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治療 ガイドライン 小児けいれん重積 日本小児神経学会 熱性けいれん診療ガイドライン策定委員会 小児けいれん重積治療ガイドライン 策定ワーキンググループ 日本小児神経学会

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  • 治療ガイドライン小児けいれん重積

    日本小児神経学会

    熱性けいれん診療ガイドライン策定委員会

    監 修

    編 集小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ

    監 修

    編 集

    2017

    小児けいれん重積

    治療ガイドライン

    治療ガイドライン

    監 修

    日本小児神経学会

    日本小児神経学会

  • 日本小児神経学会

    小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ

    監 修

    編 集

    治療ガイドライン小児けいれん重積

    2017

    小児けいれん重積

    小児けいれん重積

    治療ガイドライン

    監 修

     日本小児神経学会

  • 治療ガイドライン治療ガイドライン

    日本小児神経学会

    小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ

    監 修

    編 集

    小児けいれん重積

    15060617 小児けいれん重積治療ガイド本扉.indd 1 2017/05/31 11:20

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    小児けいれん重積治療ガイドライン2017

     発刊にあたって

    日本小児神経学会は小児神経疾患の診療標準化を目指しており,2011年にガイドライン統括委員会を発足させました.本学会ではこれまでに「熱性けいれん診療ガイドライン 2015」および「小児急性脳症診療ガイドライン 2016」を発刊しましたが,このたび「小児けいれん重積治療ガイドライン 2017」を策定しました.本ガイドラインは,林 北見先生を委員長として 9名の委員からなる日本小児神経学会「小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ」によって原案が作成され,アドバイザーの杉江秀夫先生(本学会前ガイドライン統括委員会担当理事),坂本博昭先生(大阪市立総合医療センター小児脳神経外科)および外部委員の小島原典子先生(東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第二講座)によるご指導,本学会評価委員ならびに評議員による内部評価,関連学会と患者団体による外部評価,さらに AGREE IIに沿った評価を受け,修正を行いました.

    けいれん重積状態は頻度の高い急性の病態であり,救急処置と鑑別診断を並行して行う必要があり,小児科医や救急医のみならず内科医や総合診療医など多くの診療科の種々のレベルの医師がその対応に当たります.けいれん重積状態の治療は,国により承認されている薬剤が異なることや慣習的に使われてきた薬剤選択があるため,国際的に認知されたガイドラインがそのまま日本に適応できるわけではありません.また,けいれん重積状態を呈する原疾患は国や民族により異なり,日本では熱性けいれんと急性脳症が多いことが特徴です.そのような背景もあり,日本の医療事情に合ったガイドラインが求められてきましたが,けいれん重積状態治療に関する質の高いエビデンスは少なく,特に小児を対象にしたものは極めて乏しいのが実情です.以上のような点に鑑み,エビデンスや国際的に認知されたガイドライン,過去に日本で作成されたガイドライン〔「小児のけいれん重積状態の診断・治療ガイドライン(案)―よりよい治療法を求めて―」(小児のけいれん重積に対する薬物療法のエビデンスに関する臨床研究,2005年),「てんかん治療ガイドライン 2010」(日本神経学会)〕などを参考にしながら,日本の現状に配慮したガイドラインを策定しました.

    けいれん重積状態のおける治療選択は画一的なものではなく,本ガイドラインで示された推奨は参考にすぎません.実際の治療に当たる場合,病院機能や医療環境がそれぞれ異なっていますので,治療方針の決定は,主治医の総合的判断に基づいて行われるべきであることは言うまでもありません.けいれん重積状態の治療には,適応外使用として使われている薬剤がいくつかあります.本ガイドラインでも,適応外使用薬もその旨を明記したうえでご紹介しています.これらの薬剤の使用には,施設ごとに倫理的配慮を含めてご検討していただきたいと思います.

    iii-iv-発刊にあたって.indd 3 2017/06/01 20:50:31

  • iv

    本ガイドラインが,小児救急を担当する本学会員をはじめ,多くの医療従事者の皆様にとって役立つものであることを願っております.本ガイドラインをご活用いただき,皆様からのフィードバックをいただくことにより,今後の改訂に役立てて参りたいと思います.

    2017年 5月

    日本小児神経学会理事長  高橋 孝雄

    ガイドライン統括委員会担当理事  前垣 義弘ガイドライン統括委員会委員長  福田冬季子

    iii-iv-発刊にあたって.indd 4 2017/06/01 20:50:31

  • v

    小児けいれん重積治療ガイドライン2017

     序文

    2014年 3月に「小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ」が設置され,策定にとりかかりました.2016年 5月の日本小児神経学会総会において骨格を呈示した後,推敲を重ね,このたび発刊にいたりました.この間に貴重なご意見を多く頂きましたこと,この場を借りまして心より感謝申し上げます.

    担当委員の原案をとりまとめる過程で,改めて強く感じたことがあります.一つは,日常的に行っている診療行為の裏付けが確かなものであるのか,ということです.一例をあげると,日本のジアゼパム静注の用量は 0.3~0.5 mg/kgとしていることが多いのですが,海外のガイドラインでは 0.2~0.3 mg/kgであることが多く,日本での用量が多めであることが判りました.薬剤添付文書では小児用量に記載はありませんので,われわれの先輩方が検討した結果であろうと思われますが,世界共通の第一選択肢でありながら,用量にこれだけの幅がある理由は不明です.国ごとの治療成績に大きな差があるとは思えませんので,至適用量はどこにあるのでしょうか.本ガイドラインでは日本での用量を採用しておりますが,今後の検討課題です.もう一つは,この領域でのエビデンスレベルの高い研究の少ないこと,あるいは質の高い研究を実施することの難しさです.救急医療現場の事情を考えれば,当然予想できることではありますが,諸外国においても似たような状況です.本ガイドラインでも多く参考とした Brophyのガイドラインに触れて,Shorvon〔Shorvon S. Guidelines for status epilepticus: are we there yet ? Neurocritical Care 2012 ; 17 : 1-2.〕は多くの重積治療ガイドラインに共通する課題として,十分な“controlled data”が不足するなかで推奨を策定せざるを得ない点を指摘しています.とはいえ,このような実情に甘えることなく,少しでも質の高いエビデンスを得るために,私たちにできることが何かあるのではないか,議論する余地はあるように思います.本ガイドラインを一つの通過点として,そのような機運が生まれることを期待しております.ガイドライン最終稿を作成するうえで,関連諸学会と日本てんかん協会にご評価いただき,多くの問題点をご指摘いただきました.可能な限りお応えできるように検討を行いましたが,基本骨格が決まっているなかで,十分に反映できなかった点もございます.今後,新たな知見が加わるなかで,より実臨床に即した有用なガイドラインに成長できるよう,将来の改訂に向けた作業を進めたいと考えております.

    2017年 5月

    日本小児神経学会小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ委員長  林 北見

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    Introduction

    ガイドライン作成の経緯

     てんかん重積状態注(status epilepticus:SE)は小児救急医療現場において多く遭遇し,時には重症化し全身管理を要することもある救急疾患である.早期に発作を抑制する有効で安全な治療法と,その選択に関する治療ガイドラインが求められている.しかし,疾患の性質から前方視的二重盲検無作為比較試験,特にプラセボ対照試験は倫理的にも実施が極めて困難であるため,各薬剤の有効性,安全性に関する質の高いエビデンスは欧米諸国においても乏しい. SEの治療戦略は世界各国において概略は共通しているが,具体的な薬剤選択と治療手順については過去の経験と専門家による意見などに基づいて作成されることが多かった. 日本では,1990年代にはジアゼパム(DZP),フェニトイン(PHT)と複数のバルビツレートが治療選択肢であり,海外の知見をもとに用法・用量が決められており,学術誌などにエキスパートオピニオンとして治療手順が発表されていたが,専門学会主導の治療ガイドラインは公表されたものがなかった. 2002年に「厚生労働科学研究費補助金,効果的医療技術の確立推進臨床研究事業」として,「小児のけいれん重積に対する薬物療法のエビデンスに関する臨床研究」(主任研究者:大澤真木子)が組織され,多施設共同研究としてミダゾラム(MDL),リドカインの有効性,安全性に関する後方視的検討が行われた.その研究結果および文献検討をもとに,2005年に「小児のけいれん重積状態の診断・治療ガイドライン(案)―よりよい治療法を求めて―」が作成された.この「ガイドライン(案)」は日本てんかん学会評議員,日本小児神経学会評議員にコメントを依頼しており,小児神経学領域の専門家によるエキスパートオピニオンとして位置付けられた. 以後,この「ガイドライン(案)」をもとに議論が進められていたが,MDL静注製剤の SE治療での使用は国内 ・国外ともに適応外であり,欧米においても難治性 SEに対する少数の研究にとどまっていた.MDL鼻腔内・頰粘膜投与は海外でも剤型はなく,確立した投与法もなかった.また,欧米では家庭でのけいれん発症早期に使用される DZP直腸内投与製剤が 1990年代から市販されていたが,日本ではごく一部の医療機関で自家製剤として使用されるにとどまっており,静注製剤を適応外使用せざるを得ない状態であった.このように,実臨床での経験に基づいた提案ではあったが,選択可能な治療薬・剤型が十分でなく,一般の臨床現場で実践するには課題が残されていた. 一方,海外で主要な治療選択肢であるロラゼパム(LZP)静注薬,フェノバルビタール(PB)静注薬,ホスフェニトイン(fosPHT)静注薬は日本には導入されておらず,海外での知見,ガイドラインに基づいた治療提案を行える環境は整っていなかった. その後,国内でも治療薬開発が進み,2008年に PB静注薬(ノーベルバールⓇ),2011年にfosPHT静注薬(ホストインⓇ),2014年にMDL静注薬(ミダフレッサⓇ)が「てんかん重積状態」を適応症として認可され,海外のガイドラインとほぼ同等の選択肢が得られることとなった.

