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22 10 月末、チリを代表するワインの一つ、「セー ニャ Seña」の全 16 ヴィンテージ(ファースト リリース 1995 から直近のリリース 2010 まで) を試飲するイベントが開かれた。これはセー ニャの畑に新しくバイオダイナミック ・ センター が竣工したのを機に、世界各地でセーニャを 販売している人々を集めて開催されたもの。 エドゥアルド・チャドウィックとカリフォルニア のロバート・モンダヴィが 1995 年に共同で造 り始めたセーニャ ・ ヴィンヤードに新しくバイ オダイナミック ・ センターがオープンした。セー ニャの敷地内に建設されたこの施設は、バイオ ダイナミック農法を実施するに当たって必要な 堆肥や各種の調剤(プレパレーション)類を 自前で作るためのもの。ここにはバイオダイナ ミック調剤に使うハーヴ類の菜園が併設されて いる。 「伝統農法にビオディナミの考え方を併せた 耕作法とは、注意深く自然を観察しながら自然 のサイクルと宇宙のリズムについて学ぶことで ある。とりわけ耕作地における植物相と動物相 の相互作用に細心の注意を払いながら生物の 多様性と繁殖のサイクルをしっかり守ることが 大切だ」と、セーニャの栽培担当者は考えて いる。だからバイオダイナミック ・ センターも 畑の一角を割き、周囲に無理なく馴染むように 建設されている。 「葡萄畑由来の有機物と動物の糞で作った堆 肥と、バイオダイナミック調剤を土壌に与えるこ とで、土中の微生物の棲息数が圧倒的に増え、 窒素含有量が安定し、葡萄の根が健全になり、 樹の免疫力が高まる。土壌が活性化することで 葡萄の根が土中深くまで伸び、そこからさまざ まなミネラルを掴んで葡萄果に蓄積させる。自 然環境をきちんと保全することができて初めて、 品質の高い葡萄を後の世代まで収穫し続けるこ とができることを、バイオダイナミック農法はわ れわれに教えてくれる」という。 バイオダイナミック ・ センターの開設はセー ニャの今後の進展を保証してくれる重要な出来 事のようだ。 エドゥアルド ・ チャドウィックは首都サンティ アゴの北 100km に位置するアコンカグア・ヴァ レーにエラスリス ・ ヴィンヤードを経営してい る。エラスリスの初まりは 1870 年。エドゥア ルドの祖先が当時、不毛の地だったアコンカグ ア ・ ヴァレーに葡萄畑を開拓したことに始まる。 その後、フィロキセラ禍のヨーロッパへ輸出す ることでワイン産業は栄え、チリ国内のワイン 消費もピーク時には一人当たり 80ℓに達した。 エラスリスも同時に繁栄の時を過ごした。しか し世界恐慌、二つの世界大戦、それに続くチ リ国内の動乱でワイン産業はすっかり寂れてし まった。 エラスリスの再興を手掛けたのは、エドゥア ルドの父・アルフォンソだった。1983 年のこと である。この時、エドゥアルドもワイナリー再興 に加わっている。エドゥアルドは 1985 年にボ ルドーに留学し、エミール・ペイノーに師事し た。新しい葡萄栽培とワイン造りの手法を実地 で体験して帰国したのである。 1991 年、カリフォルニアのロバート ・ モン ダヴィが初めてチリを訪れた。その時、エドゥ アルドはロバート ・ モンダヴィと親しくなり、そ れから「ナパに出むいてずいぶん勉強させても らった」という。 1995 年に両家のジョイント ・ ヴェンチャー 「セーニャ」がスタートする。セーニャはスペ イン語でシグナル、シグネチャーを意味する。 この事業は二つのファミリーのシグネチャーに よって動き出した。「セーニャ」のファースト ・ ヴィンテージは 1995 年で、この年の葡萄はエ ラスリス・ヴィンヤードからていねいに選抜さ れたものだった。 その後、太平洋岸から 41km 内陸に入っ たアコンカグアのオコアに 350ha の北向き 斜面を購入し、これをセーニャ専用畑とした。 1999 年に葡萄樹を植栽。土壌は小石混じりの ローム層。少し表土をいじると中から大きな石 がたくさん顔をだしたという。 セーニャの畑は初めからサステイナブル農法 を採用してきた。つまり周囲の自然をそのまま 維持し、畑を拓いた斜面にはナチュラル ・ コリ ドーが設えてある。敷地面積 350ha のうち葡 萄畑はわずか 42ha。あとは手つかずの自然 チリワイン Seña セーニャ 16 ヴィンテージの垂直試飲会 満月の夜のセーニャ・ヴィンヤード

