★怪盗クイーン お蔵出し その3★ Sシ
ー
ン
cene 14・01
「Mエ
ム
Pピー
5ファイブ
にMエ
ム
Pピー
4フォー
〜、Aエ
ー
Gジー
40の1Aエ
ー
1〜。」
大お
お
きなスーツケースを出だ
し、楽た
の
しそうに歌う
た
いながら機き
関かん
銃じゅう
や擲て
き
弾だん
銃じゅう
を
ほうりこんでいくエレオノーレ。ガチャリガチャリと鉄て
つ
のふれあう音お
と
と、
彼かの
女じょ
の歌う
た
声ごえ
が、すこしも調ち
ょう
和わ
しない。
そこに、ノックの音お
と
が混ま
ざる。
「どうぞ〜。」
はいってきたのは、シュテラだ。
「エレオノーレお嬢じ
ょう
様さま
、ごきげんですね。」
やさしく声こ
え
をかけるシュテラの表ひ
ょう
情じょう
が、スーツケースの中な
か
身み
を見み
てか
たまる。
「なにをしてるのですか?」
「見み
てわかりません? 旅た
び
支じ
度たく
ですわ。」
「出し
ゅっ
兵ぺい
ですか?」
「シュテラに、冗じ
ょう
談だん
は似に
合あ
いませんわ。」
右み
ぎ
手て
をヒラヒラふるエレオノーレ。
「日に
っ
本ぽん
にルイヒを退た
い
治じ
しにいくんでしょ。これぐらいの装そ
う
備び
は基き
本ほん
です
わ。」
エレオノーレのことばを笑え
顔がお
できいたシュテラは、
「没ぼ
っ
収しゅう
します。あと、お嬢じ
ょう
様さま
には、ドイツでお留る
守す
番ばん
をお願ね
が
いします。」
きっぱりといった。
「え〜、どうしてですの!」
「わたしたちは、戦せ
ん
争そう
をしにいくわけではありません。それに、これだ
★怪盗クイーン お蔵出し その3★
けの銃じ
ゅう
器き
を、どうやって日に
っ
本ぽん
まで持も
っていくつもりですか?」
エレオノーレの頰ほ
お
が、ドダ
ッ
チ
ベ
イ
ビ
ー
イツ風パンケーキのようにふくらむ。
シュテラがスーツケースをバタンととじる。
「これは、没ぼ
っ
収しゅう
します。」
「ケチ! シュテラは、ケチですわ!」
シュテラは、エレオノーレの文も
ん
句く
を黙も
く
殺さつ
する。
数す
う
分ふん
、キャオキャオ文も
ん
句く
をまき散ち
らしてから、エレオノーレは大お
お
きく
息いき
を吸す
う。そして、胸む
ね
を張は
っていった。
「ホテルベルリン四代だ
い
目め
総そう
帥すい
として命め
い
令れい
します。わたしを日に
っ
本ぽん
につれて
いきなさい。」
うやうやしく頭あ
たま
をさげるシュテラ。
「わたしは、お嬢じ
ょう
様さま
の安あ
ん
全ぜん
を最さ
い
優ゆう
先せん
させるよう、三代だ
い
目め
のゼルマル様さ
ま
よ
り命め
い
令れい
を受う
けております。わたしには、先せ
ん
代だい
の命め
い
令れい
が現げ
ん
総そう
帥すい
の命め
い
令れい
より
効こう
力りょく
があります。」
もし、ことばにかたさがあるのなら、いまのシュテラのことばはダイ
ヤモンドよりもかたかっただろう。
「意い
地じ
悪わる
シュテラのイジメっ子こ
!」
エレオノーレの駄だ
だ々
を背せ
中なか
で受う
け、スーツケースを持も
ったシュテラは、
部へ
屋や
をでた。
「シュテラ様さ
ま
──。」
廊ろ
う
下か
のかげから、スッとゲルブがあらわれる。
「発は
っ
送そう
準じゅん
備び
、おわりました。」
その報ほ
う
告こく
に、シュテラはうなずく。
ゲルブが使つ
か
うKケ
ー
98改か
い
弐に
式しき
とシュテラが使つ
か
うパンツァーファウスト3ス
リー
★怪盗クイーン お蔵出し その3★
は、一い
ち
度ど
バラバラに分ぶ
ん
解かい
され、銃じ
ゅう
器き
とわからないような形か
たち
で荷に
づくりさ
れた。
「チケットの手て
配はい
は?」
「いまからすぐに飛ひ
行こう
場じょう
へいっても、だいじょうぶです。」
「ほかのドラッヘンは、なにを?」
「車く
るま
で待た
い
機き
しています。」
「ご苦く
労ろう
様さま
。」
「日に
っ
本ぽん
のグラースから情じ
ょう
報ほう
がありました。クリスタルタブレットは、田た
中なか
那な
由ゆ
多た
という女じ
ょ
性せい
が持も
っています。現げ
ん
在ざい
、探た
ん
偵てい
卿きょう
の男だ
ん
性せい
と、生う
まれ故こ
郷きょう
の原は
ら
伊いー
島とう
にむかったそうです。ルイヒたちと、国I
C
P
O
際刑事警察機構が追つ
い
跡せき
しています。」
「信し
ん
用よう
できますか?」
「はい。」
断だ
ん
言げん
するゲルブ。それには、わけがある。
フッくんと名な
乗の
る人じ
ん
物ぶつ
からの手て
紙がみ
。それに、グラースからの情じ
ょう
報ほう
とお
なじことが書か
かれていたのだ。
──うさんくさいのは一い
っ
点てん
。フッくんってやつが、ヤウズの野や
郎ろう
の友ゆ
う
人じん
って自じ
己こ
紹しょう
介かい
してたことだな。だいたい、あの野や
郎ろう
に友と
も
だちなんてい
るのか?