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  •   vii

    また,2011年にMDL頰粘膜投与製剤が英国で承認され,欧米では家庭や医療機関初療での選択肢となっている. この間,2010年に日本神経学会が「てんかん重積状態」治療を含む「てんかん治療ガイドライン 2010」を公表し,小児 SE治療選択にも言及した.日本小児神経学会においても,専門領域におけるガイドライン作成の機運が高まり,「ガイドライン統括委員会」のもとに 2014年3月に「小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ」が設置され,治療選択肢が拡大したことを背景としてガイドライン作成が開始された.

    注: 諸学会の用語定義において,status epilepticus(SE)は「てんかん重積状態」としている.しかし,この introductionには「てんかん重積状態」と「けいれん重積状態」の記述が混在している.後者は厳密な用語としては「けいれん性てんかん重積状態(convulsive status epilpeticus:CSE)」とすべきであるが,すでに公表された記述であり,そのまま表記している.

       また,本ガイドラインでは対象をけいれん性発作に限定しており,総論にその理由を説明している.それに従って,以降の解説記述では「けいれん性てんかん重積状態」を「けいれん重積状態」と表記し,その略語を SEとした.

    ガイドラインの目的と使い方

     SE治療の目標は,けいれん発症からできるだけ早く,かつ安全に発作を収束させることである.そのためには,患者の状況を即座に把握し,治療選択肢を決定し,全身状態をモニタリングしながら治療を進めていく必要がある.本ガイドラインは臨床現場での速やかな方針決定と対応に資することが目的であり,現在得られる最良の知見をもとに作成されている. けいれん発症初期に対応する第一線の医院・診療所や一般病院から,難治化し全身状態も悪化している時期に対応する三次医療機関である救命救急センターまで,設備やスタッフの状況が大きく異なる医療機関が SE治療にあたっている.医師の治療経験や医療機関の地域における役割は多様であり,救急搬送体制も含め,地域によって救急医療事情には大きな差異があるのが実情である.また,SEの原因や患者個々の背景が多様であるため,治療に対する反応も一定ではない. そのようななかでも一定水準の対応ができるようにガイドラインを作成したが,本ガイドラインは画一的な治療法,遵守すべき規則として策定されたものではない.実際の治療方針は患者の状態に応じ,医療者の経験と医療環境を踏まえ,ガイドラインを参考に決定されるものである.すべての医療機関に共通の治療,管理の基準を設けることは,上述の理由から現実的ではなく,対応する医師,医療機関の判断とより適切な治療選択を制約するおそれもある.一方で,本ガイドラインに記述されたすべての治療・管理を一医療機関で完結することは困難な場合もあり,地域の救急医療事情および各論 CQに示された要件を参考に,個々の患者に適切な治療・管理を行えるよう,転院等の配慮が望まれる.本ガイドラインは,医療サービスの質の評価,医事粉争や医療訴訟における判断基準を示すものではない.

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    ガイドライン作成の手順

    1.組 織 日本小児神経学会ガイドライン統括委員会によって「小児けいれん重積治療ガイドライン」の策定が決定され,ワーキンググループが組織された.委員長の他に,実臨床において SE治療経験の豊富な医師(小児神経専門医)8名にガイドライン執筆にあたる委員を依頼した.また,その支援を目的にガイドライン作成に豊富な経験を有するアドバイザーを 3名委嘱した.

    2.利益相反 本ワーキンググループの活動,ガイドライン作成は日本小児神経学会の経費負担(日本図書館協会に対する文献検索依頼費用,ワーキンググループ開催における交通費・宿泊費・会場費に限定)によって行われた.ガイドライン作成に関わる全委員は日本小児神経学会の指針に従って「役員・委員長・倫理委員・COI委員の COI自己申告書」を提出し,ガイドライン作成過程において配慮を要する経済的 COI,およびアカデミック COIを認めなかった.

    3.作成方法 2014年 3月,ガイドラインの全体像をワーキンググループ全体で討議した.その時点ではMindsから「診療ガイドライン作成の手引き 2014」が刊行されていたが,すでにワーキンググループ構成が決定されていたこと,SEの治療,管理においては質の高いエビデンスが得られない場合が多いことを想定し,「手引き 2014」は参考として作成を進めることとした.clinical question(CQ)は手引き 2014による PICOを念頭に置いて作成したが,より網羅的な文案になることは許容した.数次の検討を経て CQ原案を作成し,日本小児神経学会員,関連諸学会,および患者団体である日本てんかん協会に対してパブリックコメントを求め,その意見を加味して 2015年 10月に CQを決定した.1つの CQに対して 2名の委員が以降の作成を担当した. 次に CQごとに検索 key wordを決定し,それに基づいて日本図書館協会に文献検索を依頼した.検索期間は 1980年 1月から 2015年 12月までとし,言語は英語と日本語に絞り,PubMedおよび医学中央雑誌から系統的に検索した.検索結果は巻末にまとめた.その結果に加え,各国のガイドライン,成書を参考とし,必要に応じてハンドサーチを行った.検索された文献をタイトルと抄録,発表年代をもとに CQごとに担当委員で二次スクリーニングし,文献を選択した.文献の選択に際し,この分野では前方視的比較対照試験などのエビデンスレベルの高い文献が少ないことが推測されたため,症例研究や症例報告も含めて検討した.得られた文献の reviewと CQの推奨文,解説文作成は CQごとに担当委員が行い,ワーキンググループで選択文献の適切さを含め複数回にわたって検討し修正を行った. 手引き 2014ではシステマティックレビューを行うことを推奨し,既存のシステマティックレビュー利用を認めている.SE治療においては Cochrane Database of Systematic Reviews(Prasad 2014)で LZPと DZPの比較,Brigo(2015)のMDL非静脈内投与と DZP静脈内・非静脈内投与の比較がシステマティックレビューとして報告されているのみである.日本では現在選択できない治療法の比較であり,本ガイドラインでは CQの解説で利用するにとどめた.各論 CQ2

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  •   ix

    で取り上げられている DZPとMDLとの比較をした文献はなく,CQ6の PHT / fosPHTと PBとを小児において比較した文献もない.また,個々の薬剤について前方視的に効果,副作用を検討した文献も乏しい.したがって,ワーキンググループでは今回得られた文献の背景,研究計画の多様さなどを考慮し,本ガイドラインではシステマティックレビューを行わず,エビデンスを定性的に比較評価することとした. ガイドライン策定ワーキンググループによる最終案決定後,日本小児神経学会内の専門家による査読評価,および会員に対して学会ホームページに最終案を提示してパブリックコメントを求めた.また,推奨草案や解説文の評価,質の改善を目的に,治療を受ける立場,救急医療や成人対象など異なる専門性,外来小児科診療など,異なる視点からの意見を求め,関連諸学会(日本小児科学会,日本小児科医会,日本外来小児科学会,日本小児救急医学会,日本てんかん学会,日本神経学会,日本救急医学会),患者団体(日本てんかん協会)に対して外部評価を自由回答形式で依頼した.また,ガイドライン作成方法,作成過程について,AGREE IIに基づく事前評価を依頼した.これらの結果をもとにワーキンググループで検討を行い,原案に加筆,修正を行った.

    文献◦Prasad M, Krishnan PR, Sequeira R, Al-Roomi K. Anticonvulsant therapy for status epilepticus (Review). Cochrane Database of

    Systematic Reviews 2014, Issue 9.

    ◦Brigo F, Nardone R, Tezzon F, Trinka E. Nonintravenous midazolam versus intravenous or rectal diazepam for the treatment of early status epilepticus : A systematic review with meta-analysis. Epilepsy Behav 2015 ; 49 : 325-36.

    4.エビデンスレベルおよび推奨グレード 前述のように,最近のガイドライン作成は手引き 2014に従って行われることが多い.しかし,小児領域では前方視的プラセボ対照二重盲検試験などの強いレベルの「科学的根拠」による研究が乏しい.特に,けいれん重積治療は現場で家族からインフォームドコンセントを得る時間を確保することが困難,かつ,倫理的にもプラセボ対照試験を行うことはできない.また,PHTや PBなど,古くからの薬剤については新しい研究が行われることも少ない.MDL静注薬は日本でも認可されたばかりで前方視的研究が乏しく,かつ,海外でも新しい研究は少ない.そのため,CQの内容によっては質の高い研究に基づく推奨が困難となることが予測された. Evidence-based guidelineを作成する場合,推奨グレードは「科学的根拠の強さ」を基に決定されることが一般的である.Glauser(2016)は前方視的ランダム化比較試験をクラス 1または 2,その他の比較試験をクラス 3,症例シリーズなどはクラス 4とし,「結論と推奨」では推奨レベル Aはクラス 1,レベル Bはクラス 2,レベル Cはクラス 3以上の研究を必要とし,クラス 4の研究のみの場合,レベル Uとして「推奨なし」としている.しかし,前述のように,SE治療においては症例研究,後方視的研究が多く,エビデンスレベルの高い研究報告でも日本には導入されていない薬剤(LZP:レベル A),剤型(MDL粘膜投与製剤:レベル B)であり,日本で使用できる薬剤では DZP静注,PB静注がレベル Aであるが,fosPHTはレベル Uに相当する.このような推奨グレードシステムを採用すると多くの CQで推奨グレード「なし」となってしまうことが想定された.

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  • x

    Oxford Centre for Evidence-Based Medicine 2011 Levels of Evidence(和訳)

    質問 ステップ 1(レベル 1*1)ステップ 2(レベル 2*1)

    ステップ 3(レベル 3*1)

    ステップ 4(レベル 4*1)

    ステップ 5(レベル 5)

    その問題はどの程度よくあるのか?

