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平成26年度 建築基準整備促進事業 1 S15. 木造建築物における 壁倍率の仕様の追加に関する検討 平成27年4月23日 事業主体:株式会社 梓川設計 【共同研究:独立行政法人建築研究所】 報告者:一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会

S15.木造建築物における 壁倍率の仕様の追加に関する検討 ...2 1. はじめに 2. 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査 3. 平成26年度壁倍率試験

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Page 1: S15.木造建築物における 壁倍率の仕様の追加に関する検討 ...2 1. はじめに 2. 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査 3. 平成26年度壁倍率試験

平成26年度 建築基準整備促進事業

1

S15. 木造建築物における壁倍率の仕様の追加に関する検討

平成27年4月23日

事業主体:株式会社 梓川設計【共同研究:独立行政法人建築研究所】

報告者:一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会

辻 村 行 雄

Page 2: S15.木造建築物における 壁倍率の仕様の追加に関する検討 ...2 1. はじめに 2. 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査 3. 平成26年度壁倍率試験

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1. はじめに

2. 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査

3. 平成26年度壁倍率試験

4. 結果と考察

Page 3: S15.木造建築物における 壁倍率の仕様の追加に関する検討 ...2 1. はじめに 2. 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査 3. 平成26年度壁倍率試験

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1. はじめに1.1 事業概要

(1) 調査の実施方針政令又は告示に示される仕様に対して、一部の変更でも

大臣認定を要するため、手続きの負担が生じる。このため、既存の大臣認定の実績を活用し、告示等に新たに位置づける具体的な仕様の検討を目的とする。

(2) 期待される具体的な効果告示に位置づける耐力壁の仕様等の検討を行い、そのうち

高耐力の耐力壁等について水平加力試験を行った上で、告示に位置づける仕様に関する基準案を提案する。

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1.1 事業概要

•壁倍率に係る大臣認定仕様等の調査を実施する.•試験方法、評価方法に係る調査を実施する.

•実態調査等を踏まえ、耐力壁の仕様を整理する.•耐力壁の水平加力試験を行う.

•耐力壁の試験結果を踏まえ、告示に位置づける仕様を提案する.

•高耐力の耐力壁については水平加力試験を行った上で、告示に位置付ける仕様に関する基準案を提案する.

壁倍率に関する実態調査

全体計画

告示等に位置づける仕様の提案

壁倍率の仕様に関する試験及び検証

(3) 調査のフロー

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1.2 委員会の構成

学識経験者、行政、業界団体(木住協、2×4協)により委員会を組織し、検討を実施する。

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1.3 事業の経過状況

(1)調査の実施状況平成26年度耐力壁の仕様・耐力に関して、水平加力試験を行い告示等に

位置付ける耐力壁仕様を提案する。平成27年度初年度に得られた知見に基づき、さらなる水平加力試験を行

い、告示等で位置づける仕様を提案する。

(2)具体的な事業の効果新たに告示に位置づける耐力壁の仕様(案)等を整理し、新た

な木質構造の構造設計法を構築するために必要となる技術的な資料を得ることができる。

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2. 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査2.1 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査報告書

調査内容

1.住宅施工会社または設計事務所に対する

アンケート調査

2.建材メーカーまたは建材メーカー団体に対する

アンケート調査

調査対象 ・一般社団法人日本木造住宅産業協会の1種正会員及び

第3種正会員

・一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会の1種正会員

及び第3種正会員

・国土交通省「構造方法等の認定に係る帳簿 壁倍率」

( http://www.milit.go.jp/common/001065083.xls 、

2014年10月26日閲覧)より選択抽出した109社

調査方法 ・e-メールで依頼

・Microsoft Excelによるフォームに入力し、e-メールで回

(一部、ファクシミリで回収)

・郵送調査

調 査 実 施 ス ケ

ジュール

・メール発送・回収締切:

2014年10月21日~11月4日

・調査票発送・回収:

2014年11月10日~11月21日

回答数 ・85件 ・26件

調査対象期間 ・平成2013年度(2013年4月~2014年3月)の着工実績 ・平成2013年度(2013年4月~2014年3月)の出荷実績

調査内容木造住宅の耐力壁の壁倍率に関して、以下の2種類のアンケート調査を実施した。

調査1.住宅施工会社または設計事務所に対するアンケート調査調査2.建材メーカーまたは建材メーカー団体に対するアンケート調査

概要は下表の通りである

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2.1 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査報告書