Seña22 10 月末、チリを代表するワインの一つ、「セー ニャSeña」の全16 ヴィンテージ(ファースト リリース1995 から直近のリリース2010

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Page 1: Seña22 10 月末、チリを代表するワインの一つ、「セー ニャSeña」の全16 ヴィンテージ(ファースト リリース1995 から直近のリリース2010

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10月末、チリを代表するワインの一つ、「セーニャ Seña」の全 16ヴィンテージ(ファーストリリース 1995から直近のリリース 2010まで)を試飲するイベントが開かれた。これはセーニャの畑に新しくバイオダイナミック・センターが竣工したのを機に、世界各地でセーニャを販売している人々を集めて開催されたもの。

 エドゥアルド・チャドウィックとカリフォルニアのロバート・モンダヴィが 1995年に共同で造り始めたセーニャ・ヴィンヤードに新しくバイオダイナミック・センターがオープンした。セーニャの敷地内に建設されたこの施設は、バイオダイナミック農法を実施するに当たって必要な堆肥や各種の調剤(プレパレーション)類を自前で作るためのもの。ここにはバイオダイナミック調剤に使うハーヴ類の菜園が併設されている。  「伝統農法にビオディナミの考え方を併せた耕作法とは、注意深く自然を観察しながら自然のサイクルと宇宙のリズムについて学ぶことである。とりわけ耕作地における植物相と動物相の相互作用に細心の注意を払いながら生物の多様性と繁殖のサイクルをしっかり守ることが大切だ」と、セーニャの栽培担当者は考えている。だからバイオダイナミック・センターも畑の一角を割き、周囲に無理なく馴染むように建設されている。 「葡萄畑由来の有機物と動物の糞で作った堆

肥と、バイオダイナミック調剤を土壌に与えることで、土中の微生物の棲息数が圧倒的に増え、窒素含有量が安定し、葡萄の根が健全になり、樹の免疫力が高まる。土壌が活性化することで葡萄の根が土中深くまで伸び、そこからさまざまなミネラルを掴んで葡萄果に蓄積させる。自然環境をきちんと保全することができて初めて、品質の高い葡萄を後の世代まで収穫し続けることができることを、バイオダイナミック農法はわれわれに教えてくれる」という。 バイオダイナミック・センターの開設はセーニャの今後の進展を保証してくれる重要な出来事のようだ。

 エドゥアルド・チャドウィックは首都サンティアゴの北 100kmに位置するアコンカグア・ヴァレーにエラスリス ・ヴィンヤードを経営している。エラスリスの初まりは 1870年。エドゥアルドの祖先が当時、不毛の地だったアコンカグア・ヴァレーに葡萄畑を開拓したことに始まる。その後、フィロキセラ禍のヨーロッパへ輸出することでワイン産業は栄え、チリ国内のワイン消費もピーク時には一人当たり80ℓに達した。エラスリスも同時に繁栄の時を過ごした。しかし世界恐慌、二つの世界大戦、それに続くチリ国内の動乱でワイン産業はすっかり寂れてしまった。 エラスリスの再興を手掛けたのは、エドゥアルドの父・アルフォンソだった。1983年のこと

である。この時、エドゥアルドもワイナリー再興に加わっている。エドゥアルドは 1985年にボルドーに留学し、エミール・ペイノーに師事した。新しい葡萄栽培とワイン造りの手法を実地で体験して帰国したのである。 1991年、カリフォルニアのロバート・モンダヴィが初めてチリを訪れた。その時、エドゥアルドはロバート・モンダヴィと親しくなり、それから「ナパに出むいてずいぶん勉強させてもらった」という。 1995年に両家のジョイント・ヴェンチャー「セーニャ」がスタートする。セーニャはスペイン語でシグナル、シグネチャーを意味する。この事業は二つのファミリーのシグネチャーによって動き出した。「セーニャ」のファースト・ヴィンテージは 1995年で、この年の葡萄はエラスリス・ヴィンヤードからていねいに選抜されたものだった。 その後、太平洋岸から 41km内陸に入ったアコンカグアのオコアに 350haの北向き斜面を購入し、これをセーニャ専用畑とした。1999年に葡萄樹を植栽。土壌は小石混じりのローム層。少し表土をいじると中から大きな石がたくさん顔をだしたという。 セーニャの畑は初めからサステイナブル農法を採用してきた。つまり周囲の自然をそのまま維持し、畑を拓いた斜面にはナチュラル ・コリドーが設えてある。敷地面積 350haのうち葡萄畑はわずか 42ha。あとは手つかずの自然

