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軽乗用車と土木建設機械によって 積み上がっている鉱工業在庫の動向
~在庫と在庫率の解説を添えて~
2015年7月 経済解析室
ミニ経済分析URL:http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai-result-1.html
鉱工業の在庫状況
鉱工業全体の在庫(指数)は、消費税が引上げられた 平成26年4月以降、上昇を続けている。
1
112.9
100102104106108110112114116
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
25 26 27
鉱工業(在庫)
(季節調整済 22年=100)
(年/月)資料:鉱工業指数(経済産業省)
鉱工業の在庫循環
鉱工業生産と在庫の関係から在庫水準の評価を行う 在庫循環図でも、 平成26年Ⅰ期以降在庫は増加し、在庫積み上がり局面へと移行していくのが分かる。
2
資料:鉱工業指数(経済産業省)
▲15
▲10
▲5
0
5
10
15
▲15 ▲10 ▲5 0 5 10 15
在庫前年同期末比(%)
生産前年同期比(%)
27Ⅱ速
在庫調整局面
在庫積み増し局面
意図せざる在庫減局面
在庫積み上がり局面
25Ⅰ 25Ⅱ 25Ⅲ
25Ⅳ
26Ⅱ
26Ⅲ
26Ⅳ 27Ⅰ
26Ⅰ
業種別の在庫上昇寄与の状況
平成26年Ⅰ期から27年5月までの在庫の伸びについて、業種ごとの影響度をみると、横ばいや微増、微減の業種が大半。 その中で、はん用・生産用・業務用機械工業と、輸送機械工業の2業種によって、在庫が積み上がっている。
3
▲ 1 0 1 2 3 4 5
その他工業
食料品・たばこ工業
繊維工業
パルプ・紙・紙加工品工業
プラスチック製品工業
石油・石炭製品工業
化学工業
窯業・土石製品工業
輸送機械工業
情報通信機械工業
電気機械工業
電子部品・デバイス工業
はん用・生産用・…
金属製品工業
非鉄金属工業
鉄鋼業
はん用・生産用・業務用機械工業
(%)
資料:鉱工業指数(経済産業省)
(注)平成26年Ⅰ期と平成27年4~5月の平均値とを比較して伸びを算出。
はん用・生産用・業務用機械工業と輸送機械工業の 在庫上昇寄与の状況 ~細分類業種別~
そしてこの2業種の中でも、細分類をみると土木建設機械と乗用車の2種が、 他のものと比べ大きく在庫を積み上げている。
4
▲ 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
産業車両
二輪自動車
自動車部品
トラック
バス
乗用車
その他の業務用機械
光学部品
計測機器
機械工具
繊維機械
金属加工機械
金属工作機械
農業用機械
土木建設機械
はん用機械器具部品
冷凍機・同応用製品
風水力機械・油圧機器
ボイラ・原動機
(%)
資料:鉱工業指数(経済産業省)
(注)平成26年Ⅰ期と平成27年4~5月の平均値とを比較して伸びを算出。
土木建設機械と乗用車の在庫状況
さらにこの2つの細分類に属する品目について、平成26年Ⅰ期からの伸びをみると、ショベル系掘削機械、小型乗用車、軽乗用車、 建設用クレーンの4品目の在庫が積み上がっている。
5
▲ 0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
ブルドーザ
建設用クレーン
ショベル系掘削機械
整地機械
ショベルトラック
軽乗用車
小型乗用車
普通乗用車
(%)
資料:鉱工業指数(経済産業省)
(注)平成26年Ⅰ期と平成27年4~5月の平均値とを比較して伸びを算出。
品目別の在庫が積み上がり始めたタイミング
6
この4品目の在庫が積み上がり始めた時期については、軽乗用車は昨年4月から。 また、ショベル系掘削機は今年1月から積み上がり始めている。
0
50
100
150
200
250
300
350
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
25 26 27
建設用クレーン
ショベル系掘削機械
軽乗用車
小型乗用車
(22年=100、季節調整済)
(年/月)資料:鉱工業指数(経済産業省)
・特定サービス産業動態統計でみると、物品賃貸業の土木・建設機械レンタルは伸びている。
・建設業全体の活動状況を示す建設業活動指数でも、昨年末までは公共土木が堅調であったし、年が明けた27年からは民需も回復している。こうしたことから、土木建設の需要はあることが見込まれる。
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在庫積み上がりの背景 ~土木建設機械~
土木建設機械の場合 背景となる建設業の動向について、 確認する。
60000
65000
70000
75000
80000
85000
90000
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
25 26 27
土木・建設機械(レンタル)
(季節調整済 単位:百万円)
(年/月)
資料:特定サービス産業動態統計(経済産業省)
70
75
80
85
90
95
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
25 26 27
建設業活動指数
(季節調整済 平成22年=100)
(年/月)
資料:全産業活動指数(経済産業省)
