42
The Patent Box: 20121219PwC 1. 知的財産動向 2. 「パテントボックス」とは? 3. パテントボックス税制の特徴・サマリー 4. 各国のパテントボックス税制の概要 a. パテントボックス税制 オランダ ベルギー ルクセンブルグ 英国 フランス ハンガリー スペイン 5. 日本のタックスヘイブン税制関連事項 2 b. その他のIP優遇税制 アイルランド 中国 c. パテントボックス税制の提案 米国 スライド1 スライド2 租税研究 2013・5 327

The Patent Box: 各国のパテントボックス税制の 概 …...The Patent Box: 各国のパテントボックス税制の 概要 2012年12月19日 税理士法人プライ スウォ

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The Patent Box: 各国のパテントボックス税制の概要 2012年12月19日

税理士法人プライスウォーターハウスクーパース シニアマネージャー 村岡欣潤 顧問 岡田至康

PwC

目次

1. 知的財産動向

2. 「パテントボックス」とは?

3. パテントボックス税制の特徴・サマリー

4. 各国のパテントボックス税制の概要

a. パテントボックス税制

◦ オランダ

◦ ベルギー

◦ ルクセンブルグ

◦ 英国

◦ フランス

◦ ハンガリー

◦ スペイン

5. 日本のタックスヘイブン税制関連事項

2

b. その他のIP優遇税制

◦ アイルランド

◦ 中国

c. パテントボックス税制の提案

◦ 米国

スライド1

スライド2 国際課税

租 税 研 究 2013・5 327

PwC

知的財産動向

3

PwC

知的財産動向

• 2010年は過去最高値

• 2010年は前年比7.2%増

→ 中国における出願増加の 影響

• 4割弱(75万件)が非居住者による出願

→ 経済や企業活動がグローバル化、一つの発明が複数の国で特許出願されるようになっている

4

世界の特許出願件数の推移

引用:特許行政年次報告書2012年版「統計でみる知的財産動向」より

スライド3

スライド4国際課税

租 税 研 究 2013・5328

PwC

知的財産動向

• 2011年は過去最高値

• 2011年は前年比10.7%増

→ 知的財産のグローバル化、 企業活動を海外で行うための 必要不可欠な要素となって きている

5

PCT(Patent Cooperation Treaty)加盟国数およびPCT出願件数の推移

引用:特許行政年次報告書2012年版「統計でみる知的財産動向」より

PwC

知的財産動向

• 右肩上がり

• 2011年は前年比20.5%増

• 海外出願を重要視して きていることのあらわれ → 日本企業の知的財産 活動のグローバル化の 進展のあらわれ

6

日本の特許庁が受理した国際特許出願(PCT出願)件数

引用:特許行政年次報告書2012年版「統計でみる知的財産動向」より

スライド5

スライド6 国際課税

租 税 研 究 2013・5 329

PwC

税務上の意味合い

IP(Intellectual Property:知的財産)の海外移転を含むグローバルな事業再編(Business Restructuring)

• 移転価格税制上、一般に知的財産の所在する国に多大の所得が集約されることとなる

- つまり、知的財産を高税率国から低税率国に移転することによりグローバルな実効税率を軽減することができる

- 知的財産の海外移転による所得の海外流出をまとめたレポート

◦ OECDの「移転価格ガイドライン第9章、事業再編に関わる移転価格の側面」

◦ 米国両議院税制委員会レポート「Present Law and Background Related to Possible Income Shifting and Transfer Pricing」(JCX-37-10)

7

低税率国

IP

高税率国

IP

IPや開発機能の誘致政策の導入

PwC

パテントボックスとは?

8

スライド7

スライド8国際課税

租 税 研 究 2013・5330

PwC

パテントボックスの定義・スコープ

9

パテントボックスとは?

一定の知的財産(Intellectual Property、以下IP)に関連する所得 (主にロイヤリティ所得)に対する軽減税率を使った優遇措置

1. 「一定の知的財産」とは? 2. IPに関する全般的な優遇措置ではないのか? 3. その目的は?

PwC

知的財産(IP)の枠組み

10

資産

有形資産

産業IP マーケティングIP 不動産 動産

非特許IP 特許IP

その他

研究開発によって創作されたIP (例、特許、デザイン、ノウハウ等)

マーケティング活動によって生まれたIP (例、商号、商標、顧客リスト、 流通チャンネル等)

一般的にパテントボックス 税制の対象となる資産

法的に 保護されないIP

法的に 保護されたIP

無形資産

スライド9

スライド10 国際課税

租 税 研 究 2013・5 331

PwC

IPライフサイクル

11

創作 育成 商業化 登録 利用

研究開発(R&D) 開拓(Exploitation)

初期段階の租税誘因措置

• R&D支出やR&E支出に係る税額 控除(R&Dクレジット)

• R&D支出やR&E支出に係る100%超 の控除

• R&D設備に係る加速償却

最終段階の租税誘因措置

• 技術ベースのIPから稼得した 所得に対する軽減税率

(パテントボックス税制) • 技術ベースのIPの取得に係る

加速償却

税務上の優遇措置

IPの取得 IPの売却 タイムライン

PwC

EUパテントボックス税制 • EUリスボン戦略(2000年、2005年)

- EU加盟国による経済の構造改革への取り組み

- 知知識識基基盤盤経経済済にに移移行行すするるたためめののEEUUのの政政策策

- 知知識識とと技技術術革革新新のの重重視視

- 研究開発(R&D)投資を2010年までにGDPの3%に近づける

- EUを事業上のR&Dにとって更に魅力的な場所とする

- 「市場の失敗」には公的支援策の組合せで対処する

• EUの研究開発政策

- 事業間協力の妨げとなる法的および財務的障害を撤廃し、EU域内市場の潜在力を 十分に利用する

• EU内におけるR&D租税誘因措置の多様化

• EUの意図

- 研究開発を振興するための一貫した有利な租税環境

- 各国の租税政策に係る加盟国の権能の確認

- EU条約と国家支援ルールの枠内

• 租税誘因(開発局面)

- 繰延、控除、税額控除

• 租税誘因 (商業化局面)

- 知知的的財財産産権権((IIPPRR))かからら生生じじたた所所得得へへのの低低実実効効税税率率課課税税

12

スライド11

スライド12国際課税

租 税 研 究 2013・5332

PwC

オランダ、 パテントボックス

(2007)

アイルランド、 パテントボックスの廃止

(2010)

パテントボックス導入経緯

13

2000 2005 2010

リスボン戦略2000 リスボン戦略2005

フランス (2001)

ハンガリー(2003)

ベルギー (2007)

ルクセンブルグ(2008)

オランダ、 イノベーションボックス

(2010)

スペイン(2008)

アイルランド(1973)

イギリス (2013)

米国、国際税制に関する草案 (2011)

中国、ハイテク新技術 企業税制の導入

(2008)

アイルランド、 新規のIP税制

(2009)

IP誘致目的 所得の海外流出防止目的

PwC

パテントボックス税制の特徴・サマリー

14

スライド13

スライド14 国際課税

租 税 研 究 2013・5 333

PwC

主要な特徴

適適格格IIPP

1. IPの種類

• 特許以外のIP(例:著作権、商標、方式、工程、意匠、図案、ノウハウ)は?法律上登録できないIPは?