    特定の地域かつ最新のランダム化サンプル調査(または全数調査)

    特定の地域での照合が担保された調査のシステマティックレビュー*2

    特定の地域での非ランダム化サンプル*2

    症例集積研究*2 該当なし

    この診断検査またはモニタリング検査は正確か?(診断)

    一貫した参照基準と盲検化を適用した横断研究のシステマティックレビュー

    一貫した参照基準と盲検化を適用した個別の横断的研究

    非連続的研究,または一貫した参照基準を適用していない研究*2

    症例対照研究,または質の低いあるいは非独立的な参照基準*2

    メカニズムに基づく推論

    治療を追加しなければどうなるのか?(予後)

    発端コホート研究のシステマティックレビュー

    発端コホート研究 コホート研究またはランダム化試験の比較対照群*1

    症例集積研究または症例対照研究,または質の低い予後コホート研究*2

    該当なし

    この介入は役に立つのか?(治療利益)

    ランダム化試験または n-of-1試験のシステマティックレビュー

    ランダム化試験または劇的な効果のある観察研究

    非ランダム化比較コホート /追跡研究*2

    症例集積研究,症例対照研究,またはヒストリカルコントロール研究*2

    メカニズムに基づく推論

    よくある被害はどのようなものか?(治療被害)

    ランダム化試験のシステマティックレビュー,ネスティッド ・ケース ・コントロール研究のシステマティックレビュー,問題が提起されている患者での n-of-1試験,または劇的な効果のある観察研究

    個別のランダム化試験または(例外的に)劇的な効果のある観察研究

    一般にみられる被害を特定するのに十分な症例数がある場合,非ランダム化比較コホート /追跡研究(市販後調査)(長期的被害については,追跡期間が十分でなければならない)*2

    症例集積研究,症例対照研究,またはヒストリカルコントロール研究*2

    メカニズムに基づく推論

    まれにある被害はどのようなものか?(治療被害)

    ランダム化試験または n-of-1試験のシステマティックレビュー

    ランダム化試験または(例外的に)劇的な効果のある観察研究

    この(早期発見)試験は価値があるか?(スクリーニング)

    ランダム化試験のシステマティックレビュー

    ランダム化試験 非ランダム化比較コホート /追跡研究*2

    症例集積研究,症例対照研究,またはヒストリカルコントロール研究*2

    メカニズムに基づく推論

    *1: 試験間での不一致,または絶対的な効果量が極めて小さいと,レベルは試験の質,不正確さ,間接性(試験の PICOが質問の PICOに合致していない)に基づいて下がることがある .効果量が大きいか,または極めて大きい場合には,レベルは上がることがある.

    *2:従来通り,一般にシステマティックレビューのほうが個別試験よりも好ましい.

    エビデンスレベル一覧表の引用方法OCEBMエビデンスレベル作業部会*3,「The Oxford 2011 Levels of Evidence」Oxford Centre for Evidence-Based Medicine,http://www.cebm.net/index.aspx?o=5653*3: OCEBMエビデンスレベル作業部会=Jeremy Howic, Ian Chalmers(James Lind Library), Paul Glasziou, Trish Greenhalgh,

    Carl Heneghan, Alessandro Liberati, Ivan Moschetti, Bob Phillips, Hazel Thornton, Olive Goddard, Mary Hodkinson

    〔Centre for Evidence-Based Medicineウェブサイト(https://www.cebm.net/ocebm-levels-of-evidence/)〕

    表 1

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  •   xi

     そのため,本ガイドラインでは各 CQで得られたエビデンスの総体の「強さ」だけで判断するのではなく,日本の実臨床に適用できることを重視して推奨グレードを判断することとした.文献のエビデンスレベルは Oxford Centre for Evidence-Based Medicine 2011(表 1)により,推奨文の推奨グレードは表 2のように決定した.そのため,推奨グレード A,Bではあえて「科学的根拠」の程度に言及していない.担当委員が策定したグレードをワーキンググループで討議し,投票を 2回行って修正,最終案を決定した.

    文献◦Glauser T, Shinnar S, Gloss D, et al. Evidence-Based Guideline : Treatment of Convulsive Status Epilepticus in Children and

    Adults : Report of the Guideline Committee of the American Epilepsy Society. Epilepsy Curr 2016 ; 16 : 48-61.

    今後の課題

     日本の SE治療において,CQ1で検討した病院前治療は一定した方策もなく,未知の領域である.今後MDL頰粘膜投与製剤が日本でも認可される可能性があるが,その導入によって家庭での対応のみならず,救急搬送中や一次医療機関での治療についても変化することが予測される. また,医療機関での経静脈的治療薬の第一選択肢が DZPとMDLの二本立てになったことで,治療の有効性,安全性がどのように変化する(あるいは変化しない)のか,追跡検討が求められる.同様に,第二選択肢としての PBと PHT / fosPHTの使い分けについても議論は続くと思われる.それ以降の難治性 SE治療についてはまとまった知見はないに等しい. このように,ガイドラインは策定されたが,その基礎となる臨床的知見は乏しいのが実情である.より有効で安全な SE治療を確立するためには,共通の考え方に基づく臨床経験を蓄積することが必要であり,本ガイドラインがその契機となることを期待している.また,そのような新たな知見が集積されることによって,本ガイドラインを改訂する作業が必要であり,日本小児神経学会において引き続き検討が行われる予定である.

    適応外使用と禁忌

     現在,SEに効能・効果が認められている薬剤は限られており,各論で述べているように早

    CQ 推奨文の推奨グレード推奨グレード 内容

    A 行うよう強く勧められる

    B 行うよう勧められる

    C1 科学的根拠はないが,行うことを考慮してよい

    C2 科学的根拠はなく,行わないことを考慮してよい

    D 行わないよう勧められる

    表 2

    vi-xii-introduction.indd 11 2017/06/01 20:59:15

  • xii

    期治療や難治化した際の選択肢は,本来の適応症とは異なる使用を余儀なくされる. 「適応外使用」とは薬剤添付文書の「効能・効果」「用法・用量」「使用上の注意」などの記載とは異なる使用を指す.医療費の保険請求の可否とは別である.MDL製剤でも,ドルミカムⓇ

    は「効能・効果」にけいれん治療は含まれないため適応外使用である.ミダフレッサⓇはてんかん重積状態が「効能・効果」として認められているが,鼻腔内や頰粘膜投与は「用法・用量」に記載がなく,適応外使用である. 一般に,適応外使用されている医薬品の対象とする疾患,有効性は症例経験として報告されることが多く,用法・用量や有害事象に関する情報の集積は十分でない.適応外使用であることはその医薬品としての効果と安全性が十分に担保されていないことを意味し,効果が得られない可能性,想定外の健康被害をもたらす可能性があることを認識する必要がある.同時に,現行法制上の対象から外れるため,有害事象に対する責任の所在と補償の課題を残している. 一方,救急疾患である SEに対して無治療のまま静脈確保に時間を要したり,難治化したけいれん発作に対して積極的な治療をせずに経過をみることは許容されない. このような場合,医学薬学上の知見に基づいた医師の主体的な判断のなかで適切に使用することは可能である.本ガイドラインでは患者の利益,医師の治療選択の擁護を重視し,適応外使用となる医薬品,用法・用量についても海外のエビデンス等に基づいて解説,推奨している. 「禁忌」に抵触する使用(プロポフォールやケタミン)についての判断は困難であり,医学上の問題に止まらず,社会的な課題でもある. SE治療現場では患者家族等への説明に十分な時間を確保できないおそれはあるが,「適応外使用」を選択する際には患者の状態,選択できる治療法と期待される効果,想定される有害事象について,可能な限り適切なインフォームドコンセントを得る体制と努力が求められる.

    ガイドライン改訂

     ガイドライン策定ワーキンググループとして,学会ホームページでの公開,関連諸学会での講演等をとおしてガイドラインの周知を図り,意見を求める活動を行う.また,各 CQに示した治療選択肢の効果,有害事象など臨床成績,検査の有用性,および新たな治療選択肢に関するエビデンスを収集し,およそ 5年後を目処にガイドライン改訂を予定する.

    vi-xii-introduction.indd 12 2017/06/01 20:59:16

  •   xiii

    適応症のある選択肢

    対応する

    CQ

    推奨

    グレード

    日本での適応外使用

    対応する

    CQ

    推奨

    グレード海外でのその他の選択肢

    対応する

    CQ

    ステ

    ップ

    1 ジアゼパム(坐剤)

    CQ1

    C1

    ミダゾラム(鼻腔内・頰粘膜)

    CQ1

    病院前治療

    抱水クロラール(直腸内投与)

    C1

    ジアゼパム(直腸内投与)

    ステ

    ップ

    2 ジアゼパム(静注)

    CQ2

    Aジアゼパム(直腸内投与)

    CQ3

    Bロラゼパム(静注)

    CQ2

    病院初期治療ミダゾラム(静注)

    Aミダゾラム(筋注)

    Bミダゾラム(鼻腔内・頰粘膜)

    CQ3

    ミダゾラム(鼻腔内・頰粘膜)

    B

    ステ

    ップ

    3 ホスフェニトイン(静注)

    CQ6

    Bレベチラセタム(静注)

    CQ6

    なし

    バルプロ酸(静注)

    CQ6

    BZ

    D抵抗性

    フェニトイン(静注)

    B

    フェノバルビタール(静注)

    B

    ステ

    ップ

    4 バルビツレート(静注)

    CQ8

    Aバルビツレート(持続静注)

    CQ8

    Aプロポフォール

    CQ8

    難治性

    ミダゾラム(持続静注)

