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2015/06/11 Thu. コンテンツセッション_オープンサイエンスに向けた図書館の取り組み(14:10-16:0014:50-15:10 (20min.) --- 鹿児島大学附属図書館の西薗と申します。 オープンサイエンスの推進にあたって海外の取り組み事例をご紹介する内容となります。 --- 写真はサウザンプトン港のカモメ 1

20150611_海外事例に見るオープンサイエンス推進における図書館の役割

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2015/06/11 Thu.コンテンツセッション_オープンサイエンスに向けた図書館の取り組み(14:10-16:00)14:50-15:10 (20min.)---

鹿児島大学附属図書館の西薗と申します。オープンサイエンスの推進にあたって海外の取り組み事例をご紹介する内容となります。

---写真はサウザンプトン港のカモメ

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本題に入る前に、この発表の位置付けについてですが、今年の2月と4月に、機関リポジトリ推進委員会からの派遣で、研究データ管理を取り上げた国際会議へ参加する機会をいただきました。本発表は、ここでの知見をベースとし、特にイギリスにおける研究データ管理への取り組み事例を取り上げた構成とさせていただきます。海外事例を網羅するものではない旨、ご了承ください。

---報告書http://id.nii.ac.jp/1280/00000083/http://id.nii.ac.jp/1280/00000084/http://id.nii.ac.jp/1280/00000107/

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ご承知のとおり、現在海外では、オープンサイエンスの推進に向けて様々なレベルで取り組みがなされています。

先進国の一つであるイギリスでは、大学が所属構成員に対し、研究データ管理サービスを提供する例が早くから見られ、昨今加速度を増しています。スライドで示している表は、デジタルキュレーションセンター(DCC)が2014年に、イギリスの研究志向大学に対し、研究データ管理に関するアンケート調査を行った結果の一部です。

機関における推進要因は何なのか、を聞いたところ、学術上のメリットや研究の公正性といった要因ももちろん多く挙げられていますが、最大の要因として挙げられたのは、助成団体のデータポリシーで、ほとんどの回答者が要因として挙げました。

ちなみに、この表では、ジャーナルのデータポリシーはさほど高い数字ではありませんが、会議でお会いしたイギリスの図書館員の方からは、研究者にとっては、これもかなりの影響力を持つという意見も聞きました。

ジャーナルのデータポリシーについては、日本の研究者も既に経験を積みつつあるということでもあります。

---DCC RDM 2014 Survey http://www.dcc.ac.uk/blog/rdm-2014-survey から、” Results of the Digital Curation Centre 2014 RDM Survey- Briefing 1” http://dx.doi.org/10.5281/zenodo.10711# その他: • Managing institutional memory & assets • Demand from researchers! • Institutional commitment to open scholarship • Self / university promotion - e.g. citations and discoverability • Our own RDM policy • Professional awareness of emerging RDM challenge.

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話を助成団体のポリシーに戻します。スライドに示しているのは、イギリスのリサーチカウンシルのポリシーの概要です。

助成団体によって、細かい要件は異なってきますが、データの保存期間や管理計画の作成、アクセスや共有、モニタリングの有無、等についてポリシーが定められています。

ただし、要件は定めつつ、必ずしもそれを充たすサポートが提供される訳ではなく、データの保存が求められているからといって、適したデータリポジトリが合わせて提供されるとは限りません。分野によりデータリポジトリの整備状況も異なります。

---Cf. 英国のリサーチカウンシルのポリシー概要http://www.dcc.ac.uk/resources/policy-and-legal/overview-funders-data-policies

各地で助成団体のポリシーEx. Overview of OSTP Responseshttp://dx.doi.org/10.6084/m9.figshare.1367165

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そのような状況の下、イギリスの各機関が本腰を入れて研究データ管理に取り組む必要に迫られた要因の一つが、RCUKの助成団体の一つであるEPSRCが打ち出したポリシーです。このEPSRCのポリシーでは、研究者自身に対する要請ももちろんありますが、まず「機関」が、研究データ管理の第一義的な責任を負う、とされています。そのため、たとえ少人数であってもEPSRCから助成を受ける研究者を擁する限り、その機関はこのポリシーに応える必要があります。会議で事例報告のあったハートフォードシャー大学は、その時点での被助成者は4人だけという話をされていました。さらに、機関は、部分的なサポートではなく、データライフサイクル全体に対して効率的なデータ管理を提供することや、メタデータ・DOIの付与、最低10年間の保存等を行う必要があり、非デジタルデータについてもアクセス要求に応えることが求められています。