・軽乗用車は、販売が好調であった。 平成26年は、過去最高の販売を記録した。
・しかし、月次の動向をみると、7月に入って販売は急落。そして昨年中は「売れる以上に生産」している状態であった。
さらに、今年に入って急に販売が落ち込み、在庫が積み上がった。
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在庫積み上がりの背景 ~軽乗用車~
軽乗用車の場合
0200000400000600000800000
100000012000001400000160000018000002000000
19 20 21 22 23 24 25 26
軽四輪車新車販売(年)
(単位:台)
(年)
資料:一般社団法人 全国軽自動車協会連合会
過去最高
60000
80000
100000
120000
140000
160000
180000
200000
220000
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3
23 24 25 26 27
各年の平均 軽四輪車新車販売(月)
(季節調整済 単位:台)
(年/月)
資料:一般社団法人 全国軽自動車協会連合会
軽乗用車の高さ、そして建設用クレーンの 低さが際立つ在庫率指数
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このように、在庫が積み上がっている状況においても、品目によって出荷や需要の 動向は一様ではない。 出荷と在庫の動きを整理し、連動させて指標化したのが、“在庫率指数”である。 先ほどの4品目の在庫率指数をみると、在庫指数とは異なる動きをしている。 軽乗用車の高さ、そして建設用クレーンの低さが際立つ。
0
50
100
150
200
250
300
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
25 26 27
建設用クレーン
ショベル系掘削機械
軽乗用車
小型乗用車
(22年=100、季節調整済)
(年/月)
資料:鉱工業指数(経済産業省)
一般的に、在庫は低い方が望ましい。 しかし、「高い」水準の在庫であっても、出荷との関係で評価は異なる。
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在庫率指数から分かること(メリット)
在庫率指数は、在庫/出荷で求めた在庫率を指数化したもの。在庫水準が低下していても、在庫率が高ければ、在庫の低下以上に出荷が低下し、需給バランスが悪化していることを示す。 同様に、在庫が上昇していても、在庫率が低ければ、需給バランスは改善しているため、経済的に悪い状態ということにはならない。
→ 在庫低下のときの高在庫率、在庫上昇のときの低在庫率は、在庫水準だけで経済状態を評価すべきでないことの「印」。 在庫率も併用して評価を!
在庫率 低 在庫率 高
在庫 低下在庫が低くなり、需給改善方向。
在庫は低いが、需給悪化。
さらなる在庫削減の可能性も。
在庫 上昇
在庫は高いが、需給改善方向。在庫調整が求められる状況とは
限らない。
在庫が高く、需給悪化方向。
土木建設機械の在庫率の動きの背景
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建設需要が好調だったことから、土木建設機械の出荷は好調だった。 そのため、在庫指数が高い状態であっても在庫率指数は上昇せず、特に建設用 クレーンの在庫率は低い状態。
さらに、ショベル系掘削機の在庫・在庫率が 今年に入って上昇したことには、「オフロード規制」対策で「作りだめ」対応をしているという特殊な事情が作用している。
http://www.env.go.jp/air/car/tokutei_law.html
【環境省HP】
まとめ ~在庫水準に加えて在庫率も~
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直近の鉱工業指数の在庫水準が高いのは、特定の品目が強く影響していた。とはいえ、在庫の積み上がりといっても、品目によって、在庫率の状況が異なり、在庫水準だけでの評価はできない。
こうした出荷と在庫の需給バランスは、“在庫率指数” によって確認できる。
(注)シャドー部分は景気後退局面。24年5月~11月は暫定。
鉱工業在庫率指数の動向
116.1 115.3
90
100
110
120
130
140
150
160
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5
20 21 22 23 24 25 26 27
(22年=100、季節調整済)
(月/年)
東日本大震災発生リーマンショック発生 消費税率引上げ
まとめ ~鉱工業全体~
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現在の在庫水準は、歴史的にみて極端に高い状態ではない。また、特殊要因のある土木建設機械を除外した在庫指数を試算すると、年明けから低下してきている。 ただし、在庫率は景気後退局面のレベルになってきていることに留意。
▲1.0
▲0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
26 27
鉱工業
鉱工業(除.土木建設機械)
(%)(季節調整済 前月比 22年=100)
(年/月)資料:鉱工業指数(経済産業省)