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http://www.***.net メディア・コミュニケーション ゲーム文化 8ゲームの世界動向③ 自主制作ゲーム 七邊 信重

メディア・コミュニケーション(ゲーム文化)_第8回 「自主制作ゲーム」

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メディア・コミュニケーション ゲーム文化

第8回 ゲームの世界動向③ 自主制作ゲーム

七邊 信重

前回のまとめ

前回の授業

アーケードゲーム市場の規模、ジャンル

ビジネスモデル

歴史、現状と課題

本日の授業

自主制作ゲームとは?

日本の自主制作の特徴(動機、作品、流通)

2010年代以降の変化

自主制作者の課題

コンソールゲーム産業と自主制作場の連携

産業、中間集団の課題

ビデオゲーム国内市場規模

市場規模 調査年

家庭用ゲーム(ソフト) 1,949億円 2015年

(参考)ビデオゲーム 1兆7,026億円 2015年

アーケードゲーム 4,530億円 2014年

オンラインゲーム(PC) 911億円 2014年

モバイルゲーム(ガラケー) 249億円 2015年

モバイルゲーム(スマホ) 9,628億円 2015年

PCゲーム 250億円 2010年

自主制作ゲーム 30~50億円 2012年

自主制作ゲームとは?

制作者が「自主的」に作るゲーム

ホビイストゲーム(Hobbyist Game)

目的: 非経済的報酬

「制作自体の楽しさ」「交流」「評価」、趣味

インディーゲーム(Indie Game)

目的: 非経済的報酬+経済的報酬(生計維持)

趣味と仕事の両立

商業ゲーム(Commercial Game)

目的: 経済的報酬

仕事 4

ゲーム

専用機 据置機

携帯機

PC

携帯電話

その他(タブレット等)

非電源ゲーム

アーケード(筐体等)

スタンドアロン

インターネット

ゲームのプラットフォーム

フィーチャーフォン

スマートフォン

自主制作活性化の条件としての 「制作ツール」と「デジタル流通」

1993年 「Doom」ソースコード公開

1998年 「Half Life」発売、Mod(改造)を許可

1999年 「Counter Strike」リリース

2004年 「Unreal Tournament 2004」 (Epic

Games)。制作ツールも提供。「Unreal Engine」

2003年 PCゲームDL販売サイト「Steam」開始

2005年 「Unity」(Unitey Technologies)

ホビイスト、インディー向け。基本無料。モバイル対応

2008年 「App Store」「Google Play」開始

スマート端末向けに、個人がゲームを提供可能

地域別のゲーム自主制作の特徴

米国

独立企業がベンチャーキャピタルやクラウドファンディングで資金を集めてゲームを制作。

自分のゲームの売上で生計維持

インディーゲームが活況

北欧

政府がゲーム開発に資金提供。失業保険も充実

インディーゲームが活況

日本

一般企業で生計維持、平日夜や休日に趣味制作

ホビイストゲームが活況 7

日本の自主制作ゲームの特徴 ―ホビイストゲームの存在感―

ホビイストゲーム、とりわけ「同人ゲーム」が存在感

日本では、「趣味を共有する人びと」を意味する「同人」と呼ばれるクリエイターが、自主制作物展示会「同人誌即売会」等で作品を頒布

「同人ゲーム(同人ソフト)」と呼ばれるビデオゲーム(主にPC向け)も頒布

月姫、ひぐらしのなく頃に、東方Projectが有名

ニコニコ動画にもホビイストゲームが投稿

「ゲーム実況」で無料の自主制作ゲームが人気

ニコニコ自作ゲームフェス(2013年~)

東方Project (上海アリス幻樂団、シューティングゲーム)

pixiv人気タグ

オリジナル1位

東方 2位

ポケモン 9位

艦これ 13位

初音ミク 14位

東方(同人誌即売会)

2007年 18回 2008年 15回

2009年 44回 2010年 80回

2011年 91回

自主制作者・同人制作者の属性

自主制作者の属性(Web調査)

技術習得先:学校でなく、自主制作文化で学習

独学:42%、教本:21%、雑誌:18%、学校:16%

制作経験率:13%(マンガ14%、小説23%)

定期的に制作:1.3% (マンガ:2.6%、小説:4.7%)

発表先:家族・友人4割、未発表4割、イベント1割

同人制作者の属性(コミケット2010年調査)

コミケットサークルに占める割合: 3%

マンガ:2万2,000 ゲーム:1,200

職業は多様

正社員:31%、学生:15%、ゲーム制作:7%

制作の特徴と 「意図せざる結果」としての生計維持

多くの制作者の目的・意図

非経済的報酬: 制作の楽しさ、交流、評価

○ホビイスト ×インディー

制作の特徴

小規模制作、損益分岐点低め

多様で、尖ったゲーム

低価格(0~3,000円)

「意図せざる結果」としての生計維持

90年代後半以降、「同人流通」の全国化で、自主

制作ゲームの売上で持続的に生計を立てられる制作者が登場

自主制作ゲーム 家庭用ゲーム

目的 楽しさ、名声 (象徴的報酬)

金銭 (経済的報酬)