調査1.住宅施工会社または設計事務所に対するアンケート調査

設問貴社で設計または施工した住宅の、平成25年度(平成25年4月~平成

26年3月)における着工棟数をお答えください。

回答数85件

78%

47%

25%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

軸組を設計・施工

枠組を設計・施工

両方を設計・施工

会社の種別(1)(N=81)

43,166 19,738 10

0% 20% 40% 60% 80% 100%

回答全社(N=75)の着工棟数の合計

軸組工法 枠組壁工法 その他

会社の種別 件数 割合(N=81)

軸組工法の住宅を設計または施工した会社 63社 77.7%

枠組壁組工法の住宅を設計または施工した会社 38社 46.9%

軸組工法の住宅も枠組壁工法の住宅も設計または施工した会社

20社 24.7%

回答全体(N=75)の着工棟数の合計 着工件数 割合

軸組工法の住宅の着工棟数 43,166棟 68.6%

枠組壁組工法の住宅の着工棟数 19,738棟 31.4%

その他の住宅の着工棟数 10棟 0.0%

合計 62,914棟 100.0%

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2.1 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査報告書

耐力壁の使い分け方(軸組工法)

68%

57%

46%

29%

22%

6%

2%

6%

74%

66%

18%

5%

5%

0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

必要壁量によって使い分け

仕様の種類を少なく

面材使用を原則

筋かい使用を原則

大臣認定仕様(他社)使用を原則

大臣認定仕様(自社)使用を原則

大臣認定仕様の使用を回避

その他

耐力壁の使い分け方

軸組工法(N=63) 枠組壁工法(N=38)

75%

56%

46%

40%

22%

22%

16%

14%

8%

5%

66%

61%

53%

26%

18%

13%

13%

18%

8%

8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

現場施工性

コスト

品質の安定

高倍率耐力壁使用回避

長期使用性能

高付加価値

高倍率耐力壁積極使用

パネル・プレハブ化対応

意匠性

その他

耐力壁使い分け方の考慮要因

軸組工法(N=63) 枠組壁工法(N=38)

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2.1 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査報告書

耐力壁の使い分け方(枠組壁工法)

74%

66%

18%

5%

5%

0%

68%

57%

22%

6%

2%

46%

29%

6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

必要壁量によって使い分け

仕様の種類を少なく

大臣認定仕様(他社)使用を原則

大臣認定仕様(自社)使用を原則

大臣認定仕様の使用を回避

面材使用を原則

筋かい使用を原則

その他

耐力壁の使い分け方

枠組壁工法(N=38) 軸組工法(N=63)

66%

61%

53%

26%

18%

18%

13%

13%

8%

8%

75%

56%

46%

40%

22%

14%

22%

16%

8%

5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

現場施工性

コスト

品質の安定

高倍率耐力壁使用回避

長期使用性能

パネル・プレハブ化対応

高付加価値

高倍率耐力壁積極使用

意匠性

その他

耐力壁使い分け方の考慮要因

枠組壁工法(N=38) 軸組工法(N=63)

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2.1 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査報告書

46%

40%

40%

24%

5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

床勝ちの耐力壁

高倍率の耐力壁

上下の空いた耐力壁

4辺無緊結受材仕様

その他

欲しい耐力壁

軸組工法(N=63)

欲しい耐力壁

軸組工法

63%

42%

8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

高倍率の耐力壁

直下に耐力壁線なし

その他

欲しい耐力壁

枠組壁工法(N=38)

枠組壁工法

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2.1 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査報告書

調査2.建材メーカーまたは建材メーカー団体に対するアンケート調査

52%

43%

43%

24%

14%

38%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

上下の空いた耐力壁(軸組)

床勝ちの耐力壁(軸組)

高倍率の耐力壁(軸組・枠組)

4辺無緊結受材仕様(軸組)

直下に耐力壁線なし(枠組)

その他

欲しい耐力壁

メーカー等(N=21)