このポリシーは、遵守されているかどうかのモニタリングが実施され、要件を充たしていない場合はペナルティを課す、とされています。

---https://www.epsrc.ac.uk/about/standards/researchdata/https://www.epsrc.ac.uk/about/standards/researchdata/expectations/

「最低10年間の保存」:第三者の最終アクセス日以降も含めた期間設定。

---Cf. "EPSRC requirements were grouped into three areas: »overarching issues on RDM policy, strategy, governance and sustainability »the development of support services and increasing RDM capability and skills. »the technical infrastructure and services required for storage, preservation and sharing. "http://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1930

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このような、機関の責任を大きく問う強力なポリシー以前は、研究データ管理への取組状況は機関によってさまざまで、例えば2012年にイギリスの高等教育機関に対して行われた調査によると、回答を寄せた83の機関において、現在提供している基本サービスとして上位に挙がっていたのは、・研究データ管理に関する著作権や知的財産権の問題についてのアドバイス・データのオープンアクセスや、研究データ管理ポリシーについての意識喚起・データの引用の仕方についてのアドバイスといったもので、

---Coxによる調査http://www.slideshare.net/Incisive_Events/andrew-cox-research-data-managementよりスライド引用---83 (c 50%) UK HEIs responded to our survey (with Stephen Pinfield) conducted in November 2012 [paper available from JOLIS OnlineFirst doi:10.1177/0961000613492542 or from WRRO http://eprints.whiterose.ac.uk/76107/ ]

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同じ調査で、以後3年間における優先順位を尋ねたところ、アドバイスやトレーニングを挙げる機関が多く見られました。研究データ管理サービスはさまざまな構成要素があるもののデータライフサイクル全体のサポートが広く提供される状況までには至っていませんでした。

---Coxによる調査http://www.slideshare.net/Incisive_Events/andrew-cox-research-data-managementよりスライド引用

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助成団体による強力なポリシーは、各機関における研究データ管理サービスの展開に大きな影響を与えましたが、EPSRCのポリシーの要件への対応は容易いものではなかったようで、調査結果からは、ポリシー発効まで1年を切った時点でも、例えば長期間のアクセス保証に対応できるのは1年後よりさらに先の予定、と回答した機関もかなりのパーセンテージを占めていたことが見て取れます。

なお、伝統ある大規模機関よりも、比較的新興であったり小規模な機関の方が、スムーズに学内の意思決定が行いやすいという傾向もあるようです。

---DCC RDM 2014 Survey http://www.dcc.ac.uk/blog/rdm-2014-survey から、”Results of the Digital Curation Centre 2014 RDM Survey Pre-‐release Briefing 2” http://dx.doi.org/10.5281/zenodo.10712Q8, Q18

機関により対応状況はまちまち

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一つ注意しておきたいのが、先に見たEPSRCもその一つですが、助成団体によっては、データを管理・保存する場所を指定しているケースがあることです。欧州経済領域内で、と指定している場合は、例えば研究者が日頃データの保存に利用している第三者サービスがこの領域外で提供されているものだったら、そのサービスでは助成団体の要件を充たせないということになります。さらにデータライフサイクル全体についての効率的なデータ管理が求められていることもあり、各機関が研究者の支援を包括的に行う必要に迫られています。あわせて、Jiscも共通のインフラ整備に取り組んでいます。

---http://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1927

研究者が頻用している既存の第三者サービスが要件を満たさないことも。Jisc: Dropboxライクなファイル同期・共有システムの提供

---http://www.jisc.ac.uk/blog/storing-and-sharing-research-data-after-the-space-race-25-feb-2015“In the UK the Engineering and Physical Sciences Research Council (EPSRC) and other funding councils have policies that the research data they fund must be managed and stored in the European Economic Area (EEA), and that “effective data curation is provided throughout the full data lifecycle”. UK Data Protection regulations also mean that some personal and other human data will also be stored within the same area.”