2. 取得方法

• 自己開発、使用許諾、取得IPか?新規および既存IPか?既存IPの改良は?

3. 開発地

• IP開発の物理的な場所は自国内か?

4. 所有要件

• 法律的所有 vs. 経済的所有

適適格格IIPP所所得得

5. Net vs. Gross

• 適格IP所得は、総所得か純所得か?関連費用によって減額するのか?

- 定式アプローチか移転価格アプローチか?

6. 所得の種類

• 商品やサービスの価格に組込まれていたIPは?組込ロイヤリティ所得も対象とするか?

- 適格IPの売却に係るキャピタルゲインは?

15

PwC

各国のパテントボックス税制の比較 (2011年12月31日時点)

16

パテントボックス税制 IP優遇税制

オランダ ベルギ― ルクセン ブルク

ハンガリー フランス スペイン 英国 アイルランド 中国

実施年 2007年、2010年

2007年 2008年 2003年 2001年、2005年、2007年

2008年 2013年 2009年 2008年

法人税率 25% 33.99% 28.8% 19% 33.33% 30% 23% (2013年より)

12.5% 25%

優遇措置 IP所得の 80%控除

IP所得の 80%控除

IP所得の 80%控除

IP所得の 50%控除

軽減税率 IP所得の 50%控除

税率10%になるように控除額を算出

IP取得費用がIP所得の80%まで控除可能

15%で課税

実効税率 5.0% 6.8% 5.76% 9.5% 15% 15% 10% 2.5% 15%

特典の上限は?

なし 控除を税引前所得の100%に制限

なし 控除を税引前所得の50%に制限

なし あり、IP開発の発生コストの6倍

なし IP所得の80%

原則認定から3年間

既存IPへの適用は?

2006年12月31日後に開発または取得の特許IP

2007年1月1日以降の認可または初使用のIP

2007年12月31日後に開発または取得のIP

認める 認める 認める 認める 2009年5月8日以降に発生した取得費用のみ

認めない

スライド15

スライド16国際課税

租 税 研 究 2013・5334

PwC

各国のパテントボックス税制の比較 (2011年12月31日時点)

17

パテントボックス税制 IP優遇税制

オランダ ベルギ― ルクセン ブルク

ハンガリー フランス スペイン 英国 アイルランド 中国

適格IP

特許IP、またはR&D IP

特許権および追加特許証明

• 特許権、意匠、模型、およびソフトウエア著作権

• 商標権、ドメイン名、

• 特許権、ノウハウ、事業秘密、および著作権

• 商標権、事業名、

特許権、延長特許証明、特許可能発明、および産業上製造工程

特許権、秘密方式、秘密工程、図面、模型、意匠、およびノウハウ

特許権、追加保護証明、規制的データ保護、および植物品種保護権

• 特許権、ノウハウ、ソフトウェア

• 商標権、ドメイン名、

特許権、ソフトウェア、集積回路レイアウトデザイン、新しい植物の種子

取得IPは? 認める、IPが更に自己開発される場合

認める、IPが更に開発される場合

認める、非直接関連企業からの場合

認める 認める、特定条件あり

認めない 認める、更に開発、積極管理される場合

取得IPのみ適用

認める(独占権を最低5年間確保)

R&D実施は海外でもよいか?

特許IPには認める;R&D IPには厳格要件

認める、適格R&Dセンターの場合

認める 認める 認める 認める、ただし使用許諾者の自己開発の必要

認める N/A 認める(損金算入が80%に制限)

適格所得(総所得 vs. 純所得)

純所得 総所得 純所得 総所得 純所得 総所得

純所得

N/A N/A

適格所得 • 使用料 • 組込使用料

• 売却益

• 使用料 • 組込使用料(80%限度)

• 使用料 • 組込使用料

• 売却益

• 使用料

• 売却益(100%免税)

• 使用料

• 売却益

使用料のみ • 使用料 • 組込使用料

• 売却益 • その他

大きな部分でIPから得られる所得

N/A

PwC

各国のパテントボックス税制の概要

18

スライド17

スライド18 国際課税

租 税 研 究 2013・5 335

PwC

オランダ

19

PwC

オランダ 概要

• 2007年にパテントボックスを導入

- パテントのみに適用

- 適格IP所得が実効税率10%で課税

- 最高限度額は開発コストの4倍

• 2010年にイノベーションボックスを導入、同制度を拡大

- 特許登録が行われなくても優遇措置が適用可

- 適格IP所得が実効税率5%で課税

- 最高限度額は撤廃

- その他

◦ 適用方法:個別のIPごとに任意選択、撤廃はできない

◦ ルーリングを申請するのが一般的

20

スライド19

スライド20国際課税

租 税 研 究 2013・5336

PwC

オランダ 適格IP

パテントIP

• 特許登録がされているIP

- 商標、ロゴ等の権利は対象外

R&D IP

• 特許登録されていないIPで技術革新活動(Technical Innovative Activities)から発生するIP

• オランダ政府のR&D認定が必要

- 技術革新活動とは:

a. 技術的な新製品、製造プロセス、ソフトウェアの開発 (Development of technical new products, production processes or software)

b. 技術的な科学研究(Technical scientific research)

c. 自ら行うR&Dプロジェクトの技術的な実現可能分析 (An analysis of the technical feasibility of an own R&D project)

d. プロセス重視の技術的研究(Process oriented technical research)