チリワインSeñaセーニャ全16ヴィンテージの垂直試飲会

満月の夜のセーニャ・ヴィンヤード

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を維持している。栽培品種はカベルネ ・ソーヴィニヨン、メルロ、カルメネール、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、マルベック。ボルドー品種のみ、しかも本家ボルドーの畑からなくなってしまったカルメネールを加えた 19世紀のボルドーの再現である。 2003年はロバート・モンダヴィがセーニャを訪れた最後の年になった。モンダヴィの倒産で 2004年にセーニャはエドゥアルド・チャドウィックの単独所有へと切り替わった。 「あの時わたしはセーニャをボブへのオマージュのつもりで一人で経営しようと決めた」とエドゥアルドは振り返る。そして 2005年、耕作法にビオディナミ農法を採用した。

 セーニャ・16ヴィンテージ・ヴァーティカル・テイスティングは醸造責任者のフランシスコ・バエティグが指揮した。 16ヴィンテージを試飲すると、ワインが幾つかのエポックを語りかけてきた。ひとつは葡萄の出所である。エラスリスが他のワイナリーに先駆けてチリで初めて急峻な斜面に葡萄畑を拓いたのは 1993年のこと。私が初めてエラスリスを訪ねた年でもある。ボデガの向かいの斜面には植えたばかりの樹が並んでいた。チリではそれまで誰もがヴァレー ・フロア(平地)の葡萄でワインを造っていた。だからセーニャ「1995」「1996」はエラスリスの平地の葡萄だけで造っている。「1997」から少しずつエラスリス・ヒルサイド・ヴィンヤードの葡萄がブレンドされていった。そしてセーニャ自前の葡萄で造るのは「2003」以降だと思われる。もしかしたら初めの頃はセーニャとエラスリスのブレンドかもしれない。試飲した感じでは「2007」以降はオコアの畑の葡萄だけで造っていると思えた。 二つめはカルメネールの発見である。「1995」と「1996」を比べるとおもしろい。「1995」はメルロとカルメネールを 30%使っているが、まだ両者は畑で分別されていなかったので “併せて 30% ”になっている。しかし「1996」以降は、カルメネールとメルロそれぞれのブレンド比率を明記している。畑できちんと選り分けて収穫し始めたからだ。 発見当時のカルメネールには未熟果が多かった。カルメネールはボルドー品種の中で最晩熟品種なのだが、当時はまだ正確な収穫のタイミングを掴んでおらず、どのワイナリーでも「このミントのような青さがカルメネールの特徴だ」と言って憚らなかった。「1996」のアロマに青いニュアンスがあるのはそのせいだ。そ

