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【家庭系部会資料第 10号】
集積所・拠点における資源回収のあり方
1 文京区の資源回収の現状
(1)集積所回収(約 7,000 か所で週 1 回回収) ① 品目 ・ 古紙(新聞、雑誌・雑がみ、段ボール) ・ びん(生きびん、飲料用・食料用・化粧品のガラスびん) ・ 缶(飲料用・食料用のアルミ缶、スチール缶) ・ ペットボトル(飲料用・食料用のポリエチレンテレフタレート製ボトル) * 19 年 10 月から開始
② 回収実績
単位:kg
年度 新 聞 雑 誌 段ボール アルミ缶 スチール
缶 生き びん
カレット ペット ボトル
合 計
18 1,186,000 1,939,630 1,727,100 145,078 345,939 143,079 1,797,634 ― 7,284,460
19 1,037,580 1,677,060 1,754,660 137,721 328,410 134,921 1,836,828 202,730 7,109,910
20 804,760 1,319,300 1,662,860 147,968 352,857 137,975 1,921,467 554,900 6,902,087
(2)拠点回収
① 品目および回収箇所数 品 目 内 容 回収箇所数
紙パック 500ml 以上の牛乳・ジュース等の紙パ
ック 区施設等43か所
乾電池 使い捨ての一次乾電池(アルカリ・マ
ンガン) 区施設11か所(シビックセ
ンター・地域活動センター・
播磨坂清掃事業所) 白色トレイ
白色の食品用発泡スチロールトレイ
(19 年 10 月から開始)
衣類 中古衣類のリユースとして (21 年 4 月から開始)
ペットボトル 集積所回収の他に店頭回収を実施 143か所の酒店・コンビ
ニ・スーパー等の店頭回収 *紙パック・乾電池・白色トレイ・衣類の回収拠点については、参考資料-1参照。
② 回収実績
単位:kg
年度 紙パック 乾電池 白色トレイ ペットボトル (店頭回収) 合 計
18 9,740 3,107 ― 240,890 253,737 19 10,130 3,891 172 233,470 247,663 20 10,540 4,565 694 113,160 128,959
*衣類回収実績(21 年度暫定値):63,000kg
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2 回収拠点の検討
(1)回収拠点に関する課題
文京区の面積は 11.31㎢であり、乾電池、白色トレイ、衣類の回収拠点数は1㎢あたり 1
か所である。そのため、回収拠点までの距離が 1kmくらい離れている地域もある。
特に、衣類は重量があるため、回収拠点が遠いために持っていけない区民が多いと考え
られる。
(2)回収拠点の増加
乾電池、白色トレイ、衣類については、回収拠点の増加を検討する。実施に際しては、
回収箱の設置場所の確保、回収箱の管理、回収品の保管、回収品の再生利用施設までの運
搬などを検討する。また、衣類については雨に濡れないことが条件となることから、これ
らの条件を踏まえて回収拠点の増加を検討する。
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3 資源回収品目の検討
(1)区民アンケート結果
○資源として収集したほうがいいと思うもの
複数回答で質問した。『フライパン・なべなどの金属』(30.2%)が約3割で最も多く、次い
で、『食品用発泡スチロールトレイ(色付き)』(25.8%)、『プラスチック』(23.0%)、『廃食用
油』(22.0%)が2割以上である。
図-1 資源として収集したほうがいいと思うもの
(2)新たな回収品目
① 廃食用油
廃食用油は可燃性物質であり、臭いがあることから回収には立会いが不可欠である。23区の中には廃食用油を回収している事例があるが、多くの自治体では場所と時間を設定し
て拠点回収を行っている。廃食用油については、区施設を中心とした拠点で、時間と場所
を決めた拠点回収について検討する。 ② 土
文京区では土をごみとして収集していない。しかし、一般家庭からはプランターで使用
した園芸土などが発生する。区民アンケート調査では分別に困っているものの 3 番目に土・
石・砂があげられている。 目黒区では、不用園芸土の回収を再生利用のためのモデル事業を実施する予定である。
文京区でも土を回収するモデル事業について、再生利用方法・委託先、再生土の利用方法(区の公園や街路樹で利用、区民に配布)、事業費用などを考慮して検討する。
20.1
8.2
16.2
16.6
22.0
23.0
25.8
30.2
0 5 10 15 20 25 30 35
特にない
その他
陶磁器
蛍光管
廃食用油
プラスチック
食品用発泡スチロールトレイ(色付き)
フライパン・なべなどの金属
(%)
4
(3)他区の事例
○ なべ・やかん・フライパン