21

PwC

オランダ 適格IP

その他の要件

1. 経済的所得要件

- パテントIPの場合:

◦ IP開発がオランダの納税者のリスクと責任で行われる

› オランダで研究開発を行う必要はない

- R&D IPの場合:

◦ R&D活動の少なくとも50%がオランダで行われなければならない

◦ オランダの事業体が開発活動において重要な役割を果たさなければならない

- 取得されたIPは更に開発される必要がある

2. 予測所得割合の要件(濫用防止規定)

- 組込使用料の場合、予測所得の30%超がパテントに帰属しなければならない

3. 事業資産の要件

- パテントIPの場合、2006年12月31日より後に事業用資産となったもの

- R&D IPの場合、2007年12月31日より後に事業用資産となったもの

22

スライド21

スライド22 国際課税

租 税 研 究 2013・5 337

PwC

オランダ 適格IP所得

所得の種類

- 直接帰属する使用料所得

- 商品や役務の提供などで受け取る対価に組み込まれている組込使用料

- 適格IP売却に発生するキャピタルゲイン

Net vs. Gross

- 適格所得は直接および間接的に関連する費用が控除される

- Grow-Inモデル

◦ 対象外となるIPに関連する所得は適格IP所得から除外される。

◦ 計算方法は税法上不明瞭

› 実務上はオランダ税務当局への事前照会などを行い交渉する

3つの計算方法

- 残余利益分割法(Residual Profit Split Method)、コストプラス法(Cost Plus Method)、 個別法(One IP Method)

P

23

PwC

-

-

-

24

スライド23

スライド24国際課税

租 税 研 究 2013・5338

PwC

オランダ 残余利益分割法(Residual Profit Split Method)

25

金利・税引前利益(EBIT)

ルーティン機能 (販売、仕入れ、製造等)

コアとなる機能 (経営戦略、R&D、マーケティング等)

Step 1 ルーティン機能に

帰属する利益の除外

適格R&D活動 非適格R&D活動

Step 2 適格IP活動へ配賦

イノベーションボックス適用(80%控除対象利益)

Step 3 対象外IPに関する所得の除外

(Grow-inモデル)

イノベーションボックス 対象外

PwC

オランダ 残余利益分割法(Residual Profit Split Method)計算例

製造機能

• 製造は経常的な機能

• 利益に帰属するマークアップ率は7%と想定

R&D機能

• R&D活動のうち80%はコアな研究開発活動

• R&Dは中核機能でもあるが、投入時間のうち20%はルーティンな研究開発活動

• 利益に帰属するマークアップ率は10%と想定

その他

• 半導体技術は、R&D活動の成果

• 製品ライフサイクルと再開発:4年周期

損益 (単位:ユーロ)

収益 8,000,000

営業費用 (6,500,000)

金利・税引前利益 1,500,000

支払金利 (100,000)

純利益 1,400,000

部署 機能 費用

製造 ルーティン 4,000,000

管理部門 コア 250,000

営業・マーケティング コア 1,250,000

R&D ルーティン(20%)と コア(80%)の混同

1,000,000

合計 6,500,000

26

スライド25

スライド26 国際課税

租 税 研 究 2013・5 339

PwC

オランダ 残余利益分割法(Residual Profit SplitMethod)計算例

2010 2011 2012 2013

金利・税引前利益(EBIT) 1,500,000 1,500,000 1,500,000 1,500,000

Step 1: ルーティン機能利益の除外

製造(製造費用 x 7%) (280,000) (280,000) (280,000) (280,000)

R&D(R&Dの10% x 20%) (20,000) (20,000) (20,000) (20,000)

残余利益 1,200,000 1,200,000 1,200,000 1,200,000

Step 2: 残余 の配賦

経営 20% 240,000 240,000 240,000 240,000

販売・マーケティング 40% 480,000 480,000 480,000 480,000

R&D 40% 480,000 480,000 480,000 480,000

Step 3: 非適格IP所得の除外

Grow-inモデルの適用 (360,000) (240,000) (120,000) ―

イノベーションボックス税制に基づく利益 120,000 240,000 360,000 480,000

80%控除後の適格所得 24,000 48,000 72,000 96,000

27

利益

PwC

ベルギー

28

スライド27

スライド28国際課税

租 税 研 究 2013・5340

PwC

ベルギー 概要

• 2007年にR&D活動と特許活用を促進するために導入

• Patent Income Deduction (PID) 税制と呼ばれる

• IPに関連する総所得の80%が控除可能

- 実効税率6.8%(法定税率33.99%)

- 税引前課税所得が限度

• 申告書上で適格所得を控除することでパテントボックスを採用することになる

- 税務当局からの事前承認は不要

- 事前にルーリングを取得することも可能

◦ PIDを申請するための条件が満たされるという予測可能性があらかじめ確保される

◦ 組込使用料の算定方法の確認が可能

◦ ルーリングの結果は発表されるが、案件ごとの個別性が強いため、先例としての価値は一般的に 限定的

• 原則的に2007年1月1日以降に特許として認められたもの、または初めて商業的に使用されたものに適用

- 新規のIPのみに適用

29

PwC

ベルギー 適格IP

• 原則パテントのみ

- 特許登録場所はどこでも良い

- ノウハウ、商標、意匠、模型、機密の処方または工程等は適用外

• 取得されたIPにも適用

- 取得後更に改良することが必要

• R&Dセンターでの開発要件

- 事業体の中で自立的に活動ができる部門の設立が必要

- 個別の活動部局(Branch of Activity)または業務ライン(Line of Business)が必要

◦ ベルギー法人に帰属すれば国外にR&Dセンターを設立、またはアウトソース することも可能

◦ ただし、対象納税者はR&D活動に関与しているという実態が必要

30

スライド29

スライド30 国際課税

租 税 研 究 2013・5 341

PwC

ベルギー 適格IP所得

• 適格IPに直接帰属する使用料

• 商品の販売で受け取る対価に組み込まれている使用料

• 関連会社から受け取る使用料

- 対象となる適格所得は第三者間で合意される使用料が限度額

- 組込使用料の場合、第三者間で合意される使用料の80%が限度額

- 第三者間で合意される使用料の算定は実務上移転価格のコンセプトに従って算出

• 適格IP売価により発生するキャピタルゲインは対象外

Gross vs. Net

• 関連費用の控除は不要(総所得額ベース)