Cf. https://community.jisc.ac.uk/groups/file-sync-and-share

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では、その全体に対して効率的なデータ管理が求められている「研究データライフサイクル」とは?を示した図の例がこちらです。計画、収集、分析、管理・保存、共有、発見・再利用・引用、という流れを繰り返し、

それらの各過程に対して、アクティブデータの管理やデータリポジトリ、データカタログといったインフラが必要となってきます。

---http://www.jisc.ac.uk/sites/default/files/research_data_life_diagram_0.jpg (< http://www.jisc.ac.uk/blog/storing-and-sharing-research-data-after-the-space-race-25-feb-2015 )

Cf.DCC Curation Lifecycle Model http://www.dcc.ac.uk/sites/default/files/lifecycle_web.png ( < http://www.dcc.ac.uk/resources/curation-lifecycle-model )

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この研究データライフサイクル全体をサポートするための、機関による研究データ管理サービス内容としては、研究データ管理に関するポリシーや戦略を立て、持続可能なサービスを提供できるようにすること、研究データ管理の計画作成を支援すること、アクティブデータの管理を支援すること、データを選別・受託すること、データリポジトリ、データカタログを提供すること、ガイダンスやトレーニング、サポートを提供すること、が挙げられます。

---http://www.dcc.ac.uk/sites/default/files/documents/publications/RDMcomponents.PNG (< http://www.dcc.ac.uk/resources/developing-rdm-services )

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こちらは研究プロセスにそってサービスを分類した図です。

---Data Stewardship => カタログ、公開リポジトリ、ダークアーカイブ /アクセスコントロール、DOI---Research Data Management: Edinburgh University Library Experience. / Lewis, Stuart.2014. Paper presented at Library Fair: IR Forum, Yokohama, Japanhttp://www.research.ed.ac.uk/portal/en/publications/research-data-management-edinburgh-university-library-experience(59147c46-1c47-4e70-8bd5-b1da24c9218f).html

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機関の研究データ管理サービスの各構成要素について、もう少し見ていきます。

まず、各機関の目指すべき方向性を示すポリシーについてですが、スライドの表はイギリスの機関におけるポリシー一覧表です。

策定にあたっては助成団体のデータポリシーへの適合も図りながら内容が検討されており、一律に同様という訳ではありません。策定にあたっては、機関の上層部における検討が必要となりますが、

---UK Institutional data policies http://www.dcc.ac.uk/resources/policy-and-legal/institutional-data-policies

≠義務化目指すべき方向性を示すもの

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そのポリシー策定やサービス構成の検討に際して、効果的・持続的なサービスを提供するためには、まずは各機関における研究データに関する実態の把握が必要となります。このために、様々な手法が取られており、”Data Asset Framework”と呼ばれるフレームワークのほか、研究者へのインタビューもよく用いられています。会議の事例報告では、100近くの研究者インタビューを行ったという機関もありました。さらに一歩進んで、分野ごとのプロファイルを蓄積・共有するためのツールも開発されています。

機関の研究者へのアンケート調査報告書は、公開している機関もあります。

---Cf.Imperial College London: RDM優良事例を募集するプロジェクトhttp://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1881LIS課程との協働例も

Data Curation Profiles Toolkit http://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1878

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実態を把握するためにどのような情報が収集されているか、の例としては、機関によって収集する情報は異なりますが、

どのような種別やフォーマットのデータが扱われているのか、どの程度の量のデータが発生するのか、普段データの保管先としてどのようなものを用いているのか、保管にあたってはメタデータを付与しているのか、どのように付与しているのか、またバックアップは行っているのか、どこに行っているのか、あるいはサポートのニーズや研究資金源についての情報、などが挙げられます。

これまでに実施された調査では、例えば、メタデータを何らかの基準にそって付与している例は少ないとか、データをローカルPC内にしか保存していない、バックアップは取っていない、といった回答も若干数見られるなど、

実際の研究データ管理サービスの提供にあたって必要とされる要件を導く上で重要な情報源となっています。

---# DAF質問項目例

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多くの助成団体が、助成要件の一つとして、データ管理計画を作成するよう求めており、

先に見た、イギリスの助成団体のポリシー一覧表でも、計画書の作成が項目として挙げられています。

研究者は、助成申請時に、そのプロジェクトにおいて、研究データがどのように生成・管理・保存・共有されるのかを、計画書で明らかにする必要がありますが、

---http://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1243 p19DMPs are written at the start of a project to define:- What data will be collected or created?- How the data will be documented and described?- Where the data will be stored?- Who will be responsible for data security and backup?- Which data will be shared and/or preserved?- How the data will be shared and with whom?

