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新しいSi CMOSハイブリッド検出器と電子飛跡のDeep Learningによる再構成
実験と観測で解き明かす中性子星の核物質 C01班
斉藤 新也 (立教大学, 宇宙科学研究所(~2014年) ) 高橋忠幸, 渡辺伸, 池田博一, 米田浩基(宇宙科学研究所)
中性子星新学術 C01班
55
第4章 128×128ピクセルSi-CMOS素子の性能評価
次世代MeVガンマ線検出器として、電子追跡型半導体コンプトンカメラを開発するためには、高い位置分解能を持った半導体検出器が必要である。我々は、浜松ホトニクスと共同で位置分解能 20 µmの Si-CMOSハイブリッド検出器を開発している。ここでは、最初に開発した 128× 128ピクセルの小型試作器について行なった性能評価と電子イベントの解析結果を述べる。
4.1 Si-CMOS素子の概要電子追跡型コンプトンカメラの散乱体として用いる検出器に求められる条件は、
• 電子の飛跡が捉えられるような数 10 µmの位置分解能
• これまでの半導体コンプトンカメラ同様、数 µsの時間分解能を持ったトリガー取得が可能
である。そこで、我々は、図 4.1のようなX線との相互作用する Si素子部分と CMOS回路をバンプで接合した半導体イメージャを開発した。ここで用いている、CMOS回路によるイメージは、1ピクセル 20× 20µm2のサイズであるので、一つ目の条件をクリアする。CMOS回路の 1フレーム読み出し時間は、ピクセル数・クロック周波数に依存するが、この章の素子の場合、典型的には、∼10 msであるので、トリガは別系統で取得する必要がある。このため、反対側の電極面からトリガ信号を取得することで、速い時間分解能を実現する。
Si n-bulk
金属電極 (高電圧側)
CMOS回路 (p-sub)
p
図 4.1: Si-CMOS素子概念図
2章で触れた、カルフォルニア大学バークレー校の「high-resolution scientific CCD」も裏面からトリガ信号を取得する構造であるが、CMOS回路を用いることの利点は、1フレー
16 第 2章 宇宙MeVガンマ線観測の現状と次世代MeVガンマ線検出器開発
(E1,r1)
コンプトンコーン
(E2,r2)
ファインコリメータが絞る方向
バックグランド源
図 2.10: SGDにおいて除去ができないバックグラウンドイベント
散乱体(Siなど)
吸収体(CdTeなど)
(E1,r1)
コンプトンコーン
(E2,r2)
θ
反跳電子e-
反跳電子の動きから入射方向が制限
図 2.11: 電子追跡によるコンプトンカメラ
Siピクセル検出器 CdTeピクセル検出器実効面積 5.12×5.12 cm2 2.56×2.56 cm2
ピクセルサイズ 3.2 × 3.2 mm2 3.2 × 3.2 mm2
ピクセル数 16 × 16 8 × 8実行厚さ 0.6 mm 0.75 mm印加電圧 230 V 1000 V
表 2.1: SGDの Siピクセル検出器、CdTeピクセル検出器の性能。Siピクセルは、1層に 1検出器を用い、CdTeピクセルの場合は、1層に 4つのピクセル検出器を 2× 2になるように配置している。
Si-CMOS 検出器MeV ガンマ線観測コンプトン散乱が支配的相互作用 電子追跡型コンプトンカメラによる感度向上
Si-CMOS検出器の開発・20μm ピッチ CMOS 回路 (コンプトン散乱時の反跳電子の飛跡追跡) ・数 us の時間分解能(同時計数) ・1keV 程度のエネルギー分解能
非破壊で連続読み出し
→ASIC (タイミング(トリガー)・エネルギー)
e-数十~数百 μm
20 μm
→ビデオ出力を AD 変換(飛跡・エネルギー)
500 μm
SGD (Astro-H)CdTe 等
DSSD,Si-Pad
バンプ接合
(米田修士論文(2017, 東大))
γ (~MeV)
Si-CMOS
CdTe 等
(Watanabe+16)
(米田修士論文(2017, 東大))
中性子星新学術 C01班
開発の経緯2013年以降、宇宙科学研究所を中心に、浜松ホトニクスと共同で 開発を進めてきた。
サイズ 変換効率 電極構造 結果
2014 128 x 128 (2.6mm x 2.6mm) 2μV/e 共通電極 電子の飛跡取得に成功
2015 640 x 512 (1.3cm x 1cm) 1μV/e 共通電極 OK
60Co 差分イメージ
2.6mm
中性子星新学術 C01班
開発の経緯
100− 0 100 200 300 400 5000
50
100
150
200
250
2013年以降、宇宙科学研究所を中心に、浜松ホトニクスと共同で 開発を進めてきた。
ASIC-sideFWHM
1.4keV@60keV
241Am
1.3cm
サイズ 変換効率 電極構造 結果
2014 128 x 128 (2.6mm x 2.6mm) 2μV/e 共通電極 電子の飛跡取得に成功
2015 640 x 512 (1.3cm x 1cm) 1μV/e 共通電極 OK
2016 640 x 640 (1.3cm x 1.3cm) 4μV/e
電極分割 (ストリップ&ピクセル)
飛跡・タイミング・エネルギーの同時測定に成功
1.3cmASIC
60Co 差分イメージ
2.6mm
中性子星新学術 C01班
反跳電子の散乱方向ベクトルの決定従来の飛跡解析(主にガス検出器によるX線偏光測定): 飛跡の重心等の情報から解析的に始点を割り出し、始点近傍を直線フィット。
新たな手法として、 Deep Learning を用いた飛跡解析アルゴリズムを構築
Figure 5. Distribution of barycentres (left), reconstructed conversion points (center) and one dimensional projection(right) referring to a run with point source (5.4 keV unpolarized radiation collimated within 50 jim); only events with
2.5 are shown. Note that standard deviation of the gaussian fit to reconstructed conversion points distribution iso 7Otm, fixing the spatial resolution of our detector in present configuration.
of the charge is released toward the end of the track, while reconstructed conversion points are characterized bya much smaller distribution. The standard deviation of the gaussian fit to the reconstructed conversion pointsdistribution is about 70 pm (figure 5, right); this value represents the spatial resolution of our detector in itspresent configuration, but it is clear that it could be largely improved by using a readout plane segmented withsmaller pitch. With a pitch of 100 jim or 50 ,am, which is probably not out of our reach, the MPGD couldprovide imaging capabilities not so far from a standard CCD camera.