区名 開始時期 回収方法 実績 中央 H.20.4 ・集積所で週 1 回、缶と同じコンテナによる回収。(飲
料用缶と混在) ・リサイクル用途は他の缶と同じ。
20 年度:6,670kg
* 21 年度は確定していないが、20 年度より増加傾向。 ○ 廃食油
区名 開始時期 回収方法 実績 中央 H.11.4 ・16 か所の小学校で、毎週土曜日に午前中 2 時間回収。
回収時間内に専用タンクを設置し、シルバー人材センタ
ー職員が立会い。(油を直接注ぐ) ・リサイクル用途:ワックス・ゴム製品・グリセリン等
20 年度:2,672kg 21 年度:20 年度
と同程度
豊島 H.18.6 ・区内 4 施設で月 1 回(第 2 月曜もしくは第 4 月曜)
午前 9 時から 11 時回収。ペットボトル等の空き容器ご
と回収。シルバー人材センター職員が立会い。 ・リサイクル用途:VDF(ベジタブル・ディーゼル・
フューエル 植物油による軽油代替燃料)、飼料等
20 年度:1,560kg 21 年度:20 年度
と同程度
北 H.21.5 ・区内に4館あるエコー広場館で実施。22 年度からは
清掃事務所(3 か所)でも実施。計 7 か所。 ・持参してきた容器ごと預かる。(対面引渡し) ・頻度は、1 か月に 1 回。清掃事務所は、第 2 土曜日
10:00~14:00。エコー広場館は、第 2 日曜日 10:00~14:00。
21 年度:1,971kg
○ 園芸土
区名 開始時期 回収方法 実績 目黒 H.22.5
(試行) ・区内公園4か所で実施。鉢植え・プランターの園芸土
を回収。引き換えに園芸土を配る。 ・堆肥と混ぜて再生園芸土にする。
* 今後については、実績・アンケートを参考に決める。 (4)23区の現状
参考資料-2のとおり
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目黒区 不用園芸土の回収と再生
6
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4 プラスチック製容器包装の分別収集のあり方
(1) 回収拠点
文京区では白色トレイの拠点回収を行っている。これに加えて、ボトル容器や有色トレ
イの拠点回収について、回収箱の設置場所の確保、回収箱の管理、回収品の保管、回収品
の再生利用施設までの運搬などを考慮して検討する。なお、再商品化手法については、可
能な限り環境負荷の少ない手法を選択する。
(資料)板橋区 HP より作成 (2)集積所回収
プラスチック製容器包装の集積所回収は東京 23 区では 12 区で実施されている。プラス
チック製容器包装の集積所回収を文京区で実施した場合について、①環境負荷(温室効果ガ
ス)、②増加経費について定量的な評価をし、メリット・デメリットについて整理する。
板橋区の事例 ●ボトル容器(プラスチック製) プラマークが入っているシャンプーやリンス、洗剤、食用油、ソースなどの容器は回
収ボックスへお持ちください。 ●出し方 キャップ・ふたを取って、ボトル内をよく洗ってから回収ボックスへお持ちください。
※ キャップやふたは可燃ごみへお出しください ※ 芳香剤ボトル、チューブタイプ(マヨネーズなど)の容器は可燃ごみにお出しくださ
い
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①経費の増加額
プラスチック製容器包装の分別収集と再商品化を行うことにより、文京区全体のごみ処
理・リサイクル経費や社会的総経費が増加することになる。 プラスチック製容器包装を分別収集することにより、8 台の収集車両が必要となるが、可
燃ごみ等が減少することにより 2 台の収集車両が削減できる。6 台の増加分の収集運搬経費
増分は約 1.27 億円である。選別保管経費は約 1.44 億円、再商品化経費などを加えると、文
京区負担分は 2.28 億円の増、再商品化経費の事業者負担分を含めた社会的総経費増分は
3.42 億円となる。 プラスチック製容器包装 1t あたりに換算すると、文京区負担増分は約 10.3 万円、社会的
総経費増分は 15.4 万円となる。 ②環境負荷(温室効果ガス)
プラスチック製容器包装を分別収集して再商品化した場合に、可燃ごみとして焼却した
場合と比較して、どの程度温室効果ガスが増加するかを評価する。「プラスチック製容器包
装再商品化手法に関する環境負荷等の検討」(平成 19 年 6 月、財団法人日本容器包装リサ
イクル協会)では、材料リサイクル、ケミカルリサイクル、固形燃料等の燃料の利用として
18 の再商品化手法について、環境負荷を評価している。このうち、最も温室効果ガスの防
止効果の高い「固形燃料等の燃料の利用(セメント焼成収率 90%)」と、最も温室効果ガスの
防止効果が低い「リターナブルパレット(新規木材パレットの代替として使用した場合)」に
ついて、文京区の地域特性に即した評価を行う。
ケース1:プラスチック製容器包装を分別収集し、選別保管施設で選別した後、
固形燃料を製造しセメント焼成に使用する場合 ケース2:プラスチック製容器包装を分別収集し、選別保管施設で選別した後、
