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1 TrkAを阻害するペプチド化合物 及びその用途 福井大学医学部 特別研究員 (草津総合病院 麻酔科) 廣瀬 宗孝

TrkAを阻害するペプチド化合物 及びその用途NK1 受容体 ミクログリア ミクロ グリア ATP? + + 神経損傷 + TrkB 中枢神経細胞の感作 神経障害痛の発症

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TrkAを阻害するペプチド化合物

及びその用途

福井大学医学部 特別研究員

(草津総合病院 麻酔科)

廣瀬 宗孝

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研究目的

「腫瘍増殖抑制作用」と「がん性痛抑制作用」を併せ持つTrkA活性抑制薬を開発する

通常の疼痛コントロールでは治療できないがん性痛を抑止する治療薬を開発する

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研究背景

モルヒネなどの適正な使用により、がん性痛で苦しむ人々の数は減ってきたが、それでも10%程度で

痛みが十分に取りきれないのが現状。

これまでの鎮痛薬と作用機序の異なる鎮痛薬を開発する必要がある。

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TrkAについて本治療薬のターゲット:

Tropomyosin receptor kinase A (TrkA)

Nerve Growth Factor (NGF)の高親和性受容体

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TrkAの特徴1: 自己のチロシンをリン酸化する作用がある(チロシンキナーゼ活性)

TrkA活性化ループ

非活性化

NGF

ATP ATP

活性化

TrkAについて

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TrkAの特徴2: がん増殖に関与する

甲状腺がん急性骨髄性白血病神経芽細胞腫髄芽腫メラノーマ前立腺がん乳がん肺がん大腸がん膵臓がんなど

TrkAについて

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TrkAの特徴3: 侵害受容痛と神経障害痛の発症に関与

炎症細胞

一次知覚神経PGs

Bradykinin

NGFTNF-αIL-1β, IL-6

TrkA

TRPV1

BDNF

Substance P

MAPK

ATP

TrkB

NK1受容体

NMDA受容体

脊髄後角神経

侵害受容痛の発症

炎症細胞

一次知覚神経

NGF

NMDA受容体

脊髄後角神経

TNF-αIL-1βIL-6

一次知覚神経

シュワン細胞

TNF-α、IL-1β、IL-6、PGs、 ATP、BDNF

NK1受容体

ミクログリア

ミクログリア

ATP?

+

+

神経損傷

+

TrkB

中枢神経細胞の感作

神経障害痛の発症

TrkAについて

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なぜTrkAがターゲットか?

腫瘍増殖抑制作用をもつ

鎮痛作用をもつ

がん性痛治療薬

TrkAについて

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これまでの研究

ATP ATPX X

TrkA

NGF

細胞膜透過性合成ペプチド

活性化

活性化ループ

Proposed tructure of TrkA ,composed by RIKEN FAMSBASE非活性化

非活性化のまま

・鎮痛作用・腫瘍増殖抑制作用

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これまでの研究

NH2

acp

Proposed tructure of TrkA ,

TrkA活性を抑制するための配列細胞膜透過性促進部位(TAT ペプチド)

リンカー

YGRKKRRQRRR -acp- SRDIYSTDYYR -NH2 = IPTRK3

(acp = ε-aminocaproic acid)

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これまでの研究

IPTRK3 腫瘍増殖抑制作用をもつ

・特許公開: 2010-6731

鎮痛作用をもつ

・IPTRK3はTrkA活性抑制作用をもつ

・IPTRK3はラット侵害受容痛モデルで鎮痛作用を示す

・IPTRK3はマウス神経障害痛モデルで鎮痛作用を示す

J Pharmacol Sci 112: 438-443, 2010

J Pharmacol Sci 114: 79-84; 2010

J Pharmacol Sci 106: 107-113, 2008

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がん疼痛治療薬

IPTRK3より強い効果

をもつ新しいペプチドを開発する

腫瘍増殖抑制作用をもつ

鎮痛作用をもつ

新技術の基となる研究成果・技術

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GM

SR

D I Y S T D Y Y R VG

G R

664

680

670 674675

YGRKKRRQRRR -acp- SRDIYSTDYYR -NH2 = IPTRK3

YGRKKRRQRRR -acp- GMSRDIYS -NH2 = IPTRK4

YGRKKRRQRRR -acp- MSRDIYST –NH2 = IPTRK5

新しいペプチド(IPTRK4, IPTRK5)の設計

(acp = ε-aminocaproic acid)

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方法と結果

1.リコンビナントTrkAを用いたin vitro実験

→IPTRK3(100µM), IPTRK4とIPTRK5(1µM)で、TrkA活性を抑制

2.マウスメラノーマ細胞(B16-F1)を用いたペプチドの細胞透過性の確認

→IPTRK3, 4, 5ともに90%以上の透過性

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方法と結果

3.B16-F1細胞におけるペプチドによる細胞増殖抑制実験

→IPTRK3(100µM), IPTRK4とIPTRK5(10µM)で、細胞増殖抑制

4. マウスがん性痛モデルにおけるペプチドの効果

→IPTRK5(10mg/kg ip)で、マウスメラノーマによる腫瘍増殖とがん性痛を抑制

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Cel

l pro

lifer

atio

n(%

*

**

*** *

TAT

IPTR

K3

IPTR

K4

IPTR

K5

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移植 Peptide or PBS 移植 Peptide or PBS

移植後日数 移植後日数

● PBS (n=6)○ IPTRK3 (n=3)▲ IPTRK5 (n=3)

左足

容積

(mL)

機械

刺激

過敏

反応

(g)

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従来技術とその問題点

・米国で、抗神経成長因子(NGF)ヒト化抗体製剤の

”Tanezumab”の治験が行われたが、副作用のため臨床使

用に至っていない。また抗NGF抗体は、動物実験では癌

細胞の増殖を抑制しない。

・IPTRK3の特許出願は“腫瘍増殖抑制作用”のみ

発明の名称:合成ペプチドを用いた良性および悪性腫瘍治療薬特願2008-166570特許公開2010-6731

出願人 :福井大学発明者 :廣瀬宗孝、黒田義弘

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 従来技術の問題点であったアミノ酸残基数が多い欠点(22残基)を、19残基に短縮し、かつ

効果の高いペプチドを作成した。

• 従来では確認されていなかった動物実験での腫瘍増殖抑制作用が確認され、この作用を併せ持つ、“がん性痛治療薬”となりうる可能性

がある

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想定される用途

• がん性痛治療薬

• 通常の急性疼痛や慢性疼痛の治療薬となることも期待される。

想定される業界

• 製薬会社など

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実用化に向けた課題• 動物実験での実験結果が不十分であり、より

有効な投与濃度等について、さらなる検討を加える必要がある

• ヒトでの投与方法は、現在の出来うるかぎりの疼痛治療を行っても、痛みが改善しない場合に、本治療薬を静脈内投与で持続もしくは頻回使用することを想定している。この場合におけるヒトでの副作用が不明である

企業への期待• TrkA活性抑制薬に興味を持つ企業との、共同

研究を希望

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :TrkAを阻害するペプチド化

合物及びその用途

• 出願番号 :特願2011-066819• 出願人 :福井大学

• 発明者 :廣瀬宗孝、田畑麻里、

村田恵理

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お問い合わせ先

福井大学 総合戦略部門 研究推進課知財専門職員 高 岡 勉

〒910-8507 福井県福井市文京3-9-1TEL:0776-27-9725FAX:0776-27-9727

E-mail: [email protected]