設問 貴社(貴会)では、今後、どのような耐力壁の仕様が告示化されると、よいと思われますか。該当するものすべてに○印を付けてください。

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2.2 告示化を望む大臣認定仕様

構造用合板12mmの高倍率(5倍等)の耐力壁及びパーティクルボードを用いた耐力壁について告示化を望むことが調査結果から分かった。

1. 住宅施工会社、設計事務所及び建材会社等への実態調査に基づく要望

2. 面材供給事業者団体の意向(1) 構造用合板に係る大臣認定仕様

日本合板工業組合連合会(「日合連」)が取得の「厚さ12㎜の構造用合板を用いた耐力壁の大臣認定仕様」について、日合連から試験結果(荷重変形曲線)の提供を受け、これをもって、告示仕様に追加することの了解を得ている。

(2) 構造パネル(OSB)に係る大臣認定仕様枠組壁工法については、APAエンジニアード・ウッド協会(「APA」)が取

得の「厚さ9㎜のカナダ産(3社)の構造用パネルを用いた耐力壁の大臣認定仕様」について、APAから大臣認定書の(写し)の提供を受け、これをもって、告示仕様に追加することの了解を得ている。

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2.2 告示化を望む大臣認定仕様

(3) 繊維板(パーティクルボード)に係る大臣認定仕様

繊維板工業会(「繊維板」)の会員が個々に取得した大臣認定とは別に、繊維板が現在、パーティクルボードのJIS改正の審議の過程で、新たに「構造用パーティクルボード」として9㎜厚を制定することを要望しており、併せてこの機会に壁倍率の告示仕様に追加することの了解を得ている。当事業及び繊維板の事業として、平成27年度以降に壁倍率設定の根拠を得るための面内せん断耐力試験等を実施していく。

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3. 平成26年度壁倍率試験3.1 壁倍率試験法及び試験体仕様について

1. 試験法木造軸組工法耐力壁と枠組壁工法耐力壁の面内せん断試験は、指定性能評価機関の定める木造の耐力壁及びその倍率性能試験・評価業務方法書、枠組壁工法耐力壁及びその倍率性能試験・評価業務方法書(以下、「業務方法書」という。)に準拠して実施した。

2.試験体形状について

木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2008年版)(企画編集・発行:(公財)日本住宅・木材技術センター)、第4章 特殊な仕様や形状に対する構造設計法4.2面材張り大壁の詳細計算法による検討結果より、一定の範囲においては壁長さ・壁高さによる計算結果に大きな差異は見られないため、業務方法書に定める標準寸法とした。

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3.試験体仕様業務方法書に記載された試験体仕様は、材料入手が困難となる状況を鑑み、下記に示す材料を用いた。

製材の日本農林規格に規定する機械等級区分構造用製材等級:E50、E70及びE90(平均E70)樹種:スギ

製材の日本農林規格に規定する機械等級区分構造用製材樹種:ベイマツ

枠組壁工法用構造用製材の日本農林規格または平成12年建設省告示第1452号第7で国土交通大臣が指定した枠組壁工法構造用製材等級:甲種枠組材2級の乾燥材またはNO.2の乾燥材樹種群:S-P-F

合板の日本農林規格の構造用合板品質:特類、2級、C-D単板樹種:スギ(全層)厚さ:12㎜

合板の日本農林規格の構造用合板品質:2級厚さ:28㎜

3.1 壁倍率試験法及び試験体仕様について

柱、土台

面材

床下地板

枠組材

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3.2 木造軸組工法試験結果

1.目的構造用合板を用いた耐力壁について、面材の接合具である釘のピッチや、大壁、受材、床勝仕様等の納まりの違いを整理し、それぞれの耐力壁の壁倍率を整理した。

2.試験方法木造の耐力壁及びその倍率 性能試験・評価業務方法書による。

加圧装置及び変位計取付位置 試験の実施状況(例:最大変形時)

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3.2 木造軸組工法試験結果

納まり 番号 釘種外周部ピッチ(mm)

内周部ピッチ(mm)

釘種ピッチ(mm)

低減係数α

(※3)