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研究者からは、この計画書作成にあたって支援を求める声が高く、図書館が、ガイダンスやオンラインツールによる支援、個別の相談対応に取り組んでいます。

全体的な計画書だけでなく、プロジェクトの構成要素ごとに詳細な計画書を作成することもあるなど、個別の案件に応じた支援が必要となります。

また、当日〆切のものについて、朝、支援依頼が来る、といった急ぎの対応を迫られることもあるそうです。

支援体制ですが、各専門分野の知識を持ったサブジェクトライブラリアンの活用のほか、分野によりサポートの必要度合いには差があるため、必ずしも専門でない分野であっても対応にあたっているケースもあります。サウザンプトン大学の方に伺ったところでは、データ管理計画の作成支援を実際に行いながら、各分野の知識を獲得していっている実情もあるそうです。

図書館側としては、データ管理計画の作成支援を通じて、学内の研究者がどのような知識やスキルを持っているかの把握ができるというメリットもあります。その人的資源のストックに基づいて、さらなるサービスの提供や、研究者同士の橋渡しを行うこともあるそうです。

---Cf. DMPOnline by DCC https://dmponline.dcc.ac.uk/

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研究データ管理に関する知識やスキルの習得の支援、また意識喚起の取り組みは、一番イメージしやすいサービスかもしれません。教授会等への出張説明も行われていますが、

会議では特に、既存のリテラシー教育や課程教育、研修プログラムを拡張させ、研究データ管理をその一部に取り込むようにするアプローチの事例報告が聞かれました(embedの視点)。これまで図書館が取り組んできたオープンアクセス推進の活動の延長という観点でも捉えられるかと思います。

内容としては例えば、研究データ管理の概要や、バックアップの重要性、データの扱いにおける倫理的側面、助成団体の要件、識別子(ORCID)の促進などが挙げられます。

また、対象として特に、例えばポスドクや大学院生といった、若手研究者への働きかけに力を入れている事例が数多く聞かれました。若手研究者に研修で研究データ管理に関する知識を付けてもらい、その上司の教授やシニアの研究者にも波及していく、といったことが期待されています。

サウザンプトン大学では、博士論文の付随データを、論文本体とは別にリポジトリに登録することを奨励しており、研究データの流通・共有・再利用の促進を図る取り組みを行っています。

---http://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1929http://researchatrisk.ideascale.com/a/dtd/101964-31525

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これまでの図書館は、主に研究後の成果物の収集に取り組んできましたが、

研究ワークフロー全体の支援にあたっては、研究中のデータについても、それらを保存するためのストレージや、ほかの研究者との共有するための仕組みを提供することが検討課題の一つとなります。スライドの図は、先に見たDCCによる調査によるもので、現在無料のストレージを提供している場合、そのサイズはどの程度か、を尋ねた結果です。500GB未満、1TB未満、1TB以上、該当なし、など機関によりばらつきが見られますが、機関によっては、一定サイズ以上のストレージについては、有料で提供しているところもあります。また、機関独自に構築しているところもあれば、Microsoft社のOneDriveのような商用クラウドサービスを導入するところもあります。ストレージサービスについては、IT部署の管轄となることが多いようです。

---Survey http://www.dcc.ac.uk/blog/rdm-2014-survey から、”‘From Strategy to Action’ – Responses on Storage and Resourcing Questions” http://dx.doi.org/10.5281/zenodo.10713Q7, Q8

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ストレージサービスを提供する場合、その容量を決定する上で基準の一つとなるのが、先に見た、機関におけるデータ実態調査の結果です。

例えば、スライドの図は、シェフィールド大学の調査結果ですが、半数超が(53%)が500GB未満との回答結果でした。

---Andrew Cox, Laurian Williamson (2015). “The 2014 DAF Survey at the University of Sheffield”International Journal of Digital Curation, Vol. 10, No. 1, pp. 210-229http://dx.doi.org/10.2218/ijdc.v10i1.362