    A

    ステ

    ップ

    5 吸入麻酔 抗てんかん薬

    CQ9

    C1ケタミン

    CQ9

    超難治性

    ステロイド・免疫療法

    C1

    外科治療 ケトン食

    C1

    脳低温

    CQ10

    C1

    けいれん重積状態に対する治療選択肢

    xiii-選択肢.indd 13 2017/06/01 21:00:39

  • xiv

    監修 日本小児神経学会

    編集 小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ

     日本小児神経学会ガイドライン統括委員会

    ◉担当理事前垣 義弘 鳥取大学医学部脳神経小児科(米子市)

    ◉委員長福田冬季子 浜松医科大学小児科(浜松市)

    ◉委員小国 弘量 東京女子医科大学小児科(東京都)久保田雅也 国立成育医療研究センター病院器官病態系内科部神経内科(東京都)小牧 宏文 国立精神・神経医療研究センター病院臨床研究推進部(小平市)是松 聖悟 中津市立中津市民病院(中津市)夏目  淳 名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄附講座(名古屋市)新島 新一 順天堂大学医学部附属練馬病院小児科(東京都)萩野谷和裕 宮城県立こども病院神経科(仙台市)

    ◉外部委員小島原典子 東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第二講座(東京都)

    ◉アドバイザー大澤真木子 東京女子医科大学名誉教授,大塚駅前診療所(東京都)大野 耕策 労働者健康安全機構山陰労災病院(米子市)杉江 秀夫 常葉大学保健医療学部(浜松市)埜中 征哉 国立精神・神経医療研究センター(小平市)

     小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ

    ◉委員長林  北見 東京女子医科大学八千代医療センター神経小児科(八千代市)

    ◉委員秋山 倫之 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学分野発達神経病態学領域(岡山市)菊池健二郎 東京慈恵会医科大学小児科学講座(東京都)

    xiv-xv-名簿.indd 14 2017/06/01 21:01:32

  •   xv

    九鬼 一郎 大阪市立総合医療センター小児神経内科(大阪市)須貝 研司 国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科(小平市)永瀬 裕朗 神戸大学医学部附属病院親と子の心療部(神戸市)前垣 義弘 鳥取大学医学部脳神経小児科(米子市)村上 貴孝 中野こども病院(大阪市)山本  仁 聖マリアンナ医科大学小児科(川崎市)

    ◉アドバイザー坂本 博昭 大阪市立総合医療センター小児脳神経外科(大阪市)浜野晋一郎 埼玉県立小児医療センター神経科(さいたま市)山内 秀雄 埼玉医科大学小児科(埼玉県)

    ◉協力者西村 洋子 鳥取大学医学部脳神経小児科(米子市)

     評価委員

    大澤真木子 東京女子医科大学名誉教授,大塚駅前診療所(東京都)皆川 公夫 緑ヶ丘療育園(札幌市)

     外部評価

    日本小児科学会日本小児科医会日本外来小児科学会日本小児救急医学会日本てんかん学会日本神経学会日本救急医学会

    日本てんかん協会(波の会)

    小島原典子 東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第二講座(東京都)

    xiv-xv-名簿.indd 15 2017/06/01 21:01:32

  • xvi

    目次

    発刊にあたって      iii序文      v

    Introduction      viCQ・推奨グレード一覧      xviii

    第 1部 総論

    1 ガイドラインの対象      22 定義と分類(definition & classification)      43 疫学(epidemiology)      84 海外の治療ガイドライン      14

    第 2部 各論

    CQ 1   けいれん発作に対して重積化を防ぐために早期に治療介入するこ とは必要か      18

    CQ 2   医療機関受診時にけいれん発作が続いている場合,最初に試みる べき治療は何か      24

    CQ 3   けいれん発作が持続しているが,静脈ルートがとれなかった場合, どのような対処があるか      29

    CQ 4   けいれん発作を起こした小児で,入院(入院可能な病院への搬送) の適応はどう判断するか      33

    CQ 5   ベンゾジアゼピン系薬剤で発作が消失した場合,発作再発予防の ための薬剤追加は有効か      37

    CQ 6   ベンゾジアゼピン系薬剤の静注で発作が消失しない場合,次の選 択肢は何があるか      40

    CQ 7   けいれん重積状態において,ICU入院を考慮する目安は何か      45CQ 8  難治性けいれん重積状態に対して昏睡療法は有用か      47CQ 9  超難治性けいれん重積状態に対する介入は何があるか      53CQ 10  難治性けいれん重積状態に脳低温療法は有効か      59CQ 11  けいれん重積状態で,どのような検査が必要か      62

    xvi-xvii-目次.indd 16 2017/06/07 8:58:18

  • xvii

    CQ 12-1 けいれん重積状態で,持続脳波モニタリングは有用か 69CQ 12-2 けいれん重積状態で,amplitude-integrated EEG は有用か 72CQ 13 けいれん重積状態で緊急画像検査(CT,MRI)は必要か 74CQ 14 けいれん重積状態の予後不良因子には何があるか 77

    参考ロラゼパムについて 27第二選択薬の実際 43海外では 43難治性けいれん重積状態に対する昏睡療法に関するこれまでの研究 50ミダゾラム持続静注の実際 51海外と日本における持続脳波モニタリングの現状 73

    文献検索式 81索引 95

    xvi-xvii-目次.indd 17 2017/06/07 8:58:31

  • xviii

    CQ1 けいれん発作に対して重積化を防ぐために早期に治療介入することは必要か 推奨グレード

    1. けいれん発作が 5分以上持続すると自然収束しにくく,30分以上の遷延状態に移行しやすいため,早期に治療介入することが必要である B

    2. 日本では医療機関受診までの早期介入として,ジアゼパム坐剤や抱水クロラール直腸内投与が行われているが,急性けいれん発作に対する早期抑制効果の明確なエビデンスはない C1

    3. 欧米諸国では,ミダゾラムの鼻腔内・頰粘膜投与,ジアゼパム直腸内投与,パラアルデヒド直腸内投与が家庭や地域での病院前治療として推奨されている.しかし,いずれも日本には導入されていない注: ミダゾラム鼻腔内・頰粘膜投与,ジアゼパム直腸内投与ともに,海外ではエビデンスレベルの高い研究があるが,現在,日本の家庭での対応に使用できる剤型はないため,推奨グレードなし,とした

    なし注

    CQ2 医療機関受診時にけいれん発作が続いている場合,最初に試みるべき治療は何か 推奨グレード

    1. 第一選択薬としてミダゾラム注もしくはジアゼパムの静注を行う.1回静注で発作収束しない場合は,5分後に同量を静注することができる注: 推奨文 1.のグレード分類に関しては,ミダゾラムを第一選択薬として行った質の高い研究報告がないが,日本での SEに対する治療の実情と,ガイドライン策定ワーキンググループの総意にて,推奨グレード A,とした

    A

    2. 血糖値を迅速測定し,低血糖があれば速やかにブドウ糖の補充を行う ACQ3 けいれん発作が持続しているが,静脈ルートがとれなかった場合,どのような対

    処があるか 推奨グレード

    1. 適応外使用であるが,ミダゾラム筋肉内注射・鼻腔内・頰粘膜投与は有効で安全性が高い.ジアゼパム直腸内投与も有効で安全性が高い B

    CQ4 けいれん発作を起こした小児で,入院(入院可能な病院への搬送)の適応はどう判断するか 推奨グレード

    1. けいれん発作を起こした小児で,入院(入院可能な病院への搬送)の適応は,下記の項目が目安になる.地域や施設によって異なる1)けいれん重積状態,けいれん群発のある場合2)意識障害の遷延や新たな神経徴候がある場合3)頭蓋内圧亢進所見や髄膜刺激徴候がある場合や,呼吸・循環などの全身状態が不良な場合4)上記以外でも診療した医師によって入院が必要と考えられる場合

    B

    CQ5 ベンゾジアゼピン系薬剤で発作が消失した場合,発作再発予防のための薬剤追加は有効か 推奨グレード

    1. 発作再発予防のための薬剤追加の有効性について,明確なエビデンスはない C22. 予防的にミダゾラム持続静注を行う際は,脳波モニタリングが推奨される B

    CQ6 ベンゾジアゼピン系薬剤の静注で発作が消失しない場合,次の選択肢は何があるか 推奨グレード

    1. 日本では,フェニトイン /ホスフェニトイン,フェノバルビタールが選択肢である B2. 原則,ミダゾラム持続静注は,第二選択薬として推奨しない(CQ5参照) D

    CQ7 けいれん重積状態において,ICU 入院を考慮する目安は何か 推奨グレード

    1. 急性脳炎・脳症や代謝異常症などの原疾患のために,全身状態が悪く集学的治療が必要な場合に ICU入院を考慮する A

    2. けいれん重積状態の治療のために呼吸抑制があり,人工呼吸器管理が必要な場合に ICU入院が必要である B

    CQ・推奨グレード一覧

    xviii-xx-CQ・推奨グレード一覧.indd 18 2017/06/01 21:02:36

  •   xix

    3. 第二選択薬にて止痙できない場合,あるいは止痙に 1時間以上を要した場合には ICU入院を考慮する B

    CQ8 難治性けいれん重積状態に対して昏睡療法は有用か 推奨グレード

    1. 難治性けいれん重積状態に対して,ミダゾラムまたはバルビツレートでの昏睡療法は有用である A

    2. バルビツレートの場合には,発作活動がコントロールされていると考えられるレベルである脳波でのバーストサプレッションを治療目標とするが,ミダゾラムではバーストサプレッションに到達することは難しく,脳波上の発作消失を目標とする

