Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
Super-Kamiokande Gadolinium R&D project :
SK-Gd計画にむけたGd添加水でのRayleigh散乱測定
阿久津 良介 (東京大学 宇宙線研究所)
他 Super-Kamiokande collaboration
2015年9月25日日本物理学会(於 大阪市立大学)
概要
◯ Super-Kamioknde(SK)に硫酸ガドリニウム(Gd)を添加
するSK-Gd計画に向けて行った、200tonGd添加水
チェレンコフ検出器EGADSにおける直線偏光レーザーを
用いたRayleigh散乱測定について報告する.
◯ 0.1%及び0.2%硫酸Gd濃度水での測定結果から、
Rayleigh散乱強度の硫酸ガドリニウムの濃度依存性
について報告する.
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
1
研究動機
◯ SKへの硫酸Gdの添加は、Gdによる中性子捕獲能力により、高いν と反ν識別能力をSKに付与する.一方で水の透過率を変える為に、 検出器性能に影響を及ぼすことから、その変化を理解する必要がある.
水の透過率 → 光の減衰係数で決まる.
全減衰係数 散乱係数 吸収係数
◯ 粒子識別等の検出器性能は、αだけでなくβとγにも依存する.
時間
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
α = β + γ
2
◯ EGDASではα(全減衰係数)を測定する装置(UDEAL)により 硫酸Gd添加による透過率の変化を詳細に調べているが、βと γを区別していなかった.
UDEALで測定 Rayleigh散乱の測定
本研究
: SK純水での透過率
各線 : EGADS0.2%硫酸Gd濃度水での透過率
αの変化により、8%程度の低下
LL
15
[%
]
15/6/2515/5/11
直線偏光レーザー
ダンパー
( 経路長~1m )
リフレクター OFF :散乱光の測定
散乱光
吸収板
リフレクター ON :入射光強度の測定
反射レーザー
可動式リフレクター
上面
底面
EGADS
セットアップ◯ 224本の20インチPMTを用いて、直線偏光レーザー 由来の光を2通りの場合について測定.
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
Z
3
ワイヤー
Rayleigh散乱測定装置
ダンパー部(レーザーの反射/
吸収)
直線偏光レーザー入射部
観測量
リフレクターOFF : 散乱した直線偏光によるPMTのヒット数を測定.
( イベントあたりのPMTのヒット数 ) ∝ ( 散乱光強度 )
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
リフレクターON : リフレクターにより反射したレーザーがPMTに作る電荷を測定.
( 反射したレーザーがPMTに作る電荷 ) ∝ ( 入射光強度 )
( イベントあたりのPMTのヒット数 )
( 反射したレーザーがPMTに作る電荷 ) ∝ ( 散乱係数β )
( 検出効率、測定装置の形状に依存した比例定数となる. )
4
測定方法◯ 直線偏光レーザーは、3波長点に対応.各硫酸Gd濃度で、 337、375、405nmについて測定した.
データ取得の時間安定性( 337nm、0.2%硫酸Gd濃度)
平均
の全ヒ
ット
数平均
のレ
ーザ
ー強
度[p
.e.]
リフレクターOFF測定(散乱光強度)~3.19hits
BG測定~2.3hits
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
5
リフレクターON測定(入射光強度)~36.2p.e.
● 測定されたレーザーの強度 は~2%程度で安定していた.
● リフレクターON/OFFの切 り替えは、タンク外に測定装 置を取り出して行った.
● PMTの暗電流によるヒット (BG)の測定も行った.
● 2度ずつリフレクター ON/OFFの測定を行った.
時間
高
ヒッ
ト数
/イベ
ント
底面 ~2%程度の統計誤差
円筒部
上面
cosθ
ヒッ
ト数
/イベ
ント
( 337nm、0.2%硫酸Gd濃度水 )
タンク円筒部のPMTの高さ
φ [rad]
散乱光の角度分布
上面
底面
タンクの上面と底面に非対称性
→ レーザーのハロー成分の混入と推定
→ 解析には円筒部の使用
( BGの寄与、PMTと光源間の距離、PMTの立体角補正は考慮されている. )
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
直線偏光のRayleigh散乱に特徴的なパターン
→ Rayleigh散乱した 光を観測
φ分布 cosθ分布
6
低
タンク座標の定義
解析
1. EGADSでのRayleigleh散乱は標準的な Rayleigh散乱であると仮定する.
入射光子の偏極ベクトル
入射方向
散乱方向
ΨΦ
2. タンク座標の(θ,φ)方向にあるPMTが観測するヒット数は、線光源 からの散乱を考慮して、PMTの立体角について積分した量.
