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2016年3月19日土谷 大
東京出身。1983年生まれ。
2005年 慶應義塾大学理工学部卒業
2009年 ハーバード大学 博士号取得
2009年 SiEnergy Systems社を共同創業。
2011年 九州大学客員准教授を兼任。
2015年 SiEnergy Systemsが会社清算に入り、失職。
自己紹介
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米国留学のPros and ConsPros視野が広がる。厳しい環境におかれることで、大きく成長できる。打たれ強くなる!授業を通じ、幅広い分野の基礎学力は確実につく。活躍の場は世界中!刺激的な仲間と知り合える。研究を先導するネットワークの一員となれる。完全実力勝負。年齢、性別による差別はゼロ。
Cons日本には帰りづらくなる。ニッチな研究はやりづらい(成果主義の為)。やはり慣れるまでは辛いことも多い。
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何度も報道があるが、、減り続ける日本人留学生
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ここ10年で米国に在籍する学生は半減
Source:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ywforum/dai2/sankou3.pdf
中国の勢いが凄い!
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米国で学ぶ留学生(トップ3)
14倍
19,334人33,974人46,497人
274,439人(31%)
日本人学生の米国トップ校での存在感は「極めて」薄くなりつつある。(ほぼ見えない!)
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ハーバードの留学生数(学部+大学院)
MITの留学生数(学部+大学院)
とにかく中国の勢いがトップ校でも凄い!米国で博士号を取った学生の出身大学で最大勢力は精華大学。
理系出身インド人のパワーが凄い
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Sundar Pichai(CEO Google)
Vinod Khosla(Founder of eBay)
Satya Nadella(CEO Microsoft)
Nikesh Arora(CEO Softbank)
Nitin Nohria(Dean, Harvard Business School
Subra Suresh(President, Carnegie Mellon University)
大学院時代(理工系学生向け国際会議)
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毎日新聞 日経新聞
読売新聞
NHKニュース(ビデオ)
卒業したものの大不況→ベンチャー
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• 少額の投資を受けて1年間大学で研究。
• 薄膜燃料電池のスケール化に世界初成功!
• 追加投資を受けて、実際の会社を立ち上げることに。
卒業式の写真
ハーバードの大学新聞 MIT Tech Review 色々なメディア
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研究施設の立ち上げ初日
最終日
初日
最終日
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私の仕事、チーフサイエンティスト実務上は経営者+創業者+科学者
会社のランチ(私がいない日)
米エネルギー省のプログラム
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SiEnergyとARPA-Eのチーム
<国籍・出身国>
日本、米国、中国、香港、英国、インド、カナダ、バングラデシュ
<出身大学>ハーバード、MIT、インペリ
アルカレッジ、スタンフォード、ワシントン、ノースイースタン、ノースウェスタン、インド工科大学(IIT)、バージニア工科大学など
とにかく中国とインドの勢いが凄い! 私の指導教員はインド出身。共同研究者はインド出身者が多い。産官学の要所にインド出身者がいて、印僑パワー恐るべし。
中国からの留学生は、とにかく数が多い!ポスドクのポジションを出すと中国人応募者が半分ほど。
シリコンバレーは「IC(Indian & Chinese)で成り立っている」は間違いではない!
中、印、台湾の発展は頭脳循環による部分が大きい。
先進国で理系教育をするのは難しい コンピューターサイエンスを除いた分野では、米国でも理科離れが進行中。科学が複雑化する中、実社会との繋がりを考えるのが難しくなってきている?
移民が理系の人材不足を補う上で重要な役割を果たしている。
ベンチャー育成は移民政策と密接に繋がっている ハングリーな学生は起業する!国を出るエネルギーは相当なもの。
アメリカで10年間キャリアを積んできて見えてきた点
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なぜベンチャー育成が重要か?既存の会社は統計的に雇用を失う可能性が高い。
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米国の雇用統計平均して年間300万人の雇用をスタート
アップが生み出し、既設の会社は年間に100万人程度の雇用機会を失っている。
(Kauffmann Foundation, 2010)
日本の雇用統計1996年から2006年の間、新設企業は120万人の雇用創出した一方、1996年時点で既設の会社は310万人雇用損失をした。
(深尾&権, 2011)
ベンチャー育成は雇用問題解決へ向けての重要な要素
スタートアップと移民政策の密接な繋がり
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• 2006-2010年に米国で創設された会社の25%は移民による創設。
• 外国生まれの創業者が創設した会社は平均して2006-10年の間に21.36の雇
用を生み出しているのに対し、平均的な米国企業は9.18生み出している。
• 2010年のFortune500の会社のうち、40%は移民または移民の子供による創業。
• 米国でベンチャーキャピタルから出資を受けた会社のうち幹部(CEO、CTO、VP of Engineering)に移民がいる会社は全体の約75%。
Sergei Burin(ロシア)
Andrew Grove(ハンガリー)
Jerry Yang(台湾)
シリコンバレーで活躍するエンジニアは半分以上が移民(今はもっと?)
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シリコンバレーはIC(IndianとChinese)で成り立っている!
”From Brain Drain to Brain Circulation: Rethinking the Global Knowledge Economyby AnnaLee Saxenian
日本は純粋に世界で一番エンジニアが多い国だったのでは?