    B

    CQ9 超難治性けいれん重積状態に対する介入は何があるか 推奨グレード

    1. 超難治性けいれん重積状態に対しては推奨できる治療法はない.ただし,ケタミン,吸入麻酔薬,抗てんかん薬,ステロイド・免疫療法,外科的治療,ケトン食療法,脳低温療法による症例報告がある

    C1

    CQ10 難治性けいれん重積状態に脳低温療法は有効か 推奨グレード

    1. 小児の難治性けいれん重積状態に対し脳低温療法による発作コントロールを試みてもよい C12. 小児の難治性けいれん重積状態に対する脳低温療法が神経学的予後を改善するという明確なエビデンスはない なし

    CQ11 けいれん重積状態で,どのような検査が必要か 推奨グレード

    1. けいれん重積状態で受診した患者では,以下の検査を考慮する・バイタルサインのモニター(心拍数,酸素飽和度,血圧)・�血液検査(血糖迅速検査,血液ガス,肝腎機能,電解質〈カルシウムを含む〉,全血算,CRP,アンモニア)・抗てんかん薬血中濃度(抗てんかん薬内服中の患者の場合)・頭部CT検査(CQ13参照)

    B

    2. 病歴,診察所見,疑われる原因疾患に応じて,頭部MRI 検査(CQ13参照),脳波検査,追加の血液検査,血液培養,髄液検査を考慮する B

    CQ12-1 けいれん重積状態で,持続脳波モニタリングは有用か 推奨グレード

    1. けいれん重積状態において,けいれん抑制後に意識が長時間回復しない場合には,非けいれん性発作重積状態や急性脳症の可能性があり,持続脳波モニタリングが有用である B

    2. 難治性発作重積状態の場合,抗てんかん薬静注や持続点滴静注の治療効果を評価するため,持続脳波モニタリングが有用である B

    CQ12-2 けいれん重積状態で,amplitude-integrated EEG は有用か 推奨グレード

    1. けいれん重積状態における持続脳波モニタリングに際し,通常脳波の代替手段としてのamplitude-integrated�EEGは有用な可能性があるが,頭部全体をカバーした多チャネル記録・表示の使用が望ましい.しかし,十分な発作検出感度を得られる電極数と電極配置に関しては,十分なデータがない

    C1

    CQ13 けいれん重積状態で緊急画像検査(CT,MRI)は必要か 推奨グレード

    1. 臨床症状や病歴より脳の器質的病変が疑われる場合,および原因不明の場合には,頭部CT検査が推奨される A

    2. 臨床症状や病歴より超急性期脳梗塞が疑われる場合や急性脳炎・脳症が疑われる場合,頭部MRI 検査を考慮する B

    CQ14 けいれん重積状態の予後不良因子には何があるか 推奨グレード

    1. けいれん重積状態の予後不良に最も影響する因子は,けいれん重積状態の原因である なし2. 日本においては,けいれん重積状態の予後不良の原因は急性脳症が最多である なし3. 低年齢と発作持続時間が予後不良に関連する可能性がある なし

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  • xviii-xx-CQ・推奨グレード一覧.indd 20 2017/06/01 21:02:36

  • 総 論

    第1部

    001-総論_扉.indd 1 2017/06/01 21:03:03

  • 2

    ガイドラインの対象

    本ガイドラインの対象は以下の通りである.

    1) 小児を対象とする.年齢はおおむね生後 1か月以上とし,新生児けいれんなど新生児期発症例は除外する.年齢の上限は疫学的背景を考慮して 20歳未満とする.

    2) 基礎疾患の有無,直接の原因にかかわらず,けいれん性てんかん重積状態(convulsive status epilepticus:CSE)を対象とする.

    3) 欠神発作重積状態や複雑部分発作重積状態,また睡眠時持続性棘徐波を示すてんかん性脳症(epileptic encephalopathy with continuous spike-and-wave during sleep:CSWS)などの非けいれん性てんかん重積状態(non-convulsive status epilepticus:NCSE)は対象としない.

    本ガイドラインの対象とする状態と年齢層について解説する.対象とする状態は英語では status epilepticus(SE)である.この定義については後述するが,SEを日本語訳する場合,日本小児神経学会および日本てんかん学会の用語集では「てんかん重積状態」と訳している.この解釈として,慢性疾患としての「てんかん」を原因として,あるいは「てんかん」の初発発作として起こった「重積状態」に限定するものではなく,後述の原因分類に示されているように,「急性」の熱性けいれん,急性髄膜炎,急性脳炎・脳症や,脳血管障害による発作が重積状態となった場合なども含まれることが前提となっている.

    SEは発作症状として CSEと NCSEに分類され,救急治療の現場で多く遭遇するのは前者であり,一般には「けいれん性」てんかん重積状態とされている.後者は一般には「非けいれん性」てんかん重積状態と日本語訳されている.本ガイドラインではこの NCSEは対象としていない.また,SEを救急疾患として対応する現場の医療者は多様であり,本ガイドラインの表題として SEを「てんかん重積状態」とした場合,急性疾患としてのけいれん発作重積状態は対象とならない,と誤って受け取られるおそれがある.表題である「けいれん重積状態」という訳語は学術用語としては不適切な点があるが,①慢性疾患としてのてんかん以外の原因による状態を含む,②欠神発作重積などの NCSEは含まない,ことを本ガイドラインでの枠組みとしていることを明確にするため,あえて使用することとした.また,近年の学術論文において「けいれん重積」という用語は使用

    総論1

    解説

    002-007-総論1-2.indd 2 2017/06/01 21:03:28

  • 総論1 ガイドラインの対象 3

    されることが少なくない.なお,「けいれん」発作の型は二次性全般化を含む全般性強直間代発作が主体であるが,片側性運動発作も含む.また,SEの治療経過で運動症状が軽減,消退したが脳波上は発作性異常波が持続している NCSEは治療,検査などの観点から対象としている.年齢層については,おおむね生後 1か月以降を対象としている.①新生児期固有の原因があり,治療選択肢がそれ以降の年齢層とは異なる,②おもに NICUで治療対応が行われている,という理由で新生児期は本ガイドラインの対象から除外している.上限年齢については,小児と成人とでけいれんが遷延する病態生理や治療ストラテジーは大きく異なることはないが,原因疾患と予後は異なる特徴を示すため,20歳未満とする.

    002-007-総論1-2.indd 3 2017/06/01 21:03:28

  • 4

    定義と分類(definition & classification)

    定 義

    ILAE(International League Against Epilepsy)は過去の治験と近年の臨床場面での議論を踏まえ,2015年に status epilepticus (SE)の新たな定義を公表した1).

    SE is a condition resulting either from the failure of the mechanisms responsible for seizure termi-

    nation or from the initiation of mechanisms which lead to abnormally prolonged seizures (after time point t1). It is a condition that can have long-term consequences (after time point t2), includ-ing neuronal death, neuronal injury, and alteration of neuronal networks, depending on the type and

    duration of seizures1).

    てんかん重積状態は発作停止機構または開始機構の機能不全によりもたらされた異常な発作遷延状態(時点 t1以降)である.発作の型と持続時間に依存して,神経細胞死,損傷および神経回路網の異常を含む長期的な後遺症をきたす(時点 t2以降).

    (本ガイドライン策定ワーキンググループ訳)

    従来,多くの定義は全身性けいれん発作を対象としていたが,新たな定義では意識障害を伴う焦点性 SE(focal SE with impaired consciousness)と欠神発作 SE(absence SE)を含めたものとなっている.発作持続時間に関する議論の要点は,①何分以上持続すると自然停止しがたくなるか(time point t1),②何分以上持続すると脳に長期的な影響を残すか(time point t2),である.強直間代発作 SE(tonic-clonic SE)では time point t1を 5分,time point t2を 30分としている.

    SEの定義に関する議論は長い経緯がある.ILAE(1981)では「発作がある程度の長さ以上に続くか,または短い発作でも反復しその間意識の回復がないもの」と定義した2)が,発作の持続時間を明確に定義していなかった.その後,baboonを用いた,けいれん発作による神経障害が不可逆性に至る実験の結果を踏まえ,ILAE(1993)では「30分以上持続する発作,または反復する発作で 30分以上にわたって発作間欠期に意識回復しないもの」と変更した3).疫学研究では 30分とする定義が一般的である.しかし,近年,早期治療介入,治療予後など臨床的立場からはより短い持続時間で定義する考え方が多くなった.

    総論2

    解説

    002-007-総論1-2.indd 4 2017/06/01 21:03:29

  • 5総論2 定義と分類

    成人の全身性けいれんの平均持続時間は 1分前後であり,2分以上持続することはなかったとする報告をもとに,Wasterlain4)らは,①診断と治療判断を行う臨床家の立場から,impending SEとして 5分以上持続する全身性けいれん発作か,15分以上持続する非けいれん性発作か焦点性発作,または間欠期に意識が十分に回復しない 2回の発作,②疫学または臨床研究の立場から,SEとして発作型を問わず 30分以上持続する場合,または発作間欠期に意識の十分に回復しない発作反復が 30分以上持続する場合,とすることを提唱している.根拠として,10分以上,29分以下の発作の 40%は自然停止しており,死亡率が 2.6%と 30分以上の SEにおける 19%と比較して低いことをあげている.新生児と幼小児では事情が異なるため,この定義を適用しないとしている.成人のけいれん発作持続時間をビデオ脳波同時記録によって検討し,二次性全般化発作の持続時間中央値は 130秒であり,11分以上続く場合に SEとなる可能性が高い5).また,2分以上を遷延性発作とする6),という報告がある.

