引張軸力を受ける高強度鉄筋内蔵コンクリート充填鋼管部材継手の
引張強度評価方法に関する研究
鶴田 茉利
51-1
1 . はじめに
本研究は、コンクリート充填鋼管 (CFT) 部材を鋼管の
溶接を行なわず、コンクリートに内蔵した鋼材を用い
て応力伝達する新しい継手方法を開発するための実験
的研究である。この継手を用いることにより、溶接が
困難な超高強度鋼や劣悪な気候条件下での継手方法、
CFT 構造と RC 構造を上下に積み重ねた合成構造への適
用などが可能となる。本継手については既に引張実験
が実施され、その実験結果に対する考察から鉄筋とコ
ンクリートの付着強度の評価方法が提案されている 1)。
しかしながら、これには検討に用いた試験体数が少な
く、実験変数の影響について十分に考慮できていない
可能性があるため、本継手の耐力評価方法の確立のた
めに必要と思われる追加実験を行った 2)。引張実験の結
果より付着強度評価方法の確立のための考察を行うと
共に、新たな付着強度評価式の提案を行う。
2 . 実験概要と破壊形式
実験は、鋼管の断面形状および幅 ( 径 ) 厚比、内蔵鉄
筋の種類 ( 単鉄筋、束ね鉄筋 )、鉄筋の径、本数および
挿入長さ、機械的ずれ止めのリブプレート段数を変数
として、計 25 体の試験体について中心引張実験を行っ
ている 1~4)。表 1 に試験体と実験結果一覧、図 1 に鉄筋
配置形式を示す。試験体材軸中央の継手部分では鋼管
同士は直接接合せず 10mm の隙間を開けており、鋼管端
部にリブプレートを 4 面に片側すみ肉溶接している。
材料試験結果、加力方法、測定装置、荷重 - 変形関係
については割愛するため、文献 1~4 を参照されたい。ま
た、本研究では角形 CFT の付着強度評価式の提案を行
うため、円形 CFT の図表については割愛する。
引張実験で耐力低下を生じた試験体について、実験
終了後に鋼管とかぶりコンクリートを取り除き、破壊
状況を観察し、破壊形式を確定した ( 表 1 参照 )。内蔵
鋼材が単鉄筋 8 本でリブプレート 2 段の試験体では、鉄
筋が 1 本ずつ引抜け破壊 (Bs-1( 図 2(a) 参照 )) を生じてい
る。内蔵鋼材が鉄筋 12 本である単鉄筋と束ね鉄筋の試
験体では、鉄筋がコアコンクリートと一体となって引
抜ける破壊 (Bs-2(図2(b) 参照 )) を生じている。リブプレー
ト 1 段の試験体では、幅厚比 (B/t) により破壊形式が異
なり、B/t=44、33 では、リブプレート部分でコンクリー
ト支圧破壊 (R) を生じている。挿入長さ 30d の試験体と
S22-RT25-15d では内蔵鋼材が降伏 (Ys) しており、S44-R19-
12d-1、S33-2R19-20d では鋼管が降伏 (Yt) している。3 章よ
図 1 鉄筋配置形式
表 1 試験体と実験結果一覧
公称断面寸法
本数-径 降伏軸力
(mm) (本-mm) (kN) (N/mm (kN)S44-R19-15d □-200×4.5 44 15d 1077 ○Bs-1
S33-R19-30d 30d 1837*3 Ys
S33-R19-15d 1236 ○Bs-1
S33-R19-15d-A 1306 Bs-1
S33-R19-10d 10d 846 ○Bs-1
S22-R19-30d 30d 1806*3 Ys
S22-R19-15d 1484 ○Bs-1
2 S33-RA19-15d □-200×6 33 12-D19 1807 70.8 1281 ○Bs-2
S44-R19-12d-1 □-200×4.5 44 492 ○Yt+R
S33-R19-12d-1 □-200×6 33 769 ○R+Bs-2
S22-R19-12d-1 □-200×9 22 958 ○Bs-1
S44-RT25-15d □-200×4.5 44 1164 ○Bs-1
S22-RT25-15d □-200×9 22 1457 ○Ys+Bs-1
S44-2R19-13d □-200×4.5 44 13d 806 ○Bs-2
S33-2R19-30d 30d 70.8 1871*3 Ys
S33-2R19-20d 20d 56.3 1244 ○Yt+R+Bs-2
S33-2R19-15d 15d 70.8 1375 ○Bs-2
S33-2R19-13d 945 ○Bs-2
S22-2R19-13d □-200×9 22 1085 ○Bs-2
76.7
56.3
56.3
1421