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データカタログとデータリポジトリについては、

既存の機関リポジトリをデータリポジトリとして拡張させるところも多いですが、別途データリポジトリを持つところもあります。

さらに、データカタログにデータリポジトリの役割まで持たせるところもあります。スライドの図は、Elsevier社によるCRISのPureを、データカタログとしてだけでなく、データリポジトリとしても用いているランカスター大学におけるデータフローを示したものです。ただし、CRISはデータの長期保存に最適化されたシステムという訳ではないので、その点は別途検討する必要があります。

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DOI付与のためにはDataCiteのメタデータスキーマへの対応が必要となり、Eprintsではプラグイン開発が行われています。

メタデータについては、お話を伺った図書館の方からは、登録する研究者の負担を軽減するためにも、まずは十全な形でなくても登録を、のスタンスを取り、

分野ごとの詳細なメタデータ記述項目への対応よりも、シンプルかつ一般的な記述方法を取りつつ、拡張性を持たせる運用としているとのお話がありました。

---"Additional fields around compliance reporting are in the most recent release of ReCollect (e.g. a field for last access date)"http://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1930

ReCollect http://wiki.eprints.org/w/ReCollectDataCite Metadata Schema Repository https://schema.datacite.org/UK DataCite Clients http://bit.ly/1f9X0vV

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DOIについては、サフィックスの付与ルールは各大学で異なっており、大学名を入れたり連番としたりと様々です。

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DataCiteからは、メタデータを一括検索できるツールも提供されています。

---DataCite Metadata Search tool http://search.datacite.org/ui

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機関におけるデータリポジトリは、その機関における研究データ管理サービスのためのインフラの一つではありますが、必ずしもそれが第一の登録先という訳ではなく、研究データ管理計画策定の際にも、研究者の専門分野等に応じて、どちらかというと分野データリポジトリを推奨することが多いということでした。

分野データリポジトリに登録されたものでも、機関のデータリポジトリへメタデータを登録するよう推奨はしているが、義務ではないということで、複数リポジトリの間の効率的な運用の検討も必要と思われます。

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研究データ管理は、これまで図書館が取り組んできたオープンアクセス運動と親和性はありますが、

必ずしも公開可能な研究成果物ばかりではなく、センシティブデータを扱うための手立てが必要です。スライドの図は、JSTさんが先般公表された資料から、各国のデータ共有ポリシーにおけるセンシティブデータの扱いについてまとめておられたページを引用させていただいています。多くの助成団体で、個人情報や商業的・機密情報、国家機密については公開制限の規定が設けられています。

---RDM≠OA

http://jipsti.jst.go.jp/about/pdf/survey_on_data_sharing_policy.pdf

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このセンシティブデータを、どのように扱うべきか、という点について、会議での事例報告から、リーズ大学での運用例を引いてみます。

研究データ以前にもともと、センシティブデータに関しては、分類方針と取扱い方針が定められており、

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この運用指針を、研究データにどう適用するか、という事例で、

---http://www.dcc.ac.uk/webfm_send/1932

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センシティブな研究データの保管場所としての、機関リポジトリの可能性と運用方針を検討したそうで、機密性の高いものについては、リポジトリに保存しアクセスコントロールを行う、

非常に機密性の高いものについては、さらに暗号化した上でリポジトリに保存しアクセスコントロールを行う、ただし暗号化キーやアクセスコントロールは図書館ではなく別の部局が管理する、という運用方針を検討しているそうです。

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EPSRCのデータポリシーでは、非デジタルデータについても、アクセスへの要求に応えるよう求められています。

機関内に存在する非デジタルデータの例として、ノッティンガム大学のデータ実態調査結果では、手稿や建築画面、実験ノート、質問紙等が挙げられています。

---リーズ大ほかから成る、N8 consortiumでも検討

http://admire.jiscinvolve.org/wp/files/2013/02/ADMIRe-Survey-Results-and-Analysis-2013.pdf

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このうち、特に重視される実験ノートについては、電子実験ノートシステムの開発が行われており、デジタルボーンにしようとする取組もあります。

