41
東大科学哲学ゼミ第7回 転換期の科学技術論①

Document7

  • Upload
    c-a

  • View
    401

  • Download
    1

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Document7

東大科学哲学ゼミ第7回 転換期の科学技術論①

Page 2: Document7

0.問われる「技術」と「科学」 ● 19c — 化学の学問化、大学への進出

– リービッヒ研究所(ギーセン大学)

● w.w.1での科学の実践化(w.w.2での「科学動員」 – 毒ガス・航空機等

● Cf.「近代の逆説」by B.ラトゥール

Page 3: Document7

1.技術=応用科学? ● 『Science, The Endless Frontier』で示さ

れた、リニアモデル

Page 4: Document7

1945-1957,1957-1968 果てしなきフロンティアからスプートニクへ

• “Science: The Endless Frontier” 1945,7 – ヴァネヴァー・ブッシュ – リニア―プログラム

• 基礎研究⇒新概念・新原理⇒新製品・新製法⇒新産業創出

• スプートニクショック 1957,10,4 – ソビエトに遅れ?? – 基礎科学へのバラマキ – ちょうちん持ちの科学史

2012/10/30 東大科学哲学ゼミ 4

Page 5: Document7

2.ブンゲ 「応用科学としての技術」

● 科学—技術—技能(中間物としての技術)

– 知識による分類。科学=実在を正確に表象する知識

– 技能=行動に関する”役に立つ”知識

● 科学理論の先行性

● プラトン主義の典型

– 技術的知識の特徴:「経験」からの分離により「理論」を拠り所とする

Page 6: Document7

3.レイトン「設計」

● 目的による分類

– 科学:理論的知識の獲得、技術:装置の制作、改良、社会的利用

● 技術(工学)に不可欠なのは「設計」

– 目的に適うように手段を利用すること

Page 7: Document7

4.ファーガソン『技術者の心眼』

● 「設計」に必要な知識とは?

– 「視覚的思考」や「視覚的言語」という知の実現形態によって、設計図を描いたり、読んだりする。

– 要は”イメージ”が大事

● イメージ・暗黙知・直感・判断力...

Page 8: Document7

5.カントの知識論から ● 知識の成立には、「理論」を適用する”現場

の知”が必要 – 経験において概念や規則を適用する際には、そ

れらを具体化した図式を形成。

– 「図式」をつくる能力=人間に潜在するKunst(技術)

● ファーガソンによる技術の特性との類似

Page 9: Document7

6.ハイデガーの存在論 ● 「道具的存在」

– 事物をただ「理論的に」眺めやる視線は、手元にあること(zuhandenheit)を了解する働きを欠いています。しかし使用したり、取り扱う仕事をしたりする交渉は、それに固有な見る仕方をもっているのであって、この固有な見る仕方が、ものを取り扱う仕事をすることを導き、その働きに特殊な事物性格(Dinghaft)を与えるのです。道具との交渉は、多種多様の「なになにのために」の指示に従います。『存在と時間』

Page 10: Document7

6.ハイデガーの存在論

● 「道具的存在」は「客観的存在」に先行する

– 目の前にあること(Vorhandenheit)」としての自然と「道具によって見出された」「手元にある(zuhandenheit)」としての自然

● 実践的知は定式化可能な理論知に優先する

Page 11: Document7

7.デューイの議論

● 知識の本来的な役割が発揮されるのは、具体的な場面に「応用」されている場合

● 数学や物理学(純粋科学)より、医学や工学(応用科学)の方が本来的な「科学(知識)」

Page 12: Document7

8.デューイによる批判 ● では、基礎理論は軽視されてもよいのか?