- ただし、以下の費用が適格所得を減額する

◦ ライセンス契約で取得したIPに対する使用料の支払

◦ 取得したIPの取得価格の減価償却

その他

- 発生費用の115.5%で研究開発費用を控除

- 研究者の給与に課税される給与税の75%免税規定

31

PwC

ベルギー 計算方法

32

適格IPに直接帰属する使用料

+ 関連会社から受け取る使用料 (第三者間で合意される使用料が限度)

+ 取得した適格IPに係る使用料

- 取得した適格IP にして支払う使用料、または償却費

適格IP所得

x 80%

PID

スライド31

スライド32国際課税

租 税 研 究 2013・5342

PwC

ベルギー 計算例

1年目 2年目 3年目 4年目

適格IP所得 0 200 1,000 1,000

- R&D費用 -150 -50 0 0

= PID前課税所得 -150 150 1,000 1,000

- PID (適格IP所得 x 80%) 0 -150 200 × 80% = 160

(150が上限)

-800 1,000 × 80%

-800 1,000 × 80%

- 繰越欠損金 -150

=課税所得 0 0 50 200

法人税(x 33.99%) 0 0 17 68

他の控除(費用、繰越損失等)で、PID適用後の残余額20%分を相殺することが可能な限り、課税は発生しない

33

PwC

ルクセンブルグ

34

スライド33

スライド34 国際課税

租 税 研 究 2013・5 343

PwC

ルクセンブルグ 概要

導導入入経経過過

• 2008年に導入

- パテントボックス税制導入前のパテント申請は年間平均67件ほどだったものが、導入後の2008年では106件、2009年では127件、2010年では135件と増加傾向にある

優優遇遇措措置置

• 適格IP純所得の80%が免除

- 実効税率は5.76%(2012年法定法人税率は28.8%)

• 0.5%の純資産ベースの税金(Net Wealth Tax)も免除

• 国外源泉使用料に係る源泉税は、ルクセンブルグの租税債務から一部税額控除が可能

対対象象納納税税者者

• 法律上の所有者と経済的所有者が異なる場合、経済的所有者が優先される

35

PwC

ルクセンブルグ 適格IP

IPの種類

• 特許権、商標権、意匠、ドメイン名、模型、およびソフトウエア著作権

- OECDモデル租税条約12条(2)に基づいて判断する

- 非適格IP

◦ ノウハウ、ソフトウエアに関連しない著作権、方式、および顧客リスト

自己開発と取得されたIP

• 2007年12月31日より後に取得または自己開発されたIPに適用

- 取得されたIPの特例

◦ 直接関係会社(10%の直接親会社、子会社、または兄弟会社)からの取得では 適格IPとはならない可能性がある

36

スライド35

スライド36国際課税

租 税 研 究 2013・5344

PwC

ルクセンブルグ 適格所得

• 適格IPから発生する純所得(Net)

- 使用料

- 組込使用料

◦ 第三者に使用許諾した場合に当該納税者が稼得したとされる所得の80%相当額を 控除できる

◦ 移転価格のコンセプトを用いて算出される

- 適格IPの売却によって実現したキャピタルゲイン

• 費用の取り扱い:

- 関連費用は適格IP所得を減額する

- パテントボックス税制を利用する前に発生したIP関連費用(開発費用など)は足し戻され、減価償却という形で適格IP総所得から控除される

37

PwC

ルクセンブルグ 計算例

38

もし過去発生した開発費用が欠損金等の理由で控除されなかった場合、足し戻された費用を減額することが可能

受取使用料 30

関連費用の控除

関連費用の資本化 100

減価償却費用(償却期間5年間を想定) (20)

課税ベースの計算

適格IP純所得 10

パテントボックス税制の適用(x 80%) (8)

関連費用の資本化の足し戻し 100

課税ベース 102

スライド37

スライド38 国際課税

租 税 研 究 2013・5 345

PwC

英国

39

PwC

英国 概要

適用開始日

• 2013年の4月1日から施行

- 適格IP所得が税率10%で課税(法定税率は2013年現在23%)

- 任意選択だが、選択をするとすべての事業のIPに適用(個別の選択は出来ない)

- 2013年から段階的に導入され、2017年に100%控除となる

◦ 既存IPを含むすべての適格IPに対してパテントボックス税制が適用となるための措置

40

’11年12月 ’13年4月 ’14年4月 ’12年夏

60% 70%

’15年4月 ’16年4月

80% 90%

’17年4月

100%

パテントボックスの段階的導入

諮問 (Consultation)

’12年2月

法案の発表

2012年英国 財政法の成立

スライド39

スライド40国際課税

租 税 研 究 2013・5346

PwC

英国 概要

41

実効税率

2013年4月 2014年4月 2015年4月 2016年4月 2017年4月以降

法定税率 23% 21%* 21%* 21%* 21%*

段階導入率 60% 70% 80% 90% 100%

計算式 (10% x 60%) + (23% x 40%)

(10% x 70%) + (21% x 30%)

(10% x 80%) + (21% x 20%)

(10% x 90%) + (21% x 10%)

(10% x 100%)

実効税率 15.2% 13.3% 12.2% 11.1% 10%

* 2014年4月1日より開始する課税年度から法人税を更に2%引き下げる法案が提出されている

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英国 概要

42

英国パテントボックス・フレームワーク

所有要件 Patent Ownership

Requirements

対象特許権Rights included

開発テスト Development condition

管理テスト Active ownership

その他 Other Features

10%率計算式 10% rate formula

パテントボックス 損失額

Negative Patent Box amounts

濫用防止規定 Anti avoidance

rules

パートナーシップと費用分担取極

Partnerships & cost contribution arrangements

関連IP利得 の計算

Profit Calculation

関連IP所得Relevant IP

income

ルーティン 所得の控除

Routine expenses return

マーケティング資産関連利益・小規模

企業の特例Marketing

return/small claims election

比例配賦・ストリーミング配賦

Profit apportionment/ income streaming

引用:The Patent Box: Technical Note and Guide to the Financial Bill 2012 Clausesより

スライド41

スライド42 国際課税

租 税 研 究 2013・5 347

PwC

英国 適格IP

• 英国の知的財産局(Intellectual Property Office)、欧州特許局(EPO)、およびUKと類似の 要件を課しているEEA(European Economic Area)諸国によって認められた特許権のみに 適用