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単位(千人)
年
日本の成功原因は、戦後のハングリー精神、世界にも稀に見る質の高い技術人材の輩出に拠るところが多い。
1980年代まで、日本は世界
で最も学士号を授与している国の一つであった。
その後、中国が急成長し、今や日本の4倍以上の技術者を生み出している。
工学学士の授与数(NSF, 2008)
中国
日本
Source: Science and Engineering Indicators 2008 (NSF)
中国は凄い勢い
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研究者数 学士号授与数
中国日本
中国
日本+韓国+台湾
Source: Science and Engineering Indicators 2014 (NSF)
中国の科学技術予算増額による相対的地位の低下を感じているはず
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Global share of expenditures on R&D, by selected country/economy: 1996, 2005, and 2011
日本の科学技術予算は横ばいだがシェアが下がっている
Source: Science and Engineering Indicators 2014 (NSF)
国際協業の割合増加も中国は凄い伸び
20Source: Science and Engineering Indicators 2014 (NSF)
中国は留学先としての魅力も高まってきている。
21Source: Open Doors (2015)
留学生の受入国
• 2010年には中国の受入数は8万人程度(9位)と日本の半分程度だったが、今は40万人に迫る勢い
• 中国政府は、これを2020年までに50万人に増やす予定。(日本は2020年までに30万人を目標としている)
ここ5年ほどで中国からの留学は大学院から学部にシフトしつつある。
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英米型のリベラルアーツ教育を受けさせたい中国人が増えている。専門性重視から人間力重視へのシフト。
New York Universityのグローバルキャンパス
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学生はNYのキャンパスだけでなく、授業を世界中にあるキャンパスから選んで受講することができる。
アブダビ、上海は「ポータルキャンパス」というフルサービスキャンパスで、NYで学ばなくても卒業できる。
NYUの合格率は32%、Times Rankingで30位(参考:東大の合格率が34%、Times Rankingで23位)
シンガポール国立大学(NUS)の戦略
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• 合格率4%の狭き門!(東大は34%)• 1学年150-200人の少数精鋭教育• 60%の学生はシンガポール出身。• 学士号はシンガポール国立大学から出る。• Yaleの米国キャンパスでも学ぶことができる。• 米国流のリベラルアーツ教育。• NUSは2015-16年のTimesランキング26位、Yaleは12位(東大は43位)
• DukeとNUSのジョイントプログラム。• MDとPhDの両方を取得可能• 2/3の学生はシンガポール出身。
Ref: https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2016/
精華大学、北京大学の取り組みスーパーエリート育成
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• 約350億円程度の寄付を得て、OxfordのRhodesScholarと並ぶ超エリートプログラムとして設立。
• 1年間の修士プログラム(全額奨学金支給)• Harvard、Yale、Oxford、Stanfordなどの大学がプログラム協力。2016年開始。
• 学生は45%が米国、20%中国、35%その他地域から選ぶ。合格率3%の狭き門。
• 中国政府が北京大学にも似たプログラムを設立。こちらも80%は海外から学生を入れる予定。2015年開始。
最新のTimesランキングで北京大学は42位、清華大学は47位だが(東大は43位)、恐らくこのプログラムの
インパクトで順位を上げてくるはず。
米国の大学は競争の結果、教育にかかるコストが上がり、財政難になりつつある。
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州立大学の財務状況
私立大学
州立大学
学費の高騰が社会問題化
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• 学費が30年間で10倍に!
• 米国の学部生の60%が多額のローンを抱えている状態
Harvard Ohio State
Tuition $59,550 $25,631
Room & Board $22,262 $11,666
Health Care $3,718 $3,828
Total(年間総額)
$85,530約1000万円
$41,125約500万円
民主党のサンダース候補→学費無料化
いま、実は海外から学生を獲得する大チャンス!
米国の大学は財政難。ブランド力を生かして海外から資金獲得をしたい。
米国の大学は学費が高騰しすぎており、支払える層が多くない。
ブランド力ある米国の大学を日本に誘致し、奨学金をつけるのは、質の高い学生を短期間で多く獲得する有効な手段。
アメリカは魅力的な国だが、弱点はビザの発行数制限。 就労ビザは85,000しか枠がないが、昨年は233,000人が応募している。殆どの学生が米国に残れない。
(余談:なお、日本人で博士号を取り、研究をある程度頑張ると永住権を個人申請で取れます←これが私が残れた理由)
産官学一体で仕組み作りを行い、日本で就業できる機会があると知れば、海外から優秀な学生の流入を十分期待できる。
日本の大学はどう立ち向かう?
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大学は壮絶な国際競争の最中日本の大学に海外大学を積極誘致してみてはどうか?
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優秀な学生、教員を海外大学のブランドを使って取り込む(大学内出島構想)
→ボトムアップで大学国際化!
創業者二人はスリランカ出身で文科省奨学金で日本へ留学。東工大を卒業。
Arunはコロンビア大学へ留学後、野村證券に入社。GajanはETH Zurichの博士課程に進学し、クラウドロボティクスの第一人者に。
Cyberdyne, SBIインベストメント, フジメディアホールディングス、ブイキューブが出資し、日本とスイス両方に拠点があるベンチャー企業。
光は見えつつある?例:ラピュータロボティクス
30http://www.rapyuta-robotics.com/jp/pages/team.html
国際人材獲得競争に負けていることこそ、日本の科学と産業が凋落してきた原因ではないか?
アジアの成長(特に中国、インド)をどこまで取り込めるかで日本の成長が決まる。積極的に人材獲得競争に加わるべき。
大学改革は急務。「出島型」海外大学の積極誘致は起爆剤になる可能性が高い。
日本の応用物理分野の研究レベル、技術力は極めて高い。そこに誇りを持ちながら「頭脳循環」の流れに上手く乗せられれば、日本の未来は明るいと思う。
まとめ
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