    Shinnar7)は小児 407例の誘因のない初回けいれん発作における発作持続時間を検討し,30分以上が 12%であった.持続時間は症例の 76%を占める平均 3.6分の群と,24%を占める平均 31分の群との二峰性の分布を示した.発作は 10~15分を経過すると収束しがたくなることを示し,治療介入が必要であるとした.SEの時間定義としては従来の 30分を支持している.また,Hesdorffer8)は初回有熱時けいれん発作(febrile seizures:FSs)158例について発作持続時間を分析し,全体の 82.3%を占める平均 3.8分の群(short FS)と 17.7%を占める平均 39.8分の群(long FS)とに分けられることを示している.この結果から単純型 FSの時間上限を 10分が妥当としている.これらの知見から,早期治療介入のタイミングとして SEの発作持続時間を 5分,ないし 10分という提案がなされてきた.ILAEの新しい定義(time point t1)はこれらに基づいて提案されている.

    文献 1) Trinka E, Cock H, Hesdorffer D, et al. A definition and classification of status epilepticus-Report of the ILAE Task Force on

    Classification of Status Epilepticus. Epilepsia 2015 ; 56 : 1515-23. 2) Commission on Classification and Terminology of the International League Against Epilepsy. Proposal for revised clinical and

    electroencephalographic classification of epileptic seizures. Epilepsia 1981 ; 22 : 489-501. 3) Commission on Epidemiology and Prognosis, International League Against Epilepsy. Guidelines for epidemiologic studies on

    epilepsy. Epilepsia 1993 ; 34 : 592-6. 4) Wasterlain CG, Chen JW. Definition and classification of status epilepticus. In : Wasterlain CG, Treiman DM, eds. Status Epi-

    lepticus, Mechanisms and Management. Cambridge, Massachusetts : the MIT Press, 2006 : 11-6.

    5) Jenssen S, Gracely EJ, Sperling MR. How long do most seizures last ? A systematic comparison of seizures recorded in the epi-lepsy monitoring unit. Epilepsia 2006 ; 47 : 1499-503.

    6) Dobesberger J, Ristić AJ, Walser G, et al. Duration of focal complex, secondarily generalized tonic-clonic, and primarily gen-eralized tonic-clonic seizures-a video-EEG analysis. Epilepsy Behav 2015 ; 49 : 111-7.

    7) Shinnar S, Berg AT, Moshe SL, Shinnar R. How long do new-onset seizures in children last ? Ann Neurol 2001 ; 49 : 659-64. 8) Hesdorffer DC, Benn EK, Bagiella E, et al. Distribution of febrile seizure duration and associations with development. Ann

    Neurol 2011 ; 70 : 93-100.

    002-007-総論1-2.indd 5 2017/06/01 21:03:29

  • 6

    分 類

    ILAEの新提案1)では以下の 4軸によって SEを分類している.各項目の細分類は論文を参照されたい.なお,付録 1で詳細な原因がリストアップされているが,日本で多い感染症関連の急性脳症は明示されておらず,HHV-6も急性脳炎の原因としてあげられている.従来の疫学研究における原因分類では,これとは少し異なる分類(表 1)2)がなされている.

    1) 症候(semiology):明らかな運動症候を呈する(with prominent motor symptoms)型と,それを伴わない型に分類.前者の内,けいれん性 SE(CSE)をさらに全般性,焦点性起始で両側性 CSEに進展,焦点性か全般性か未決定に分類している.

    2) 原因(etiology):原因が既知(症候性:symptomatic)と未知(潜因性:cryptogenic)とに分類.SEの原因分類であるため,てんかん症候群分類にある特発性(idiopathic/ge-netic)はここでは採用されていない.

    3) 脳波相関(EEG correlates):SEにおける脳波所見を記述する用語を提案しているが,従来使用されている location(全般性,片側性,両側独立性,多源性)以外に,波形や時間経過による特徴などの特性があげられている.

    4) 年齢(age):幼児(1か月から 2歳),小児(3歳以上 12歳)とし,13歳以上は成人まで一括されている.それぞれの年齢層で認められる脳波臨床症候群があげられている.

    ILAEの新提案では言及されていないが,治療反応性によって以下の用語も頻用されている.■1 難治性けいれん重積状態 難治性けいれん重積状態(refractory status epilepticus:RSE)という用語は,複数の抗てん

    てんかん重積状態の原因分類(1)  Febrile SE:SE occurring when the only provocation is a febrile(≧38.0℃)illness

    after excluding a direct CNS infection such as meningitis or encephalitis in a previously neurologically healthy child.

    (2)  Acute-symptomatic:SE occurring during an acute illness such as brain trauma, CNS infection, cerebrovascular disease, acute diffuse encephalopathy(primary anoxic), and toxic / metabolic insults in a previously neurologically healthy child.

    (3)  Remote-symptomatic:SE in a child with a history of a preexisting CNS abnormality in the absence of an identified acute insult.

    (4)  Acute-on-remote-symptomatic:SE occurring during an acute neurological insult or febrile illness in a child with a remote symptomatic etiology.

    (5)  Cryptogenic / idiopathic epilepsy-related:SE occurring in a child with a previous diagnosis of cryptogenic / idiopathic epilepsy, or SE that is the child’s second unprovoked seizure, indicating a diagnosis of cryptogenic / idiopathic epilepsy.

    (6)  Unclassified:SE that cannot be classified into any other group.

    〔Nishiyama I, Ohtsuka Y, Tsuda T, et al. An epidemiological study of children with status epilepticus in Okayama, Japan : incidence, etiologies, and outcomes. Epilepsy Res 2011 ; 96 : 89-95.〕

    表 1

    002-007-総論1-2.indd 6 2017/06/01 21:03:29

  • 7総論2 定義と分類

    かん薬を使用してもコントロールできず,バルビツレート昏睡療法を要するけいれん重積状態に対して最初使われ3),その後多くの文献で様々な定義が用いられてきた.近年よく使われる定義は,少なくとも 1つの first lineの抗てんかん薬(ベンゾジアゼピンなど)と少なくとも 1つの second lineの抗てんかん薬(フェニトイン,フェノバルビタールなど)を使用しても続く臨床的または電気的発作4-6)とされており,持続時間を定義していないものが多いが,60分以上と持続時間を定義している報告もある7-12).■2 超難治性けいれん重積状態 超難治性けいれん重積状態(super-refractory status epilepticus:SRSE)は,2011年に開催された the Third London-Innsbruck Colloquium on status epilepticusで初めて使われた13).SRSEは「全身麻酔開始後 24時間以上続く,または繰り返すてんかん重積状態を指し,麻酔の減量,または中止に伴っててんかん重積が再発する状態も含む」と定義される14).

    文献 1) Trinka E, Cock H, Hesdorffer D, et al. A definition and classification of status epilepticus-Report of the ILAE Task Force on

    Classification of Status Epilepticus. Epilepsia 2015 ; 56 : 1515-23. 2) Nishiyama I, Ohtsuka Y, Tsuda T, et al. An epidemiological study of children with status epilepticus in Okayama, Japan : inci-

    dence, etiologies, and outcomes. Epilepsy Res 2011 ; 96 : 89-95. 3) Young GB, Blume WT, Bolton CF, Warren KG. Anesthetic barbiturates in refractory status epilepticus. Can J Neurol Sci

    1980 ; 7 : 291-2. 4) Tully I, Draper ES, Lamming CR, et al. Admissions to paediatric intensive care units (PICU) with refractory convulsive status

    epilepticus (RCSE): A two-year multi-centre study. Seizure 2015 ; 29 : 153-61. 5) Vooturi S, Jayalakshmi S, Sahu S, Mohandas S. Prognosis and predictors of outcome of refractory generalized convulsive status

    epilepticus in adults treated in neurointensive care unit. Clin Neurol Neurosurg 2014 ; 126 : 7-10. 6) Hocker SE, Britton JW, Mandrekar JN, Wijdicks EF, Rabinstein AA. Predictors of outcome in refractory status epilepticus.

    JAMA Neurol 2013 ; 70 : 72-7.

    7) Kravljanac R, Djuric M, Jankovic B, Pekmezovic T. Etiology, clinical course and response to the treatment of status epilepticus in children : A 16-year single-center experience based on 602 episodes of status epilepticus. Eur J Paediatr Neurol 2015 ; 19 : 584-90.

    8) Saz EU, Karapinar B, Ozcetin M, et al. Convulsive status epilepticus in children : etiology, treatment protocol and outcome. Seizure 2011 ; 20 : 115-8.

    9) Lambrechtsen FA, Buchhalter JR. Aborted and refractory status epilepticus in children : a comparative analysis. Epilepsia 2008 ; 49 : 615-25.

    10) Sahin M, Menache CC, Holmes GL, Riviello JJ Jr. Prolonged treatment for acute symptomatic refractory status epilepti-cus : outcome in children. Neurology 2003 ; 61 : 398-401.

    11) Mayer SA, Claassen J, Lokin J, Mendelsohn F, Dennis LJ, Fitzsimmons BF. Refractory status epilepticus : frequency, risk factors, and impact on outcome. Arch Neurol 2002 ; 59 : 205-10.

    12) Sahin M, Menache CC, Holmes GL, Riviello JJ. Outcome of severe refractory status epilepticus in children. Epilepsia 2001 ; 42 : 1461-7.

    13) Shorvon S. Super-refractory status epilepticus : an approach to therapy in this difficult clinical situation. Epilepsia 2011 ; 52(Suppl 8): 53-6.

    14) Shorvon S, Ferlisi M. The treatment of super-refractory status epilepticus : a critical review of available therapies and a clinical treatment protocol. Brain 2011 ; 134 : 2802-18.