短期許容せん断耐力

Pa(kN)壁倍率

①-A N50 100 200 - - 1 ⅱ 12.08 0.85 10.27 2.88

①-B N65 100 200 - - 3 ⅰ 15.08 0.85 12.82 3.59

①-C CN65 100 200 - - 1 ⅱ 16.21 0.85 13.78 3.86

②受材 ②-A N65 100 200 N75 200 1 ⅱ 12.32 0.85 10.47 2.94

③床勝 ③-A N65 100 200 N75 200 3 ⅰ 13.95 0.85 11.86 3.32

④真壁 受材

④-A N65 100 200 N75 200 3 ⅱ 12.54 0.85 10.66 2.99

試験結果

試験体数

①大壁

接合具(面材) 接合具(受材)仕様

短期基準せん断耐力

P0(kN)(※1、2)

(※1)ⅰ:降伏耐力 Py により決定。 ⅱ:(0.2/Ds)×Pu により決定。ⅲ:2/3×Pmax により決定。 ⅳ:1/120(rad.)耐力により決定。

(※2)試験体数1の場合の、ばらつき係数は0.970と想定。(※3)低減係数は、暫定値として「0.85」とした。

3.「試験体の種類」及び「試験結果」

試験体の種類、試験体数、試験結果の一覧を以下に示す。

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3.2 木造軸組工法試験結果

4.考察◆耐力壁の実験結果

1)厚さ12mmの構造用合板を用いた耐力壁では、大壁仕様において3.5倍相当(低減後)の壁倍率を確保することが可能。

2)床勝大壁仕様、真壁仕様、床勝真壁仕様についても、1)で掲げた耐力壁の壁倍率を確保するための釘種や釘ピッチに目処。

5.その他◆耐力壁の幅や高さの影響

1)壁倍率に対する耐力壁の幅( 910mmと1000mm)の影響について、大壁仕様(釘間隔75~150mm)については、グレー本の詳細計算法により壁倍率を検討した結果、壁倍率の差は5%程度以下。

2)壁倍率に対する耐力壁の高さの影響についても、一定の仮定を前提に壁倍率への影響を検討した結果、その影響は軽微。

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3.3 枠組壁工法試験結果

1.実験の目的

告示1541号では、構造用合板2級で9mm以上は一律に壁倍率3としているが、既存の大臣認定から構造用合板12mmは壁倍率3を超える倍率を有していると推察される。そこで、地域材を使用した構造用合板の普及および長期優良住宅(耐震等級2以上)の普及に向けて、より高い壁倍率の告示仕様への追加を目指したい。

2.実験の内容壁倍率3を越える耐力壁仕様を告示に追加するために、来年度耐力壁

の水平加力実験を行う予定である。その試験の試験体仕様を検討・決定するための予備試験として、今回、宮城県産杉の構造用合板12mmを用い、目標数値として壁倍率5に届くかの検討と、接合具として、CN50とCN65のどちらが妥当かの検証を行う。

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3.3 枠組壁工法試験結果

3.試験概要試験体数:計4体、下記仕様を各1体ずつ

① 構造用合板2級 12mm/CN50/@100 (@200)② 構造用合板2級 12mm/CN65/@100 (@200)③ 構造用合板2級 12mm/CN50/@50 (@200)④ 構造用合板2級 12mm/CN65/@50 (@200)

① ② ③ ④CN50/@100 CN65/@100 CN50/@50 CN65/@50

降伏 Py [kN] 12.19 15.36 24.06 29.020.2 Pu /Ds [kN] 16.57 14.92 18.52 26.192/3 Pmax [kN] 15.45 19.89 30.53 35.98P 1/120 [kN] 15.26 16.17 26.36 29.02

Pmax [kN] 23.17 29.84 45.79 53.97Pu [kN] 21.31 26.05 39.74 48.01

構造特性係数 Ds 0.26 0.35 0.43 0.37

推定壁倍率 3.42 4.18 5.19 7.34

試験体No.