1807
1625
*1:d:鉄筋の呼び名*2:Bs-1:内蔵鋼材滑り(鉄筋1本ずつ引抜け),Bs-2:内蔵鋼材滑り(鉄筋とコアコンクリートが一体で
引抜け),R:リブプレート部分のコンクリート支圧破壊,Ys:内蔵鋼材降伏,Yt:鋼管降伏,○:鋼管とか
ぶりコンクリートを取り除いてひび割れ状況を確認した試験体*3:試験機の容量に達したことにより実験を終了したため、最大荷重を記している
6×2-D19
8-D19
4-D25
□-200×6 33
1625
13d
12d
15d
最大耐力 破壊形式
*2公称幅厚比
挿入長さ
*1
8-D19
鋼管 コンクリート強度
□-200×6
□-200×9
15d33
22
76.7
70.8
鉄筋
15d
シリーズ
1
5
試験体名
3
4
385
385
10
15d
D19USD685
1
5d
385
385
10
15d
2×D19SD490
1
5d
200
25
200
25
385
385
10
lB=1
5d
D19SD490
1
5d
200
25
(a)シリーズ1(D19-8本)
(c)シリーズ3(RibPlate-1段)
PL-50×250×250SN490C
(b)シリーズ2(D19-12本)
(d)シリーズ4(D25-4本)
1軸ゲージ
2軸ゲージ
1軸ゲージ
PL-40×360×360 SN490C
高強度鋼棒M64
Rib PlatePL-12×20×150 (SS400)
490
490
10
15d
D25USD685
200
25
330
1033
0
12d
D19USD685
200
25
(d)シリーズ5(D19×2-6本)
※シリーズ1と5は例として挿入長さ15dの試験体を示している
51-2
り表 1 に示した試験体のうち、内蔵鋼材の滑りにより
破壊した試験体の付着強度について検討する。
3 . 平均付着応力度
図 3 に載荷荷重より各鉄筋が均等に応力を負担する―と仮定して求めた鉄筋 1 本当たりの平均付着応力度 p
および、鉄筋材軸中央部の軸ひずみ度測定値より算定―した応力から求めた各鉄筋の平均付着応力度 sg と、全
体変形(伸び)u の関係を示す。図ではS33-R19-15d の結果
のみを示しているが、その他の試験体でも同様の性状
― ―を示している。sg と p の値は概ね等しく、ほぼ同時に
最大値に到達していることより、各鉄筋にほぼ均等に
― ―荷重が伝達されているといえる。また表 2 に sg.max( sg― ― ―の最大値)および sg.pmax(最大荷重時の sg)、pmax(平均付
―着強度)の値を破壊形式別に示す。平均付着強度 pmax は
最大耐力実験値より算出するが、方法は以下の式に示
すように破壊形式に基づき異なるものとする。
1Βs・破壊形式
2Βs・破壊形式
(b) Bs-2コアコンクリート
と一体となって
引抜け
図 2 内蔵鋼材滑りの破壊形式
ここで破壊形式 Bs-1 の試験体は、各鉄筋が均等に応
力を負担すると仮定しており、破壊形式 Bs-2 の試験体
では軸力をコアコンクリート部分の側面積で除して平―
均付着強度τ pmax としている。有効付着長さ ( 図 4 参照
)、周長には表 3 に示す値を用いている。表 2 より、各
― ―鉄筋 sg.max の値および sg.pmax の値にも鉄筋位置による違―いはほとんどみられない。以上より、本研究では pmax
の値をもとに、付着強度の評価方法の検討を行うこと
とする。
4 . 既往の付着強度算定式による付着強度の評価
引抜け破壊を生じた実験結果に基づく鉄筋の付着強
度算定式である藤井ら式 5) および黒木ら式 6) では、付着
強度は鉄筋のせん断面積係数 SA7) で除したふし間コン
クリートの直接せん断強度として評価されており、本
研究においてもこれに従う。なお、SA はコンクリート
のせん断面積の公称付着面積に対する比で定義される、
付着性能に関する特性値であり、今回は図 5 に示すよ
うに破壊形式 Bs-1 では SA1、破壊形式 Bs-2 では SA2 と定
めた。図5 より、ネジ節鉄筋のせん断面積係数SA1 はD19
では 0.67、D25 では 0.71、コアコンクリート部分のせん
断面積係数 SA2 は 0.86 ~ 0.89 である。図 5 に直接せん断
―強度 pmax/ SA の値を、コンクリート強度B を横軸にと
り示す。図中には、藤井ら式、黒木ら式による算定値
を示しており、参考として既往の文献 1 より円形 CFT の