- EEA諸国

◦ オーストリア、ブルガリア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スウェーデン

- 米国や日本で特許登録をしたIPは英国パテントボックス税制の対象外

- 非適格IPの例

◦ 商標権、著作権、意匠

• 計算上、10%を超える事業利益幅のある商品のみに適用される

• 商品毎に適用されるため、適格IP以外の資産に帰属する利得にも結果的に軽減措置が 適用される

43

PwC

英国 適格IP

所有要件

1. 適格IPの特許の所有、または独占的使用許諾(Exclusive License)の要件

- 英国でIP開発され特許登録する必要がある

- 外国関連会社が所有する適格IPであっても英国での独占的使用の許諾を行うことで 要件を充たすことが可能

◦ 特許権侵害に関する訴訟を起こす権利、または侵害による損害賠償を受け取る権利があることが追加要件

- パートナーシップ、合弁事業等、費用分担契約によって所有することも可能

1番目の要件は法律上の所有要件

44

スライド43

スライド44国際課税

租 税 研 究 2013・5348

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英国 適格IP

所有要件

2. 開発テスト(Development Test)、および管理テスト(Active Management Test)

a. 開発テスト

◦ 対象納税者またはグループメンバーがIP開発のために「多大な貢献(Significant Contribution)」をしていること、または開発のために「多大な活動(Significant Activities)」を行うこと

◦ どのような貢献または活動が「多大」かは事実認定となり、コスト、時間、努力などの 事実関係に基づき判断される

b. 管理テスト

◦ 対象納税者またはグループメンバーが適格IPを積極的に管理すること

› IP管理に関わる全ての決定権を有する必要がないが、計画及び決定を行う活動に積極的に関与し、明確な本質的責任を負う必要がある

› 積極的な管理の例:使用許諾契約の締結、IPの異なる利用法の分析

2番目の要件は経済的な所有の要件 45

PwC

英国 適格IP所得

• 関連IP所得(Relevant IP Income、以下RIPI)

1. 特許品目が組み込まれている品目の売上からの収入

◦ 組込使用料のコンセプトとは異なる

◦ 特許登録がされた品目が組み込まれている商品のすべての所得が関連IP所得(RIPI)となる

› 例)乗用車、インクカートリッジとプリンター、DVDプレーヤー

2. 使用料

3. 適格IP売却からの所得

4. 特許権侵害により発生した補償金

5. その他の関連補償金、保険金、損失利益に対する支払

• 関連IP所得(RIPI)に関連する費用の控除などの調整が行われ、関連IP利得(Relevant IP Profit、以下RIPP)が算出される。この関連IP利得(RIPP)に軽減税率が適用される

46

スライド45

スライド46 国際課税

租 税 研 究 2013・5 349

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英国 適格IP所得

特許品目が組み込まれている品目の売上(”Switch” Feature)

• 以下の3つの売上が対象となる

1. 特許品目

2. 特許品目が組み込まれている、または組み込まれるようにデザインされている製品で一つの商品 として売られている物

3. 特許品目が組み込まれている、または組み込まれているようにデザインされている物

例1:特許登録されているインクカートリッジと特許登録されていないプリンター

◦ パッケージとして売られる場合、条件2により売上の総額がパテントボックス税制の対象となる

例2:特許登録されていないインクカートリッジと特許登録されているプリンター

◦ 特許登録されているプリンターに組み込まれるようにデザインされているのであればインク カートリッジが別売りされていても、条件3によりパテントボックス税制の対象となる

例3:特許登録されているDVDと特許登録されていないDVDプレーヤー

◦ DVDはどのDVDプレーヤーでも再生可能なため、パッケージとして売られても売上の総額は パテントボックス税制の対象とはならない

47

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英国 計算方法

Step 内容 計算式

1st

Sta

ge

Step 1 • 事業総所得の算出(金融収益は除外)

Step 2 • 関連IP所得(RIPI)の配賦率の算出

• またはStreaming手法の利用 RIPI 事業総所得

Step 3 • 総事業利得でRIPIに帰属する額を算出 総事業利得 x Step 2

2nd

Sta

te Step 4 • ルーティン利益の控除

→ 適格残余利得(Qualifying Residual Profit, QRP)の算出 特定費用の10%

3rd

Sta

ge

Step 5 • マーケティング資産に帰属する利益の除外

• 小規模の特例(Small Claims Treatment)を利用する場合は小規模特例額の算出、そうでなければStep 6へ進む

QRPの25%

Step 6 • マーケティング資産に帰属する利益の除外 • 想定販売使用料(Notional Marketing Royalty, NMR)と実際の販売使

用料(Actual Marketing Royalty, AMR)を基に算出する NMR - ARM

Step 7 • 関連IP利得(Relevant IP Profit, RIPP)の算出

• 特許申請中IPの特例の利用 QRP – Step 5または Step 6

• 軽減税率適用のための控除額の算出 (RIPP x (税率-10)/税率)

48

「HMRC 無形資産・R&D マニュアル」、CIRD220110条より

スライド47

スライド48国際課税

租 税 研 究 2013・5350

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英国 計算方法-特別規定

Streaming法(Step 2)

• 比例配賦が適切でない場合、個別の収入に特定して費用を配賦する選択をすることができる

• 以下の3つの要件のいずれかを満たす場合は強制適用となる

1. 会計上認識されない多大な収入が発生する場合(例、TP更正額)

2. RIPIではないライセンス収入が多大にある場合

3. RIPIであるライセンス収入が多大にある場合(例、Back-to-Backライセンス契約)

特定費用(Step 4)

• ルーティン利益の除外は以下の費用の10%が一律でRIPPから差し引かれる

- 人件費

- 税務上控除可能な土地建物に関連する費用(賃貸)

- 工場および機械に関連する費用(資本控除、賃貸、維持等)

- 種々のサービスに関連する費用(ソフトウェア、コンサルタント、公共料金、運送等)

- その他

• 研究開発はルーティン利益の除外対象とはならない

49

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英国 計算方法-特別規定

マーケティング資産に帰属する利益の除外(Step 5)

1. 小規模特例

• マーケティングIPに帰属する利益を除外するための目的

• 小規模特例は以下の条件のいずれかを満たせば簡便法を用いることができる

Condition A

a. QRPの総額が1Mポンドを超えない

Condition B

a. QRPの総額が以下の数値を超えない

◦ 3Mポンド/ 1 + N (Nはパテントボックス税制を適用する関連会社の数)

b. 過去4年間で想定販売使用料(Notional Marketing Royalty)を用いてマーケティングIPに帰属する所得を算出していない(Step 6を行っていない)