さらに、エディンバラ大学では、この電子実験ノートシステムを、アクティブデータ管理システム、公開データリポジトリ、非公開データの長期保存システムと連携させ、研究データの共有へスムーズに導こうとする取組も行われています。

---IDCC 2015/02/10Service integration to enhance RDM RSpace ELN case study

RSpace ELN http://lab-ally.com/products/rspace-eln/Electronic Lab Notebook (ELN)

http://datablog.is.ed.ac.uk/files/2014/04/b2_workspaceHighlighted.jpg ( < http://datablog.is.ed.ac.uk/2014/04/15/using-an-electronic-lab-notebook-to-deposit-data/ )---Cf.http://dx.doi.org/10.2218/ijdc.v10i1.354http://www.slideshare.net/rmacneil88/integrating-an-electronic-lab-notebook-with-a-data-repository

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研究データ管理サービスは多くの構成要素があり、ではこれをどういう体制でやっているのか、という点については、先に見たDCCによる調査で、研究データ管理対応で主導的な役割を果たしている部署について尋ねた項目があります。

これによると、ほとんどの機関で図書館がその役割を果たしているとみなされている結果が出ています。ほかの部署も数字としては大きいのですが、

---Survey http://www.dcc.ac.uk/blog/rdm-2014-survey から、” Results of the Digital Curation Centre 2014 RDCC RDM 2014 DM Survey- Briefing 1” http://dx.doi.org/10.5281/zenodo.10711# その他: “Converged Information Directorate; Academics; E-research centre, Academic Divisions; High-Performance Computing and Storage facilities; Research Strategy; Research Policy; Data Library; Training Unit; Information Governance; Policy, Planning & Governance; Business Support”

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さらにこの回答の内訳、つまり単独でその役割を果たしているのか、あるいは他部署と連携してその役割を果たしているのか、を見てみると、研究支援部署や広報部署、あるいは、IT部署が単独で主導的な役割を果たしているとする回答は非常に少なく、図書館が単独で主導的な役割を果たしている、とする回答が若干数ありました。

図書館を先頭に、機関内の関係部署が連携しながら、機関としてのサービスを構築しているケースが多いようです。

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人員体制については、同じくDCCの調査によると、ラッセルグループの大学では、複数部署から構成し、人員増を予定しているという結果でした。

ただし、その他の研究志向大学では、必ずしも部署間のバランスが取れた構成とは限らず、人員増の予定も微増にとどまる結果で、サービスにあたっては機関のリソースが大きく影響していることがうかがえます。

人員体制に限りませんが、研究データ管理サポートの解は一つではなく、機関の実情に合わせたサポートが行われています。

---Survey http://www.dcc.ac.uk/blog/rdm-2014-survey から、”‘From Strategy to Action’ – Responses on Storage and Resourcing Questions” http://dx.doi.org/10.5281/zenodo.10713Q7, Q8

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また、機関内での部署間連携だけでなく、

図書館として、例えばトレーニングや人材育成のツールを共有するといった、機関を超えたコミュニティを通してよりよいサービスを目指す活動が活発に行われており、Jiscのプロジェクトや近隣地域、システムユーザグループ、といったさまざまなコミュニティで、情報共有や課題解決の取組がなされています。

---https://www.coar-repositories.org/files/3_Chiware-COAR-SPARC-Presentation.pdf

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研究データ管理に取り組んでいる先行例では、関係部署と連携しつつ、図書館がリードしているケースが多く見られますが、そのような役割を果たしている理由としては、たとえば、

資料組織やリテラシー教育、サブジェクトライブラリアンの主題知識、といった関連するスキルを持っている、研究者と良好な関係を既に築いておりスムーズにサポートが行える、

オープンアクセスについてリーダーシップを取ってきており、オープンサイエンス推進における研究データ管理についても同様の役割が期待できる、といった評価がなされているように思います。

本発表の前半では、助成団体のRDMポリシーへの対応という側面を強調しすぎたきらいがありますが、参加した会議(IDCC)では、助成団体のポリシー遵守についてだけでなく、データ共有の意義そのものについての理解を促進する必要性をあらためて問う声が聞かれました、そのような意識喚起の面でも図書館コミュニティは大きな役割を果たせるように思います。

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