表2 平均付着応力度
中隅
隅中
0
5
10
15
20
0 5 10 15
sg (隅鉄筋)
sg (中鉄筋)
p
(N/mm2)
u (mm)
分周長:コアコンクリート部':ふし傾斜角
:ふしの高さ
:ふしの隙間
:最外径
hTdmax
c
a
θ
T dmax
h
bhd
hTc
acbhacdSA
SA
2/2/)2(arcsin2
)sin/(2)sin/()/1(
max
max1
1
せん断面積係数
■ネジ節鉄筋
:公称周長
:ふし間隔
内側:ふし間隔
:ふし頂部の幅
cba
)(
図5 せん断面積係数 SAc
cdcSA
Dc
cdcSA
DDSA
')2/(8'
)1219('
)2/(6')6219(),819(
max2
max2
2
単鉄筋
束ね鉄筋 単鉄筋
せん断面積係数
分■コアコンクリート部
―図3 平均付着強度 -全体変形u 関係
(S33-R19-15d)
bp ln
Nmaxmax
)(:')(:)(:
:
)/(:
)/(1:2
max
2max
mmmmmml
n
mmN
mmNN
b
p
の周長コアコンクリート部分
鉄筋周長
付着長さ
鉄筋本数
平均付着強度
本が負担する荷重鉄筋
'max
max
bp l
N
表 3 有効付着長さと周長
図 4 鉄筋付着長さ
試験体名有効付着長さ(mm)
合計周長
(mm)コア部分周長(mm)
S44-R19-15d 218 480 546S33-R19-15d 214 480 526
S33-R19-15d-A 222 480 -S33-R19-10d 129 480 531S22-R19-15d 215 480 512
S33-RA19-15d 225 720 531S33-R19-12d-1 122 480 524S22-R19-12d-1 155 480 504S44-RT25-15d 293 320 540S22-RT25-15d 294 320 508S44-2R19-13d 186 570 529S33-2R19-20d 225 570 520S33-2R19-15d 219 570 534S33-2R19-13d 183 570 510S22-2R19-13d 185 570 520
θ θ鉄
筋挿
入長
さ
鉄筋
付着
長さ
付着
に有
効で
ない
部分
の長
さ
隅主筋 中主筋 隅/中 隅主筋 中主筋 隅/中
S44-R19-15d 10.25 9.84 1.04 10.24 9.76 1.05 10.3S33-R19-15d 11.97 12.91 0.93 11.87 12.73 0.93 12.1
S33-R19-15d-A 11.98 10.96 1.09 11.93 10.82 1.10 12.3S33-R19-10d 13.51 13.44 1.01 13.47 13.44 1.00 13.6S22-R19-15d 15.70 14.94 1.05 15.60 14.90 1.05 14.4
S22-R19-12d-1 12.75 13.24 0.96 12.62 13.07 0.97 12.9S44-RT25-15d 13.09 12.88 12.4S22-RT25-15d - - 15.5
表中の「-」はひずみゲージの不良のため不明を示す。斜線は鉄筋は隅主筋のみのため値なし。
τpmax
(N/mm2)試験体名
τsg (N/mm2)τsgmax τsg.pmax
隅主筋 中主筋 隅/中 隅主筋 中主筋 隅/中
S33-RA19-15d 9.43 8.50 1.11 8.73 8.44 1.03 11.2S33-R19-12d-1 13.83 13.21 1.05 13.66 12.69 1.08 12.1S44-2R19-13d 8.12 7.42 1.09 8.12 7.42 1.09 8.2S33-2R19-20d 10.59 10.19 1.04 10.58 10.18 1.04 11.1S33-2R19-15d 9.49 10.32 0.92 9.48 10.11 0.94 11.7S33-2R19-13d 9.08 9.42 0.96 8.87 9.27 0.96 10.1S22-2R19-13d 9.13 8.86 1.03 9.13 8.81 1.04 11.3
τpmax
(N/mm2)試験体名
τsg (N/mm2)τsgmax τsg.pmax
の算定式)/( 2max mmNp
(a) Bs-1鉄筋1 本ずつ
引抜け
51-3