• 上記の条件を満たせばRIPPが以下の数値の低い方のいずれかとなる

- QRP の75%

- 1Mポンド/ 1 + N (Nはパテントボックス税制を適用する関連会社の数)

50

スライド49

スライド50 国際課税

租 税 研 究 2013・5 351

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英国 計算方法-特別規定

マーケティング資産に帰属する利益の除外(Step 6)

2. 想定販売使用料(Notional Marketing Royalty)

- 小規模特例を使わない場合、もしくは特例に該当しなかった場合、調整額は以下のとおりとなる

◦ 想定販売使用料(Notional Marketing Royalty, NMR)

› NMRはOECD移転価格ガイドラインを基に計算する

◦ マイナス実際の販売使用料(Actual Marketing Royalty, AMR)

- AMRがNRMを超える場合、もしくは差異がQRPの10%未満の場合、調整額はゼロとなる

◦ よって、AMRが第三者間取引の原則によって計算されている場合、またはマーケティング活動が僅少の場合、 調整額が発生しない可能性がある

特許申請中IPの特例(Step 7)

• 特許申請中の場合、登録年度から6年間遡り、特許登録がされていたと想定して算出されたRIPPを実際にStep7で 算出したRIPPに追加することができる

• つまり、申請中に発生したであろう適格IP所得もパテントボックス税制の対象となる

P

51

PwC

英国 計算例

52

ステップ パテント関連 その他 合計

Step 1 事業所得 700 300 1,000

Step 2 事業費用(比例配賦) (420) (180) (600)

Step 3 事業利得 280 120 400

Step 4 特定費用(人件費、土地、建物等) x 10% (20) (200)

適格残余利得(QRP) 260

Step 5 小規模特例の適用(QRP x 25%) N/A

Step 6 マーケティング資産に帰属する利得の除外(NMRとAMRの差額がRIPIの3%と想定する)

(21)

Step 7 関連IP利得(RIPP) 239

パテントボックス税制適用のための控除額 (RIPP x (T-10)/T) (135)

104

法定税率 x 23%

租税負担 24

RIPI

RIPP x 10%

Streamingの利用も可能

スライド51

スライド52国際課税

租 税 研 究 2013・5352

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フランス

53

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フランス 概要

• 15%の軽減税率(法定税率は33.33%)

• 適格IPの使用許諾、サブライセンス供与、譲渡から生じる収益または利益に適用

• 被使用許諾者は法定税率の33.33%での課税となる経常所得から当該使用料支払額を控除することができる

- 被使用許諾者がフランス企業で、かつ実際に使用許諾された適格IPを使用する場合

• 国外源泉使用料についてはそれに係る源泉税を税額控除することができる

54

スライド53

スライド54 国際課税

租 税 研 究 2013・5 353

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フランス 適格IP

• 特許権、特許取得可能発明、およびこれらの改良;

- 特許権または特許取得可能発明の延長である(ただし、改良ではない)産業上の製造工程

- 基礎的発明に関する証明

• 取得されたIP

- 少なくとも2年間保有されねばならない

• 適格IPの開発には関連または非関連のサブコントラクターを活用可能

• 適格IPの開発はフランス国外で行われることも可能

55

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フランス 適格IP所得

• 使用許諾(ライセンス)またはサブライセンス契約(いずれも、適格IP権の一部または 全部をカバーし、独占的または非独占的なもの)の下で受領された使用料純額、

- 受領した使用料の総額、マイナス

- 使用許諾された適格IP権の管理のために(所有者に)生じた関連コスト

• 適格IPの譲渡(売却、現物出資、事業譲渡等による)の場合に売却者によって申告 されたキャピタルゲインの純額、

- 譲渡価額、マイナス

- 譲渡のために譲渡者に生じた費用

• 施行日である2001年より前に創生された適格IPからの所得は、軽減税率の適用対象

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スライド55

スライド56国際課税

租 税 研 究 2013・5354

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ハンガリー

57

PwC

ハンガリー 概要

優遇処置

• 9.5%の軽減税率(最高法定税率は19%)

- 関連者または非関連者が当該IPの使用に対して支払う使用料の50%を控除することが できる仕組み

- 他の利用可能な特別控除と併せて、当該企業の税引前所得の50%を超えられない

その他

• 納税者が国内のR&D活動によって開発したIPについては、特定の条件が満たされた場合 には、R&Dコストの200%の控除が可能(“スーパー控除”)

- R&D控除を100%の割増控除を求めることが可能、または

- 発生した年の通常の100%控除に加えて、資本化されたR&Dに関連する毎年の減価 償却額だけ法人税の課税標準を減額できる 国外源泉使用料については、それに係る源泉税を税額控除ができる

58

スライド57

スライド58 国際課税

租 税 研 究 2013・5 355

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ハンガリー 適格IP

• 特許権、産業法上の資産の意匠、およびノウハウ

• 商標権、事業名、および事業上の秘密

• 著作権で保護された作品の使用権および保護された作品に付帯する類似の権利

• ハンガリーのパテントボックス税制の施行日である2003年より前に創生された適格IPも 当該税制の対象となる

59

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ハンガリー 適格所得

• 適格IPから発生する総所得(Gross)

- 使用料

◦ 組込使用料は対象外とみられる

- 適格IPの譲渡から発生する所得も含む

◦ 商標、事業名、および事業上の秘密を除く

◦ 2012年1月1日から適用

› 適格IPの売却に係る何らかの利益(または現金によらない資本増加)は、売却者が税務当局に当該取得を申告し、また少なくとも1年間当該財産を保持した場合、 免税となる

› 申告がなされなかった場合でも、売却後3年以内に当該課税対象利益が適格IPの購入に使われる場合には、依然として免税となる

60

スライド59

スライド60国際課税

租 税 研 究 2013・5356

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スペイン

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スペイン 概要

• 優遇措置

- 総所得の50%が免除(法定税率は30%)

