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ENVI チュートリアル SAR処理と解析(基本 編) 概要 ........................................................................................................................ 2 使用するファイル .................................................................................................. 2 背景 ....................................................................................................................... 3 単バンド SAR 処理の手順 ....................................................................................... 4 CEOS データの読み込み、表示、品質の確認 ....................................................... 4 CEOS ヘッダの確認 .............................................................................................. 5 アダプティブフィルタの使用によるスペックルの除去 ......................................... 7 デンシティスライス(density slice................................................................... 8 輪郭強調 ................................................................................................................ 10 データフュージョン............................................................................................... 11 地図画像出力 ......................................................................................................... 12 ENVI セッションの終了........................................................................................ 13 まとめ...................................................................................................................... 13 この章は以下の内容から構成されています。

SAR処理と解析(基本 編) · 2012-02-01 · 2 概要 この章は、単バンド SAR データ(RadarSat、ERS-1、JERS-1 など)を処理 するための ENVI の基本ツールの操作を説明します。

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Page 1: SAR処理と解析(基本 編) · 2012-02-01 · 2 概要 この章は、単バンド SAR データ(RadarSat、ERS-1、JERS-1 など)を処理 するための ENVI の基本ツールの操作を説明します。

ENVI チュートリアル

SAR処理と解析(基本

編)

概要 ........................................................................................................................ 2

使用するファイル .................................................................................................. 2

背景 ....................................................................................................................... 3

単バンド SAR 処理の手順 ....................................................................................... 4

CEOS データの読み込み、表示、品質の確認 ....................................................... 4

CEOS ヘッダの確認 .............................................................................................. 5

アダプティブフィルタの使用によるスペックルの除去 ......................................... 7

デンシティスライス(density slice) ................................................................... 8

輪郭強調 ................................................................................................................ 10

データフュージョン ............................................................................................... 11

地図画像出力 ......................................................................................................... 12

ENVI セッションの終了 ........................................................................................ 13

まとめ ...................................................................................................................... 13

この章は以下の内容から構成されています。

Page 2: SAR処理と解析(基本 編) · 2012-02-01 · 2 概要 この章は、単バンド SAR データ(RadarSat、ERS-1、JERS-1 など)を処理 するための ENVI の基本ツールの操作を説明します。

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概要

この章は、単バンド SAR データ(RadarSat、ERS-1、JERS-1 など)を処理

するための ENVI の基本ツールの操作を説明します。

使用するファイル

DVD: Resource DVD

Path: Data/rsat_sub

ファイル 概要

lea_01.001 Radarsat リーダファイル

bonnrsat.img Radarsat 画像のサブセット

bonnrsat.hdr 上記用の ENVI ヘッダ

rsi_f1.img Frost フィルタの結果

rsi_f1.hdr 上記用の ENVI ヘッダ

dslice.dsr デンシティスライスレベルの保存ファイル

rsi_f2.img ラプラシアンフィルタの結果

rsi_f2.hdr 上記用の ENVI ヘッダ

rsi_f3.img addback が 0.9 の場合のラプラシアンフィルタの

結果

rsi_f3.hdr 上記用の ENVI ヘッダ

rsi_fus.img TM と Radarsat の擬似フュージョンデータ

rsi_fus.hdr 上記用の ENVI ヘッダ

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rsi_map.jpg Radarsat による地図作成の例

