悪性カタル熱 (MCF: Malignant catarrhal Fever)
病原体: アフリカでのウシカモシカ(ヌー)型( WD-MCF: Wildebeest derived ):ガンマヘルペス亜科、 Rhadinovirus 属のシカ・ヘルペスウイルス( Alcelaphine herpesvirus 1 )。
アフリカ以外の国のヒツジ随伴型( SA-MCF: Sheep associated ):ヒツジ・ヘルペスウイルス( Ovine herpesvirus 2 )。
予防法: 周産期のヒツジと感受性動物との接触をさける。
臨床症状: 潜伏期の長さと発症動物の臨床症状は様々で、高熱、角結膜炎、鼻鏡、口腔や陰部粘膜の糜爛・潰瘍、リンパ節の腫脹や神経症状がみられる。発症後には殆どが死亡する。
届出伝染病: 牛、水牛、羊、シカ。
カタル: 粘液や滲出液の分泌の増加を伴う粘膜の炎症。カタル熱: かぜ,インフルエンザ,小葉性肺炎,大葉性肺炎を含めた一群の気道疾患。
発生原因: 出生直後の羊やヌー(いずれも不顕性)の胎盤と感受性動物との接触で感染する。北欧諸国において羊と接触したブタの散発発生。
上川家畜保健衛生所
上川管内のめん羊飼養状況: 1975 年 66 戸 240 頭であったが、 1986 年 110 戸 1,012 頭に急増し、 1990 年では 133 戸 1,808 頭となり、 1 戸当たりの飼養頭数も 3.6 頭、 9.2 頭、 13.6 頭と増加した。飼育目的は、堆肥、肉販売、羊毛販売、自家利用、観光、愛玩用、情操教育等であった。 悪性カタル熱の発生: 1991 年 4 月、 2 農家でめん羊と同一畜舎内に飼養されていた育成牛各 1 頭が、鼻汁漏出、流挺、角膜白濁症状を示し死亡した。口腔粘膜のビラン潰瘍、非化膿性髄膜脳炎、腎、肝、腸管の諸臓器に動脈炎を認め悪性カタル熱と診断した。
めん羊抗体検査: 発生農家 2 戸 8 頭と、その他 23 戸の当歳から 10 歳まで 92 頭を対象に間接螢光抗体法により検査した。発生農家の抗体陽性率は 87.5% 、その他で 91.3% であった。農家指導: 酪農畜産との複合経営農家が 22 戸あり、今後は牛との別畜舎での飼養を徹底指導する。
近年の発生はまれ。
1998 年 9 月 北海道、鹿 1 頭1999 年 4 月 福島 鹿 2 頭2001 年 3 月 福井 牛 1 頭2002 年 4 月 山形 牛 1 頭2005 年 11 月 北海道、牛 1 頭2007 年 8 月 福島 牛 1 頭、 10 月 福岡 鹿 1 頭
同一牛舎内に羊を飼養していた肉牛農家の繁殖用黒毛和種において羊型悪性カタル熱( SA-MCF )を疑う症例が発生した。発症牛は発熱・食欲不振・発咳等の症状を示し、5 日後に死亡した。
福井県家保
病理組織学的検査では全身諸臓器において血管炎が認められ、またそれらの臓器からPCR 法により羊ヘルペスウイルス 2 型( OvHV-2 )遺伝子が検出された。他のすべての同居牛は同様の症状を示さなかった。しかし同居牛の白血球を検査したところ、 25 頭中 10 頭から OvHV-2 遺伝子が検出され、不顕性感染牛の存在が確認された。
全身性血管炎