
𝜓𝜓
𝜑𝜑2
𝜑𝜑1
𝜙𝜙2
𝛾
GROWTH ACCOUNTING
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 30
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
通常の生産関数による成長会計 𝑌𝑌𝑡𝑡 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇 1−𝜑𝜑1 𝐴𝐴𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡 𝜑𝜑1
人的資本を加えた場合 𝑌𝑌𝑡𝑡 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇 1−𝜑𝜑1 𝐴𝐴𝑡𝑡𝑍𝑍𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡 𝜑𝜑1 ,
成長会計
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 31
Contribution (% point)
TFPWork Hour Human
Capital
1960-1970 10.13 0.42 0.32 0.10 4.74 4.96
1970-1980 4.35 0.65 0.13 0.51 3.89 -0.19
1980-1990 4.24 0.87 0.55 0.31 1.95 1.42
1990-2000 1.26 -0.01 -0.40 0.39 1.29 -0.02
2000-2011 0.34 -0.11 -0.34 0.23 0.36 0.09
Output
Labor Input CapitalStock
Contribution (% point)
TFP
1960-1970 10.13 0.32 4.74 5.06
1970-1980 4.35 0.13 3.89 0.32
1980-1990 4.24 0.55 1.95 1.74
1990-2000 1.26 -0.40 1.29 0.37
2000-2011 0.34 -0.34 0.36 0.32
OutputCapitalStock
LaborInput
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
2部門成長モデルの生産関数による成長会計
𝑌𝑌𝑡𝑡 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇1 𝜃𝜃1 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼 𝜙𝜙1 𝐴𝐴𝑡𝑡1𝑍𝑍𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡1 𝜑𝜑1
𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 𝜃𝜃2 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼 𝜙𝜙2 𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇𝑍𝑍𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇 𝜑𝜑2
→FGP門:
R&D資本ストックが1990-2000年代とその寄与度が低下している→R&D部門:
R&D生産の伸び率が1990-2000年代は低下が著しい.
同時期はR&D部門のTFP成長率がマイナスとなっている
成長会計
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 32
BUSINESS CYCLE ACCOUNTING
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 33
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
Chari, Kehoe and McGrattan (2007)の研究では景気循環会計のキーファクターとして,観測されたマクロ経済データと標準的なRBCモデルの生成するデータの差として,複数のWedge(市場の歪み)を計測することが提案された
DGEモデルを用いてウェッジを計測
物的資本投資ウェッジ
R&D投資ウェッジ
労働投入ウェッジ
最終財部門の生産性ウェッジ
R&D生産部門の生産性ウェッジ
景気循環会計:労働投入,物的資本投資,R&D投資のウェッジ
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 34
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
代表的家計の予算制約式にウェッジを導入する
𝑐𝑐𝑡𝑡 + 1 + 𝜔𝜔𝑡𝑡𝑇𝑇 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇1 + 𝑥𝑥𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 + 1 + 𝜔𝜔𝑡𝑡
𝐼𝐼 𝑞𝑞𝑡𝑡𝑥𝑥𝑡𝑡𝐼𝐼 = 𝑟𝑟𝑡𝑡𝑇𝑇(𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇1 + 𝑘𝑘𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇) + 𝑟𝑟𝑡𝑡𝐼𝐼𝑘𝑘𝑡𝑡𝐼𝐼 + 1 − 𝜔𝜔𝑡𝑡𝐿𝐿 𝑤𝑤𝑡𝑡 ℎ𝑡𝑡1 + ℎ𝑡𝑡𝑇 + 𝜁𝜁𝑡𝑡 − 𝜏𝜏𝑡𝑡
1 + 𝜔𝜔𝑡𝑡𝑇𝑇:物的資本投資ウェッジ
1 + 𝜔𝜔𝑡𝑡𝐼𝐼:R&D資本投資ウェッジ
1 −𝜔𝜔𝑡𝑡𝐿𝐿:労働投入ウェッジ
家計の通時効用の最大化条件は次のように変わる
Ω𝑡𝑡𝐿𝐿 = (1 − 𝜔𝜔𝑡𝑡𝐿𝐿) = ct
1 + 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑐𝑐
1 − 𝜏𝜏𝑡𝑡ℎ𝜓𝜓 1 − ℎ𝑡𝑡 −1
𝑤𝑤𝑡𝑡=
1 + 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑐𝑐
1 − 𝜏𝜏𝑡𝑡ℎc�t𝑦𝑦�𝑡𝑡
𝜓𝜓𝜑𝜑1
ℎ𝑡𝑡1
𝑙𝑙𝑡𝑡