背景

ENVI による SAR 処理の概念

すべての表示機能、ストレッチング、カラー操作、分類、画像間位置合わせ、フ

ィルタ、幾何学的偏位修正などの ENVI の標準的な処理機能は、レーダーデータ

に対しても使用できます。ENVI ルーチンの Radar メニューには、特にレーダ

ー処理に役立つ機能が含まれています。これらの機能の多くは、ENVI の他のメ

ニューからも開くことができます。JPL のフルポラリメトリックの AIRSAR シ

ステムや SIR-C システムなどの先進的な SAR システムを含め、ENVI はレー

ダー画像を解析するための標準的なツールと高度なツールが用意されています。

ENVI は、ALOS PALSAR、ERS-1/ERS-2、JERS-1、RADARSAT、SIR-C、

X-SAR、AIRSAR のデータや、他の SAR データセットを処理することができ

ます。また、ENVI は、 CEOS フォーマットで配布されるレーダーデータを処

理できるように設計されており、このフォーマットで配布される他のレーダーシ

ステムからのデータも処理できます。

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単バンド SAR 処理の手順

以下の項では、代表的な単バンド SAR 処理の手順を、データ入力から、処理、

解析、地図出力まで、順を追って説明します。例として使用するデータは、1995

年 12 月 17 日におけるドイツ、ボンの Radarsat 1 Path Image、Fine Beam

2 のサブセットです。

CEOS データの読み込み、表示、品質の確認

ENVI には、一般の CEOS データテープ、あるいはテープや CD-ROM の

Radarsat データを読み込むためのツールが用意されています。

テープから読み込む場合は、File -> Tape Utilities -> Read Known Tape

Formats -> RADARSAT CEOS を選択してください。

ディスク(CD)からオリジナルの RadarSat データを読み込む場合は、

Radar -> Open/Prepare Radar File -> RADARSATを選択してください。

1. Radarsat 画像のサブセットはすでに作成されています。ENVI メインメ

ニューから File -> Open Image File を選択し、rsat_sub ディレクトリ

にあるファイル bonnrsat.img の名前を選択してください。

2. Available Bands List ダイアログでバンド名を選択し、ダイアログ下部

の Load Band をクリックし、ENVI ウィンドウに画像を読み込んでくだ

さい。

図 1は、ドイツ、ボンの Radarsat 画像のサブセットに 2% の線形ストレッチ処

理を行ったものです。これらのデータは Radarsat の運用準備期間中に撮影され

たものですので、科学的な解析や解釈用には使用しないでください。データの著

作権は、Radarsat、1995 年となっています。

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図 1:2% 線形ストレッチを適用した、ドイツ、ボンの Radarsat サブセット

CEOS ヘッダの確認

多くの SAR データセットが CEOS フォーマットで配布されています。ENVI に

は、CEOS ヘッダを読み込んで CEOS ヘッダ情報を画面に表示するための一般

的なツールが用意されています。また、ENVI には、その他の付加情報を含む

Radarsat CEOS ヘッダを読み込むために特別に設計されたツールも用意されて

います。

1. Radar -> Open/Prepare Radar File -> View RADARSAT Header を

選択してください。

2. Radarsat リーダファイル lea_01.001 または他のいずれかのファイルを

選択して CEOS 情報を取り出し、画面に表示してください。

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図 2:リーダファイルから得られた Radarsat CEOS ヘッダ情報

コントラストストレッチング(平方根)

通常、レーダーデータの値は広い範囲に渡ります。前述のように、デフォルトの

線形ストレッチは、ほとんどのレーダー画像のコントラスト強調には十分ではあ

りません。ENVI の平方根ストレッチでは、他のタイプのストレッチよりも良好

に、指定された範囲のグレースケールにレーダーデータを展開でき、レーダー画

像の表示性能を改善することができます。図 3は、ドイツ、ボンの Radarsat 画

像を平方根ストレッチしたものです。前述の線形ストレッチと比較してください。

1. ENVI で平方根ストレッチを実行するには、ストレッチ処理する画像を表

示してください。

2. Enhance -> [Image] Square-Root を選択してください。イメージウィ

ンドウ内のデータの統計量に基づいて、データにストレッチが適用されま

す。

3. 新しいウィンドウに画像を表示し、Tools -> Link -> Link Displays を

選択して平方根画像と 2% 線形ストレッチ画像とをリンクしてください。

マウスの左ボタンによるクリックアンドドラッグとダイナミックオーバー

レイを使用して 2 つの画像を比較してください。

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図 3:平方根コントラストストレッチを適用した Radarsat 画像