    002-007-総論1-2.indd 7 2017/06/01 21:03:29

  • 8

    疫学(epidemiology)

    発症率(incidence)

    SEの頻度は年齢層,地域,人種によって異なることが多くの報告で一致している.日本では Nishiyama1),森山2)による疫学的研究がある.岡山市における生後 1か月以上 15歳未満の小児を対象とした調査1)では,初発 SEの発症頻度は 10万人 /年あたり 41.3であり,2歳までが全体の約 60%を占めていた.千葉県八千代市における調査2)では,生後 1か月から 16歳未満の小児人口 10万対発症率は 5年間の平均で 41.0であった.海外からの報告は対象の人種構成によって頻度は異なる.Richmondにおける DeLorenzo

    (1996)の生後 1か月以上の 30分以上続く新規の SEを対象とした前方視的疫学研究3)では,発症率は 10万人 /年あたり 41人と高いが,人種による発症率が異なり,白人層では 10万人 /年あたり 19人と,白人層が多数を占める他の疫学研究4)と同等である.年齢層では1歳未満が最も多く 10万人 /年で 156,以降減少するが 40歳以降増加に転じ,60歳以上では 86であった.欧米先進国の小児あるいは 0~15歳人口における SE発症率の報告を比較すると,人口に占める白人の比率が高い Rochester4)や North London5),French-speaking Switzerland6)では発症率が 10万人 /年で 13.3~24.1と低い.年齢層別では若年層ほど頻度が高く,1歳未満では 10万人 /年あたり 50.75)~135.24)と高率であった.

    文献 1) Nishiyama I, Ohtsuka Y, Tsuda T, et al. An epidemiological study of children with status epilepticus in Okayama, Japan : inci-

    dence, etiologies, and outcomes. Epilepsy Research 2011 ; 96 : 89-95. 2) 森山陽子,林 北見,松尾映未由,ら.小児のてんかん重積状態の疫学調査.日児誌 2014 ; 118 : 1336-41. 3) DeLorenzo RJ, Hauser WA, Towne AR, et al. A prospective, population-based epidemiologic study of status epiepticus in Ri-

    chimond, Virginia. Neurology 1996 ; 46 : 1029-35. 4) Hesdorffer DC, Logroscino G, Cascino G, Annegers JF, Hauser WA. Incidence of status epilepticus in Rochester, Minnesota,

    1965-1984. Neurology 1998 ; 50 : 735-41. 5) Chin RF, Neville BG, Peckham C, Bedford H, Wade A, Scott RC ; NLSTEPSS Collaborative Group. Incidence, cause, and

    short-term outcome of convlsive status epilepticus in childhood : prospective population-based study. Lancet 2006 ; 368 : 222-9. 6) Coeytaux A, Jallon P, Galobardes B, Morabia A. Incidence of status epilepticus in French-speaking Switzerland :(EPISTAR).

    Neurology 2000 ; 55 : 693-7.

    総論3

    解説

    008-016-総論3-4.indd 8 2017/06/01 21:03:57

  • 総論3 疫学 9

    原因(etiology)

    最近の疫学研究において,SEを p.6の表 1のように分類することが多い.ILAE(1993)の分類では遷延性熱性けいれん(prolonged febrile seizures)は Acute-symptomaticに属していたが,急性脳症など他の急性症候性要因とは治療効果,予後などで明らかに異なるため,独立して扱われるようになっている.日本における小児を対象とした疫学調査では,「熱性けいれん」(49.2~62.7%),「急性

    症候性」(16.9~17.5%)が主要な原因であり,「遠隔症候性」「潜因性 /特発性てんかん関連性」「遠隔後急性症候性」「分類不能」がほぼ同数となっている.急性症候性では 21例中 11例1),10例中 9例2)が急性脳炎・脳症,細菌性髄膜炎は 2例1),1例2)となっている.諸外国の報告は年代,地域,人種構成などが異なるため,報告によって原因疾患の構成が異なっている.Shinnar(1997)3)は小児においても年齢層によって原因が異なり,乳幼児では全身感染症による熱性,中枢神経系感染症を含む急性症候性など,急性疾患によるものが多く,年長児では既往に神経学的異常を有する慢性症候性疾患が多くみられる,としている.DeLorenzo(1996)4)は 15歳以下の小児では全身性感染症が 52%,慢性症候性39%,抗てんかん薬血中濃度低下 21%が主要なものであり,脳血管障害,代謝性異常,中枢神経系感染症,特発性などは 10%以下であった.成人では抗てんかん薬血中濃度低下 34%,慢性症候性 24%,脳血管障害 22%,代謝性 15%,低酸素血症 13%,アルコール関連 13%であった.成人では急性,慢性を含め,脳血管障害が関連する割合が約 50%であった.一方,てんかん既往を有する割合は小児で 38%,成人で 42%であるが,16歳から 59歳で 54%と高く,60歳以上では 30%と低かった.

    SEの原因に占める熱性けいれん重積状態の比率はNorth London5)や Rochester6)では 23.2~31.8%だったのに対し,岡山市や八千代市では 49.2~62.7%と高かった.熱性けいれん重積状態の原因として HHV-6 / HHV-7の頻度は,米国では再活性化も含めて 34.3%7),岡山市では 27.1%であった.急性脳炎・脳症の頻度は八千代市で59例中9例(15%),岡山市では120例中11例(9.1%)

    であり,これらの日本データと比較して,North Londonでは 4%,Richmondでは 3%と急性脳炎・脳症の占める割合は低い.パンデミックインフルエンザ A H1N1の世界的流行期においても日本における急性脳症の頻度の高さが示されている8).Glaserらは,パンデミックインフルエンザ A H1N1の際の急性脳症を含めた神経学的合併症の起きる頻度として,アジア太平洋諸国の子どもがその他の地域の子どもに比べて最も高かったと報告している9).急性脳症の頻度が高いことも日本での SEの発症率の高さに関係していると推測される.重篤感染症として細菌性髄膜炎があり,新興国の Kenyaでは全体の 9%10),2006年の

    North Londonでも 7%と多くを占めている.日本の疫学調査では例外的であったが,小児の頭部外傷では急性期けいれんの頻度は高く,かつ SEとなることも少なくない .急性期けいれんは外傷後の二次的脳損傷(secondary brain injury)の原因となりうることも指摘されており,小児救急診療では注意すべき病態

    008-016-総論3-4.indd 9 2017/06/01 21:03:58

  • 10

    である11).PICUで治療を受けた頭部外傷例に持続脳波モニタリングを行い,18.4%に SEを認め,その 75%で明らかなけいれん発作症状を呈することなく非けいれん性発作重積状態(nonconvulsive status epilepticus:NCSE)を呈したことが報告されている12).虐待による外傷性脳損傷は CSEないし NCSEのリスク因子の 1つとされている.後方視的検討であるが,重症の小児虐待による頭部外傷では NCSEの頻度が高いことも報告されている13).治療への抵抗性(難治性)という観点から原因を検討すると,小児のけいれん重積状態の

    30~50%の頻度14-17)と報告されている難治性けいれん重積状態(RSE)の原因では,急性脳炎・脳症などの急性症候性発作,remote symptomatic,遷延性熱性けいれんなどが多いが,その頻度は報告によって異なる15-19).超難治性けいれん重積状態(SRSE)の原因では,重篤な急性脳損傷の患者か,難治頻回部分発作重積型急性脳炎(acute encephalitis with refractory, repetitive partial seizures:AER-RPS)20)や new-onset refractory status epilepticus(NORSE)21), febrile infection–related epilepsy syndrome(FIRES)22),devastating epileptic encephalopathy in school-aged children(DESC)23)などとして知られる病態でみられる.成人ではけいれん重積状態の 7~20%24-27),RSEの22%28)を占めるとされている.小児ではけいれん重積状態 41例中 16例(39%)が SRSEであったという報告がある27).SRSEの原因についての報告は成人の報告のみがあるが,急性症候性発作が 16~100%24-27),進行性脳症が 30~60%と多く,なかでも encephalitis,presumed encephalitisというカテゴリーを設けている報告では 60~70%がそれに当たるとされる25, 27).

    文献 1) Nishiyama I, Ohtsuka Y, Tsuda T, et al. An epidemiological study of children with status epilepticus in Okayama, Japan : inci-

    dence, etiologies, and outcomes. Epilepsy Research 2011 ; 96 : 89-95. 2) 森山陽子,林 北見,松尾映未由,ら.小児のてんかん重積状態の疫学調査.日児誌 2014 ; 118 : 1336-41. 3) Shinnar S, Pellock JM, Moshé SL, et al. In whom does status epilepticus occur : age-related differences in children. Epilepsia

    1997 ; 38 : 907-14. 4) DeLorenzo RJ, Hauser WA, Towne AR, et al. A prospective, population-based epidemiologic study of status epiepticus in Ri-

    chimond, Virginia. Neurology 1996 ; 46 : 1029-35. 5) Chin RF, Neville BG, Peckham C, Bedford H, Wade A, Scott RC ; NLSTEPSS Collaborative Group. Incidence, cause, and

    short-term outcome of convlsive status epilepticus in childhood : prospective population-based study. Lancet 2006 ; 368 : 222-9. 6) Hesdorffer DC, Logroscino G, Cascino G, Annegers JF, Hauser WA. Incidence of status epilepticus in Rochester, Minnesota,

    1965-1984. Neurology 1998 ; 50 : 735-41. 7) Epstein LG, Shinnar S, Hesdorffer DC, et al. Human herpesvirus 6 and 7 in febrile status epilepticus : The FEBSTS study. Epi-

    lepsia 2012 ; 53 : 1481-8.

     8) Kawashima H, Morichi S, Okumura A, Nakagawa S, Morishima T ; collaborating study group on influenza-associated enceph-alopathy in Japan. National survey of pandemic influenza A(H1N1) 2009-associated encephalopathy in Japanese children. J Med Virol 2012 ; 84 : 1151-6.