Ω𝑡𝑡+1𝑇𝑇 = (1 + 𝜔𝜔𝑡𝑡+1𝑇𝑇 ) =
1�̂�𝛽𝑡𝑡�̂�𝑐𝑡𝑡+1�̂�𝑐𝑡𝑡
1 + 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑐𝑐
1 + 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑐𝑐Ω𝑡𝑡𝑇𝑇 − 𝑟𝑟𝑡𝑡+1𝑇𝑇 + 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑘𝑘 − (−𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 − 𝜏𝜏𝑡𝑡+1
𝑝𝑝 + 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑝𝑝 ) 𝑟𝑟𝑡𝑡+1𝑇𝑇 − 𝛿𝛿𝑇𝑇 − 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑘𝑘
1 − 𝛿𝛿𝑇𝑇
Ω𝑡𝑡+1𝐼𝐼 = 1 + 𝜔𝜔𝑡𝑡+1𝐼𝐼 =
𝑞𝑞𝑡𝑡 (Ω𝑡𝑡𝐼𝐼 − 𝜅𝜅𝑡𝑡𝐼𝐼) − 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑑𝑑 − 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑝𝑝 + 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑑𝑑𝜏𝜏𝑡𝑡
𝑝𝑝 1�̂�𝛽𝑡𝑡�̂�𝑐𝑡𝑡+1�̂�𝑐𝑡𝑡
1 + 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑐𝑐
1 + 𝜏𝜏𝑡𝑡𝑐𝑐− 𝑟𝑟𝑡𝑡+1𝐼𝐼 − 𝑟𝑟𝑡𝑡+1𝐼𝐼 + 𝑞𝑞𝑡𝑡+1(1 − 𝛿𝛿𝐼𝐼) (−𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 − 𝜏𝜏𝑡𝑡+1
𝑝𝑝 + 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑑𝑑 𝜏𝜏𝑡𝑡+1𝑝𝑝 )
𝑞𝑞𝑡𝑡+1 1 − 𝛿𝛿𝐼𝐼+ 𝜅𝜅𝑡𝑡+1𝐼𝐼
景気循環会計:モデルへのウェッジの導入
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 35
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
最終財部門の生産性ウェッジ
𝑎𝑎�𝑡𝑡1 =1ℎ𝑡𝑡1
𝑦𝑦�𝑡𝑡𝑘𝑘�𝑡𝑡𝑇𝑇1
𝜃𝜃1 𝑘𝑘�𝑡𝑡𝐼𝐼𝜙𝜙1
11−𝜃𝜃1−𝜙𝜙1
R&D生産部門の生産性ウェッジ
𝑎𝑎�𝑡𝑡𝑇 =1ℎ𝑡𝑡𝑇
𝑦𝑦�𝑡𝑡𝑘𝑘�𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇
𝜃𝜃2 𝑘𝑘�𝑡𝑡𝐼𝐼𝜙𝜙2
11−𝜃𝜃2−𝜙𝜙2
→これらのウェッジを数値モデルとデータから計測し,モデルの説明力を検討する
景気循環会計:モデルへのウェッジの導入
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 36
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
右図は景気循環会計を行う際の外生変数の観測された値,及び,将来の外挿値
ウェッジを5つ全て外生変数としてモデルにインプットすると,生成される寧静変数は観測データと一致する
景気循環会計:外生変数
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 37
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
景気循環会計:ウェッジの内生変数への効果
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 38
-0.15
-0.10
-0.05
0.00
0.05
0.10
0.15
1980 1990 2000 2010
No Tngible Investment Wedge No R&D Investment WedgeNo Labor Wedge No FGP Productivity WedgeNo R&D Productivity Wedge
Output
-0.10
-0.08
-0.06
-0.04
-0.02
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
1980 1990 2000 2010
No Tngible Investment Wedge No R&D Investment WedgeNo Labor Wedge No FGP Productivity WedgeNo R&D Productivity Wedge
Consumption
-0.07
-0.05
-0.03
-0.01
0.01
0.03
0.05
1980 1990 2000 2010
No Tngible Investment Wedge No R&D Investment WedgeNo Labor Wedge No FGP Productivity WedgeNo R&D Productivity Wedge
Leisure
-0.30
-0.25
-0.20
-0.15
-0.10
-0.05
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
1980 1990 2000 2010
No Tngible Investment Wedge No R&D Investment WedgeNo Labor Wedge No FGP Productivity WedgeNo R&D Productivity Wedge
R&D Production
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
物的資本投資ウェッジ:1980年代までは0を下回っており,ウェッジの存在が産出にプラスの効果を持った.1990年代以降は0を上回っていおり,物的投資ウェッジが産出を抑制する効果を持った
労働投入ウェッジ:1990年代までは産出にプラスの効果を持ったが,2000年ごろを境にして,マイナスの効果に転じたことがわかる.