アダプティブフィルタの使用によるスペックルの除去

アダプティブフィルタ(adaptive filter)は、データの空間特性に影響を及ぼさ

ずに画像からレーダーのスペックルを除去する方法です。以下で説明する Frost

フィルタ画像は、フィルタ処理されていないデータに比べてかなり改善されてい

ます。Frost フィルタは指数関数的に減衰する円対称フィルタであり、局所的な

統計量を使用して、データの輪郭部には影響を与えずにスペックルを減らすこと

ができます。フィルタ処理されるピクセルは、フィルタの中心からの距離、減衰

率、局所的分散に基づいて計算された値に置き換えられます。前述の画像や、以

下に示すダイナミックオーバーレイ画像と比較してください。Radarsat データ

に対して Frost フィルタ処理を実行するには、以下のように実行します。

1. Radar -> Adaptive Filters -> Frost を選択してください。

2. 入力画像として bonnrsat.img を選択し、デフォルトのフィルタサイズ

(3 × 3)と減衰率(1.0)を使用してください。出力ファイル名を入力し

て OK をクリックするか、もしくは、予め作成されている rsi_fl.img フ

ァイルを、平方根ストレッチを使用して Display #2 に読み込んでくださ

い。

3. Tools -> Link -> Link Displays を選択し、Frost フィルタ処理画像を

逆に 2% 線形ストレッチ画像にリンクしてください。マウスの左ボタンで

のドラッグとダイナミックオーバーレイを使用して 2 つの画像を比較して

ください。

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図 4:Frost フィルタの結果

デンシティスライス(density slice)

デンシティスライス処理を行うと、画像の輝度に基づいてレーダーの差を視覚的

に強調することができます。以下で説明するデンシティスライス画像には 4 つの

レベルがあり、赤い色になるほどレーダーの後方散乱が大きくなります。

1. Frost フィルタ画像が表示されているウィンドウから Tools -> Color

Mapping -> Density Slice を選択してください。

2. Density Slice ダイアログから File -> Restore Ranges を選択し、ファ

イル dslice.dsr を選択して、任意の範囲と色を入力してください。

Density Slice ダイアログで Apply をクリックし、画像をデンシティスラ

イス処理してください。

3. ダイナミックオーバーレイを使用して前述のグレースケール画像と比較し

てください。

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図 5:デンシティスライス処理された Radarsat 画像