開発人数 少ない 多い

損益分岐点 低い 高い

技術力 低い~高い 高い

自律性 ○ △

完成率 × ○

柔軟性 ○ ×

開発期間 短い 長い

ユーザーとの距離 近い 遠い

収入 ゼロ~極端に多い 少ない~多い

作品 実験作、独創的作品 保守的作品

自主制作・商業ゲームの比較

同人流通と同人ゲームの流通

同人流通プラットフォーム

「同人誌」即売会と小売店を経由する、全国規模のプラットフォーム。近年、ダウンロード販売も充実

マンガ同人誌、同人音楽など

同人ゲームの流通プラットフォーム

同人流通プラットフォームで、主にパッケージゲームが小売店で販売されてきた。

ゲーム系小売店に「目利き」店員が多い

無名だが面白い作品が見いだされ、プッシュされることで、大ヒット作に

商業流通プラットフォーム並に機能

自主制作ゲーム(同人ゲーム)

パッケージ、レーベルデザイン、プレスされ、商業ゲームと見分けがつかない。

小売店(同人ショップ)

虎の穴、メロンブックス、ホワイトキャンバス、三月兎

などが秋葉原だけでなく全国に存在。

デジタル流通

情報通信技術(ICT)の発展・普及と その影響

固定・移動ブロードバンド網の普及

光ファイバ、LTE

サービスのクラウド化

アプリケーション、オンライン・ストレージ

スマート端末の普及

スマートフォン、タブレット

「フリー・トゥー・プレイ(F2P)」ゲームの人気

ソーシャルゲーム、モバイルゲーム

ゲーム自主制作に対する ICTのネガティブな影響

代替品の脅威(Barney 2002=2003: 144-145)

日本の若者がPCからスマートフォンに移行

PCのうちCD/DVD-ROM標準搭載PCが減少

パッケージゲームをプレイできなくなる

スマート端末向けの無料カジュアルゲーム

気軽にプレイしやすい。

PC向け同人ゲームが相対的に高く見える。

海外の優良なインディーゲーム

国内で、自主制作ゲームの売上が低下?

すでに売上が低下していると回答する制作者も

同人ゲームショップ「三月兎」の苦境

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0% 20% 40% 60% 80% 100%

デスクトップPC

ノートPC

ノート/デスクトップPC

タブレットPC

携帯/固定ゲーム機

スマートフォン

保有するインターネット接続機器

平成24年度

平成25年度

平成26年度

出典:総務省「平成26年度 青少年のインターネット・リテラシー指標等」

ゲーム自主制作に対する ICTのポジティブな影響

「デジタル流通」プラットフォームの拡大

PC→PC、コンソール、スマートフォン、タブレット

パッケージ製造費がかからず、在庫リスクも減る

海外向けにゲームを提供可能に

オンライン経由でのグローバルな社会関係

昔)国内で小規模な社会関係を形成

今)海外の仲介者が日本の同人ゲームに注目。即売会で話しかけメールで連絡し、販売を仲介

ローカライズ(翻訳等)のサービスを提供

今)海外プレイヤーと直接つながる

端末別のゲーム売上高の推移と今後の予測 (単位: 億ドル)

出典: 『Newzoo 2014 Global Games Market Webinar』に基づき作成。 23

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2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

モバイルゲーム

PC/MMOゲーム

コンソールゲーム

カジュアルウェブゲー

自主制作者の意識と行動の変化

2010年頃)国内市場のみ→海外市場を意識

「国内は未来が見えないから、世界に出て行く」

国内の海外向けイベントや海外のイベントに参加

自主制作者の今後の課題

「インディー」として自主制作ゲームの売上で生計維持するため、事業戦略を再考する

活動領域(ドメイン)の再設定(大きな市場を狙う等)

自分たちのゲームの価値の再検討

– 価値、稀少性、模倣不可能性、適切な組織(VRIO分析)

外部資源の活用(グラフィック、ネットワーク)

ビジネスモデルの再検討(サービスモデル、F2P等)

Touhou @ Anime Weekend Atlanta 2013

出所: https://www.youtube.com/watch?v=AIkNU2Em7p8

Astebreed(STEAM)

100% Orange Juice(STEAM)

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マクロな「産業論」的視点からの考察 コンソールゲーム産業と自主制作場

コンソールゲーム産業の変化

損益分岐点の恒常的上昇

開発の大規模化・長期化・細分化・管理強化

作品の保守化(シリーズ、リメイク、版権、移植)

かつて中小企業が牽引していたのが変化

企業体力強化→合併、経営統合=大企業化

「英雄時代の終焉」「ゲーム産業のハリウッド化」

残り少ない「プロト市場」:自主制作場

プロト市場: 時には「非経済的関心」から新しい形式の音楽が制作者に生み出される場

自主制作場: 自主制作者の参加と相互作用により形成される世界

日本での産業・中間集団による支援策(案)

制作に必要なマネジメント知識を提供

ホビイスト)完成の喜びを得られるようにする

インディー)価値の高いゲームを提供できるようにする

交流・発表機会を提供(交流・評価)

ゲーム中心即売会、制作ゲームのプレイ・イベント

自主制作者と成熟ユーザーを増やす

新たな流通の仕組みの即売会を開催

コンソール向けゲーム制作・流通環境の提供

産業がイベントに足を運び、信頼関係を形成

本日のまとめ

本日の内容

自主制作ゲームとは?

日本の自主制作の特徴(動機、作品、流通)

2010年代以降の変化

ゲーム産業と自主制作場の連携

来週の内容

ネットワークゲーム