1995   CS70% M&Car30% Alc13.0% 14か月樽熟成    ドライハーヴ&フレッシュハーヴ、スモーキーでやや

アニマル。フルーツが凝縮している。少し粗い感じのタンニン、フレッシュでタバコのノート。

1996 CS91 Car9 Alc12.7 15か月    メントール、ドライ・ハーヴ。チョコレート、タバコ、

ドライ・フルーツ。この年はカベルネ ・ソーヴィニヨンのブレンド割合が最も多い。やや軽めのボディ、滑らかで丸いタンニン。複雑味。

1997 CS84 Car16 Alc14.7 16か月    ペパリー、ドライ・フルーツ、スパイス、ドライ・ハー

ヴ。厚みがあって複雑。後口にチョコレートのような甘さがあって少し乾く感じ。

1998 CS90 Car5 M5 Alc13.8 16か月    熟成香、湿った下草の香り、ハーヴ、リコリス。滑

らかでシルクのような舌触り。きれいな酸味、余韻が長くて心地よい。

1999 CS75 M16 Car9 Alc14.2 15か月    ほんのりミント。ドライフルーツとドライハーヴ。や

や粗いタンニン、パワフルで凝縮している。

2000 CS77 M17 Car6 Alc14.0 18か月    フレッシュ・フルーツ、甘いスパイス、生のハーヴ。

やさしいアタック、舌ざわりは優しく丸い。口中にフレッシュフルーツ、大きなポテンシャルを感じる。未だ若い。非常に長い余韻。

2001 CS75 M15 CF6 Car4 Alc14.3 18か月    スパイシー、ドライハーヴ、ドライフルーツ、リコリス、

シーダー。パワフルでヴィヴィッド。がっちりした構成と厚み。余韻長い。

2002 CS70.4 M19.8 Car9.8 Alc14.0 18か月    黒いフルーツ、カシスが中心のアロマ。アタックは

果物の熟した甘さ。しっかり凝縮しているがまだ収斂するタンニンが残る。歯茎に纏わりつく感じ。まだ固い印象。

2003 CS52 M40 Car6 CF2 Alc14.5 18か月    フラワリー、フレッシュハーヴ、リコリスなどの甘い

スパイス。アタックは甘く、熟した甘さが口中に広がる。インテンス。アルコールの甘さと強さを感じる。

2004 CS51 M35 Car6 CF5 PV3 Alc14.5 18か月    赤いフルーツ、スパイス、バルサミック。とてもやさ

しいアタックで比較的おとなしい丸くなりつつあるタンニン。口中にアルコールを感じる。

2005 CS57 M25 Car9 CF6 PV3 Alc14.3 18か月    フラワリーでバルサミック、スパイス、あとから熟し

たフルーツの香り。穏やかで滑らかなアタック、力強いワイン。後口に少し苦味がある。

2006 CS55 M16 PV13 Car10 CF6 Alc14.5 18か月    フラワリー、ドライハーヴ、赤いフルーツ、黒いフルー

ツ、とてもエレガントで複雑なアロマ。アタックはとても優しく、フレッシュでラブリー、ミッドパレットに強さがあって滑らかなタンニンと酸のバランスがすばらしい。余韻も長く、このワインが最も印象的だった。

2007 CS57 Car20 M12 CF6 PV5 Alc14.5 22か月    花の香り、赤いフルーツ、スパイス。口中は凝縮し

ていてややバルサミック。後口にまだ少し粗さが残っている。

2008 CS57 Car20 M10 PV8 CF5 Alc14.5 22か月    フレッシュなハーヴ、若々しいフルーツのアロマが

中心。穏やかで滑らかなタンニン、少し控えめな感じがする。造りのせいかヴィンテージのせいか。酸味がとてもきれいだ。

2009 CS54 Car21 M16 PV6 CF3 Alc14.5 22か月    フレッシュ・フルーツ(赤いもの、黒いもの)少し

バルサミック。まだタンニンが若くて角が立っている感じが残るがポテンシャルは大きい。後口に少し甘苦さ。

2010 CS59 Car21 M12 CF4 PV4 Alc14.0 22か月    甘いスパイスの香り、フレッシュフルーツとほんのり

生のハーヴの香り。しっかり凝縮している。口中にもフレッシュフルーツが感じられるほど若い。ミドルパレットに力があって、樽のタンニンがまだ統合されていない感じではあるが潜在力は極めて大きい。2007年から始まった新しいスタイルが確立された感じがする。

    CS=カベルネ ・ソーヴィニヨン、M=メルロ、Car=カルメネール、CF=カベルネ・フラン、PV=プティ・ヴェルド、Alc=アルコール分、熟成はすべてフレンチオーク樽

セーニャ 16ヴィンテージ・ヴァーティカル・テイスティング

セーニャ16ヴィンテージとエドゥアルド・チャドウィック

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の後、徐々にカルメネールの的確な収穫タイミングが捕まえられるようになり、今では胡椒のアロマのよく熟したカルメネールが使われている。 三つめはワインメーカーの個性だ。16ヴィンテージは終始一貫してエドゥアルド・チャドウィックが関与している。しかし、実際に造るのはワインメーカーだ。2003年まではロバート・モンダヴィとのジョイント・ヴェンチャーだから、カリフォルニアからブレンドの決定に大きく関与する人が来ていたのだろう。それと確か 2006年まではカリフォルニア生まれのエドワード・フラハティがワインメーカーを務めていた。だから“カリフォルニア風”だったといえる。 一方、現ワインメーカーのフランシスコ・バエティグはチリ大学を卒業しボルドー大学で修士課程を終えた。その後、ボルドーやラングドックなどフランスでのワイン造りの経験が長い。しかも夫人はフランス人だ。「2007」以降、殊に「2008」「2009」「2010」の三つのヴィンテージからはフランシスコが大きく関与していただろうことが見てとれる。近くで試飲していた人が「なんだか地中海のニュアンスがある」とつぶやいていた。ボルドー品種を飲んで地中海のようだというのも如何なものかと思うが、それでも言いたいことはよく分かった。つまりそれまでのヴィンテージが力強く厳格なスタイルであるのに対して、この三つは比較的やさしく丸くバランスがとれているからだ。試飲ワインの詳細は別掲した。

