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1.学習情報を共有する 指導者用デジタル教科書の役割として,最も多くの支持をいただいている点は,教科書を大映しにして全員で1つの画面を見ることができる点です。教師の説明や生徒の発言の際,「○ページの○行の筆者の意見は……」と口頭で説明するよりも,拡大提示されたデジタル教科書を指し,マーカーなどで線を引きながら,「ここからここまでの筆者の考えは……」と説明した方がはるかに伝わる確率が高くなります。私たちは,「国語デジタル教科書」を開発する際,授業の中で全員が共有すべき学習情報の伝わりやすさをコンセプトの中心に据えました。

2.書き込める教科書画面 生徒の手元の教科書紙面と同じ画面を使って,書き込んだり,伏せ字をしたりする活動は,デジタル教科書の機能を使った読解活動に多く見られます。このペンツール(→P7)を使った書き込みは,板書に書き込みを行うことと同様以上の効果があります。 デジタル教科書のメリットの1つめは,教材本文を再現できることです。授業の準備として黒板や模造紙に教材

文を書いておく必要はなくなります。2つめは,簡単に書き込んだり消したりすることができるペンツール等があることです。書き込みを消す消しゴムツール(→P7)の役割は小さくありません。簡単に消すことができることは,書き直し(トライアンドエラー)が楽になるということだからです。たとえば,筆者の意見を支える根拠になる文章(事実)にマーカーを引くといった活動では,事実が書かれている文全てにマーカーを引いたうえで,意見と見比べながら絞り込みを行います。いくつかの事実から意見に対応したものを探すことになり,いきなり対応関係を探すよりもステップを1つ多く踏むことができるので,生徒にとってはわかりやすい活動となります。

3.焦点化に便利な拡大機能 拡大するということは見せたいところ(読ませたいところ)を焦点化して提示することになります。デジタル教科書の拡大方法には,大きく次の2通りがあります。①教科書を部分拡大する

 教科書画面の拡大・縮小ツール(→P7)を使って部分拡大をする方法があります。ページの半分程度の箇所や,「書くこと」「話すこと・聞くこと」領域や文法教材などの,ブロックで分けられた部分の提示に有効です。さらに,この拡大方法では,移動ツール(→P7)によって,拡大した箇所の周辺を見せることが可能です。 また,意図的に最初に見せたくないところを隠しておいて,後で見せるような指導もできます。たとえば,挿絵との関係を見せずに,本文の読解を行った後で挿絵を見せて確認する,といった活動です。②本文画面,挿絵画面を使う

 レイアウトは変わりますが,本文のみを表示した画面が本文画面(→P8)です。読解教材と古典教材に搭載しています。本文を読む活動に集中したいときには有効です。 挿絵画面(→P9)は,挿絵のみを表示することができます。挿絵や図表から,授業の導入をしたり,課題や内容に迫ったりすることができます。1年「ちょっと立ち止まって」のだまし絵や「シカの『落ち穂拾い』」のグラフなどは,拡大提示して書き込みを行いながら指導し

「国語デジタル教科書」は思考する道具ます。2年「君は『最後の晩餐』を知っているか」や3年

「月の起源を探る」は,挿絵と行き来しながら読解することが有効な教材です。

4.思考を促す資料・ワーク 資料・ワーク画面(→P8~9)は,デジタル教科書オリジナルの教材です。教科書教材に対応した資料映像などに加えて,今回は授業に役立つツールを新たに加えました。 まず,授業のウォーミングアップなどで使うことを想定したフラッシュカード(→P14)です。漢字,言葉,古典の3種類のフラッシュカードをどの教材からでも起動することができます。全員で声を出して読むこともできますが,順番を決めて1人が1枚ずつカードを読む活動も考えられます。カードの提出順や,新出漢字の範囲なども設定できます。 説明的な文章の教材には,全文表示(→P10)があります。教材の全文を1枚で示しているので,全体を見渡しながら読解する活動に適しています。全文表示はPDFファイルでも収録しており,印刷,配付が可能です。 さらに,読解に使えるツールを3点紹介します。①本文を抜き出して,読みを深めよう(→P11)

 教科書本文をマーキングすると,その部分が瞬時にカードになるツールです。板書のように本文を整理する際に使えます。キーワードなどを多く抜き出しておいて,思考しながら整理・分類を繰り返し,要旨をまとめる活動などに有効です。②登場人物の関係を整理しよう(→P11) 文章の構成を考えよう

 従来,板書で整理していた登場人物や段落の関係

を,カードで動かしながら整理できるツールです。配置や線の引き方によって,登場人物Aから見た相関図と登場人物Bから見た相関図を作って比べてみる活動など,簡単に作図できるメリットを活かした活動がお勧めです。③文章のおおまかな内容を捉えよう(→P11)

 教材本文のキーワードを押さえ,要旨を捉えるワークシートです。単元の終了後に定着度を把握するために使う場合に加え,初読後に全体をどの程度つかんでいるかを確認する場合の活用にも有効です。

5.これからのデジタル教科書 文部科学省が,2020年に向けて,デジタル教科書の位置付けを検討しています。2016年6月現在の「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議 中間まとめ」によると,デジタル教科書の効果として,「デジタル教科書は,多くの情報を取り込むことができ,その更新も容易であること,また,教科や学年を超えた活用により新たな学びのスタイルが構築されることも期待されることから,その使用により,児童生徒の多様な学習ニーズに応えることができる」と報告されています。導入時期の項には,「さらに,次期学習指導要領に向けた検討の中で,アクティブ・ラーニングの視点に立った深い学び,対話的な学び,主体的な学びの実現が重視され,各教科等において育成すべき資質・能力を実現するための学習過程の明確化が進められており,デジタル教科書にはそうした学びの実現にも資することが期待される。」としたうえで,「次期学習指導要領の実施に合わせて導入し,使用することができるようにすることが望ましい。」としています。指導者用デジタル教科書(教材)の活用の先には,生徒自身が思考しながら書き込んだり,シートを活用したりする「デジタル教科書」が,日常の授業の中に位置付く日も近いでしょう。

・学習情報を共有化する・焦点化する

・教科書に対応した資料を使う・分類する・整理する・ウォーミングアップする

書き込む隠す・伏せる拡大する

視聴する動かす・書き込む声に出す

「国語デジタル教科書」は思考する道具 「国語デジタル教科書」は思考する道具

教科書画面を使う

資料・ワークを使う

「本文を抜き出して,読みを深めよう」

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