(a) 鋼管幅厚比B/t (c) 付着長さ/ 鉄筋径 lb/d
図7 各変数が付着強度に与える影響
(b) 一面の鉄筋総直径 nsd
20 25 30 35 40 450
0.2
0.4
0.6
0.8
1S44,33,22-R19-15dS33-R19-15d-AS33,22-R19-12d-1S44,22-RT25-15dS44,33,22-2R19-13d
B/t
pmax/SA/B0.85
実験変数◆幅厚比(44,33,22)
※中塗り:破壊形式Bs-1 白抜き:破壊形式Bs-2
6 7 8 9 10 11 120
0.2
0.4
0.6
0.8
1 S33-R19-15d,10dS33-R19-15d-AS33-R19-12d-1S22-R19-15dS22-R19-12d-1S33-2R19-20d,15d,13d
lb/d
pmax/SA/B0.85
実験変数◆挿入長さ(単鉄筋10d,12d,15d) (束ね鉄筋13d,15d,20d)
45 50 55 60 65 70 75 800
0.2
0.4
0.6
0.8
1S22-R19-15dS33-R19-15dS44-R19-15dS22-RT25-15dS44-RT25-15dS33-RA19-15d
nsd(mm)
pmax/SA/B0.85
実験変数◆鉄筋径・本数(2-D25,3-D19,4-D19)
図9 最大荷重時の 横方向応力度h.pmax
リブプレート
継手中央
2軸ゲージ
2090
20
2025
0
50
100
150
200
250
20 25 30 35 40 45 50
S44,33,22-R19-15dS33-R19-15d-AS33-R19-10dS33-RA19-15dS44,22-RT25-15dS33-2R19-20dS33-2R19-15dS44,33,22-2R19-13d
h.pmax(N/mm2)
B/t
※中塗り:破壊形式Bs-1 白抜き:破壊形式Bs-2
)/(2 dnt shstn
分周長:コアコンクリート部 本数:一面に配された鉄筋
,:鉄筋径,:鉄筋付着長さ,:鋼管板厚
,応力度:鋼管に生じる横方向
',)(mm)(mm)(mm
)(N/mm2
s
b
hst
ndlt
図8 鋼管の拘束により生じる応力度n の算定方法
)4/'/(2 thstn
(a)破壊形式 Bs-1 (b)破壊形式 Bs-20
20
40
60
80
0 20 40 60 80
S22-R19-15dS33-R19-15d,10dS33-R19-15d-AS44-R19-15dS33-RA19-15dS22-R25-15dS44-R25-15dS33-R19-12d-1S22-R19-12d-1S44-2R19-13dS33-2R19-20d,15d,13dS22-2R19-13dC48-R19-10dC26-R19-10d
B(N/mm2)
※太線:付着強度算定式の作成 にあたり基づいた実験範囲
po/SA,pmax/SA(N/mm2)
藤井ら式
po/SA=1.69・B0.85
黒木ら式po/SA=0.60・B
※中塗り:破壊形式Bs-1 白抜き:破壊形式Bs-2
図6 直接せん断強度- コンクリート圧縮強度B 関係
管板厚の違いによるものともいえる。図 7(b) では、同
―じ幅厚比のときの pmax/SA/B0.85 の値は、一面に配された
鉄筋が2-D25、3-D19、4-D19 の順に大きくなっており、鉄
筋の径と本数は付着強度に影響するものと考えられる。
図 7(c) では、単鉄筋 8-D19 と束ね鉄筋内蔵の試験体をそ
―れぞれ比較すると、pmax/SA/B0.85 の値に付着長さによる
違いは顕著にはみられない。これより本研究で提案す
る付着強度算定式では、付着長さの影響は考慮しない
こととする。また、各変数が付着強度に与える影響の
傾向に、破壊形式による違いはみられなかった。
6 . 付着強度評価方法の提案
付着強度の評価においては、せん断面積係数につい
ては 4 章で示した SA1、SA2、コンクリート強度について
はB0.85 を用いて評価することとする。その他、前述し
たように、本継手の付着強度を評価するには鋼管によ
る拘束力の大きさや鉄筋の径と本数についても考慮す
る必要があるこれらの因子については、以下のように
定める。
コンクリートの直接せん断強度がモールクーロンの
破壊規準によるものと仮定し、拘束力がない場合の直
接せん断強度と鋼管の拘束力によるそれの増分の和と