しばらく考か
んが
えるが、どうでもいいことだと結け
つ
論ろん
がでる。
──いま、大だ
い
事じ
なのは、ルイヒの退た
い
治じ
はともかく、クリスタルタブレッ
トを手て
に入い
れること。そして、それをバースディプレゼントとしてエレ
オノーレお嬢じ
ょう
様さま
にわたすんだ。
ゲルブには、わかっていた。
★怪盗クイーン お蔵出し その3★ ──どれだけお嬢じ
ょう
様さま
が好す
きでも、その思お
も
いをとどけてはいけない。あ
らわしてもいけない。しかし、クリスタルタブレットを手て
わたすことは、
任にん
務む
だ。そこに、秘ひ
めた思お
も
いをこめてあっても、だれにもわからない。
拳こ
ぶし
をにぎりしめるゲルブ。
──やってやるぜ!
シュテラが、ゲルブにいう。
「今こ
ん
回かい
のあなたの仕し
事ごと
ぶりは、目め
を見み
張は
るものがあります。この調ち
ょう
子し
で、
任にん
務む
遂すい
行こう
のためにがんばってください。」
「はい。」
そして、ゲルブの目め
を見み
る。
「ホテルベルリンは、ドイツ国こ
く
民みん
の平へ
い
和わ
のために活か
つ
動どう
しています。くれ
ぐれも、それを忘わ
す
れないように。」
「…………」
ゲルブは、漆し
っ
黒こく
の闇や
み
のようなシュテラの瞳ひ
とみ
から、目め
をはなすことがで
きない。
「また、ホテルベルリンの鉄て
つ
の規き
律りつ
は、邪よ
こしま
な気き
持も
ちを任に
ん
務む
に持も
ちこむ
ことをゆるしません。」
ビクッとするゲルブ。
──ひょっとして……シュテラ様さ
ま
は、おれの気き
持も
ちを見み
ぬいてるのか
……。
吸す
いこまれるような彼か
の
女じょ
の瞳ひ
とみ
。ゲルブは、心し
ん
臓ぞう
の鼓こ
動どう
をおさえるのに
必ひっ
死し
だ。
──おちつけ。いくらシュテラ様さ
ま
でも、おれの秘ひ
めた思お
も
いに気き
づくは
ずがない。
★怪盗クイーン お蔵出し その3★ 気き
づかれているのである。
気き
づかれていることに気き
づいてないのは、ゲルブだけだ。
「わかりましたね。」
シュテラにいわれ、ゲルブはブーツの踵か
かと
を鳴な
らす。
「Jヤ
ーa!」
直ち
ょく
立りつ
不ふ
動どう
のゲルブを満ま
ん
足ぞく
そうに見み
てから、シュテラはうなずいた。
「情じ
ょう
報ほう
は手て
にはいりました。動う
ご
きましょう。」
そして、エレオノーレのスーツケースを投な
げるようにわたす。
「この処し
ょ
分ぶん
をお願ね
が
いします。あと、わたしたちがいない間あ
いだ
、お嬢じ
ょう
様さま
が無む
茶ちゃ
なことをしないように警け
い
戒かい
態たい
勢せい
を逆ぎ
ゃく
レベルSエ
ス
に引ひ
きあげるようグラー
スに連れ
ん
絡らく
してください。」
逆ぎ
ゃく
レベルSエ
ス
の態た
い
勢せい
とは、外が
い
部ぶ
の敵て
き
にそなえるものではなく、内な
い
部ぶ
──
というかエレオノーレが家い
え
の外そ
と
へでないようにするためのものである。
重お
も
いスーツケースを受う
けとり、頭あ
たま
をさげるゲルブ。
シュテラが、玄げ
ん
関かん
にかけてある黒く
ろ
い帽ぼ
う
子し
をとった。
「でますよ。」