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輪郭強調

ラプラシアンフィルタを使用すると、SAR データやその他のデータタイプの輪郭

を強調することができます。これは、以下のようなカーネル(5 × 5 のフィルタ

の場合)を使用したコンボリューションフィルタです。

0 0 -1 0 0

0 -1 -2 -1 0

-1 -2 16 -2 -1

0 -1 -2 -1 0

0 0 -1 0 0

1. ENVI メインメニューから Filter -> Convolutions and Morphology を

選択して Convolutions and Morphology Tool を起動してください。

Convolutions -> Laplacian をクリックしてください。

2. Kernel Size を 5 × 5 に設定し Quick Apply をクリックして、

bonnrsat.img を選択し OK をクリックしてください。また、あらかじめ

保存されている rsi_f2.dat を表示し確認することもできます。このような

方法でカーネルを使用することで、輪郭が大幅に強調され、ほとんどの放

射情報は失われます。

3. 前述の場合と同様にフィルタを選択しますが、今度は Image Add Back

値として値 90 を入力してください。bonnrsat.img とデフォルトのパラ

メータを使用して新しい出力ファイルを作成するか、あらかじめ保存され

ているファイル rsi_f3.dat を確認してください(図 6参照)。

4. ダイナミックオーバーレイを使用して、この結果を、フィルタ処理された

画像や元のデータと比較してください。

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図 6:輪郭強調の結果

(左)ラプラシアン(右)90%の addback

データフュージョン

SAR データが強力である点の一つは、他のデータセットに対する相補的な性格が

強いことです。レーダーデータには、他の多くのタイプの画像データにはない大

量の空間的情報が含まれていますが、逆に SAR データには、通常のマルチスペ

クトル光学データセットでは表現されている多くの組成情報が含まれていません。

このような特性から SAR データと光学的データが組み合わされて使用されるこ

とになります。

データセットを組み合わせる方法として最も一般的なのは、輝度(Intensity)、

色相(Hue)、彩度(Saturation)による IHS 変換を使用して、マルチスペク

トルカラー合成画像を、モノクロの SAR シャープニングバンドと組み合わせる

方法です。ENVI には、IHS を使用してデータ結合を実行する簡単なツールが用

意されています。

この章では Landsat TM データセットの IHS 結合データを示す擬似画像を、以

下の図 7と例で説明します。この画像は、SAR データセットと光学的データセッ

トを結合したものがどのようになるか説明します。また、ENVI には、データフ

ュージョン用のカラー正規化(Color Normalization (Brovey))変換も用意さ

れています。

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図 7:擬似的に TM データと Radarsat データをフュージョンした結果

1. 3 バンドカラー合成画像がある場合、Transform -> Image Sharpening

-> HSV を選択し、Select Input RGB Input Bands ダイアログでカラ

ー合成表示している 3 つのバンドを入力してください。

2. 単バンド SAR 画像を選択してください。

2 つの画像の空間的次元が同じ場合、ENVI は、フュージョン処理を進めます。

2 つのデータセットが両方とも幾何補正されているがピクセルサイズが異なる場

合、ENVI は、高分解能画像と一致するように低分解能画像をリサンプリングし

て 2 つのデータセットをフュージョンします。

地図画像出力

通常、ENVI の画像処理による最終的な出力は、プレゼンテーション、視覚的解

析、解釈用の、縮尺調整された地図画像となります。他のデータセットと同様、

レーダーデータも地図作成に使用できます。地図の位置合わせが必要な場合、

ENVI には、画像対画像および画像対地図のレジストレーション(画像間の位置

合わせ)機能があります。詳細は、ENVI チュートリアル「画像の幾何補正とレ

ジストレーション」、またはオンラインヘルプを参照してください。

また、ENVI には、詳細な注釈が付いた地図を作成するためのツールもすべて用

意されています。このようなものとしては、ピクセル、地図、地理的(緯度 / 経

度)グリッド、縮尺バー、偏角図と北方向指示矢印、テキストと記号、ポリゴン、

ポリライン、幾何学形状(円、四角形)、地図記号、凡例、挿入画像があります。

地図の作成に関する詳細は、ENVI チュートリアル「地図作成」、またはオンライ

ンヘルプを参照してください。

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ENVI セッションの終了

ENVI セッションを終了するには、ENVI メインメニューから File -> Exit

(UNIX は Quit)を選択し、さらに OK をクリックして IDL を終了します。

ENVI RT をご使用の場合は、ENVI を終了するとオペレーティングシステムに

戻ります。

まとめ

ENVI は、レーダーに対応しており(Radarsat レベル 2 は保証済み)、 ENVI

のほとんどのルーチンは SAR データに対して簡単に動作します。また、 ENVI

には、単バンドとポラリメトリックの両方の多周波数レーダーデータを解析でき

る一連の専用ツールが用意されています。通常の手順には、CEOS ヘッダの確認、

CEOS データの読み込み、表示とコントラストストレッチング、アダプティブフ

ィルタを使用したスペックル除去、デンシティスライス処理、輪郭強調、データ

フュージョン、地図作成というステップがあります。これらのツールにより、テ

ープや CD-ROM からの入力、処理、解析、地図の出力など、全過程をカバーす

る SAR 処理機能が 1 つのソフトウェアシステムで実現されています。