して、評価式を定数 、 を用いて―pmax/SA=・B
0.85+・n
とする。ここで n は図 8 に示すように中の釣合を仮定
し、破壊形式 Bs - 1 では各鉄筋表面に作用する応力度
n=sth・2t/nsd、破壊形式 Bs-2 ではコアコンクリート部分
lb・stσh
td
lb・stσhlb・σn
t d
lb・stσh
t
lb・stσh
φ'/4
lb・σn
t d
φ'/4
―計算値も示している。pmax/SA の値は円形 CFT の方が角
形 CFT よりも大きくなっており、円形鋼管では角形鋼
管よりも大きな拘束力が与えられるため、付着性能が
向上するものと考えられる。また、実験値は角形 CFT
では両式による付着強度計算値を大きく下回っており、
円形 CFT でも、本実験と同様に円形鋼管により拘束し
た藤井ら式の計算値を下回っている。この要因として
は、藤井ら式の作成にあたり基づいた実験では内蔵鉄
筋量が 1 本であることや付着長さが 2d 程度と短いこと、
黒木ら式の作成に基づいた実験ではコンクリートを能
動的に拘束していることなど、本実験の試験体とは拘
束条件が異なることが考えられる。また、破壊形式 Bs-
2 は破壊形式 Bs-1 よりも値が小さくなっているが、両
者で SA の値が異なるので、強度の大小を示すものとは
いえない。
5 . 各変数が付着強度に与える影響― 角形 CFT の試験体について、pmax/SA を高強度コンク
リートまでを対象とした藤井ら式で用いられている
B0. 85 で除した値と各実験変数の関係を、図 7 に示す。
CB0.85 で除したのは、各試験体でCB が異なっており、そ
の影響を考慮するためである。図 7(a) では、幅厚比が
―小さいほど pmax/SA/B0.85 の値は大きくなっており、これ
は幅厚比の大きい鋼管ほどより強い拘束力を発揮し、
付着性能が向上するためと考えられる。なお、本実験
では、鋼管幅は全て 200mm であるので、この傾向は鋼
51-4
図1 0 定数の算出
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 0.005 0.01 0.015
p.max/SA1/B0.85
2t/(nsd)/B
y=33.9x+0.30
R2=0.82
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 0.002 0.004 0.006
p.max/SA2/B0.85
2t/(φ'/4)/B
y=40.3x+0.26
R2=0.42
※中塗り:破壊形式Bs-1 白抜き:破壊形式Bs-2
(a) 破壊形式 Bs-1 (b) 破壊形式 Bs-2
0
5
10
15
20
0 5 10 15 20
S44-R19-15dS33-R19-15dS33-R19-15d-AS33-R19-10dS22-R19-15dS22-R19-12d-1S44-RT25-15dS22-RT25-15d
p.max実験値(N/mm2)
p.max計算値(N/mm2)
破壊形式Bs-1実験値/計算値平均値 :1.00標準偏差:0.08
図1 1 実験値と計算値の比較
実験
値/計
算値
=1.2
実験
値/計
算値
=0.8
0
5
10
15
20
0 5 10 15 20
S33-RA19-15dS33-R19-12d-1S44-2R19-13dS33-2R19-20dS33-2R19-15dS33-2R19-13dS22-2R19-13d
p.max実験値(N/mm2)
p.max計算値(N/mm2)
破壊形式Bs-2実験値/計算値平均値 :0.99標準偏差:0.09
実験
値/計
算値
=1.2
実験
値/計
算値
=0.8
参考文献1) 鶴田茉利他:コンクリート充填鋼管部材内に配置された鉄筋の付着強度評価方法に関する研究 その 1,その 2,日本建築学会大会学術講演,2012.82) 鶴田茉利他:内蔵接合鋼材を用いたコンクリート充填鋼管部
0
0.5
1
1.5
0 0.5 1 1.5
実験値max/NmaxBs-1計算値
NmaxBs-2計算値/NmaxBs-1計算値
中塗り:破壊形式Bs-1白抜き:破壊形式Bs-2
図11 実験値 Nmax とNm ax 計算値の関係
試験体名 Nmax(Bs-1計算値) Nmax(Bs-2計算値) Nmax(実験値)
S44-R19-15d 1217 1383 1077S33-R19-15d 1317 1410 1236S33-R19-10d 761 814 846S22-R19-15d 1570 1574 1484
