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高尿酸血症・痛風の生活指導─栄養学的視点と運動療法特 集 高尿酸血症・痛風の生活指導─栄養学的視点と運動療法
52 (52) 高尿酸血症と痛風 2017 Vol.25 No.1
水分摂取の奨励─尿路結石症と尿路管理を中心に
Encouragement of water intake─mainly with urinary calculi and urinary tract management
はじめに
本稿ではまず,高尿酸血症・痛風における尿路結石症について概説し,次に尿路結石症の治療や予防に重要な尿路管理のなかで,水分摂取の奨励(飲水指導)に焦点をあてて,その有用性,注意点などについて詳述する。
1 高尿酸血症・痛風における尿路結石症
1.尿路結石症の疫学 『尿路結石症診療ガイドライン2013年版』1)によると,日本人における尿路結石症は上部尿路結石症が約96%を占めており,その男女比は約2.4: 1 であるとされている。尿路結石成分に関しては,上部尿路結石ではカルシウム結石が最も多くを占めており,男性では92.1%,女性では90.3%がカルシウム結石である。一方,上部尿路結石における尿酸結石は男性では5.5%,女性では2.2%と報告されている。 われわれの成績では,当院における全尿路結石に占める尿酸結石の割合は高尿酸血症・痛風の増加と関連
Key Words
高尿酸血症,痛風,尿路結石症,酸性尿,水分摂取
Summary
高尿酸血症・痛風患者では尿路結石が高率に合併することが知られている。これは高尿酸血症・痛風患者の特徴である高尿酸尿症と酸性尿が原因であると考えられている。尿酸は酸性尿では容易に析出しやすくなる。酸性尿の背景にはインスリン抵抗性があることに留意する必要がある。高尿酸血症・痛風の腎尿路合併症である尿路結石や腎障害の治療・予防には尿のアルカリ化,尿量の確保,高尿酸尿症の是正などの尿路管理が重要である。 水分摂取は尿路結石の再発予防に有効であり,再発予防には 1 日尿量2,000mL以上になるように水分を摂取することが必要であり,そのため食事以外に 1 日2,000mL以上の飲水指導をすることが推奨されている。しかし水分摂取と腎機能の関連の観点などから,尿路結石症患者に対する飲水指導は,腎機能が正常の非慢性腎臓病(CKD)患者では積極的に推奨されるが,推算糸球体濾過量(eGFR) 60mL/分/1.73m2未満のCKD患者では極端な飲水指導は避けるほうが望ましいと思われる。
東京慈恵会医科大学総合診療内科 教授Iwao Ohno大野岩男
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