     9) Glaser CA, Winter K, DuBray K, et al. A population-based study of neurologic manifestations of severe influenza A(H1N1) pdm09 in California. Clin Infect Dis 2012 ; 55 : 514-20.

    10) Sadarangani M, Seaton CG, Scott A, et al. Incidence and outcome of convulsive status epilepticus in Kenyan children : a cohort study. Lancet Neurol 2008 ; 7 : 145-50.

    11) Arndt DH, Goodkin HP, Giza CC. Early posttraumatic seizures in the pediatric population. J Child Neurol 2016 ; 31 : 46-56.12) Arndt DH, Lerner JT, Matsumoto JH, et al. Subclinical early posttraumatic seizures detected by continuous EEG monitoring in

    a consecutive pediatric cohort. Epilepsia 2013 ; 54 : 1780-8.13) Hasbani DM, Topjian AA, Friess SH, et al. Nonconvulsive electrographic seizures are common in children with abusive head

    trauma. Pediatr Crit Care Med 2013 ; 14 : 709-15.14) Kravljanac R, Djuric M, Jankovic B, Pekmezovic T. Etiology, clinical course and response to the treatment of status epilepticus

    008-016-総論3-4.indd 10 2017/06/01 21:03:58

  • 総論3 疫学 11

    in children : A 16-year single-center experience based on 602 episodes of status epilepticus. Eur J Paediatr Neurol

    2015 ; 19 : 584-90.15) Saz EU, Karapinar B, Ozcetin M, et al. Convulsive status epilepticus in children : etiology, treatment protocol and outcome.

    Seizure 2011 ; 20 : 115-8.

    16) Lambrechtsen FA, Buchhalter JR. Aborted and refractory status epilepticus in children : a comparative analysis. Epilepsia 2008 ; 49 : 615-25.

    17) Koul R, Chacko A, Javed H, Al Riyami K. Eight-year study of childhood status epilepticus : midazolam infusion in manage-ment and outcome. J Child Neurol 2002 ; 17 : 908-10.

    18) Tully I, Draper ES, Lamming CR, et al. Admissions to paediatric intensive care unit (PICU) with refractory convulsive status epilepticus (RCSE): A two-year multi-centre study. Seizure 2015 ; 29 : 153-61.

    19) Sahin M, Menache CC, Holmes GL, Riviello JJ. Outcome of severe refractory status epilepticus in children. Epilepsia 2001 ; 42 : 1461-7.

    20) Sakuma H. Acute encephalitis with refractory, repetitive partial seizures. Brain Dev 2009 ; 31 : 510-4.21) Wilder-Smith EP, Lim EC, Teoh HL, et al. The NORSE (new-onset refractory status epilepticus) syndrome : defining a dis-

    ease entity. Ann Acad Med Singapore 2005 ; 34 : 417-20.22) Kramer U, Chi CS, Lin KL, et al. Febrile infection-related epilepsy syndrome (FIRES): pathogenesis, treatment, and out-

    come : a multicenter study on 77 children. Epilepsia 2011 ; 52 : 1956-65.23) Mikaeloff Y, Jambaqué I, Hertz-Pannier L, et al. Devastating epileptic encephalopathy in school-aged children (DESC): a

    pseudo encephalitis. Epilepsy Res 2006 ; 69 : 67-79.24) Kravljanac R, Djuric M, Jankovic B, Pekmezovic T. Etiology, clinical course and response to the treatment of status epilepticus

    in children : A 16-year single-center experience based on 602 episodes of status epilepticus. Eur J Paediatr Neurol 2015 ; 19 : 584-90.

    25) Tian L, Li Y, Xue X, et al. Super-refractory status epilepticus in West China. Acta Neurol Scand 2015 ; 132 : 1-6.26) Pugin D, Foreman B, De Marchis GM, et al. Is pentobarbital safe and efficacious in the treatment of super-refractory status epi-

    lepticus : a cohort study. Crit Care 2014 ; 18 : R103.27) Jayalakshmi S, Ruikar D, Vooturi S, et al. Determinants and predictors of outcome in super refractory status epilepticus--a de-

    veloping country perspective. Epilepsy Res 2014 ; 108 : 1609-17.28) Kantanen AM, Reinikainen M, Parviainen I, et al. Incidence and mortality of super-refractory status epilepticus in adults. Epi-

    lepsy Behav 2015 ; 49 : 131-4.

    死亡(mortality)

    Aicardi1)(1970)の 239例の小児を対象とした報告では,原因疾患は熱性けいれんが28.0%,急性症候性要因が 26.4%,遠隔症候性が 25.3%,潜因性が 24.7%であった.死亡率 11%で,その半数はけいれん自体が死亡原因と推定された.この対象は 1時間以上持続するけいれんであり,現在の定義とは異なっている.

    Shinnar2)(2001)は中枢神経系感染症と電解質異常による重積状態を除外した 10歳以下の 180例の発熱時SE(30分以上)の発症 30日以内の死亡は 0としている.Metsäranta3)(2004)は 5分以上続く発作(平均 42.5分)で入院した 16歳未満の小児 186例,279機会を検討し,発作自体に関連した死亡は 0であった.

    Raspall-Chaure4)のシステマティックレビューでは短期的予後として 2.7~5.2%の死亡率,急性症候性要因では 12.5~16.0%,熱性けいれんと誘因のない SEでは 0~2%であった.このように小児では SE自体に関連した死亡率は低く, 急性脳炎・脳症,脳血管障害などの急性症候性要因による死亡が大半であった.

    DeLorenzo5)らの研究では,けいれん抑制 30日以内のけいれんに関連した死亡率は対象全体の 22%,成人では 26%,15歳以下の小児では 3%であったが,60歳以上では 38%と

    008-016-総論3-4.indd 11 2017/06/01 21:03:58

  • 12

    高率であった.原因別では成人では低酸素血症で高率であり,脳血管障害,腫瘍,薬物過量では 20%以上の死亡率であった.治療への抵抗性(難治性)という観点から予後を検討すると,小児の RSEの予後は,死亡率が 0~30%6-11),SRSEの予後は退院時死亡率が 10~50%12-15),1年後の死亡率が 36~58%13, 15)と報告されている.

    文献 1) Aicardi J, Chevrie JJ. Convulsive status epilepticus in infants and children. A study of 239 cases. Epilepsia 1970 ; 11 : 187-97. 2) Shinnar S, Pellock JM, Berg AT, et al. Short-term outcomes of children with febrile status epilepticus. Epilepsia 2001 ; 42 : 47-

    53.

     3) Metsäranta P, Koivikko M, Peltola J, Eriksson K. Outcome after prolonged convulsive seizures in 186 children : low morbidity, no mortlity. Dev Med Child Neurol 2004 ; 46 : 4-8.

     4) Raspall-Chaure M, Chin RFM, Neville BG, Scott RC. Outcome of paediatric convulsive status epilepticus : a systematic re-view. Lancet Neurol 2006 ; 5 : 769–79.

     5) DeLorenzo RJ, Hauser WA, Towne AR, et al. A prospective, population-based epidemiologic study of status epiepticus in Ri-chimond, Virginia. Neurology 1996 ; 46 : 1029-35.

     6) Tully I, Draper ES, Lamming CR, et al. Admissions to paediatric intensive care units (PICU) with refractory convulsive status epilepticus (RCSE): A two-year multi-centre study. Seizure 2015 ; 29 : 153-61.

     7) Kravljanac R, Djuric M, Jankovic B, Pekmezovic T. Etiology, clinical course and response to the treatment of status epilepticus in children : A 16-year single-center experience based on 602 episodes of status epilepticus. Eur J Paediatr Neurol

    2015 ; 19 : 584-90. 8) Saz EU, Karapinar B, Ozcetin M, et al. Convulsive status epilepticus in children : etiology, treatment protocol and outcome.

    Seizure 2011 ; 20 : 115-8.

     9) Lambrechtsen FA, Buchhalter JR. Aborted and refractory status epilepticus in children : a comparative analysis. Epilepsia 2008 ; 49 : 615-25.

    10) Sahin M, Menache CC, Holmes GL, Riviello JJ. Outcome of severe refractory status epilepticus in children. Epilepsia 2001 ; 42 : 1461-7.

    11) Koul R, Chacko A, Javed H, Al Riyami K. Eight-year study of childhood status epilepticus : midazolam infusion in manage-ment and outcome. J Child Neurol 2002 ; 17 : 908-10.

    12) Tian L, Li Y, Xue X, et al. Super-refractory status epilepticus in West China. Acta Neurol Scand 2015 ; 132 : 1-6.13) Pugin D, Foreman B, De Marchis GM, et al. Is pentobarbital safe and efficacious in the treatment of super-refractory status epi-

    lepticus : a cohort study. Crit Care 2014 ; 18 : R103.14) Jayalakshmi S, Ruikar D, Vooturi S, et al. Determinants and predictors of outcome in super refractory status epilepticus - a de-

    veloping country perspective. Epilepsy Res 2014 ; 108 : 1609-17.15) Kantanen AM, Reinikainen M, Parviainen I, et al. Incidence and mortality of super-refractory status epilepticus in adults. Epi-

    lepsy Behav 2015 ; 49 : 131-4.

    神経学的後遺症(neurological sequelae)

    一方,神経学的後遺症は急性症候性要因に起因することが多いが,けいれん持続時間など SE自体の関与も示唆されている.

    Aicardi1)の報告では片麻痺などの運動障害後遺症は 37%であり,その約半数で SE自体が後遺症の原因と推定された.知的障害を含めると,対象の 57%に何らかの神経学的後遺症を認めた.前述のとおり,この対象は 1時間以上持続するけいれんである.Raspall-Chaure2)のシステマティックレビューでは続発てんかんが 13~74% に,急性症候性要因では 50%以上にてんかん発症が認められており,SEの原因