S33-RA19-15d 1798 1373 1281S33-R19-12d-1 642 665 769S22-R19-12d-1 994 956 958S44-RT25-15d 1020 1504 1164S22-RT25-15d 1432 1822 1457S44-2R19-13d 941 940 806S33-2R19-20d 1253 1220 1244S33-2R19-15d 1385 1388 1375S33-2R19-13d 1019 979 945S22-2R19-13d 1219 1162 1085
表4 N m ax の実験値と計算値
表面に作用する応力度n=sth・2t/( ’/4) とする。界面に
はたらく応力度は、鋼管による拘束力とコンクリート
に生じる引張応力により生じると考えられるが、後者
は前者よりも小さいと考えられることから、本研究で
は応力度は鋼管の拘束によるもののみとして評価する。
図 9 に、リブプレート 2 段の試験体について、図中に
示す位置の鋼管のひずみ測定値より平面応力状態を仮
定し、ポアソン比を 0.3 として求めた最大荷重時の鋼管
表面の横方向応力度 h.pmax の値を、鋼管の幅厚比を横
軸にとり示す。図 9 より h.pmax の値の幅厚比による違い
は大きくはない。また、鉄筋が 3-D19 の試験体と鉄筋が
2-D25 の試験体のh.pmax の値は中に中鉄筋が配置された
試験体よりも小さいとなっている。この要因として、
ひずみゲージを貼付している鋼管の部材幅の中央位置
では、中鉄筋による付着抵抗の影響を受け、面外方向
の変形が生じたことが考えられる。しかしながら本研
究では、h.pmax と sth には相関があるものと考えられる
ことから、簡単化も考慮して ・ sth=( 定数) として、―pmax/SA を以下のように評価する(各記号の定義は図 8 を
参照)。―破壊形式 Bs-1:pmax/SA1=・B
0.85+・2t/nsd ・・(1)―破壊形式 Bs-2:pmax/SA2=・B
0.85+・2t/( ’/4) ・(2)
ここで、(1),(2) 式中の定数、 と、 を破壊形式
毎に、実験結果から図 10 に示す線形回帰式によりそれ
ぞれ求めることにする。これらより、本実験の範囲に
―おける平均付着強度 pmax について、以下の評価式を提
案する。
―破壊形式 Bs-1:pmax={・B0.85+・2t/nsd}・SA1・・(3)
―破壊形式 Bs-2:pmax={・B0.85+・2t/( ’/4)}・SA2 (4)
― 図 11 に、p.max の実験値と (3),(4) 式による付着強度を
用いて求めた最大軸耐力max の関係を示す。実験値 / 計
算値の平均値と標準偏差は、破壊形式 Bs-1 では 1.00 と
0.08、破壊形式Bs-2 では 0.99 と 0.09 であり、計算値は実
験値を概ね良好に評価している。また、表 4 に実験値
max と (3),(4) 式によるmax 計算値、図11 に実験値max/Bs-
1 のmax 計算値とBs-2 のmax 計算値/Bs-1 のmax 計算値の
関係を示す。図 11 より破壊形式で分布傾向が異なるた
め、これより (3),(4) 式を用いて破壊形式を判別するこ
ともできるといえる。
7 . まとめ
高強度鉄筋を有するコンクリート充填鋼管部材継
手について、引張実験の結果をもとに、破壊状況の観
察および付着強度評価に関する検討を行い、実験の
範囲における本継手の付着強度算定式を提案した。
材継手の引張実験 - 耐力評価方法の確立と高強度化のための追加実験 - ,日本建築学会研究報告九州支部第 52 号,2013.33) 辻一輝他:引張軸力を受ける鉄筋内蔵コンクリート充填鋼管部材継手の力学性状 その 1,その 2,日本建築学会大会学術講演,2013.84) 鶴田茉利他:引張軸力を受ける鉄筋内蔵コンクリート充填鋼管部材継手の力学性状 その 3,日本建築学会研究報告九州支部第 53 号,2014.35) 赤司二郎他:コンクリート強度と鉄筋のふし形状が付着特性に与える影響,コンクリート工学年次論文報告集,19916) 黒木正幸:鉄筋コンクリート柱の脆性破壊性状の改良法に関する研究,九州大学博士論文,2008.27) 国分正胤他:太径鉄筋の使用に関する研究,土木学会論文報告集,1972.6