試験結果の各種特性値、推定壁倍率

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3.3 枠組壁工法試験結果

4.考察

・ 実験から得られた推定壁倍率の決定要因は、降伏耐力Py又は0.2Pu/Dsであり、面材系耐力壁の一般的な決定要因であった。

・ 釘の留め付け間隔を@100から@50と変えることで、壁倍率は大きな値となった。最大耐力Pmaxで比較すると、CN50では約1.98倍、CN65では約1.81倍と、2倍よりも若干小さめの数値となった。

・ 釘の種類をCN50からCN65に変えることで、最大耐力Pmaxで比較すると、およそ1.2~1.3倍程度の数値であった。

・ 今回4体の試験を通じて、試験体④の仕様であれば、目標とする壁倍率4~5相当の数値が出る 可能性が高いと考えられる。

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4. 結果と考察4.1 木造軸組工法

1.平成26年度の検討結果に基づく告示化仕様の提案

実態調査、面材供給事業者団体の意向を踏まえ、以下の仕様を提案。

【構造用合板12mmを用いた耐力壁】◆仕様:CN65 (外周@100mm、その他@200mm)◆倍率:3.5倍 (最小3.1~最大4.0倍)◆理由:

・告示第1100号では、構造用合板(7.5mm以上)の耐力壁は「大壁」・「真壁」仕様ともに壁倍率2.5倍と規定。

・実態調査より、「床勝大壁」や「床勝真壁」仕様の耐力壁や、これらを含む高倍率の耐力壁の要望多数。

・日本合板工業組合連合会(「日合連」)取得の大臣認定より、構造用合板12mmとCN65による耐力壁は、壁倍率3.0倍を超えると推察。

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4.1 木造軸組構法

2.平成27年度に追加検討を行う仕様の提案平成26年度の検討結果を踏まえ、平成27年度に追加検討を行う耐力壁の仕様として、下記を想定する。各仕様について、別途、性能評価試験実施の上、告示化を提案する。

番号 面材種 納まり 釘種 外周部ピッチ 中通りピッチ

① 大壁② 床勝大壁③ 真壁④ 床勝真壁⑤ 大壁⑥ 床勝大壁⑦ 真壁⑧ 床勝真壁⑨ 大壁⑩ 床勝大壁⑪ 真壁⑫ 床勝真壁

接合具仕様

200mm以下

構造用合板

(12mm)

構造用MDF(9mm)

100mm以下

構造用PB(9mm)

N65

N50

N50

納まりの種類

①大壁 ②床勝大壁 ③真壁 ④床勝真壁

平成27年度に追加検討を行う仕様の案

3.今後の検討課題1)幅600mmの面材耐力壁2)耐力壁の幅及び高さの影響(5%・10%ルール)の見直し3)耐力壁の比例則(1.5P、1.2P等)の確認

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4.2 枠組壁工法

1. 平成26年度の検討結果に基づく新たな面材による告示化仕様の提案

1) 構造用合板2級12㎜仕様:CN65、外周10㎝その他20㎝

倍率:3.5倍(最少3.6~最大4.18倍)

2) 構造用パネル3級(12㎜)仕様:CN65、外周10㎝その他20㎝倍率:3.5倍

3) 構造用MDF(30タイプ、M又はPタイプ)厚さ9㎜仕様:CN50、外周10㎝その他20㎝倍率:3倍(最少3.69~最大4.58倍)

4)構造用パーティクルボード厚さ9㎜仕様:CN50、外周10㎝その他20㎝倍率:3倍

Page 26: S15.木造建築物における 壁倍率の仕様の追加に関する検討 ...2 1. はじめに 2. 木造住宅の耐力壁の壁倍率に関する実態調査 3. 平成26年度壁倍率試験

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4.2 枠組壁工法

倍率:4倍以上

理由:構造用合板2級9㎜の釘増し打ち仕様は3階建て等で広く利用されている。既往の試験報告でも壁倍率が高くなることが確認されていること。また、日合連並びにAPAでは、構造用合板及び構造用パネルの釘増し打ちによる大臣認定を取得していることから、高倍率仕様として告示仕様に追加する。

(1)釘増し打ち仕様の追加

2. 平成27年度に追加検討を行う仕様の提案

3. 今後の検討課題

(1)同じ面材で複数の釘打ち仕様例:構造用MDF9㎜で、釘をCN50ならびにCN65

(2)低倍率壁例:構造用MDF9㎜、CN50、外周200㎜その他200㎜