Reconstruction of the absorption point is important non only to improve imaging capabilities of the in-strument, but also to enhance accuracy in angular reconstruction. Since most of the directional information
I Hit Po9ition
25
20
15
10
5
"0 5 10 15 20 25
Figure 6. Reconstructed photoemission direction, as extracted by pixels which are close to the conversion point, can besensibly different (and much more accurate) from principal axis of charge distribution.
resides in the initial part of the photoelectron track, once the conversion point has been estimated, the basicangular reconstruction algorithm can be applied again considering only fired pixels close to the conversion point
20Nt=6992
ROSy 11791
400J
500
3000
00
2000
1000
500
00 1000 00 500 3000 3500 4000
L3500
3000
2500
2000
150
1000
500
I,p6t'(
79
0 00 10 0 500 000 0 3000 3 00 4000 1200 1400 1600 1800 2000 2200 2400 2600 2000
Principal axis
'S •Baricenter
S
,,,5S
00 C Reconstructedoo-p_ absorption point
555 Reconstructedphotoemission direction
388 Proc. of SPIE Vol. 4843
Bellazzini+03
問題点:始点が判別困難な複雑な軌跡には適用できず。 (Si-CMOSの場合、ガスに比べて飛跡が短くなる + 飛跡の二次元情報のみ)
Black+07
中性子星新学術 C01班
Deep Learning を用いた飛跡解析
LeCun+98
出力電子の初期座標 (y0, y1)電子の初速ベクトル (y2, y3)
畳み込みニューラルネットワークの概念図
1. 出力(y) と実際の電子の初期座標・初速ベクトル(t) の二乗和(損失関数 L)を計算
Step1. ニューラルネットワークの学習
Step2. 学習済みニューラルネットワークによる推定
トレーニングデータと異なるデータセットを入力とし、汎化能力を検証。
L =1
2
X
k
(tk � yk)2
W W � ⌘@L
@W
2. 損失関数 L を最小化するように、ネットワークのパラメータ W を調整
1→2 を、L が収束するまで繰り返す
入力Geant4 でシミュレーションした電子の飛跡画像(~6万枚)(E=300keV, isotropic)
中性子星新学術 C01班
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
img1671
0 5 10 15 20 25 300
5
10
15
20
25
30img1671
・電子の反応位置・初速ベクトルともに正しく推定している。 ・始点(interaction point)と 終点(Bragg ピーク)を間違えることは殆ど無い。
黒:電子の実際の初速ベクトル(Geant4)赤:ニューラルネットによる推定結果
00.020.040.060.080.10.120.140.160.180.20.22
img3215
0 5 10 15 20 25 300
5
10
15
20
25
30img3215
X pixels
Y pi
xels
100μm
単純な飛跡の場合
中性子星新学術 C01班
• 人が見ても反応位置・初速ベクトルの判断が困難で、かつ従来の飛跡解析アルゴリズム(e.g. moment analysis)が機能しないケースでも、ある程度正しく推定できている。
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
0.16
0.18
img1559
0 5 10 15 20 25 300
5
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30img1559
0
0.05
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0.25
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0 5 10 15 20 25 300
5
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30img3222
黒:電子の実際の初速ベクトル(Geant4)赤:ニューラルネットによる推定結果
Y pi
xels
X pixels
100μm
複雑な飛跡の場合
中性子星新学術 C01班
始点近傍で大角度散乱する場合 xy面に投影した軌跡が何重にも重なる場合
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0.35
0.4
0.45
img556
0 5 10 15 20 25 300
5
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00.020.040.060.080.10.120.140.160.180.20.220.24
img659
0 5 10 15 20 25 300
5
10
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20
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30img659
黒:電子の実際の初速ベクトル(Geant4)赤:ニューラルネットによる推定結果
X pixels
Y pi
xels
100μm
正しく推定できないケース
中性子星新学術 C01班
d_pos(pixels)0 1 2 3 4 50
100
200
300
400
500
600
700
800
)°(θd0 20 40 60 80 100 120 140 160 1800
100
200
300
400
500
600
(1pixel = 20μm)
始点位置の決定精度 散乱方向の決定精度
• 始点の位置を1ピクセル(20μm)以下の精度で推定できている。 →始点と Bragg ピークを間違えることはほとんどない。
• 散乱方向の推定精度は ~30°程度。
パラメータの推定精度
中性子星新学術 C01班
• 電子追跡型コンプトンカメラのための、Si-CMOS センサを開発している。電子の飛跡・タイミング・エネルギーの同時取得に成功し、コンプトンカメラとして動作させる準備が整った。
• コンプトン再構成の鍵を握る Si-CMOS センサ中の電子の散乱方向を決定するために、deep learning による飛跡の解析手法を構築した。Geant4 ベースで性能を検証し、複雑な飛跡の場合でも再構成できることを示した。
• 今後は、電子追跡型コンプトンカメラのプロトタイプを製作。および、実験データに基づく飛跡再構成を検討する(シミュレーション&実測)。
まとめ