- 適格IPの開発および償却に係るすべての費用は、通常の法人税率で控除される

• グループ内取引にも適用

- このパテントボックス免除は、たとえ被使用許諾者がスペインにいる場合や、 被使用許諾者が許諾者と同じスペインの連結納税グループに属している場合でも 適用される

◦ この場合は、使用許諾取引は連結納税申告の一部として消去されない

• 被使用許諾者は、スペインでリスト掲載されているタックスヘイブンや無税法域の 居住者であってはならない

• 国外源泉から生じた使用料収入について、支払源泉税に係る税額控除が認められるが、 次のいずれか低い額が限度となる:

(1)スペイン法人税と同一または類似の税として海外で実際に支払われた額

(2)当該所得がスペインで稼得されたとした場合にこの税制の下で課される額

62

スライド61

スライド62 国際課税

租 税 研 究 2013・5 357

PwC

スペイン 適格IP

適格IP

• 特許権、意匠、模型、図面、秘密方式または秘密工程、および産業上、商業上、または 学術上の経験(ノウハウ)に関連する情報に係る権利

非適格IP

• 商標;文学上、美術上、または学術上の作品の著作権(映画フィルム、肖像権、および ソフトウエアを含む) ;および産業上、商業上、または学術上の設備の賃貸

• 取得されたIP

- 自己開発されたものでなければならず、また被使用許諾者によって自らの事業活動に 使用されなければならない

- 被使用許諾者が関連会社である場合、これらの事業活動は、許諾者側で控除を生じる ような被許諾者による物品または役務の供与であってはならない

◦ 当該優遇処置を利用するための関連会社間のライセンス契約の締結を防止するものとみられる

63

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スペイン 適格所得

免除率

• 総所得(Gross)の50%が免除される

書類・記録保持の要件

• IP契約が他の補助的役務を含む場合には、適格IPの使用に係る対価は当該契約の中で 明確に区別されなければならない

• 許諾者は、そのような純所得が適切に算定されていることを確保すべく、すべての必要な 記録を備え置かなければならない

限度額

• 開発費の6倍

• 開発費の6倍を超えた後の課税期間以降、当該優遇措置は適用されなくなる

- この限度に達する課税期間に稼得されたすべての関連収益は優遇措置の対象となる

- この誘因措置が適用される年度の数に関して特別の限度があるわけではない

64

スライド63

スライド64国際課税

租 税 研 究 2013・5358

PwC

アイルランド

65

PwC

アイルランド 概要

• パテントボックス税制(正式名Patent Royalty Exemption) は1973年に導入されたが2010年に廃止

- 効率性への疑問が主な理由

• 新規のIP優遇措置(IP取得費用の損金算入)

- 2009年5月7日以降に発生したIP取得費用は損金算入が可能

- 関連IP所得の80%が限度

◦ 超過額は翌年に繰り越される

› 繰越額も80%の制限が適用される

◦ 関連IP所得とはIPを利用して発生する所得、または商品の売上または役務提供で 「大きな部分(greater part)」の価値がIPによって得られるもの

- 関連IP所得に対する実効税率は2.5%(法定税率12.5% x 20%)

66

スライド65

スライド66 国際課税

租 税 研 究 2013・5 359

PwC

アイルランド 概要

• 損金算入方法

- 会計と同じ耐用年数で減価償却される

- 選択により15年で償却することも可能

◦ 最初の14年間は7%、最後の1年は2%

• Recaptureルール

- 取得10年以内に当該IPが売却されると累計損金算入額が足し戻しされる

• 関連会社からの取得

- 優遇措置は関連会社からのIP取得にも適用

- ただし、グループ税制(Group Relief)を利用してキャピタルゲインを免税にはできない

• 印紙税の免除

- 適格IPの譲渡は印紙税を免除

67

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アイルランド 適格IP

• 下記のIPの取得に発生する費用が適用対象

- パテント、登録された意匠とその権利

- 商標

- ドメイン名、著作権、サービスマーク、出版権(Publishing Titles)

- ソフトウェア

- ノウハウ

- 特定の製薬関連認可と権利

- 特定のライセンス

- 上記のIPに直接関連するのれん

68

スライド67

スライド68国際課税

租 税 研 究 2013・5360

PwC

アイルランド 計算例

69

Year 1 Year 2

関連IP所得 100 200

損金算入額 (80) (160)

課税所得 20 40

• 前提

- 2000ユーロでIPを取得

- 税務上15年間の減価償却を選択

→ 140ユーロ毎年損金算入可能(15年目は40ユーロ)

IP取得費用の損金算入

減価償却費 140 140

前年度からの繰越額 60

減価償却費損金算入可能額 140 200

損金算入額(関連IP所得の80%まで) (80) (160)

繰越額 60 40

PwC

中国

70

スライド69

スライド70 国際課税

租 税 研 究 2013・5 361

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中国 概要

• 原則、パテントボックス税制は導入していない

技術移転所得の減免税措置(企業所得税法細則第90条)

①免税の対象所得額:1納税年度の技術移転所得が500万元以下の額

②半減税の対象所得額:1納税年度の技術移転所得が500万元を超過する額

- 技術移転所得は譲渡益以外にもライセンス契約をした場合の使用料も含まれる

ハイテク新技術企業税制を導入(2008年)

- 中国へのIPおよび開発誘致目的

- ハイテク新技術企業に認定されればすべての所得が15%で課税される (法定税率は25%)

- ハイテク新技術企業とは?

1. 中国の居住者であること

2. ハイテク新技術企業認定(後述)1年前に設立された会社であること

3. 6つの要件に該当すること(次頁以降)

• 認定から3年間有効

71

PwC

中国 ハイテク新技術企業の要件

1. 対象IPの所有要件

- 核となる技術に関わる知的財産の所有

◦ 特許権(発明、科学的かつ技術的な手法と研究開発によって生み出された 実用新案およびデザイン等)