– 特定の目的を実現する”役に立つ”知識を評価する訳ではない

– 「全ての認識は自分の外に目的を持つということと、認識の行為はあらかじめ達することを定められた特別の目的を持つということとは、別の事柄、反対の事柄である。(デューイ)

● 知識の発展とともに、目的も進化する

Page 13: Document7

9.「創造性」という観点

● 技術を構成する手段と、目的は相互に批判的な関係にある(デューイのテーゼ)

– 特定の目的のための技術創成は、知識の「創造性を妨げる

– 「創造性」は様々なアクターの相互作用による。

Page 14: Document7

実験室研究の前提と成果

• すでに終わった科学から活動中の科学へ – 論争研究

• 理論”知識”でなく実験”活動”へ – 実験の方法論(再現実験、対照実験、二重盲検法

etc)でなく、具象的行為としての実験 – 自然と社会、両方に介入、制作する「共生成」

• 真理への無関心さ:記述的転回 – 真理やその正当化の結果でなく、それに至るプロ

セスの記述を重視

2012/11/20 東大科学哲学ゼミ 14

Page 15: Document7

技術と社会 技術決定論と社会構成主義

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 15

Page 16: Document7

インターネットが

社会を変える!!

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 16

Page 17: Document7

家電が主婦の 生活を変える 2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 17

Page 18: Document7

技術決定論

社会の変質

生活様式

の変質

技術の導

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 18

・ある技術の導入 ・社会関係、生活の変化 (予想外の影響も) ・根本的生活様式の不可逆的変容

Page 19: Document7

イエビカ村の井戸端で • 1970s,スペイン北東部,イエビカ村 • 上水道の整備 • 洗濯機の購入

– 洗濯場に集まらなくなる – 共同井戸でのロバ・子供・男たち

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 19

動物・土地・人間の結びつきの破壊

Page 20: Document7

・技術がもたらされる ・社会的に技術を規制、統制 ・技術を社会的制御下に置く

技術の到来

社会による受容の

やりかた決定

社会決定論

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 20

Page 21: Document7

鉄砲を捨てた日本人 • 1543,種子島に鉄砲伝来 • 戦国時代広く使用される

– 信長vs武田@長篠の戦いで3000丁 – 徳川家康も鉄砲、大砲利用し天下

• 江戸幕府による制限 – 狩猟等にのみ許可 – 鉄砲鍛冶を統制下に

• 幕末には役立たずの鉄砲が残るのみ 2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 21

Page 22: Document7

鉄砲を捨てた日本人 「にもかかわらず日本の歴史的経験は、次の二点の証にはなっているはずである。第一、ゼロ成長の経済と、中身の豊かな文化的生活とは、100パーセント両立しうる、ということ。第二、人間は、西洋人が想像しているほどの受け身のまま自分の作り出した知識と技術の犠牲になっている存在ではない、ということ。この二点である」

ペリン 『鉄砲を捨てた日本人』1991,150

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 22

Page 23: Document7

アーミッシュ • ペンシルバニア州、オハイオ州に居住 • 自動車でなく馬車 • 電気や電話を各家庭には引かず • テクノロジーアセスメント

– 厳密な審査で技術の導入制限

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 23

Page 24: Document7

アーミッシュ • テクノロジーアセスメント

「アーミッシュは、トラクターの件について長らく熟考し、トラクターを使い始めると農業の規模がだんだん大きくなって、ついにはトラックが必要になるだろうと考えたのである」

マッキベン『人間の終焉――テクノロジーは、もう十分だ!』2005,224

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 24

Page 25: Document7

技術がほぼ自動的に社会の在り方を決定する?

社会がどんな技術を導入するか決定する?

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 25

Page 26: Document7

しかし…

技術と社会は独立しているのか? どちらかが決定権を持つ?

技術と無関係な社会はありえない

どんな技術も社会と無関係に成立せず 2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 26

Page 27: Document7

社会構成主義 ・技術の成立過程における具体的分析

– SSK,実験室の人類学 – ストロングプログラムの対称性テーゼ

1一定の機械が発明され、うまく機能し、普及 2技術的要因だけでなく社会的要因を 3失敗した技術と同様に説明が可能で、必要 *「合理性」に頼らない説明

技術は単線的発展でなく、様々な社会、文化的要因が絡み合う複雑な創造的過程

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 27

Page 28: Document7

自転車の変遷

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 28

技術的要因:空気タイヤ、駆動装置 社会的要因:男性対女性、老人;女性解放;スポーツか日常生活か

Page 29: Document7

純粋に社会的な関係は社会学者の想像力のなかや、ヒヒたちのなかにしか見出し得ないし、また、純粋に技術的な関係はサイエンス・フィクションの描くような極端な世界のなかにしか見出し得ない。技術的なものは社会的に構成され、社会的なものは技術的に構成されているのである。すべての安定した全体的連関は社会的なものと同様、技術的なものによっても制約されている。