アルボレダ・ヴィンヤード エドゥアルド・チャドウィックは冷涼な栽培地を探していた。そして彼が白羽の矢を立てたのはアコンカグア・ヴァレーの中で最も海に近い手つかずの土地チルウエだった。太平洋岸か

らわずか 12km、年間平均気温 14℃、年間降雨量 350mm、つねに海からの風が吹いている。1,000haにも及ぶ土地は海岸山脈の一部なので、いくつかの丘陵が入り組んでいる。平均標高は200m。ここをアルボレダ・ヴィンヤードと名付け、2005年にソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラーを植えた。最近、この地域はDOアコンカグアのサブ・リージョン、DOアコンカグア・コスタに認証された。ちなみにDOアコンカグアのサブ・リージョンには他にカサブランカ、レイダがある。 今回、アルボレダの畑に出かけて懐かしい人と出くわした。栽培担当のカルロス・カラスコだ。カルロスとはかつて彼がコルポラのビオビオ・ヴァレーでピノ・ノワールを栽培していた時に会って話を聞いた。今年の 5月からヴィンヤード・マネジャーとしてアルボレダに赴任したのだという。 カルロスはアコンカグア・コスタがビオビオにとてもよく似ているという。 「チャドウィックは葡萄樹を植栽する前にこの地の土壌分析をした。すると粘土が多く砂が混じっていて心土を構成する岩石は変成岩で火山岩はない。新植した樹の半分は接木をしたものだ。接ぎ木をしたのはフィロキセラ対策ではない。台木に接いだ方が根が土中深くまで食い込むからだ。 最も暖かい北向きの斜面にはシラーを、午後の日差しの当たる西向き斜面にはシャルドネを、南西斜面にはピノ・ノワールを、そして南面する区画にはソーヴィニヨン・ブランを植えた。土地の総面積 1000haの 25%にだけ植樹して、残りは手つかずの自然を維持している」。 アルボレダの畑を見回っていると、斜面の一部にテラス(段々畑)の区画がある。ここにはピノ・ノワールが植えられているが、その後の

醸造実験でテラスより斜面に垂直に畝を作ったほうがよりよい葡萄ができることが分かったので、テラスは初期植栽の一部の区画に留まっているのだという。植樹密度は畝幅 1.8m×樹間 1m。 アコンカグア・コスタは冷涼地ではあるがカサブランカのような遅霜の被害はない。涼しさはレイダとカサブランカの中間にあたるという。 アルボレダの醸造責任者カロリーナ・エレラと3本のボトルを試飲した。① 2012ソーヴィニヨン ・ブラン この年は平年より少し暖かかった。トマトの葉、アスパラガス、柑橘類などのアロマ。スキンコンタクトはしていない。5か月間のシュール・リー。アロマのヴォリュームがとても多い。ほんのり甘さのセンセーション。金属的ではないきりっとした酸味。複雑な味わい。② 2011シャルドネ まず樽香。バター・スコッチ。とてもクリスピーな口当たり。ホールバンチ・プレス、フレンチオークで熟成、新樽は使っていない。味わいは果実の要素と樽の要素が統合されている。根はシストの層まで達しているが、今後さらに深くまで入るとワインには徐々にミネラル・キャラクターが増えてくるという。2010年は平年より少し涼しく、2011年は冷涼でパーフェクトな年。2012年は比較的暖かかった。ワイン全体の60%をワイルド・ファーメント。③ 2011ピノ・ノワール ウイルスフリーのクローン。パーセル毎に仕込み、オープントップのタンクでパンチダウン。30%ワイルド・ファーメント、30%新樽。フルーツ、ミネラル、花の香り。口中はフルーティでクリスピー。ややスモーキーな印象。やさしいタンニン。少しアルコールを感じる(アルコール分 14%)。 ◆

アコンカグア・コスタのアルボレダ・ヴィンヤード