リターナブルパレットを製造し新規木材パレットの代替として使用す
る場合
2,218
①収集運搬経費(万円/年) 12,693
②選別保管経費(万円/年) 14,417
③再商品化経費(文京区負担分)(万円/年) 354
④再商品化経費(事業者負担分)(万円/年) 11,446
減少分 ⑤焼却量の減少によるごみ処理費用の削減分(万円/年) 4,677
文京区負担増分合計(万円/年)①+②+③-⑤ 22,788
社会的総経費増分合計(万円/年)①+②+③+④-⑤ 34,234
プラ容器1tあたりの文京区負担増分(万円/t) 10.3
プラ容器1tあたりの社会的総経費増分(万円/t) 15.4
増加分
プラスチック製容器包装回収量(t/年)
合計
9
プラスチック製容器包装を分別収集して再商品化した場合には、プラスチック 1kg あた
り、ケース1では 0.68kg の二酸化炭素が削減される。ケース 2 では 2.35kg の二酸化炭素
が増加する。プラスチック製容器包装を可燃ごみとして焼却した場合には、2.17kg の二酸
化炭素が排出されることから、ケース 1 の場合は 2.85kg の二酸化炭素が削減されるが、ケ
ース 2 では 0.18kg の二酸化炭素が増加することになる。 焼却に比べた年間の二酸化炭素量は、ケース1では 6,315t の削減となるが、ケース 2 で
は 406t の増加となる。 なお、二酸化炭素削減が見込まれるケース1について、次項で評価する経費の増加分を
二酸化炭素削減量で除すことで二酸化炭素削減 1t あたりの経費が算定できる。
ケース1 ケース2
プラスチック製容器包装分別収集して、再商品化をした場合の二酸化炭素排出量
A -0.68 2.35
可燃ごみとして処理した場合の二酸化炭素排出量
B 2.17 2.17
プラスチック製容器包装分別収集による二酸化炭素排出量削減量
C=B-A 2.85 -0.18
単位(kg-CO2/kg-プラ)
項目 ケース1 ケース2
プラ容器回収量(t/年) A 2,218 2,218
プラ1tあたり二酸化炭素削減量(t-CO2/t-プラ)
B 2.85 -0.18
年間二酸化炭素削減量(t-CO2/年) C=A*B 6,315 -406
項目 ケース1
文京区負担増分合計(万円/年) A 22,788
年間二酸化炭素削減量(t-CO2/年) B 6,315
二酸化炭素1tあたりの経費(万円/t-CO2) C=A/B 3.6
項目 ケース1
社会的総経費増分合計(万円/年) A 34,234
年間二酸化炭素削減量(t-CO2/年) B 6,315
二酸化炭素1tあたりの経費(万円/t-CO2) C=A/B 5.4
10
③まとめ
以上、プラスチック製容器包装のリサイクルについてのメリットとデメリットをまとめ
ると次のようになる。
メリット デメリット プラスチック製容器包装のリサイクルをすることによって、清掃工場で焼却するごみを減らすことができる。
焼却をするごみを減らすことによって、清掃工場周辺での環境負荷を減らすことができる。
材料リサイクルとして再商品化された場合には、約半分しか材料リサイクルとして使用されず、残りは、焼却して熱回収されるなどの利用がなされている。しかし、このような焼却施設は23区の清掃工場より高度な公害防止設備が設置されているとは考えにくく、23区の清掃工場よりも高い環境負荷が、焼却施設の周辺で発生することになる。
再商品化手法によっては温室効果ガスの排出量は抑制されることから、温暖化の防止に寄与する可能性が高い。
現在の容器包装リサイクル法では、再商品化の方法は事業者の入札で決まるため、自治体が再商品化手法を選択することはできない。そのため、落札した事業者によっては、焼却する場合に比べて環境負荷が高くなってしまう可能性がある。
分別収集をした場合には、文京区負担分として2.27億円、社会的総費用増分として3.42億円が必要となる。 なお、文京区が最も環境負荷の少ない再商品化手法を選択しようとした場合には、独自ルートとなるため、事業者負担分を文京区が負担することになる。
温室効果ガスを1t減らすための費用は、最も温室効果ガスの削減効果が高い再商品化手法を選択したとしても、文京区負担分で3.6万円/t、社会的総費用で5.4万円/tと試算された。 欧州排出権価格は12.47ユーロ(2009.11.25現在、1ユーロ=125円として1,560円/t)、日本カーボンオフセットの販売価格4,830円/tなどに比べて、高い費用が必要となる。
その他
プラスチック製容器包装をリサイクルすることにより、区民のごみ問題等への関心を高めることになる。
環境負荷
コスト
なお、容器包装リサイクル法は 5 年に 1 回見直すことになっているため、平成 24 年 4 月
1 日には改正法が施行される予定である。環境省中央環境審議会などで改正の議論が行われ
ることになるが、その中では、自治体が再商品化手法を選択することができないか、事業
者の費用負担割合を増やすことはできないか、などが主要な課題になると考えられる。