東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻
大佛俊泰
徒然なる空間解析論都市空間データがもたらす研究テーマ
1.空間解析における定義と仮定 (それは定義ですか仮定ですか?)
都市解析モデルにおける「都心」 or「都心部」 *理論の単純化 *解釈の容易さ *適合性の高さ
↓ *点 vs面? *空間概念 vs距離概念(都心からの距離)? *数値データとの相性(一極 vs多極) *数値的には連続量(強度)でも可? *空間データと対応の良い定義や仮定
T o k y o
B a y
N
TachikawaTokyo
Ohmiya
Yokohama40 min
20 min
10 min
30 min
0 10 30km20
山手線までの時間距離(地点→最寄駅→山手線)
空間データにバラエティ:直線距離から時間距離へ⇒適合性は向上するが・・・
2.高速情報通信社会の空間解析 (距離概念が消えてしまったら?)
高度情報通信社会 *情報伝達の高速化・低廉化 *物流の高速化・低廉化
↓ *空間距離(ユークリッド距離,ネットワーク距離) *時間距離 *金銭距離 * Generalized Distanceの提案? *距離概念の喪失 *ゼロ次元~四次元の混在・変化 *空間解析に及ぼす影響
The Pacific Ocean
JapanChina CPU from USA
ex)立地論の展開 /再検討?
空間移動に伴う時間・費用に関するデータベース(カーナビ,駅ナビ,パス探索システム)
3.分析対象空間範囲の決め方 (勝手に決めていいですか?)
モデル検証・応用のための分析対象地域 *任意の範囲 vs特定の範囲 *都市空間の連続性 vs行政区単位 *対象地域の外側からの影響(外部ゾーン)
↓ *地域構造の非一様性 *モデルの適用範囲を知るためのモデル? *空間範囲の決め方の論理
Tokyo
Akihabara Kinshicho
Asakusa
Ueno
Ueno Park
I mperial Palace
I idabashi
N
0 21
Sumida river
km
土地利用転換構造の類似性からみたゾーン
モデルの適用限界を知るモデルの有効利用を図る
↓空間範囲の決め方の論理
4.空間解析におけるオントロジ (川の上には建てられません!)
*実空間の単純化(点,線と考える)*理論上の立地点からのずれ(=空間的バイアス)
↓*オーバーラップ・隣接の考え方*関心の外にある空間事象との関係性*地理的特性(海,川,山,都市基盤,・・)
活動Aの空間分布
島
空間単位と相関関係
近隣商業
住宅地駅
5.可変単位地区問題 (どんどん複雑になりますが・・・)
*MAUP, ,集計単位問題エコロジカル・ファラシー*ラスター型からベクター型へ=問題の深刻化?*空間次元だけでなく時間次元でも?*時空間分析時には一層厄介(集計単位が変化?)* の問題サンプリング vs既存の空間データ
↓*扱う現象の裏に別のモデルを想定する?
ex1)時刻により異なる?
ex2)変量の種類・組合せで異なる?
時間
地区
6.インターフェイス論 (わかった気がしないんですが・・・)
空間データの大規模化と分析手法の複雑化 *巨大なデータの前処理・ハンドリング *分析過程 /結果が難解・不明瞭
↓ *グラフィカル・モデリング vs ブラックボックス *分かり易さ=視覚化 *誤解釈を避ける工夫(=認知科学の援用?) *空間データ・ブラウジング
官公庁施設 教育文化施設 厚生医療施設 供給処理施設 事務所建造物 専用商業施設 住商併用建物 宿泊遊興施設 専用独立住宅
集合住宅 専用工場
住居併用工場 倉庫運輸関係
屋外利用地 公園運動場
鉄道港湾等
(凡例)
東京都都市計画地理情報システムのデータ( 1992 年)
classified by existing methods (ArcView3.2, 9 classes : 3220 cells )
事業所数の空間分布
4351
499
1
23
47
73
101
141
200
294
Quantile
2600
1
83
189
340
534
778
1180
1796
4351
Natural-Brakes
3868
1
485
968
1452
1935
2418
2902
3385
4351
Equal-Interval
1226
1
56
223
390
558
725
892
1059
4351
Standard-Deviation
0 4 8 km
Shinjuku Tokyo
Shinagawa
Mitaka
Chofu
KawaguchiAsaka
Study area
1988
1
22
65
127
220
364
596
1036
4351
Minimization of Information loss
7.データマイニング:空間解析版 (何かアイディアないですか?)
*空間データの目的的利用・作成*モデルの検証/モデルの応用
↓*情報を如何に捨てるか *大規模空間データから「思いがけない」法則性の発見*空間解析=空間データマイニング?*ただし安心して
→インターフェイス,データエラー,MAUP
Ⅰ
多数決法による同定
Ⅱ
Ⅰ項目①
顕在的
AB
C
C
項目②同定結果
Ⅲ
多数決法による同定
Ⅱ
項目①
AB
C
C
項目②同定結果
潜在的
Ⅲ
← 項目①
項目② ↑
Ⅰ Ⅱ Ⅲ A ○ × ○B ○ × ○C × ○ ○
(可能な組合せ)
8.空間解析のロバストネス (まったく結果が違うじゃない!)
空間データエラーの問題 *原資料・同定方法・電子化方法 *統計的・人為的 *データ精度に関する議論
↓ *モデルの頑強性:データ量よりもデータの質 *分析結果に及ぼす影響の評価 *データエラーの影響を受けにくい空間解析?
9.空間データ整備の指針 (どんなデータが必要ですか?)
今後の空間データ整備に向けて *種類,精度,範囲,時刻,インターバル,構造 *空間解析の視点から指針を示せないか?
10.空間解析の応用 (こんなことできませんか?)
*現行法制度=理念的,経験的*法改正・規制緩和=右往左往する都市* 3Dデータ・ VR 技術の進展
↓*法制度の見直し(空間解析による理論的根拠)*都市の健康診断から健康管理へ
診察(触診,聴診器,レントゲン, CTスキャン・・・)→処方箋→健康管理→身体づくり