φ分布
フィッティング
C(θ)、A(θ) : 散乱係数βに比例する量.
δ : 測定装置のφ方向を制御不能な ために生じる位相.
フィッティングパラメータ
例.円筒部の最下部層、337nm、0.2%硫酸Gd濃度水
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
◯ φ分布にフィッティングを行い、測定装置による影の影響を補正し、 レーザーのハロー成分の混入を取り除く.
フィッティング関数
7
フィット結果
円筒部の最下部層、337nm、0.2%硫酸Gd濃度水
C(θ)
δ
A(θ)
φ分布
◯ 散乱係数βの硫酸Gd濃度変化による比較には、振幅A(θ)を用いる.
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
8
● フィット関数とデータの残差 に明白なφ依存性は確認さ れていない.
● C(θ)には明らかなcosθ非 対称性が見られた.
散乱係数βの評価方法
◯ フィッティングにより得た振幅A(θ)をリフレクターONで測定した レーザーの強度[p.e.]で規格化することで、意味のある量a(θ)となる.
◯ 散乱係数βにたいし、ハローの寄与が小さいすると、0.1%と0.2% の硫酸Gd濃度でのa0.1%(θ)、a0.2%(θ)の比が散乱係数βの相対 変化を与える.
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
9
a(θ) ∝ ( 散乱係数β + ハロー成分 )
a0.2%(θ)
a0.1%(θ) ≃
β0.2%
β0.1%
散乱係数の濃度変化
337nmの場合
a(θ
)
cosθ cosθ
a0
. 2%
(θ) /
a0
. 1%
(θ)
緑 : 0.1%硫酸Gd濃度 橙: 0.2%硫酸Gd濃度
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
10
337nm : 1.049 ± 0.039
375nm : 1.016 ± 0.031
405nm : 0.981 ± 0.034
◯ 散乱係数βの相対変化
Prelim
inary
( 誤差 : 統計誤差と再現性によりみつもられた系統誤差によるもの. )
予想される全減衰係数の変化
◯ 硫酸Gdの濃度変化による全減衰係数の変化に おいて、有意な散乱の増加は見られない.
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
11
β0
.2%
/ β
0.1
%
Prelim
inary
赤 : 100%散乱を仮定.
紫 : 20%散乱、80%吸収を仮定.
緑 : 10%散乱、90%吸収を仮定.
● EGADSにおいて、測定 されている硫酸Gdに よる全減衰係数αの 変化分から、散乱と吸 収の割合を予想した.
● 絶対値として、SKの MCで用いられてい る減衰係数のモデ ルを仮定した.
SKでの減衰係数のモデル
全減衰係数
吸収 Rayleigh散乱
Mie散乱
波長 [nm]
まとめ
◯ 200ton硫酸Gd添加水チェレンコフ検出器EGADSでの Rayleigh散乱の測定について報告した.
◯ 測定に用いた直線偏光レーザーのハロー成分の寄与が十分に小さい と考え、0.1%から0.2%硫酸Gd濃度変化における散乱係数βの相 対変化が見積もった.
今後の予定
◯ 測定データを再現するモンテカルロシミレーション(MC)の用意する. → 現在進行中
◯ データとMCを用いて、ハロー成分の混入を評価する.
◯ MCとデータの比較から、散乱係数の絶対値を見積もる.
日本物理学会 2015/9/25 於 大阪市立大学
12
◯ SKで用いられている減衰係数のモデルを仮定し、EGADSで測定され た全減衰係数αの硫酸Gdによる変化分をもちいた散乱係数の変化 の予想との比較から、硫酸Gd添加による透過率の変化には、有意な 散乱の増加は見られていない.
測定の再現性
◯ 各測定点において、リフレクターON/OFFともに2度 の測定から再現性を確認.
青 : 1度目のリフレクターOFF測定赤 : 2度目のリフレクターOFF測定
● 1度目と2度目の測定の差は 現在のところ理解出来てい ない.
● 理解できていないこの差を、 現段階での系統誤差とした.
337nm、0.2%硫酸Gd濃度水
◯ いずれの測定点においても、各cosθで~10%以内で 再現するこを確認した.
A(θ
)日本物理学会 2015/9/25
於 大阪市立大学
13
● 統計誤差のみ.
cosθ