◦ ソフトウェアの著作権

◦ 集積回路レイアウトデザインに対する権利

◦ 新しい植物の種子

- 過去3年間の間の取得

◦ 自社開発、譲渡、取得、寄附、合併等

- 独占権を5年間確保

◦ 中国限定の利用権を移転しても当規定は利用できない

- IPの使用権利は主たる製品・サービスに関連

72

スライド71

スライド72国際課税

租 税 研 究 2013・5362

PwC

中国 ハイテク新技術企業の要件

2. 規定内商品・サービスの販売・提供要件

- 認定目録で規定された製品・サービスの販売・提供を行う場合のみ当該規定が適用

◦ 8分野、51種類、218項目の対象製品・サービスが規定されている

◦ 8分野は以下のとおり

a. 電子情報技術

b. 生物・医療技術

c. 航空・宇宙産業

d. 新素材技術

e. ハイテク技術サービス

f. 新エネルギー・エネルギー保存技術

g. 資源・環境保護技術

h. ハイテク技術による伝統産業の改新

73

PwC

中国 ハイテク新技術企業の要件

3. 科学技術者雇用数要件

- 大卒以上の学歴をもつ人材が雇用者総数の最低30%を占めていること

- うち10%は研究開発活動に従事

4. 一定額の研究開発費用発生要件

- 過去3年間の研究開発費が総収入に対して下記の割合に達していること

- 発生する開発費用の60%が中国国内で発生しなければならない

◦ 外部委託研究開発費の場合、総額の80%のみ適格開発費として上記の判定をする

74

前年度の売上 売上における研究開発費の割合

5千万RMB未満 6%以上

5千万RMB以上、2億RMB以下 4%以上

2億RMB超 3%以上

スライド73

スライド74 国際課税

租 税 研 究 2013・5 363

PwC

中国 ハイテク新技術企業の要件

5. ハイテク新技術関連売上額の要件

- 認定目録で規定されたハイテク新技術製品・サービスの販売・提供による収入が 年間総収入の60%以上であること

6. 事業活動ガイドライン

- 政府の規定する事業活動ガイドラインに基づいて研究開発・事業活動を行うこと

- ガイドラインは事実上査定のようなもの、認定されるには100点満点中70点以上の 点数が必要

◦ 点数システムは以下の4つの指標を用いて過去3年間の活動を基に評価

a. 核となる知的財産権(30点)

b. 研究開発の結果を具体化する能力(30点)

c. 研究開発管理の質(20点)

d. 売上と総資産の成長性(20点)

Pw

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PwC

中国 ハイテク新技術企業認定プロセス

76

Step 1 • 適格性を自己査定

Step 2 • オンライン申請

Step 3 • 認定機関へ必要申請書類を提出

Step 4 • 専門家グループによる申請の査定と評価

Step 5 • 結果を公表(15事業日以内にオンラインで掲示)

Step 6 • 認定書授与およびオンラインで結果公告

Step 7 • 15%の優遇税率の適用

事実確認および 再審査

異議のある場合

スライド75

スライド76国際課税

租 税 研 究 2013・5364

PwC

米国パテントボックスの提案

77

PwC

米国

キャンプ議員による国際税制改正

• 2011年10月に発表

• 主に外国子会社配当益金不算入制度を導入するための国際税制改正のDiscussion Draft

• 今まで発表された改正案の中で一番具体的な内容を含んでいる

• 立法権限を有する下院税制委員会議長からの提言

• 将来提出される法案のロードマップになると予測される

パテントボックス税制の提案

• パテントボックス税制に類似した提案は3つの課税ベース拡大案の一つである「アメとムチ」 アプローチの「アメ」の部分として提案されている

78

スライド77

スライド78 国際課税

租 税 研 究 2013・5 365

PwC

米国

キャンプ議員による国際税制改正案より~所得の海外移転防止案

Option A Option B Option C

Foreign Base Company Excess Intangible Income

Low-Taxed Cross-Border foreign income

Foreign Base Company Intangible Income

無形資産から生ずる超過利益に対する課税

低税率国で生ずる非事業活動所得に対する課税

1) 外国無形資産関連所得に対する課税、および

2) 国内無形資産関連所得に対する優遇措置

国外のCFCに移転された無形資産に帰属する所得が新たにCFC所得として米国で課税

事業活動以外から発生する海外所得で10%以下の実効税率で課税を受ける額を新たにCFC所得として米国で課税

1) 国外の無形資産より発生する所得を新たにCFC所得として米国で課税

2) 国内の無形資産より発生する国外源泉所得は15%の優遇税率で課税

• 超過利益は無形資産から生じた所得で、関連費用の150%を超える所得

• 当該所得が生ずる国の実効税率が10%から15%までの場合、その一定割合が合算対象

• 合算課税を回避するには、CFCがその設立国内に事業拠点を設け、設立国内のマーケットに対する事業の所得である必要がある

• 実効税率は米国税法に基づき計算

• 資産の売買、消費、処分、または、役務提供による所得で無形資産に帰属する所得が対象

• 国内にある無形資産により発生する国外源泉所得に対して優遇措置を設立

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PwC

日本のタックスヘイブン税制関連事項

80

スライド79

スライド80国際課税

租 税 研 究 2013・5366

PwC

日本 外国子会社合算税制の概要

81

特定外国 子会社等

1. 株主である居住

者・内国法人等が株式等の50%超を直接および間接に有するもの

適用除外判定

①事業基準 主たる事業が以下の事業でないこと

a. 生

c. 船舶または航空機の裸傭船(機)貸付

②実体基準基準 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること

③管理支配基準 本店所在地国において事業の管理、支配および運営をみずからおこなっていること

④所在地国基準(下記以外の業種) 主として所在地国で事業をおこなっていること

④非関連者基準(卸売業、銀行業、 保険業、水運・航空運送業等)

主として関連者(50%超出資)以外の者と取引をおこなっていること

制度対象外

課税

適用除外

No

資産性所得 a. 特定株式から

の配当等による所得またはその譲渡による所得

b. 債券の利子にかかる所得またはその譲渡による所得

c. 特提所

d. 船舶または航空機の貸し付けによる所得

Yes

c. 特提所

外国法人

No Yes

PwC

日本 外国子会社合算税制の概要

資産性所得に対する課税の例外規定

• 特許権等が、以下のそれぞれに該当する場合を除く。

1. 特定外国子会社等が自ら行った研究開発の成果に係る特許権等のうち、当該特定 外国子会社等が当該研究開発を主として行った場合の当該特許権等の使用料

2. 特定外国子会社等が取得をした特許権等のうち、当該特定外国子会社等が当該 取得につき対価を支払い、かつ、当該特許権等をその事業の用に供している場合の 当該特許権等の使用料

3. 特定外国子会社等が使用を許諾された特許権等のうち、当該特定外国子会社等が 当該許諾につき対価を支払い、かつ、当該特許権等をその事業の用に供している場合の当該特許権等の使用料

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スライド81

スライド82 国際課税

租 税 研 究 2013・5 367

PwC

Q&A

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スライド83

スライド84国際課税

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