バイカー『Of Bicycle, Bakelit, and Bulbs』1995,273

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 29

Page 30: Document7

ラトゥール・カロン アクターズネットワーク理論

• クノール=セティナの貢献 – 実験室内部だけでなく装置メーカー、研究助成機

関、行政、産業界、出版社などとの関わり • 超―科学的な場の分析 • 科学が社会に影響を及ぼす構造 • アクター:人間、機械、物質、技術、化学法

則、論文…脱人間中心主義 • 翻訳:自己を中心にネットワークを形成

– 問題化:問題解決に自分の方法を提案

2012/11/20 東大科学哲学ゼミ 30

Page 31: Document7

自動車道 • 「車は左側通行」

– 大抵の人は守る – 法律、慣習、教育

• しかし、破られる – 突然のUターンや右折、わき見、居眠り

• 技術的アクター「中央分離帯」 – 人工物支援による社会秩序 – 人間と人工物の対称性

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 31

Page 32: Document7

二重の対称性 • 成功事例と失敗事例の対称性

– SSK,ブルア • 人間と人工物の対称性

– 実験室の人類学,ラトゥール

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 32

Page 33: Document7

非決定論的技術論へ • 技術と社会の多元的決定overdetermine • 一つの次元で決定しつくせない

– 決定不全性underdetermination

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 33

Page 34: Document7

非決定論的技術論へ 1.技術technologyの発達は、進歩のための技術的基準、並びに社会的基準の双方によって多元的に決定されており、したがってそれはまた支配権力の在り方に応じていくつもの異なった方向の、いずれかに向かって発展することも可能である。 2.社会的諸制度は技術の発達に対して適応を行うが、同時にこの適応のプロセスは相互作用的である。つまり技術はそれ自らが置かれている状況に対して影響力を有するが、併せてそれは状況に応答して自らも変化するのである。 フィーンバーグ『Alternative Modernity: the Technical turn

in Phirosophy of Social Theory』1995

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 34

Page 35: Document7

技術の形成と受容 技

術の

形成

過程

解釈の柔軟性

技術と社会の相互作

アクターズネット

ワークの形成

技術

の安

定化

解釈の柔軟性が閉じ

ネットワーク安定化

ブラックボックス化

確立

され

た技

固定されたネット

ワーク

それ以外ありえない、

確定的論理に従って

成立したように見え

Lock-in

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 35

Page 36: Document7

ブラックボックスの開放と 「政治」の暴露

• 持ち込まれた技術をいかに用いるかという「解釈・受容過程」を社会構成主義的技術論は暴く – 技術の解釈学

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 36

Page 37: Document7

技術に内在する政治 • ニューヨークから保養地ロングアイラン

ドへの高速道路の橋 – とっても低い高さ制限! – バスが通れない – 貧民を排除

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 37

無垢に見える構造と差別

Page 38: Document7

技術に内在する政治 • マーコミック社の刈り込み機

– 1880s,非熟練工でも使える製造機械の導入 – 生産工程の近代化、効率向上 – しかし、実際は生産コストは上昇していた

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 38

熟練工組合つぶし

Page 39: Document7

技術に内在する政治 • 政治的意味がその製品の構造、機能自体

に組み込まれている • ウィーナー「一定の技術はそれ自身にお

いて政治的性質を持っている」 – アクターズネットワーク

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 39

Page 40: Document7

本質的inherentlyに政治的な技術

• 原子力発電や核兵器と権威主義 – 民主主義的構造になり得ない、とウィナー

• 解釈の柔軟性は無条件には成立しない

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 40

Page 41: Document7

アクターとしての技術 • 共同行為者?

知性=潜在的+顕在的 技術の逆説

• 他者?不気味なもの? 他者性が創造性につながる 逆襲するテクノロジー モノが反撃する 未知なるものへの責任;予防原則

2012/11/27 東大科学哲学ゼミ 41