FGP部門の生産性ウェッジ:1990年代以降の日本経済の成長低迷の主犯と目されてきたが,トレンドを除去した後のFGP部門の生産性ウェッジを用いると,1990年代から2000年代半ばにかけてプラスの効果を持った
R&D投資ウェッジ: 1990年代を通じてR&D生産に大きなプラスの効果を持ったが,その効果は2000年代以降は縮小している
R&D部門の生産性ウェッジ:R&D部門の生産性ウェッジはほぼ景気と相関して,好景気時にはプラスの,不況時にはマイナスの効果
景気循環会計:ウェッジの産出への効果
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 39
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
政策実験:R&D税額控除の内生変数への効果
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 40
-0.0100
-0.0075
-0.0050
-0.0025
0.0000
0.0025
0.0050
0.0075
0.0100
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
No R&D Tax Credit
Output
-0.0100
-0.0075
-0.0050
-0.0025
0.0000
0.0025
0.0050
0.0075
0.0100
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
No R&D Tax Credit
Consumption
-0.0100
-0.0075
-0.0050
-0.0025
0.0000
0.0025
0.0050
0.0075
0.0100
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
No R&D Tax Credit
Leisure
-0.1000
-0.0800
-0.0600
-0.0400
-0.0200
0.0000
0.0200
0.0400
0.0600
0.0800
0.1000
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
No R&D Tax Credit
R&D Production
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
R&D税額控除率についての反実政策実験(Counter-factual Policy Experiment)
R&D税額控除率のみを全てゼロとして,数値モデルの定常状態及び収束経路を計算
控除率がゼロのケースでは控除率に実際のデータを用いたケースよりも定常状態のR&D資本ストックが3%程度小さくなる
定常状態での最終財生産,賃金,そして家計の消費は0.1%程度低下
R&D税額控除は2003年以降,R&D投資に対して一定のプラス効果を持った
政策実験:R&D税額控除の内生変数への効果
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 41
SIMULATION
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 42
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
外挿区間におけるシミュレーションを行い,異なる外生変数,政策環境の下での経済の定常均衡及び収束経路について検討する
成長トレンド,人的資本水準, FGP部門とR&D部門のTFPについては,前節の図2と同じデータを用いる
人口に関しては,国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計」の中位予測を用いる
消費税は,前節では2012年以降,1980-2011年の平均値に次第に戻ると仮定していたが,この節では税率を2014年に8%に,2017年に10%に引き上げると想定した.
その他の税率については,前節の想定を維持
政策シミュレーション:ベースライン・シナリオ①
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 43
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
人口構成の高齢化に伴う,社会保障関連の負担増をどのようにシナリオに組み込むのか
宮崎(2009)では,労働所得税と同じ働きをする社会保障負担の増加が,労働ウェッジ(ΩtL = 1 − ωt
L )の低下トレンドを作り出して
いる可能性を指摘している
ベースライン・シナリオでは労働ウェッジは高齢化率(65歳以上人口/15歳以上人口)の関数であると仮定して外挿を行う
政策シミュレーション:ベースライン・シナリオ②
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 44
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
・人口予測値の変更:1人当たりの生産は増加する.また,生産,消費は上昇トレンドを描いて,高い定常状態に収束する.
・更に,消費税率の引上:定常状態での余暇への選好が増して労働供給が低下するため生産は減少する.
・高齢化を反映した下方トレンドを持つ労働ウェッジを組み込むと,さらに余暇選好が高まり,生産,消費が低下する.
政策シミュレーション:ベースライン・シナリオ③
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 45
FGP 消費
R&D 余暇
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
公的R&Dは基礎的な研究を提供することで民間企業の研究開発と特許取得,公的研究機関の研究開発と発展を誘発し,R&D生産の生産性を高める効果があると考えられる.
Ikeuchi et al. (2014)はこうした公的R&Dの民間企業生産へのスピルオーバー効果が存在することを指摘している.
公的R&D資本ストックがR&D生産のTFP水準と関係があると想定して,政策シミュレーションを試みる
R&D生産を,民間企業R&D,𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼,と公的R&D,𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼,(政府とNPISHのR&D)に分け,𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼には次のようにR&D部門のTFPと関係があると想定する
𝑌𝑌𝑡𝑡 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇1 𝜃𝜃1 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼 + 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼 𝜙𝜙1 𝐴𝐴𝑡𝑡1𝑍𝑍𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡1 𝜑𝜑1
𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼 = 𝐾𝐾𝑡𝑡𝑇𝑇𝑇 𝜃𝜃2 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼 + 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼 𝜙𝜙2 𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇(𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼)𝑍𝑍𝑡𝑡𝐻𝐻𝑡𝑡𝑇 𝜑𝜑2
政策シミュレーション:公的R&Dの役割
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 46
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
1965-2011年の公的R&D資本ストック,𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼,とR&D部門のTFP,𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇,の関係を次の回帰式で推定する
log 𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇 − �̅�𝐴𝑇 = 𝜌𝜌 ∙ log 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼 − 𝐾𝐾�𝐼𝐼𝐼𝐼 + 𝑒𝑒𝑡𝑡 �̅�𝐴𝑇 と 𝐾𝐾�𝐼𝐼𝐼𝐼 はそれぞれ,𝐴𝐴𝑡𝑡𝑇 と 𝐾𝐾𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼の通時平均値である
推定された係数は 𝜌𝜌 = 0.3609
R&D部門の生産性の外挿区間については以下の3つのシナリオ
① Scenario 1: 𝑋𝑋𝑡𝑡+1𝐼𝐼𝐼𝐼
𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼= 0.995 (2001–2011の平均
成長率) if t = 2012,⋯ , 2070
② Scenario 2: 𝑋𝑋𝑡𝑡+1𝐼𝐼𝐼𝐼
𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼= 1.012 (1991–2011年の平
均成長率) if t = 2012,⋯ , 2070
③ Scenario 3: 𝑋𝑋𝑡𝑡+1𝐼𝐼𝐼𝐼
𝑋𝑋𝑡𝑡𝐼𝐼𝐼𝐼= 1.020 if
政策シミュレーション:公的R&Dのシナリオ
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 47
公的R&D投資のシナリオ
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
政策シミュレーション:経済の収束経路
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 48
R&D Price
Labor Wage
Leisure
Consumption Final Goods Production
R&DProduction
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
政策シミュレーション:経済の定常状態
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 49
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
定常状態における内生変数を比較するとシナリオ3ではシナリオ1に比べ,毎年の最終財生産はが1%高くなる
消費,賃金率は最終財生産と同様に1%高くなり,余暇時間は変化がない
また,シナリオ3ではシナリオ1に比べ, R&D生産は42%ほど増加し,R&D生産物の相対価格は20%ほど低下する
このシミュレーションでは,R&D資本の非競合性と公的R&D資本のスピルオーバー効果を組み込んだ一般均衡動学モデルにおいて,公的R&D投資を増やすことで,経済厚生を高めることが示された
政策シミュレーション:公的R&Dの役割
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 50
CONCLUSION
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 51
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
① 生産関数の推計:最終財生産におけるR&D資本分配率は1.7%程度と小さい.一方,R&D生産におけるR&D資本分配率は37.0%
② 成長会計:最終財のTFP上昇率が1990年代以降低下しているのみならず,R&D生産のTFP成長率も同時期に低下している
③ 景気循環会計①:物的資本投資ウェッジは1990年代から,労働投入ウェッジは2000年代からGNIにマイナスの影響を持った.
④ 景気循環会計②:R&D投資ウェッジは1990年代以降,一貫して投資補助金と同様の効果を持った.
⑤ 政策実験:2003年以降,R&D税額控除がR&D生産にプラスに影響した.
⑥ 政策シミュレーション:公的 R&D投資の伸び率引き上げがR&D部門のTFPを上昇させ,R&D生産をかなり押し上げる.また,FGP部門の生産,消費についても小幅ながら増加させる
結語
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 52
外木 暁幸 (一橋大学経済研究所)
公的R&Dの教育水準(人的資本 or TFP成長の共通トレンド)への効果を取り入れるには,FGP部門,R&D部門に加えて,教育部門をモデルに組み込み,家計が物的資本投資,人的資本投資,R&D投資を行う数値モデルを考える必要がある
公的R&D投資の実施機関の多くは教育機関,若手研究者の養成機関
R&D資本の非競合性,公的R&Dのスピルオーバーに加えて,教育についての理論をDGEに組み込む
教育効果と公的R&Dに関する実証研究の必要性
多部門化に伴う計算機の処理能力の必要性(高度情報科学技術研究機構との共同研究を検討中)
今後の研究の展望
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 53
THANK YOU FOR YOUR ATTENTION.
R&D投資を導入した一般均衡動学分析 54